説明

車載用機器の前面パネル装置

【課題】横臥姿勢の可動ノーズ上で小型のカード型記録媒体等を落とした場合に懸念される回収の困難さや本体装置への悪影響を回避しやすい「車載用機器の前面パネル装置」を提供すること。
【解決手段】本体装置10の開口端を覆う位置に取り付けられた前面板3と、モータ駆動力によって本体装置10内を前後進するスライド部材4と、前面板3を覆う起立姿勢と露出させる横臥姿勢とに選択的に配置可能な可動ノーズ5とを備えた前面パネル装置2において、前面板3に可動ノーズ5と干渉しない位置で前方へ突出する突条部3aを設け、この突条部3aが横臥姿勢にある可動ノーズ5の奥部5aと近接して対向するようにし、前面板3の突条部3aと可動ノーズ5の奥部5aとの間に、誤って落とした小型で薄いカード等を突条部3aで受け止めることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーションやカーオーディオ等の車載用機器の本体装置前面に配置される前面パネル装置に係り、特に、本体装置の前面板(エスカッション)にカード型記録媒体を挿入するためのスロットが開設されていると共に、この前面板を覆う起立姿勢の可動ノーズを横臥姿勢に移行させることによって該スロットを露出させることができる前面パネル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
起立姿勢と横臥姿勢とが選択可能な可動ノーズを備えた車載用機器の前面パネル装置は、本体装置の開口端を覆う位置に取り付けられた前面板にCDやDVD等の記録媒体を挿入するためのスロットを開設しつつ、可動ノーズに表示画面や各種操作キーを配設することができるため、多機能化や表示画面の大型化に好適で従来より広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。この種の前面パネル装置においては、本体装置に前後進可能に組み込まれたスライド部材が可動ノーズに連結されており、可動ノーズが起立姿勢で前面板を覆っているときに、モータを駆動源としてスライド部材が本体装置の奥側から手前側へ移動すると、可動ノーズが徐々に傾倒して横臥姿勢に移行するようになっている。これにより、前面板のスロットに記録媒体を挿入したり、該スロットから記録媒体を排出させることができる。また、可動ノーズが横臥姿勢のときに、スライド部材が本体装置の手前側から奥側へ移動すると、可動ノーズが徐々にせり上がって起立姿勢に戻り、前面板が再び可動ノーズで覆い隠されるようになっている。
【0003】
ところで近年、SDカード等のカード型記録媒体を使用できる前面パネル装置が実用化されており、今後は、SDカードよりも小さいSIMカード等を使用できるようにした前面パネル装置の実用化も予測されている。図8に示すように、カード型記録媒体を使用可能とした前面パネル装置においては、本体装置20の前面板21にカード用スロット21aが開設されており、可動ノーズ22が前面板21を覆う起立姿勢と前面板21を露出させる横臥姿勢とに選択的に配置できるようになっている。この可動ノーズ22の前面部には図示せぬ表示画面や各種操作キーが配設されており、可動ノーズ22の両側面には下部支点22aと上部支点22bが設けられている。本体装置20内には図示せぬモータを駆動源として前後進可能なスライド部材23が組み込まれており、このスライド部材23は可動ノーズ22の下部支点22aと上部支点22bに回動自在に連結されている。また、前面板21にはその下縁部に沿って延在する横長の下部開口21bが開設されており、この下部開口21bを出入り口としてスライド部材23が前面板21の手前へ進出したり、進出後に本体装置20内へ後退できるようになっている。
【0004】
このように概略構成された前面パネル装置の動作について説明すると、図8は可動ノーズ22を横臥させている状態を示しているが、この可動ノーズ22は起立姿勢(閉状態)のときに前面板21を覆っている。この閉状態でスライド部材23をモータの正転駆動力によって前進(手前側へ移動)させると、可動ノーズ22の下部支点22aが上部支点22bに対して手前側へ大きく移動するため、可動ノーズ22は起立姿勢から徐々に傾倒して図8に示す横臥姿勢(開状態)に移行する。そして、可動ノーズ22の横臥姿勢で前面板21が露出するため、カード用スロット21aに対してカード型記録媒体の挿入や排出が行えるようになる。また、可動ノーズ22が横臥姿勢にあるときにモータの逆転駆動力でスライド部材23を後進(奥側へ移動)させると、可動ノーズ22は傾倒時と逆の動作を行って横臥姿勢から徐々にせり上がり、起立姿勢に移行して前面板21を覆い隠すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−76838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述の如く構成された前面パネル装置にSIMカード等の小型化されたカード型記録媒体が使用されるようになると、ユーザがカード型記録媒体を手指でつまんでカード用スロット21aへ挿入/排出するとき、カード型記録媒体をつまみ損ねて落としてしまう可能性が高くなる。その場合、カード型記録媒体が前面パネル装置の狭隘なスペースに入り込んで取り出しにくくなったり、本体装置20の内部へ入り込んで回収できなくなる虞がある。すなわち、図8に示すように横臥姿勢の可動ノーズ22の奥部と前面板21との間には、開閉動作中の可動ノーズ22と前面板21との干渉を回避するために所要のクリアランスCを確保しておかねばならないので、小型で薄いカード型記録媒体Dをカード用スロット21aの近傍で落としてしまうと、このカード型記録媒体DがクリアランスCをすり抜けて前面板21の下縁部21c上に乗ってしまう可能性がある。この場所は可動ノーズ22の奥部に覆われていて目視困難であり、しかもユーザが不自然に手首を曲げないと手指を到達させにくい場所なので、下縁部21c上のカード型記録媒体Dを回収することは容易でない。また、この種の前面パネル装置は搭乗者の目線よりも下方位置のインパネ等に設置されることが多く、一般的には前面板21が斜め上方を向くように勾配をつけて取り付けられているため、下縁部21c上のカード型記録媒体Dを回収するときに意図せず開口部21bの奥側へ押し込んでしまうと、そのカード型記録媒体Dが後傾姿勢に設置された本体装置20の内部へ入り込んでしまう可能性が高まる。その場合、本体装置20内へ入り込んだカード型記録媒体Dを回収することが極めて困難になるばかりでなく、カード型記録媒体Dの表面に露出している端子群が本体装置20内の導電部と接触して短絡事故を引き起こす危険性も高まる。
【0007】
なお、SIMカードの場合、長辺が25mm、短辺が15mm、厚みが0.8mmなので、SDカード等と比べて手指でつまみにくく、かつクリアランスCを楽に通過してしまう。また、SIMカード等の小型のカード型記録媒体に限らず、横臥姿勢の可動ノーズ22の上方において硬貨等の小さくて薄い金属片を落としてしまった場合にも同様の不具合が懸念される。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、横臥姿勢の可動ノーズ上で小型のカード型記録媒体等を落とした場合に懸念される回収の困難さや本体装置への悪影響を回避しやすい車載用機器の前面パネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、カード型記録媒体の挿入用スロットを有して本体装置の開口端を覆う位置に取り付けられた前面板と、この前面板の下縁部に沿って延在する下部開口を出入り口として前記本体装置内を前後進するスライド部材と、このスライド部材に回動可能に連結された可動ノーズとを備え、前記スライド部材の前後進に伴って前記可動ノーズが前記前面板を覆う起立姿勢と該前面板を露出させる横臥姿勢とに選択的に配置可能な車載用機器の前面パネル装置において、前記前面板に前記スロットの下方位置で左右方向へ延在する突条部を設け、この突条部が横臥姿勢の前記可動ノーズの奥部と近接して対向するように構成した。
【0010】
このような突条部が前面板に形成されている前面パネル装置では、可動ノーズが横臥姿勢(開状態)にあるときに、ユーザがSIMカード等の小型のカード型記録媒体をつまみ損ねて可動ノーズの奥部と前面板との間のクリアランスに落としてしまった場合にも、そのカード型記録媒体は前面板の突条部に当接しやすいため、この突条部でカード型記録媒体を受け止めて落下を防止できる可能性が高まる。また、突条部上に乗って落下を免れたカード型記録媒体は、前面板に沿って起立するか可動ノーズの奥部に寄り掛かった姿勢になっており、かつ容易に目視できるため、該記録媒体を手指等でつまんで回収する作業は容易に行える。なお、カード型記録媒体を落とした場合に限らず、硬貨やメダルのように小さくて薄い金属片等を落としてしまった場合にも突条部は同様の機能を果たす。また、この突条部は単純な形状でよいため前面板の加工コストが増大する虞はなく、かつ、突条部はユーザ側から見えにくい場所に設けられるので意匠性を損なう虞もない。
【0011】
上記の構成において、横臥姿勢にある可動ノーズの奥部上端の高さ位置と突条部の高さ位置との差が、使用する最小のカード型記録媒体の短辺の長さよりも小なる寸法に設定されていると、この最小のカード型記録媒体が落下して突条部上で停止している状態で該記録媒体の上端部をつまみやすくなるため、回収時の作業性を向上させることができる。ただし、突条部の高さ位置が横臥姿勢の可動ノーズの奥部上端の高さ位置に近付きすぎると、突条部と可動ノーズの奥部との間隔が広くなってカード型記録媒体が突条部の下方へ落下しやすくなるため、例えば、突条部の高さ位置が、横臥姿勢の可動ノーズの奥部上端と奥部下端の中間付近の高さ位置と略同等であることが好ましい。
【0012】
また、上記の構成において、前面板に突条部の上面に沿って平行に延びる溝部が設けられていると、可動ノーズが横臥姿勢にあるときに、突条部の上面に向かって落ちてくるカード型記録媒体等の落下物が溝部内へ導かれて安定した姿勢で停止する可能性が高まるため、この落下物が回収困難な場所へ入り込む可能性が一層低減し、回収時の作業性も向上する。
【0013】
また、上記の構成において、前面板に下部開口の上縁部として斜め下方へ突出する庇形状部が設けられており、この庇形状部が前面板の左右方向に沿って延在していると、可動ノーズが横臥姿勢にあるときに、突条部と可動ノーズの奥部との間を通過してしまったカード型記録媒体等の落下物を庇形状部に当接させることで下部開口の手前側へ誘導しやすくなるため、この落下物が下部開口の奥側(本体装置内)へ入り込んでしまう可能性が低くなる。
【0014】
この場合において、前面板の下部開口よりも前方に突出する部分に、前方に向かって下り勾配で連続する階段形状部が設けられており、この階段形状部が前面板の左右方向に沿って延在していると、可動ノーズが横臥姿勢にあるときに、突条部と可動ノーズの奥部との間を通過してカード型記録媒体等の落下物を階段形状部で受け止めることができる。しかも、階段形状部上で受け止められたカード型記録媒体等の落下物を回収する際に、この落下物を意図せず奥側へ押し込んでしまったとしても、階段形状部によって落下物の奥側への移動を規制することができるため、この落下物が下部開口の奥側(本体装置内)へ入り込んでしまう可能性が低くなる。
【0015】
また、この場合において、前面板の下部開口よりも奥側に存する部分に、スライド部材と干渉しない位置で上方へ突出するストッパ部が設けられており、このストッパ部が前面板の左右方向に沿って延在していると、階段形状部上で受け止められたカード型記録媒体等の落下物を回収する際に、この落下物を誤って下部開口の奥側(本体装置内)へ押し込んでしまったとしても、この落下物のさらなる奥側への移動をストッパ部で規制することができるため、回収が困難になるほど本体装置内の奥まで落下物が入り込んでしまう可能性が低くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における車載用機器の前面パネル装置によれば、可動ノーズが横臥姿勢(開状態)にあるときに、ユーザがSIMカード等の小型のカード型記録媒体をつまみ損ねて可動ノーズの奥部と前面板との間のクリアランスに落としてしまった場合にも、そのカード型記録媒体は前面板の突条部に当接しやすいため、この突条部でカード型記録媒体を受け止めて落下を防止できる可能性が高まる。また、突条部上に乗って落下を免れたカード型記録媒体は、前面板に沿って起立するか可動ノーズの奥部に寄り掛かった姿勢になっており、かつ容易に目視できるため、該記録媒体を手指等でつまんで回収する作業は容易に行える。なお、カード型記録媒体を落とした場合に限らず、硬貨やメダルのように小さくて薄い金属片等を落としてしまった場合にも突条部は同様の機能を果たす。また、この突条部は単純な形状でよいため前面板の加工コストが増大する虞はなく、かつ、突条部はユーザ側から見えにくい場所に設けられるので意匠性を損なう虞もない。したがって、前面パネル装置のコストやデザインに悪影響を及ぼすことなく、ユーザが小型で薄いカード型記録媒体や金属片等を落とした場合に備えた有効な対策を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態例に係る車載用機器において前面パネル装置の可動ノーズを起立させた閉状態を示す斜視図である。
【図2】該前面パネル装置の図1に対応する断面図である。
【図3】図1に示す車載用機器において前面パネル装置の可動ノーズを横臥させた開状態を示す斜視図である。
【図4】該前面パネル装置の図3に対応する断面図である。
【図5】図4の要部を模式的に示す説明図である。
【図6】図3から可動ノーズを省略した斜視図である。
【図7】本発明の変形例を示す説明図である。
【図8】従来構造を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態例を図1〜図6を参照しつつ説明する。これらの図に示す前面パネル装置2は、カーナビゲーションやカーオーディオ等として使用される車載用機器1の本体装置10の前面に配置されるものであり、車室内のインパネ等に形成された凹所内に後傾姿勢で収納されるようになっている。この前面パネル装置2は、本体装置10の筐体(シャーシ)11の開口端を覆う位置に取り付けられた前面板(エスカッション)3と、本体装置10内で図示せぬモータを駆動源として前後方向へ往復移動されるスライド部材4と、前面板3を覆う起立姿勢と前面板3を露出させる横臥姿勢とに選択的に配置可能な可動ノーズ5とを備えており、可動ノーズ5の左右両側面にはそれぞれ下部支点5bと上部支点5cが設けられている。なお、図2や図4に示す基板6と基板7は筐体11の内部に固設されている。
【0019】
前面板3には外周縁を包囲するように矩形枠状部30が一体に形成されており、この前面板3にはCDやDVD等のディスク挿入用のスロット31とSDカード挿入用のスロット32およびSIMカード挿入用のスロット33とが開設されている。これら各スロット31,32,33のうち、スロット32,33は開閉可能な扉部37によって覆われているが、扉部37を省略してスロット32,33が常時露出するようにしてもよい。さらに、前面板3の最下部には、矩形枠状部30の下辺部に相当する下縁部34に沿って延在する下部開口35が開設されており、この下部開口35がスライド部材4の出入り口となっている。なお、前面板3に開設されている長孔36は、可動ノーズ5から導出された図示せぬ接続ケーブルを本体装置10側へ引き回すためのものである。
【0020】
前面板3には、スロット33の高さ位置よりも若干下側で前方へ突出するリブ状の突条部3aと、下部開口35の上縁位置で斜め下方へ突出する庇形状部3bと、下縁部34の前端部上面で前方に向かって下り勾配で連続する階段形状部3cと、下縁部34の後端部上面で上方へ突出するストッパ部3dとが一体形成されており、これら突条部3a、庇形状部3b、階段形状部3cおよびストッパ部3dはいずれも前面板3の左右方向に沿って延在している。図4に示すように、突条部3aは横臥姿勢にある可動ノーズ5の奥部5aと近接して対向する位置に設けられており、奥部5aの上端と下端の中間付近と略同等の高さ位置に突条部3aが延在するようにしてある。ただし、可動ノーズ5が図2に示すように起立姿勢にあるとき、この奥部5aは可動ノーズ5の上端部となる部分である。階段形状部3cは下部開口35から前方へせり出しており、ストッパ部3dは下部開口35よりも若干奥側でスライド部材4と干渉しない位置に形成されている。つまり、これら突条部3a、庇形状部3b、階段形状部3cおよびストッパ部3dは、いずれもユーザ側から見えにくい場所に設けられているため前面パネル装置2の意匠性に悪影響を及ぼす虞はなく、しかも、すべて前面板3の一部であり形状も複雑ではないため前面板3の加工コストに悪影響を及ぼす虞もない。
【0021】
スライド部材4は、枠状の可動レール4aと、可動レール4aの左右両側に固設された一対の駆動レバー4bと、各駆動レバー4bに回転可能に軸着されたアーム4cとを有している(図6参照)。駆動レバー4bの前端部は可動ノーズ5の下部支点5bと回動自在に連結されており、アーム4cの前端部は可動ノーズ5の上部支点5cと回動自在に連結されている。このスライド部材4は、筐体11の内底面に沿って前後進できるように本体装置10に組み込まれており、図示せぬモータの正転駆動力でスライド部材4を前進させることができ、該モータの逆転駆動力でスライド部材4を後進させることができる。すなわち、スライド部材4は下部開口35を出入り口として本体装置10内から前方へ進出させたり、逆に本体装置10内へ後退させることができ、かかるスライド部材4の前後進に伴って可動ノーズ5の姿勢が変化するようになっている。
【0022】
可動ノーズ5の前面部には液晶表示装置の表示画面8や操作キー9群が配設されており、この可動ノーズ5は図示せぬ接続ケーブルを介して本体装置10と電気的に接続されている。図1に示すように、可動ノーズ5は起立姿勢(閉状態)のときには前面板3を覆い隠してるが、この閉状態においてスライド部材4を前記モータの正転駆動力で前進(手前へ移動)させると、可動ノーズ5の下部支点5bが上部支点5cよりも手前へ大きく移動するため、可動ノーズ5は徐々に傾倒して図3に示すように横臥姿勢(開状態)に移行する。こうして可動ノーズ5を横臥させると前面板3が露出するため、扉部37を開いてスロット32,33を露呈させることにより、これらスロット32,33にSDカードやSIMカードを挿入/排出することができる。また、可動ノーズ5が横臥姿勢のときに前記モータの逆転駆動力でスライド部材4を後退(奥側へ移動)させると、可動ノーズ5は傾倒時と逆の動作を行って徐々にせり上がり、再び起立姿勢に移行して前面板3を覆い隠すようになっている。
【0023】
次に、前面板3に設けられている突条部3a、庇形状部3b、階段形状部3cおよびストッパ部3dの機能について説明する。図5に示すように、開閉動作中の可動ノーズ5と前面板3との干渉を回避するために、横臥姿勢の可動ノーズ5の奥部5aと前面板3との間には所要のクリアランスCを確保しておかねばならない。そのため、SIMカードのように小型で薄いカード型記録媒体D(以下、カードDと略称する)を誤ってクリアランスC内へ落としてしまった場合、何らかの対策が講じられていないと、カードDの回収が困難になる危険性が高くなる。しかるに本実施形態例に係る前面パネル装置2では、前面板3の所定位置に突条部3aが設けてあり、この突条部3aが横臥姿勢の可動ノーズ5の奥部5aと近接して対向するように設計してあるため、クリアランスC内へ落ちたカードDは突条部3aに当接しやすくなり、それゆえ突条部3aでカードDを受け止めて落下を防止できる可能性が高まっている。しかも、突条部3a上に乗って落下を免れたカードDは、図5の実線で示すように可動ノーズ5の奥部5aに寄り掛かった姿勢になっているか、あるいは同図の破線で示すように前面板3に沿って起立する姿勢になっており、かつ容易に目視できるため、このカードDを手指等でつまんで容易に回収することができる。
【0024】
なお、本実施形態例においては、図5に示すように、横臥姿勢にある可動ノーズ5の奥部5aの上端の高さ位置と前面板3の突条部3aの高さ位置との差hが、カードDの短辺の長さ寸法よりも小さくなるように設定されているため、カードDが落下して突条部3a上で停止しているとき、このカードDの上端部をつまんで回収することが容易になっている。ここで、突条部3aの高さ位置が横臥姿勢の可動ノーズ5の奥部5aの上端の高さ位置に近付きすぎると、突条部3aと可動ノーズ5の奥部5aとの間隔が広くなってカードDが突条部3aの下方へ落下しやすくなる。そのため、本実施形態例のように、突条部3aの高さ位置が、横臥姿勢の可動ノーズ5の奥部5aの上端と下端の中間付近の高さ位置と略同等であることが好ましい。
【0025】
また、前面板3の所定位置に突条部3aが設けてあっても、この突条部3aと横臥姿勢の可動ノーズ5の奥部5aとの間の僅かな隙間をカードDが通過してしまう可能性もある。そのため本実施形態例では、突条部3aの下方まで落下したカードDが下部開口35の奥側(本体装置10内)へ入り込まないように種々の対策を講じている。具体的には、まず、突条部3aの下方に手前側の斜め下方へ突出する庇形状部3bを設けておき、突条部3aで落下を阻止できなかったカードDを庇形状部3bに当接させることによって、このカードDを下部開口35の手前側へ誘導するようにしている。すなわち、図5の2点鎖線で示すように、突条部3aをすり抜けたカードDは庇形状部3bに当接して手前側へ落下するようになるため、このカードDは下縁部34の階段形状部3c上に乗って停止する可能性が高まっている。
【0026】
また、こうして階段形状部3cで受け止められたカードDを回収する際には、カードDの下部の奥側への移動を階段形状部3cで規制することができるため、回収時にカードDが倒れて意図せず下部開口35の奥側(本体装置10内)へ入り込んでしまう可能性は低い。しかも、本実施形態例では、下縁部34の後端部に上方へ突出するストッパ部3dが設けてあるため、回収時などに誤ってカードDの一部が下部開口35の奥側へ入り込んでしまったとしても、このカードDのさらなる奥側への移動をストッパ部3dで規制することができる。
【0027】
このように種々の対策が講じられているため、可動ノーズ5が横臥姿勢のときに小型で薄いカードDをつまみ損ねて落としてしまったとしても、このカードDが回収困難になるほど奥まで本体装置10内へ入り込んでしまう可能性は極めて低い。また、SIMカード等のカードDに限らず、硬貨のように小さくて薄い金属片等を落としてしまった場合にも、その落下を突条部3aで阻止することは容易であり、かつ、落下を阻止できなかった場合にも庇形状部3bや階段形状部3cやストッパ部3d等が上記と同様の機能を果たすため、この落下物が本体装置10内へ入り込む可能性は極めて低くなる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態例に係る前面パネル装置2は、可動ノーズ5が横臥姿勢(開状態)にあるときに、SIMカード等の小型で薄いカードDを手指でつまみ損ねて可動ノーズ5の奥部5aと前面板3との間のクリアランスCに落としてしまった場合にも、このカードDは前面板3の突条部3aに当接しやすいため、突条部3aでカードDを受け止めて落下を防止できる可能性が高まる。また、突条部3a上に乗って落下を免れたカードDを手指等でつまんで回収する作業も容易に行える。さらに、カードDを落とした場合に限らず、硬貨やメダルのように小さくて薄い金属片等を落としてしまった場合にも突条部3aは同様の機能を果たす。また、突条部3aは単純な形状でよいため前面板3の加工コストが増大する虞はなく、かつ、突条部3aはユーザ側から見えにくい場所に設けられるので意匠性を損なう虞もない。したがって、前面パネル装置2のコストやデザインに悪影響を及ぼすことなく、ユーザが小型で薄いカードDや金属片等を落とした場合に備えた有効な対策を講じることができる。
【0029】
また、本実施形態例に係る前面パネル装置2では、前面板3に下部開口35の上縁部として斜め下方へ突出する庇形状部3bが設けられており、突条部3aの下方まで落下したカードDを庇形状部3bに当接させることで下部開口35の手前側へ誘導しやすくなっているため、突条部3aで落下を阻止できなかったカードDが下部開口35の奥側(本体装置10内)へ向かわないように配慮されている。なお、カードDを落とした場合に限らず、小さくて薄い金属片等を落としてしまった場合にも、庇形状部3bが同様に機能することは言うまでもない。
【0030】
また、本実施形態例に係る前面パネル装置2では、前面板3の下縁部34の前端部に前方に向かって下り勾配で連続する階段形状部3cが設けられているため、突条部3aをすり抜けたカードDを階段形状部3cで受け止めて前面板3に寄り掛かった姿勢に保つことができる。しかも、こうして階段形状部3c上で受け止められたカードDを回収する際に、このカードDを意図せず奥側へ押し込んでしまったとしても、カードDの下部の奥側への移動が階段形状部3cによって規制されるため、下縁部34上でカードDが倒れて下部開口35の奥側へ入り込んでしまう可能性が低くなっている。
【0031】
また、本実施形態例に係る前面パネル装置2では、前面板3の下縁部34の後端部に上方へ突出するストッパ部3dが設けられており、階段形状部3c上で受け止められたカードDの回収時などに、誤ってカードDの一部が下部開口35の奥側へ入り込んでしまったとしても、このカードDのさらなる奥側への移動がストッパ部3dによって規制されるため、回収が困難になるほど本体装置10内の奥までカードDが入り込んでしまう可能性が低くなっている。なお、カードDを落とした場合に限らず、小さくて薄い金属片等を落としてしまった場合にも、ストッパ部3dが同様に機能することは言うまでもない。
【0032】
図7は本発明の変形例を示す説明図であり、同図に示すように、前面板3に突条部3aの上面に沿って延びる断面V字状の溝部3eを形成し、この溝部3eの傾斜面と突条部3aの上面と連続させておけば、突条部3aの上面に向かって落ちるカードD等の落下物が溝部3e内へ導かれて安定した姿勢で停止する可能性が高まるため、カードD等の落下物が回収困難な場所へ入り込む可能性が一層低減し、回収時の作業性も向上する。
【0033】
なお、上記した実施形態例では、突条部3aが前面板3の左右方向のほぼ全体に亘って延在するようにした場合について説明したが、突条部3aは少なくともSIMカード用スロット33の下方位置に延在していればよく、庇形状部3bや階段形状部3cおよびストッパ部3dについても同様である。
【符号の説明】
【0034】
1 車載用機器
2 前面パネル装置
3 前面板
3a 突条部
3b 庇形状部
3c 階段形状部
3d ストッパ部
3e 溝部
4 スライド部材
5 可動ノーズ
5a 奥部
10 本体装置
33 スロット
34 下縁部
35 下部開口
C クリアランス
D カード型記録媒体(SIMカード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード型記録媒体の挿入用スロットを有して本体装置の開口端を覆う位置に取り付けられた前面板と、この前面板の下縁部に沿って延在する下部開口を出入り口として前記本体装置内を前後進するスライド部材と、このスライド部材に回動可能に連結された可動ノーズとを備え、前記スライド部材の前後進に伴って前記可動ノーズが前記前面板を覆う起立姿勢と該前面板を露出させる横臥姿勢とに選択的に配置可能な車載用機器の前面パネル装置において、
前記前面板に前記スロットの下方位置で左右方向へ延在する突条部を設け、この突条部が横臥姿勢の前記可動ノーズの奥部と近接して対向するように構成したことを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、横臥姿勢にある前記可動ノーズの奥部上端の高さ位置と前記突条部の高さ位置との差が、使用する最小のカード型記録媒体の短辺の長さよりも小なる寸法に設定されていることを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記突条部の高さ位置が、横臥姿勢にある前記可動ノーズの奥部上端と奥部下端の中間付近の高さ位置と略同等であることを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記前面板に前記突条部の上面に沿って平行に延びる溝部が設けられていることを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記前面板に前記下部開口の上縁部として斜め下方へ突出する庇形状部が設けられており、この庇形状部が前記前面板の左右方向に沿って延在していることを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記前面板の前記下部開口よりも前方に突出する部分に、前方に向かって下り勾配で連続する階段形状部が設けられており、この階段形状部が前記前面板の左右方向に沿って延在していることを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。
【請求項7】
請求項6の記載において、前記前面板の前記下部開口よりも奥側に存する部分に、前記スライド部材と干渉しない位置で上方へ突出するストッパ部が設けられており、このストッパ部が前記前面板の左右方向に沿って延在していることを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−225181(P2011−225181A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99098(P2010−99098)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】