説明

車載装置、その音声出力方法

【課題】車載装置において、音像の設定を容易にする。
【解決手段】音声出力装置を備えた車載装置は、音像の定位位置のプリセット位置の指定を受け付けるとともに、指定されたプリセット位置の登録を受け付けるプリセット位置登録手段と、音像の定位位置のリセット要求を受け付けるリセット要求受付手段と、リセット受付手段がリセット要求を受け付けた場合に、プリセット位置登録手段により登録されたプリセット位置に基づいて、音像の定位位置を変更するリセット手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置を備えた車載装置の音声出力技術に関する。
【背景技術】
【0002】
音声出力装置を備えた車載装置の中には、音声バランスを調整可能なものがある。例えば、音像の定位位置(音像位置)をスピーカの実際の位置とずらすことにより、受聴者に対して、スピーカの位置と異なる位置から音声が出力されているような感覚を持たせることができる。これにより、受聴者に対して、聞き取りやすい、あるいは臨場感のある音場を形成することができる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−153685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような車載装置では、ユーザは音像位置を手動で調整できる。一方、車載装置には、工場出荷時に、音像のプリセット位置が登録されている。したがって、ユーザは、音像の設定を工場出荷時にいつでも戻し、リセットすることができる。そして、工場出荷時の設定を基準として微調整を施すことができる。
【0004】
しかし、従来の車載装置では、プリセット位置を変更することができない。これでは、工場出荷時のプリセット位置にしか戻すことができない。すなわち、工場出荷時の設定を基準に調整するしかなく、ユーザの希望の設定にするまで手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、車載装置において、音声バランス(音像位置)の設定を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の音声出力装置を備えた車載装置は、音声バランス(音像位置)のプリセット値の指定を受け付けるとともに、指定されたプリセット値の登録を受け付けるプリセット登録手段と、音声バランスのリセット要求を受け付けるリセット要求受付手段と、前記リセット要求受付手段がリセット要求を受け付けた場合に、前記プリセット登録手段により登録されたプリセット値に基づいて、音声バランスを変更するリセット手段と、を備える。
【0007】
前記プリセット登録手段は、音像位置の設定後、所定時間を超えた場合に、その時点で設定されている音像位置をプリセット位置に登録することができる。
【0008】
前記プリセット登録手段は、音像位置の設定後、所定種類の音声の出力時間が所定時間を超えた場合に、その時点で設定されている音像位置をプリセット位置に登録することができる。
【0009】
前記プリセット登録手段は、複数のプリセット位置の登録を行うことができる。そして、前記リセット要求受付手段は、前記複数のプリセット位置の中から1つの選択を受け付ける。前記リセット手段は、前記リセット要求受付手段で受け付けたプリセット位置に基づいて、音像位置を変更することができる。
【0010】
前記車載装置は、さらに、車両内外の環境に関する環境情報とプリセット位置とを対応つけた環境別プリセット値テーブルを記憶する記憶手段と、環境情報を取得する環境情報取得手段と、を備えていてもよい。そして、前記プリセット登録手段は、前記環境別プリセット値テーブルを用いて、前記環境情報取得手段で取得した環境情報に対応するプリセット位置を特定し、前記音像位置のプリセット位置として登録することができる。
【0011】
前記環境情報は、車内の搭乗者の状態、窓の開閉状態、周辺の所定施設の有無、非接触キーの検知状態、のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車載装置において、音声バランス(音像位置)の設定を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する
【0014】
図1は、本発明の一実施形態が適用された車載装置100の概略構成図である。
【0015】
本実施形態の車載装置100は、ナビゲーション装置として機能するとともに、音楽を再生する際には、オーディオ再生装置として機能する。
【0016】
図示するように、車載装置100は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、記憶装置3と、音声入出力装置4(音声出力装置としてマイクロフォン41と、音声出力装置としてスピーカ42)と、入力装置5と、車速センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Global Positioning System)受信装置9と、通信装置10と、車両情報取得インターフェース11と、を備えている。
【0017】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば各種センサ7、8やGPS受信装置9から出力される情報を基にして現在位置を検出する。また、音声出力のための音像の設定処理を行う。
【0018】
演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、実行するプログラムやデータを格納するRAM(Random Access Memory)22やROM(Read Only Memory)23などのメモリと、外部との情報の授受を行うインターフェース24と、これらを結ぶバス25とを備えるコンピュータシステムにより構成される。
【0019】
ディスプレイ2は、液晶表示装置などで構成され、演算処理部1で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。
【0020】
記憶装置3は、CD-ROMやDVD-ROMやHDDやICカードといった記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、地図データ31、楽曲データ32等が記憶されている。
【0021】
地図データ31は、地図上の道路を構成するリンクのデータを含む。リンクのデータは、リンクの開始ノード、終了ノードの座標、リンク長、道路種別(高速道路、一般道など)などを含む。また、地図データ31は、所定の施設(公園、学校、駅、など)の座標位置を含む。
【0022】
楽曲データ32は、楽曲を再生するための音声データを含む。音声データは、歌手やジャンルごとに分類されている。
【0023】
マイクロフォン41は、ユーザが発話した音声を取得する音声入力装置である。
【0024】
スピーカ42は、演算処理部1で生成された音声を出力するための音声出力装置である。スピーカ42は、距離を離して設置された複数のスピーカからなる。複数のスピーカ42によれば、それぞれのスピーカから、遅延時間や音量を変化させた音声を出力することで、受聴者に対して音場の中に仮想音源を定位させることができる。これにより、受聴者に、実際には音源が位置しない位置から音声が出力されているかのような感覚を与えることができる。
【0025】
図2は、車両300における、スピーカ42の配置について説明するための平面図(天頂からみた図)である。図示するように、車内前方のダッシュボードの運転手席側と助手席側とにそれぞれ1つずつ、前の左右のドアにそれぞれ1つずつ、後部座席の後ろの左右にそれぞれ1つずつ、の計6つのスピーカ42が配置されている。
【0026】
なお、スピーカ42の数及び配置に制限はない。
【0027】
図1に戻って説明する。
【0028】
入力装置5は、ユーザからの指示を受け付けるユニットである。入力装置5は、スクロールキー、縮尺変更キーなどのハードスイッチ、ジョイスティック、ディスプレイ上に貼られたタッチパネル51などで構成される。
【0029】
センサ7、8およびGPS受信装置9は、現在地(自車位置)を検出するために使用される。
【0030】
通信装置10は、外部の情報配信サーバ装置などと通信を行う。通信装置10は、電話回線を利用するものであってもよいし、インターネットを利用するものであってもよい。また、携帯電話と接続して通信を行うものであってもよい。車載装置100は、通信装置10のほかに、FM多重放送受信装置やビーコン受信装置を備えていてもよい。また、一般的な、テレビ放送、ラジオ放送の受信装置を備えていてもよい。
【0031】
車両情報取得インターフェース11は、車両に関するさまざまな情報を取得するインターフェースである。具体的には、搭乗者の着席状態に関する情報、窓の開閉に関する情報、非接触キー(リモートコントロールキー、インテリジェントキー、スマートキー、などと呼ばれ、車両側の受信装置との認証処理により、鍵穴に挿入することなく、エンジンの始動やドアの開錠が可能なキー)の検知情報などを取得する。例えば、搭乗者の着席情報は、座席に配置された感圧センサなどで検知した情報である。これらの情報は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)などから車内LAN(Local Area Network)を介して取得することができる。
【0032】
図3は、車載装置100の機能ブロック図である。
【0033】
図示するように、車載装置100は、主制御部101と、ユーザ操作解析部102と、車両情報取得部103と、現在位置算出部104と、ナビゲーション処理部105と、音像設定部107と、出力音声取得部108と、音声加工部109と、音声出力部110と、表示処理部111と、データ記憶部120と、を備えている。
【0034】
主制御部101は、さまざまな処理を行う中心的ユニットであり、他の各機能部を制御する。
【0035】
ユーザ操作解析部102は、入力装置5に入力されたユーザからの要求を受け、その要求内容を解析して、その要求内容に対応する処理が実行されるように各機能部を制御する。
【0036】
現在位置算出部104は、各センサ7,8及びGPS受信装置9の出力から、現在位置を求める。例えば、地図データを用いて、マップマッチングにより地図上の自車両の位置を求める。
【0037】
ナビゲーション処理部105は、指定された2地点(現在地、目的地)間を結ぶ推奨経路を探索したり、ディスプレイ2に推奨経路を表示し経路誘導を行ったりする。
【0038】
音像設定部107は、音像の設定に関する処理を行う。例えば、ユーザからの要求に従って、音像の定位位置を変更する。また、リセット要求に従って、音像の定位位置をプリセット位置に変更する処理を行う。また、ユーザからプリセット位置の指定を受け付けて、登録する処理を行う。また、所定の条件を満たす場合に、その時点で設定されている音像の定位位置を、プリセット位置に登録する処理を行う。
【0039】
出力音声取得部108は、楽曲データ32等から、スピーカ42から出力すべき音声を取得する。
【0040】
音声加工部109は、音像設定部107で設定された音像が実現されるように、出力音声取得部108から取得した音声データを基に、各スピーカ42が出力するための音声を生成する処理を行う。音声加工部109は、各スピーカ42の位置を予め記憶しており、各スピーカ42の位置を基準として、設定された音像が形成されるように、音声を加工する。なお、複数のスピーカを用いて、設定された音像を形成する方法は、公知の方法を用いることができるので詳述しない。
【0041】
音声出力部110は、音声加工部109で加工された、各スピーカ42で出力されるべき音声を、各スピーカ42に送信し、音声出力を実行する。
【0042】
表示処理部111は、他の機能部からの指示に従って、ディスプレイ2に対する表示処理を行う。
【0043】
データ記憶部120は、プリセット位置登録テーブル210と、環境別プリセット位置テーブル220とを格納する。
【0044】
図4は、プリセット位置登録テーブル210の構成例である。プリセット位置登録テーブル210は、音像のプリセット位置を格納している。
【0045】
プリセット位置登録テーブル210は、各レコード216に、プリセット位置の種別211と、名称212と、登録日時213と、プリセット位置214と、とを格納する。
【0046】
種別211は、そのレコードに格納されるプリセット位置の種別である。種別211には、A:手動登録されたプリセット位置、B:手動調整後に自動登録されたプリセット位置、C:環境に応じて定められたプリセット位置、などがある。
【0047】
名称212は、登録されたプリセット位置を識別するためのテキスト情報である。本実施形態では、複数のプリセット位置が登録可能であるため、互いに区別するために名称を付与することができる。名称212は、ユーザの入力に基づいて設定される。ただし、自動登録されたプリセット位置については、名称212が付与されていない場合もある。
【0048】
登録日時213は、データが登録された日時である。
【0049】
プリセット位置214は、車内領域における位置座標(X,Y)で示される。
【0050】
図5は、環境別プリセット位置テーブル220の構成例である。環境別プリセット位置テーブル220は、さまざまな環境情報に対応付けたプリセット位置を格納している。
【0051】
環境別プリセット位置テーブル220は、各レコード224に、環境情報221と、プリセット位置222とを格納する。
【0052】
環境情報221は、例えば、搭乗者の着席状態、窓の開閉状態、車両の走行速度、現在位置、周辺の施設情報、非接触キーの検知情報等である。
【0053】
プリセット位置222は、車内領域における位置座標(X,Y)で示される。
【0054】
図3で示した各機能部は、CPU21がメモリ22にロードした所定のプログラムを実行することにより達成される。ROM23または記憶装置3には、各機能部を実現するための所定のプログラムが格納されている。音声処理に関しては、専用のDSP(Digital Signal Processor)が行うようにしてもよい。データ記憶部120は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置(例えば、HDDで構成される記憶装置3)上に構成される。
【0055】
[動作の説明]次に、上記構成の車載装置100の特徴的な動作について説明する。
【0056】
図6は、音像設定モードにおける処理のフロー図である。図7は、プリセット位置の自動登録処理のフロー図である。図8は、環境情報に応じたプリセット位置の登録処理のフロー図である。図9及び図10は、画面の表示例である。
【0057】
まず、図6を用いて、音像設定モードについて説明する。このモードでは、音像の位置のリセットや微調整を行うことができる。また、音像の位置のプリセット位置の登録を行うことができる。
【0058】
図6のフローは、ユーザから入力装置5を介して、音像設定モードへの移行要求を受け付けた場合に開始される。
【0059】
まず、音像設定部107は、表示処理部111を介してディスプレイ2に、音像設定モード画面500を表示する(S100)。
【0060】
図9および図10に示すように、音像設定モード画面500には、音場が形成される領域を示す車内画像(車両前方を上方向に配置)501と、現在の音像の位置(音像が定位される位置)を示すアイコン502と、車内画像501の脇に配置され、音像の位置を示すとともに音像の位置の移動を受け付ける2種のインジケータ510、520と、登録住みのプリセット位置を選択可能に表示するプリセット位置リスト530と、が含まれている。なお、音量が含まれてもよい。
【0061】
横方向インジケータ510は、目盛り511S上に、音像の横方向の位置を示すマーク511Nと、左右の方向の移動指示を受け付けるアイコン511A、511Bと、左右方向のプリセット位置を示すとともにリセット要求を受け付けるリセットボタン511Pとを備える。
【0062】
縦方向インジケータ520は、目盛り521S上に、音像の前後方向の位置を示すマーク521Nと、前後方向の移動指示を受け付けるアイコン521F、521Rと、前後方向のプリセット位置を示すとともにリセット要求を受け付けるリセットボタン521Pとを備える。
【0063】
音像設定部107は、リセットボタン511P,521Pを、登録済みの複数のプリセット位置の中の1つに基づいて、インジケータ510、520上の対応する位置に表示する。本実施形態では、音像設定部107は、プリセット位置登録テーブル210の中の、種別211が「A:手動登録されたプリセット位置」であり、かつ登録日時213が最も新しいプリセット位置214を特定し、特定したプリセット位置214に基づいて表示する。
【0064】
もちろん、これに限定されない。音像設定部107は、種別211が「B:手動調整後に自動登録されたプリセット位置」であり、かつ最も登録日時213が新しいプリセット位置214を特定し、特定したプリセット位置214に基づいて「プリセット位置を示すアイコン511P,521P」を表示するようにしてもよい。また、種別211が「C:環境に応じて定められたプリセット位置」であるプリセット位置214を特定し、特定したプリセット位置214に基づいて表示するようにしてもよい。または、種別211にかかわらず、プリセット位置登録テーブル210の中の、最も登録日時213が新しいプリセット位置214を特定し、特定したプリセット位置214に基づいて表示してもよい。いずれの態様とするかについては、ユーザからの指示に応じて設定できるものとする。
【0065】
プリセット位置リスト530は、プリセット位置登録テーブル210に登録済みのプリセット位置を列挙する。具体的には、音像設定部107は、プリセット位置登録テーブル210から、登録されているプリセット位置214を抽出し、種別ごとに、ユーザが選択可能に表示する。ただし、座標位置214を直接表示する必要はない。ユーザが識別可能なように、名称212が付与されていれば名称を表示し、なければ登録日時213を表示する。
【0066】
例えば、音像設定部107は、種別211が「A:手動登録されたプリセット位置」の場合、名称212を表示したリセットボタン541を配置する。種別211が「B:手動調整後に自動登録されたプリセット位置」の場合、登録日時213を表示したリセットボタン551を配置する。種別211が「C:環境に応じて定められたプリセット位置」の場合、登録日時213を表示したリセットボタン561を配置する。なお、取得可能な環境情報を付加的に表示してもよい。
【0067】
さらに、プリセット位置リスト530には、登録済みのプリセット位置(名称、登録日時を表示したリセットボタン541、551、561)に対応させて、削除を受け付ける削除ボタン542、552、562が表示される。音像設定部107は、削除ボタン542、552、562が押された場合、そのボタンに対応付けられたプリセット位置のデータ(レコード216)を、プリセット位置登録テーブル210から検索し、削除する。
【0068】
音像設定モード画面500を表示中、音像設定部107は、インジケータ510、520上のリセットボタン511P、521P、または、プリセット位置リスト530内のリセットボタン541、551、561が押されたか否かを判定する。そして、いずれかのリセットボタンが押された場合のみ、押されたボタンに対応するプリセット位置へ、音像を示すアイコン502を移動させる。
【0069】
すなわち、リセットボタン511P、またはリセットボタン521Pが押された場合、音像設定部107は、これらのボタンの表示位置を決めるのに使用されたプリセット位置に、音像を示すアイコン502を移動させ、リセットする(図9(B)参照)。なお、本実施形態では、いずれのリセットボタン511P、521Pが押されも、縦、横の両方の位置をリセットする。ただし、これに限らず、押されたボタンに応じて、横方向のみ、あるいは縦方向のみを、リセットしてもよい。
【0070】
プリセット位置リスト530内のリセットボタン541、551、561が押された場合、音像設定部107は、プリセット位置登録テーブル210を参照して、押されたリセットボタン541,551,561に対応するプリセット位置を特定し、特定したプリセット位置へ、音像を示すアイコン502を移動させる(図10(B)参照)。
【0071】
次に、音像設定部107は、音像の位置の移動指示(微調整指示)を受け付けたか否か判定する。音像設定部107は、音像の位置の移動指示を、位置調整ボタン511A,511B,521F,521Rを介して受け付ける。そして、移動指示を受け付けた場合のみ、その指示に従って、音像の位置を示すアイコン502を移動させる。さらに、インジケータ510、520上の、音像の位置を示すマーク511N、521Nを、音像の位置を示すアイコン502に対応させて、移動させる。
【0072】
次に、音像設定部107は、新規登録ボタン543の押下から、プリセット位置の登録指示の有無を判定する(S105)。そして、指示を受け付けた場合のみ(S105でY)、音像の位置を示すアイコン502の現在の位置(現時点で設定された、車両領域における音像の位置)に基づいて、プリセット位置を登録する(S106)。このとき、ユーザからプリセット位置を識別可能なように名称の入力を受け付ける。
【0073】
具体的には、音像設定部107は、プリセット位置登録テーブル210に新規レコードを追加し、種別211に、「A:手動で登録されたプリセット位置」を格納し、名称212に、ユーザが入力した名称を登録し、登録日時213に、現在日時を登録し、プリセット位置214に、現時点で指定された音像の位置(X,Y)を格納する。
【0074】
次に、音像設定部107は、設定終了ボタン570の押下を判定し、設定終了要求を受け付けたか否か判定する(S107)。
【0075】
そして、音像設定部107は、設定終了要求を受け付けていない場合(S107でN)、S101に戻って処理を続ける。
【0076】
一方、音像設定部107は、設定終了要求を受け付けた場合(S107でY)、ユーザが指定した位置(現在表示している音像の位置を示すアイコン502の位置)に、音声出力における音像の位置(仮想音源の位置)を設定し(S108)、本処理を終了する。
【0077】
なお、上記のフローでは、ユーザから最終的に設定終了要求を受け付けるまでは、音像の位置の変更を受け付けるに留まり、音声出力における音像の位置を設定していない。しかし、これに限らず、ユーザから音像の位置のリセット、位置の微調整の要求を受け付けるごとに、音声出力における音像の位置を設定するようにしてもよい。
【0078】
以上、音像設定モードにおける処理フローについて説明した。
【0079】
次に、図7を用いて、プリセット位置の自動登録処理について説明する。
【0080】
このフローは、音像の設定処理(図6のS108)がなされた後に、開始される。
【0081】
音像設定部107は、現在設定されている音像の位置が、リセットされた後に移動した位置であるか否か判定する(S200)。リセットされてから移動していない場合(S200でN)、プリセット位置を登録し直す必要はないので、処理を終了する。
【0082】
一方、リセットした後に移動している場合(S200でY)、音像設定部107は、音声出力時間の計測を開始する(S201)。
【0083】
そして、計測した音声出力時間が予め定められた時間(例えば、1時間)を超えるまで待機し(S202)、超えた場合(S202でY)、音像の現在の設定位置(すなわち、リセット後に移動され、確定された位置)をプリセット位置として登録する(S203)。
【0084】
具体的には、音像設定部107は、プリセット位置登録テーブル210に新規レコードを追加し、種別211に、「B:手動調整後に自動登録されたプリセット位置」を格納し、登録日時213に、現在日時を登録し、プリセット位置214に、現時点で設定されている音像の位置(X,Y)を格納する。なお、名称212は空欄となる。ただし、ユーザから名称212の入力を受け付けて格納するようにしてもよい。
【0085】
こうして、プリセット位置を登録すると、音像設定部107は、本処理を終了する。
【0086】
かかるフローによれば、ユーザが気に入ったと思われる音像の位置を、自動的にプリセット位置として登録することができる。そして、登録されたプリセット位置は、音像設定モード(図6)において、ユーザが容易に選択できるので、音像の再設定が容易となる。
【0087】
なお、上記フローのS202では、音像設定部107は、音声の種類に限らず、音声出力時間が所定時間を超えたか否かを判定している。これに限らず、所定の種類の音声(例えば、楽曲、ラジオ)の出力時間(合計再生時間)を計測し、所定時間(例えば、1時間)を超えたか否かを判定し、超えた場合に、プリセット位置の登録を行うようにしてもよい。もちろん、音声出力時間に限定せず、音像の設定日時からの経過時間(エンジンの停止時を除いて計算してもよい)が所定時間(例えば、1時間)を超えた場合に、プリセット位置の登録を行うようにしてもよい。また、楽曲等の出力回数に応じて、プリセット位置の登録を行うようにしてもよい。例えば、音像設定部107は、上記S201では、所定の種類の音声(例えば、楽曲、ラジオ)の出力回数(楽曲の場合、再生曲数。ラジオの場合、出力開始から出力停止までの回数。)の計測を開始する。S202では、所定回数(例えば、4回)を超えたか否かを判定し、超えた場合に、S203で、プリセット位置の登録を行うようする。いずれの条件を満たした場合に、プリセット位置の登録を行うようにするかは、ユーザの指示に応じて設定することができる。
【0088】
次に、図8を参照して、環境情報に応じたプリセット位置を登録する処理について説明する。
【0089】
音像設定部107は、車両情報取得部103や現在位置算出部104を介して、定期的に環境情報の取得を行い(S300)、環境情報の変化を監視する(S302)。環境情報は、上述の通り、例えば、車内の搭乗者の数、着席位置、窓の位置ごとの開閉状態、現在位置、周辺施設、非接触キーの検知状態、などに関する情報である。なお、周辺施設の情報は、ナビゲーション処理部105により、地図データ31に基づいて、現在位置が存在する周辺の施設を検索することにより算出される。ナビゲーション処理部105は、周辺施設情報に、現在位置の存在する道路種別(高速道路上か否かなど)の情報を含めることができる。
【0090】
本処理で用いる環境情報に含める情報の種類は、ユーザの要求に応じて予め設定される。
【0091】
音像設定部107は、前回取得した環境情報と、新規に取得した環境情報とを比較して、相違があるか否か判定する。例えば、着席センサから求められる搭乗者数が変化した場合、周辺施設が公園から駅に変化した場合、現在位置が高速道路上から一般道に変化した場合、車速が低速から高速(例えば、時速50km)に変化した場合、非接触キーについて非検知状態から検知状態に変わった場合、などに、環境情報が変化したと判定する。
【0092】
そして、環境情報に変化があった場合(S301でY)、音像設定部107は、環境別プリセット位置テーブル220を参照して、S300で取得した環境情報に対応するプリセット位置222を特定する。さらに、特定したプリセット位置を、プリセット位置登録テーブル210に登録する。
【0093】
具体的には、音像設定部107は、まず、プリセット位置登録テーブル210から、種別211が「C:環境に応じて定められたプリセット位置」であるレコードを検索し、検索された場合は、そのレコードを削除する。そして、新規レコードを追加し、種別211に、「C:環境に応じて定められたプリセット位置」を格納し、登録日時213に、現在日時を登録し、プリセット位置214に、環境別プリセット位置テーブル220から特定したプリセット位置(X,Y)を格納する。なお、名称212は空欄となる。ただし、ユーザから名称212の入力を受け付けて格納するようにしてもよい。
【0094】
音像設定部107は、プリセット位置の登録後、再びS300に戻り、処理を継続する。
【0095】
かかるフローにより、最新の環境情報に適合したプリセット位置が登録される。登録されたプリセット位置は、音像設定モード(図6)において、ユーザが選択可能に表示されることになる。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0097】
本実施形態によれば、音像のプリセット位置を、工場出荷時などに設定された位置に限らず変更することができる。したがって、音像の設定が迅速かつ容易となる。また、複数のプリセット位置を登録可能であり、ユーザは、好みに応じて迅速かつ容易に音像をリセットすることができる。また、所定の条件下、プリセット位置が自動登録されるので、ユーザは、容易に都合の良い位置に音像をリセットすることができる。
【0098】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、さまざまな変形が可能である。例えば、音像設定モードの画面500におけるインジケータ510、520の表示態様、登録済みのプリセット位置の選択ボタン541,551、561の表示態様等に制限はない。複数のプリセット位置が登録されていない場合などには、プリセット位置リスト530を表示する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、車載装置の概略構成図である。
【図2】図2は、スピーカの配置を説明するための図である。
【図3】図3は、車載装置の機能構成を示す図である。
【図4】図4は、プリセット位置登録テーブルの構成図である。
【図5】図5は、環境別プリセット位置テーブルの構成図である。
【図6】図6は、音像設定モードのフロー図である。
【図7】図7は、プリセット位置の自動登録処理のフロー図である。
【図8】図8は、環境情報に応じたプリセット位置の登録処理のフロー図である。
【図9】図9は、画面遷移例である。
【図10】図10は、画面遷移例である。
【符号の説明】
【0100】
100…車載装置、
1…演算処理部、2…ディスプレイ、3…記憶装置、4…音声入出力装置、5…入力装置、7…車速センサ、8…ジャイロセンサ、9…GPS受信装置、10…通信装置、11…車両情報取得I/F
101…主制御部、102…ユーザ操作解析部、103…車両情報取得部、104…現在位置算出部、105…ナビゲーション処理部、107…音像設定部、108…出力音声取得部、109…音声加工部、110…音声出力部、111…表示処理部、120…データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声出力装置を備えた車載装置であって、
音声バランスのプリセット値の指定を受け付けるとともに、指定されたプリセット値の登録を受け付けるプリセット登録手段と、
前記音声バランスのリセット要求を受け付けるリセット要求受付手段と、
前記リセット要求受付手段がリセット要求を受け付けた場合に、前記プリセット登録手段により登録されたプリセット値に基づいて、前記音声バランスを変更するリセット手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項2】
音声出力装置を備えた車載装置であって、
音像位置のプリセット値の指定を受け付けるとともに、指定されたプリセット値の登録を受け付けるプリセット登録手段と、
前記音像位置のリセット要求を受け付けるリセット要求受付手段と、
前記リセット要求受付手段がリセット要求を受け付けた場合に、前記プリセット登録手段により登録されたプリセット値に基づいて、前記音像位置を変更するリセット手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載装置であって、
前記プリセット登録手段は、
前記音像位置の設定後、所定時間を超えた場合に、その時点で設定されている音像位置をプリセット値に登録する
ことを特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載装置であって、
前記プリセット登録手段は、
前記音像位置の設定後、所定種類の音声の出力時間が所定時間を超えた場合に、その時点で設定されている音像位置をプリセット値に登録する
ことを特徴とする車載装置。
【請求項5】
請求項2に記載の車載装置であって、
前記プリセット登録手段は、
前記音像位置の設定後、所定種類の音声の出力回数が所定回数を超えた場合に、その時点で設定されている音像位置をプリセット値に登録する
ことを特徴とする車載装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の車載装置であって、
前記プリセット登録手段は、
複数のプリセット値の登録を行い、
前記リセット要求受付手段は、
前記複数のプリセット値の中から1つの選択を受け付け、
前記リセット手段は、
前記リセット要求受付手段で受け付けたプリセット値に基づいて、前記音像位置を変更する
ことを特徴とする車載装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の車載装置であって、
車両内外の環境に関する環境情報をプリセット値に対応つけた環境別プリセット値テーブルを記憶する記憶手段と、
環境情報を取得する環境情報取得手段と、を備え、
前記プリセット登録手段は、
前記環境別プリセット値テーブルを用いて、前記環境情報取得手段で取得した環境情報に対応するプリセット値を特定し、前記音像位置のプリセット値として登録する
ことを特徴とする車載装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車載装置であって、
前記環境情報は、
車内の搭乗者の状態、窓の開閉状態、現在位置、周辺の施設、非接触キーの検知状態、のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする車載装置。
【請求項9】
音声出力装置を備えた車載装置の音声出力方法であって、
前記車載装置は、
音声バランスのプリセット値の指定を受け付けるとともに、指定されたプリセット値の登録を受け付けるプリセット登録ステップと、
前記音声バランスのリセット要求を受け付けるリセット要求受付ステップと、
前記リセット要求受付ステップがリセット要求を受け付けた場合に、前記プリセット登録ステップにより登録されたプリセット値に基づいて、前記音声バランスを変更するリセットステップと、
を行うことを特徴とする車載装置の音声出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−286184(P2009−286184A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138330(P2008−138330)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】