説明

車載用電子機器

【課題】車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生した場合でも、運転操作の妨げにならずに車載用電子機器に対して操作指示ができる車載用電子機器を提供する。
【解決手段】車両に搭載されてユーザに対して各種情報を提供する車載用電子機器(ナビゲーション装置10)において、車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生したことを検知する検知手段(制御部11)と、前記事象に関する報知情報を出力する出力手段(表示部21や音声出力部22)と、前記報知情報に対する前記ユーザからの応答を音声にて入力する入力手段(マイク18)と、前記入力手段から入力されたユーザからの応答に基づいて、前記事象に関連する処理を実行するように前記車載用電子機器を制御する制御手段(制御部11)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて経路案内等を行う車載用電子機器に関するものであり、特に、車両の走行中であっても運転手に対し問いかけを行い、これに対して運転手が音声入力にて応答することで運転操作の妨げにならずに装置に対して経路変更等の操作指示が行える車載用電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、地図データベースに記憶された地図情報に基づき、現在位置または出発地から目的地までの経路を探索してディスプレイに表示させ、利用者を目的地まで案内するナビゲーション装置が知られている。このナビゲーション装置は、通常、GPS(Global Positioning System)を利用して車両の現在位置を検出する現在位置検出手段を備えており、検出した現在位置を探索した経路とともにディスプレイに表示された地図に重ねて表示させることもできる。
【0003】
また、近年では、音楽プレーヤー、DVDプレーヤー、デジタル放送に対応したテレビジョン受信機など各種AVシステムを複合して備えたAV一体型のナビゲーション装置が幅広く利用されている。
【0004】
このようなナビゲーション装置は、ユーザに対して経路探索条件の設定等の操作入力を必要に応じて要求する場合があるが、走行中に車両の運転手に対してナビゲーション装置の操作を行わせることは交通安全上好ましくないため、交通事故を未然に防ぐために運転中は操作ができないように規制をかける機能が種々提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1(特開2007?55356号公報)に開示された車載用電子機器では、車両の走行状態に応じて車載用機器への操作を禁止または無効化する操作制御手段を備えるように構成している。また、この車載用電子機器では、不正な操作制限の解除を予防する機能も備えるように構成している。
【0006】
また、下記特許文献2(特開2007?22520号公報)に開示された車載装置では、操作入力が運転席側と助手席側のいずれから行われたかを識別し、自車両が走行中である場合には運転席側からの操作入力の受付を禁止するように構成している。これにより、運転者と非運転者に対してそれぞれ適切な操作入力制御・表示制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007?55356号公報
【特許文献2】特開2007?22520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された車載用電子機器あるいは上記特許文献2に開示された車載装置は、車両の走行中に経路変更を行う必要がある場合には、車両を一時停止させて運転手が操作するか、あるいは助手席側の同乗者が操作する必要があり、運転中のユーザにとっては操作性が必ずしもよくないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解消することを課題とするものであり、車両の走行中であっても運転手に対し問いかけを行い、これに対して運転手が音声入力にて応答することで運転操作の妨げにならずに装置に対して経路変更等の操作指示が行える車載用電子機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
車両に搭載されてユーザに対して各種情報を提供する車載用電子機器において、
前記車載用電子機器は、
前記車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生したことを検知する検知手段と、
前記事象に関する報知情報を出力する出力手段と、
前記報知情報に対する前記ユーザからの応答を音声にて入力する入力手段と、
前記入力手段から入力されたユーザからの応答に基づいて、前記事象に関連する処理を実行するように前記車載用電子機器を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記出力手段は、前記事象に関する報知情報の中に、当該報知情報に対する応答として、前記ユーザが肯定または否定の二者択一で回答可能な疑問文形式の質問を含めて出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明においては、
車両に搭載されてユーザに対して各種情報を提供する車載用電子機器において、
前記車載用電子機器は、
前記車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生したことを検知する検知手段と、
前記事象に関する報知情報を出力する出力手段と、
前記報知情報に対する前記ユーザからの応答を音声にて入力する入力手段と、
前記入力手段から入力されたユーザからの応答に基づいて、前記事象に関連する処理を実行するように前記車載用電子機器を制御する制御手段と、
を備える。
【0013】
このような構成によれば、車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生した場合でも、車両の走行中の運転手であるユーザに対し問いかけを行い、これに対してユーザが音声入力にて応答することで運転操作の妨げにならずに車載用電子機器に対して経路変更等の操作指示ができるようになる。
【0014】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、前記出力手段は、前記事象に関する報知情報の中に、当該報知情報に対する応答として、前記ユーザが肯定または否定の二者択一で回答可能な疑問文形式の質問を含めて出力する。これにより、車両の走行中の運転手であるユーザに対し、例えば、「はい」あるいは「いいえ」で回答できる問いかけを行い、これに対してユーザが音声入力にて応答することで運転操作の妨げにならずに車載用電子機器に対する操作指示が簡単にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーション装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例にかかるナビゲーション装置の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するためのナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の車載用電子機器にも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例にかかるナビゲーション装置10の要部構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、車両に搭載され、車両の現在位置を地図画像とともにディスプレイに表示するとともに、現在位置または所望の出発地から目的地までの経路を探索してディスプレイに表示することにより、ユーザが目的地まで走行するための支援を行うものである。
【0018】
ナビゲーション装置10は、制御部11、現在位置検出部15、経路探索部16、地図記憶部17、マイク18、通信部19、操作部20、表示部21および音声出力部22を備えて構成される。
【0019】
制御部11は、CPU12、ROM13およびRAM14を備えて構成されており、ROM13および/またはRAM14に記憶された制御プログラムをCPU12が実行することにより、下記に説明する各部の動作を制御・統括する。なお、制御部11は、車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生したことを検知する検知手段として機能する。
【0020】
ここで、車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象とは、例えば、(1)渋滞等により案内経路の変更が必要なとき、(2)長時間運転中であり休憩地点の設定が必要なとき、(3)音量が大きいときに緊急車両が接近してきたとき、(4)音量が大きいときに踏切に接近したとき、などである。
【0021】
上記(1)の場合には、制御部11は、後で説明する通信部19を介して情報サーバ30から道路交通情報を受信すると、この道路交通情報に基づいて渋滞情報を取得し、取得した渋滞情報に基づいて最適経路の再探索が必要か否か判断する。そして、再探索が必要と判断した場合には、ユーザに再探索を行うか否かを選択させるユーザ操作が必要な事象が発生したと判断する。
【0022】
また、上記(2)の場合には、制御部11は、タイマ機能を有しており、タイマの計測に基づき、イグニッションスイッチがONとなり車両の走行が開始されてから所定時間以上経過したことを検出する。そして、休憩地点の設定を行うか否かを選択させるユーザ操作が必要な事象が発生したと判断する。
【0023】
また、上記(3)の場合には、制御部11は、車両後方より接近する救急車や消防車等の緊急車両から発信される信号を受信する受信機(図示せず)をナビゲーション装置10に設け、受信する信号の中に含まれる緊急車両の位置情報に基づいて緊急車両の接近を検出する。そして、後で説明する音量出力部22から出力される情報の音量を下げるか否かを選択させるユーザ操作が必要な事象が発生したと判断する。
【0024】
また、上記(4)の場合には、制御部11は、後で説明する現在位置検出部15により検出した車両の現在位置と、後で説明する地図記憶部17に記憶された道路リンクデータとに基づいて、踏切への接近を検出する。そして、後で説明する音量出力部22から出力される情報の音量を下げるか否かを選択させるユーザ操作が必要な事象が発生したと判断する。
【0025】
現在位置検出部15は、地球上空を周回している複数のGPS衛星からの信号を所定の時間間隔で受信し、この信号に含まれている時刻情報および衛星位置情報に基づいて車両の現在位置を検出する。なお、現在位置検出部15は、車両に搭載されているジャイロスコープ、加速度センサ等の自律航法手段を用いて車両の現在位置を検出するものであってもよい。
【0026】
経路探索部16は、ユーザが設定した出発地、目的地、経由地等の経路探索条件に従い、地図情報を参照して最適な経路を探索するものである。経路探索部16は、出発地または現在位置に対応する道路のノードから、所望の経由地を経由して、目的地に対応するノードに至る間のリンクをダイクストラ法等の手法によって探索し、リンク長(リンクコスト)や所要時間を累積し、総リンク長(走行距離)または総所要時間が最短となる経路を探索する。
【0027】
地図記憶部17は、道路の分岐地点等の結節点をノードとする道路ノードデータと、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路リンクデータと、地形図データとを含む地図情報を記憶する地図データベースである。
【0028】
道路ノードデータには、道路ノード番号、位置座標、接続リンク本数、分岐地点名称等が含まれる他、分岐地点から所定距離だけ離れた案内地点において、右左折、直進等の経路案内を行う経路案内データおよび案内地点の位置座標が記憶されている。
【0029】
道路リンクデータには、始点および終点となる道路ノード番号、道路種別、ノード間の距離情報であるリンク長(リンクコスト)、所要時間、車線数、車道幅などが含まれる。道路リンクデータには、さらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切、料金所、制限速度等のデータが付与される。道路種別とは、高速道路や有料道路の別、国道や都道府県道等の別を含む情報である。
【0030】
地形図データには、海岸線、湖沼、河川形状などの水系データ、行政境界データ、ガソリンスタンド、駐車場、ショッピングセンタ、美術館、その他のランドマークを含む施設名称、施設位置、施設形状、施設種別を含む情報が含まれる。
【0031】
マイク18は、ユーザから必要な情報を音声入力するものである。マイク18から入力されたユーザの音声は、制御部11にて音声認識され、所定の音声が認識された場合に、制御部11は、予めその音声に関連付けられている処理を実行するように経路探索部16などを制御する。
【0032】
通信部19は、例えば、地図記憶部17に記憶されている各種データを最新のデータに更新するため、外部の情報サーバ30と無線通信を行い、必要な情報を取得するものである。
【0033】
操作部20は、経路探索を行うため、ユーザが出発地、目的地、経由地等の経路探索条件を入力するものである。また、操作部20を用いて、車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象に関する報知情報を選択するようにしてもよい。
【0034】
表示部21は、現在位置検出部15により検出した車両の現在位置、地図記憶部17に記憶された地図情報に基づく地図画像、経路探索部16により探索された案内経路等を表示する液晶表示パネルから構成される。
【0035】
音声出力部22は、ユーザに対して音声で必要な情報を提供するスピーカから構成される。
【0036】
ナビゲーション装置10は、車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生した場合に、運転手に対し当該事象に関する報知情報を出力し、これに対して運転手が音声入力にて応答することで運転操作の妨げにならずに装置に対して所望の操作指示を行う。
【0037】
このため、制御部11は、例えば、経路案内中に渋滞が発生したため、次のインターチェンジで高速道路を下りて一般道を走行する経路の方がいい場合に、運転手に対し、「経路を変更しますか?」といった「はい」か「いいえ」で回答できる二者択一で回答可能な疑問文形式の質問を表示または音声報知にて行うように表示部21あるいは音声出力部22を制御し、これに対して運転手がマイク18から「はい」または「YES」といった音声入力を行うと、制御部11は、経路探索を再び行うように経路探索部16を制御する。なお、制御部11は、二者択一で回答可能な疑問文形式の質問を、例えば、RAM14に記憶している。
【0038】
ナビゲーション装置10は、このような構成であるので、車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生した場合でも、車両の走行中の運転手であるユーザに対し問いかけを行い、これに対してユーザが音声入力にて応答することで運転操作の妨げにならずにナビゲーション装置10に対して経路変更等の操作指示ができる。
【0039】
次に、以上のように構成されるナビゲーション装置10の動作内容について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
まず、制御部11は、イグニッションスイッチがONとなり車両の走行が開始されたか否かを判定する(ステップS101)。走行中でないと判定された場合(ステップS101、NO)、処理を終了する。
【0041】
走行中であると判定された場合(ステップS101、YES)、制御部11は、特別な事象が発生したか否か判定する(ステップS102)。特別な事象とは、例えば、渋滞等により案内経路の変更が必要な場合などである。特別な事象が発生しないと判定された場合(ステップS102、NO)、元に戻ってステップS101処理を繰り返す。
【0042】
特別な事象が発生したと判定された場合(ステップS102、YES)、制御部11は、表示部21あるいは音声出力部22を制御し、ユーザに対して、ここでは「経路を変更しますか?」といった経路探索処理実行の要否を促す表示あるいは音声報知を行い、処理実行の要否を確認する(ステップS103)。
【0043】
そして、制御部11は、マイク18から「はい」あるいは「いいえ」といった音声入力によるユーザの回答があるか判定する(ステップS104)。ユーザより回答がないと判定された場合(ステップS104、NO)、ステップS104処理を繰り返す。
【0044】
なお、ステップS104、NOの処理において、所定時間以上においてユーザより回答がないような場合は、ユーザが処理の実行を要求していないものと判定する。
【0045】
ユーザより回答があると判定された場合(ステップS104、YES)、制御部11は、マイク18から入力されたユーザの音声を音声認識し、ユーザの回答が経路探索の実行処理といった所定の処理の実行要求(ここでは、「はい」あるいは「YES」)であるか否かを判定する(ステップS105)。ユーザの回答が経路探索の実行を要求しない「いいえ」あるいは「NO」と判定された場合(ステップS105、NO)、処理を終了する。
【0046】
一方、ユーザの回答が経路探索の実行を要求する「はい」あるいは「YES」と判定された場合(ステップS105、YES)、制御部11は、経路探索部16を制御し、経路探索の処理を実行し(ステップS106)、一連の処理を終了する。
【0047】
なお、本実施例では、本発明を適用する例として、ナビゲーション装置について説明したが、AV機器、AV一体型のナビゲーション装置においても同様に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10・・・ナビゲーション装置
11・・・制御部
15・・・現在位置検出部
16・・・経路探索部
17・・・地図記憶部
18・・・マイク
19・・・通信部
20・・・操作部
21・・・表示部
22・・・音声出力部
30・・・情報サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されてユーザに対して各種情報を提供する車載用電子機器において、
前記車載用電子機器は、
前記車両の走行中にユーザによる操作が必要な事象が発生したことを検知する検知手段と、
前記事象に関する報知情報を出力する出力手段と、
前記報知情報に対する前記ユーザからの応答を音声にて入力する入力手段と、
前記入力手段から入力されたユーザからの応答に基づいて、前記事象に関連する処理を実行するように前記車載用電子機器を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車載用電子機器。
【請求項2】
前記出力手段は、前記事象に関する報知情報の中に、当該報知情報に対する応答として、前記ユーザが肯定または否定の二者択一で回答可能な疑問文形式の質問を含めて出力することを特徴とする請求項1記載の車載用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−73076(P2012−73076A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217222(P2010−217222)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】