説明

車載用ルーフボックス

【課題】2つのラッチ機構のフックがかかった状態でのみキーシリンダによる施錠が可能となる車載用ルーフボックスの提供を図る。
【解決手段】ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角が、(i)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が非係止位置にある場合と、(ii)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合と、(iii)一方のラッチ機構7A(または7B)のフック27のみが係止位置にある場合と、で異なるように、2つのラッチ機構7A、7Bが構成されている。ロック機構9は、当該ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角に応じて、両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合のみに施錠によってシャフト19の回転を阻止でき、少なくとも一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27が非係止位置にある場合には施錠ができないようにしたキーシリンダ41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のルーフに取付けられる車載用ルーフボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフに取り付けられる荷物収納用のルーフボックスとしては、例えば特許文献1に開示されるように、ルーフに固定される容器形状のボックス本体と、該ボックス本体に設けられたヒンジを中心にしてボックス本体の上部開口部を開閉自在に覆うボックスカバーと、ボックスカバーをボックス本体を対して閉じた状態を保持可能とする互いに離間して配置される2つのラッチ機構と、ラッチ機構によるボックスカバーの閉状態をロック可能なロック機構と、を備えて構成されるものがある。
【0003】
各ラッチ機構は、ボックス本体に固定されたハウジングと、ハウジングに軸支され2つのラッチ機構に亘って架設されているシャフトと、シャフトに固定されて当該シャフトと一体的に回転するフックと、ボックスカバーに固定されたロックピンと、を備えて構成され、ボックスカバーをボックス本体に対して完全に閉じるとロックピンがフックによって係止されるようになっている。
【0004】
ロック機構は、キーによる施錠によりシャフトの回転を阻止するキーシリンダを備えて構成されている。そのため、ボックスカバーをボックス本体に対して閉じた状態で、つまり、フックでロックピンを係止した状態でキーシリンダを施錠するとフックによるロックピンの係止がロックされる。
【特許文献1】実開平7−8097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術にあっては、ボックスカバーがボックス本体に対して完全に閉じてはおらず、一方のラッチ機構のフックがロックピンを係止しているものの他方のラッチ機構のフックがロックピンを係止していない状態でも、ロック機構のキーシリンダによる施錠することが可能となっている。
【0006】
そのため、使用者は、ボックスカバーがボックス本体に対して完全に閉じた状態と思い込んで、自動車を走行させてしまう虞があり、この場合、走行風による負荷が、フックがかかっているラッチ機構ばかりにかかってしまい、耐久年数が短くなってしまう虞がある。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、2つのラッチ機構のフックがかかった状態でのみキーシリンダによる施錠が可能となる車載用ルーフボックスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、自動車のルーフに固定される容器形状のボックス本体と、前記ボックス本体に対してヒンジ機構を介して取り付けられ当該ボックス本体の上部開口部を開閉自在とするボックスカバーと、前記ボックスカバーを前記ボックス本体を対して閉じた状態を保持可能とする互いに離間して配置される2つのラッチ機構と、前記ラッチ機構による前記ボックスカバーの閉状態をロック可能なロック機構と、を備えて構成される車載用ルーフボックスであって、
前記各ラッチ機構は、前記ボックスカバーに固定されたロックピンと、前記ボックス本体に軸支されたシャフトと、前記シャフトに外嵌されて前記シャフトと一体的に回転するフックであって、前記ボックスカバーを閉じた状態で前記ロックピンを係止する係止位置と、前記ボックス本体を閉じる際の前記ロックピンの係止位置への進入および前記ボックス本体を開く際の前記ロックピンの係止位置からの退出を許容する非係止位置と、に亘って回転自在なフックと、前記フックを前記係止位置に向けて常時付勢するバネ部材と、前記フックを非係止位置に維持可能な維持手段と、前記フックが前記非係止位置にある状態で前記ロックピンが当該ロックピンの係止位置に入り込んでくると前記維持手段による維持を開放させて前記フックを係合位置に回転させるセンサー部と、を備えて構成され、
前記シャフトは2つのラッチ機構に亘って延在することで単一のシャフトで構成され、 前記ロック機構が配置される位置におけるシャフトの回転角は、(i)両ラッチ機構のフックが非係止位置にある場合と、(ii)両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合と、(iii)一方のラッチ機構のフックが係止位置にあり他方のラッチ機構のフックが非係止位置にある場合と、でそれぞれ回転角が異なり、
前記ロック機構は、当該ロック機構が配置される位置におけるシャフトの回転角に応じて、両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合のみに施錠によってシャフトの回転を阻止でき、少なくとも一方のラッチ機構のフックが非係止位置にある場合には施錠ができないようにしたキーシリンダを備えて構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載用ルーフボックスであって、前記ロック機構のキーシリンダは、外筒と前記外筒に対して回転自在な内筒とを備えたキーシリンダ本体と、前記シャフトに外嵌されて前記シャフトと一体的に回転する回転レバーであって、前記キーシリンダ本体と係合して前記シャフトの回転を前記キーシリンダ本体の軸方向への進退移動に変換する回転レバーと、前記キーシリンダ本体の内筒に形成されたキー係合部に係合することで、前記キーシリンダ本体の進退位置に応じて前記キーシリンダ本体の施錠回転を防止するロックプレート部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車載用ルーフボックスであって、両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合には、前記キーシリンダ本体が前記ルーフボックス本体の外側に向けて最大に突出した位置となり、前記キーシリンダ本体をルーフボックス本体の内側に向けて押圧することで、シャフトを介して両ラッチ機構のフックが係止位置から非係止位置に回転することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の車載用ルーフボックスであって、前記ラッチ機構は、前記ボックス本体の内側に固定されたブラケットと、前記フックに対して前記シャフトと平行に軸支された回転部材と、を備え、前記維持手段は、前記回転部材に形成され、前記フックが非係止位置にある際に前記ブラケットに突っ張っることで前記フックが係止位置側に回転することを防止する突っ張り部として構成され、前記センサー部は、前記回転部材に形成され、前記フックが非係止位置にある際に前記ロックピンの係止位置にほぼ位置して前記ロックピンが係止位置に進入してくると前記突っ張り部の突っ張りが外れる方向に当該回転部材を回転させるものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の車載用ルーフボックスであって、前記ラッチ機構は、前記ボックス本体の内側に固定されたブラケットと、前記ブラケットに対して前記シャフトと平行に軸支された回転部材と、を備え、前記維持手段は、前記回転部材を一方向に回転させると前記フックに形成された係合部と係合して前記フックを非係止位置に向けて回転させる前記回転部材に形成された係合部と、前記フックを非係止位置に維持されるように前記回転部材を付勢する第2のバネ部材と、により構成され、前記センサー部は、前記回転部材に形成され、前記フックが非係止位置にある状態で前記ロックピンの係止位置にほぼ位置して前記ロックピンが係止位置に進入してくると前記回転部材を前記一方向とは逆側に回転させるものであることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の車載用ルーフボックスであって、前記ラッチ機構は、前記ボックス本体の内側に固定されたブラケットを備え、前記維持手段は、前記ブラケットに固定され、前記フックに形成された係合部と係合することで前記フックを非係止位置に維持し且つ前記フックが非係止位置と係止位置とに亘って回転する際に前記フックに形成された係合部の通り抜けを許容する第2のバネ部材で構成され、前記センサー部は、前記フックに一体に形成され、当該フックが非係止位置にある際に前記ロックピンの係止位置にほぼ位置して前記ロックピンが係止位置に進入してくると前記フック部を非係止位置から係止位置に向けて回転させるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、ロック機構の配置位置におけるシャフトの回転角は、(i)両ラッチ機構のフックが非係止位置にある場合と、(ii)両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合と、(iii)一方のラッチ機構のフックが係止位置にあり他方のラッチ機構のフックが非係止位置にある場合と、でそれぞれ回転角が異なる。そして、ロック機構は、当該ロック機構が配置される位置におけるシャフトの回転角に応じて、両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合のみに施錠によってシャフトの回転を阻止でき、少なくとも一方のラッチ機構のフックが非係止位置にある場合には施錠ができないようにしたキーシリンダを備えて構成されている。
【0015】
そのため、2つのラッチ機構のフックがかかった状態でのみキーシリンダによる施錠が可能であるため、従来のように一方のラッチ機構のフックのみか掛かっている状態ではキーシリンダより施錠ができないため、一方のラッチ機構のフックが掛かっていない状態でボックスカバーがボックス本体に対して完全に閉じた状態と思い込んで、そのまま自動車を走行させてしまうことを防止できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、前記ロック機構のキーシリンダは、キーシリンダ本体、回転レバーおよびロックプレート部から構成できるため、構成が簡素であり、製造コストが高くなることを回避できる。
【0017】
なお、ロックプレート部は、(ii)両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合のシャフトの回転角(第2の回転角)に対応するキーシリンダ本体の進退位置(第2の進退位置)では、キーシリンダ本体の施錠回転を可能とし、また、(i)両ラッチ機構のフックが非係止位置にある場合のシャフトの回転角(第1の回転角)に対応するキーシリンダ本体の進退位置(第1の進退位置)と、(iii)一方のラッチ機構のフックが係止位置にあり他方のラッチ機構のフックが非係止位置にある場合のシャフトの回転角(第3の回転角)に対応するキーシリンダ本体の進退位置(第3の進退位置)では、キーシリンダ本体の施錠回転を不能とすることとなる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、キーシリンダ本体をルーフボックス本体の内側に向けて押し込むことで両ラッチ機構のフックが係止位置から非係止位置に回転するため、逆の内側から外側に引き抜く構造に比べて、ラッチ機構のフックの係止解除操作を行いやすく操作性に優れる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか1項の発明の効果に加え、ラッチ機構の維持手段およびセンサー部を簡素な構造にでき、製造コストが高くなることを回避できる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか1項の発明の効果に加え、ラッチ機構の維持手段およびセンサー部を簡素な構造にでき、製造コストが高くなることを回避できる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか1項の発明の効果に加え、ラッチ機構の維持手段およびセンサー部を簡素な構造にでき、製造コストが高くなることを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
自動車のルーフ1には、前後に2本のキャリア2、2が設置されていて、該キャリア2、2の上に、ルーフボックス3がクランプ部材12を介在して取付けられている。ルーフボックス3は、前後方向に長いカプセル形状をしていて、キャリア2、2に固定される容器形状のボックス本体4と、該ボックス本体4の上部から開口を覆うボックスカバー5とから成っている。
【0024】
ボックス本体4は、ABS樹脂製で、前後長さが1936ミリメートル、左右幅が736ミリメートルの方形をなし、底部に適宜のビード4aが形成されている。ボックスカバー5は、ABS樹脂製で、前後長さが1950ミリメートル、左右幅が750ミリメートルの方形をなし、ヒンジ機構6を中心にして開閉自在な構造になっている。また、ボックス本体4とボックスカバー5との間には、前後にガスステー8が設けられていて、ボックスカバー5が自動で開き且つその開いた位置を保持できるようになっている。ルーフボックス3の左端側には、ボックスカバー5の閉状態に係止するラッチ機構7A、7Bと、ラッチ機構7A、7Bによる係止状態をロックするロック機構9と、が設けられている。
【0025】
ボックス本体4には、図2に破線で示すように、ボックス本体4に収納した図示しない部品を、ボックス本体4に固定するためのベルト10がストラップブラケット11によって固定されている。なお、図3の符号13はクランプ部材12とルーフボックス3とを締結するネジの少なくとも1つを覆い隠す防盗用のネジカバーであり、符号14,15はボックス本体4の側面及び底面を補強する補強部材である。
【0026】
次に、ラッチ機構7A、7Bおよびロック機構9について詳しく説明する。
【0027】
ラッチ機構7A、7Bはボックスカバー5をボックス本体4を対して閉じた状態を保持可能とするものであり、ロック機構9はラッチ機構7A、7Bによるボックスカバー5の閉状態を解除可能にロックするものである。
【0028】
(ラッチ機構)
まず主に図6、7、10〜12を参照しつつラッチ機構7A、7Bについて説明する。ラッチ機構7A、7Bは、互いに離間した位置に第1のラッチ機構7Aと第2のラッチ機構7Bと、を備えている(図6参照)。これら第1のラッチ機構7Aおよび第2のラッチ機構7Bは同一の構造である。
【0029】
図6a、図7に示すように、各ラッチ機構7A、7Bは、前記ボックスカバー5の内側に固定されたスライドブラケット21と、スライドブラケット21に固定されたロックピン23と、ボックス本体4の内側に固定されて断面略L字状のブラケット25と、このブラケット25に軸支された非円形(この例では断面四角状)のシャフト19と、シャフト19に外嵌されてシャフト19と一体的に回転するフック27と、フック27を係止位置に向けて常時付勢するバネ部材29(この例ではコイル状のリターンスプリング)と、を備えた基本構造を有する。
【0030】
フック27は、ロックピン23を係止する係止位置(図11(a)、(b)参照)と、ロックピン23の係止しない非係止位置(図10(a)、(b)参照)と、に亘って回転自在となっている。図11(a)、(b)に示すフック27の係止位置では、当該フック27は、ボックスカバー5を閉じた状態でロックピン23を係止してボックスカバー5が開く方向へのロックピン23の移動を阻止する。また、図10(a)、(b)に示すフック27の非係止位置では、当該フック27は、ボックス本体4を閉じる際のロックピン23の係止位置への進入およびボックス本体4を開く際のロックピン23の係止位置からの退出を許容する。
【0031】
このフック27にはバネ受け部27dが形成されており、このバネ受け部27dにバネ部材29による付勢力が加わわることで、当該フック27が非係止位置から係止位置に向けて常に回転するように付勢されている。
【0032】
このような基本構造を有するラッチ機構7A、7Bは、さらに、フック27に対して軸支された回転部材31を備えて構成される。
【0033】
この回転部材31の回転軸30は、シャフト19(フック27の回転中心)と平行であり、シャフト19よりもフック27のフック部27c側に設けられている。この回転部材31には、本発明にかかるセンサー部31dと、本発明にかかる維持手段を構成する突っ張り部31cと、が形成されている。突っ張り部31cは、フック27が非係止位置にあるときに(図10(a)、(b))、ブラケット25に突っ張っることで、回転部材31の回転中心が係止位置側に回転することを防止している。つまり、回転部材31の突っ張り部31cは、ブラケット25に突っ張ることで、フック27が非係止位置(図10(a)、(b))から係止位置(図11(a)、(b))に向けて回転すること阻止している。
【0034】
なお、回転部材31にはバネ受け部31bが設けられ、第2のバネ部材33によって、常に上向きに回転(図10、図11中左回転)するように付勢されている。この回転部材31を第2のバネ部材33が付勢する方向とは逆側(つまり図10、11中右回転方向)に向けて力を加えると、ブラケット25のうち突っ張り部31cが当接する部分のすぐ下側にある開放孔部25cに当該突っ張り部31cが抜けて落ちて、突っ張り31cの突っ張りが解除される。すると、フック27を非係止位置に維持する突っ張りがなくなるため、フック27が非係止位置から係止位置(図10→図11)にむけて回転することとなる。
【0035】
ここで、回転部材31に形成されたセンサー部31dは、図10に示すフック27の非係止位置においてロックピン23の係止位置(図11におけるロックピン23の位置)にほぼ対応している。そのため、図10→図11に示すように、ロックピン23が係止位置に進入してくると当該ロックピン23がセンサー部31dを下側に押圧することとなる。すると、回転部材31の突っ張り部31cの突っ張りが外れてフック27が非係止位置から係止位置に回転して、図11に示すように係止位置のロックピン23を係止する。
【0036】
このような構成のラッチ機構7A、7Bによれば、ロックピン23が係止位置に入り込んでこない限り、図10に示すようにフック27が常に非係止位置に位置することとなる。
【0037】
本実施形態では、図6に示すように、第1のラッチ機構7Aと第2のラッチ機構7Bは、当該2つのラッチ機構7A、7Bに亘って延在する単一のシャフト19を共用し、これら2つラッチ機構7A、7Bの略中間位置に配置されたロック機構9に当該シャフト19が貫通している。
【0038】
(ロック機構の配置位置におけるシャフトの回転角)
本実施形態では、ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角は、(i)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が非係止位置にある場合と、(ii)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合と、(iii)一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構7Bまたは7Aのフック27が非係止位置にある場合と、でそれぞれ異なるようになっている。
【0039】
以下、より具体的に説明する。
【0040】
(i)図10に示すように、両ラッチ機構7A、7Bのフック27、27が非係止位置にある場合は、両フック27、27の回転角は、図10(a)、(b)に示すように基準となる第1の回転角(0°)となる。このとき、ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角は、図10(c)に示すように、両フック27、27におけるシャフト19の回転角に追従して第1の回転角(0°)となる。
【0041】
(ii)また、図11に示すように、両ラッチ機構7A、7Bのフック27、27が係止位置にある場合は、両フック27、27の回転角は、図11(a)、(b)に示すように基準位置(0°)から20°回転した第2の回転角(20°)となる。このとき、ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角は、図11(c)に示すように、両フック27、27におけるシャフト19の回転角に追従して第2の回転角(20°)となる。
【0042】
(iii)そして、図12に示すように、一方のラッチ機構7Aのフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構7Bのフック27が非係止位置にある場合には、両フック27、27の回転角は、一方のフック27が図12(a)に示すように第2の回転角(20°)となり、他方のフック27が図12(b)に示すように第1の回転角(0°)となる。
【0043】
このとき、シャフト19は、両ラッチ機構7A、7Bにまたがる単一のシャフト19であるため、ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角は、両フック27、27の回転角には追従できず、第1の回転角(0°)と第2の回転角(20°)との中間の第3の回転角(10°)となる。これは、シャフト19を外嵌するフック27の嵌合口とシャフト19との間のクリアランスや、シャフト19の捻れにより、このような回転角の相違が生じることとなる。
【0044】
本実施形態では、このように、(i)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が非係止位置にある場合(図10参照)と、(ii)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合(図11参照)と、(iii)一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構7Bまたは7Aのフック27が非係止位置にある場合(図12参照)と、で、シャフト19の回転角が異なるように両ラッチ機構7A、7Bを構成することで、ロック機構9と協働して、(iii)一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構7Bまたは7Aのフック27が非係止位置にある場合(図12参照)に、キーシリンダ本体47の施錠回転をできないようにした特徴点を有する。以下、両ラッチ機構7A、7Bに協働するロック機構9について説明する。
【0045】
(ロック機構)
ロック機構9は、上述のように第1のラッチ機構7Aと第2のラッチ機構7Bとの略中間位置に配置されている。このロック機構9は、キーシリンダ41を備えて構成されている。本実施形態のキーシリンダ41は、当該ロック機構9が配置される位置におけるシャフト19の回転角に応じて、両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合(図11)のみに施錠によってシャフト19の回転を阻止でき、少なくとも一方のラッチ機構7Aまたは7B)のフック27が非係止位置にある場合(図10および図12)には施錠ができないようにしたものである。
【0046】
具体的には、キーシリンダ41は、ボックス本体4の内側に固定されシャフト19を軸支するブラケット43と、シャフト19に外嵌されてシャフト19と一体的に回転する回転レバー45と、ブラケット43内に収容されるキーシリンダ本体47と、を備えて構成されている。
【0047】
キーシリンダ本体47の外筒47aには、回転レバー45の係合部45bと係合する係合部47bが一体に設けられており、回転レバー45が回転すると、キーシリンダ本体47はその軸方向(図10〜図12中の左右方向)に向けて進退するようになっている。ボックス本体4のキーシリンダ本体47に対応する位置には、開口が設けられており、この開口を通じてキーシリンダ本体47がボックス本体4外に出没する。
【0048】
キーシリンダ本体47の内筒47cには、当該キーシリンダ本体47の軸方向に向けて延在する円柱状の延長部47dが設けられており、この延長部47dの外周に径方向に突出する凸状のキー係合部47eが形成されている。
【0049】
ブラケット43には、キーシリンダ本体47の軸方向に対向する位置にロックプレート部49が設けられている。このロックプレート部49は、キーシリンダ本体47の進退位置に応じてキーシリンダ本体47の施錠回転を防止するものである。具体的には、ロックプレート部49には、キーシリンダ本体47が進退した際に、キーシリンダ本体47の延長部47dを挿通できる挿通口49bが形成されている。この挿通口49bの周縁部には、キーシリンダ本体47のキー係合部47eに対応するキー溝部49cが形成されている。そのため、キーシリンダ本体47を進退させて、キーシリンダ本体47のキー係合部47eがロックプレート部49のキー溝部49cから脱出した位置では、キーシリンダ本体47を施錠回転できるが、キーシリンダ本体47のキー係合部47eがロックプレート部49のキー溝部49c内にある位置では、キーシリンダ本体47を施錠回転できない。
【0050】
そしてこの実施形態では、(i)図10に示すように両ラッチ機構7A、7Bのフック27が非係止位置にある場合の、ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角(第1の回転角=0°)では、キーシリンダ本体47のキー係合部47eがロックプレート部49のキー溝部49cから脱出しないように、キーシリンダ本体47の進退位置(第1の進退位置)を設定し、キーシリンダ本体47の施錠回転を不能としている。
【0051】
また、(ii)図11に示すように両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合の、ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角(第2の回転角=20°)では、キーシリンダ本体47のキー係合部47eがロックプレート部49のキー溝部49cから脱出するようにキーシリンダ本体47の進退位置(第2の進退位置)を設定し、キーシリンダ本体47の施錠回転を可能としている。
【0052】
また、(iii)図12に示すように一方のラッチ機構7A(または7B)のフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構7B(または7A)のフック27が非係止位置にある場合の、ロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角(第3の回転角=10°)では、キーシリンダ本体47のキー係合部47eがロックプレート部49のキー溝部49cから脱出しないようにキーシリンダ本体47の進退位置(第3の進退位置)を設定し、キーシリンダ本体47の施錠回転を不能としている。
【0053】
そのため、本実施形態では、(ii)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合(図11参照)では、キーシリンダ本体47の施錠回転が可能となり、(i)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が非係止位置にある場合(図10参照)と、(iii)一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構7Bまたは7Aのフック27が非係止位置にある場合(図12参照)と、では、キーシリンダ本体47の施錠回転が不可能となっている。
【0054】
そのため、本実施形態では、2つのラッチ機構7A、7Bのフック27がかかった状態でのみキーシリンダによる施錠が可能であり、一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27のみか掛かっている状態ではキーシリンダより施錠ができないため、一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27が掛かっていない状態でボックスカバー5がボックス本体4に対して完全に閉じた状態と思い込んで、そのまま自動車を走行させてしまうことを防止できる。
【0055】
(作用)
次に、この実施形態の作用について説明する。
【0056】
まず、図10に示すようにボックスカバー5が開いた状態では、両ラッチ機構7A、7Bの回転部材31の突っ張り部31cがロックプレート部49に突っ張っている。そのため、フック27が係止位置側へ回転(図10中の右回転)することが防止され、非係止位置に維持される(図10(a)(b)参照)。
【0057】
ここで、両ラッチ機構7A、7Bのシャフト19、19の回転角はいずれも第1の回転角(0°)となり、これに伴ってロック機構9の配置位置におけるシャフト19に回転角も、図10(c)に示すように第1の回転角(0°)となる。このシャフト19の回転角(第1の回転角)に応じて、キーシリンダ本体47の進退位置(第1の進退位置)は、図10(c)に示すようにキーシリンダ本体47のキー係合部47eがロックプレート部49のキー溝部49cから脱出しない位置となる。そのため、キーシリンダ本体47の施錠回転が不能となっている。
【0058】
次に、図10→図11にボックスカバー5が開いた状態からボックスカバー5を閉じると、ロックピン23の移動終点直前で、回転部材31のセンサー部31dにロックピン23が押接される。この押圧力により、回転部材31の突っ張り部31cがブラケット25の開放孔部25cに滑り抜けて、当該回転部材31の突っ張り部31cの突っ張りが外れる。すると、バネ部材29の付勢力によって、フック27が非係止位置から係止位置に向けて回転(図10、11中の右回転)し、ロックピン23をフック27のフック部27cで係止する。これにより、ボックスカバー5は閉じられた状態に保持される。
【0059】
このとき、フック27が非係止位置から回転位置に回転(図10、11中右回転)することで、各ラッチ機構7A、7Bにおけるシャフト19の回転角は、第1の回転角(0°)から第2の回転角(20°)まで回転する。これに伴ってロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角も、図11(c)に示すように第2の回転角(20°)となる。
【0060】
このロック機構9の配置位置におけるシャフト19の回転角(第2の回転角)に応じて、図11(c)に示すようにキーシリンダ本体47の進退位置(第2の進退位置)は、キーシリンダ本体47のキー係合部47eがロックプレート部49のキー溝部49cから脱出した位置となる。そのため、キーシリンダ本体47の施錠回転が可能となる。
【0061】
この図11(c)に示す状態で、キーシリンダ本体47のキー差込溝にキー17を差し込んで、キーシリンダ本体47を施錠回転(例えば右回転)させて、最終的に、当該キー17をキーシリンダ本体47から抜きとることでルーフボックスの施錠を完了する。すると、キーシリンダ本体47のキー係合部47eが、ロックプレート部49に対して当接し、キーシリンダ本体47の進退動作が阻止される。このようにキーシリンダ本体47の進退動作が阻止されると、キーシリンダ本体47の進退動作に連動して回転するシャフト19の回転も阻止される。そのため、シャフト19と一体的に回転するラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置に維持されて、ロックピン23はもはや移動することができず、ルーフボックス3が閉状態にロックされる。
【0062】
次に、ルーフボックス3を開く場合には、再び、キーシリンダ本体47にキーを差し込んで、キーシリンダ本体47を解錠回転(例えば左回転)させる。すると、キーシリンダ本体47のキー係合部47eと、ロックプレート部49のキー溝部49cと、がキーシリンダ本体47の軸方向に沿って一致するため、キーシリンダ本体47をボックス本体4の内側に向けて押し込むことができるようになる(図11(c)参照)。
【0063】
この図11(c)に示す状態で、キーシリンダ本体47をボックス本体4の内側に向けて押し込むと、当該キーシリンダ本体47の進退動作に追従してシャフト19が回転(図11中左回転)する。すると、シャフト19の回転に伴って、両ラッチ機構7A、7Bのフック27は、図11→図10に示すように、係止位置から非係止位置に向けて回転して、図10に示す非係止位置まで戻る。このとき、回転部材31は第2のバネ部材によって、図10中左回転するように付勢されているため、回転部材31の突っ張り部31cは、ブラケット25の開放孔部25cから抜けだして、再びブラケット25に突っ張ることとなる。
【0064】
この状態で、ガスステー8の力により、ボックス本体4に対してボックスカバー5は自動的に開成できることになる。なお、ガスステー8のバネ力の強弱によって、開閉速度や開度量が異なる。
【0065】
(効果)
次に、本実施形態の主な特徴点をまとめる。
【0066】
(1)本実施形態のルーフボックスでは、ロック機構9が配置される位置におけるシャフト19の回転角が、(i)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が非係止位置にある場合と、(ii)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合と、(iii)一方のラッチ機構7A(または7B)のフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構7B(または7A)のフック27が非係止位置にある場合と、でそれぞれ回転角が異なる。そして、ロック機構9は、当該ロック機構9が配置される位置におけるシャフト19の回転角に応じて、両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合のみに施錠によってシャフト19の回転を阻止でき、少なくとも一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27が非係止位置にある場合には施錠ができないようにしたキーシリンダ41を備えて構成されている。
【0067】
そのため、2つのラッチ機構7A、7Bのフック27がかかった状態でのみキーシリンダ41による施錠回転が可能であるため、従来のように一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27のみか掛かっている状態ではキーシリンダより施錠回転ができないため、一方のラッチ機構7Aまたは7Bのフック27が掛かっていない状態でボックスカバー5がボックス本体4に対して完全に閉じた状態と思い込んで、そのまま自動車を走行させてしまうことを防止できる。
【0068】
(2)また本実施形態によれば、キーシリンダ41は、外筒47aと外筒47aに対して回転自在な内筒47cとを備えたキーシリンダ本体47と、前記2つのラッチ機構7A、7Bの略中間位置においてシャフト19に外嵌されてシャフト19と一体的に回転する回転レバー45であって、キーシリンダ本体47と係合してシャフト19の回転をキーシリンダ本体47の軸方向への進退移動に変換する回転レバー45と、キーシリンダ本体47の内筒47cと一体に形成されたキー係合部47eに係合することで、キーシリンダ本体47の進退位置に応じてキーシリンダ本体47の施錠回転を防止するロックプレート部49と、を備える。
【0069】
そのため、キーシリンダ41が、キーシリンダ本体47、回転レバー45およびロックプレート部49から構成できるため、構成が簡素であり、製造コストの増加を回避することができる。
【0070】
なお、ロックプレート部49は、(i)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が非係止位置にある場合のシャフト19の回転角(第1の回転角)に対応するキーシリンダ本体47の進退位置(第1の進退位置)と、(iii)一方のラッチ機構のフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構のフック27が非係止位置にある場合のシャフト19の回転角(第3の回転角)に対応するキーシリンダ本体47の進退位置(第3の進退位置)と、では、キーシリンダ本体47の施錠回転を不能し、また、(ii)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合のシャフト19の回転角(第2の回転角)に対応するキーシリンダ本体47の進退位置(第2の進退位置)では、キーシリンダ本体47の施錠回転を可能することとなる。
【0071】
(3)また本実施形態によれば、両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合には、キーシリンダ本体47がルーフボックス本体4の外側に向けて最大に突出した位置となり、キーシリンダ本体47をルーフボックス本体4の内側に向けて押圧することで、シャフト19を介して両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置から非係止位置に回転するものである。
【0072】
そのため、キーシリンダ本体47をルーフボックス本体4の内側に向けて押し込むことで両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置から非係止位置に回転するため、逆の外側に引き抜く構造に比べて、ラッチ機構7A、7Bのフック27の係止解除操作を行いやすく、操作性に優れる。
【0073】
(4)また本実施形態によれば、ラッチ機構7A、7Bは、ボックス本体4の内側に固定されたブラケット25と、フック27に対して軸支された回転部材31と、を備える。
【0074】
フック27を非係止位置に維持可能な維持手段31cは、前記回転部材31に形成された突っ張り部31cとして構成される。また、ボックスカバー5を閉じる際にロックピン23が係止位置に入り込んでくると維持手段31cによる維持を開放するセンサー部31dは、回転部材31に一部として形成されている。
【0075】
そのため、ラッチ機構7A、7Bの維持手段31cおよびセンサー部31dを簡素な構造にでき、製造コストが高くなることを回避できる。
【0076】
次に、その他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0077】
(第2実施形態)
次に、図13〜図15を参照しつつ本発明の第2実施形態について説明する。
【0078】
第2実施形態では、第1実施形態とラッチ機構7A、7Bの構成が異なる。
【0079】
第2実施形態のラッチ機構7A、7Bは、回転部材51がブラケット25に対して軸支されている点で、回転部材31がフック27に軸支されている第1実施形態と異なる。また、第2実施形態のラッチ機構7A、7Bでは、第2のバネ部材53による回転部材51を回転させる方向が、第1実施形態とは逆である。
【0080】
本実施形態では、回転部材51とフック27とに互いに係合する係合部51b、27eが形成されている。第2のバネ部材53は、回転部材51を一方向に回転(図13〜図15中の右回転)させるものであり、この方向に回転部材51が回転すると、図14→図13に示すように、回転部材51の係合部51bがフック27の係合部27eと係合してフック27が非係止位置に向けて回転することとなる。そのため、本実施形態では、フック27部を非係合位置に維持する維持手段は、回転部材51の係合部51bと第2のバネ部材53とにより構成される。
【0081】
また、本実施形態におけるセンサー部(ボックスカバー5を閉じる際にロックピン23が係止位置に入り込んでくると維持手段による維持を開放させてフック27を係合位置に回転させるもの)は、回転部材51の一部51cとして構成されている。このセンサー部51cは、図13(a)(b)に示すように、フック27が非係止位置にある状態でロックピン23の係止位置にほぼ位置する。そして、図13→図14に示すように、ロックピン23が係止位置に進入してくると、回転部材51を前記一方向とは逆側に回転(図13〜図15中の左回転)させる。これに伴い、図13→図14に示すように、フック27部は、バネ部材29の付勢力を受けつつ、非係止位置から係止位置に向けて回転することとなる。
【0082】
以上のように、第2実施形態では、維持手段とセンサー部の構成が第1実施形態形態と異なる。
【0083】
このように第2実施形態によれば、フック27を非係合位置に維持しておく維持手段は、回転部材51を一方向に回転させるとフック27に形成された係合部27eと係合してフック27を非係止位置に向けて回転させる回転部材51に形成された係合部51bと、フック27を非係止位置に維持されるように回転部材51を付勢する第2のバネ部材53と、により構成される。また、センサー部は、回転部材51の一部51cとして形成される。
【0084】
そのため、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、ラッチ機構7A、7Bの維持手段51b、53およびセンサー部51cを簡素な構造にでき、製造コストが高くなることを回避できる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、図16〜図18を参照しつつ本発明の第3実施形態について説明する。
【0086】
第3実施形態は、第1、2実施形態とラッチ機構7A、7Bの構成が異なる。第3実施形態のラッチ機構7A、7Bは第1、第2実施形態と異なり、回転部材31、51を備えず、ブラケット25に固定された第2のバネ部材61を備えて構成されている。
【0087】
フック27を非係合位置に維持しておく維持手段は、この第2のバネ部材61で構成される。第2のバネ部材61は、フック27に形成された係合部63と係合することでフック27を非係止位置に維持し且つフック27が非係止位置と係止位置とに亘って回転する際にフック27に形成された係合部63の通り抜けを許容するものである。
【0088】
また本実施形態のセンサ部(ボックスカバー5を閉じる際にロックピン23が係止位置に入り込んでくると維持手段61による維持を解除するもの)は、フック27の一部65として構成されている。このフック27に一体に形成されたセンサー部65は、当該フック27が非係止位置にある際にロックピン23の係止位置にほぼ位置してロックピン23が係止位置に進入してくると(図16→図17)、フック部27cを非係止位置から係止位置に向けて回転させる。
【0089】
このように第3実施形態では、維持手段61とセンサー部65の構成が第1、2実施形態と異なる。
【0090】
このように第3実施形態によれば、維持手段61は、ブラケット25に固定された第2のバネ部材61によって構成され、また、センサー部65は、フック27の一部65として形成されている。そのため、本第3実施形態によれば、第1、2実施形態と同様にラッチ機構7A、7Bの維持手段61およびセンサー部65を簡素な構造にでき、製造コストが高くなることを回避できる。
【0091】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、ロック機構9は、2つのラッチ機構7A、7Bの略中間位置に配置されているため、当該ロック機構9が配置される位置におけるシャフト19の回転角は、(iii)一方のラッチ機構7A(または7B)のフック27が係止位置にあり他方のラッチ機構7B(または7A)のフック27が非係止位置にある場合においける回転角が、(i)両ラッチ機構のフック27が非係止位置にある場合と、(ii)両ラッチ機構7A、7Bのフック27が係止位置にある場合と、の略中間になる。
【0092】
これにより、当該ロック機構9が配置される位置におけるシャフト19の回転角に対応して、キーシリンダ41の施錠可能な位置と、解錠可能な位置と、の設計が比較的容易となる利点を有する。
【0093】
なお、本発明では、ロック機構9が2つのラッチ機構7A、7Bの略中間位置に配置されていない構造も無論含むことは言うまでもない。また、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施形態のルーフボックスを示す斜視図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1の側面図。
【図4】図2の矢視IVにかかる前側からの正面図。
【図5】図2の矢視Vにかかる後ろ側からの正面図。
【図6】(a)は第1実施形態のルーフボックスの第1のラッチ機構を模式的に示す上面図、(b)は第2のラッチ機構を模式的に示す上面図、(c)はロック機構を模式的に示す上面図。
【図7】(a)は同ルーフボックスの第1のラッチ機構を示す図3中のA−A断面図、(b)はルーフボックスの第2のラッチ機構を示す図3中のB−B断面図。
【図8】同ルーフボックスのロック機構を示す図3中のC−C断面図。
【図9】同ロック機構のロックプレート部とキーシリンダ本体との関係を示す模式図であって、(a)は解錠状態を示す図であり、(b)は施錠状態を示す図。
【図10】2つのラッチ機構のフックがかかっていない状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【図11】2つのラッチ機構のフックがかかっている状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【図12】一方のラッチ機構のフックのみがかかっている状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【図13】本発明の第2実施形態のルーフボックスにおいて、2つのラッチ機構のフックがかかっていない状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【図14】本発明の第2実施形態のルーフボックスにおいて、2つのラッチ機構のフックがかかっている状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【図15】本発明の第2実施形態のルーフボックスにおいて、一方のラッチ機構のフックのみがかかっている状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【図16】本発明の第3実施形態のルーフボックスにおいて、2つのラッチ機構のフックがかかっていない状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【図17】本発明の第3実施形態のルーフボックスにおいて、2つのラッチ機構のフックがかかっている状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【図18】本発明の第3実施形態のルーフボックスにおいて、一方のラッチ機構のフックのみがかかっている状態におけるラッチ機構とロック機構との関係を示す図であって、(a)は第1のラッチ機構の断面図、(b)は第2のラッチ機構の断面図、(c)はロック機構の断面図。
【符号の説明】
【0095】
1…ルーフ
2…キャリア
3…ルーフボックス
4…ボックス本体
4a…ビード
5…ボックスカバー
6…ヒンジ機構
7A…第1のラッチ機構
7B…第2のラッチ機構
8…ガスステー
9…ロック機構
10…ベルト
11…ストラップブラケット
12…クランプ部材
13…ネジカバー
14,15…補強部材
17…キー
19…シャフト
21…スライドブラケット
23…ロックピン
25…ブラケット
25c…開放孔部
27…フック
27c…フック部
27d…バネ受け部
27e…係合部
29…バネ部材
30…回転軸
31…回転部材
31b…バネ受け部
31c…突っ張り部(維持手段)
31d…センサー部
33…第2のバネ部材
41…キーシリンダ
43…ブラケット
45…回転レバー
45b…係合部
47…キーシリンダ本体
47a…外筒
47b…係合部
47c…内筒
47d…延長部
47e…キー係合部
49…ロックプレート部
49b…挿通口
49c…キー溝部
51…回転部材
51b…係合部(維持手段)
51c…回転部材の一部(センサー部)
53…第2のバネ部材
61…第2のバネ部材(維持手段)
63…係合部
65…フックの一部(センサー部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のルーフに固定される容器形状のボックス本体と、前記ボックス本体に対してヒンジ機構を介して取り付けられ当該ボックス本体の上部開口部を開閉自在とするボックスカバーと、前記ボックスカバーを前記ボックス本体を対して閉じた状態を保持可能とする互いに離間して配置される2つのラッチ機構と、前記ラッチ機構による前記ボックスカバーの閉状態をロック可能なロック機構と、を備えて構成される車載用ルーフボックスであって、
前記各ラッチ機構は、
前記ボックスカバーに固定されたロックピンと、
前記ボックス本体に軸支されたシャフトと、
前記シャフトに外嵌されて前記シャフトと一体的に回転するフックであって、前記ボックスカバーを閉じた状態で前記ロックピンを係止する係止位置と、前記ボックス本体を閉じる際の前記ロックピンの係止位置への進入および前記ボックス本体を開く際の前記ロックピンの係止位置からの退出を許容する非係止位置と、に亘って回転自在なフックと、
前記フックを前記係止位置に向けて常時付勢するバネ部材と、
前記フックを非係止位置に維持可能な維持手段と、
前記フックが前記非係止位置にある状態で前記ロックピンが当該ロックピンの係止位置に入り込んでくると前記維持手段による維持を開放させて前記フックを係合位置に回転させるセンサー部と、
を備えて構成され、
前記シャフトは2つのラッチ機構に亘って延在することで単一のシャフトで構成され、 前記ロック機構が配置される位置におけるシャフトの回転角は、(i)両ラッチ機構のフックが非係止位置にある場合と、(ii)両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合と、(iii)一方のラッチ機構のフックが係止位置にあり他方のラッチ機構のフックが非係止位置にある場合と、でそれぞれ回転角が異なり、
前記ロック機構は、当該ロック機構が配置される位置におけるシャフトの回転角に応じて、両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合のみに施錠によってシャフトの回転を阻止でき、少なくとも一方のラッチ機構のフックが非係止位置にある場合には施錠ができないようにしたキーシリンダを備えて構成されていることを特徴とする車載用ルーフボックス。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用ルーフボックスであって、
前記ロック機構のキーシリンダは、
外筒と外筒に対して回転自在な内筒とを備えたキーシリンダ本体と、
前記シャフトに外嵌されて前記シャフトと一体的に回転する回転レバーであって、前記キーシリンダ本体と係合して前記シャフトの回転を前記キーシリンダ本体の軸方向への進退移動に変換する回転レバーと、
前記キーシリンダ本体の内筒に形成されたキー係合部に係合することで、前記キーシリンダ本体の進退位置に応じて前記キーシリンダ本体の施錠回転を防止するロックプレート部と、
を備えることを特徴とする車載用ルーフボックス。
【請求項3】
請求項2に記載の車載用ルーフボックスであって、
両ラッチ機構のフックが係止位置にある場合には、前記キーシリンダ本体が前記ルーフボックス本体の外側に向けて最大に突出した位置となり、
前記キーシリンダ本体をルーフボックス本体の内側に向けて押圧することで、シャフトを介して両ラッチ機構のフックが係止位置から非係止位置に回転することを特徴とする車載用ルーフボックス。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の車載用ルーフボックスであって、
前記ラッチ機構は、前記ボックス本体の内側に固定されたブラケットと、前記フックに対して前記シャフトと平行に軸支された回転部材と、を備え、
前記維持手段は、前記回転部材に形成され、前記フックが非係止位置にある際に前記ブラケットに突っ張っることで前記フックが係止位置側に回転することを防止する突っ張り部として構成され、
前記センサー部は、前記回転部材に形成され、前記フックが非係止位置にある際に前記ロックピンの係止位置にほぼ位置して前記ロックピンが係止位置に進入してくると前記突っ張り部の突っ張りが外れる方向に当該回転部材を回転させるものであることを特徴とする車載用ルーフボックス。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の車載用ルーフボックスであって、
前記ラッチ機構は、前記ボックス本体の内側に固定されたブラケットと、前記ブラケットに対して前記シャフトと平行に軸支された回転部材と、を備え、
前記維持手段は、前記回転部材を一方向に回転させると前記フックに形成された係合部と係合して前記フックを非係止位置に向けて回転させる前記回転部材に形成された係合部と、前記フックを非係止位置に維持されるように前記回転部材を付勢する第2のバネ部材と、により構成され、
前記センサー部は、前記回転部材に形成され、前記フックが非係止位置にある状態で前記ロックピンの係止位置にほぼ位置して前記ロックピンが係止位置に進入してくると前記回転部材を前記一方向とは逆側に回転させるものであることを特徴とする車載用ルーフボックス。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか1項に記載の車載用ルーフボックスであって、
前記ラッチ機構は、前記ボックス本体の内側に固定されたブラケットを備え、
前記維持手段は、前記ブラケットに固定され、前記フックに形成された係合部と係合することで前記フックを非係止位置に維持し且つ前記フックが非係止位置と係止位置とに亘って回転する際に前記フックに形成された係合部の通り抜けを許容する第2のバネ部材で構成され、
前記センサー部は、前記フックに一体に形成され、当該フックが非係止位置にある際に前記ロックピンの係止位置にほぼ位置して前記ロックピンが係止位置に進入してくると前記フック部を非係止位置から係止位置に向けて回転させるものであることを特徴とする車載用ルーフボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−143408(P2009−143408A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323216(P2007−323216)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(390005304)ピア株式会社 (19)
【Fターム(参考)】