説明

車載用目標物検出装置

【課題】 記憶させる位置情報を少なくしつつ簡易なアルゴリズムで位置情報に基づいて検出した目標物が現在の走行する道路種別(高速道路/一般道路)と同じ道路上に存在するものか否かを弁別することができる車載用目標物報知装置を提供すること
【解決手段】 自車の位置を検出するGPS受信部10と、目標物の位置を記憶する目標物位置情報記憶部21と、目標物が設置されているのと同じ道路か否かを判定するための事前確認位置を記憶する事前確認位置情報記憶部22と、各記憶部に格納されたそれぞれの位置情報と、位置検出手段の出力から目標物の存在を判定する報知判定部30と、報知判定部の出力から、目標物の存在を報知する報知部40と、を備える。報知判定部は、自車の位置から所定距離内でありかつ車両の進行方向の所定角度範囲内に目標物が存在する場合に目標物が存在するものとする第1の判定条件と、事前確認位置を通過したこととする第2の判定条件と、を満たしたときに目標物が存在するものと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用目標物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の速度を測定する速度測定装置が路上周辺等に多数設置されるようになっている。速度測定装置の一例を示すと、所定周波数帯域のマイクロ波を車両に向けて発射し、その反射波を受信して車両の走行スピードを測定するようになっている。
【0003】
一方、係る速度測定装置の存在を検出するため、その速度測定装置から発射されたマイクロ波を検出して警報を出力するように構成されたマイクロ波検出器が従来から知られている。
【0004】
しかし、速度測定装置の設置位置や、道路の状態その他の周囲環境により、従来のマイクロ波検出器は、比較的遠くから検出可能なものと、比較的近づいてからでないと検出しにくいものがある。
【0005】
また、速度測定装置の中には、従来のマイクロ波検出器では検出できないものもある。一例を挙げると、ループ式と称されるように、地中にループ状のコイルを埋め込み、そのコイルの上を車両が通過するのを検知するとともに車速も判定するものがある。また、マイクロ波以外の光を用いて車両の速度を検出するものもある。
【0006】
そこで、最近では、GPS(Global Positioning System )情報を利用し、予め速度測定装置の設置位置情報を記憶させておき、現在位置が記憶した設置位置に近づいた場合(所定の関係になった場合)に、マイクロ波の検知の有無に関係なく警報を発するようにしたものがある。
【0007】
しかしながら、マイクロ波検出器は一般的に地図情報をもたないためナビゲーションのようなマップマッチング技術を使用することができない。このため、位置情報検出機能を持っていたとしても一般道路と高速道路が並走しているところや車両位置の所定距離内に速度測定装置が存在する場合には車両が一般道路を走行しているのか高速道路を走行しているのかを認識することができず、適正な報知を行うことができなかった。
【0008】
この問題に対処するため報知の際に高速道路上の目標位置が近傍に存在する場合には「この先の高速道路上に目標物があります」等のように目標物の存在する道路種別を報知するようにしたり(特許文献1)、一般道路から高速道路への入り口分岐点と侵入路位置および高速道路における本線と本線からの退出路と出口分岐点を記憶するようにし入り口分岐点と侵入路とを続けて通過した場合に高速道路に入ったものとし、退出路と出口分岐点を続けて通過した場合に一般道路に入ったものと判定するようにするもの(特許文献2)があった。
【特許文献1】特開2002−318277
【特許文献2】特開昭62−88099
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、一般道路を走行中に高速道路上の目標物を報知してしまうなど不要な報知を行うことになり基本的な解決方法ではない。特許文献2に開示された発明では、目標位置以外にも不要な情報を4箇所記憶する必要があるばかりでなく、高速道路の全てのインターチェンジについての位置情報を記憶しておく必要があるので、実用的でない。また、道路状況によっては図1に示すように入り口分岐点を通過した後に進入路と同位置を走行することもあり正確に判定を行うことが困難であった。さらに、マイクロ波検知器を高速道路を走行するときにのみ使用するユーザの場合、高速道路に入ってからマイクロ波検出器の電源を投入することがあるが、このような使用方法をとられた場合、高速道路であることの判定を行うことが出来ない。
【0010】
本発明は、上述した背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、記憶させる位置情報を少なくしつつ簡易なアルゴリズムで位置情報に基づいて検出した目標物が現在の走行する道路種別(高速道路/一般道路)と同じ道路上に存在するものか否かを弁別することができる車載用目標物報知装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明に係る車載用目標物報知装置は、(1)自車の位置を検出する位置検出手段と、目標物の位置を記憶する目標物位置情報記憶部と、前記目標物が設置されているのと同じ道路か否かを判定するための事前確認位置を記憶する事前確認位置情報記憶部と、前記各記憶部に格納されたそれぞれの位置情報と、前記位置検出手段の出力から目標物の存在を判定する報知判定部と、報知判定部の出力から、目標物の存在を報知する報知手段と、を備える。そして、前記報知判定部は、前記報知判定部は、自車の位置から所定距離内に目標物が存在することを条件の一つとして目標物が存在するものとする第1の判定条件と、前記事前確認位置を通過したことを条件の一つとする第2の判定条件と、を満たしたときに目標物が存在するものと判定するようにした。
【0012】
例えば高速道路上の目標物を報知する場合に地図情報をもたないマイクロ波検出器(レーダー探知機)等の車載用目標物報知装置では、目標物までの所定距離と所定角度範囲内により目標物が存在するか否かを判定するものがある。この判定は報知すべき位置(例えば目標物1km前)で行われ目標物が存在する場合にはその報知を行うようにしている。この場合、一般道が近接して一般道上に目標物が存在する場合に高速道を走行しているにもかかわらず一般道の目標物の存在を報知する場合があった。
【0013】
(1)の発明では、距離と所定角度範囲により目標物を判定する第1の判定条件とは別に目標別から所定の距離の道路上に事前確認位置を設定し、その位置を記憶保持するようにした。よって、第1,第2の判定条件がともに充足する場合、自車が走行している道路(同一の道路種別の道路)に目標物があると判定することができる。逆に、第1の判定条件を充足しても、第2の判定条件を充足しなければ、その目標物は、事前確認位置を設定した道路と同一の道路(同一の道路種別の道路)に設置された目標物ではないと判断できる。よって、走行していない道路にある目標物を報知することを抑制することができ、必要十分な警報を行なうことができる。
【0014】
なお、第1の判定条件における“自車の位置から所定距離内に目標物が存在すること”並びに第2の判定条件における“事前確認位置を通過したこと”は、いずれもそれぞれの条件を具備するか否かを判断するための要素の一つであり、少なくとも係る条件を含む必要があるが、それ以外の判断要素を付加しても良い。例えば、実施形態で示すように、第1の判定条件として、“車両の進行方向の所定角度範囲内に目標物が存在すること”を追加の判断要素とし、目標物までの距離と係る所定角度範囲内の両方の条件を具備したときに第1の判定条件を具備するとしてもよい。また、このように付加する要素としては、これ以外にも各種のものがあり、例えば、“目標物に目標物の向き(方位情報)を登録し、その目標物の向きの所定角度範囲内に車両が存在すること”等がある。
【0015】
(2)前記目標物情報位置記憶部に記憶される目標物位置情報に関連付けて、その目標物の存在する道路種別を記憶し、報知すべき目標物が所定の道路種別であることを判定する第3の判定条件を設け、前記報知判定部は、前記第1の判定条件と前記第2の判定条件と前記第3の判定条件を満たしたとき目標物が存在するものと判定するようにするとよい。係る発明では、目標物情報に設置道路情報を加えたことにより、より確実に判定することができる。
【0016】
(3)前記事前位置情報に併せて次の報知位置までの条件を記憶する手段を設け、前記報知判定部は、目標物が存在するものと判定する際の判定条件として、前記報知位置までの条件をさらに充足することを付加するようにすることができる。係る発明では、事前通過位置から目標物の報知位置までの条件を記憶して判定に用いる。これにより、より正確な判断が行え、無用な目標物の報知を削減できる。
【0017】
(4)自車の位置を検出する位置検出手段と、目標物の位置を記憶する目標物位置情報記憶部と、前記目標物情報記憶部に併せて目標物が設置されているのと同じ道路か否かを判定するための事前確認位置を記憶する事前確認位置情報部と、事前確認位置における車両の進行方向情報を記憶する進行方向記憶部とからなる位置記憶手段と、前記位置記憶部の出力と前記位置検出手段の出力から目標物の存在を判定する報知判定部と、報知判定部の出力から、目標物の存在を報知する報知部と、を備え、前記報知判定部は、前記報知判定部は自車の位置から所定距離内であることを条件の一つとする第1の判定条件と、前記事前確認位置を通過したことを条件の一つとする第2の判定条件と、自車の位置が前記事前位置情報の位置にあるとき、自車の進行方向が前記記憶している方向情報と一致することを判定する第3の判定条件とを満たしたときに目標物が存在するものと判定するように構成することもできる。この(4)の発明によれば、車両の進行方向を利用することで、同一道路上の目標物であるか否かを正確に判定可能できる。
【0018】
(5)そして、上記の各発明において、前記事前確認位置は、高速道路上の目標物に対応するものとすることができる。
【0019】
さらに別の解決手段としては、(6)自車の位置を検出する位置検出手段と、目標物の位置を記憶する目標物位置情報記憶部と、前記目標物の設置対象道路か否かを判定する事前確認位置を記憶する事前確認位置情報記憶部と、前記各記憶部に格納されたそれぞれの位置情報と、前記位置検出手段の出力から目標物の存在を判定する報知判定手段と、報知判定手段の出力から、目標物の存在を報知する報知手段と、を備え、前記報知判定部は、前記事前確認位置を通過したら、その事前確認位置に関連付けられていない目標物は存在しないとして判定処理を行なうようにすることである。
【0020】
目標物と事前確認位置とを関連づけて登録した場合、位置検出手段により自車両が事前確認位置を通過したことを検出した場合、その事前確認位置と関連付けられていない目標物は現在の車両が走行する道路には無いと推定でき、係る関連付けられていない目標物を判定対象から外すことで、判定・警報精度が向上する(よって、走行していない道路にある目標物を報知することを抑制することができ、必要十分な警報を行なうことができる)。
【0021】
(7)前記事前確認位置情報記憶部に格納された事前確認位置情報に関連づけて有効判定目標物の数を記憶し、事前確認位置通過後、記憶している有効判定目標物の数だけ目標物の存在判定を有効とするとよい。有効判定目標物は、事前確認位置が設定された道路に位置する目標物である。例えば事前確認位置を高速道路上のある地点に設定した場合、その設置位置から前方に目標物が複数個存在することがある。係る場合、その個数を設定しておくことで、1つの事前確認位置を複数の目標物(有効判定目標物)で共有でき、メモリ容量の削減がはかれる。
【0022】
事前確認位置を通過後、一定の条件の下で事前確認位置の検出に基づく判定を解消するのが好ましい。これは、通過した事前確認位置と関連する目標物の報知が完了したり、目標物を検出できなかったりした場合や、事前確認位置の通過検知自体が誤検出の場合等において次の条件の目標物の検知判定を行なうためである。この場合に、関連する目標物が検知されたことを条件に解消するようにしてもよいし、以下に示す(8)から(10)の構成を採るようにしても良い。もちろん、それ以外の条件に基づいて解消しても良い。
【0023】
(8)事前確認解除位置を記憶する事前確認解除位置情報記憶部を設け、前記事前確認位置通過後、事前確認解除位置を通過するまでの間、目標物の存在判定を有効にしてもよい。
【0024】
(9)前記事前確認位置を通過したらタイマーを作動させ、予め設定してある時間を経過したら、事前確認位置の通過を取り消し、その事前確認位置と関連付けた目標物についての判定を行わないようにしてもよい。
【0025】
(10)前記事前確認位置を通過したら、前記事前確認位置から予め設定した距離以上離れたら、事前確認位置の通過を取り消し、その事前確認位置と関連付けた目標物についての判定を行わないようにしてもよい。
【0026】
(11)事前確認位置情報記憶部に、道路進行方向の方位を予め記憶しておき、事前確認位置走行時に車両の進行方向の方位を計測し、記憶してある方位と計測した方位が所定の範囲内の場合、事前確認位置を走行したとみなすようにすることもできる。このように方位情報を記憶させておくことで、弁別する複数の道路が接近している場合でも道路の方向(各道路を走行する車両の進行方向)が異なる場合には、車両の進行方向に基づいて事前確認位置が設定された道路を走行しているか否かを判断できる。よって、事前確認位置を通過したか否かの判定精度が高くなるとともに、設置可能な位置も広がる。
【0027】
(12)事前確認位置に関連づけて速度を予め記憶しておき、事前確認位置走行時の車両の速度が、記憶してある速度より高速の場合、事前確認位置を走行したとみなすようにしてもよい。
【0028】
(13)事前確認位置情報記憶部に、事前確認位置エリアの半径を予め記憶しておき、事前確認位置走行時に、その半径のエリア内を通過した場合、事前確認位置を走行したとみなすようにしてもよい。
【0029】
そして、上記の各発明において、前記事前確認位置は、高速道路上の目標物に対応するものとすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、記憶させる位置情報を少なくしつつ簡易なアルゴリズムで位置情報に基づいて検出した目標物が現在の走行する道路種別(高速道路/一般道路)と同じ道路上に存在するものか否かを弁別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図2は、マイクロ波検出器に組み込まれる車載用目標物検出装置の好適な実施の形態を示している。同図に示すように、この車載用目標物検出装置は、自車の位置を検出する位置検出手段たるGPS受信部10と、各種の位置情報を記憶する位置記憶部20と、その位置記憶部20に格納された位置情報と、GPS受信部10の出力(現在の車両位置情報)から目標物の存在を判定する報知判定部30と、その報知判定部30の出力から、目標物の存在を報知する報知部40とを備えている。
【0032】
GPS検出部10は、地球位置計測衛星から出射されるGPS信号を受信し、車両の現在位置を測定するものである。具体的には、受信アンテナ11,GPS受信機12にて、複数の衛星から発せられるGPS信号を受信し、その受信したことを位置情報検出部13に与え、そこにおいて受信情報に基づいて現在位置(経度,緯度情報)を算出する。
【0033】
位置記憶部20は、目標物位置情報記憶部21と事前位置情報記憶部22を含む。目標物位置情報記憶部21には、記憶する目標物の位置情報として、その目標物が設置されている場所の緯度,経度が登録される。さらに、その目標物が設置されている道路種別、つまり、高速道路か一般道路かを識別する情報も関連付けて格納される。
【0034】
また、登録する目標物としては、速度測定装置や、Nシステムと称されるナンバー読み取り装置など、車両を監視する装置である。従って、この位置情報に目標物の種類を関連付けて登録しても良い。このようにすると、検知した際の警報を、目標物の種類にあわせて変えることにより、より正確な情報を運転者に伝えることができる。また、このように車両を監視する装置に限ることはなく、自動ドアなどの誤動作源の場合もある。
【0035】
尚、位置記憶部4に記憶する目標物(目標物の位置情報)は、実際に目標物が存在する位置はもちろん目標物の存在を警報する位置、例えば本来の検出対象物の1km手前などの仮想位置を目標物の位置と定めてもよい。この仮想位置は、目標物の存在を警報する警報位置とすることができる。
【0036】
事前位置情報記憶部22は、目標物位置情報記憶部21に格納された目標物が設置されているのと同じ道路か否かを判定するための事前位置情報を格納するものである。事前位置情報は、高速道路に設置された目標物に関連付けられ、その目標物の手前側の高速道路上であって、一般道と近接していない箇所(事前確認位置)を特定する位置情報である。例えば、図3に示すように、高速道路上のA点の位置に目標物が存在し、その高速道路上のD点の位置を事前確認位置とする。また、本実施形態では、事前確認位置は、目標物と車両との位置関係が所定の位置関係、つまり、第1判定条件を充足する位置よりもさらに手前に設定しているが、もちろん、第1判定条件を充足し始める位置と同一(付近)にしてもよいし、その位置よりも目標物に近い位置に設定しても良い。
【0037】
このようにすると、このD点の位置を通過したということは、A点にある目標物に接近している車両は高速道路を走行していると推定できる。従って、A点との位置関係が所定の条件を満たすとともに、D点を通過した場合には、同一道路(高速道路)の先に目標物(A点)があると警報することができ、D点を通過しない場合には、車両は一般道路を走行していると推定できるのでA点の位置にある目標物についての警報をしないような警報制御を行なうことができる。同様に、D点を通過した車両は、高速道路を走行中であるので、一般道路上に設置されたB点の位置の目標物と車両の位置関係が所定の条件を充足する場合(例えば、高速道路上のE点の位置に至る場合)でも警報をしないといった制御を行なうことができる。
【0038】
報知判定部30は、車両(自車)の現在位置と位置情報記憶部20に格納された各種の位置情報とに基づき、警報するか否かの判定を行なう。具体的には、判定条件として下記の2つの条件(第1,第2の判定条件)を設定し、2つの条件を共に充足する場合に、高速道路上にある目標物警報をする旨の決定をする。
【0039】
第1の判定条件は、自車の位置から所定距離内であって、かつ車両の進行方向の所定角度αの範囲内に目標物が存在する場合に、当該条件を充足することとした。また、第2の判定条件は、自車が事前確認位置を通過した場合に、当該条件を充足することとした。ここで第2の判定条件における位置は、D点の拡大図にあるように道路上の車線の片側程度の範囲を想定するようにすることにより、近接する一般道路がある場合でも高い精度で事前位置の通過を判定することが出来る。
【0040】
上記の判定処理を実行するための具体的なアルゴリズムの一例としては、報知判定部30に、図4に示すフローチャートを実行する機能を備えることである。すなわち、第2判定条件を充足する(事前確認位置の通過)のを待ち(S1)、当該条件を充足(S1がYes)したならば、タイマをリスタート(タイマ値x=0,スタート)する(S2)。そして、第1判定条件が充足するのを待つ(S3)。所定時間(T秒)経過する前に第1判定条件を充足(S3がYes)した場合には、高速道路上の目標物があると判断し、高速道路目標物警報をする旨を決定する(S5)。
【0041】
一方、タイマ値xがT以上になった場合(S4でYes)には、処理ステップS1に戻り、新たに第2判定条件を充足するのを待つ。このようにタイマを設けたのは、事前確認位置を通過した後、所定時間経過しても第1判定条件を充足しない場合、高速道路を走行していない(第2判定条件の充足が誤判定)おそれがあり、別の目標物に対する正しい判定を行なえないおそれがあるためである。また、仮に渋滞などにより、高速道路上をゆっくりと移動し、目標物に向かっている場合、高速道路上の目標物についての警報をすることができなくなるが、実用上問題がないばかりか、かえって不要な警報をすることを抑制できるというメリットもある。
【0042】
なお、図4に示すフローチャートは、高速道路上の目標物の検出判定アルゴリズムであり、報知判定部30は、これとは別に一般道路上の目標物を検出する判定処理も独立して並列処理される。一般道路の目標物については事前確認位置を登録していないため、第2判定条件を充足しない状態で第1判定条件を充足した場合に一般道路目標物警報をする旨を決定することになる。
【0043】
また、事前認識位置(図3のD点の位置)と、第1判定条件を初めて充足する位置(図3のC点の位置)を同じ位置にするようにしてもよい。このようにすれば目標物情報の警報を行う際の処理の一部として第2の判定条件を判定することが可能となる。この場合の報知判定部30の認識アルゴリズムは、例えば、第1判定条件を充足するのを待ち、第1判定条件を充足した場合に第2判定条件を充足するか否かを判断し、充足する場合には高速道路目標物警報をする旨を決定し、充足しない場合には一般道目標物警報をする旨を決定するとよい。
【0044】
警報部40は、報知判定部30で警報する旨の決定が行なわれたことに基づき、警報を発する。この警報は、例えば、ブザーや音声であったり、ライトLED等のランプや表示器など各種の対応のものが採れる。本実施形態では、報知判定部30で決定された道路の種類に応じて、その区別がわかるように報知する。もちろん、本実施形態では、車両が走行する道路上の目標物について警報するため、係る区別を行なわなくても良い。
【0045】
ところで、図3中のF点の位置の目標物が存在した場合、第1、第2の判定条件を満たしてしまうため適正な目標物の報知を行うことが出来ない。そこで、位置記憶部20の目標物情報位置記憶部21に記憶される目標物位置情報に関連付けて目標物の存在する道路種別を記憶する。そして、報知判定部30における判定処理は、報知すべき目標物が所定の道路種別が一致(例えば、高速道路)することを判定条件(第3の判定条件として)に加えるようにするとよい。すなわち、本実施形態では、記憶された目標物の道路種別が高速道路の場合に第3の判定条件を充足するとした。これにより、報知判定部30は、第1の判定条件と前記第2の判定条件と前記第3の判定条件を満たしたときに、目標物(高速道路上)が存在するものと判定する。
【0046】
このようにすると、図3に示すF点の位置に設置された目標物には、少なくとも道路種別が高速道路であることは記憶されてないため、D点の位置を通過した車両の場合、第1、第2の判定条件を満たしてしも第3の判定条件を満たしていないので、F点にある目標物を高速道上にあると誤判定することを防止できる(F点にある目標物に基づく誤警報を抑制できる)。
【0047】
また、図4に示すフローチャートにおける処理ステップS3では、第2の判定条件を充足してから第1の判定条件を充足するまでの待ち時間を所定時間(T秒)としたが、このTは、事前確認位置から目標物と所定の位置関係になる報知位置(第1の判定条件を充足する位置)までの距離に合わせて設定するとよい。そして、上述したように事前確認位置は、一般道路と接近していない高速道路上の所定位置とするため、全ての事前確認位置について目標物或いは目標物の報知位置からその事前確認位置までの距離を等しくすることは困難である。従って、事前確認位置記憶部22に格納する各事前確認位置に目標物の位置までの距離上記の待ち時間Tを関連付けて記憶し、例えば、処理ステップS2でタイマをリセットする際に所定時間Tもセットするとよい。また、全ての事前確認位置に関連付けて待ち時間Tを記憶するのではなく、基本時間設定しておき、その基本時間で対応できない事前確認位置について所定時間Tを関連付けて記憶するようにしても良い。基本時間は、例えば、事前確認位置の設置位置を、目標物の設置位置(報知位置)から事前確認位置までの基本距離を設定し、その基本距離に応じた時間とするとよい。そして、原則として各事前確認位置は、目標物の設置位置(報知位置)から当該基本距離だけ前方に設定し、係る位置では一般道路と近接する場合には、近接しない箇所に設定する。係る近接しないか書に設定された事前確認位置について、所定時間Tを関連付けて記憶すればよい。また、このように時間を記憶するのではなく、距離を格納するようにし、距離に対する所定時間の関係を別途管理するようにしても良い。
【0048】
もちろん仮に全ての事前確認位置から目標物の設置位置(目標物の報知位置)間での距離を等しくすることができた場合には、所定時間Tを固定値として予め設定することができる。
【0049】
さらに別の実施形態としては、事前確認位置から報知位置までの条件を併せて記憶し判定に用いるようにする。例えば通常は報知位置と同一であるようにすればよいが、この場合には具体的な距離をいれたり、距離を適宜記号化して(100mを1やaと表現)記憶させればよい。このようにすれば事前通過位置を通過してからの目標物の報知位置(第1の判定条件を充足する位置)までの距離が一致したときに同一道路上の目標物であることを判定することができる。ここで移動距離は、サンプリングされる車両の位置情報の履歴に基づいて積算することができる。つまり、前回と今回の車両の位置情報からその間の移動距離を求めることができるので、第1の判定条件を充足してから第2の判定条件を充足するまでの移動距離は、その積算値から簡単に求めることができる。
【0050】
そして、図5に示すように事前通過位置と目標物の間に一般道への分岐点がある場合において、一般道へ車両が移動した場合には、第1の判定条件を充足する位置(高速道路:c,一般道路:c′)に至るまでの移動距離が異なるため高速道路上の目標物を報知する必要がない。
【0051】
さらに別の実施形態としては、事前確認位置情報記憶部22に格納する各事前確認位置に関連付けて、その事前確認位置における目標物の方向を記憶させ、報知判定部30では自車の位置が事前位置情報の位置にあるときの自車の進行方向を求め、その進行方向が記憶している方向情報と一致するか否か(第3の判定条件を充足するか否か)を判定する機能を付加し、前記第1の判定条件、前記第2の判定条件および第3の判定条件を満たしたときに目標物が存在するものと判定するようにすることもできる。
【0052】
係る構成にすると、図3にあるように高速道上を自車両が走行し、A点の目標物を報知する場合、事前通過位置であるD点におけるA点の方向情報を加味することで正確な判定を行うことが可能となる。図3の例では報知位置であるC点を事前通過位置とするとそのときの目標物Aに対する方向は一定である。自車両の進む方向も位置情報の履歴により正確に判定できるため、第1の判定条件のような広い範囲を対象とすることなく同一道路上の目標物であることを判定可能となる。これにより、F点にある目標物は、第3の判定条件を充足せず、警報を発しないで済む。
【0053】
報知判定部30における判定アルゴリズムは、上述した実施の形態に限ることはなく、各種の変形実施が可能である。一例を示すと、報知判定部は、事前確認位置を通過したら、その事前確認位置に関連付けられていない目標物は存在しないとして判定処理を行なうようにすることができる。この変形例では、少なくとも目標物は事前確認位置と同種の道路種別か否かの情報が関連付けられ、より好ましくは、事前確認位置と目標物を関連付けておくことである。このようにすると、ある事前確認位置を通過したと判定したならば、その後は、その事前確認位置と関連しない目標物については存在しないとして判定処理をすることで、誤判定に基づく誤警報をすることを可及的に抑制できる。
【0054】
また、事前確認位置情報記憶部22に格納された事前確認位置情報に関連づけて有効判定目標物の数を記憶させる。そして、報知判定部30は、事前確認位置通過後、記憶している有効判定目標物の数だけ目標物の存在判定を有効とする。これにより、例えば事前確認位置を高速道路に設定し、その事前確認位置から所定距離内の高速道路上に複数の目標物(有効判定目標物)が存在する場合、その複数の目標物の個数を記憶させることで、1つの事前確認位置に基づき複数箇所の目標物の報知判定を行なうことができる。
【0055】
事前確認位置と同じ道路に設置された目標物の進行方向後方所定位置に事前確認解除位置を設定し、その位置を記憶する事前確認解除位置情報記憶部を設ける。そして、報知判定部30は、事前確認位置通過後、事前確認解除位置を通過するまでの間、その事前確認位置と関連付けられた目標物の存在判定を有効にする。これにより、事前確認位置を通過してから事前確認解除位置を通過するまでの間は、関連付けられた目標物の検出を行なうことで、正確な判断(誤警報の抑制)が行える。一方、事前確認位置解除位置を通過後に上記の関連付けられた目標物を検出することはないので、定常状態(平常状態)に戻し警報判定を行なう。
【0056】
同様の理由から、タイマ−事前確認位置を通過したらタイマーを作動させ、予め設定してある時間を経過したら、事前確認位置の通過を取り消し、その事前確認位置と関連付けた目標物についての判定を行わないようにしたり、事前確認位置を通過したら、事前確認位置から予め設定した距離以上離れたら、事前確認位置の通過を取り消し、その事前確認位置と関連付けた目標物についての判定を行わないようしたり、事前確認位置情報記憶部に、道路進行方向の方位を予め記憶しておき、事前確認位置走行時に車両の進行方向の方位を計測し、記憶してある方位と計測した方位が所定の範囲内の場合、事前確認位置を走行したとみなすようにすることができる。
【0057】
また、事前確認位置に関連づけて速度を予め記憶しておき、事前確認位置走行時の車両の速度が、記憶してある速度より高速の場合、事前確認位置を走行したとみなすようにする。
【0058】
さらにまた、事前確認位置情報記憶部に、事前確認位置エリアの半径を予め記憶しておき、事前確認位置走行時に、その半径のエリア内を通過した場合、事前確認位置を走行したとみなすようにした。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来の問題点を説明する図である。
【図2】車載用目標物報知装置の好適な一実施形態を示すブロック図である。
【図3】動作原理を説明する図である。
【図4】報知判定部の機能を説明するフローチャートである。
【図5】動作原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
10 GPS受信部
20 位置記憶部
21 目標物位置情報記憶部
22 事前確認位置情報記憶部
30 報知判定部
40 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の位置を検出する位置検出手段と、
目標物の位置を記憶する目標物位置情報記憶部と、
前記目標物が設置されているのと同じ道路か否かを判定するための事前確認位置を記憶する事前確認位置情報記憶部と、
前記各記憶部に格納されたそれぞれの位置情報と、前記位置検出手段の出力から目標物の存在を判定する報知判定部と、
報知判定部の出力から、目標物の存在を報知する報知手段と、を備え、
前記報知判定部は、自車の位置から所定距離内に目標物が存在することを条件の一つとして目標物が存在するものとする第1の判定条件と、前記事前確認位置を通過したことを条件の一つとする第2の判定条件と、を満たしたときに目標物が存在するものと判定することを特徴とする車載用目標物報知装置。
【請求項2】
前記目標物情報位置記憶部に記憶される目標物位置情報に関連付けて、その目標物の存在する道路種別を記憶し、報知すべき目標物が所定の道路種別であることを判定する第3の判定条件を設け、
前記報知判定部は、前記第1の判定条件と前記第2の判定条件と前記第3の判定条件を満たしたとき目標物が存在するものと判定することを特徴とする請求項1に記載の車載用目標物報知装置。
【請求項3】
前記事前位置情報に併せて次の報知位置までの条件を記憶する手段を設け、
前記報知判定部は、目標物が存在するものと判定する際の判定条件として、前記報知位置までの条件をさらに充足することを付加していることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用目標物検出装置。
【請求項4】
自車の位置を検出する位置検出手段と、
目標物の位置を記憶する目標物位置情報記憶部と、前記目標物情報記憶部に併せて目標物が設置されているのと同じ道路か否かを判定するための事前確認位置を記憶する事前確認位置情報部と、事前確認位置における車両の進行方向情報を記憶する進行方向記憶部とからなる位置記憶手段と、
前記位置記憶部の出力と前記位置検出手段の出力から目標物の存在を判定する報知判定部と、
報知判定部の出力から、目標物の存在を報知する報知部と、を備え、
前記報知判定部は、
前記報知判定部は自車の位置から所定距離内であることを条件の一つとする第1の判定条件と、
前記事前確認位置を通過したことを条件の一つとする第2の判定条件と、
自車の位置が前記事前位置情報の位置にあるとき、自車の進行方向が前記記憶している進行方向情報と一致することを判定する第3の判定条件とを満たしたときに目標物が存在するものと判定することを特徴とする車載用目標物報知装置。
【請求項5】
前記事前確認位置は、高速道路上の目標物に対応するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車載用目標物検出装置。
【請求項6】
自車の位置を検出する位置検出手段と、
目標物の位置を記憶する目標物位置情報記憶部と、
前記目標物の設置対象道路か否かを判定する事前確認位置を記憶する事前確認位置情報記憶部と、
前記各記憶部に格納されたそれぞれの位置情報と、前記位置検出手段の出力から目標物の存在を判定する報知判定手段と、
報知判定手段の出力から、目標物の存在を報知する報知手段と、を備え、
前記報知判定部は、前記事前確認位置を通過したら、その事前確認位置に関連付けられていない目標物は存在しないとして判定処理を行なうことを特徴とする車載用目標物報知装置。
【請求項7】
前記事前確認位置情報記憶部に格納された事前確認位置情報に関連づけて有効判定目標物の数を記憶し、
事前確認位置通過後、記憶している有効判定目標物の数だけ目標物の存在判定を有効とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車載用目標物報知装置。
【請求項8】
事前確認解除位置を記憶する事前確認解除位置情報記憶部を設け、前記事前確認位置通過後、事前確認解除位置を通過するまでの間、目標物の存在判定を有効にすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車載用目標物報知装置。
【請求項9】
前記事前確認位置を通過したらタイマーを作動させ、予め設定してある時間を経過したら、事前確認位置の通過を取り消し、その事前確認位置と関連付けた目標物についての判定を行わないようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の車載用目標物報知装置。
【請求項10】
前記事前確認位置を通過したら、前記事前確認位置から予め設定した距離以上離れたら、事前確認位置の通過を取り消し、その事前確認位置と関連付けた目標物についての判定を行わないようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の車載用目標物報知装置。
【請求項11】
事前確認位置情報記憶部に、道路進行方向の方位を予め記憶しておき、事前確認位置走行時に車両の進行方向の方位を計測し、記憶してある方位と計測した方位が所定の範囲内の場合、事前確認位置を走行したとみなすことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の車載用目標物報知装置。
【請求項12】
事前確認位置に関連づけて速度を予め記憶しておき、
事前確認位置走行時の車両の速度が、記憶してある速度より高速の場合、事前確認位置を走行したとみなすことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の車載用目標物報知装置。
【請求項13】
事前確認位置情報記憶部に、事前確認位置エリアの半径を予め記憶しておき、事前確認位置走行時に、その半径のエリア内を通過した場合、事前確認位置を走行したとみなすことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の車載用目標物報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−64588(P2008−64588A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242417(P2006−242417)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】