説明

車載用電子機器

【課題】車両窓部のガラス面に装着された状態で回路基板の取り外し作業に支障をきたす虞がない車載用電子機器を提供する。
【解決手段】車載用電子機器10は、前置増幅回路等が設けられた回路基板1と、回路基板1を収納する保持ケース4とを備えている。保持ケース4は、アンテナ放射導体が配設されたガラス面20に固着される下ケース6と、下ケース6を覆うように着脱可能に取り付けられる上ケース7とを組み合わせて構成され、下ケース6に保持された接続端子5を上ケース7に保持された回路基板1の電極9に圧接させる。上ケース7を下ケース6から取り外す際には、せり出し部7bの先端を基端側へ押し込んで弾性片7aを撓めることにより、あるいは、ドライバー等の治具を舌片6bと弾性片7aとの間に差し込むことにより、スナップ爪7cを舌片6bの係止穴6cから離脱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ放射導体が配設された車両窓部のガラス面に装着して使用される車載用電子機器に係り、特に、アンテナ放射導体と接続される前置増幅回路等が設けられた回路基板を保持ケース内に収納している車載用電子機器のケース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両窓部(例えばリアウィンドウ)のガラス面をアンテナ放射導体の配置スペースとして利用するという手法が広く知られており、こうした手法は、テレビ放送の地上デジタル放送への切り替わりに伴って一般化しつつある。
【0003】
ところで、地上デジタル放送等の信号波はアンテナ放射導体が受信した信号を速やかに増幅する必要があり、こうすることで受信信号の減衰を極力抑制して良好な受信感度が得られるようになる。そのため、車両窓部のガラス面にアンテナ放射導体が配設されているアンテナ装置においては、通常、前置増幅回路が設けられた回路基板を内蔵してなる電子機器を、アンテナ放射導体に近接させて同じガラス面に装着し、前置増幅回路を経由して外来信号が受信回路等へ送られるようになっている。
【0004】
すなわち、この種の電子機器には、前置増幅回路を含む電子回路が設けられてコネクタを搭載した回路基板や、車両窓部のガラス面に固着されて回路基板が載置固定される取付ベースや、電子回路の給電電極および接地電極をアンテナ放射導体の一対の給電部と電気的に接続するための接続端子等が具備されている。そして、この種の電子機器で増幅処理された外来信号を、コネクタに繋いだ信号ケーブルを介して車両の別の場所に設置されている受信回路等へ送ることによって、車内の表示装置でテレビ放送等の視聴が行えるようになっている。
【0005】
このように車両窓部のガラス面に装着して使用される電子機器においては、その回路基板がガラス面から取り外せるようになっていると、電子回路の調整や部品交換等を効率良く行うことができるため、ガラス面に装着した後にも修理やメンテナンスが行いやすくなって便利である。そこで従来、インサートナットを付設した取付ベースを車両窓部のガラス面に接着固定し、回路基板に貫通せしめた取付ねじを該インサートナットに螺着させることによって、取付ベース上に回路基板を締結固定して両者間に一対の接続端子を挟持できるようにした車載用電子機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来の車載用電子機器では、取付ねじの締結を解除することによって、ガラス面に固着されている取付ベースから回路基板を取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−132216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来例のように、回路基板が取付ねじによって取付ベースに締結固定されている車載用電子機器においては、車両窓部のガラス面に対する電子機器の装着位置が取付ねじの締結解除作業に不向きな場合、回路基板の取り外し作業を円滑に行えなくなるという問題があった。すなわち、この種の電子機器の取付ベースは、一般的に車両窓部のガラス面の縁部に固着されるようになっているが、取付ねじの頭部近傍の車内レイアウトに制約されて、スクリュードライバ等の治具を用いた取付ねじの締結解除に必要な作業空間を確保できないことがあった。また、こうした事態を回避するために車両窓部のガラス面に対する電子機器の装着位置に一定の制限を課すと、その影響でアンテナ放射導体の配設位置が制約されてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、車両窓部のガラス面に装着された状態で回路基板の取り外し作業に支障をきたす虞がない車載用電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、回路基板を収納する略直方体形状の保持ケースが、車両窓部のガラス面に固着される下ケースと、この下ケースを覆うように着脱可能に取り付けられる上ケースとを組み合わせて構成されており、前記回路基板に設けられた電子回路が前記ガラス面に配設されたアンテナ放射導体と電気的に接続されるようになっている車載用電子機器において、前記上ケースの長手方向の一端部に、長手方向の他端側へ押し撓めることが可能な弾性片と、この弾性片の一部を長手方向の一端側へ突出させてなるスナップ爪と、前記弾性片の先端から長手方向の一端側へ延出するせり出し部と、このせり出し部の基端付近を切り欠いてなる切欠き部とを設けると共に、前記下ケースの長手方向の一端部に係止穴を有する舌片を設け、この舌片と前記弾性片とが対向する箇所が前記切欠き部に臨出するようになし、前記スナップ爪を前記係止穴に係脱させることによって前記上ケースが前記下ケースに着脱されるようにした。
【0010】
このように構成された車載用電子機器では、上ケースのせり出し部の先端を手指等で基端側へ押し込むことで弾性片が撓むため、弾性片に突設されたスナップ爪を下ケースの舌片の係止穴から離脱させることができ、これにより上ケースを下ケースから取り外すことが可能となる。また、せり出し部の基端付近の切欠き部に挿入したドライバー等の治具を車両窓部のガラス面へ向けて押し込んだ場合にも、この治具を舌片と弾性片との間に差し込んで両者を互いに離反する向きに押し撓めることができるため、やはりスナップ爪を係止穴から離脱させて上ケースを下ケースから取り外すことが可能となる。すなわち、車両窓部のガラス面に固着されている下ケースから上ケースを取り外す作業が、保持ケースの横方向からも上方向からも容易に行えるため、この車載用電子機器はガラス面のどこに装着されていても回路基板の取り外し作業に支障をきたす虞がない。
【0011】
上記の構成において、回路基板が上ケースに保持されていると共に、下ケースにばね性を有する接続端子が保持されており、この接続端子の一端部を回路基板の底面に設けられた第1の電極に圧接させると共に、接続端子の他端部をガラス面に設けられた第2の電極に圧接させることにより、接続端子が上ケースをガラス面から離隔する向きに弾性付勢するようにしてあると、上ケースのスナップ爪を下ケースの係止穴から離脱させたときに、接続端子からの弾発力で回路基板と上ケースを若干押し上げる(浮かす)ことができる。その結果、回路基板と上ケースを下ケースから取り外す作業が非常に行いやすくなる。
【0012】
また、上記の構成において、下ケースの長手方向の一端部に存する側板の一部を前記舌片となし、この舌片の幅方向両側縁に沿って切れ込みが形成されていると、下ケースの高さ寸法を抑えつつ舌片に所要の可撓性を付与することができて好ましい。
【0013】
また、上記の構成において、上ケースの長手方向の他端部で幅方向に相対向する位置に一対の係合突起が設けられていると共に、下ケースの長手方向の他端部で幅方向に相対向する位置に、それぞれの先端付近にテーパ状の肉厚部を有する一対の柱状部が立設されており、一対の係合突起で一対の柱状部を外側へ押し撓めることによって、各係合突起が対応する肉厚部に係止可能であると、上ケースを下ケースに取り付ける際に、長手方向の一端部でスナップ爪を係止穴にスナップ止めできるだけでなく、長手方向の他端部で一対の係合突起を対応する肉厚部にスナップ止めできるようになる。そのため、下ケースの真上から上ケースを押し込むだけで、この上ケースを容易かつ確実に下ケースに取り付けることが可能となり、取り付け時の作業効率が大幅に向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車載用電子機器は、弾性片に突設されたスナップ爪を舌片の係止穴から離脱させて上ケースを下ケースから取り外す際に、上ケースのせり出し部の先端を手指等で基端側へ押し込んで弾性片を押し撓めても良いし、あるいは、上ケースの切欠き部に挿入したドライバー等の治具を舌片と弾性片との間に差し込んで両片を互いに離反する向きに押し撓めても良い。すなわち、車両窓部のガラス面に固着されている下ケースから上ケースを取り外す作業が横方向からも上方向からも容易に行えるため、車載用電子機器がガラス面のどこに装着されていても回路基板の取り外し作業に支障をきたす虞がない。それゆえ、この車載用電子機器は、回路基板に設けられている電子回路の調整や部品交換等が行いやすくて修理やメンテナンスに好適であり、しかも、アンテナ放射導体の配設位置を制約する虞がないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態例に係る車載用電子機器を車両窓部のガラス面に装着した状態を示す斜視図である。
【図2】該車載用電子機器の分解斜視図である。
【図3】該車載用電子機器の平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】該車載用電子機器のコネクタ近傍を示す断面図である。
【図7】該車載用電子機器の上ケースを下ケースから取り外す直前の状態を示す斜視図である。
【図8】該車載用電子機器の上ケースを下ケースに取り付ける直前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の実施形態例に係る車載用電子機器10は、車両窓部(例えばリアウィンドウ)のガラス面20に装着して使用される。図2に示すように、このガラス面20にはアンテナ放射導体30が配設されており、アンテナ放射導体30で受信された外来信号が車載用電子機器10で増幅されてから図示せぬ受信回路へ送られるようになっている。
【0017】
車載用電子機器10は、アンテナ放射導体30と電気的に接続される図示せぬ電子回路が設けられた回路基板1と、この回路基板1に搭載された外部接続用のコネクタ2と、回路基板1に一体化されて前記電子回路を電磁的にシールドするシールドケース3と、これら回路基板1およびシールドケース3を収納する略直方体形状の保持ケース4と、前記電子回路の一対の電極9(図4参照)をアンテナ放射導体30の一対の給電部31に接続するための一対の接続端子5とによって主に構成されており、保持ケース4は下ケース6と上ケース7とを組み合わせて構成されている。下ケース6は両面接着テープ8によってガラス面20に固着されており、一対の接続端子5は下ケース6に保持されている。一方、上ケース7は下ケース6を覆うように着脱可能に取り付けられており、図7や図8に示すように、回路基板1およびシールドケース3は上ケース7に組み付けられている。
【0018】
次に、保持ケース4の構造について詳しく説明する。上ケース7の長手方向の一端部(図3や図4の右端部)には、側面視略U字状の弾性片7aと、この弾性片7aの上部先端から長手方向の一端側へ延出するせり出し部7bとが設けられおり、弾性片7aの先端寄りの一部は一端側へ突出するスナップ爪7cとして形成されている。せり出し部7bには弾性片7aと連続する基端付近に切欠き部7dが穿設されており、この切欠き部7dは平面視矩形状に形成されている。また、上ケース7の天板は長手方向の他端部が大きく切り欠かれており、この切り欠かれた部分を介して相対向する一対の側板にそれぞれ係合突起7eが突設されている(図2参照)。この上ケース7は、スナップ爪7cを後述する係止穴6cに係脱させることによって、下ケース6に着脱できるようになっている。
【0019】
下ケース6は、その長手方向の一端部(図3や図4の右端部)に存する側板6aの一部を舌片6bとなしており、この舌片6bに上ケース7のスナップ爪7cを係止可能な係止穴6cが穿設されている(図2参照)。舌片6bは上ケース7の弾性片7aと対向するように配置され、舌片6bと弾性片7aとが対向する箇所が上ケース7の切欠き部7dに臨出している(図5参照)。側板6aには舌片6bの幅方向両側縁に沿って切れ込み6dが形成されており、これら切れ込み6dの存在によってこの舌片6bの可撓性が高められている。また、下ケース6の長手方向の他端部において、幅方向で相対向する一対の側板にはそれぞれ柱状部6fが立設されており、これら柱状部6fの先端付近にはテーパ状の肉厚部6eが形成されている。そして、下ケース6に上ケース7を取り付ける際に、一対の係合突起7eで一対の柱状部6fを幅方向外側へ押し撓めると、各係合突起7eが対応する肉厚部6eに係止(スナップ止め)できるようになっている。
【0020】
なお、下ケース6は、切れ込み6dを省略して舌片6bを側板6a上に突出させる構成であっても良いが、舌片6bの幅方向両側縁に沿って切れ込み6dが設けてあると、下ケース6の高さ寸法を抑えつつ舌片6bに所要の可撓性を付与することができて好ましい。
【0021】
回路基板1に設けられている前記電子回路には前置増幅回路が含まれており、アンテナ放射導体30が受信した外来信号を、この前置増幅回路で増幅してからコネクタ2経由で前記受信回路へ送ることによって、良好な受信感度が得られるようになっている。回路基板1には、シールドケース3の取付脚3aを嵌入させるための嵌合凹部1aや、シールドケース3の切れ込み部3bを外嵌させるための嵌合凸部1bや、コネクタ2を取り付けるための取付孔1c等が設けられている。また、この回路基板1の底面には、前述した一対の電極9(給電電極および接地電極)が設けられている(図4参照)。
【0022】
接続端子5はリン青銅等のばね性に富んだ金属板からなり、第1接触片5aと第2接触片5bを有している。これら第1接触片5aと第2接触片5bは斜め上方と斜め下方へそれぞれ突出するようにフォーミングされており、両接触片5a,5bの基端どうしを繋いでいる中間支持部5cが下ケース6に保持されている(図4参照)。そして、下ケース6をガラス面20に固着すると、一対の接続端子5の第2接触片5bがアンテナ放射導体30の一対の給電部31に圧接されるようになっている。また、下ケース6に上ケース7を取り付けると、回路基板1の底面に設けられている一対の電極9(給電電極および接地電極)に、一対の接続端子5の第1接触片5aが圧接されるようになっている。これにより、給電部31と電極9とが接続端子5を介して電気的に接続された状態となる。また、下ケース6に取り付けられた上ケース7には、接続端子5からの弾発力が回路基板1を介して作用するため、この上ケース7はガラス面20から離隔する向きに常時付勢されている。なお、接続端子5の第2接触片5bを給電部31に半田付けして接続強度を高めるようにしても良い。
【0023】
このように構成された車載用電子機器10は、ガラス面20に固着した下ケース6に対して上ケース7が着脱可能なため、ガラス面20に装着した後にも、上ケース7に組み付けられた回路基板1をガラス面20から取り外して前記電子回路の修理やメンテナンス等を効率良く行うことができる。
【0024】
上ケース7を下ケース6から取り外す際には、図5の矢印Fで示すように、上ケース7のせり出し部7bの先端を作業者の手指等で基端側へ押し込んで弾性片7aを撓めることによって、スナップ爪7cを舌片6bの係止穴6cから離脱させることができる。こうしてスナップ爪7cが係止穴6cから外れると、接続端子5の弾発力によって回路基板1が押し上げられるため、回路基板1を保持している上ケース7は長手方向の一端部が若干浮いた状態になる。したがって、図7に示すように、斜めに傾いた上ケース7の長手方向の一端部を持ち上げて、この上ケース7をそのまま斜め上方へスライド移動することにより、一対の係合突起7eを対応する肉厚部6eの下側から抜き取って、上ケース7を下ケース6から簡単に取り外すことができる。
【0025】
このほか、図5の2点鎖線で示すように、マイナスドライバー等の治具25を上ケース7の切欠き部7dに挿入してガラス面20へ向けて押し込むという取り外し方法も可能である。すなわち、治具25を弾性片7aと舌片6bとの間に差し込むと、両者7a,6bを互いに離反する向きに押し撓めることができるため、スナップ爪7cを係止穴6cから離脱させることができる。この場合も、スナップ爪7cが係止穴6cから外れると、接続端子5の弾発力によって回路基板1が押し上げられるため、上ケース7は長手方向の一端部が若干浮いた状態になって下ケース6から簡単に取り外すことができる。
【0026】
なお、上ケース7を下ケース6に取り付ける際には、図8に示すように、上ケース7を下ケース6に対して真上から押し込めば良い。こうすると、一対の係合突起7eが対応する肉厚部6eのテーパ面6e1(図6参照)と係合して一対の柱状部6fを押し開くように撓めるため、各係合突起7eを対応する肉厚部6eにスナップ止めすることができる。また、弾性片7aを舌片6bの内側に挿入することによって、両者7a,6bを押し撓めながらスナップ爪7cを係止穴6cにスナップ止めすることができる。このように下ケース6の真上に配置させた上ケース7を押し込むだけで長手方向の両端部がスナップ止めできるため、上ケース7を簡単かつ確実に下ケース6に取り付けることができる。ただし、図7に示すように、上ケース7を斜めに傾けて各係合突起7eを対応する肉厚部6eの下側に挿入してから、弾性片7aを舌片6bの内側に挿入してスナップ爪7cを係止穴6cにスナップ止めするようにしても、上ケース7を下ケース6に簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態例に係る車載用電子機器10は、車両窓部のガラス面20に装着したままの状態で、上ケース7のせり出し部7bの先端を作業者の手指等で基端側へ押し込んで弾性片7aを撓めることによって、弾性片7aに突設されたスナップ爪7cを舌片6bの係止穴6cから離脱させることができるため、保持ケース4を構成する上ケース7を下ケース6から簡単に取り外すことができる。また、せり出し部7bの基端付近の切欠き部7dに挿入したマイナスドライバー等の治具25を車両窓部のガラス面20へ向けて押し込んだ場合にも、この治具25を舌片6bと弾性片7aとの間に差し込んで両者6b,7aを互いに離反する向きに押し撓めることができるため、やはりスナップ爪7cを係止穴6cから離脱させて上ケース7を下ケース6から簡単に取り外すことができる。すなわち、車両窓部のガラス面20に固着されている下ケース6から上ケース7を取り外す作業が、保持ケース4の横方向からも上方向からも容易に行えるため、この車載用電子機器10はガラス面20のどこに装着されていても回路基板1の取り外し作業に支障をきたす虞がない。それゆえ、この車載用電子機器10は、回路基板1に設けられている電子回路の調整や部品交換等が行いやすくて修理やメンテナンスに好適であり、しかも、車両窓部のガラス面20の所望位置に装着できるため、アンテナ放射導体30の配設位置を制約する虞がない。
【0028】
また、本実施形態例に係る車載用電子機器10では、下ケース6に保持された接続端子5の第2接触片5bが、車両窓部のガラス面20に設けられたアンテナ放射導体30の給電部31に圧接していると共に、この接続端子5の第1接触片5aが回路基板1の底面に設けられた電極9に圧接している。そして、この回路基板1が上ケース7に組み付けられているため、接続端子5が上ケース7をガラス面20から離隔する向きに弾性付勢する構成になっている。したがって、上ケース7のスナップ爪7cを下ケース6の係止穴6cから離脱させたときに、接続端子5の弾発力によって回路基板1と上ケース7を若干押し上げる(浮かす)ことができ、そのため回路基板1と上ケース7を下ケース6から取り外す作業が非常に行いやすい。
【0029】
また、この車載用電子機器10の保持ケース4には、弾性片7aや舌片6b等が設けられている長手方向の一端部と反対側の端部に、係合突起7e(上ケース7)とテーパ状の肉厚部6eを有する柱状部6f(下ケース6)とが設けられており、一対の係合突起7eで一対の柱状部6fを外側へ押し撓めることによって、各係合突起7eが対応する肉厚部6eに係止できるようになっている。つまり、上ケース7を下ケース6に取り付ける際に、両者6,7の長手方向の一端部でスナップ爪7cを係止穴6cにスナップ止めできるだけでなく、長手方向の他端部で一対の係合突起7eを対応する肉厚部6eにスナップ止めできるようになっている。そのため、下ケース6の真上から上ケース7を押し込むだけで、この上ケース7を容易かつ確実に下ケース6に取り付けることができ、取付作業が非常に簡便に行える。
【0030】
なお、この車載用電子機器10では、コネクタ2と干渉する虞のない保持ケース4の隅部に係合突起7e(上ケース7)や柱状部6f(下ケース6)が設けてあり、かつ、コネクタ2と干渉する虞のない保持ケース4の長手方向の一端部に弾性片7aやせり出し部7b(上ケース7)や舌片6b(下ケース6)が設けてあるため、保持ケース4の設計や製造は容易である。
【符号の説明】
【0031】
1 回路基板
2 コネクタ
3 シールドケース
4 保持ケース
5 接続端子
5a 第1接触片
5b 第2接触片
6 下ケース
6a 側板
6b 舌片
6c 係止穴
6d 切れ込み
6e 肉厚部
6f 柱状部
7 上ケース
7a 弾性片
7b せり出し部
7c スナップ爪
7d 切欠き部
7e 係合突起
8 両面接着テープ8
9 電極(第1の電極)
10 車載用電子機器
20 ガラス面
25 簡易治具
30 アンテナ放射導体
31 給電部(第2の電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を収納する略直方体形状の保持ケースが、車両窓部のガラス面に固着される下ケースと、この下ケースを覆うように着脱可能に取り付けられる上ケースとを組み合わせて構成されており、前記回路基板に設けられた電子回路が前記ガラス面に配設されたアンテナ放射導体と電気的に接続されるようになっている車載用電子機器において、
前記上ケースの長手方向の一端部に、長手方向の他端側へ押し撓めることが可能な弾性片と、この弾性片の一部を長手方向の一端側へ突出させてなるスナップ爪と、前記弾性片の先端から長手方向の一端側へ延出するせり出し部と、このせり出し部の基端付近を切り欠いてなる切欠き部とを設けると共に、前記下ケースの長手方向の一端部に係止穴を有する舌片を設け、この舌片と前記弾性片とが対向する箇所が前記切欠き部に臨出するようになし、前記スナップ爪を前記係止穴に係脱させることによって前記上ケースが前記下ケースに着脱されるようにしたことを特徴とする車載用電子機器。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記回路基板が前記上ケースに保持されていると共に、前記下ケースにばね性を有する接続端子が保持されており、この接続端子の一端部を前記回路基板の底面に設けられた第1の電極に圧接させると共に、前記接続端子の他端部を前記ガラス面に設けられた第2の電極に圧接させることにより、前記接続端子が前記上ケースを前記ガラス面から離隔する向きに弾性付勢するようにしたことを特徴とする車載用電子機器。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記下ケースの長手方向の一端部に存する側板の一部を前記舌片となし、この舌片の幅方向両側縁に沿って切れ込みが形成されていることを特徴とする車載用電子機器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記上ケースの長手方向の他端部で幅方向に相対向する位置に一対の係合突起が設けられていると共に、前記下ケースの長手方向の他端部で幅方向に相対向する位置に、それぞれの先端付近にテーパ状の肉厚部を有する一対の柱状部が立設されており、一対の前記係合突起で一対の前記柱状部を外側へ押し撓めることによって、前記各係合突起が対応する前記肉厚部に係止可能であることを特徴とする車載用電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−63682(P2013−63682A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202269(P2011−202269)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】