説明

車載用放電灯点灯装置

【課題】薄型化を犠牲にすることなく、放熱効果を向上させる。
【解決手段】実装基板13の表面及び裏面のうち、灯部側の反対側の面に半導体部品14及び大型部品15を実装する。ケースボディ11は、半導体部品14を配置する中空部分を薄くして、半導体部品14とケースボディ11との距離を短くすると共に、その外側に放熱フィン12を設ける。大型部品15を配置する厚い中空部分との差の厚さだけ、放熱フィン12のサイズを大きくすることができ、半導体部品14からの熱を効果的に放熱させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れた車載用放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用前照灯として、高効率で高輝度のHID(High Intensity Discharge)ランプを採用することがある。このようなHIDランプ等の車載用放電灯を点灯させる点灯装置は、高圧パルスを発生させてランプを点灯させるイグナイタ部と、ランプ点灯後に安定点灯を継続させるためのインバータ部とを有する。HIDランプは小型車及び軽自動車にも採用されるようになってきており、前照灯の小型化及び薄型化が図られている。
【0003】
特許文献1では、小型化、薄型化が可能で、生産体制の合理化を達成する車載用放電灯点灯装置が開示されている。この提案では、イグナイタ部は、前照灯を収納する灯部内に配置し、インバータ部はケース内に収納して、このケースを灯部の底面又は側面等にねじ止めするようになっている。
【特許文献1】特開2002−367413公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された装置においては、インバータ部を構成するケース内には、回路基板を配置する。この回路基板上には比較的小型の半導体部品や、トランス、電解コンデンサ等の大型部品を配置する。特許文献1では、放熱についても考慮しており、回路基板上の半導体部品の配置に応じて、ケース底面に凹凸を形成している。これにより、インバータ部を薄型に構成すると共に、回路基板をケース底面に近づける構造となっている。ケース側面には放熱フィンが形成されており、半導体部品をケースに近づけることで、半導体部品からの熱を放熱構造を有するケースに逃がしやすくして、効率的な放熱を可能にしている。
【0005】
しかしながら、ケース側面に設けたフィンだけでは、十分な放熱効果が得られないという問題があった。
【0006】
本発明は、装置の厚さを厚くすることなく、灯部への取り付け面の反対側の面において十分なサイズの放熱フィンを設け、発熱量が大きい半導体部品を放熱フィンの近傍に配置可能とすることにより、薄型化を犠牲にすることなく、十分な放熱効果を得ることができる車載用放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車載用放電灯点灯装置は、ランプが収納される灯部に取り付けられ、前記灯部内のイグナイタ部に電気的に接続されるインバータ部を構成するケースボディと、前記ケースボディ内に収納される実装基板と、前記実装基板の前記灯部側に対向する面の反対側の面上に実装される半導体部品と、前記半導体部品よりも寸法が大きく前記半導体部品の実装面と同一面上に実装される大型部品と、前記半導体部品の実装位置近傍における前記ケースボディの外面に形成する放熱フィンとを具備したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、灯部に取り付けられたケースボディには、灯部からの熱が伝達される。半導体部品は、実装基板の灯部側に対向する面の反対側の面上に実装するので、灯部からの熱の影響が小さい。また、半導体部品の実装位置近傍におけるケースボディの外面には放熱フィンを形成しており、半導体部品から発した熱を放熱フィンを介して効果的に放熱する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置の厚さを厚くすることなく、灯部への取り付け面の反対側の面において十分なサイズの放熱フィンを設け、発熱量が大きい半導体部品を放熱フィンの近傍に配置可能とすることにより、薄型化を犠牲にすることなく、十分な放熱効果を得ることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る車載用放電灯点灯装置が搭載された車載用放電灯装置を示す説明図である。本実施の形態は車両の前照灯に適用したものである。
【0011】
灯部1は前面に透明部材2を取り付け、後端開口部には、キャップ3を取り付けている。灯部1内には、反射板4を固定し、反射板4の中央開口にはソケット5を取り付ける。このソケット5の前方側にHIDランプ6を取り付けている。なお、HIDランプ6としては、無水銀のものを用いる。ソケット5の後端側にはイグナイタ部7を取り付ける。
【0012】
本実施の形態においては、灯部1の底面の外側には、インバータ部8を取り付け固定している。インバータ部8は、金属製、例えばアルミニウム製のケースボディ11及びケースボディ11内に収納された回路部品によって構成する。ケースボディ11は、例えばアルミニウム材料で構成している。ケースボディ11は、図示しないビス等によって灯部1の底面に固定するようになっている。
【0013】
図2はインバータ部8の断面構造を示す説明図であり、図3はケースボディ11の構成を示す斜視図である。なお、図3は図2の底面側を上にして示すものである。
【0014】
図2及び図3に示すように、ケースボディ11は、外形が略直方体で、一角に放熱フィン12が形成された放熱部16を有する。ケースボディ11は、放熱部16を除く部分は中空に構成する。この中空部分に、回路部品等を配置するようになっている。
【0015】
図2に示すように、ケースボディ11の上面近傍には、実装基板13を配置する。実装基板13はケースボディ11の上面又は底面に図示しないネジによってねじ止めしている。実装基板13は、表面及び裏面の両面に部品を実装可能である。なお、実装基板13の表面及び裏面に実装した部品同士は、図示しないスルーホールによって電気的に接続可能である。本実施の形態においては、実装基板13の裏面の放熱部16に対向する位置には、半導体部品14を配置するようになっている。半導体部品14を配置する位置及びその周辺部分においては、ケースボディ11の中空部分の厚さは比較的薄くする。これにより、実装基板13の裏面に半導体部品14を実装すると、半導体部品14とケースボディ11の内面との距離は十分に短くなっている。例えば、半導体部品14とケースボディ11の内面との間の距離は1mm以下である。
【0016】
なお、半導体部品14に対向するケースボディ11の内面に、半導体部品14の配置に応じた凹凸を形成することで、半導体部品14の実装位置近傍において、実装基板13とケースボディ11の内面との距離を更に一層短くしてもよい。
【0017】
本実施の形態においては、ケースボディ11の中空部分が薄く形成される領域、即ち、半導体部品14の実装位置及びその周辺部分に対向するケースボディ11の外面には、放熱フィン12が形成される放熱部16を設けている。図3の例では、薄い中空部分の外側の放熱部16は、ケースボディ11の1角に設けているが、放熱部16をケースボディ11の一辺に沿ってケースボディ11の一端側の全域に設けてもよい。
【0018】
また、本実施の形態においては、実装基板13の裏面の半導体部品14の配置領域以外の領域には、比較的大型のトランスや電解コンデンサ等の大型部品15を実装するようになっている。大型部品15は実装基板13表面に垂直な方向のサイズが大きく、大型部品15の配置位置において、実装基板13とケースボディ11の内面との間の中空部分は十分な距離(厚さ)を必要とする。従って、ケースボディ11の外形を略直方体とすると、ケースボディ11の水平面内の寸法は、実装基板13のサイズによって略規定され、鉛直面内の寸法は大型部品15の垂直寸法によって略規定される。
【0019】
本実施の形態においては、大型部品15が配置されない中空部分、即ち、半導体部品14が配置される中空部分は、十分に薄く形成することができることから、これらの中空部分の厚さの差を利用して、放熱部16の垂直方向の寸法を十分に大きく設定するようになっている。即ち、十分に大きいサイズの放熱フィン12を構成することができる。
【0020】
なお、ケースボディ11の薄い中空部分のみ、或いはケースボディ11の中空部分の全域に、プラスチック系の充填剤を充填してもよい。
【0021】
実装基板13の表面には、コネクタ10を実装している。ケースボディ11の上面には開口部を形成しており、この開口部を介してコネクタ10はケースボディ11の上面から露出するようになっている。一方、灯部1の底面にも、開口部を設けており、この開口部にコネクタ10を挿通することで、ケースボディ11の上面を灯部1の底面に密着させて固定することができるようになっている。コネクタ10にはハーネス9の一端を接続しており、ハーネス9の他端はイグナイタ部7に接続する。これにより、イグナイタ部7とインバータ部8との間の電気的な接続を行っている。
【0022】
また、ケースボディ11の側面にも開口部を形成しており、この開口部を介して、実装基板13に電気的に接続された(図示省略)電源コネクタ18がケースボディ11の側面から露出するようになっている。なお、コネクタ10及び電源コネクタ18としては、防水性能に優れた部品を用いる。
【0023】
次に、このように構成された実施の形態の作用について説明する。
【0024】
車載用に使用されるインバータ部8は、図1に示すように、灯部1の下側に取り付けられることが多い。灯部1内部には、ランプ6が取り付けられ、ランプ6の点灯中は、ランプ1の発熱によって、灯部1も高熱となる。更に、灯部1の熱はインバータ部8にも伝達される。即ち、灯部1の熱は、その底面に取り付けられたケースボディ11に伝達される。
【0025】
一方、インバータ部8内においては、半導体部品14の温度が上昇が著しい。しかし、本実施の形態においては、半導体部品14は、実装基板13の裏面側、即ち、実装基板13の表面及び裏面のうち、灯部1側に対向していない裏面に設けており、半導体部品14は灯部1の温度上昇の影響を受けにくい。
【0026】
また、半導体部品14とケースボディ11の内面との距離は十分に短い。従って、半導体部品14から発した熱は、容易にケースボディ11に伝達される。ケースボディ1の外面のうち、半導体部品14が配置される薄い中空部分の外側には、放熱フィン12を設けている。灯部1の側方からの空気の流れによって、放熱フィン12間の隙間に空気が流れ、放熱フィン12の熱は効率よく放熱される。これにより、放熱フィン12の形成部分においては高い放熱効果でケースボディ11外面の放熱が行われる。半導体部品14は放熱フィン12に隣接して配置しており、半導体部品14の熱は、ケースボディ11から放熱フィン12を介して放熱される。こうして、半導体部品14の配置領域及びその周辺領域を効率的に冷却することができる。
【0027】
しかも、放熱フィン12は、大型部品15が配置されるケースボディ11の中空部分の厚さと半導体部品14が配置される中空部分の厚さとの差に応じて、十分な寸法に形成しており、極めて放熱効果が高い。これにより、十分な放熱効果を得ることができ、部品の信頼性を向上させることができる。
【0028】
このように、本実施の形態においては、半導体部品及び大型部品を、実装基板の灯部側と反対側の裏面に配置すると共に、半導体部品を配置する部分についてはケースボディの中空部分を薄く構成し、この部分のケースの外面には、大型部品を配置する厚い中空部分との差だけ十分な寸法の放熱フィンを形成する。即ち、装置の厚さを厚くすることなく十分なサイズの放熱フィンを半導体部品の近傍に配置することができ、半導体部品からの熱を効果的に放熱して、部品の信頼性を向上させることができる。
【0029】
なお、上記実施の形態においては、前照灯の光軸に対して直交する水平方向に空気の流れがあるものとして、灯部1へのケースボディ11の取り付けを行った。しかし、主に、前照灯の光軸前方方向から後方方向に向かって空気の流れがある場合には、放熱フィン12間の隙間に空気が流れやすいように、灯部1に対するケースボディ11の向きを図1に対して90度回転させた方がよいことは明らかである。
【0030】
図4は本発明の第2の実施の形態を示す説明図である。図4において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施の形態は、灯部1’の背面にインバータ部8’を配置したものである。灯部1’は、底面でなく背面にインバータ部を取り付け可能にした点のみが図1の灯部1と異なる。
【0032】
インバータ部8’は、コネクタ10の取付位置のみが第1の実施の形態のインバータ部8と異なるのみである。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0033】
このように構成された実施の形態においても、インバータ部8’を構成するケースボディ11’に十分なサイズの放熱フィン12を設けており、ケースボディ11’内の半導体部品14(図2参照)からの熱を効率よく放熱させることができる。
【0034】
図5は本発明の第3の実施の形態を示す説明図である。図5において図2と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施の形態は電源コネクタ18’をケースボディ11”の上面に配置した点が図2と異なるのみである。
【0036】
本実施の形態によれば、電源コネクタ18’を実装基板13上に直接実装することができ、電源配線を引き回す必要がないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車載用放電灯点灯装置が搭載された車載用放電灯装置を示す説明図。
【図2】インバータ部8の断面構造を示す説明図。
【図3】ケースボディ11の構成を示す斜視図。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す説明図。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
1…灯部、6…HIDランプ、7…イグナイタ部、8…インバータ部、11…ケースボディ、12…放熱フィン、13…実装基板、14…半導体部品、15…大型部品、16…放熱部。
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプが収納される灯部に取り付けられ、前記灯部内のイグナイタ部に電気的に接続されるインバータ部を構成するケースボディと、
前記ケースボディ内に収納される実装基板と、
前記実装基板の前記灯部側に対向する面の反対側の面上に実装される半導体部品と、
前記半導体部品よりも寸法が大きく前記半導体部品の実装面と同一面上に実装される大型部品と、
前記半導体部品の実装位置近傍における前記ケースボディの外面に形成する放熱フィンとを具備したことを特徴とする車載用放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記ケースボディは、前記半導体部品を収納する中空部分の厚さが前記大型部品を収納する中空部分の厚さよりも薄く、
前記放熱フィンは、前記半導体部品を収納する中空部分の厚さと前記大型部品を収納する中空部分の厚さとの差に相当する寸法に形成されることを特徴とする請求項1に記載の車載用放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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