説明

車載用映像表示制御装置

【課題】この発明に係る実施形態は、表示映像の視認性を安定して維持し得ると共に、有効利用を図ることができる車載用映像表示制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態によれば、環境情報取得部は外部の明るさの情報を取得する。制御部は、前記環境情報取得部の出力に応じて、ディスプレイの明るさを調整する信号を出力する明るさ制御部を有する。ここで、前記明るさ制御部は、車両の位置情報や制御情報などにも応答して前記ディスプレイの明るさを調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、輝度調整機能をもつ車載用映像表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両に搭乗した乗客に対し、映像・グラフィック・文字情報ならびに音声情報を提供する情報配信表示システムがある。このシステムでは、鉄道車両内に映像表示装置を備え、車両内の乗客に対して映像・グラフィック・文字情報を提供している。また、鉄道車両の運行状態を把握するためのモニタリングシステム技術も存在する。
【0003】
また車載用の映像表示装置や据え置き型の映像表示装置において、周囲状況に応じて画質を調整する技術も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25533号公報
【特許文献2】特開2001−125556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道車両内に設置されるディスプレイとしては運転士が列車操作するために利用するディスプレイがあり、また乗客に対して画像で情報提供するためのディスプレイがある。このようなディスプレイが設置される鉄道車両内は、明るさが季節、時間帯、天気、走行場所によって変化するため、周囲環境によって表示される映像の視認性が低下することが考えられる。
【0006】
そこでこの実施形態では、映像の視認性の低下を防止すると共に、有効利用を図ることができる車載用映像表示制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、基本構成として、外部の明るさを入力する環境情報取得部と、前記環境情報取得部の出力に応じて、ディスプレイの明るさを調整する信号を出力する明るさ制御部とを有する。ここで、前記明るさ制御部は、車両の位置情報や制御情報などにも応答して前記ディスプレイの明るさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本開示の実施形態である表示制御装置が適用された列車の各種周辺環境を説明するための図である。
【図2】実施形態である表示制御装置を備えた表示装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示した表示制御装置によって映像がディスプレイに表示される例を示す説明図である。
【図4】実施形態である表示制御装置を列車内に設置した例を示す図である。
【図5】実施形態である表示制御装置を列車内に設置した他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1には、列車TRがおかれる様々な環境の例が示されている。同図に示されるように、列車TRは、駅構内に位置する状態ST1、郊外などで晴天の環境を走行する状態ST2、トンネル内を走行する状態ST3、夜間に走行する状態ST4などを取り得る。
【0010】
ここで、車両内の表示装置DSのディスプレイの明るさが常に一定であると、乗客、或いは運転士は、ディスプレイに表示された映像を視認することが困難となる場合がある。このため、周囲環境に応じて、適切にディスプレイの明るさを調整することが好ましい。
【0011】
例えば、駅構内、トンネル内、または夜間などの暗い環境では、ディスプレイの明るさをやや低下させたほうが、一方、郊外などの明るい環境では、ディスプレイの明るさを強くしたほうが見やすくなる。そこで、このような場合は、外部明るさ情報及び車両の各種状態情報に基づいて、ディスプレイの調光を行うと共に、入力映像信号の輝度も同時に調整する。
【0012】
上記のように、列車内のディスプレイの明るさは、周囲環境に応じて適応的に可変されて、視認性を良好に維持することが望まれる。
【0013】
図2は、周囲の環境に応じてディスプレイ14の明るさを調整する表示制御装置10を備えた表示装置DSの概略構成の一例を示している。環境情報取得部11には、フォトダイオードや光電素子などを用いた光センサから出力された明るさを示す明度信号の他、運転者が操作レバーなどのHMI(Human Machine Interface)を操作した内容を示す操作信号や、速度情報などの車両の状態信号も入力される(以下、環境情報取得部11に入力される情報を環境情報という。)。
【0014】
操作信号の例としては、車両の運転に関する加速、減速、停止を示す運転指令信号があり、また、環境情報には、明るさを示す信号や操作信号以外にも、車両に設置されたドアの開閉情報、速度発電機から出力される車輪の回転速度から求めた位置情報や速度情報、地上に設けられた無線LANのアクセスポイントを介して受信する事故情報、日時情報、および乗客に向けて提供されるコマーシャル情報を含めることができる。なお、位置情報は、車両に搭載されている車上子が路線に設置されている地上子から出力される信号を受信することで得ることもできる。
【0015】
環境情報取得部11で収集された明度信号などの環境情報は、明るさ制御部12に転送される。なお、環境情報取得部11と明るさ制御部12とは無線LANや有線LANなどの通信路で接続することができ、例えば、環境情報取得部11と明るさ制御部12が共に表示装置DS内に設置される場合は有線LANを採用し、環境情報取得部11を車両内の表示装置DSとは別の位置に設けた場合は無線LANを採用することが考えられる。
【0016】
明るさ制御器12は、環境情報の入力があると、視認性が落ちないようにディスプレイ14の明るさを制御する。具体的には、ディスプレイ14の背面側または側面側に設けられたバックライト13の明るさレベルと、ディスプレイ14に表示される映像の輝度レベルの調整を行う。これにより、ディスプレイ14の明るさが、ディスプレイ14が設置されている周囲の環境に応じて適応的に制御され、視聴者にとって表示された映像が見やすくなる。
【0017】
なお、上記の説明では、バックライト13の明るさレベルとディスプレイ14に表示される映像の輝度レベルの両方を制御するとしているが、いずれか一方のレベルを制御するようにしてもよい。
【0018】
一方、列車は、乗客が搭乗していない場合や、また回送運転が行われる場合がある。このような場合、明るさ制御部12には、環境情報取得部11を介し、車両に設けられた重量センサが検出した重量から求めた乗客数情報や運転者からの操作指令が入力されるため、この乗客数情報や操作指令に基づいて乗客が乗車していないこと、又は回送運転が行われていることを認識し、結果、バックライト13の明るさレベルを最低レベルに設定したり、ディスプレイ14に表示される映像の輝度レベルを最低レベルに設定するように設定することで不必要な電力消費を低減する(節電する)ことができる。
【0019】
また、明るさ制御部12は、明るさレベルや輝度レベルを最低レベルに設定することに代えて、ディスプレイ14への表示を停止するように制御してもよい。
【0020】
そして、輝度調整部15は、入力された映像信号に含まれる輝度信号Y、色差信号U,Vを画像信号R、G、Bに変換してディスプレイ14に出力するとともに、明るさ制御部12から入力する輝度レベルの補正指示に応じて、輝度信号Yを補正し、この構成した輝度信号Yを用いて画像信号R、G、Bを求める。
【0021】
さて、図2に示されるように、明るさ制御部12はデータベースを記憶するメモリ122を備えており、このデータベースには、明るさ制御部12がディスプレイ14の明るさを制御するためのデータが記憶されている。その一例としては、光センサから出力された明度信号とバックライト13の明るさレベルおよびディスプレイ14に表示される映像の輝度レベルを補正するための係数とを対応させたテーブルであって、バックライト13の明るさレベルを3段階に分け、明度信号が郊外などの明るい環境を示すときはバックライト13の明るさレベルを3段階の最高レベルに、明度信号が駅構内などの暗い環境を示すときは明るさレベルを3段階の最低レベルに、そして、明度信号が上記両者の中間にあるときには明るさレベルを中間レベルに設定する内容であり、更に、映像の輝度レベルの場合は、明るい環境の際は輝度レベルを1レベルアップし、暗い環境の際は輝度レベルを1レベルダウンする内容である。
【0022】
列車が運行されているとき、明るさ制御部12には、環境情報取得部11を介して光センサから明度信号が入力され続ける。明るさ制御部12は、入力された明度信号とメモリ122に記憶されているテーブルとを比較し、明度信号が3段階のいずれに該当するかの確認を行う。
【0023】
まず、明度信号が3段階の中間に相当する値を示していると、明るさ制御部12はバックライト13に対して中間の明るさレベルで点灯するように指示を出すと共に、輝度調整部15に対して、入力された映像信号の輝度値をそのまま使って映像がディスプレイ14に表示されるように指示を出す。この結果、ディスプレイ14には、標準的な明るさでコマーシャルなどの映像が表示される。
【0024】
その後、列車が駅に停車するなどして車内が暗くなると、光センサから出力される明度信号の値が下がり3段階の低レベルになると、明るさ制御部12は、テーブルを参照した結果、ディスプレイ13の明るさレベルを最低レベルに設定すると共に、そして映像信号の輝度値を1レベルダウンさせるよう、バックライト13、輝度調整部15を制御する。この結果、ディスプレイ14には、暗い環境に合わせて明るさを落としたコマーシャルなどの映像が表示される。
【0025】
そして、列車が出発し、光センサから出力される明度信号の示す値が、中間に相当する値に復帰し、ディスプレイ14に表示される映像が標準的な明るさで表示される。その後、更に列車が移動して郊外などの光をさえぎる高層建築などが無くなり、明るい環境に変化すると、光センサから出力された明度信号は、3段階の高レベルになる。この結果、明るさ制御部12は、テーブルを参照し、バックライト13の明るさレベルを最高レベルに、そしてディスプレイ14に表示される映像信号の輝度レベルを1レベルアップするようにバックライト13と輝度調整部15に指示を出す。この結果、ディスプレイ14には、明るい環境に合わせて明るさが上げたコマーシャルなどの映像が表示される。
【0026】
このように、光センサによって検出された表示装置DS周辺の明るさに応じてディスプレイ14に表示される映像の明るさが視認性を考慮して変更されるので、乗客は列車の走行する環境に影響されることなくコマーシャルなどの映像を楽しむことが可能となる。
【0027】
ここで、上記の説明では、明るさ制御部12は、光センサから出力された明度信号に応じてリアルタイムでバックライト13と輝度調整部15を制御するとしているが、例えば、列車が高速で移動している場合は、車内の明るさはこまめに変化することがあり、この場合、リアルタイムでディスプレイ14に表示される映像の明るさを変化させてしまうと、かえって映像が見にくくなることが考えられる。そこで、予め列車の走行速度の閾値をメモリ122に記憶させ、速度発電機の出力から求めた速度情報が走行速度の閾値を超えると、明るさ制御部12は、予め決められた時間分、例えば2分、の明度信号の平均値を求め、この平均値と前記テーブルとを比較することで、バックライト13及び輝度調整部15に対する指示を決定する。
【0028】
また、走行速度の閾値は複数設定し、低速走行時はリアルタイムで、中速走行時は2分ごとに平均値を求め、そして高速走行時は4分ごとに平均値を求め、それぞれ、バックライト13及び輝度調整部15に対する指示を行ってもよい。この場合、列車の走行速度の変化があったとしても、乗客に違和感を与えることなくディスプレイ14に表示される映像の明るさを制御することが可能となり、より視認性を向上させることが可能となる。
【0029】
なお急ブレーキなどの急制動を示す操作信号があった場合、一旦明るさを低下させるように修正し、その後、列車速度が安定したときに次第に周囲の明るさに追従するようにバックライト13や輝度調整部15を制御するようにしてもよい。
【0030】
次に、明るさ制御部12によって行われるディスプレイ14の表示制御に関する別の例について説明する。
【0031】
図3(A)および(B)は、環境情報取得部11を介して明るさ制御部12が事故情報を受信したときにディスプレイ14に対して表示される映像の例を示している。
【0032】
上記の説明と同様に、光センサから出力される明度信号に基づいて明るさ制御部12が、バックライト13と輝度調整部15を制御してディスプレイ14に表示されるコマーシャルなどの映像の明るさを調整しているとき、環境情報取得部11を介して事故情報が明るさ制御部12に入力されると、明るさ制御部12は、ディスプレイ14に表示される事故情報がフラッシュ表示されるように、輝度調整部15の輝度レベルを取りうる最大レベルと最小レベルとを所定の時間間隔、例えば2秒、で切り替えるよう制御を行う。図3(A)は、このときにディスプレイ14に表示される事故情報を示している。
【0033】
一方、図3(B)は事故情報を表示する際の別の例であり、ディスプレイ14の一部のエリアだけフラッシュ表示さており、この場合、明るさ制御部12は、輝度調整部15に対して、ディスプレイ14の表示エリアの予め決められた画素について、輝度レベルを最大レベルと最小レベルで切り替えるように制御を行う。この結果、図3(B)に示されるように、ディスプレイ14の右上エリアの一部がフラッシュ表示される。
【0034】
このように、事故情報などの緊急情報が入力された場合、乗客の注意をディスプレイ14に向けられるように、輝度レベルが制御されるため、視認性とあわせてディスプレイ14の効率的な利用を図ることができる。
【0035】
また、環境情報により周囲が暗いことが認識され、かつ事故情報が取得されている場合は、ディスプレイ14の輝度を上げて、照明として活用することも可能である。
【0036】
さて、ここで、表示装置DSが備えるメモリ122の別な利用方法について説明する。
【0037】
列車は、折り返し運転が行われ、同じ地域を繰り返し通過することがある。このため、ディスプレイ14に表示される映像輝度を環境に合わせて調整した場合、その列車位置と調整量を履歴データとしてメモリ122に記憶することができる。このとき、調整量と一緒に日時情報を記憶してもよい。これにより、沿線の明るさに関するデータを収集することが可能である。
【0038】
なお、メモリ122に記憶された履歴データは、例えばディスプレイ14の使用履歴として利用することができる。そして、この使用履歴を、ディスプレイ14の交換時期や点検時期などの目安として利用することが可能となる。
【0039】
続いて、本発明の表示装置DSを車両に搭載した場合の例を説明する。
【0040】
図4は、図2に示した表示装置DSを車両のドア上部に設置した状態を示している。このような場合、光センサは各表示装置DSの近傍に設置し、表示装置DS毎にディスプレイ14の明るさを制御することになる。たとえ同じ車両であっても、場所によって明るさは異なるため、このような構成とすることで、各表示装置DSそれぞれに合った明るさの制御を行うことが可能となる。
【0041】
一方、図5(A)、図5(B)は、図2の表示制御装置10のうち、明るさ制御部12を別の装置として独立させ、表示装置DSとは異なる位置に設置した例を示している。
【0042】
図5(A)では、一編成の列車のうちの1台の車両、例えば、先頭車両に明るさ制御部12が備えられている。この場合、明るさ制御部12から各車両に設置された表示装置DSに対しては、列車内に設置された基幹LANを介して送信される。また、図5(A)に示す例では、光センサは明るさ制御部12の近傍に1箇所だけ設けてもよく、また、明るさ制御部12が設けられた車両に複数個所も受けてもよい。光センサを複数個所に設けた場合、明るさ制御部12は、各光センサからの明度信号の平均値を求め、この平均値に基づいて各表示装置DSのディスプレイ14に対する明るさの制御を行う。
【0043】
一方、図5(B)では、明るさ制御部12を各車両に設置した例であり、この場合も、光センサは、各車両に設けられた明るさ制御部12の近傍に1箇所だけ設置してもよく、また、各車両に複数個所設置してもよい。
【0044】
図5(A)および(B)では、図4に比べると、明るさ制御部12の設置台数を削減することができ、また表示装置DSとは別の装置として提供することになるため、表示装置DSのコストを下げることが可能となる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
TR・・・列車、11・・・環境情報取得部、12・・・明るさ制御部、13・・・バックライト、14・・・ディスプレイ、15・・・輝度調整部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部明るさ情報及び車両の状態情報を取り込む環境情報取得部と、
前記環境情報取得部からの出力が入力され、ディスプレイの明るさを調整する信号を出力する明るさ制御部を有し、
前記明るさ制御部は、前記外部明るさ情報及び車両の状態情報に基づいて、前記ディスプレイを明るさの強弱調整状態及びまたは節電状態の対象として制御する車載用映像表示制御装置。
【請求項2】
前記環境情報取得部と前記明るさ制御部は、回送及び又は乗客不在を示す信号に基づいて、前記ディスプレイの表示状態をオフする請求項1記載の車載用映像表示制御装置。
【請求項3】
前記車両の状態情報に含まれる、速度情報が高速を示すときは、前記外部明るさ情報の変化は、速度に応じて積分量が大きくなるように積分されて使用される請求項1記載の車載用映像表示制御装置。
【請求項4】
前記明るさ制御部は、前記外部明るさ情報及び車両の状態情報に基づいて、前記ディスプレイの調光を行う制御信号を出力すると共に、入力映像信号の輝度も同時に調整する制御信号を出力する請求項1記載の車載用映像表示装置。
【請求項5】
前記環境情報取得部と前記明るさ制御部は、異常情報を受信した場合は、前記ディスプレイの明るさを点滅状態に制御する請求項1記載の車載用映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24997(P2013−24997A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158442(P2011−158442)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】