説明

車載発電システム

【課題】高温環境下においても、デバイスが損傷し、発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制できる車載発電システムを提供すること。
【解決手段】車載発電システム1に、内燃機関2と、内燃機関2から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより電気分極する第1デバイス3と、第1デバイス3から電力を取り出すための第2デバイス4と、排気ガスの温度を検知する温度センサ5と、第1デバイス3に供給される排気ガスの温度を低下させる温度低下機構6と、温度センサ5による検知温度が所定温度以上であるときに、温度低下機構6を作動させる制御ユニット7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載発電システム、詳しくは、自動車などの車両に搭載される車載発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車エンジンなどの内燃機関や、ボイラー、空調設備などの熱交換器、発電機、モータなどの電動機関、照明などの発光装置などの各種エネルギー利用装置では、例えば、排熱、光などとして、多くの熱エネルギーが放出および損失されている。
【0003】
近年、省エネルギー化の観点から、放出される熱エネルギーを回収し、エネルギー源として再利用することが要求されており、このような方法として、焦電素子を用いた熱電変換発電が、知られている。
【0004】
具体的には、例えば、複数の焦電素子のそれぞれの温度を上昇させる加熱源と、それら焦電素子のそれぞれの温度を低下させる冷却源と、加熱源および冷却源、および/または、焦電素子を移動させる移動手段とを備える発電装置を用い、加熱源および冷却源により焦電素子の温度を周期的に上昇および下降させることによって、焦電素子から直流電力または交流電力を取り出す方法が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−332266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、このような発電方法としては、発電装置を自動車などの車両に搭載し、例えば、内燃機関から排気ガスが排出される排出管内に焦電素子を配置するとともに、その排気ガスを加熱源および冷却源として用いることなども検討することもできる。
【0007】
しかるに、このような場合には、排気ガスの温度によっては、焦電素子が高温になると、焦電素子に損傷を生じ、発電性能が低下する場合や、発電不能となる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、デバイスが損傷し、発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制できる車載発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の車載発電システムは、内燃機関と、前記内燃機関から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより電気分極する第1デバイスと、前記第1デバイスから電力を取り出すための第2デバイスと、前記排気ガスの温度を検知する検知手段と、前記第1デバイスに供給される排気ガスの温度を低下させる温度低下手段と、前記検知手段による検知温度が所定温度以上であるときに、前記温度低下手段を作動させる制御手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の車載発電システムでは、前記内燃機関が、エンジンと、前記エンジンに接続され、前記エンジンに空気を供給するための吸気管と、前記エンジンに接続され、前記エンジンから前記排気ガスを排出させるための排気管とを備え、前記第1デバイスが、前記排気管内に配置され、前記温度低下手段が、その一端が前記排気管における前記第1デバイスの下流側に接続され、その他端が前記吸気管に接続される還流管と、前記還流管において還流される前記排気ガスの還流量を調節するための還流量調節手段とを備えており、前記制御手段は、前記検知手段による検知温度が所定温度以上であるときに、前記還流量調節手段を制御して、前記排気ガスの前記還流量を増加させることが好適である。
【0011】
また、本発明の車載発電システムでは、前記内燃機関が、エンジンと、前記エンジンに接続され、前記エンジンに空気を供給するための吸気管と、前記エンジンに接続され、前記エンジンから前記排気ガスを排出させるための排気管と、前記吸気管に設けられ、前記エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段とを備え、前記第1デバイスが、前記排気管内に配置され、前記温度低下手段が、前記エンジンに対する前記燃料供給手段からの前記燃料の供給量を調節するための燃料供給量調節手段を備え、前記制御手段は、前記検知手段による検知温度が所定温度以上であるときに、前記燃料供給量調節手段を制御して、前記燃料の前記供給量を減少させることが好適である。
【0012】
また、本発明の車載発電システムでは、前記内燃機関が、エンジンと、前記エンジンに接続され、前記エンジンから前記排気ガスを排出させるための排気管とを備え、前記第1デバイスが、前記排気管内に配置され、前記温度低下手段が、前記排気管における前記エンジンと前記第1デバイスとの間に接続され、冷却媒体を前記排気管に供給するための冷却媒体供給手段を備えており、前記制御手段は、前記検知手段による検知温度が所定温度以上であるときに、前記冷却媒体供給手段から冷却媒体を供給することが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車載発電システムでは、排気ガスの温度が検知され、その検知される検知温度が所定温度以上であるときに、制御手段により温度低下手段が作動され、第1デバイスに供給される排気ガスの温度が低下される。
【0014】
そのため、このような車載発電システムによれば、第1デバイスが高温となって損傷することを抑制することができ、車載発電システムの発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の車載発電システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.車載発電システムの全体構成
図1は、本発明の車載発電システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【0017】
図1において、自動車10は、車載発電システム1を備えている。
【0018】
車載発電システム1は、内燃機関2と、内燃機関2から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより電気分極する第1デバイス3と、第1デバイス3から電力を取り出すための第2デバイス4と、排気ガスの温度を検知する検知手段としての温度センサ5と、第1デバイス3に供給される排気ガスの温度を低下させる温度低下手段としての温度低下機構6と、温度センサ5による検知温度が所定温度(後述)以上であるときに、温度低下機構6を作動させる制御手段としての制御ユニット7とを備えている。
【0019】
内燃機関2は、エンジン11、エンジン11に空気を供給するための吸気管16、エンジン11から排気ガスを排出させるための排気管17、および、エンジン11に燃料を供給するための燃料供給手段としての燃料供給装置20を備えている。
【0020】
エンジン11は、車両などの動力を出力する装置であって、例えば、単気筒型または多気筒型(例えば、2気筒型、4気筒型、6気筒型)が採用されるとともに、その各気筒において、多サイクル方式(例えば、2サイクル方式、4サイクル方式、6サイクル方式など)が採用される。
【0021】
以下において、4気筒型が採用されるとともに、その各気筒で4サイクル方式が採用されるエンジン11について、説明する。
【0022】
このエンジン11は、並列配置される複数(4つ)の気筒12を備えている。なお、図1においては、1つの気筒12を取り出して示し、その他の気筒12については省略している。
【0023】
各気筒12は、ピストン13、燃焼室14および点火プラグ(図示せず)などを備えており、上流側が吸気管16に接続されるとともに、下流側が排気管17に接続されている。
【0024】
また、各気筒12は、吸気管16と接続される接続部分において、吸気バルブ18を備えるとともに、排気管17と接続される接続部分において、排気バルブ19を備えている。
【0025】
吸気バルブ18は、気筒12と吸気管16との接続部分において、気筒12を開閉可能に設けられている。
【0026】
排気バルブ19は、気筒12と排気管17との接続部分において、気筒12を開閉可能に設けられている。
【0027】
これら吸気バルブ18および排気バルブ19は、図示しないが、スプリングなどの弾性力によって閉方向に付勢されている。これら吸気バルブ18および排気バルブ19は、例えば、カムシャフトの回転などによって、気筒12を開閉可能としている。
【0028】
吸気管16は、エンジン11に空気を供給するために設けられ、その下流側端部がエンジン11の気筒12に接続されるとともに、上流側端部が外気に開放されている。
【0029】
吸気管16は、後述するサージタンク23の上流側において、スロットルバルブ27を備えており、このスロットルバルブ27の開閉により、エンジン11が空気を取り込み可能としている。
【0030】
また、吸気管16は、サージタンク23を備え、還流管25(後述)が接続されている。
【0031】
サージタンク23は、エンジン11の作動により吸気管16に生じる吸気の脈動をとるものであって、さらに、吸気管16において取り込まれた空気と、還流管25(後述)により還流される排ガスとを混合することができ、ほぼ略直方体の箱型空間として区画されている。
【0032】
排気管17は、エンジン11から排気ガスを排出させるために設けられ、その上流側端部がエンジン11の気筒12に接続されている。
【0033】
また、図示しないが、複数(4つ)の気筒12に接続される複数(4つ)の排気管17は、それぞれ、エンジン11よりも下流側において1つに集合されており、その集合された排気管17の下流側端部は、外気に開放されている。これにより、エンジン11から排出される排気ガスを集合させ、外気に放出可能としている。
【0034】
燃料供給装置20は、吸気管16に設けられ、燃料タンク21および燃料供給管22を備えている。
【0035】
燃料タンク21は、エンジンに供給される燃料(例えば、ガソリンなど)が貯留されるタンクであって、耐熱耐圧容器などから形成されている。
【0036】
燃料供給管22は、燃料タンク21からエンジン11に燃料を供給するために設けられており、その上流側端部が燃料タンク21に接続されるとともに、下流側端部が、後述する燃料噴射弁30に接続されている。
【0037】
第1デバイス3は、内燃機関2(エンジン11)から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより、温度が経時的に上下され、電気分極するデバイスである。
【0038】
ここでいう電気分極とは、結晶の歪みにともなう正負イオンの変位により誘電分極し電位差が生じる現象、例えばピエゾ効果、および/または、温度変化により誘電率が変化し電位差が生じる現象、例えば焦電効果などのように、材料に起電力が発生する現象と定義する。
【0039】
このような第1デバイス3として、より具体的には、例えば、ピエゾ効果により電気分極するデバイス、焦電効果により電気分極するデバイスなどが挙げられる。
【0040】
ピエゾ効果は、応力または歪みが加えられたときに、その応力または歪みの大きさに応じて電気分極する効果(現象)である。
【0041】
このようなピエゾ効果により電気分極する第1デバイス3としては、特に制限されず、公知のピエゾ素子(圧電素子)を用いることができる。
【0042】
第1デバイス3としてピエゾ素子が用いられる場合には、ピエゾ素子は、例えば、その周囲が固定部材により固定され、体積膨張が抑制された状態において、排気ガスに接触(曝露)されるように、排気管17内に配置される。
【0043】
固定部材としては、特に制限されず、例えば、後述する第2デバイス4(例えば、電極など)を用いることもできる。
【0044】
そして、このような場合には、ピエゾ素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、これにより、膨張または収縮する。
【0045】
このとき、ピエゾ素子は、固定部材により体積膨張が抑制されているため、ピエゾ素子は、固定部材に押圧され、ピエゾ効果(圧電効果)、または、キュリー点付近での相変態により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、ピエゾ素子から電力が取り出される。
【0046】
また、このようなピエゾ素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定(すなわち、体積一定)になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
【0047】
そのため、上記したように排気ガスが周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、ピエゾ素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、ピエゾ素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
【0048】
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
【0049】
焦電効果は、例えば、絶縁体(誘電体)などを加熱および冷却する時に、その温度変化に応じて絶縁体が電気分極する効果(現象)であって、第1効果および第2効果を含んでいる。
【0050】
第1効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により自発分極し、絶縁体の表面に、電荷を生じる効果とされている。
【0051】
また、第2効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により結晶構造に圧力変形が生じ、結晶構造に加えられる応力または歪みにより、圧電分極を生じる効果(ピエゾ効果、圧電効果)とされている。
【0052】
このような焦電効果により電気分極するデバイスとしては、特に制限されず、公知の焦電素子を用いることができる。
【0053】
第1デバイス3として焦電素子が用いられる場合には、焦電素子は、排気ガスに接触(曝露)されるように、排気管17内に配置される。
【0054】
このような場合において、焦電素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、その焦電効果(第1効果および第2効果を含む)により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、焦電素子から電力が取り出される。
【0055】
また、このような焦電素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
【0056】
そのため、上記したように排気ガスが周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、焦電素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、焦電素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
【0057】
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
【0058】
このような第1デバイス3として、具体的には、上記したように、公知の焦電素子(例えば、BaTiO、CaTiO、(CaBi)TiO、BaNdTi14、BaSmTi12、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O)など)、公知のピエゾ素子(例えば、水晶(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム)(KNaC)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、リチウムテトラボレート(Li)、ランガサイト(LaGaSiO14)、窒化アルミニウム(AlN)、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)などを用いることができる。
【0059】
これら第1デバイス3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0060】
第1デバイス3のキュリー点は、例えば、−77℃以上、好ましくは、−10℃以上であり、例えば、1300℃以下、好ましくは、900℃以下である。
【0061】
また、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率は、例えば、1以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、2000以上である。
【0062】
このような車載発電システム1では、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率が高いほど、エネルギー変換効率が高く、高電圧で電力を取り出すことができるが、第1デバイス3の比誘電率が上記下限未満であれば、エネルギー変換効率が低く、得られる電力の電圧が低くなる場合がある。
【0063】
なお、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))は、排気ガスの温度変化によって電気分極するが、その電気分極は、電子分極、イオン分極および配向分極のいずれでもよい。
【0064】
例えば、配向分極によって分極が発現する材料(例えば、液晶材料など)では、その分子構造を変化させることにより、発電効率の向上を図ることができるものと期待されている。
【0065】
このような第1デバイス3は、排気管17内、具体的には、排気管17の、後述する冷却媒体供給管32が接続される接続部分よりも下流側、かつ、後述する還流管25が接続される接続部分よりも上流側において、例えば、互いに間隔を隔てて複数整列配置され、第2デバイス4(および必要により設けられる固定部材(図示せず))により、固定されている。なお、図1においては、1つの第1デバイス3を取り出して示し、その他の第1デバイス3については省略している。
【0066】
これにより、第1デバイス3は、排気管17内において、第2デバイス4を介して、排気ガスに接触(曝露)可能とされている。
【0067】
第2デバイス4は、第1デバイス3から電力を取り出すために設けられる。
【0068】
このような第2デバイス4は、より具体的には、特に制限されないが、例えば、上記の第1デバイス3を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)、例えば、それら電極に接続される導線などを備えており、第1デバイス3に電気的に接続されている。
【0069】
また、第2デバイス4は、必要により、昇圧器(図示せず)、交流/直流変換器(AC−DCコンバーター)(図示せず)などを介して、バッテリー8に、電気的に接続されている。
【0070】
温度センサ5は、排気ガスの温度を検知するため、排気管17内において、第1デバイス3よりも上流側に配置される。温度センサ5は、排気ガスの温度として、排気管17内を通過する排気ガスの温度を直接検知するか、または、第1デバイス3の表面温度を検知することにより、排気ガス温度を検知する。温度センサ5としては、例えば、赤外放射温度計や、熱電対温度計などの公知の温度計が用いられる。
【0071】
温度低下機構6は、排気ガスを排気管17から吸気管16に還流させる排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システム24と、燃料供給量調節手段としての燃料噴射弁30と、冷却媒体供給手段としての冷却媒体供給装置31とを備えている。
【0072】
排気再循環システム24は、エンジン11から排出される排気ガスを還流させるための還流管25と、還流管25において還流される排気ガスの還流量を調節するための還流量調節手段としての還流量調節弁26とを備えている。
【0073】
還流管25は、その一端(上流側端部)が排気管17の第1デバイス3の下流側に接続され、その他端(下流側端部)が、吸気管16の流れ方向途中に接続されている。
【0074】
還流量調節弁26は、還流管25を開閉するための弁であって、還流管25の流れ方向途中に介在されている。還流量調節弁26としては、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、還流量調節弁26は、制御ユニット7(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、制御ユニット7(後述)からの制御信号が、還流量調節弁26に入力され、制御ユニット7(後述)が、還流量調節弁26の開閉および開度を制御する。
【0075】
燃料噴射弁30は、エンジン11に対する燃料供給装置20からの燃料の供給量を調節するとともに、その燃料をエンジン11に対して噴射するための弁であって、燃料供給管22の下流側端部に設けられ、吸気管16の吸気バルブ18よりも上流側に接続されている。
【0076】
燃料噴射弁30としては、特に制限されず、公知の噴射弁を用いることができる。また、燃料噴射弁30は、制御ユニット7(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、制御ユニット7(後述)からの制御信号が、燃料噴射弁30に入力され、制御ユニット7(後述)が、燃料噴射弁30の開閉および開度、すなわち、燃料噴射弁による燃料の噴射量(エンジン11に対する燃料の供給量)を制御する。
【0077】
冷却媒体供給装置31は、冷却媒体(例えば、空気(以下同様))を排気管17に供給するために設けられており、排気管17におけるエンジン11と第1デバイス3との間に接続されている。
【0078】
このような冷却媒体供給装置31は、冷却媒体供給管32、冷却媒体供給弁33および冷却媒体供給ポンプ34を備えている。
【0079】
冷却媒体供給管32は、冷却媒体を排気管17に供給するために設けられており、その下流側端部が排気管17の流れ方向途中、具体的には、排気管17内に配置される第1デバイス3よりも上流側、かつ、温度センサ5よりも下流側に接続されている。また、冷却媒体供給管32の上流側端部は外気に開放されており、冷却媒体を取り込み可能としている。
【0080】
冷却媒体供給弁33は、冷却媒体供給管32を開閉するための弁であって、冷却媒体供給管32の流れ方向途中に介在されている。冷却媒体供給弁33としては、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、冷却媒体供給弁33は、制御ユニット7(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、制御ユニット7(後述)からの制御信号が、冷却媒体供給弁33に入力され、制御ユニット7(後述)が、冷却媒体供給弁33の開閉および開度を制御する。
【0081】
冷却媒体供給ポンプ34は、冷却媒体を冷却媒体供給管32内に輸送するためのポンプであって、冷却媒体供給弁33よりも上流側において、冷却媒体供給管32に介在されている。冷却媒体供給ポンプ34としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知のポンプが用いられる。冷却媒体供給ポンプ34は、制御ユニット7(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、制御ユニット7(後述)からの制御信号が、冷却媒体供給ポンプ34に入力され、制御ユニット7(後述)が、冷却媒体供給ポンプ34の駆動および停止を制御する。
【0082】
制御ユニット7は、車載発電システム1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータで構成されている。
【0083】
この制御ユニット7は、図1において破線で示すように、温度センサ5、還流量調節弁26、燃料噴射弁30、冷却媒体供給弁33およびに冷却媒体供給ポンプ34に電気的に接続されており、温度センサ5からの電気信号が入力可能とされるとともに、還流量調節弁26、燃料噴射弁30および冷却媒体供給弁33の開閉および開度や、冷却媒体供給ポンプ34の駆動および停止を制御可能としている。
2.発電方法
以下において、上記した車載発電システム1を用いた発電方法について、詳述する。
【0084】
この車載発電システム1では、エンジン11の駆動により、気筒12においてピストンの昇降運動が繰り返されており、これにより、例えば、4サイクル方式では、吸気工程、圧縮工程、爆発工程、排気工程などが順次実施される。
【0085】
より具体的には、このエンジン11では、まず、スロットルバルブ27が開かれ、吸気管16から空気が供給されるとともに、燃料供給管22から所定量の燃料が燃料噴射弁30によって供給(噴射)され、それらが混合される。そして、空気と燃料との混合気が、吸気バルブ18が開かれることにより、気筒12の燃焼室14に供給される(吸気工程)。
【0086】
次いで、吸気バルブ18が閉じられ、ピストン13が上昇することにより、燃焼室14の混合気が圧縮され、高温化される(圧縮工程)。
【0087】
次いで、図示しない点火プラグにより混合気が点火され、爆発的に燃焼されるとともに、ピストン13が爆発により押し下げられる(爆発工程)。
【0088】
その後、排気バルブ19が開かれ、燃焼により生じたガス(排気ガス)が、気筒12から排出される(排気工程)。
【0089】
このように、エンジン11では、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、高温の排気ガスが、排気管17の内部を排気工程において通過する。
【0090】
このとき、エンジン11の熱が、排気ガスを介して伝達され、排気ガスの温度(排気管17の内部温度)は、排気工程において上昇する。一方、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)では、排気管17内の排気ガス量が低減されるので、排気ガスの温度(排気管17の内部温度)は下降する。
【0091】
このように、排気ガスの温度は、排気工程において上昇し、吸気工程、圧縮工程および爆発工程において下降し、つまり、経時的に上下する。
【0092】
とりわけ、上記の各工程は、ピストンサイクルに応じて、周期的に順次繰り返されるため、排気ガスは、上記の各工程の繰り返しの周期に伴って、周期的に温度変化、より具体的には、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
【0093】
このような車載発電システム1において、内燃機関2および排気ガスの温度は、高温状態における温度が、例えば、200〜1200℃、好ましくは、700〜900℃であり、低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満、より具体的には、例えば、100〜800℃、好ましくは、200〜500℃であり、高温状態と低温状態との温度差が、例えば、10〜600℃、好ましくは、20〜500℃である。
【0094】
また、それら高温状態と低温状態との繰り返し周期は、例えば、10〜400サイクル/秒、好ましくは、30〜100サイクル/秒である。
【0095】
そして、この車載発電システム1では、上記したように、排気管17の内部に、第1デバイス3が配置されている。
【0096】
そのため、エンジン11(内燃機関2)から排出される排気ガスが、排気管17内に導入されると、その排気管17内において、第1デバイス3に排気ガスが供給され、第1デバイス3が、第2デバイス4を介して排気ガスに接触(曝露)され、加熱および/または冷却される。
【0097】
すなわち、第1デバイス3が、エンジン11(内燃機関2)、および、そのエンジン11の熱を伝達する排気ガスの経時的な温度変化により、加熱および/または冷却される。
【0098】
そして、これにより、第1デバイス3を、周期的に高温状態または低温状態にすることができ、第1デバイス3を、その素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果など)により、電気分極させることができる。
【0099】
そのため、この車載発電システム1では、第2デバイス4を介して、各第1デバイス3から電力を周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
【0100】
その後、この方法では、例えば、図1において点線で示すように、上記により得られた電力を、必要により第2デバイス4に接続される昇圧器(図示せず)で昇圧し、交流/直流変換器(図示せず)において直流電圧に変換した後、バッテリー8に蓄電する。バッテリー8に蓄電された電力は、自動車10や、自動車10に搭載される各種電気部品の動力などとして、適宜、用いることができる。
【0101】
一方、発電に用いられた排気ガスは、第1デバイス3を通過した後、必要により、一部が排気再循環システム24によって循環されるとともに、残部が公知の触媒などによって浄化され、外気に排出される。
【0102】
具体的には、制御ユニット7によって還流量調節弁26の開度が調節され、第1デバイス3を通過した排気ガスの一部が、還流管25に供給され、サージタンク23に輸送される。そして、サージタンク23において、その排気ガスと、吸気管16を介して供給された空気とが所定割合で混合され、混合気体が、エンジン11に供給され、燃料の燃焼に供される。一方、排気ガスの還流される一部に対する残部は、公知の触媒などによって浄化され、外気に排出される。
【0103】
このように排気ガスの一部を排気再循環システム24により循環させ、空気と混合して得られた混合気体をエンジン11において用いることにより、排出される排気ガス中の窒素酸化物などを低減することができ、また、燃費の向上を図ることができる。
3.温度低下機構
上記した車載発電システム1では、排気ガスの温度によっては、第1デバイス3が高温、具体的には、そのキュリー点以上になり、第1デバイス3に損傷を生じる場合がある。このような場合には、車載発電システム1の発電性能が低下する場合や、発電不能となる場合がある。
【0104】
そこで、この車載発電システム1では、第1デバイス3が損傷し、発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制するため、温度低下機構6により、第1デバイス3に供給される排気ガスの温度を低下させる。
【0105】
以下において、上記した車載発電システム1において、排気ガスの温度を低下させる方法について、詳述する。
【0106】
すなわち、この車載発電システム1では、第1デバイス3に供給される排気ガスの温度が、温度センサ5によって連続的に検知され、電気信号として制御ユニット7に入力される。
【0107】
そして、温度センサ5による検知温度が所定温度以上であるときに、制御ユニット7により、温度低下機構6が作動される。
【0108】
このような排気ガスの温度としては、その排気ガスが供給される第1デバイス3が高温、具体的には、キュリー点近傍となる900℃である。
【0109】
温度低下機構6は、上記したように、排気再循環システム24と、燃料噴射弁30と、冷却媒体供給装置31とを備えており、温度センサ5による検知温度が所定温度以上であるときに、制御ユニット7によって、これらが単独または複合的に制御される。
【0110】
排気再循環システム24が制御される場合には、温度センサ5による検知温度が上記の所定温度以上であるときに、制御ユニット7により、還流量調節弁26が制御され、その開度が大きくされることにより、排気ガスの還流量が増加される。
【0111】
そして、このように還流される排気ガスと、吸気管16を介して供給された空気とがサージタンク23において混合され、通常よりも排気ガスを多量に含んだ混合気体が、エンジン11に供給され、燃料の燃焼に供され、排気ガスが排出される。
【0112】
このように、排気ガスの割合が増加された混合気体を燃料の燃焼に供することにより、気筒12から排出される排気ガスの温度を低下させることができる。すなわち、このような方法によれば、第1デバイス3に供給される排気ガスの温度を低下することができる。
【0113】
そのため、このような車載発電システム1によれば、第1デバイス3が高温となって損傷することを抑制することができ、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
【0114】
また、燃料噴射弁30が制御される場合には、温度センサ5による検知温度が上記の所定温度以上であるときに、制御ユニット7により、燃料噴射弁30が制御され、燃料の供給量が減少される。
【0115】
すなわち、上記したエンジン11の駆動の吸気工程において、燃料噴射弁30が制御され、その開度が小さくされることにより、燃料の供給量(噴射量)が減少される。
【0116】
そして、このように減少された燃料と、吸気管16から供給された空気との混合気が、吸気バルブ18が開かれることにより、気筒12の燃焼室14に供給され、吸気工程、圧縮工程、爆発工程、排気工程などが順次実施されることにより、排気ガスが排気される。
【0117】
このように、燃料の割合が減少された混合気を燃料の燃焼に供することにより、気筒12から排出される排気ガスの温度を低下させることができる。すなわち、このような方法によれば、第1デバイス3に供給される排気ガスの温度を低下することができる。
【0118】
そのため、このような車載発電システム1によれば、第1デバイス3が高温となって損傷することを抑制することができ、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
【0119】
また、冷却媒体供給装置31が制御される場合には、温度センサ5による検知温度が上記の所定温度以上であるときに、制御ユニット7により、冷却媒体供給装置31から冷却媒体が供給される。
【0120】
すなわち、温度センサ5による検知温度が上記の所定温度以上であるときに、制御ユニット7によって、冷却媒体供給ポンプ34が駆動されるとともに、冷却媒体供給弁33が開かれることによって、冷却媒体供給管32を介して、冷却媒体(空気など)が排気管17に供給される。
【0121】
このとき、冷却媒体供給装置31は、排気管17におけるエンジン11と第1デバイス3との間に接続されているため、エンジン11から排出され、温度センサ5により温度が検知された排気ガスは、第1デバイス3に供給される前に、冷却媒体供給装置31により供給された冷却媒体と混合される。
【0122】
このように、冷却媒体供給装置31によって冷却媒体を供給し、排気ガスと冷却媒体とを混合することにより、排気ガスの温度を低下させることができる。すなわち、このような方法によれば、第1デバイス3に供給される排気ガスの温度を低下することができる。
【0123】
そのため、このような車載発電システム1によれば、第1デバイス3が高温となって損傷することを抑制することができ、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
【0124】
なお、温度低下機構6としては、温度センサ5による検知温度が上記の所定温度以上であるときに、上記した排気再循環システム24、燃料噴射弁30、および、冷却媒体供給装置31のいずれかのみを作動させてもよく、また、2つ以上を複合的に作動させてもよい。
【0125】
そのような場合において、排気再循環システム24における排気ガスの還流量や、燃料噴射弁30による燃料の噴射量、冷却媒体供給装置31による冷却媒体の供給量などは、必要に応じて、適宜調整される。
【符号の説明】
【0126】
1 車載発電システム
2 内燃機関
3 第1デバイス
4 第2デバイス
5 温度センサ
6 温度低下機構
7 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより電気分極する第1デバイスと、
前記第1デバイスから電力を取り出すための第2デバイスと、
前記排気ガスの温度を検知する検知手段と、
前記第1デバイスに供給される排気ガスの温度を低下させる温度低下手段と、
前記検知手段による検知温度が所定温度以上であるときに、前記温度低下手段を作動させる制御手段と
を備えることを特徴とする、車載発電システム。
【請求項2】
前記内燃機関が、エンジンと、前記エンジンに接続され、前記エンジンに空気を供給するための吸気管と、前記エンジンに接続され、前記エンジンから前記排気ガスを排出させるための排気管とを備え、
前記第1デバイスが、前記排気管内に配置され、
前記温度低下手段が、その一端が前記排気管における前記第1デバイスの下流側に接続され、その他端が前記吸気管に接続される還流管と、前記還流管において還流される前記排気ガスの還流量を調節するための還流量調節手段とを備えており、
前記制御手段は、前記検知手段による検知温度が所定温度以上であるときに、前記還流量調節手段を制御して、前記排気ガスの前記還流量を増加させることを特徴とする、請求項1に記載の車載発電システム。
【請求項3】
前記内燃機関が、エンジンと、前記エンジンに接続され、前記エンジンに空気を供給するための吸気管と、前記エンジンに接続され、前記エンジンから前記排気ガスを排出させるための排気管と、前記吸気管に設けられ、前記エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段とを備え、
前記第1デバイスが、前記排気管内に配置され、
前記温度低下手段が、前記エンジンに対する前記燃料供給手段からの前記燃料の供給量を調節するための燃料供給量調節手段を備え、
前記制御手段は、前記検知手段による検知温度が所定温度以上であるときに、前記燃料供給量調節手段を制御して、前記燃料の前記供給量を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の車載発電システム。
【請求項4】
前記内燃機関が、エンジンと、前記エンジンに接続され、前記エンジンから前記排気ガスを排出させるための排気管とを備え、
前記第1デバイスが、前記排気管内に配置され、
前記温度低下手段が、前記排気管における前記エンジンと前記第1デバイスとの間に接続され、冷却媒体を前記排気管に供給するための冷却媒体供給手段を備えており、
前記制御手段は、前記検知手段による検知温度が所定温度以上であるときに、前記冷却媒体供給手段から冷却媒体を供給することを特徴とする、請求項1に記載の車載発電システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−96276(P2013−96276A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238490(P2011−238490)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】