説明

車載用バックライト用の導光板、車載用バックライト、および車載用液晶表示装置

【課題】透明性、耐熱性に優れ、かつ車載に要求される耐使用環境条件における高温高湿下での色度(x,y)の増加が小さい、車載用バックライト用の導光板を提供する。
【解決手段】車載用バックライト用の導光板は、芳香族ポリカーボネート樹脂と、一般式(1)
【化1】


(式中、Rはアリール基またはアルキル基を表し、R、Rは各々独立してアリール基を表し、R、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、nは0または1を表す)で示されるリン系安定剤とを含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バックライト用導光板、車載用バックライト、および車載用液晶表示装置に関するものであり、より詳しくは、高温高湿条件下での色度シフトが少なく、車載用バックライト用の導光板として好適に使用することができる導光板および該導光板を備えた車載用バックライト並びに車載用液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その薄型化、軽量化、省電力、高精細化の要求に対応するために、バックライトと称される面状光源装置が組み込まれている。バックライトは、液晶パネルの背面、すなわち、液晶パネルにおける表示面とは反対側に設けられている。バックライトには、入光する光を液晶パネルに均一かつ効率的に導く役割を果たす目的で導光板が備えられている。
【0003】
従来、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)等の小型の液晶表示装置におけるバックライトに使用される導光板は、切断時に切屑が生じず、生産性が高いことから、ポリカーボネート(PC)材料が用いられている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0004】
これに対し、車載用のナビゲーションシステムやテレビジョン受像機等、生産性よりも光学性能が重視される車載用液晶表示装置に用いられるバックライトの導光板材料としては、一般的に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等、高透光性を有するアクリル樹脂が用いられている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2004−250557号公報(公開日:2004年9月9日)
【特許文献2】特開2004−109162号公報(公開日:2004年4月8日)
【特許文献3】特開2004−51700号公報(公開日:2004年2月19日)
【特許文献4】特開2007−204737号公報(公開日:2007年8月16日)
【特許文献5】特開2006−178135号公報(公開日:2006年7月6日)
【特許文献6】特開2002−60609号公報(公開日:2002年2月26日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクリル樹脂は耐熱性が十分ではなく、近年、車載用途として、より高い耐熱性を有する導光板の開発が求められている。
【0006】
アクリル樹脂よりも耐熱性が高い材料としては、上記PCがよく知られている。このため、PCを車載用途に適用することが試みられてはいるものの(例えば特許文献5、6参照)、実用化には至っていない。
【0007】
PCは、アクリル樹脂と比較して可視領域における光の透過率が低い。特に、PCは、400nm〜500nmの青色の波長が透過し難いことから、アクリル樹脂に比べ、樹脂自体が黄色味を帯びている。つまり、色度(x,y)が高い。このため、PCは、液晶表
示装置におけるバックライトの導光板として使用したときに、表示が黄色味を帯びるという問題点を有している。このような着色は、携帯電話やPDA等の極めて小型の液晶表示装置においてはあまり問題とはならないが、表示面が大きくなると著しく表示品位を下げることから、許容することができない。従来、PCからなる導光板が車載用途としては実使用されておらず、専ら、携帯電話やPDA等、高い透明性が必要とされない小型の液晶表示装置における導光板材料として使用されている理由はここにある。
【0008】
そこで、本願発明者らは、上記短波長領域での光の透過率を改善すべく、鋭意検討を行った。この結果、亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系安定化剤(酸化防止剤)が、車載用バックライトサイズの導光板における上記短波長領域での光の透過率の改善に有効であり、車載用バックライトサイズの導光板として使用できるレベルの透明性を有する導光板を得ることができることを見出した。
【0009】
しかしながら、一方で、このような添加剤の添加が、車載に要求される耐使用環境条件における高温高湿下での色度(x,y)の増加(黄変)をもたらすことが判った。
【0010】
つまり、PCにこのような添加剤を添加した場合、通常条件における透明性を向上させることができるとともに、アクリル樹脂と比較して高い耐熱性を得ることができるものの、車載に要求される耐使用環境条件である80℃、90%RHもの高温高湿環境下で暴露すると、導光板の入光部から受光した光が導光する間に短波長領域の光が吸収され、黄変度、すなわち色度シフトが増加する。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みなされたものであり、透明性、耐熱性に優れ、かつ車載に要求される耐使用環境条件における高温高湿下での色度(x,y)の増加が小さい、車載用バックライト用の導光板および車載用バックライト並びに車載用液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定のリン系安定剤を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形材料として車載バックライト用導光板を成形することにより、上記目的を達成することができることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明にかかる車載用バックライト用の導光板は、上記課題を解決するために、芳香族ポリカーボネート樹脂と、一般式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rはアリール基またはアルキル基を表し、R、Rは各々独立してアリール基を表し、R、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、nは0または1を表す)
で示されるリン系安定剤とを含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、上記導光板の材料として、アクリル樹脂よりも耐熱性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することで、アクリル樹脂からなる従来の導光板と比較して耐熱性を向上させることができる。また、上記リン系安定剤を添加することで、短波長領域での光の透過率が改善され、車載用バックライトサイズの導光板として使用できるレベルの透明性を有する導光板を得ることができる。また、上記リン系安定剤を添加することで、車載に要求される耐使用環境条件における高温高湿下での色度(x,y)の増加を抑えることができ、車載用バックライト用の導光板として実用可能な導光板を提供することができる。
【0017】
上記Rは、アリール基であることが好ましい。上記Rが、アリール基であるリン系安定剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解抑制効果が高い。
【0018】
また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における上記リン系安定剤の配合量は、上記芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.005〜0.2重量部の範囲内であることが好ましい。
【0019】
上記リン系安定剤の配合量が0.005重量部未満では色相や光線透過率の改善傾向が小さい傾向がある。逆に、上記リン系安定剤の配合量が0.2重量部を越えると、耐加水分解性が低下し易く、また、モールドデポジットが発生し、コスト的にも不利になる傾向がある。
【0020】
上記車載用バックライト用の導光板は、楔状であってもよく、平板状であってもよい。しかしながら、色度シフトは、導光板が薄いほど高温高湿による影響を受け易い。このため、楔状の方が、平板状よりも高温高湿による影響を受け易く、条件的により厳しい。しかしながら、本発明は、高温高湿条件下での色度シフトを改善することができるので、導光板が薄いほど従来との差異は顕著なものとなる。したがって、楔状の方が本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0021】
本発明にかかる車載用バックライトは、上記課題を解決するために、光源と、本発明にかかる上記車載用バックライト用の導光板とを備えていることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、上記車載用バックライトが、本発明にかかる上記車載用バックライト用の導光板を備えていることで、透明性、耐熱性に優れ、かつ車載に要求される耐使用環境条件における高温高湿下での色度(x,y)の増加が小さい車載用バックライトを提供することができる。
【0023】
上記光源は、発光ダイオードあるいは冷陰極管であることが好ましい。
【0024】
本発明の効果は、光源の種類には依存しない。このため、上記光源は、発光ダイオードであってもよく、冷陰極管であってもよい。しかしながら、冷陰極管よりも青色成分の多い発光ダイオードの方が、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0025】
本発明にかかる車載用液晶表示装置は、上記課題を解決するために、本発明にかかる上記車載用バックライトを備えていることを特徴としている。
【0026】
上記の構成によれば、上記車載用液晶表示装置が、本発明にかかる上記車載用バックライトを備えていることで、透明性、耐熱性に優れ、かつ車載に要求される耐使用環境条件における高温高湿下での色度(x,y)の増加が小さい車載用液晶表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる車載用バックライト用の導光板は、以上のように、芳香族ポリカーボネート樹脂と、一般式(1)
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、Rはアリール基またはアルキル基を表し、R、Rは各々独立してアリール基を表し、R、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、nは0または1を表す)
で示されるリン系安定剤とを含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる構成である。
【0030】
また、以上のように、本発明にかかる車載用バックライトは、光源と、上記車載用バックライト用の導光板とを備えている構成であり、本発明にかかる車載用液晶表示装置は、上記車載用バックライトを備えている構成である。
【0031】
上記の構成によれば、透明性、耐熱性に優れ、かつ車載に要求される耐使用環境条件における高温高湿下での色度(x,y)の増加が小さい、車載用バックライト用の導光板および車載用バックライト並びに車載用液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明について詳しく説明する。本発明にかかる導光板は、車載用のバックライトに使用される導光板であり、芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定のリン系安定剤を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる。
【0033】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物、または芳香族ヒドロキシ化合物と少量の芳香族ポリヒドロキシ化合物とを、ホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体(以下、(共)重合体と記す)であり、直鎖状であってもよく、分岐していてもよい。
【0034】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、界面重合法、エステル交換法等、公知の方法によって製造することができる。
【0035】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂の原料として使用される芳香族ジヒドロキシ化合物は、下記一般式(2)
【0036】
【化3】

【0037】
(式中、Wは、各々単結合にて構成される、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基からなる群より選ばれる基、または、−O−基、−S−基、−CO−基、−SO−基、および−SO−基からなる群より選ばれる2価の基を示し、XおよびYは、ハロゲン原子または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、pおよびqは0〜2の整数を示し、XとY、pとqは、何れも、同一であっても異なっていてもよい)
で表される化合物である。
【0038】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン;レゾルシン;4,4'−ジヒドロキシジフェニル;等が挙げられる。
【0039】
これら例示の化合物のなかでもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、そのなかでもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類がより好ましく、耐衝撃性の点から、ビスフェノールAが特に好ましい。また、難燃性を高める目的で、上記例示の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した、上記例示の芳香族ジヒドロキシ化合物の誘導体もまた、芳香族ジヒドロキシ化合物として使用することができる。これら芳香族ジヒドロキシ化合物は、各々単独で用いてもよく、適宜、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
また、芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、上記芳香族ジヒドロキシ化合物の重合体または共重合体を用いることができる。
【0041】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂として分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、界面重合法においては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物;3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(すなわち、イサチンビスフェノール);5−クロルイサチン;5,7−ジクロルイサチン;5−ブロムイサチン;等の分岐化剤を、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として使用すればよい。
【0042】
これら分岐化剤の使用量は、特に限定されるものではないが、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し、通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜2モル%の範囲内である。
【0043】
一方、エステル交換法においては、上記分岐化剤の添加は任意であり、反応温度や触媒量を調節することにより、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0044】
次に、上記芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法について、界面重合法およびエステル交換法を例に挙げて説明する。
【0045】
〈界面重合法〉
界面重合法は、別名、ホスゲン法と称される方法である。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物(必要に応じて芳香族ポリヒドロキシ化合物を併用してもよい)と、ホスゲン(二塩化カルボニル)とを、有機溶媒およびアルカリ水溶液の存在下、通常はpHを9以上に保って反応させた後、重合触媒を添加して界面重合を行うことで、芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0046】
上記有機溶媒としては、上記反応に不活性な有機溶媒であれば、特に限定されるものではない。上記有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。
【0047】
上記アルカリ水溶液に使用されるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、アルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
【0048】
上記重合触媒としては、例えば第三級アミン、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0049】
また、反応温度、反応時間、反応圧力等の反応条件(重合条件)としては、上記重合反応が完結するように適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、一般的には、反応温度は例えば0〜40℃であり、反応時間は例えば数分(例えば10分)〜数時間(例えば6時間)である。また、反応圧力は、常圧(大気圧)である。
【0050】
上記重合反応には、必要に応じて、分子量調整剤(末端停止剤)、芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤が用いられる。
【0051】
上記分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等の、一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
【0052】
分子量調節剤の使用量は、特に限定されるものではないが、芳香族ジヒドロキシ化合物
100モルに対し、通常、50〜0.5モル、好ましくは30〜1モルの範囲内である。
【0053】
〈エステル交換法〉
エステル交換法は、別名、溶融法と称される方法であり、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。
【0054】
炭酸ジエステルとしては、例えば、下記一般式(3)
【0055】
【化4】

【0056】
(式中、A、Aは、各々独立して、置換されていてもよい、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の1価の炭化水素基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
上記一般式(2)において、A、Aで示される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等が挙げられる。
【0058】
上記炭酸ジエステルとしては、具体的には、例えばDPC(ジフェニルカーボネート);ジトリルカーボネート等の置換DPC(置換ジフェニルカーボネート);ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;等が挙げられる。
【0059】
これら例示の炭酸ジエステルのなかでも、DPC、置換DPCが好適に用いられる。これら炭酸ジエステルは、単独で用いてもよく、適宜、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
上記炭酸ジエステルは、その一部が、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換されていてもよい。置換割合は、通常、50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。代表的なジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。炭酸ジエステルを、このようなジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。以下、無置換の炭酸ジエステルおよびジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換されている炭酸ジエステルを総称して単に「炭酸ジエステル」と称する。
【0061】
エステル交換法で製造されるポリカーボネートでは、炭酸ジエステルは、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換されているか否かに拘らず、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に使用される。芳香族ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルの割合(モル比)は、1.01〜1.30、好ましくは1.02〜1.25、より好ましくは1.02〜1.20の範囲内である。
【0062】
モル比が過度に小さい場合には、得られる芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基量(末端基のヒドロキシル基の量、以下、単に「末端OH基量」と記す)が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向がある。末端OH基量は、ポリカーボネート製品の熱安定
性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす。上記芳香族ポリカーボネート樹脂を車載用バックライト用の導光板の材料として使用するためには、末端OH基量は、耐加水分解性の理由から、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。
【0063】
一方、モル比が過度に大きい場合には、エステル交換の反応速度が低下し、分子量が大きくならず、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネートの生産が困難となる傾向がある。また、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となるとともに、色調が低下する。このため、末端OH基量は、100ppm以上であることが好ましい。このような末端OH基量とすることにより、分子量の低下を抑制することができ、色調もより良好となる。
【0064】
上記したように、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調節したり、反応時の減圧度を調整したりすることにより、所望の分子量および末端OH基量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。より積極的な方法として、反応時に、別途、末端停止剤を添加する方法も知られている。
【0065】
上記末端停止剤の一例としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類が挙げられる。
【0066】
また、通常、エステル交換法により芳香族ポリカーボネートを製造する際には、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に制限されないが、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。これらエステル交換触媒のなかでも、実用的観点から、アルカリ金属化合物が好ましい。
【0067】
エステル交換触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し、通常1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−3モル、より好ましくは1×10−7〜1×10−6モルの範囲内である。
【0068】
エステル交換触媒に用いられる上記アルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物;アルカリ金属のアルコール類(またはフェノール類)、アルカリ金属の、有機カルボン酸類との塩等の有機アルカリ金属化合物等が挙げられる。また、上記アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。これらアルカリ金属化合物のなかでも、セシウム化合物が好ましく、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが特に好ましい。
【0069】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0070】
先ず、原料調製工程として、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を使用し、原料の混合溶融液を調製する。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを使用し、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用する場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲である。
【0071】
次いで、重縮合工程として、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応を行う。エステル交換反応は、通常2段階以上、好ましくは3段〜7段の
多段方式で連続的に行われる。各槽の具体的な反応条件は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られるように適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、具合的には、反応温度が150〜320℃の範囲内、反応圧力が常圧〜減圧(0.01Torr:1.3Pa)、平均滞留時間が5〜150分の範囲内であることが好ましい。
【0072】
そして、多段方式の各反応器においては、重縮合反応の進行と共に副生するフェノールをより効果的に系外に除去するため、上記の反応条件内において、段階的に、より高温、より高真空に設定し、最終的には2Torr(266.6Pa)以下の減圧とする。これにより、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行うことができる。なお、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の色相等の品質低下を防止するため、上記の範囲内で、できるだけ低温かつ短滞留時間に設定することが好ましい。
【0073】
溶融重縮合は、バッチ式または連続式で行うことができるが、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、連続式が好ましい。
【0074】
また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂中のエステル交換触媒の失活剤としては、上記触媒を中和する化合物、例えば、硫黄含有酸性化合物またはその誘導体を使用することができる。
【0075】
エステル交換触媒に対する上記失活剤の使用量は、エステル交換触媒が含有するアルカリ金属に対し、通常0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲である。また、芳香族ポリカーボネート樹脂に対する上記失活剤の使用割合は、通常1〜100ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲内である。
【0076】
また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する目的で、上記芳香族ポリカーボネート樹脂に、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーを共重合させてもよい。これら芳香族ポリカーボネート樹脂は、単独で用いてもよく、適宜、二種以上を混合して用いてもよい。
【0077】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法として上記したようにエステル交換法を用いれば、末端OH基量が調節された芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。また、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン、DPC等のカーボネート結合性の化合物とを反応させることにより、耐熱性が高く、透明性に優れた芳香族ポリカーボネートを得ることができる。
【0078】
本実施の形態にかかる上記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、13,000〜17,500の範囲内であることが好ましく、15,500〜17,500の範囲内であることがより好ましく、16,000〜17,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0079】
上記芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、溶媒として塩化メチレンを使用し、温度20℃で測定された極限粘度[η]より換算した粘度平均分子量である。上記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が13,000未満であると、導光板としたときに、製品としての強度が不足し易い。また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が15,500以上であると、得られる導光板の高温高湿下での色度(x,y)の増加の抑制効果が高くなる。一方、上記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が17,500を超えると、成形温度を高くする必要が生じるため、得られる導光板の色相が悪化し易い。なお、粘度平均分子量の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0080】
上記の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、分子量調節剤の使用量を選択することにより製造することができる。すなわち、上記の粘度平均分子量よりも大きい分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂を得る場合に使用される量より多くの分子量調節剤を使用する。
【0081】
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した上記芳香族ポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、15,000〜40,000の範囲内であることが好ましく、30,000〜40,000の範囲内であることがより好ましく、32,000〜37,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0082】
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した上記芳香族ポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、6,000〜20,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜20,000の範囲内であることがより好ましく、12,000〜17,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0083】
上記重量平均分子量または数平均分子量が上記範囲よりも小さいと、製品としての強度が不足し易い。一方、上記重量平均分子量または数平均分子量が上記範囲よりも大きいと、成形温度を高くする必要が生じるため、得られる導光板の色相が悪化し易い。
【0084】
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した上記芳香族ポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、1.5〜2.7の範囲内であることが好ましく、1.8〜2.6の範囲内であることがより好ましい。上記Mw/Mn(分子量分布)が1.5未満の場合は、流動性が不足し易く、色相が悪化し易い。一方、2.7を超える場合は、耐加水分解性が低下し易い。なお、上記GPC測定については、後述する実施例において詳述する。
【0085】
本実施の形態にかかる上記芳香族ポリカーボネート樹脂としては、具体的には、例えばポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネートが挙げられる。
【0086】
上記芳香族ポリカーボネートの構造単位は、下記構造式(4)で表される。
【0087】
【化5】

【0088】
上記芳香族ポリカーボネートの加水分解後の分解物には、下記一般式(5)
【0089】
【化6】

【0090】
(式中、Zは、水素原子またはメチル基を表す)
で示される異種構造単位(サリチル酸フェニル構造)、一般式(6)
【0091】
【化7】

【0092】
(式中、Zは、水素原子またはメチル基を表す)
で示される異種構造単位(フェノキシ安息香酸構造)、構造式(7)
【0093】
【化8】

【0094】
で示される異種構造単位(キサントン構造)が少なくとも1種類含まれている。
【0095】
これら一般式(5)、一般式(6)、構造式(7)で表される異種構造単位は、何れも、芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解物中に存在する構造単位である。これら構造単位が加水分解される前の構造単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造過程(特にエステル交換反応過程)における副反応により、前記構造式(4)で表される構造単位の極一部が変換されて形成される。
【0096】
本実施の形態にかかる上記芳香族ポリカーボネートの加水分解後の分解物中に含まれる上記異種構造単位の総含有量は、3,500ppm未満であることが好ましく、3,200ppm未満であることがより好ましい。上記異種構造単位の含有量が3,500ppm以上であると、導光板の初期の色相が悪化し易い。
【0097】
また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂における重量平均分子量(Mw)が1,000未満の低分子量芳香族ポリカーボネート(共)重合体(低分子量体)の含有量は、2重量%以下であることが好ましい。上記条件を満足することにより、金型付着物や外観悪化(焼け)を抑制することができる。なお、低分子量芳香族ポリカーボネートの分子量は、GPCにより測定した、ポリカーボネート換算の重量平均分子量(Mw)を意味する。
【0098】
上記のような特定の分子量分布と低分子量体含有率を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、界面重合法による製造法では、分子量調節剤を特定の範囲の量で使用したり、分子量調節剤の添加時期を変更したり、反応条件(反応時間、反応温度等)を制御する方法により製造できる。具体的には、分子量調節剤の使用割合(芳香族ジヒドロキシ化合物100モルに対する割合)を7.0〜8.5モルの範囲としたり、ホスゲン化の後に分子量調節剤を添加したり、分子量調節剤をホスゲン化の前後に分割して添加したり、反応時間を2時間以内にしたり、反応温度を30℃以下にしたりする。なお、上記の方法の他、低分子量体の含有率を低下させる方法としては、アセトン等を使用したポリカーボネートの非溶剤沈殿法や非溶剤抽出法も適用可能である。
【0099】
また、溶融エステル交換法においては、炭酸ジエステル/芳香族ジヒドロキシ化合物とのモル比バランスを調節し、かつ触媒量を低く抑えることにより、溶融重縮合中に形成される分岐種を極力減らすことができる。その結果、特定の分子量分布と低分子量体含有率とを有する芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して炭酸ジエステルの使用割合(モル比)を1.10〜1.20の範囲とし、かつエステル交換触媒の使用量を芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−7〜1×10−6モルの範囲内とする方法が挙げられる。
【0100】
また、本実施の形態で用いられるリン系安定剤は、下記一般式(1)
【0101】
【化9】

【0102】
(式中、Rはアリール基またはアルキル基を表し、R、Rは各々独立してアリール基を表し、R、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、nは0または1を表す)
で示される化合物(亜リン酸エステル)である。
【0103】
上記リン系安定剤としては、例えば、一般式(1)中、Rで示される置換基が炭素数6〜27のアリール基または炭素数1〜20のアルキル基であり、R、Rで示される置換基が各々独立して炭素数6〜27のアリール基(但し、R、R、Rで示される置換基は互いに同一でも異なっていてもよい)であり、nで示される繰り返し単位が各々0または1である化合物が挙げられる。
【0104】
これらリン系安定剤の中でも、上記Rがアリール基、具体的には、炭素数6〜27のアリール基であるリン系安定剤が、耐加水分解性の観点から好ましい。また、これらリン系安定剤の中でも、R、Rで示されるアリール基が、下記一般式(8)
【0105】
【化10】

【0106】
(式中、R、Rは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す)
、一般式(9)
【0107】
【化11】

【0108】
(式中、R、Rは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す)
、または構造式(10)
【0109】
【化12】

【0110】
で示されるリン系安定剤が、耐加水分解性の観点から好ましい。
【0111】
また、これらリン系安定剤の中でも、R、Rで示されるアリール基が一般式(8)で示されるリン系安定剤がより好ましく、R、R、Rで示される置換基が各々一般式(8)で示されるリン系安定剤がさらに好ましい。このようなリン系安定剤としては、例えば、R、R、Rで示される置換基が2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基である、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトが挙げられる。このリン系安定剤(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト)としては、例えば、旭電化工業株式会社から「アデカスタブ2112」の商品名で市販されているもの、あるいは、チバスペシャリティケミカルより「イルガフォス168」の商品名で市販されているものを用いることができる。
【0112】
本実施の形態において、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における上記リン系安定剤の配合量は、上記芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.005〜0.2重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.15重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0113】
上記リン系安定剤の配合量が0.005重量部未満では色相や光線透過率の改善傾向が小さい傾向がある。逆に、上記リン系安定剤の配合量が0.2重量部を越えると、耐加水分解性が低下し易く、また、モールドデポジットが発生し、コスト的にも不利になる傾向がある。上記リン系安定剤は、単独で用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いても構わない。
【0114】
本実施の形態によれば、上記導光板の材料として、アクリル樹脂よりも耐熱性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することで、アクリル樹脂からなる従来の導光板と比較して耐熱性を向上させることができる。また、上記リン系安定剤を添加することで、短波長領域での光の透過率が改善され、車載用バックライトサイズの導光板として使用できるレベルの透明性を有する導光板を得ることができる。
【0115】
車載用バックライトサイズの導光板としては、車載における使用環境条件下での色度シフト(Δx,Δy)の値が、Δx,Δyともに0.02以下であることが好ましく、Δx,Δyともに0.01以下であることがより好ましい。
【0116】
本実施の形態によれば、上記リン系安定剤を添加することで、車載に要求される耐使用環境条件における高温高湿下での色度(x,y)の増加(色度シフト)、より具体的には、上記高温高湿環境下での暴露前後の黄変(色度シフト)並びに上記暴露による色度の増加に伴い、導光板の入光部から受光した光が導光する間に短波長領域の光が吸収されて生じる黄変、すなわち光路方向の色度シフトを抑えることができ、車載用バックライト用の導光板として実用可能な導光板を提供することができる。
【0117】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、成形時の離型性改良の目的で、さらに離型剤が配合されていることが好ましい。上記離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素、ポリシロキサン系シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。
【0118】
上記脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の、脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸が挙げられる。ここで、脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。脂肪族カルボン酸としては、炭素数6〜36のモノ−またはジ−カルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
【0119】
上記脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、上記の脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルと反応してエステルを形成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の、1価アルコールまたは多価アルコールが挙げられる。これらアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらアルコールの中では、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールがさらに好ましい。ここで、脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0120】
上記アルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0121】
上記のような脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として、脂肪族カルボン酸およびアルコールの少なくとも一方を含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0122】
また、脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜蝋(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0123】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス又は炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマーが挙げられる。ここで、脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これら脂肪族炭化水素は部分酸化されていてもよい。
【0124】
ポリシロキサン系シリコーンオイルの25℃における動粘度は、通常1〜200cSt、好ましくは5〜100cSt、より好ましくは10〜50cStである。また、ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、少なくとも側鎖にフェニル基を有するもの、分岐シロキサン構造を有するものが好ましく、単一の化合物であっても、混合物であってもよい。混合物の場合、少なくとも側鎖にフェニル基を有するポリオルガノシロキサンと、少なくとも分岐シロキサン構造を有するポリオルガノシロキサンとを併用したものも好ましい。このようなポリシロキサン系シリコーンオイルは、慣用の有機反応によって容易に得ることができる。
【0125】
ポリシロキサン系シリコーンオイルの添加効果としては、成形時の離型改良効果に加え、導光板の透明性、輝度、色相をより向上させる効果が挙げられる。これらの効果は、動粘度が200cSt以下のポリシロキサン系シリコーンオイルにおいて顕著である。
【0126】
本実施の形態において、離型剤としては、前記脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれた少なくとも一種が好ましい。離型性、透明性、輝度、色相の観点から、ポリシロキサン系シリコーンオイルが特に好ましい。
【0127】
離型剤の配合率は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、通常2重量部以下、好ましくは1重量部以下である。2重量部を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。
【0128】
また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、安定剤および離型剤以外のその他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、蛍光増白剤、染顔料、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、相溶化剤、抗菌剤、充填剤等が配合されていてもよい。これら、その他の添加剤の配合量は、添加剤の種類にも
よるが、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、10重量部以下とすることが好ましく、5重量部以下とすることがより好ましい。
【0129】
また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。但し、上記他の樹脂の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、40重量部以下とすることが好ましく、30重量部以下とすることがより好ましい。
【0130】
また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中のダスト量は、30,000個以下であることが好ましい。上記ダスト量が30,000個を超えると、光線透過率および耐加水分解性が低下し易い。
【0131】
なお、本実施の形態において、上記ダストとは、原料の芳香族ポリカーボネート樹脂および成形工程等から混入する埃等の異物を示す。上記ダスト量は、光散乱法および光遮断法によって測定することができる。
【0132】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されず、最終成形品を成形する直前までの任意の段階で、各成分を一括または分割して配合し、溶融混練する方法が挙げられる。
【0133】
配合方法は、当業者に周知の種々の方法を採用することができ、例えば、タンブラー、ヘンシェルミキサー等を使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機ホッパーに供給して混合する方法等が挙げられる。
【0134】
混練方法としては、単軸押出機(一軸混練押出機)、二軸押出機(二軸混練押出機)、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー等の混練機を使用する方法が挙げられる。また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂以外の成分は、予備混合せずに、溶融混練時に、押出機等の途中から供給してもよい。
【0135】
例えば、上記芳香族ポリカーボネート樹脂と、上記リン系安定剤と、必要に応じて配合される離型剤等の上記した各種添加成分とを、タンブラー、ヘンシェルミキサー等の各種混合機を用い予め混合した後、上記した混練機で溶融混練することによって、本実施の形態にかかる上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0136】
また、各成分を予め混合せずに、或いは一部の成分のみ予め混合してフィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練することにより上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることもできる。すなわち、例えば、予め一部の成分を溶融混練して中間組成物を製造した後、その他の成分を配合し、溶融混練して樹脂組成物を製造することもできる。
【0137】
さらに、一部の成分を溶融混練してマスターバッチを製造し、得られたマスターバッチとその他の成分とを溶融混練し、目的の樹脂組成物を得てもよい。
【0138】
また、上記リン系安定剤およびその他の添加剤の添加方法としては、芳香族ポリカーボネートにこれら添加剤を直接混合(混練)することもできるが、適当な溶媒でこれら添加剤を溶解し、または、少量の芳香族ポリカーボネート樹脂または他の樹脂等で作成した高濃度の添加剤のマスターバッチとして添加することもできる。
【0139】
上記したように、本実施の形態において、上記各成分の添加時期並びに混合・混練方法は、特に限定されるものではないが、上記芳香族ポリカーボネート樹脂と、上記リン系安定剤との混練は、窒素雰囲気下にて行われることが好ましい。
【0140】
この場合、上記混練機としては、原料供給部にベントが設けられている押出機が好ましい。ベント数は制限されないが、通常、1〜10段のベントが使用される。
【0141】
上記押出機としては、単軸押出機、二軸押出機の何れであってもよいが、二軸押出機がより好適であり、噛み合い型二軸押出機がより好適である。なお、回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。
【0142】
具体的には、例えば、上記各成分(原料)をブレンドした後、日本製鋼所製の「TEX30HSST」等のベント付二軸押出機を使用し、該ベント付二軸押出機の原料供給部を窒素置換(窒素シール)して溶融混練する。
【0143】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂と、上記リン系安定剤との混練を窒素雰囲気下にて行う場合の機械的設定条件としては、従来と同様であり、特に限定されるものではないが、例えば、シリンダー温度としては、色相安定性の理由から、200℃〜300℃の範囲内であることが好ましい。
【0144】
上記したように上記芳香族ポリカーボネート樹脂と、上記リン系安定剤との混練を、窒素雰囲気下で行うことで、上記色度シフトの改善効果をさらに高めることができる。
【0145】
本実施の形態によれば、このように、上記芳香族ポリカーボネート樹脂と、上記リン系安定剤との混練を、窒素雰囲気下で行うことで、ガスクロマトグラフィー(GC)による上記リン系安定剤に由来する成分の検出量が、上記リン系安定剤の仕込み量の85重量%以下の導光板を得ることができる。上記リン系安定剤に由来する成分の検出量が上記リン系安定剤の仕込み量の85重量%以下である場合、同じリン系安定剤を用いた場合と比較して、導光板の初期の色度(x,y)を小さくすることができる。このため、より少量のリン系安定剤の添加で色相や光線透過率の改善が可能となる。
【0146】
なお、上記混練を窒素雰囲気下で行うことで、上記リン系安定剤に由来する成分の検出量が、上記リン系安定剤の仕込み量の85重量%以下となるという事実は、上記混練において系内に窒素を導入することにより、上記芳香族ポリカーボネート樹脂に上記リン系安定剤に由来する成分が、上記リン系安定剤の仕込み量の15重合%以上結合したことを意味すると解される。つまり、本実施の形態によれば、上記芳香族ポリカーボネート樹脂と、上記リン系安定剤との混練を、窒素雰囲気下で行うことにより、上記芳香族ポリカーボネート樹脂に特定のリン系安定剤に由来する成分が結合し、この結果、初期の着色(色度)を抑えることができるとともに、高温高湿条件下での色度シフトの改善効果に優れた導光板を得ることができると考えられる。
【0147】
本実施の形態において、上記リン系安定剤に由来する成分とは、具体的に、リン系安定剤そのもの、リン系安定剤の酸化物、リン系安定剤の分解物およびリン系安定剤製造時の副生成物である。なお、GCによる上記リン系安定剤に由来する成分の検出方法については、後述する実施例において詳述する。
【0148】
なお、GCによる上記リン系安定剤に由来する成分の検出は、後述する実施例に示すように導光板そのものをジクロロメタンで溶解させることにより行うことができるが、上記芳香族ポリカーボネート組成物を溶融混練することによりペレット化したものを用いて行
っても構わない。
【0149】
以上のように、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記溶融混練によって、必要に応じて例えば一旦ペレットした後、公知の成形方法により成形される。本実施の形態にかかる導光板は、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形することによって得ることができる。
【0150】
上記導光板の成形方法としては、従来、導光板の成形方法として知られている公知の各種成形方法を用いることができる。上記成形方法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法等が挙げられるが、好ましくは射出成形法である。
【0151】
なお、上記導光板の成形条件は、成形方法に応じて従来と同様に設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0152】
図2および図3に、本実施の形態にかかる導光板13の形状の一例を示す。上記導光板13の形状としては、図2に示すように、厚肉部と薄肉部とを有し、一方の主面が傾斜面である楔状であってもよく、図3に示すように、平板状であってもよい。何れの場合にも、上記導光板13の両主面もしくは一方の主面には、配光特性(導光特性)を制御するための加工もしくは処理が施されていることが好ましい。言い換えれば、上記導光板13の両主面もしくは一方の主面には、上記出光面13aから光を外部に面放射させるための加工もしくは処理が施されていることが好ましい。
【0153】
このような加工もしくは処理としては、例えば、プリズム加工、ドット加工、シボ加工、印刷処理等が挙げられる。
【0154】
なお、図2および図3では、上記加工もしくは処理によって、導光板13の出光面13aおよびその裏面13bに凹凸パターン13e(例えば、プリズム形状や円柱状のパターン)が設けられている構成について図示したが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。上記凹凸パターン13eは、上記導光板13の主面に設けられてさえいえれば、上記導光板13の出光面13aおよびその裏面13bのうち少なくとも一方に設けられていてもよく、上記導光板13の内部に設けられていても構わない。
【0155】
上記凹凸パターン13eは、例えば、射出成形の際、金型の一部の表面に形成された凹凸部を転写することによって付与することができる。なお、凹凸部は金型の一部である入れ子に形成する方法が簡便で好ましい。
【0156】
射出成形法により薄肉の導光板を製造する方法としては、例えば、一般の鋼材金型を使用する方法、低熱伝導性材料(セラミックスやポリイミド等の樹脂または樹脂組成物)を金型の一部に使用した断熱金型を使用する方法、金型表面付近を選択的に急加熱急冷却する方法等が挙げられる。例えば、ジルコニアセラミックスを使用した断熱金型を使用する方法は、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の急冷による固化層の形成を回避することができるため、キャビティ内の厚みが非常に薄い場合であっても、一般の鋼材金型や他の方法と比べ、キャビティ内に熱可塑性樹脂を充填することが容易であり、微細な凹凸パターン13eの転写性に優れている。
【0157】
また、上記凹凸パターン13eの密度は一定であってもよく、光源からの距離(つまり、導光板13の入光端面13cからの距離)、言い換えれば、上記導光板13の出光面13aにおける発光量に応じて異なっていてもよい。例えば、光源からの距離が大きくなるにしたがって上記凹凸パターン13eの密度または面積を増加させることで、出光面13aにおける輝度の均一化を図ることができる。
【0158】
このようにして得られた導光板(導光体)は、車載用のバックライトにおける導光板として使用される。図1に、本実施形態にかかる導光板を用いたバックライトを備えた液晶表示装置の一例を示す。図1は、本実施形態にかかる液晶表示装置の概略構成を示す断面図である。
【0159】
図1に示すように、本実施形態にかかる液晶表示装置30は、バックライト10(照明装置)と、バックライト10に対向配置される液晶パネル20とを備えている。
【0160】
なお、上記液晶パネル20の構成は、従来の液晶表示装置に使用される一般的な液晶パネルと同様であるため、その詳細な説明並びに図示を省略する。液晶パネル20の構成は特に限定されず、適宜公知の液晶パネルを適用することができる。上記液晶パネル20は、例えば、アクティブマトリクス基板21(アレイ基板)とカラーフィルタ基板22(対向基板)との間に図示しない液晶層が挟持された液晶セル23を備え、該液晶セル23の外側、つまり、該液晶セル23における上記液晶層とは反対側に、上記液晶セル23を挟持する下側偏光板24および上側偏光板25が設けられている構成を有している。
【0161】
また、上記液晶パネル20は、駆動回路としてのソースドライバ26および図示しないゲートドライバを備えている。なお、ソースドライバ26およびゲートドライバは、図1に示すように液晶パネル20を構成する基板上に備えられていてもよく、液晶パネル20の外部に備えられていてもよい。
【0162】
なお、上記液晶セル23と上記下側偏光板24および上側偏光板4との間には、各々、表示の視野角特性を向上するために、必要に応じて図示しない位相差フィルム(位相差板)が設けられていてもよい。
【0163】
次に、上記液晶表示装置30に備えられたバックライト10の構成について説明する。
【0164】
上記バックライト10は、液晶パネル20の背後(表示面とは反対の側)に配置されている。図1に示すように、上記バックライト10は、例えば、バックライトケース11内に、光源12、導光板13、反射シート14、光学シート15、並びに、上記光源12を点灯駆動するためのドライバが実装された基板16等を備えた構成を有している。
【0165】
上記バックライトケース11は、その周囲が、バックライトフレーム31にて支持されているとともに、例えば両面テープ32によって、上記液晶パネル20に固定されている。バックライトフレーム31は、その周囲が、ベゼル33にて支持されており、ベゼル33内には、上記バックライトケース11および液晶パネル20が収容されている。
【0166】
上記バックライト10は、図1に示すように、導光板13の一端面(入光端面13c)に面して光源12が設けられ、該端面から入射した光を一方の主面(盤面)から出射(面放射)するサイドライト型の面光源ユニットであり、上記光源12は、上記基板16を介して、上記バックライトケースの内壁に固定されている。
【0167】
上記光源12としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、冷陰極管(CCFT:Cold Cathode fluorescent Tube)、蛍光ランプ、レーザダイオード、有機エレクトロルミネセンス(EL:electroluminescence)等の自己発光体等からなり、上記導光板13の入光端面13cに面して、例えば複数並んで設けられている。そのなかでも、上記光源12としては、LED、CCFTが好適に用いられる。
【0168】
後述する実施例に示すように本発明の効果は、上記光源12の種類には依存しない。こ
のため、上記光源12は、LEDであってもよく、CCFTであってもよく、上記した各種光源を使用することができる。しかしながら、CCFTよりも青色成分の多いLCD発の方が、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0169】
また、上記光学シート15は、上記導光板13の出光面13a(発光面)上に重ねて配置された複数のシートによって構成され、上記導光板13から出射された光を均一化するとともに集光して上記液晶パネル20に照射するようになっている。
【0170】
このような光学シート15は、例えば、上記液晶パネル20に均一な光を照射するための拡散板、光を集光しつつ散乱させる拡散シート、光を集光し正面方向の輝度を向上させるレンズシート(集光シート)、光の一方の偏光成分(片偏光成分)を反射し、他方の偏光成分(片偏光成分)を透過することによって液晶表示装置30の輝度を向上させる偏光反射シート等によって構成される。これらは、液晶表示装置30の価格や性能によって適宜組み合わせて使用される。
【0171】
本実施の形態にかかる光学シート15は、一例として、導光板13側から、拡散シート15a、レンズシート15b、偏光反射シート15cが、この順に積層されている構成を有している。
【0172】
また、上記導光板13の裏面13b(出光面13aとは反対側の面)には、上記導光板13から照射される光の一部と上記光学シート15によって再帰される光とを反射するために、上記反射シート14が設けられている。
【0173】
上記の構成により、上記光源12から出射された光は、散乱作用と反射作用とを受けながら導光板13内を進み、出光面13aから出射し、光学シート15を通って液晶パネル20に到達し、該液晶パネルにおいて表示が行われる。
【0174】
なお、上記導光板13の形状としては、図1および図2に示すように楔状であってもよく、図3に示すように平板状であってもよいが、楔状の方が、本発明の効果をより顕著に得ることができる。この理由は以下の通りである。
【0175】
導光板の色度シフトは、高温高湿条件下で導光板13内に水が侵入し、芳香族ポリカーボネート樹脂が加水分解を受けることによって発現する現象である。加水分解は表面から進行するため、色度シフトは、導光板13が薄いほど高温高湿条件下での暴露による影響を受け易い。このため、楔形状の方が、平板状よりも高温高湿による影響を受け易く、条件的により厳しい。しかしながら、本発明は、高温高湿条件下での色度シフトを改善することができるので、導光板13が薄いほど従来との差異は顕著なものとなる。したがって、楔状の方が本発明の効果をより顕著に得ることができる。特に、本発明によれば、上記導光板13が楔状である場合には、上記入光端面13cとは反対側の端面13d(薄肉部)の厚みd2が1.3mm以下である場合に、本発明の効果をより顕著に得ることができる。また、上記した理由により、楔形状の導光板13によって色度シフトの抑制効果が得られれば、平板状の導光板13においても色度シフトの抑制効果を得ることができる。
【0176】
また、前記したように、光路方向の色度シフトは、導光板13の入光部(入光端面13c)から受光した光が導光板13内を導光する間に短波長領域の光が吸収されて生じる。このため、光路方向の色度シフトは、入光部からの光路方向の距離、つまり、導光板13の入光端面13cに直交する方向における入光端面13cからの距離が長いほど大きく、上記暴露による導光板13の黄変の影響を受け易い。このため、上記導光板13は、上記入光端面13cと該入光端面13cとは反対側の端面13dとの間の距離が50mm以上の場合に、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0177】
上記したように、本発明にかかる導光板は、車載用バックライト用の導光板であり、例えば自動車に搭載されたインストルメントパネル等に組み込まれたバックライト用の導光板として好適に使用することができる。また、上記導光板は、前記したように、高温高湿条件下での暴露による色度シフトが小さく、例えば車載用のナビゲーションシステムやテレビジョン受像機等の車載用液晶表示装置におけるバックライトに好適に用いることができる。
【実施例】
【0178】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。以下の実施例および比較例で使用した原料並びに評価方法は次の通りである。
【0179】
<芳香族ポリカーボネート樹脂>
〔製造例1〕
8重量%水酸化ナトリウム水溶液34Lに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)8.00kg(35mol)とハイドロサルファイト50gとを添加し、溶解させた後、さらにジクロロメタン11Lを加え、撹拌しながら溶液温度を20℃に保ち、ホスゲン4.0kgを30分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、8重量%水酸化ナトリウム水溶液6L、ジクロロメタン14Lおよびp−tert−ブチルフェノール329g(2.2mol)を加え、激しく攪拌させて乳化させた後、重合触媒として10mlのトリエチルアミンを加え、約1時間重合させた。
【0180】
次いで、得られた重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで純水で水洗を繰り返した。この精製されたポリカーボネート溶液から有機溶媒を蒸発留去することにより、粉末状の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。
【0181】
この芳香族ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量16,500、Mw=35,000、Mn=15,600、Mw/Mn=2.2、末端OH基量110ppm、異種構造単位0ppmであった(以下PC−1と称す)。
【0182】
〔製造例2〕
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールA(BPA)とジフェニルカーボネートとから混合調整した溶融液を、220℃、1.33×10Paに制御した第1竪型攪拌重合槽内に連続供給し、触媒として、炭酸セシウムを水溶液としてBPA1モルに対し、1.1μmolの濃度となる様に連続供給した。
【0183】
槽底より排出された重合液は、引き続き、第2および第3の竪型攪拌重合槽並びに第4の横型攪拌重合槽に逐次連続供給し、第4の横型攪拌重合槽の底部のポリマー排出口より抜出した。各反応槽の条件は、反応の進行とともに高温かつ高真空となるように条件設定した。また、第4の横型攪拌重合槽では、240〜280℃、13〜264Paに制御し、同時に副生するフェノールの除去を行いながら重合を行った。
【0184】
重合終了後、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融状態のままで2軸押出機に導入し、p−トルエンスルホン酸ブチル4.4μmolを連続して混練し、脱気後、ストランド状とし、カッターで切断してペレット化した。
【0185】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量16,000、Mw=33,100、Mn=13,100、Mw/Mn=2.5、末端ヒドロキシル基量430ppm、異種構造単位3,000ppmであった(以下PC−2と称す)。
【0186】
〔製造例3〕
製造例1において、p−tert−ブチルフェノールの添加量を404g(2.7mol)に変更した以外は、製造例1と同様の反応・操作を行って芳香族ポリカーボネート樹脂を製造した。
【0187】
この芳香族ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量14,000、Mw=15,600、Mn=6,500、Mw/Mn=2.4、末端ヒドロキシル基量120ppm、異種構造単位0ppmであった(以下PC−3と称す)。
【0188】
<安定化剤>
安定化剤−1:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト(旭電化工業社製、商品名「アデカスタブ2112」)
比較用安定化剤−2:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(旭電化工業社製、商品名「アデカスタブPEP−36」)
<離型剤>
グリセリンモノステアレート(理研ビタミン社製、商品名「リケマールS−100A」)
また、以下の実施例および比較例で使用した芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量、Mw、Mn、Mw/Mn、Mw<1,000の低分子量体の含有率、異種構造単位の含有率は以下の方法により測定した。
【0189】
<芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量>
ウベローデ粘度計を使用し、塩化メチレン中、20℃の極限粘度[η]を測定し、下記式により求めた。
【0190】
【数1】

【0191】
<芳香族ポリカーボネート樹脂のMw、Mn、Mw/Mn>
先ず、標準ポリマーとしてポリスチレン(PS)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、平均分子量の測定を行った。この測定条件を以下に示す。
【0192】
測定装置:Waters社「Aliiance」
カラム:昭和電工製「ShodexK−805L」(2本)
検出器:UV検出器(245nm)
溶離液:クロロホルム
次いで、GPC測定後、ユニバーサルキャリブレーション法により溶出時間とポリカーボネート(PC)の分子量との関係を求めて検量線とした。PCの溶出曲線(クロマトグラム)を検量線の場合と同一の条件で測定し、溶出時間(分子量)とその溶出時間のピーク面積(分子数)とから各平均分子量を求めた。
【0193】
数平均分子量および重量平均分子量は、分子量Miの分子数をNiとすると、以下のように表される。
【0194】
【数2】

【0195】
換算式としては以下の計算式を使用した。計算式中、MPCはPCの分子量、MPSはPSの分子量を示す。計算式は、以下の極限粘度[η]と分子量Mの関係を表したMark−Houwinkの式から求めた。但し、K、αの値は、PSの場合、K=1.11×10−4、α=0.725とし、PCの場合、K=3.89×10−4、α=0.700の値を使用した。
【0196】
【数3】

【0197】
そして、PCの溶出曲線(クロマトグラム)を、検量線の場合と同一の条件で測定し、溶出時間(分子量)とその溶出時間のピーク面積(分子数に比例)とから各平均分子量を求めた。
【0198】
<異種構造単位の含有量>
芳香族ポリカーボネート樹脂1gを塩化メチレン100mlに溶解した後、28重量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を18ml、メタノール80mlを加え、さらに純水25mlを添加した後、室温で2時間攪拌して完全に加水分解した。その後、1N塩酸を加えて中和し、塩化メチレン層を分離して加水分解物を得た。
【0199】
アセトニトリル10mlに上記の加水分解物0.05gを溶解し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定を行った。測定は、溶離液としてアセトニトリルと10mM酢酸アンモニウム水溶液からなる混合溶媒を使用し、アセトニトリル/10mM酢酸アンモニウム水溶液の比率20/80〜80/20までグラジュエントをかけ、カラム温度40℃、検出波長280nmの条件で行った。測定には、株式会社島津製作所製のUV検出器「SPD−6A」を使用した。
【0200】
前記一般式(5)、一般式(6)、構造式(7)で各々示される異種構造単位の同定には、Agilent株式会社製のLC−MS(「Agilent−100」)および日本電子株式会社製のNMR(「AL−400」)を用いた。これら異種構造単位の含有量は、ビスフェノールAの検量線を作成し、ビスフェノールAのピーク面積に対する各ピーク面積より算出した。
【0201】
<色度(x,y)、色度シフト(Δx,Δy)>
先ず、試料となる導光板13を、評価用のバックライトに組み込んで色度(x,y)(色度分布)を測定した。次に、この導光板13を、単体でエージング槽内に投入して1,
000時間放置(保存)することによりエージングした。次いで、この導光板13を、評価用のバックライトに組み込んで、上記導光板13の上方約50cmの位置に配設された色度計にて、その色度(x,y)(色度分布)を測定し、エージング前の導光板13の色度に対するエージング後の導光板13の色度の差分を、色度xおよび色度yについて各々求めることにより、色度xの色度シフトΔxおよび色度yの色度シフトΔyを算出した。この測定条件を以下に示す。
【0202】
エージング槽:エスペック株式会社製「SH−661」
エージング(暴露)条件:温度80℃、相対湿度(RH)95%、1,000時間
色度測定条件:温度24℃、湿度54%
色度測定装置(色度計):コニカミノルタセンシング株式会社製「CA−1500」
なお、評価用バックライトには、図1に示す構成を有するバックライトを使用した。なお、特に言及しない限りは、光源にはLEDを使用した。光源にCCFTを使用した場合の色度は、上記評価用バックライトのLEDを取り外し、代わりに、CCFTを組み込んで測定した。
【0203】
<リン系安定剤由来成分量、リン系安定剤由来成分の検出量/仕込み量>
先ず、試料となる成形品(導光板13もしくはペレット)を、ジクロロメタンで溶解した後、ヘキサンで析出させて沈殿させた。なお、以下の実施例および比較例では、簡易化のためにペレットを使用した。次に、この上澄み(ヘキサン可溶部)を、GCにより定量することで、リン系安定剤に由来する成分量の検出を行った。そして、リン系安定剤の仕込み量に対するGCにより検出された上記リン系安定剤に由来する成分量の割合を求めることにより、リン系安定剤由来成分の検出量/仕込み量とした。GC条件を以下に示す。
【0204】
検出装置:株式会社島津製作所製「GC−2014」
カラム:Restek社製「Rtx−1」、0.32mmid×15m
測定温度:カラム 100℃→350℃(10℃/分)
注入口 285℃
検出器 351℃
キャリヤーガス:ヘリウム 4ml/分
なお、以下の実施例において、リン系安定剤に由来する成分とは、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスフェート、ジ−tert−ブチルフェノールであった。
【0205】
〔実施例1〜4〕
表1に示す割合で各原料をブレンドした後、スクリュー径32mmのベント付二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30HSST」)を使用し、該ベント付二軸押出機の原料供給部を窒素置換(窒素シール)してシリンダー温度240℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを作成した。このペレットを用いて、試料となる導光板13を作製した。試料となる導光板13の大きさ並びに形状は以下の通りである。
【0206】
形状:楔状
出光面の大きさ:96mm×155mm
入光端面13c(厚肉部)の厚みd1:1.8mm
入光端面13cとは反対側の端面13d(薄肉部)の厚みd2:1mm
〔実施例5および比較例1〜2〕
表1に示す割合で各原料をブレンドした後、上記ベント付二軸押出機の原料供給部を窒素置換しなかった以外は、実施例1〜4と同じ条件でペレットを作成した。次に、得られたペレットを用いて、実施例1〜4と同じ条件で導光板13を作製した。
【0207】
実施例および比較例で作製した導光板13を評価用のバックライトに組み込んだときの導光板13の出光面13aにおける以下の測定ポイントの色度(x,y)および色度シフト、並びに、リン系安定剤由来成分の検出量/仕込み量を測定した結果を、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の組成(配合)と併せて表1に示す。
【0208】
なお、測定ポイントは、試料となる導光板13の入光端面13cから、該入光端面13cに直交する方向に80mm離間し、かつ、入光端面13cに直交する方向に沿った各端面から等距離にある位置とした。
【0209】
以下、試料となる導光板13の入光端面13cに直交する方向における入光端面13c(入光部)からの距離(入光部からの光路方向の距離)を、単に「入光部からの距離」と記す。また、特に言及しない限り、測定位置は、入光端面13cに直交する方向に沿った各端面の中央線上の位置(つまり、入光端面13cに直交する方向に沿った各端面から等距離にある位置)とする。また、表1において、「初期」並びに「湿熱試験後」とは、各々、前記エージング前、エージング後を意味する。
【0210】
【表1】

【0211】
また、色度シフトの許容範囲を、以下の方法により測定した。
【0212】
<色度シフトの許容範囲>
比較例1で得られた導光板13を評価用のバックライトに組み込み、その発光面上に、
評価用の液晶パネルを搭載し、目視で、入光部(導光板13の入光端面13c)から入光端面13cに直交する方向にどの程度の距離まで離間しても表示に違和感がないか確認を行い、その統計により、表示に違和感が生じる境界点を特定した。なお、境界点は、入光端面13cに直交する方向に沿った各端面の中央線上の位置(つまり、入光端面13cに直交する方向に沿った各端面から等距離にある位置)とした。境界点は、上記液晶パネルの表示エリアの中央から、平面視でやや光源よりの位置であった。
【0213】
次いで、上記液晶パネルを外し、バックライト上の色度分布を測定し、導光板13の出光面13aにおける、上記境界点と入光部(入光端面13c)との色度差を算出した。上記境界点における色度と入光部との色度との差は、座標x、座標yともに0.02であっ。従って、色度シフト(Δx,Δy)の許容範囲は、何れも0.02であることが判った。上記液晶パネル上の色度xおよび色度y、並びに、上記バックライト(BL)上の色度xおよび色度yと、境界点との関係を、各々、図4(a)〜(d)に示す。
【0214】
<入光部からの距離と色度シフトとの関係>
また、実施例1、実施例2および比較例1で得られた各導光板13を用いて、入光部(入光端面13c)からの距離を種々変更することにより、入光部からの距離と色度シフトとの関係を調べた。この結果を表2に示す。また、実施例1および比較例1で得られた各導光板13の入光部からの距離と、色度x、色度yとの関係を、各々、図5、図6に示す。また、実施例1で得られた導光板13の色度シフト(Δx,Δy)を図7に、実施例1で得られた導光板13の色度シフト(Δx,Δy)と比較例1で得られた導光板13の色度シフト(Δx,Δy)とを比較した結果を図8に示す。
【0215】
なお、入光部からの距離が28mmにおける測定ポイントは、4.3型のバックライトの中央部に相当する。また、入光部からの距離が48mmにおける測定ポイントは、7.0型のバックライトの中央部に相当する。また、入光部からの距離が68mmにおける測定ポイントは、8.0型のバックライトの中央部に相当する。なお、表2および図5〜図6において、「投入前」並びに「1000H」とは、各々、前記エージング前(エージング槽への導光板13の投入前)、1,000時間エージング後を意味する。
【0216】
【表2】

【0217】
<光源の種類と色度シフトとの関係>
また、実施例1および比較例1で得られた各導光板13を用いて、光源12としてLED、CCFTを各々使用したときの光源の種類と色度シフト(Δx,Δy)との関係を調
べた。図9に、実施例1および比較例1で得られた各導光板13の色度シフトΔxと、導光板13の入光部からの距離と、光源の種類との関係を示す。また、図10に、実施例1および比較例1で得られた各導光板13の色度シフトΔyと、導光板13の入光部からの距離と、光源の種類との関係を示す。
【0218】
また、図11に、LEDとCCFTとにおける波長と分光放射輝度との関係を各々示す。なお、分光放射輝度の測定には、株式会社トプコン製の「SR−2」を使用した。図11中、分光放射輝度は、各々の光源を使用したときのピーク値を100%として示している。
【0219】
以上の結果から判るように、導光板13を、80℃、90%RH以上の高温高湿環境で暴露すると、例えば表1、表2および図5〜図10に示すように、色度xおよび色度yともに増加(黄変)し、色度シフトが生じる。特に、色度シフトは、導光板13の入光部から離れるに従って積算され、リン系安定剤として、亜リン酸エステルではあっても前記一般式(1)で示される亜リン酸エステルとは異なる亜リン酸エステルを使用した導光板13(比較例)では、入射部から50mm離れると許容することができなくなる。
【0220】
しかしながら、本発明によれば、例えば表1および表2において実施例1〜5と比較例2とから判るように、添加剤を使用しない場合(比較例2)よりも初期の色度(x,y)が小さく、透明性に優れた導光板を得ることができるとともに、本実施例で得られた導光板は、表1、表2および図5〜図10に示すように、色度シフト(Δx,Δy)が何れもΔx≦0.01、かつ、Δy≦0.01の条件を満足するとともに色度シフト(Δx,Δy)を大幅に低減(改善)させることができることが判る。また、表1に示す結果から、GCによる上記リン系安定剤に由来する成分の検出量が、上記リン系安定剤の仕込み量の85重量%以下である場合、初期の着色(色度)を抑えることができるとともに、高温高湿条件下での色度シフトの改善効果に優れた導光板を得ることができることが判る。
【0221】
また、例えば図5および図6から判るように、上記比較例で得られた導光板13では、80℃、90%RH以上の高温高湿環境で暴露すると、出光面13aにおける入光部近傍では青色(波長400nm〜500nm)の分光透過率が上がり、出射光が分光として青色にシフトする。このことは、出光面13aにおける入光部とは反対側の他端における色度差を際立たせる一因となる。
【0222】
しかしながら、本発明によれば、例えば図5〜図8から判るように、上記比較例における導光板13に見られるような、入光部近傍での青色へのシフトは殆ど見られない。このため、上記問題が生じず、導光板13の入光端面13cに直交する方向における色度差を大幅に改善することができる。
【0223】
また、図9および図10から判るように、本発明の導光板13の効果は、光源の種類に依存しないことが判った。なお、LEDと比較するとCCFTでは、入光部からの距離が48mm以上のときの色度増加が大きく、28mm未満での色度低下は少なかったが、この結果は、図11に示すようにLEDとCCFTとの分光放射の違いによるものと判断される。
【0224】
また、図9および図10に示す結果から、本発明の効果は、CCFTより青色成分の多い擬似白色LED(通常白色LEDと称される青色励起の黄色蛍光体)の方が大きいことが判る。
【0225】
以上のように、本発明にかかる導光板13は、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなることで、透明性、耐熱性に優れ、かつ車載に要求される耐使用環境条件における
高温高湿下での色度(x,y)の増加が小さい。このため、車載用バックライト用の導光板として好適であり、かつ、芳香族ポリカーボネート樹脂を用いた車載用バックライト用の導光板としては初めて実用化が可能な導光板を提供することができるものである。
【0226】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0227】
本発明にかかる導光板は、車載用バックライト用の導光板であり、例えば自動車に搭載されたインストルメントパネル等に組み込まれたバックライト用の導光板として好適に使用することができる。また、上記導光板は、高温高湿条件下での暴露による色度シフトが小さく、例えば車載用のナビゲーションシステムやテレビジョン受像機等の車載用液晶表示装置におけるバックライトに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】本発明の実施の一形態にかかる液晶表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の一形態にかかる楔状の導光板の形状の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の一形態にかかる平板状の導光板の形状の一例を示す断面図である。
【図4】(a)は、液晶パネル上の色度xと、表示に違和感が生じる境界点との関係を示す図であり、(b)は、液晶パネル上の色度yと、表示に違和感が生じる境界点との関係を示す図であり、(c)は、バックライト上の色度xと、表示に違和感が生じる境界点との関係を示す図であり、(d)は、バックライト上の色度yと、表示に違和感が生じる境界点との関係を示す図である。
【図5】実施例1および比較例1で得られた各導光板の入光部からの距離と、色度xとの関係を示すグラフである。
【図6】実施例1および比較例1で得られた各導光板の入光部からの距離と、色度yとの関係を示すグラフである。
【図7】実施例1で得られた導光板の色度シフト(Δx,Δy)を示すグラフである。
【図8】実施例1で得られた導光板の色度シフト(Δx,Δy)と比較例1で得られた導光板の色度シフト(Δx,Δy)とを比較した結果を示すグラフである。
【図9】実施例1および比較例1で得られた各導光板の色度シフトΔxと、導光板の入光部からの距離と、光源の種類との関係を示すグラフである。
【図10】実施例1および比較例1で得られた各導光板の色度シフトΔyと、導光板の入光部からの距離と、光源の種類との関係を示すグラフである。
【図11】LEDとCCFTとにおける波長と分光放射輝度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0229】
10 バックライト
11 バックライトケース
12 光源
13 導光板
13a 出光面
13b 裏面
13c 入光端面
13d 端面
13e 凹凸パターン
14 反射シート
15 光学シート
15a 拡散シート
15b レンズシート
15c 偏光反射シート
16 基板
20 液晶パネル
21 アクティブマトリクス基板
22 カラーフィルタ基板
23 液晶セル
24 下側偏光板
25 上側偏光板
26 ソースドライバ
30 液晶表示装置
31 バックライトフレーム
32 両面テープ
33 ベゼル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂と、一般式(1)
【化1】

(式中、Rはアリール基またはアルキル基を表し、R、Rは各々独立してアリール基を表し、R、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、nは0または1を表す)
で示されるリン系安定剤とを含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなることを特徴とする車載用バックライト用の導光板。
【請求項2】
上記Rがアリール基であることを特徴とする請求項1記載の車載用バックライト用の導光板。
【請求項3】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における上記リン系安定剤の配合量が、上記芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.005〜0.2重量部の範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の車載用バックライト用の導光板。
【請求項4】
楔状であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車載用バックライト用の導光板。
【請求項5】
平板状であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車載用バックライト用の導光板。
【請求項6】
光源と、請求項1〜5の何れか1項に記載の車載用バックライト用の導光板とを備えていることを特徴とする車載用バックライト。
【請求項7】
上記光源が発光ダイオードであることを特徴とする請求項6記載の車載用バックライト。
【請求項8】
上記光源が冷陰極管であることを特徴とする請求項6記載の車載用バックライト。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1項に記載の車載用バックライトを備えていることを特徴とする車載用液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−53233(P2011−53233A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338283(P2007−338283)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】