説明

車載用観察装置

【課題】撮像用光学系と補助光学系を統合した光学系を有する車載用観察装置を提供する。
【解決手段】車載用観察装置10を、ウィンドウシールドWを通して外部空間ROを結像すると共に補助光学系3と共同してウィンドウシールドWの観察面Wbを結像する撮像用光学系2と、撮像用光学系2により結像した像を画像信号に変換する撮像素子5とを含み、補助光学系3を少なくとも、光源331及びこの光源331からの光をほぼ平行になす集光光学系332を有し、平行光を観察面Wbで全反射させる前置光学系3Fと、少なくとも1枚の正の屈折力を有し、観察面Wbで反射した平行光を撮像用光学系2に導くための後置光学系3Lとで構成する。そして、後置光学系3Lの後側焦点と撮像用光学系2の入射瞳の位置とをほぼ一致させ、後置光学系3Lの前側焦点をウィンドウシールドWの観察面Wbと接する面の近傍に位置するように配置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の観察装置として、ウィンドウシールドの外部空間とウィンドウシールド外表面との観察を一つの撮像素子を用いて行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ウィンドウシールド外表面は例えば雨滴よって濡れることにより屈折異常を生じ、視界不良の原因となる。そのため、このような観察装置によりウィンドウシールド外表面を観察することで雨滴を検出し、ワイパーを作動させ視界を確保することが行われる。
【特許文献1】特開2006−071491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、ウィンドウシールド外表面の観察を観察領域全面に亘って良好に観察することができないという課題があった。
【0004】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ウィンドウシールド外表面の観察を良好に行うことのできる車載用観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明に係る車載用観察装置は、ウィンドウシールドを通して外部空間を結像すると共に、補助光学系と共同してウィンドウシールドの外表面を結像する撮像用光学系と、この撮像用光学系により結像した像を画像信号に変換する撮像素子と、を含み、補助光学系を少なくとも、光源、及び、この光源を発した発散光をほぼ平行になす集光光学系を有し、平行光をウィンドウシールドの外表面で全反射させる前置光学系と、少なくとも1枚の正の屈折力を有し、ウィンドウシールドで反射した平行光を撮像用光学系に導くための後置光学系と、で構成する。そして、後置光学系の後側焦点と撮像用光学系の入射瞳の位置とをほぼ一致させ、後置光学系の前側焦点をウィンドウシールドの外表面と接する面の近傍に位置するように配置させる。このとき、撮像用光学系と後置光学系とは、撮像用光学系の焦点距離をf1とし、後置光学系の焦点距離をf2としたとき、次式
0.01 < f1/f2 < 0.50
の条件を満たすように配置されている。
【0006】
このような車載用観察装置において、補助光学系の後置光学系は、凹面の反射面を少なくとも1面有するように構成されることが好ましい。
【0007】
また、このような車載用観察装置において、補助光学系は、複数の光学部品を有し、反射系または反射屈折系で構成され、補助光学系の後置光学系の光軸が1平面上に含まれるように構成された光学系であることが好ましい。
【0008】
また、このような車載用観察装置において、補助光学系の後置光学系は、凹面の反射面と平面の反射面との各々を少なくとも1面ずつ有するように構成されることが好ましい。
【0009】
あるいは、このような車載用観察装置において、補助光学系の後置光学系は、凹面の反射面と凸面の反射面との各々を少なくとも1面ずつ有するように構成されることが好ましい。
【0010】
また、このような車載用観察装置において、補助光学系の後置光学系は、反射系を構成する反射部材若しくは反射屈折系を構成する反射屈折部材を、少なくとも所定の波長の光線を透過する光線透過部材と一体に構成されることが好ましい。
【0011】
このとき、光線透過部材は、所定の波長以外の光線の光量を制限することが好ましい。
【0012】
また、このような車載用観察装置において、補助光学系の後置光学系は、凹面の反射面と凸面の反射面とを少なくとも各1面有し、凹面の反射面は略軸外しの、軸中心の回転放物面で構成され、凸面の反射面は、撮像用光学系の入射瞳の光軸上の位置を第二の焦点とし、凹面の焦点の位置を第一の焦点とする略軸を中心とする回転双曲面で構成されることが好ましい。
【0013】
また、このような車載用観察装置は、撮像用光学系の光軸と補助光学系の光軸とが撮像用光学系の入射瞳の位置若しくは当該入射瞳の近傍で交差し、撮像用光学系の光軸と補助光学系の光軸とのなす角度が、これらの光軸が交差する点を略中心として変化可能に構成されることが好ましい。
【0014】
さらに、このような車載用観察装置は、撮像用光学系の光軸と補助光学系の光軸とのなす角度が、光軸が交差する点を略中心として撮像用光学系の全画角の1/2以下の範囲の角度で変化可能に構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車載用観察装置を以上のように構成すると、撮像用光学系と補助光学系とを複合光学系として統合することができ、極めてコンパクトで調整が簡単で部材が少なく安価な光学系を達成することができ、ウィンドウシールドの外表面の状態に関する情報を取得でき、必要に応じてその情報を周辺装置若しくは撮像用光学系にフィードバックすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1は、自動車のフロントウィンドウ等のウィンドウシールドWで分割された空間RI,ROのうち、一方の空間RI(例えば、自動車の場合、車内RI)に配置された、撮像用光学系2及びウィンドウシールドWに照明光を照射する前置光学系3Fを含む、補助光学系3からなる複合光学系1と、を示している。ここで、自動車のフロントウィンドウの場合、図1においてウィンドウシールドWは紙面に垂直でなく、45度以上傾斜している。
【0017】
撮像用光学系2は、ウィンドウシールドWで分割され、この撮像用光学系2が配置された空間RI内からウィンドウシールドWを通して他方の空間RO(例えば、自動車の場合、車外であってこの自動車の前方の空間(外部空間)RO)を撮像する(観察する)ように構成されている。このような撮像用光学系2としては、広角レンズが用いられるのが良い。本実施例では特公昭51−14017に開示された実施例を所定の焦点距離に比例縮小させ、焦点距離f1=2.55mm、F/4、入射角2ω=180度、ymax=3.86mmのレンズとして用いたが、どの様なレンズを適用しても良い。なお、撮像用光学系2の像面上には、この撮像用光学系2で結像された像を検出して電気信号(画像信号)に変換する撮像素子5が配置されている。
【0018】
補助光学系3は、LEDの光源331と、該光源331を発する発散光を略平行に成すコンデンサレンズ(集光光学系)332およびプリズム333を有し、該平行光をウィンドウシールドWの外表面Waで全反射させ得る前置光学系3Fと、ウィンドウシールドW側から順に、正の屈折力を有する光学部材31と負の屈折力を有する光学部材32とから構成されている後置光学系3Lよりなる。なお、以降の説明において、ウィンドウシールドWの外表面Waのうち、前置光学系3Fにより照明光が照射される領域を「観察面Wb」と呼ぶ。この図1に示す実施形態においては、正の屈折力を有する光学部材31として、ウィンドウシールドW側に凹面31aを向けた焦点距離56.5mmの凹面鏡31で構成し、負の屈折力を有する光学部材32として、撮像用光学系2側に凸面32aを向けた焦点距離16.9mmの凸面鏡32で構成した場合を示している。この補助光学系3の後置光学系3Lは、合成焦点距離が103.4mmであり、その後側焦点(後置光学系3Lに対してウィンドウシールドW側から入射した光線が集光される焦点)が、撮像用光学系2の入射瞳の位置と概略一致するように配置されている。すなわち、補助光学系3の後置光学系3Lの後側焦点が、撮像用光学系2の入射瞳面と光軸とが交わる点の近傍に位置するように配置されている。補助光学系3をこのように配置することにより、この補助光学系3に入射した光線の全てを撮像用光学系2で取り込むことができる。ただし、撮像用光学系2の焦点距離f1と、補助光学系3の後置光学系3Lの焦点距離f2との間に、次に示す式(1)の関係を満たすようにするのが望ましい。
【0019】
0.01 < f1/f2 < 0.50 (1)
【0020】
この条件式(1)において、下限は、被写体の最小分解能から制限される。すなわち、雨滴の最小分解能を0.3mm以下と規定し、撮像用光学系2上の撮像素子5の画素ピッチを3μmと仮定する。そして、雨滴を孤立パターンとみなして、画素のナイキスト周波数(この場合166LP/mm)の2倍(1/332mm)まで識別できると仮定すれば、次式(2)の関係が成立する。
【0021】
(1/332mm)×(f2/f1) ≦ 0.3 (2)
【0022】
この式(2)の関係より、0.01<f1/f2となる。条件式(1)の下限を下回る場合は雨滴の最小分解能が低下して目標に達しない。
【0023】
一方、この条件式(1)において、上限は雨滴検出エリア(上述の観察面Wb)から受ける制約である。雨滴検出エリアは広いほど望ましく、少なくとも100mm2以上が望ましい。これを最も入手の容易なDXサイズの撮像素子(23.6×15.88mm=373mm2)の有効エリアの16分の1以下の面積に受光するとき、次式(3)の関係が成立する。
【0024】
(100/(373/16))1/2 ≧ f2/f1 (3)
【0025】
この式(3)の関係より、f1/f2<0.50となる。この限りにおいて、補助光学系3の後置光学系3Lは撮像用光学系2と比較して、相対的に明るさが暗く、簡素な光学系で実現でき、更には補助光学系3を構成する後置光学系3Lの全長(屈折系の場合でおよそf1の2倍)をコンパクトに実現することができる。なお、撮像素子5のサイズが小さくなると、撮像素子5の辺の長さに比例して、f1/f2の許容エリアは縮小されるが、これを1/2インチサイズの撮像素子(6.55×4.92mm=32.3mm2)の有効エリアの4分の1以下の面積に受光するとき、次式(4)の関係が成立する。
【0026】
(100/(32.3/4))1/2 ≧ f2/f1 (4)
【0027】
この式(4)の関係より、f1/f2<0.30となり、撮像用光学系2と比較して、補助光学系3の後置光学系3Lは相対的にFナンバーを大きく(つまり明るさを暗く)することができ、一層簡素で、一層コンパクトな光学系で実現できて更に現実的である。本実施形態の場合、撮像用光学系2の焦点距離f1は2.55mmであり、補助光学系3の後置光学系3Lの合成焦点距離f2は103.4mmであるから、f1/f2=0.025である。図中±10mmの雨滴エリアを確保する場合は、撮像用光学系2の焦点面上で幅0.48mmのエリアに結像している。
【0028】
補助光学系3の前置光学系3Fを図1の側面から見た図を図2に示す。前置光学系3Fは照明光学系であって、所定の波長の照明光(例えば赤外光)を放射する光源331と、この光源331から放射された照明光を集光して平行光束に変換するコンデンサレンズ(集光光学系)332と、全反射光を補助光学系3の後置光学系3Lに導くプリズム333から構成されている。この前置光学系3Fは、複合光学系1が配置された空間RI内からウィンドウシールドWに対して平行光束となった照明光を照射するように構成されている。平行光束であることは、所定の雨滴検出エリア内のすべての領域に均等な条件で光線を投射し、その結果均等な条件で雨滴の情報を得るために欠くことのできない条件である。光源331からのこの照明光は、平行光束となってウィンドウシールドWに入射するが、ウィンドウシールドWを構成する光学部材(例えばガラス)の屈折率に比べて、このウィンドウシールドWの外部空間ROの屈折率(通常、空気の屈折率)が小さいため、このウィンドウシールドWと外部空間ROとの境界面(観察面Wb)で全反射して、補助光学系3の後置光学系3Lに入射し、凹面鏡31及び凸面鏡32の順で反射してさらに撮像用光学系2に入射し、この撮像用光学系2で集光されて、その像面に配置された撮像素子5によりウィンドウシールドWの像(ウィンドウシールドWと外部空間ROとの境界面、すなわち、観察面Wbの像)として検出される。ウィンドウシールドWを構成する光学部材(例えばガラス)の屈折率を仮にn=1.5とした場合、全反射をする臨界角は41.8度である。実際車のフロントウィンドウは、屈折率がn=1.5程度なので、図2の実施例では45度の入射角にしている。入射角は、臨界角以上が必要であるが、あまり大きな角度だと、光学部材の寸法が過大になる等の影響が出るので、45度程度が適当である。全反射後、光束に乱れがない場合は、略平行光束のまま後置光学系3Lに入射し、その後撮像用光学系2の撮像素子5上に均一な照明光を投影する。
【0029】
ここで、例えば降雨によりウィンドウシールドWの外表面(外部空間RO側の面)に雨滴が付着すると、ウィンドウシールドWの屈折率と雨滴(水)の屈折率との差がウィンドウシールドWと空気との屈折率の差より小さくなり、外表面の平面性も悪化するため、観察面Wbにおいて雨滴が付着している部分では照明光の一部が観察面Wbで正反射せずに透過又は乱反射してしまう。そのため、補助光学系3を構成する後置光学系3Lの前側焦点近傍に観察面Wbが位置するようにこの複合光学系1を配置すると、この観察面Wbの像を撮像用光学系2で集光して結像することにより撮像素子5で検出することができる。このとき、撮像素子5で検出した観察面Wbの像の強度が高いほどその画像を白く表示するとした場合、雨滴が付着している部分だけが正反射せずに黒い画像となるので、この画像を解析することにより、ウィンドウシールドWにおける外部空間ROとの境界面の状態、すなわち、観察面Wbに雨滴等が付着しているか否かを検出することができる(ウィンドウシールドWの状態を観察するための観察装置の構成については後述する)。
【0030】
以上で説明した図1においては、補助光学系3の後置光学系3Lを、凹面鏡31の凹面(反射面)31aと凸面鏡32の凸面(反射面)32aとからなる反射系で構成した場合について説明したが、図3に示すように、ウィンドウシールドWから順に、両凸レンズ33とウィンドウシールドW側に凹面を向けた負メニスカスレンズ34とを貼り合わせた正接合レンズ35で構成することも可能である(ここで、図3においては、前置光学系3Fは省略している)。すなわち、この補助光学系3の後置光学系3Lは、少なくとも1枚の正の屈折力を有する光学部材(例えば、上述の正接合レンズ35)で構成することが可能である。また、この図1〜図3以外にも、補助光学系3の後置光学系3Lとして、反射系にレンズ等の屈折系を加えた反射屈折系で構成することも可能である。
【0031】
なお、補助光学系3の後置光学系3Lを反射系または反射屈折系で構成する場合は、ウィンドウシールドWの観察面Wbで反射した照明光を集光するためには、この補助光学系3の後置光学系3Lに凹面の反射面を少なくとも1面設ける(図1の場合は凹面鏡31の凹面31aを設けている)必要があり、さらに、凹面の反射面と凸面の反射面とを少なくとも各1面設けることにより(図1の場合は、凹面鏡31の凹面31a及び凸面鏡32の凸面32aを設けている)ペッツヴァル和を小さくして像面湾曲を低減させることができる。さらに、非点収差等の諸収差を補正して観察面Wbの良好な画像を得るためには、凹面鏡31の凹面(反射面)31aを軸外しの放物面で構成し、凸面鏡32の凸面(反射面)32aを、撮像用光学系2の入射瞳の光軸上の位置を第二の焦点、凹面鏡31の凹面(反射面)31aの焦点を第一の焦点とする略軸を中心とする回転双曲面で構成することが望ましい。尚、凸面鏡32は平面鏡または凹面鏡でもかまわず、各反射面が球面またはいかなる非球面で構成されても構わない。たとえば、凹面鏡31の凹面(反射面)31aを軸外しの焦点距離f2=36mmの放物面で構成し、凸面鏡32の凸面(反射面)の代わりに平面32aを後置光学系3Lに入射する光線の光軸と垂直に配置し、面31aの放物面の焦点を撮像用光学系2の入射瞳に一致させた例では、f1/f2=0.071である。以上の例では、補助光学系3を構成する後置光学系3Lの光軸が1平面上に含まれる様に構成したが、こうすることで光学系の配置がシンプルになり組み立て上好ましい。
【0032】
ところで、空間RI内に、上述のような凹面鏡31及び凸面鏡32のそれぞれを単体で精度良く配置するのは困難である。そのため、少なくとも所定の波長の光線、すなわち、上述の前置光学系3Fにより照射される照明光(例えば赤外光)を透過する光線透過部材に、凹面鏡31及び凸面鏡32の反射面31a,32aに相当する曲面を形成してその上に反射層を形成することにより、補助光学系3の反射系若しくは反射屈折系を一体に構成することが望ましい。これにより、この補助光学系3の配置が容易になり、また、複合光学系1全体の調整も容易に行うことができる。このとき、光線透過部材として、上述の照明光は透過するが、それ以外の波長の光線についてはその光量を制限するような光学材料を用いることにより、照明光以外の光(例えば、車内RI内から発せられた光や、外部空間ROからウィンドウシールドWを透過して補助光学系3に入射する自然光)を除去することができるので、観察面Wbの像を精度良く取得することができる。
【0033】
また、このような複合光学系1を自動車に設置する場合、ウィンドウシールドWに相当するフロントガラスの角度は車種により異なっている。上述のように、補助光学系3を構成する前置光学系3Lの後側焦点は、撮像用光学系2の入射瞳面と光軸とが交わる点の近傍、言い換えると、補助光学系3と撮像用光学系2の光軸が交わる点の近傍に位置するように配置されている。そのため、複合光学系1を構成する撮像用光学系2を、入射瞳の位置(入射瞳面と光軸とが交わる位置)若しくはその近傍を中心に回転可能に構成することにより、ウィンドウシールドWに対する補助光学系3の相対角を一定に保ったまま撮像用光学系2の外部空間ROを見る視線方向を任意に調整させることができる。図4は、撮像用光学系2を、図3に比較して35度、入射瞳の位置を中心に回転させた場合を示している。この場合、撮像用光学系2とウィンドウシールドWの相対角は10度である。本実施形態に用いた広角レンズでは、図3に比較して60度、入射瞳の位置を中心に回転させることも可能である。この場合は、補助光学系3でウィンドウシールドWの雨滴を観察し、撮像用光学系2で自空間RIすなわち車内を撮像できる場合を示している。回転範囲は、撮像用光学系2の全画角の1/2以下が望ましい。撮像用光学系2の全画角の1/2を越えた場合は、補助光学系3の撮像画面を撮像素子5のエリア内に留めることが困難になるからである。図3の場合、撮像用光学系2の全画角は180度であり、撮像用光学系2の回転範囲は、90度以下であることが望ましい。
【0034】
なお、図1に示す実施例では、自動車のように、ウィンドウシールドWが傾斜して配置されている場合について説明したが、この複合光学系1を屋内に設置し、略垂直に延びるように配置されたウィンドウシールド(窓)Wを通して屋外を撮影する防犯カメラ装置等にも適用可能である。各光学系の構成は上述の実施例と同様であり、説明は省略する。
【0035】
図5は、上述の複合光学系1を有し、例えば自動車に搭載されて、ウィンドウシールドWを通して車両前方(外部空間)の状況を撮影する車載用観察装置10の構成を示している。この車載用観察装置10は、上述のようにウィンドウシールドWで区切られた車内RIに配置される画像記録装置8と、画像記録装置8で生成された画像からウィンドウシールドWの観察面Wbの状態を検出する制御部9とから構成されている。ここで画像記録装置8は、上述の複合光学系1と、この複合光学系1を構成する撮像用光学系2の像面に配置された上述の撮像素子5と、撮像素子5より出力された電気信号(画像信号)から被写体の画像を生成する画像処理部6と、この画像処理部6で生成された画像を記憶する画像記憶部7とから構成され、画像処理部6で生成された画像は、制御部9にも出力されるように構成されている。なお、この図5において、前置光学系3Fは画像記録装置8の外部に配置した場合を示している。
【0036】
図6は、撮像用光学系2で結像されて撮像素子5で検出された信号を、画像処理部6で画像50として生成したものであり、この画像50の一部に補助光学系3で集光し、撮像用光学系2で結像した観察面(上述の観察面Wb)の像51が含まれる。この場合、観察面の像51は光源からの光線がウィンドウシールドW(観察面Wb)で全反射してほぼ均一な明るさを持つが、この観察面の像51の中に暗黒の像52が観察された場合、雨滴があることが観測されるのである。そのため、制御部9でこの観察面の像51を上述の方法で解析することにより、ウィンドウシールドWの観察面Wbの状態(外部空間との境界面の状態)を検出することができる。例えば、観察面Wbに雨滴が付着していると判断した場合は、制御部9により自動車の走行補助系統(ワイパー)を制御して雨滴を除去することができ、これにより、画像記録装置8で記録される画像の画質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る複合光学系の構成を説明するための説明図である。
【図2】補助光学系の前置光学系を示す説明図である。
【図3】上記複合光学系を屈折系で構成した場合を示す説明図である。
【図4】複合光学系を構成する撮像用光学系を回転させた場合を示す説明図である。
【図5】車載用観察装置の構成を示すブロック図である。
【図6】上記車載用観察装置で撮影された画像を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
2 撮像用光学系 3 補助光学系 3F 前置光学系 3L 後置光学系
5 撮像素子 10 車載用観察装置 31 凹面鏡 32 凸面鏡
331 光源 332 コンデンサレンズ(集光光学系)
50 画像 51 観察面の像 52 雨滴(暗黒)の像
W ウィンドウシールド Wa 外表面 Wb 観察面 RO 外部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウシールドを通して外部空間を結像すると共に、補助光学系と共同して前記ウィンドウシールドの外表面を結像する撮像用光学系と、
前記撮像用光学系により結像した像を画像信号に変換する撮像素子と、
を含み、
前記補助光学系を少なくとも、
光源、及び、前記光源を発した発散光をほぼ平行になす集光光学系を有し、前記平行光を前記ウィンドウシールドの外表面で全反射させる前置光学系と、
少なくとも1枚の正の屈折力を有し、前記ウィンドウシールドで反射した前記平行光を前記撮像用光学系に導くための後置光学系と、
で構成し、
前記後置光学系の後側焦点と前記撮像用光学系の入射瞳の位置とをほぼ一致させ、
前記後置光学系の前側焦点を前記ウィンドウシールドの外表面と接する面の近傍に位置するように配置させ、
前記撮像用光学系と前記後置光学系とは、前記撮像用光学系の焦点距離をf1とし、前記後置光学系の焦点距離をf2としたとき、次式
0.01 < f1/f2 < 0.50
の条件を満たすように配置したことを特徴とする車載用観察装置。
【請求項2】
前記補助光学系の後置光学系は、凹面の反射面を少なくとも1面有するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車載用観察装置。
【請求項3】
前記補助光学系は、複数の光学部品を有し、反射系または反射屈折系で構成され、前記補助光学系の後置光学系の光軸が1平面上に含まれるように構成された光学系であることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用観察装置。
【請求項4】
前記補助光学系の後置光学系は、凹面の反射面と平面の反射面との各々を少なくとも1面ずつ有するように構成されたことを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の車載用観察装置。
【請求項5】
前記補助光学系の後置光学系は、凹面の反射面と凸面の反射面との各々を少なくとも1面ずつ有するように構成されたことを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の車載用観察装置。
【請求項6】
前記補助光学系の後置光学系は、反射系を構成する反射部材若しくは反射屈折系を構成する反射屈折部材を、少なくとも所定の波長の光線を透過する光線透過部材と一体に構成したことを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の車載用観察装置。
【請求項7】
前記光線透過部材は、前記所定の波長以外の光線の光量を制限することを特徴とする請求項6に記載の車載用観察装置。
【請求項8】
前記補助光学系の後置光学系は、凹面の反射面と凸面の反射面とを少なくとも各1面有し、前記凹面の反射面は略軸外しの、軸中心の回転放物面で構成され、
前記凸面の反射面は、前記撮像用光学系の前記入射瞳の光軸上の位置を第二の焦点とし、前記凹面の焦点の位置を第一の焦点とする略軸を中心とする回転双曲面で構成されたことを特徴とする請求項5〜7いずれか一項に記載の車載用観察装置。
【請求項9】
前記撮像用光学系の光軸と前記補助光学系の光軸とが前記撮像用光学系の前記入射瞳の位置若しくは当該入射瞳の近傍で交差し、
前記撮像用光学系の光軸と前記補助光学系の光軸とのなす角度が、前記光軸が交差する点を略中心として変化可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜8いずれか一項に記載の車載用観察装置。
【請求項10】
前記撮像用光学系の光軸と前記補助光学系の光軸とのなす角度が、前記光軸が交差する点を略中心として前記撮像用光学系の全画角の1/2以下の範囲の角度で変化可能に構成されたことを特徴とする請求項9に記載の車載用観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−294159(P2009−294159A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150073(P2008−150073)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】