説明

車載用電力変換装置

【課題】この発明は、インバータの発熱部品の熱とDCDCコンバータの発熱部品の熱との干渉を抑制する車載用電力変換装置を得る。
【解決手段】この発明に係る車載用電力変換装置では、インバータ2は、インバータ用発熱部品と、このインバータ用発熱部品を載置しインバータ用発熱部品を冷却するインバータ用冷却器13とを有し、DCDCコンバータ1は、コンバータ用発熱部品と、このコンバータ用発熱部品を載置しコンバータ用発熱部品を冷却するDCDCコンバータ用冷却器4とを有し、前記インバータ用発熱部品と前記コンバータ用発熱部品とは、DCDCコンバータ用冷却器4を挟んで反対側にそれぞれ配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動用バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換し駆動用モータを駆動するインバータと、駆動バッテリの直流電力を異なる電圧の直流電力に変換するDCDCコンバータとが一体化された車載用電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車等に搭載され、リチウムイオンバッテリに代表される駆動バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換し、駆動モータを駆動するインバータと、駆動バッテリから供給される直流電力を異なる電圧の直流電力に変換するDCDCコンバータが一体化された車載用電力変換装置における、スイッチング素子、トランス等の実装構造や冷却方法等が数多く提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、インバータとDCDCコンバータが一体化された電力変換装置において、インバータ用冷却器とDCDCコンバータ用冷却器との間に、コンデンサや放電抵抗等、インバータの付属電子部品を配設し、これら付属電子部品を効率的に冷却する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-148027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電力変換装置には下記のような問題点があった。
(1)コンデンサや放電抵抗等、インバータの付属電子部品をDCDCコンバータ用冷却器に接触させることで、これら付属電子部品を効率的に冷却する構造としているが、これらの付属電子部品とDCDCコンバータの発熱部品が熱干渉し、DCDCコンバータの発熱部品、あるいはインバータの付属電子部品が想定以上に温度上昇することが懸念される。
(2)インバータ、DCDCコンバータ、及び各冷却器を格納するためのケースが、インバータ用冷却器とDCDCコンバータ用冷却器とは別に必要となるため、アルミダイキャスト等の部材が多く必要となる上、電力変換装置全体の容積が大きくなってしまう。
【0006】
この発明は、かかる問題点を解決することを課題とするものであって、インバータの発熱部品の熱とDCDCコンバータの発熱部品の熱との干渉を抑制する車載用電力変換装置を得ることを目的とする。
また、新たにコンバータ用発熱部品及びインバータ用発熱部品を覆うカバーを備える必要性がなく、部品点数及び材料費を削減することができるとともに、小型化を図ることができる車載用電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車載用電力変換装置では、車両に搭載され、直流電力を交流電力に変換するインバータと、直流電力を電圧の異なる直流電力に変換するDCDCコンバータとが一体化された車載用電力変換装置において、
前記インバータは、インバータ用発熱部品と、このインバータ用発熱部品を載置しインバータ用発熱部品を冷却するインバータ用冷却器とを有し、
前記DCDCコンバータは、コンバータ用発熱部品と、このコンバータ用発熱部品を載置しコンバータ用発熱部品を冷却するDCDCコンバータ用冷却器とを有し、
前記インバータ用発熱部品と前記コンバータ用発熱部品とは、前記DCDCコンバータ用冷却器を挟んで反対側にそれぞれ配設されている。
【0008】
また、この発明に係る車載用電力変換装置では、車両に搭載され、直流電力を交流電力に変換するインバータと、直流電力を電圧の異なる直流電力に変換するDCDCコンバータとが一体化された車載用電力変換装置において、
前記インバータは、インバータ用発熱部品と、このインバータ用発熱部品を載置しインバータ用発熱部品を冷却するインバータ用冷却器とを有し、
前記DCDCコンバータは、コンバータ用発熱部品と、このコンバータ用発熱部品を前記インバータ用発熱部品と対向して載置しコンバータ用発熱部品を冷却するDCDCコンバータ用冷却器とを有し、
前記DCDCコンバータ用冷却器または前記インバータ用冷却器は、周縁部に前記コンバータ用発熱部品または前記インバータ用発熱部品を囲って設けられた囲い部を有しており、
前記囲い部は、前記インバータ及び前記DCDCコンバータが一体化されたときに、前記コンバータ用発熱部品及び前記インバータ用発熱部品を囲っている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る車載用電力変換装置によれば、インバータ用発熱部品とコンバータ用発熱部品とは、DCDCコンバータ用冷却器を挟んで反対側にそれぞれ配設されているので、インバータの発熱部品とDCDCコンバータの発熱部品の熱の干渉を抑制することができ、DCDCコンバータ及びインバータの各発熱部品が想定以上に温度上昇するのを防止することができる。
【0010】
また、この発明に係る車載用電力変換装置によれば、DCDCコンバータ用冷却器またはインバータ用冷却器は、周縁部にコンバータ用発熱部品またはインバータ用発熱部品を囲って設けられた囲い部を有しており、囲い部は、インバータ及びDCDCコンバータが一体化されたときに、コンバータ用発熱部品及びインバータ用発熱部品を囲っているので、新たにコンバータ用発熱部品及びインバータ用発熱部品を覆うカバーを備える必要性がなく、部品点数及び材料費を削減することができるとともに、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1の車載用電力変換装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1のDCDCコンバータの主回路構成を示す電気回路図である。
【図3】図1のインバータの主回路構成を示す電気回路図である。
【図4】図1のDCDCコンバータの発熱部品の熱をカバーに伝播させる熱伝導部材を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2の車載用電力変換装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の各実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の車載用電力変換装置を示す分解斜視図、図2は図1のDCDCコンバータ1の主回路構成を示す電気回路図、図3は図1のインバータ2の主回路構成を示す電気回路図である。
なお、図2のDCDCコンバータ1の電気回路図において、入力側コンデンサ11及び出力側コンデンサ12が存在するが、図1では省略されている。
また、図3のインバータ2の電気回路図において、入力側に抵抗18が存在するが、これも図1では省略されている。
この車載用電力変換装置は、駆動バッテリ(図示せず)から供給される直流電力を異なる電圧の直流電力に変換し、14V系補機に供給するDCDCコンバータ1と、駆動バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換し、駆動モータを駆動するインバータ2と、DCDCコンバータ1の発熱部品を覆う有底四角柱形状のカバー3とを備えている。
【0013】
上記DCDCコンバータ1は、シャーシであって内部に冷却媒体が流れるコンバータ用冷却器4と、この冷却器4の上面にそれぞれ配置された、複数のスイッチング素子7、共振コイル8、トランス9及び平滑コイル10とを有している。冷却器4の一方の側面には、冷却媒体が流入する冷却水路である流入ニップル5が設けられており、他方の側面には、冷却媒体が流出する冷却水路である流出ニップル6が設けられている。流入ニップル5から流入した冷却媒体は、冷却器4の内部を蛇行して流出ニップル6から流出し、DCDCコンバータ1の発熱部品である、スイッチング素子7、共振コイル8、トランス9及び平滑コイル10を冷却する。
上記インバータ2は、シャーシであって内部に冷却媒体が流れるインバータ用冷却器13と、この冷却器13の上面にそれぞれ配置された、複数のスイッチング素子14及び入力コンデンサ15を有している。冷却器13の一方の側面には、冷却媒体が流入する冷却水路である流入ニップル16が設けられており、他方の側面には、冷却媒体が流出する冷却水路である流出ニップル17が設けられている。流入ニップル16から流入した冷却媒体は、冷却器13の内部を通って流出ニップル17から流出し、インバータ2の発熱部品である、スイッチング素子14及び入力コンデンサ15を冷却する。
また、コンバータ用冷却器4及びインバータ用冷却器13は、各冷却水路である流入ニップル5,16、流出ニップル6,17がともに概略直線状となっており、かつ概略平行になるように配置されている。
【0014】
また、この実施の形態では、DCDCコンバータ1の発熱部品である、共振コイル8、トランス9及び平滑コイル10の熱をカバー3に伝播させる構造をとっている。
図4は、DCDCコンバータ1の発熱部品の熱をカバー3に伝播させる熱伝導部材19を示している。
熱伝導部材19は、中間部が発熱部品側に湾曲状に突出した弾性部材で構成され、両端部がねじ20を用いてカバー3に固定されている。
【0015】
この車載用電力変換装置では、DCDCコンバータ1の上記発熱部品を冷却するコンバータ用冷却器4と、インバータ2の上記発熱部品を冷却するインバータ用冷却器13とは、それぞれ別体であり、インバータ2の発熱部品とDCDCコンバータ1の発熱部品とは、コンバータ用冷却器4を挟んでそれぞれ反対側に配設されている。
従って、コンバータ用冷却器4は、DCDCコンバータ1の発熱部品で発生する熱とインバータ2の発熱部品で発生する熱との干渉を抑制し、DCDCコンバータ1及びインバータ2の各発熱部品が想定以上に温度上昇するのを防止することができる。
また、DCDCコンバータ1、インバータ2を熱設計する際に、互いの熱干渉を殆ど考慮することなく、DCDCコンバータ1の各発熱部品間の距離の設計、インバータ2の各発熱部品間の距離の設計することが可能となり、DCDCコンバータ1、インバータ2それぞれの小型化、ひいては車載用電力変換装置の小型化が実現できる。
【0016】
また、DCDCコンバータ1の各発熱部品である、共振コイル8、トランス9及び平滑コイル10の熱は、コンバータ用冷却器4に伝播されるが、熱伝導部材19を介してカバー3にも伝播されるので、DCDCコンバータ1の共振コイル8、トランス9及び平滑コイル10は、効率良く冷却される。
なお、DCDCコンバータ1の共振コイル8、トランス9及び平滑コイル10の少なくとも何れか一つの発熱部品の熱について熱伝導部材19を介してカバー3に伝播させるようにしてもよい。
【0017】
また、コンバータ用冷却器4及びインバータ用冷却器13は、各冷却水路である流入ニップル5,16、流出ニップル6,17がともに概略直線状となっており、かつ概略平行になるように配置されているので、容易に接続することができる。
なお、コンバータ用冷却器4及びインバータ用冷却器13への冷却冷媒は、それぞれ個別に供給してもよいし、コンバータ用冷却器4に供給した後、引き続きインバータ用冷却器13に供給してもよい。また、インバータ用冷却器13に供給した後、引き続きコンバータ用冷却器4に供給してもよい。
また、コンバータ用冷却器4及びインバータ用冷却器13の内部の冷却水路については、必ずしも直線状である必要性はなく、例えば蛇行していてもよい。
【0018】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2の車載用電力変換装置を示す分解斜視図である。
この実施の形態では、コンバータ用冷却器4Aは、周縁部に発熱部品である、スイッチング素子7、共振コイル8、トランス9及び平滑コイル10を囲った囲い部21が設けられている。
また、実施の形態1では、DCDCコンバータ1の発熱部品と、インバータ2の発熱部品とは、コンバータ用冷却器4を挟んでそれぞれ反対側に配置されていたが、この実施の形態では、DCDCコンバータ1Aの発熱部品及びインバータ2の発熱部品は、コンバータ用冷却器4Aに対して共に同じ側に、互いに対向して配置されている。
この際、DCDCコンバータ1Aの発熱部品のうち、背が高いトランス9、あるいは平滑コイル10とインバータ2の背の高い入力コンデンサ15の位置が重ならないように配置されている。
囲い部21は、インバータ2及びDCDCコンバータ1Aとが一体化されたときに、コンバータ用発熱部品及びインバータ用発熱部品を囲っている。
他の構成は、実施の形態1の車載用電力変換装置と同じである。
【0019】
この実施の形態の車載用電力変換装置では、DCDCコンバータ用冷却器4Aは、周縁部に囲い部21を有しており、この囲い部21は、インバータ2及びDCDCコンバータ1Aが一体化されたときにコンバータ用発熱部品及びインバータ用発熱部品を囲っているので、新たにコンバータ用発熱部品及びインバータ用発熱部品を覆うカバーを備える必要性がなく、部品点数及び材料費を削減することができるとともに、実施の形態1の車載用電力変換装置と比較して全高を低くすることができる。
【0020】
また、DCDCコンバータ1Aの発熱部品と、インバータ2の発熱部品とは、互いに対向して配置されているが、DCDCコンバータ1Aの発熱部品のうち、背が高いトランス9、あるいは平滑コイル10とインバータ2の背の高い入力コンデンサ15とが互いに対向しないように配置されているので、実施の形態1の車載用電力変換装置と比較して電力変換装置全体の高さを低くすることができる。
【0021】
なお、上記の実施の形態では、DCDCコンバータ用冷却器4Aに囲い部21を有していたが、インバータ用冷却器において、周縁部にインバータ及びDCDCコンバータが一体化されたときにコンバータ用発熱部品及びインバータ用発熱部品を囲う囲い部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1,1A DCDCコンベア、2 インバータ、3 カバー、4,4A コンバータ用冷却器、5 流入ニップル(冷却水路)、6 流出ニップル(冷却水路)、7 スイッチング素子、8 共振コイル、9 トランス、10 平滑コイル、11 コンデンサ、12 コンデンサ、13 インバータ用冷却器、14 スイッチング素子、15 入力コンデンサ、16 流入ニップル(冷却水路)、17 流出ニップル(冷却水路)、18 抵抗、19 熱伝導部材、20 ねじ、21 囲い部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、直流電力を交流電力に変換するインバータと、
直流電力を電圧の異なる直流電力に変換するDCDCコンバータとが一体化された車載用電力変換装置において、
前記インバータは、インバータ用発熱部品と、このインバータ用発熱部品を載置しインバータ用発熱部品を冷却するインバータ用冷却器とを有し、
前記DCDCコンバータは、コンバータ用発熱部品と、このコンバータ用発熱部品を載置しコンバータ用発熱部品を冷却するDCDCコンバータ用冷却器とを有し、
前記インバータ用発熱部品と前記コンバータ用発熱部品とは、前記DCDCコンバータ用冷却器を挟んで反対側にそれぞれ配設されていることを特徴とする車載用電力変換装置。
【請求項2】
前記DCDCコンバータ用冷却器に設けられ、前記コンバータ用発熱部品を覆ったカバーと、
このカバーと前記コンバータ用発熱部品との間に設けられ弾性変形可能であってカバー及びコンバータ用発熱部品に面接触した熱伝導部材と
を備えてことを特徴とする請求項1に記載の車載用電力変換装置。
【請求項3】
前記熱伝導部材と面接触する前記コンバータ用発熱部品は、トランス及びコイルの少なくとも一方であることを特徴とする請求項2に記載の車載用電力変換装置。
【請求項4】
車両に搭載され、直流電力を交流電力に変換するインバータと、
直流電力を電圧の異なる直流電力に変換するDCDCコンバータとが一体化された車載用電力変換装置において、
前記インバータは、インバータ用発熱部品と、このインバータ用発熱部品を載置しインバータ用発熱部品を冷却するインバータ用冷却器とを有し、
前記DCDCコンバータは、コンバータ用発熱部品と、このコンバータ用発熱部品を前記インバータ用発熱部品と対向して載置しコンバータ用発熱部品を冷却するDCDCコンバータ用冷却器とを有し、
前記DCDCコンバータ用冷却器または前記インバータ用冷却器は、周縁部に前記コンバータ用発熱部品または前記インバータ用発熱部品を囲って設けられた囲い部を有しており、
前記囲い部は、前記インバータ及び前記DCDCコンバータが一体化されたときに、前記コンバータ用発熱部品及び前記インバータ用発熱部品を囲っていることを特徴とする車載用電力変換装置。
【請求項5】
前記囲い部内の各前記インバータ用発熱部品及び各前記コンバータ用発熱部品のうち、最大の全高のインバータ用発熱部品と最大の全高のコンバータ用発熱部品とは対向しないように配設されていることを特徴とする請求項4に記載の車載用電力変換装置。
【請求項6】
前記インバータ用冷却器の内部に冷媒を入出流する冷却水路と、前記DCDCコンバータ用冷却器の内部に冷媒を入出流する冷却水路とは、ともに直線状で、かつ平行であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車載用電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62940(P2013−62940A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199547(P2011−199547)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】