説明

車載用パルスレーダ

【課題】簡易な構成で遅延時間を与えることで受信信号へのノイズ信号の混入を時間的に分離して高精度で対象物情報の検出が可能な車載用パルスレーダを提供する。
【解決手段】周波数変換器152でダウンコンバートされたベースバンド信号は、遅延回路153を通過したのち、基板間コネクタ103を介して信号処理部102に出力される。また、制御信号は、制御信号発生部162から基板間コネクタ103を介してスイッチ回路151に出力される。遅延回路153は、ベースバンド信号に所定の遅延時間を与えることで、制御信号が基板間コネクタ103を通過してからベースバンド信号が基板間コネクタ103を通過するまでの時間差を大きくしている。これにより、ベースバンド信号は、制御信号からの干渉を受けることがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるパルスレーダ装置に関し、特に装置内で発生するノイズ信号を時間的に分離して対象物情報を高精度に検出できる車載用パルスレーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルスレーダは、一般に、高周波の搬送波で形成されたパルス状の送信信号を生成する送信部と、送信部で生成された送信信号を電波として空間に放射する送信アンテナと、送信アンテナから放射された電波が対象物で反射されて戻ってきた反射波を受信する受信アンテナと、受信アンテナから受信された受信信号をベースバンド信号にダウンコンバートする受信部と、受信部からベースバンド信号を入力して対象物までの距離等を算出する信号処理部とを備えている。また、信号処理部には、送信部及び受信部の制御に用いる制御信号を出力する制御部が設けられている。
【0003】
パルスレーダの上記構成部のうち、送信部、受信部、及び送受信アンテナは、高周波の送受信信号を処理することから、これらは高周波信号の伝送等に好適な高周波用のプリント基板に配置される。これに対し、信号処理部は、受信部でダウンコンバートされたベースバンド信号を処理しており、また信号処理部に設けられている制御部も、送信部及び受信部に対し比較的低周波の制御信号を出力していることから、低周波用のプリント基板に配置されるのが一般的である。
【0004】
上記のように、パルスレーダでは通常、高周波用のプリント基板と低周波用のプリント基板の少なくとも2枚のプリント基板を用いている。そのため、各プリント基板間で信号を伝送させるための信号伝送手段が必要となる。従来より、プリント基板間の信号伝送を行う信号伝送手段には、低価格で汎用的な多ピンの基板間コネクタが広く用いられている。
【0005】
近年は、車両の衝突防止や駐車支援等を目的として、車両にパルスレーダを搭載するニーズが高まっている。車載用パルスレーダは、車両の前方あるいは周辺等に存在する対象物の情報を検出するのに用いられる。このような車載用パルスレーダでは、レーダ装置の小型化や低価格化が特に強く要求されることから、車載用パルスレーダに用いるプリント基板や基板間を接続する基板間コネクタについても小型化、低価格化する必要がある。
【0006】
小型化された多ピンの基板間コネクタでは、端子(ピン)間のピッチが狭く、また信号の高周波化・広帯域化により、端子間で電磁結合して干渉し易くなるといった問題がある。このような端子間の干渉が起こると、所定の端子を伝播する受信信号に別の端子を伝播する制御信号がノイズ信号として漏れこんできてしまう。このように、多ピンの基板間コネクタにおいて受信信号にノイズ信号が漏れこんでしまうと、受信信号から対象物情報の検出ができなくなってしまうといった問題がある。
【0007】
上記のような基板間コネクタにおけるノイズ信号の漏れ込みを防止する手段が、従来より知られている。特許文献1では、フェライトを備えた基板間コネクタを用いることで、基板間コネクタ自体のアイソレーションを高め、端子間で漏れ込むノイズ信号の強度を低減している。また、特許文献2では、基板間コネクタの端子間のアイソレーションを高めるために、端子間に接地端子を配置しており、これにより端子間で漏れ込むノイズ信号の強度を低減している。さらに、制御信号を伝送する端子と接地端子との配置を千鳥状にすることで、基板間コネクタの端子間のアイソレーションを向上させ、制御信号がノイズ信号として受信信号に漏れ込む強度を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−099971号公報
【特許文献2】特許2921489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記いずれの手段でも基板間コネクタの構造が複雑になり、コネクタが大型化したりコストアップになるといった問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で遅延時間を与えることで受信信号へのノイズ信号の混入を時間的に分離して高精度で対象物情報の検出が可能な車載用パルスレーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の車載用パルスレーダの第1の態様は、高周波用の第1プリント基板と低周波用の第2プリント基板の少なくとも2枚のプリント基板が所定の信号伝送手段で接続された車載用パルスレーダであって、前記第1プリント基板は、局部発振信号を出力する局部発振器と、前記局部発振器から前記局部発振信号を入力して変調することにより送信信号を出力する送信部と、前記送信部から前記送信信号を入力して電波として空間に放射するとともに、前記電波が対象物で反射された反射波を受信するアンテナと、前記アンテナから受信された受信信号を測定距離に同期させて時分割する時分割部と、前記受信信号を前記ベースバンド信号に周波数変換する周波数変換器と、前記ベースバンド信号に所定の遅延時間を与えて出力する遅延回路と、を有する受信部と、を備え、前記第2プリント基板は、前記受信部から前記信号伝送手段を経由して前記ベースバンド信号を入力して前記対象物の情報を算出する対象物情報演算部と、前記時分割部を駆動させるための制御信号を前記信号伝送手段を経由して前記時分割部に出力する制御信号発生部と、を有する信号処理部を備えており、前記遅延回路は、前記周波数変換器から入力した前記ベースバンド信号を前記制御信号より所定時間だけ遅れて前記信号伝送手段を通過するように前記ベースバンド信号に前記遅延時間を与えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の車載用パルスレーダの他の態様は、前記受信部は、前記制御信号発生部から前記信号伝送手段を経由して入力した前記制御信号に所定の遅延時間を与えて前記時分割部に出力する別の遅延回路をさらに有していることを特徴とする。
【0013】
本発明の車載用パルスレーダの他の態様は、前記遅延時間は、前記信号伝送手段を前記制御信号が通過する時間帯と前記ベースバンド信号が通過する時間帯とが実質的に重ならないような時間差に調整されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の車載用パルスレーダの他の態様は、前記遅延回路は、ローパスフィルタで構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の車載用パルスレーダの他の態様は、前記時分割部は、前記対象物の測定距離に同期させて前記受信信号を所定の時間幅だけ通過させるスイッチ回路であることを特徴とする。
【0016】
本発明の車載用パルスレーダの他の態様は、前記信号伝送手段は、基板間コネクタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成で遅延時間を与えることで受信信号へのノイズ信号の混入を時間的に分離して高精度で対象物情報の検出が可能な車載用パルスレーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の車載用パルスレーダの構成を示すブロック図である。
【図2】基板間コネクタを通過するベースバンド信号及びノイズ信号の時間波形図である。
【図3】LPFの段数と遅延時間との関係を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態の車載用パルスレーダの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態における車載用パルスレーダについて、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る車載用パルスレーダを、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の車載用パルスレーダ100の構成を示すブロック図である。本実施形態の車載用パルスレーダ100は、高周波回路部101と信号処理部102を備え、それぞれが第1プリント基板101aと第2プリント基板102aの2枚のプリント基板に配置されている。また、高周波回路部101と信号処理部102との間で信号伝送を行うための信号伝送手段として、第1プリント基板101aと第2プリント基板102aとを接続する基板間コネクタ103が設けられている。
【0021】
なお、以下の説明では、車載用パルスレーダ100が第1プリント基板101aと第2プリント基板102aの2枚の基板で構成されるものとするが、本発明の車載用パルスレーダは、2枚の基板で構成されるものに限定されず、3枚以上のプリント基板で構成される車載用パルスレーダにも適用可能である。
【0022】
第1プリント基板101aに搭載される高周波回路部101は、局部発振信号を出力する局部発振器110と、局部発振器110から局部発振信号を入力して送信信号を出力する送信部120と、送信部120から送信信号を入力して空間に電波を放射する送信アンテナ130と、送信アンテナから放射された電波が対象物で反射された反射波を受信する受信アンテナ140と、受信アンテナ140から受信された受信信号を処理する受信部150と、を備えている。受信部150は、基板間コネクタ103を介して信号処理部102にベースバンド信号を出力する
【0023】
送信部120は、信号分配器121、信号変調部122、増幅器123、及びバンドパスフィルタ124を有している。信号分配器121は、局部発振器110から入力した局部発振信号を信号変調部122と受信部150に分配して出力する。信号変調部122は、信号分配器121から入力した局部発振信号を所定の変調信号を用いて変調し、パルス状の送信信号を出力する。局部発振信号の変調に用いる変調信号は、信号処理部102から入力される。増幅器123は、信号変調部122で変調された送信信号の信号レベルを所定の高さまで増幅する。バンドパスフィルタ124は、増幅器123から出力される信号の周波数帯を制限するものであり、所定周波数帯の送信信号のみを送信部120から出力させるようにしている。
【0024】
受信部150は、受信信号を測定距離に同期させて時分割する時分割部151と、受信信号を周波数変換する周波数変換器152と、遅延回路153と、を有している。時分割部151は、受信アンテナ140から受信された受信信号を、測定距離に同期させて時分割して出力しており、測定距離に対応する受信信号のみが切り出されて出力される。図1では、時分割部151としてスイッチ回路が用いられている(以下では、スイッチ回路151とする)。周波数変換器152は、受信信号を、局部発振器110から信号分配器121を介して入力される局部発振信号で周波数変換する。これにより、受信信号はベースバンド信号にダウンコンバートされる。図1では、周波数変換器152としてミキサが用いられている。
【0025】
本実施形態の受信部150では、周波数変換器152でダウンコンバートされたベースバンド信号をそのまま信号処理部102に出力せず、遅延回路153を通過させた後に信号処理部102に出力する構成としている。遅延回路153は、周波数変換器152から入力したベースバンド信号に対し、所定の遅延時間を与えて出力する。そして、遅延回路153で遅延されたベースバンド信号が、基板間コネクタ103を介して信号処理部102に出力される。
【0026】
第2プリント基板102aに搭載される信号処理部102は、局部発振器110で生成された局部発振信号を変調するための変調信号を信号変調部122に出力する変調信号発生部161と、スイッチ回路151の駆動(開閉)を制御する制御信号を出力する制御信号発生部162と、受信部150から基板間コネクタ103を介して入力したベースバンド信号をデジタル信号に変換するA/D変換器163と、A/D変換器163からデジタル信号を入力して対象物の位置、相対速度等の情報を算出する対象物情報演算部164と、を備えている。また、必要に応じて増幅器165〜167が設けられる。
【0027】
車載用のパルスレーダは、小型化・低コスト化することが強く求められることから、本実施形態の車載用パルスレーダ100でも、第1プリント基板101a及び第2プリント基板102aを小型化することが要求される。そのため、基板間を接続する基板間コネクタ103としても、端子間距離が狭ピッチ化された小型で汎用的なものを用いることが要求される。さらに、車載用パルスレーダ100では、高性能化、高品質化のために送受信信号として高周波(GHz周波数帯)で広帯域な信号が用いられている。従って、端子間距離が狭ピッチ化された基板間コネクタ103で端子間の電磁結合が発生し易くなり、ベースバンド信号が基板間コネクタ103を通過するときに、別の端子を伝播する制御信号から影響を受けてノイズ信号が漏れこんできてしまう。
【0028】
そこで、本実施形態の車載用パルスレーダ100では、狭ピッチ化された基板間コネクタ103の端子間で電磁結合が発生しても、ベースバンド信号とノイズ信号とを分離することで低ノイズの好適なベースバンド信号が得られるようにしている。
【0029】
受信部150には、受信アンテナ140から受信された受信信号を測定距離に同期させて時分割するためのスイッチ回路151を設けているが、このスイッチ回路151の開閉を制御するための制御信号が、制御信号発生部162から基板間コネクタ103を介してスイッチ回路151に伝送されている。この制御信号が基板間コネクタ103を通過してから、スイッチ回路151が動作してベースバンド信号が基板間コネクタ103を通過するまでの時間差はきわめて小さく、制御信号とベースバンド信号がほぼ同時に基板間コネクタ103を通過する。そのため、端子間の電磁結合によりベースバンド信号と制御信号との間で干渉が発生し、ベースバンド信号にノイズ信号が混入してしまう。
【0030】
そこで、本実施形態の車載用パルスレーダ100では、受信部150内に遅延回路153を設けることで、制御信号発生部162からの制御信号が基板間コネクタ103を通過してからベースバンド信号が基板間コネクタ103を通過するまでの時間差を大きくしている。遅延回路153は、ベースバンド信号が基板間コネクタ103を通過するタイミングを遅くするように、所定の遅延時間をベースバンド信号に与えている。これにより、ベースバンド信号が基板間コネクタ103を通過する時点では、制御信号が基板間コネクタ103を通過し終えている状態にする。その結果、ベースバンド信号が制御信号からの干渉を受けることがないようにすることができる。
【0031】
遅延回路153として、本実施形態ではローパスフィルタ(LPF)を用いている。LPFを用いることで、所定の低周波信号を通過させるときに所定の時間だけ遅延させる効果が得られる。また、LPFを用いることで、設置に必要な面積を小さくして省スペース化を図ることができ、かつベースバンド信号の周波数特性に影響を与えない広帯域な遅延回路153を実現することができる。
【0032】
ベースバンド信号が、LPFで構成される遅延回路153を通過した後、基板間コネクタ103を通過するときの時間波形の一例を図2に示す。同図では、遅延回路153を通過したベースバンド信号を符号11で示している。また、比較のために、周波数変換器152から遅延回路153を通過せずに基板間コネクタ103を通過するときのベースバンド信号符号を符号10で示している。さらに、基板間コネクタ103において、制御信号発生部162からスイッチ回路151に伝送される制御信号が通過する端子との電磁結合により、ベースバンド信号が通過する端子に混入されるノイズ信号を符号12で示している。
【0033】
図2より、遅延回路153を通過しないベースバンド信号10が基板間コネクタ103を通過するタイミングと、ノイズ信号12が混入するタイミングとがほぼ同時であることがわかる。その結果、遅延回路153を通過しないベースバンド信号10では、ノイズ信号12が混入してしまう。これに対し、遅延回路153を通過して遅延されるベースバンド信号11では、基板間コネクタ103を通過するタイミングがベースバンド信号10より時間Tだけ遅れている。その結果、ベースバンド信号11が基板間コネクタ103を通過するタイミングでは、ノイズ信号12の混入がすでになくなっており、ベースバンド信号11がノイズ信号12の影響を受けることはない。
【0034】
所定の遅延時間を有するLPFで構成された遅延回路153を周波数変換器152と基板間コネクタ103との間に設けることで、図2に示すように、基板間コネクタ103を介してA/D変換器163に入力されるベースバンド信号11にノイズ信号12が混入するのを防止することができる。LPFを用いた遅延回路153では、遅延時間TをLPFの段数で容易に調整することができる。すなわち、長い遅延時間Tを必要とするときは、LPFの段数を増やすことで実現できる。
【0035】
LPFの段数と遅延時間との関係の一例を図3に示す。同図は、横軸をLPFの段数をとし、縦軸を遅延時間[nsec]としている。ここでは、一例として、遮断周波数fc=1GHzのLPFを用いて遅延回路153を構成したときの遅延時間を示している。遅延回路153では、LPFの遮断周波数に対応して得られる遅延時間に、LPFの段数に対応する遅延時間を加算した遅延時間が得られる。同図に示すように、遅延時間はLPFの段数にほぼ比例して長くなり、例えばLPFの段数を5段から9段まで増加させることで、遅延時間を0.7nsec(700psec)程度長くすることができる。遅延回路153は、設置スペースを確保できる限りLPFの段数を増やすことが可能であり、遅延時間を容易に調整できる。
【0036】
遅延回路153は、周波数変換器152でベースバンド帯域の周波数にダウンコンバートした信号を通過させることから、LPFに要求される周波数帯もベースバンド帯域とほぼ同等にすることができる、という利点がある。本実施形態によれば、簡易な構成で遅延回路153を実現することができ、これを用いてベースバンド信号に所望の遅延時間を与えることで、受信信号へのノイズ信号の混入を時間的に分離して高精度で対象物情報の検出が可能な車載用パルスレーダ100を提供することが可能となる。
【0037】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施の形態に係る車載用パルスレーダを、図4を用いて以下に説明する。図4は、本実施形態の車載用パルスレーダ200の構成を示すブロック図である。本実施形態の車載用パルスレーダ200では、ベースバンド信号に遅延時間を与える遅延回路153に加えて、制御信号発生部162からスイッチ回路151に出力される制御信号の伝送線路にも別の遅延回路201を設けている。
【0038】
遅延回路201は、制御信号発生部162からスイッチ回路151への制御信号の伝送路の基板間コネクタ103とスイッチ回路151との間に設置されている。遅延回路201についても、遅延回路153と同様にLPFを用いて構成することができる。本実施形態では、基板間コネクタ103における制御信号の通過タイミングに対するベースバンド信号の通過タイミングの遅延時間を、遅延回路153及び201を用いてよりフレキシブルに調整することが可能となっている。なお、遅延回路201には、スイッチ回路151に出力される制御信号の周波数帯域に影響を与えないLPFを用いる必要がある。
【0039】
本発明の車載用パルスレーダによれば、高周波回路部と信号処理部との間で信号伝送を行うための信号伝送手段として、小型で低価格の汎用的な基板間コネクタを用いることができる。このような基板間コネクタを高周波・広帯域の信号の伝送に用いても、端子間の電磁結合によるノイズ信号を受信信号のベースバンド信号から時間的に分離することができ、対象物情報を高精度に検出可能な車載用パルスレーダを提供することができる。本発明に用いる遅延回路は、低周波数帯の信号を入力して遅延させることから、汎用チップ素子(インダクタ及びコンデンサ)とパターンで構成されたLPFを用いて遅延回路を構成することができ、小型化容易でかつ低コストな車載用パルスレーダを提供することができる。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態に係る車載用パルスレーダを以下に説明する。本実施形態では、周波数変換器152から出力されるベースバンド信号が基板間コネクタ103を通過するタイミングを、制御信号発生部162から出力される制御信号より所定時間だけ遅延させるために、周波数変換器152と基板間コネクタ103との間の距離を長くしている。この距離を長くする手段として、周波数変換器152と基板間コネクタ103との間の伝送線路を第1プリント基板101a内に蛇行させる。あるいは、周波数変換器152と基板間コネクタ103との間にチップディレイラインを接続してもよい。
【0041】
上記いずれか1つ以上の手段を用いてベースバンド信号が基板間コネクタ103を通過するタイミングを遅延させることで、基板間コネクタ103においてベースバンド信号に制御信号からのノイズ信号が混入するのを時間的に分離することができ、これにより高精度で対象物情報の検出を行うことが可能となる。
【0042】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るレーダ装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるレーダ装置の細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
100、200 車載用パルスレーダ
101 高周波回路部
101a 第1プリント基板
102 信号処理部
102a 第2プリント基板
103 基板間コネクタ
110 局部発振器
120 送信部
121 信号分配器
122 信号変調部
123、165、166、167 増幅器
124 バンドパスフィルタ
130 送信アンテナ
140 受信アンテナ
150 受信部
151 時分割部
152 周波数変換器
153、201 遅延回路
161 変調信号発生部
162 制御信号発生部
163 A/D変換器
164 対象物情報演算部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波用の第1プリント基板と低周波用の第2プリント基板の少なくとも2枚のプリント基板が所定の信号伝送手段で接続された車載用パルスレーダであって、
前記第1プリント基板は、
局部発振信号を出力する局部発振器と、
前記局部発振器から前記局部発振信号を入力して変調することにより送信信号を出力する送信部と、
前記送信部から前記送信信号を入力して電波として空間に放射するとともに、前記電波が対象物で反射された反射波を受信するアンテナと、
前記アンテナから受信された受信信号を測定距離に同期させて時分割する時分割部と、 前記受信信号を前記ベースバンド信号に周波数変換する周波数変換器と、前記ベースバンド信号に所定の遅延時間を与えて出力する遅延回路と、を有する受信部と、を備え、
前記第2プリント基板は、
前記受信部から前記信号伝送手段を経由して前記ベースバンド信号を入力して前記対象物の情報を算出する対象物情報演算部と、前記時分割部を駆動させるための制御信号を前記信号伝送手段を経由して前記時分割部に出力する制御信号発生部と、を有する信号処理部を備えており、
前記遅延回路は、前記周波数変換器から入力した前記ベースバンド信号を前記制御信号より所定時間だけ遅れて前記信号伝送手段を通過するように前記ベースバンド信号に前記遅延時間を与えている
ことを特徴とする車載用パルスレーダ。
【請求項2】
前記受信部は、前記制御信号発生部から前記信号伝送手段を経由して入力した前記制御信号に所定の遅延時間を与えて前記時分割部に出力する別の遅延回路をさらに有している
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用パルスレーダ。
【請求項3】
前記遅延時間は、前記信号伝送手段を前記制御信号が通過する時間帯と前記ベースバンド信号が通過する時間帯とが実質的に重ならないような時間差に調整されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車載用パルスレーダ。
【請求項4】
前記遅延回路は、ローパスフィルタで構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車載用パルスレーダ。
【請求項5】
前記時分割部は、前記対象物の測定距離に同期させて前記受信信号を所定の時間幅だけ通過させるスイッチ回路である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車載用パルスレーダ。
【請求項6】
前記信号伝送手段は、基板間コネクタである
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車載用パルスレーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−209180(P2011−209180A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78523(P2010−78523)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】