説明

車載用モータユニット

【課題】電気自動車に搭載されるモータユニットを、機械効率が良好で大きな駆動トルクを得ることができ、騒音や振動も少なく、コンパクトな構造のものに構成する。
【解決手段】車体床面に固定される脚部23を有する台座フレーム2の両側面22、22に、アウタロータ部32に駆動軸取付部33が設けられた一対のアウタロータ式モータ3、3をそれぞれ互いに固定子部31、31を同軸上に対向配置して固定し、台座フレーム2内に、両モータ3、3の作動を制御するモータコントローラ5、ドライバ6及びインバータ7、7の各回路装置を収納して一体に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータとこれを制御する回路を一体に設けた車載用のモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などに搭載されるモータユニットとして、電動機を収納した電動機ハウジングと制御回路を収納した電子モジュールハウジングとを一体化させた構成のものや、複数のモータとインバータとをハウジング内部に収納して一体に構成したものが知られている(例えば特許文献1、2参照)。
このようなモータユニットはその出力軸がドライブシャフトを経由して車体左右の駆動輪に接続され、モータユニットからドライブシャフトを介して駆動輪に伝達された駆動力により車両を走行させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−346454号公報
【特許文献2】特開2008−295225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気自動車の前記モータユニットのモータとしては、外径側に固定子、内径側に回転子を配置して構成された、インナロータ式のものが採用されていた。
インナロータ式のモータを搭載した車両では、モータが内輪回転式であるため大きな駆動トルクが得られず、そのため、モータの回転数を上げた状態で減速歯車により減速することで所要の駆動力を得るようにしており、減速歯車を介在させている分、機械効率が劣ることは避けられなかった。また、モータの回転数が高いため騒音レベルも高く、減速歯車による歯車騒音や振動も顕著であった。インナロータ式のモータは駆動トルクを高めるために減速歯車が不可欠であり、モータユニットは構造上大型のものにならざるを得なかった。
【0005】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、電気自動車に搭載されるモータユニットを、機械効率が良好で大きな駆動トルクを得ることができ、騒音や振動も少なく、コンパクトな構造のものに構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明の車載用モータユニットは、車体床面に固定される脚部を有する台座フレームの両側面に、アウタロータ部に駆動軸取付部が設けられた一対のアウタロータ式モータがそれぞれ互いに固定子部を同軸上に対向配置して固定され、前記台座フレーム内に、両モータの作動を制御するモータコントローラ、ドライバ及びインバータの各回路装置が収納された構成を有することを特徴とする。
【0007】
前記構成のモータユニットは、台座フレームの脚部を車体床面に載せて当該床面に固定し、台座フレームの両側面に支持された両アウタロータ式モータのアウタロータ部の駆動軸取付部に、一端が車体左右の駆動輪のハブに接続された駆動軸をそれぞれ連結して、電気自動車の車体に搭載される。
これによれば、両アウタロータ式モータは、台座フレーム内に設置された前記モータコンントローラ、ドライバ及びインバータの各回路装置によってその作動が制御され、両モータの駆動力は駆動軸を介して車体左右の駆動輪にそれぞれ伝達されて車両を走行せしめる。両アウタロータ式モータの作動は、前記各回路装置によって別々に制御することが可能であり、車両の走行条件などに応じて車体左右の駆動輪の駆動力配分を制御し適宜に設定することで、車両の前後方向や左右方向の挙動安定性を向上させることが可能である。
【0008】
また、外輪回転式であるアウタロータ式モータのアウタロータ部に左右駆動輪の駆動軸を連結することで、内輪回転式のモータと比較して大きな駆動トルクが得られるように設けてあるので、減速歯車が不要となって機械効率が向上し、これにより消費電力の低減が図られ、車両の航続距離を増大させることができる。減速歯車が搭載されていないので騒音や振動のレベルが低く抑えられ、良好な車内居住性を得ることができる。
また、前記構成のモータユニットは、台座フレームの左右両側面にアウタロータ式モータをそれぞれ取付け、当該フレーム内部に両モータを制御する回路装置を収納して、小型且つコンパクトな構造に設けてあるので、車体床面上の設置スペースも小さくて済み、車両内部における居住者の利用空間領域を拡大することができる。前記両モータと回路装置は台座フレームに一体に設けてあるので、モータと各回路装置を電気的に接続する高圧配線が短縮化されて電気ノイズの発生が少なく、また、外部の電気ノイズの影響も受け難くなり、これにより、他の電装系への影響が抑えられるとともに、モータの作動安定性が向上して電気的信頼性が確保され、併せて車体を軽量化することが可能である。
前記の通り本発明の車載用モータユニットは小型且つコンパクトな構造であるため車体への設置が容易であり、内燃機関自動車のパワーユニットを本発明のモータユニットに置き換えて、電気自動車への改造を容易に実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電気自動車の車体に本発明の一実施形態のモータユニットを取付けた状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の車載用モータユニットを電気自動車の車体に取付けた状態の概略断面を示しており、図示されるように、このモータユニット1は、台座フレーム2の左右両側面22、22にアウタロータ式モータ3、3(以下、「モータ」という)が一体に支持され、台座フレーム2の内部に両モータ3、3の作動を制御する回路装置類を収納して構成されている。
【0011】
より詳しくは、台座フレーム2は適宜な高さの中空箱状の鋼製やアルミ製枠体であり、適宜な幅の天面21の両側に当該天面21の両端部から垂直に下折れした互いに平行な左右両側面22、22を配し、両側面22、22の下端部に外方へ水平に折れ曲がった鍔状の脚部23、23を配した形状に設けて形成してある。
両側面21、21は、後述するモータ3、3を互いに出力軸を水平に向けて支持し、固定することができるように設けてあり、また、両側面21、21の内面部間には複数の支持棚24を上下方向に所定の間隔を開けて架け渡してあり、前記天面21及び各支持棚24で区画される空間部内に後述する回路装置類を収納し固定することができるように設けてある。また、台座フレーム2の、図示されない前面側又は後面側の面部の少なくとも一方は開口させ、或いは開閉自在に設けられており、この開口した部分から回路装置類をフレーム内部に収納して取付けたり配線したりすることができるようになっている。
【0012】
モータ3、3は、それぞれ主に固定子部31と、固定子部31の外周側にベアリング(図示せず)を介して回転自在に支持されたアウタロータ部32とから構成されている。固定子部31内には周方向に多数のコイル31aが列設して巻かれ、アウタロータ部32には同じく周方向に多数のマグネット32aが列設されており、これらコイル31aの外周面とマグネット32aの内周面とは僅かな間隙を挟んで対向させてある。また、アウタロータ部32の外側面中央には、後述する車両の駆動軸が連結される駆動軸取付部33が設けてある。
両モータ3、3は、それぞれ固定子部31、31を水平な同軸上に対向するように向けた状態で、両固定子部31、31を台座フレーム2の両側面22、22に支持させるとともにボルトなどの複数の固着具4を締結して両側面22、22に一体に固定されている。
【0013】
前記両モータ3、3の作動を制御する回路装置類は、モータコントローラ5、ドライバ6、インバータ7、7からなり、これらは前記各支持棚24で区画された空間部内に収納されて台座フレーム2の内部に一体に取付けてある。
これら各回路装置は、両モータ3、3及び車体に設置されるバッテリと電気的に接続しており、両モータ3、3の作動を別々に制御できるように設けてある。すなわち、前記両モータ3、3の固定子部31内にはアウタロータ部32の回転角を検出する角度センサ(図示せず)が設置されており、この角度センサから前記モータコントローラ5へアウタロータ部32の回転情報が出力され、また、固定子部31の各コイル31aはドライバ6とインバータ7に接続され、バッテリとの間で電力の授受が行われるように設けてある。
【0014】
このように構成されたモータユニット1は、図1に示されるように、台座フレーム2の脚部23、23を車体8の床面に載せてボルトなどの複数の固着具4を締結して固定し、両モータ3、3の駆動軸取付部33、33にそれぞれ一端が車体左右の駆動輪のハブに接続された駆動軸(図示せず)を連結し、さらに周囲を電気的な遮蔽及び防護柵としてのカバー9で囲って電気自動車の車体に搭載される。
そして、台座フレーム2内に設置されたモータコンントローラ5、ドライバ6及びインバータ7、7からなる回路装置によって両モータ3、3の作動を制御し、両モータ3、3の駆動力は駆動軸を介して車体左右の駆動輪にそれぞれ伝達することで車両を走行させるようになっている。
【0015】
なお、図示したモータユニット1は本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0016】
1 モータユニット、2 台座フレーム、21 天面、22,22 左右両側面、23 脚部、24 支持棚、3 アウタロータ式モータ、31 固定子部、32 アウタロータ部、34 駆動軸取付部、4 固着具、5 モータコントローラ、6 ドライバ、7 インバータ、8 車体、9 カバー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定される脚部を有する台座フレームの両側面に、アウタロータ部に駆動軸取付部が設けられた一対のアウタロータ式モータがそれぞれ互いに固定子部を同軸上に対向配置して固定され、前記台座フレーム内に、両モータの作動を制御するモータコントローラ、ドライバ及びインバータの各回路装置が収納された構成を有する車載用モータユニット。





【図1】
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【公開番号】特開2012−205483(P2012−205483A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70788(P2011−70788)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(511073571)株式会社SIM−Drive (8)
【Fターム(参考)】