説明

車載用端末装置、車載用端末装置の制御方法、及び、情報提供システム

【課題】緊急車両の存在を確実に検出して報知すること。
【解決手段】緊急走行中の緊急車両2の位置情報を中継装置4から取得し、取得した緊急車両2の位置と自車両1の位置とが所定の距離以内である場合には、緊急車両2の存在を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載用端末装置、車載用端末装置の制御方法、及び、上記の車載用端末装置を含んで構成される情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交差点に配置された監視カメラが緊急車両のサイレン音を検出したときは、自己の監視方向の撮影映像に緊急車両の映像が含まれるかを判断し、緊急車両が含まれている場合は、交差点に向かって進行している一般車両に対して後方から緊急車両が接近することを示す接近情報を送信する技術が開示されている。この技術によれば、一般車両の乗員に対し、緊急車両の接近を報知できるとされている。
【特許文献1】特開2008−52341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献に記載された技術では、監視カメラは定点固定であるため、緊急車両が監視カメラから離れた位置を走行している場合には、検出することができないという問題点がある。
【0004】
また、監視カメラはサイレン音と映像とによって緊急車両を検出するため、例えば、環境音が大きい場合や、視界が悪い場合にはサイレン音や映像を検出することが難しくなるため、緊急車両の検出が困難になる場合があるという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、緊急車両の存在を確実に検出して、他の車両の乗員に対して緊急車両の存在を報知することが可能な車載用端末装置、車載用端末装置の制御方法、及び情報提供システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述課題を解決するため、本発明の車載用端末装置は、緊急走行中の緊急車両の位置情報を中継装置から取得し、取得した前記緊急車両の位置と自車両の位置とが所定の距離以内である場合には、前記緊急車両の存在を報知することを特徴とする。
上記構成によれば、緊急走行中の緊急車両が自車両から所定の距離以内に存在する場合には、緊急車両の存在が車両の乗員に対して報知される。このため、車両の乗員は、自車両から所定の距離内に存在する緊急車両の存在を確実に知ることができるので、その接近に予め備えることができる。
【0007】
また、他の発明は、上記発明において、前記中継装置から取得した前記緊急車両の位置と自車両の位置とが所定の距離以内である場合であって、前記緊急車両が自車両に接近しているときに報知を行うことを特徴とする。
上記構成によれば、緊急車両が自車両に接近しているときに報知が行われる。このため、乗員は、自車両から所定の距離以内に存在すると共に、緊急車両が自車両に接近していることを知ることができるため、緊急車両に対する回避行動の準備を行うことができる。
【0008】
また、他の発明は、上記発明において、前記緊急車両の位置と走行方向とを表示装置に表示することにより、報知を行うことを特徴とする。
上記構成によれば、緊急車両の位置と走行方向とが表示装置に表示される。このため、乗員は、表示装置に表示された緊急車両の位置と進行方向を参照して、緊急車両を回避する必要の有無と、回避の必要がある場合にはどのような回避行動をとるべきかを知ることができる。
【0009】
また、本発明の車載用端末装置の制御方法は、緊急走行中の緊急車両の位置情報を中継装置から取得し、取得した前記緊急車両の位置と自車両の位置とが所定の距離以内である場合には、前記緊急車両の存在を報知することを特徴とする。
上記方法によれば、緊急走行中の緊急車両が自車両から所定の距離以内に存在する場合には、緊急車両の存在が車両の乗員に対して報知される。このため、車両の乗員は、自車両から所定の距離内に存在する緊急車両の存在を確実に知ることができるので、その接近に予め備えることができる。
【0010】
また、本発明の情報提供システムは、緊急車両に搭載された緊急車両用端末装置と、前記緊急車両とは別の車両に搭載された車載用端末装置と、前記緊急車両用端末装置及び前記車載用端末装置と通信可能な中継装置と、を備え、前記緊急車両用端末装置は、前記緊急車両の緊急走行中に当該緊急車両の位置情報を送信し、前記中継装置は、前記緊急車両用端末装置から送信された位置情報を中継して送信し、前記車載用端末装置は、前記中継装置により中継して送信された位置情報を取得し、前記緊急車両の位置と自車両の位置とが所定の距離以内である場合に、前記緊急車両の存在を報知すること、を特徴とする。
上記構成によれば、緊急車両が緊急走行を行っている場合には緊急車両用端末装置から位置情報が中継装置に送信され、中継装置は位置情報を車載用端末装置に中継し、車載用端末装置は緊急走行中の緊急車両が自車両から所定の距離以内に存在する場合には、緊急車両の存在が車両の乗員に対して報知される。このため、車両の乗員は、自車両から所定の距離内に存在する緊急車両の存在を確実に知ることができるので、その接近に予め備えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緊急車両の存在を確実に検出して乗員に報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は、実施形態の緊急車両情報報知システムの構成例を示す図である。この図1に示すように、緊急車両情報報知システムは、ネットワーク3、中継装置4、基地局5、ナビゲーション装置10、及び、送信装置50を有している。ここで、ネットワーク3は、例えば、インターネットによって構成され、基地局5によって受信された送信装置50からの緊急車両情報を中継装置4に伝送するとともに、中継装置4に記憶された緊急車両情報を、基地局5を介してナビゲーション装置10に伝送する。中継装置4は、例えば、サーバ装置によって構成され、送信装置50から送信された緊急車両情報を受信して記憶するとともに、記憶された緊急車両情報をネットワーク3を介してナビゲーション装置10に送信する。基地局5は、無線通信により、ナビゲーション装置10及び送信装置50との間で緊急車両情報を送受信するとともに、ネットワーク3を介して緊急車両情報を中継装置4との間で伝送する。
【0013】
ナビゲーション装置10は、自家用車、バス、トラック、及び、タクシー等の緊急車両以外の一般車両1に搭載され、これらの車両の経路案内を実行するとともに、中継装置4に記憶されている緊急車両情報を取得し、後述する処理に基づいて、接近中の緊急車両を特定し、運転者に報知する。送信装置50は、救急車、パトロールカー、消防車、電気ガス事業その他の公益事業が危険防止のための応急作業に使用する車両、水防機関が水防のための使用する車両、及び、血液製剤の応急運搬のため使用する車両等の緊急車両に搭載され、これらの緊急車両が緊急走行中である場合には、自車両を特定するための情報と、自車両の位置等を示す情報を、基地局5及びネットワーク3を介して中継装置4に送信する。ここで、緊急走行とは、前述した緊急自動車がその緊急用務のために運転中(道路交通法にいう「緊急自動車」の状態)であって、赤色又は黄色の回転灯を点灯させると共に、サイレンを鳴動させて走行している状態(緊急で移動している状態)をいい、他の交通車両に優先して道路を通行することができ、また通行区分など交通規則の一部が適用除外される状態をいう。
【0014】
図2は、図1に示すナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。
ナビゲーション装置10は、一般車両1に搭載され、一般車両1の経路案内を行うナビゲーション機能や施設検索機能を有する装置である。
ナビゲーション装置10は、絶対位置方位検出機能を有するGPS(Global Positioning System)ユニット11と、相対方位検出機能を有するジャイロユニット12と、車速検出部13と、FM(Frequency Modulation)受信部14と、ビーコン受信部15と、表示部16と、指示入力部17と、ユーザインターフェース部18と、音声認識部19と、制御部20と、情報記憶部21と、記録媒体読書部22と、通信制御部23と、音声再生部41と、を備えている。
【0015】
GPSユニット11は、GPSアンテナ(レシーバでも良い)11Aを介してGPS衛星からのGPS電波を受信し、GPS電波に重畳されたGPS信号から、車両の現在地を示す位置座標と進行方向とを演算により取得すると共に、GPS信号に含まれる日時情報と車両の現在地の時差とから車両の現在地における日時情報(年、月、日、時、分等)を演算により取得し、これら情報を制御部20に出力する。
ジャイロユニット12は、ジャイロセンサにより車両の相対的な方位を検出して制御部20に出力し、車速検出部13は、車両の車速パルスPSに基づいて車両の速度を演算により求め、制御部20に出力する。
【0016】
FM受信部14は、FMアンテナ14Aを介してFM多重放送波を受信し、FM多重放送波に重畳された交通情報(VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)情報)を取得し、所定の処理を施して制御部20に出力する。また、ビーコン受信部15は、ビーコン用アンテナ15Aを介してビーコン情報を受信し、所定の処理を施して制御部20に出力する。
【0017】
表示部16は、例えば、タッチパネル付きの液晶表示装置が適用され、制御部20の制御の下、各種情報を表示する。指示入力部17は、ナビゲーション装置10が備える各種操作子やタッチパネルの操作を検出する操作検出部と、リモートコントローラ(図示せず)からの送信信号を受信する受信部等から構成され、ユーザからの各種指示を制御部20に出力する。ユーザインターフェース部18は、I/O制御回路やドライバ等であり、表示部16及び指示入力部17と、制御部20とを接続するインターフェースである。
音声認識部19は、マイク(図示せず)を介して入力した音声を音声認識し、その認識結果を制御部20に出力する。すなわち、このナビゲーション装置10は、指示入力部17及び音声認識部19を介してユーザ指示を入力可能に構成されている。
【0018】
制御部20は、このナビゲーション装置10全体を制御するものであり、CPU及びその周辺回路から構成され、CPUは、ROM30に記憶された制御プログラム等の各種データを読み出し、指示入力部17及び音声認識部19を介して入力されたユーザ指示に応じて、ナビゲーション装置10の各部の制御処理を行う。また、DRAM31は、CPUのワークエリアに使用されるメモリであり、SRAM32は、揮発性メモリであるが、車両のアクセサリ電源等の本装置のメイン電源がオフの間も、電池等でバックアップされてメモリ内容を保持するようにされている。また、VRAM33は、表示部16の表示用データが格納されるメモリである。なお、ROM30と、DRAM31と、SRAM32と、VRAM33とによって、メモリブロック25が形成されている。
【0019】
情報記憶部21は、地図データ、楽曲データを記憶する記憶手段であり、具体的には、ハードディスク装置、CD−ROMやDVD−ROM等のディスク状記録媒体に記憶された上記各データを読み出し可能な読取装置等が適用される。
記録媒体読書部22は、制御部20の制御の下、このナビゲーション装置10に接続された外部記録媒体に対してデータの記録・読み出しを行うものであり、外部記録媒体は、例えば、メモリースティック(登録商標)、メモリカード、CFカード(登録商標)が適用される。
通信制御部23は、制御部20の制御の下、このナビゲーション装置10に接続された無線通信機器(例えば、携帯電話機又はWi−Fi(登録商標)機器等)40を介して中継装置4にアクセスし、緊急車両情報等の各種情報を受信する。
【0020】
制御部20は、ユーザにより動作モードとしてナビゲーションモードへの移行が指示されると、CPUによりナビゲーションプログラムを実行し、表示部16に地図等を表示する。より具体的には、制御部20は、GPSユニット11とジャイロユニット12との検出結果に基づき車両の現在地及び進行方向を特定し、現在地周辺の地図を表示させる。また、制御部20は、目的地が設定された場合、目的地までの最適経路を計算し、表示地図中に表示して目的地まで経路案内処理を実行する経路案内手段として機能する。
【0021】
このナビゲーションモード中、制御部20は、FM受信部14やビーコン受信部15から各種交通情報を入力すると、その情報を表示する処理(例えば、渋滞情報等を文字表示、簡易図形表示或いは地図表示する処理)を行う。
また、制御部20は、ユーザにより動作モードとして検索モードへの移行が指示されると、検索用の制御プログラムを実行し、ユーザの希望する条件に適合する施設(観光名所、観光地、温泉、コンビニエンスストア、駐車場等)を検索する検索処理を実行する。
音声再生部41は、スピーカ装置、アンプなどを有し、制御部20の制御下で各種楽曲の再生出力を行う。
さらに、制御部20は、通信制御部23を介して中継装置4から緊急車両情報を取得し、自車両から所定の距離(例えば、1km)以内に緊急車両が緊急走行中である場合には、表示部16に対して緊急車両の位置を示す情報を表示するとともに、音声再生部41から所定の音声を放音する。
【0022】
図3は、図1に示す送信装置50の構成を示すブロック図である。この図3に示すように、送信装置50は、制御部51と、GPSユニット52と、センサ53と、回転灯54と、サイレン55と、ROM56と、通信制御部57と、無線通信部58と、緊急走行ボタン59とを有している。
【0023】
ここで、制御部51は、送信装置50全体を制御するものであり、CPU及びその周辺回路から構成され、CPUは、ROM56に記憶された制御プログラム等の各種データを読み出し、緊急走行ボタン59及び図示せぬ指示入力部を介して入力された緊急車両の運転者又は同乗者の指示に応じて、送信装置50の各部の制御処理を行う。
【0024】
GPSユニット52は、GPSアンテナ52Aを介してGPS衛星からのGPS電波を受信し、GPS電波に重畳されたGPS信号から、車両の現在地を示す位置座標と進行方向とを演算により取得すると共に、GPS信号に含まれる日時情報と車両の現在地の時差とから車両の現在地における日時情報(年、月、日、時、分等)を演算により取得し、これら情報を制御部51に出力する。
【0025】
センサ53は、緊急車両2の車速パルス及び進行方向(例えば、ジャイロセンサによって検出された角速度に基づく進行方向)等の情報を検出し、制御部51に供給する。ここで車速パルスは、緊急車両2の走行速度を示し、進行方向は、緊急車両2が進む方向であって、例えば、真北を0度とする情報である。回転灯54は、例えば、赤色又は黄色の光源からの光を回転する鏡によって反射する構成となっており、緊急走行中に点灯される。サイレン55は、例えば、音声データ等に基づいて電子音を発生し、緊急走行中に当該電子音を放音する。
【0026】
ROM56は、制御部51が実行する各種プログラムを格納するとともに、自車両の車両種別を示す車両種別56a及び車両を識別するためのユニークな情報としてのID(Identification)56bを格納している。
【0027】
通信制御部57は、無線通信部58を制御し、基地局5及びネットワーク3を介して中継装置4に対して後述する緊急車両情報等を送信する制御を行う。無線通信部58は、例えば、Wi−Fi機器等によって構成され、基地局5との間で無線通信によって情報を送受信する。
【0028】
緊急走行ボタン59は、緊急車両2が緊急走行を行う際に操作されるボタンであり、この緊急走行ボタン59が操作されると、回転灯54が点灯されると共に、サイレン55が鳴動される。さらに、無線通信部58を介して中継装置4に対して緊急車両2の位置等を示す情報が送信される。
【0029】
次に実施形態の動作について説明する。
図4は、緊急車両2の送信装置50において実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
まず、制御部51は、緊急走行ボタン59がオンの状態にされたか否かを判別する(ステップS10)。
ステップS10の判別において、緊急走行ボタン59がオンの状態にされてないと判別した場合(ステップS10;No)には、同様の処理を繰り返して待機状態となる。
【0030】
ステップS10の判別において、緊急走行ボタン59がオンの状態にされたと判別した場合(ステップS10;Yes)には、制御部51は、回転灯54を動作させ(ステップS11)、サイレン55を動作させる(ステップS12)。すなわち、緊急車両2の運転者又は同乗者が、例えば、負傷者の搬送の目的で緊急走行を行うために緊急走行ボタン59をオンの状態にした場合には、回転灯54とサイレン55とが動作状態となる。
【0031】
次に、制御部51は、ROM56に格納されている車両種別56aとID56bを取得する(ステップS13)。ここで、車両種別56aは、緊急車両2の種別を示す情報であり、例えば、「救急車」、「消防車」、「パトロールカー」、又は、「応急作業車」等の情報である。また、ID56bは、個々の緊急車両に個別に付与されたユニークな識別情報であり、このID56bを特定することによって、緊急車両が一意に特定される。具体的には、ID56bは、数字及びアルファベット等から構成される文字列「AM15842」等の情報である。
【0032】
次に、制御部51は、センサ53を介して車速パルスと、図示せぬジャイロセンサにより検出された角速度を示す情報を取得し、車速パルスから緊急車両2の現在の車速(走行速度)を算出するとともに、角速度を示す情報から進行方向を算出する(ステップS14)。具体的には、車速として「90km/h」が算出され、進行方向として「32度」が算出される。
【0033】
続いて、制御部51は、GPSユニット52から、緊急車両2の現在位置を示す情報(緯度及び経度)と、緯度及び経度を検出した時刻を取得する(ステップS15)。具体的には、制御部51は、緯度「X1」及び経度「Y1」と、これらを検出した時刻「T1」を取得する。
【0034】
続いて、制御部51は、ステップS14及びステップS15において取得した情報を、通信制御部57及び無線通信部58を介して送信する(ステップS16)。この結果、無線通信部58から送信された情報は、基地局5及びネットワーク3を介して中継装置4に伝送される。中継装置4では、ネットワーク3を介して伝送されてきた、緊急走行中の緊急車両2に関する前述した情報を受信し、図示せぬ記憶装置に記憶する。図5は、中継装置4に記憶されている情報(緊急車両情報)の一例を示す図である。この例に示す情報は、項目として「No.」と、「ID」と、「車両種別」と、「位置情報」と、「車速」と、「進行方向」とを有している。ここで、「No.」は、各情報に付与されたシリアル番号である。「ID」は、各緊急車両を特定するためのユニークな識別情報であり、図3のID56bに対応している。「車両種別」は、緊急車両の種別を示す情報であり、図3の車両種別56aに対応している。「位置情報」は、緊急走行中の緊急車両の位置を示す情報であり、緯度及び経度を示す情報と、当該緯度及び経度が検出された時刻を示す情報を有する。「車速」は、緊急走行中の緊急車両の走行速度を示す情報である。「進行方向」は、緊急走行中の緊急車両の進行する方向を示す情報である。なお、緊急車両から新たな情報が届いた場合には、中継装置4は、IDを参照して既登録の情報であるか否かを判別し、既登録でない場合には、シリアル番号を付与して新たな情報として登録し、既登録の情報と判別した場合には、該当する既登録の情報を更新する(上書きする)。これにより、中継装置4には、常に最新の緊急車両情報が格納されることになる。
【0035】
次に、制御部51は、緊急走行ボタン59がオフの状態にされたか否かを判別する(ステップS17)。
ステップS17の判別において、緊急走行ボタン59がオフの状態にされてないと判別した場合(ステップS17;No)には、ステップS14に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。すなわち、ステップS13において取得された車両種別56a及びID56bと、ステップS14において取得された車速と進行方向を示す情報と、ステップS15において取得された現在位置を示す情報とが、中継装置4に対して繰り返し送信される。なお、情報の送信は、例えば、常に一定の間隔(例えば、2秒間隔)で行ったり、走行速度に応じた間隔(例えば、走行速度が速い場合(時速60km/h以上の場合)には高い頻度(例えば、1秒間隔)で行い、走行速度が遅い場合(時速60km/h未満の場合)には低い頻度(例えば、5秒間隔)で行ったりしてもよい。前者によれば、一定の間隔で情報を更新することができ、また、後者によれば走行速度が速い場合には、更新の間隔を短くして緊急車両の接近を速やかに通知するとともに、走行速度が遅い場合には、更新の間隔を長くして中継装置4の負担を低減することができる。
【0036】
ステップS17の判別において、緊急走行ボタン59がオフの状態にされたと判別された場合(ステップS17;Yes)には、制御部51は、回転灯54を停止させ(ステップS18)、サイレン55を停止させる(ステップS19)。
【0037】
次に、制御部51は、緊急走行の終了を中継装置4に対して通知する(ステップS20)。より具体的には、制御部51は、ID56bと共に、緊急走行の終了を通知する情報を、通信制御部57及び無線通信部58を介して中継装置4に送信する。その結果、中継装置4では、対応する登録情報を、図5に示す緊急車両情報から削除する。
【0038】
なお、上述した処理は、図1に示す緊急車両2以外の緊急車両においても実行されているので、中継装置4には緊急走行中の全ての緊急車両からの情報が登録されると共に、緊急車両の移動等に伴って情報が更新されることになる。なお、中継装置4は、日本全国を走行する全ての緊急車両に関する情報を登録することも可能であるが、別の実施形態としては、例えば、所定のエリア(例えば、都道府県)毎に中継装置4を別個に設けて、エリア毎に情報を登録するようにしてもよい。なお、そのような場合には、中継装置4に登録される情報の個数が減少するので、中継装置4の負荷は軽減するが、緊急車両が前述したエリアの範囲を超えて移動する場合には、移動前後のエリアをそれぞれ管理する2台の中継装置間において情報の引き継ぎ処理が必要になる。
【0039】
図6は、一般車両1のナビゲーション装置10において実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
まず、制御部20は、中継装置4から図5に示す緊急車両情報を取得する(ステップS30)。より具体的には、制御部20は、通信制御部23及び無線通信機器40を制御し、基地局5及びネットワーク3を介して中継装置4にアクセスし、緊急車両情報の送信を要求する。その結果、中継装置4は、図5に示す緊急車両情報を、ネットワーク3及び基地局5を介して、要求を行った一般車両のナビゲーション装置10に対して送信する。ナビゲーション装置10の制御部20は、図5に示す緊急車両情報を受信する。
【0040】
制御部20は、GPSユニット11から自車両の現在位置を示す情報(緯度及び経度の情報並びにこれらの情報を検出した時刻を示す情報)を取得する(ステップS31)。次に、制御部20は、ステップS31で取得した自車両の現在位置を中心とする半径1kmの範囲内に存在する緊急車両を特定する(ステップS32)。すなわち、制御部20は、自車両の現在位置を中心とする半径1kmの範囲を特定すると共に、緊急車両情報を参照して当該範囲内に存在する緊急走行中の緊急車両を特定する。具体的には、自車両の現在位置の緯度がX0であり、経度がY0である場合には、X0及びY0を中心とする半径1kmの範囲を特定し、当該範囲に属している緊急走行中の緊急車両を、緊急車両情報から特定する。この処理の結果、例えば、図5に示す「No.1」と「No.2」の情報が半径1kmの範囲に存在する緊急走行中の緊急車両として特定される。
【0041】
次に、制御部20は、ステップS32において特定された緊急車両の動きベクトルを生成する(ステップS33)。なお、動きベクトルとは、緊急車両の走行方向に対応する向きと、緊急車両の走行速度に対応する大きさを有するベクトルである。なお、このような動きベクトルは、前回受信した位置情報と、今回受信した位置情報から生成することができる。より詳細には、前回の位置情報が「X12,Y12,T12」であり、今回の位置情報が「X11,Y11,T11」である場合には、移動距離d=SQR((X11−X12)2+(Y11−Y12)2)を、移動に要した時間t=(T11−T12)で除して得られた値(=d/t)を動きベクトルの大きさとし、地点「X12,Y12」から地点「X11,Y11」に向かう方向を動きベクトルの向きとする。ここで、「SQR」は括弧内の平方根を求める演算子である。なお、位置情報のみから動きベクトルを求めるのではなく、緊急車両情報に含まれている車速と進行方向を参照して動きベクトルを生成するようにしてもよい。すなわち、車速に基づいて動きベクトルの大きさを決めると共に、進行方向に基づいて向きを決め、新たな動きベクトルを生成するようにしてもよい。そのような方法によれば、誤差を少なくすることで、動きベクトルをより正確に求めることができる。
【0042】
次に、制御部20は、自車の動きベクトルを生成する(ステップS34)。すなわち、制御部20は、ステップS33の場合と同様に、GPSユニット11によって検出される自車の前回位置と今回位置とに基づいて、自車の動きベクトルを生成する。なお、前述の場合と同様に、自車の車速と進行方向を参照して、自車の動きベクトルを生成することも可能である。
【0043】
続いて、制御部20は、ステップS33で生成した自車両から1kmの範囲内に存在する緊急車両の動きベクトルと、ステップS34で生成した自車両の動きベクトルを比較し、自車両に接近する緊急車両を特定する(ステップS35)。すなわち、制御部20は、自車両の移動ベクトルの延長線と交差する緊急車両の動きベクトルを特定する。そして、交差する動きベクトルが存在する場合には、自車両の動きベクトルと、交差する動きベクトルの大きさを比較し、将来において所定の距離以内に接近する動きベクトルを特定する。例えば、自車両と緊急車両が同一方向に走行している場合であって、緊急車両が後方に位置し、しかも、緊急車両の方が速度が大きい場合には、一定時間後には、緊急自動車は自車両を追い抜く。その場合には、両者の動きベクトルの延長線は交差し、また、両者は将来において所定の距離以内に接近するので、当該緊急車両は接近する緊急車両として特定される。また、別の例としては、例えば、交差点に一方から自車両が進入し、これとは異なる方向から緊急車両が進入する場合であって、交差点内においてこれらの車両が接近する場合、両者の動きベクトルの延長線は交差し、また、両者は将来において所定の距離以内に接近するので、当該緊急車両は接近する緊急車両として特定される。いまの例では、例えば、図5の「No.1」及び「No.2」のうち、「No.2」が接近する緊急車両として特定される。
【0044】
次に、制御部20は、ステップS35の処理により、自車両に接近する緊急車両が特定されたか否かを判別する(ステップS36)。
ステップS36の判別において、自車両に接近する緊急車両が特定されないと判別した場合(ステップS36;No)には、ステップS42に進む。
【0045】
ステップS36の判別において、自車両に接近する緊急車両が特定されたと判別した場合(ステップS36;Yes)には、制御部51は、接近する緊急車両を示すアイコンを表示部16に表示する(ステップS37)。続いて、制御部20は、緊急車両が接近中であることを示すメッセージを表示部16に表示する(ステップS38)。図7は、ステップS37及びステップS38の処理の結果として表示部16に表示される情報の一例を示す図である。図7の例では、表示部16には、自車両が走行中の地点の周辺を示す地図情報16aが表示され、また、地図情報16aの略中央には、自車両を示すアイコン16bが表示され、さらに、自車両を示すアイコン16bの下には接近中の緊急車両を示すアイコン16cが表示されている。さらにまた、画面の最下部には、メッセージ16dとしての「※注意!!後方から緊急車両が高速で接近中!」が表示されている。なお、このようなメッセージ16dは、情報記憶部21等に予め複数の候補を記憶しておき、接近中の緊急車両と自車両との位置関係等に基づいてこれらの候補の中から最適な候補を選択して表示することができる。なお、接近中の緊急車両を示すアイコン16cは、三角形の最も上に位置している頂点が進行方向として表されている。なお、三角形以外の形状のアイコン(例えば、進行方向を示す矢印のアイコン)を用いることも可能である。
【0046】
続いて、制御部20は、音声再生部41に対して所定の音声情報を供給し、警告音を図示せぬスピーカから放音させる(ステップS39)。なお、このとき、例えば、ナビゲーションに関する経路案内の音声が出力されている場合、又は、音楽等が再生されている場合には、これらの音声の出力レベルを一時的に下げるようにしてもよい。そのような方法によれば、警告音を確実に運転者に通知することができると共に、緊急車両が接近した場合には、緊急車両から発せられるアナウンス(例えば、「本車両は赤信号を通過します。」又は「本車両は右に曲がります。」)を運転者に確実に伝えることができる。
【0047】
続いて、制御部20は、緊急車両が接近後に50m以上遠ざかったか否かを判別する(ステップS40)。すなわち、制御部20は、自車両の現在位置と、接近中の緊急車両の位置情報とを比較し、これらが最接近した後に、50m以上遠ざかったか否かを判別する。なお、距離については、自車両と緊急車両との直線距離に基づいて判断することができる。
【0048】
ステップS40の判別において、緊急車両が接近後に50m以上遠ざかったと判別した場合(ステップS40;Yes)にはステップS41に進み、画面表示をもとに戻す。すなわち、制御部20は、図7に示す表示例から、緊急車両を示すアイコン16cと、メッセージ16dとを消去する。この結果、通常の画面表示に復元する。
【0049】
ステップS40の判別において、緊急車両が接近後に50m以上遠ざかっていないと判別した場合(ステップS40;No)にはステップS37に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。この結果、自車両に接近中の緊急車両が存在する場合には、最接近した後に、50m以上遠ざかるまで、表示部16にアイコン16cとメッセージ16dが表示され続けることになる。なお、アイコン16cは、緊急車両の移動に伴って画面上を移動する。
【0050】
続いて、制御部20は、処理を終了するか否かを判別する(ステップS42)。その結果、処理を終了しないと判別した場合(ステップS42;No)にはステップS30に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS42;Yes)には処理を終了する。
【0051】
以上の実施形態によれば、緊急車両2の接近を一般車両1の運転者に確実に伝えることが可能になるので、一般車両1の運転者は緊急車両2の進行を妨げないように、進路を譲ることが可能になる。
【0052】
また、以上の実施形態によれば、所定の距離以内に緊急車両2が接近した場合に、所定の表示及び警告音を放音するようにしたので、例えば、この表示等を行う範囲の設定の仕方によっては、緊急車両2の回転灯54が視認できなかったり、サイレン55が聞こえない範囲であったりしても、緊急車両2の接近を事前に知らせることができるので、緊急車両2に対して進路を譲る行動をより迅速かつ確実に行うことができる。
【0053】
また、以上の実施形態によれば、緊急車両2と一般車両1の動きベクトルを利用して、両者の接近を判断するようにしたので、両者の接近を正確に判断することができる。
【0054】
以上の説明においては、位置情報としては、緯度及び経度情報を用いるようにしたが、これらに加えて、高度情報を用いて判断するようにしてもよい。このように、高度情報を用いることにより、緊急車両2と一般車両1が、例えば、高架上と高架下を走っているような場合には、これらの高度が異なることから、両者が接近していないと正しく判断することができる。
【0055】
また、図6のステップS32では、1km以内に存在する緊急車両2を特定するようにしたが、これ以外の距離(例えば、500m又は2km)であってもよい。あるいは、固定した距離で判断するのではなく、一般車両1の走行速度に応じて距離を可変するようにしてもよい。一例としては、一般車両1が高速走行中には範囲を広くし(例えば、2km以内とし)、低速走行中には範囲を狭くする(例えば、500m以内とする)ようにしてもよい。そのような方法によれば、一般車両1の走行速度に応じた最適なタイミングで、緊急車両2の接近を知らせることが可能になる。
【0056】
また、図6のステップS35では、接近する緊急車両2を動きベクトルを用いて判断するようにしたが、これに加えて、又は、これとは別に、地図情報に含まれている道路情報を用いて判断を行うようにしてもよい。具体的には、一般車両1が走行中の道路と、緊急車両2が走行中の道路を比較し、これらが、将来において交差する場合には、両者が接近していると判断することができる。
【0057】
また、図6に示すステップは、全て、ナビゲーション装置10において実行されるものとしたが、これらのステップの一部を中継装置4又は他の装置(例えば、ネットワーク3に接続された図示せぬ処理装置)において実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態に係る緊急車両情報報知システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図3】送信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す送信装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】中継装置に記憶される緊急車両情報の一例である。
【図6】図2に示すナビゲーション装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6の処理によって表示部に表示される情報の一例である。
【符号の説明】
【0059】
1 一般車両
2 緊急車両
3 ネットワーク
4 中継装置
5 基地局
10 ナビゲーション装置
11 GPSユニット
12 ジャイロユニット
16 表示部
20 制御部
21 情報記憶部
23 通信制御部
40 無線通信機器
41 音声再生部
50 送信装置
51 制御部
52 GPSユニット
53 センサ
54 回転灯
55 サイレン
56 ROM
57 通信制御部
58 無線通信部
59 緊急走行ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急走行中の緊急車両の位置情報を中継装置から取得し、取得した前記緊急車両の位置と自車両の位置とが所定の距離以内である場合には、前記緊急車両の存在を報知することを特徴とする車載用端末装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載用端末装置において、
前記中継装置から取得した前記緊急車両の位置と自車両の位置とが所定の距離以内である場合であって、前記緊急車両が自車両に接近しているときに報知を行うことを特徴とする車載用端末装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車載用端末装置において、
前記緊急車両の位置と走行方向とを表示装置に表示することにより、報知を行うことを特徴とする車載用端末装置。
【請求項4】
緊急走行中の緊急車両の位置情報を中継装置から取得し、取得した前記緊急車両の位置と自車両の位置とが所定の距離以内である場合には、前記緊急車両の存在を報知することを特徴とする車載用端末装置の制御方法。
【請求項5】
緊急車両に搭載された緊急車両用端末装置と、前記緊急車両とは別の車両に搭載された車載用端末装置と、前記緊急車両用端末装置及び前記車載用端末装置と通信可能な中継装置と、を備え、
前記緊急車両用端末装置は、前記緊急車両の緊急走行中に当該緊急車両の位置情報を送信し、
前記中継装置は、前記緊急車両用端末装置から送信された位置情報を中継して送信し、
前記車載用端末装置は、前記中継装置により中継して送信された位置情報を取得し、前記緊急車両の位置と自車両の位置とが所定の距離以内である場合に、前記緊急車両の存在を報知すること、
を特徴とする情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−288216(P2009−288216A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144219(P2008−144219)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】