説明

車載装置

【課題】 確実に対歩行者事故を防止することのできる車載装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の車載装置によれば、軌跡取得手段により、歩行者の移動軌跡データが外部から取得されると、その取得された移動軌跡データに基づいて、地図記憶手段に記憶された地図上における対歩行者事故の注意箇所が、注意箇所予測手段によって予測される。歩行者の移動軌跡データは、その歩行者の通過経路の傾向を示すものである。よって、地図上における移動軌跡データの経路は、今後も、移動軌跡データに対応する歩行者が通行する可能性がある箇所である。従って、移動軌跡データを参照することによって、対歩行者事故に対する注意箇所を高精度に予測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と歩行者との間で発生する事故を防止するための車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両と移動物(他の車両や歩行者など)との衝突事故を防止するための種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特開平05−20599号公報(特許文献1)には、接近通報装置が開示されている。この特許文献1に開示される接近通報装置によれば、道路の交差点などの所定箇所(カーブミラー)に車両等の物体が接近した場合に、車両の接近が検知手段により検知され、この検知出力に応じて信号発生手段により該所定箇所に接近する他の車両などの物体に対して信号が発信される。
【0004】
一方で、信号発生手段から発生された信号が受信されると、車両に設けられた報知手段により、該車両の運転者に対して警報が報知される。また、車両に設けられた制御手段により該車両の速度が自動的に減速される。
【0005】
この特許文献1の接近通報装置は、車両と歩行者との間における事故防止に対しても利用可能である。即ち、車両と同様の信号発生手段を備える発信機を歩行者に持ち歩かせることによって、その信号を受信する手段を備えた車両は、道路の交差点などにおいて、歩行者の接近を運転者に対して報知することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平05−20599号公報(例えば、段落[0009],[0010]など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の接近通報装置を歩行者に対して応用したとしても、歩行者の現在位置を検出できるだけであるので、その次の瞬間における歩行者の挙動を予測することが不可能である。そのため、例えば、歩行者の急な飛び出し等、予測できない歩行者の挙動に起因する対歩行者事故には対応し得ないという問題点があった。
【0008】
また、歩行者の現在位置が検出できたとしても、検出された歩行者の挙動が予測できない限り、歩行者の急な飛び出し等の不測の事態に備えるためには、運転者は徐行運転を行うより他はない。しかし、車両の前方に位置する歩行者全てを徐行対象にするとなると、過剰な徐行運転によって時間が浪費されるだけでなく、運転者の心理的な負担が増大し、逆に事故の遠因になりかねないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、歩行者が過去において移動した軌跡を利用し、車両と歩行者との間において事故が発生しやすい注意箇所を高精度に予測することによって、確実に対歩行者事故を防止することのできる車載装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1記載の車載装置は、歩行者の移動軌跡データを外部から取得する軌跡取得手段と、地図データを記憶する地図記憶手段と、前記軌跡取得手段により取得した移動軌跡データに基づいて、前記地図記憶手段に記憶された地図上における対歩行者事故の注意箇所を予測する注意箇所予測手段とを備えている。
【0011】
請求項2記載の車載装置は、請求項1記載の車載装置において、前記注意箇所予測手段は、前記軌跡取得手段により取得した移動軌跡データが車道上に位置する場合に、注意箇所として予測する。
【0012】
請求項3記載の車載装置は、請求項1又は2に記載の車載装置において、目的地までの経路を設定する経路設定手段を備え、前記注意箇所予測手段は、前記軌跡取得手段により取得した移動軌跡データの示す位置が、前記経路設定手段により設定された経路上に位置した場合に、注意箇所として予測する。
【0013】
請求項4記載の車載装置は、請求項1から3のいずれかに記載の車載装置において、前記移動軌跡データと共に、当該移動軌跡データの移動速度を取得する移動速度取得手段と、その移動速度取得手段により取得された移動速度が所定値以下であるかを判定する判定手段とを備え、前記注意箇所予測手段は、前記判定手段により所定値以下であると判定された場合に、注意箇所を予測する。
【0014】
請求項5記載の車載装置は、請求項1から4のいずれかに記載の車載装置において、前記地図記憶手段は、地図データ上における施設及び当該施設の開放時間を記憶し、前記注意箇所予測手段は、前記施設の開放時間内において、前記施設を含む所定範囲内に位置する前記移動軌跡データを用いて注意箇所を予測する。
【0015】
請求項6記載の車載装置は、請求項1から5のいずれかに記載の車載装置において、自車両の位置を特定する位置特定手段と、前記歩行者の位置を取得する歩行者位置取得手段と、前記位置特定手段により特定した自車両の位置及び前記歩行者位置取得手段により取得した歩行者の位置に基づき、前記注意箇所予測手段により予測された注意箇所から所定範囲内に、前記自車両及び前記歩行者が存在するか否かを確認する確認手段と、その確認手段により前記自車両及び前記歩行者が存在すると確認された場合に、前記注意箇所予測手段により予測された注意箇所を運転者に報知する報知手段とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の車載装置によれば、軌跡取得手段により、歩行者の移動軌跡データが外部から取得されると、その取得された移動軌跡データに基づいて、地図記憶手段に記憶された地図上における対歩行者事故の注意箇所が、注意箇所予測手段によって予測される。
【0017】
歩行者の移動軌跡データは、その歩行者が過去に移動した経路を再現できるものであり、その歩行者の通過経路の傾向を示すものである。よって、地図上における移動軌跡データの経路(移動軌跡データが存在する箇所)は、今後も、移動軌跡データに対応する歩行者が通行する可能性がある箇所である。また、その移動軌跡データに対応しない歩行者が今後通過する可能性も有している箇所でもある。
【0018】
従って、移動軌跡データを参照することによって、対歩行者事故に対する注意箇所、即ち、車両と歩行者とが接触又は衝突する可能性のある箇所を高精度に予測することができるという効果がある。
【0019】
そのように、対歩行者事故に対する注意箇所が高精度で予測されると、予測された注意箇所を必要に応じて車両の運転手に報知することによって、運転手は注意箇所を意識しつつ車両を運転することができる。その結果、その注意箇所において、歩行者が不測の挙動を取ったとしても、運転手が最良な事故回避策を取ることができ、対歩行者事故を確実に防止できるのである。
【0020】
また、運転者が前方を常時注視しつつ徐行しなければならない状況の頻度が確実に低減されるので、運転者の心理的負担が軽減し、より効果的に対歩行者事故を防止することができる。
【0021】
また、対歩行者事故に対する注意箇所が高精度で予測されることによって、予測された注意箇所に実際に歩行者が存在した場合に、機械的な車両の制御(車両制御装置による車両の制御)によって歩行者を安全に回避することができる。
【0022】
なお、請求項1における「歩行者」は、自動車やバイクや自転車などの車両に乗車することなく人力で移動する者を指し、純粋な歩行だけでなく、駆け足などで移動する者も含まれる。
【0023】
請求項2記載の車載装置によれば、請求項1記載の車載装置の奏する効果に加えて、軌跡取得手段により取得した移動軌跡データが車道上に位置した場合に、注意箇所予測手段によって、その位置が注意箇所として予測されるので、例えば、車道上を歩行者の飛び出す可能性のある箇所を高精度に予測することができるという効果がある。
【0024】
即ち、車道上にある移動軌跡データは、歩行者が車道上を通行する傾向を示すものであるので、車道上に位置した移動軌跡データを注意箇所として予測することによって、対歩行者事故に対する注意箇所を高精度に予測することができるのである。従って、予測された注意箇所を車両の運転手に報知することによって、車道上を横切る歩行者の飛び出しなどに起因する対歩行者事故を効果的に防止することができる。
【0025】
請求項3記載の車載装置によれば、請求項1又は2に記載の車載装置の奏する効果に加えて、軌跡取得手段により取得した移動軌跡データの示す位置が、経路設定手段により設定された経路上に位置した場合に、注意箇所予測手段によって、その移動軌跡データの示す位置が注意箇所として予測される。よって、車両が目的地に到達するまで通行する可能性の高い経路上において、対歩行者事故に対する注意箇所を高精度に予測することができるという効果がある。
【0026】
従って、予測された注意箇所を車両の運転手に報知することによって、運転者は、所望する目的地に到達するまで、注意力を特に集中させるべき箇所を予測された注意箇所に限定することができ、運転者の心理的負担を軽減することができる。
【0027】
請求項4記載の車載装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の車載装置の奏する効果に加えて、移動速度取得手段により取得された移動軌跡データの移動速度が所定値以下であるかが判定手段により判定される。その際、移動軌跡データの移動速度が所定値以下であると判定された場合に、注意箇所予測手段によって注意箇所が予測される。よって、判定手段による判定の閾値を、歩行による移動であると判定可能な速度に設定することにより、純粋な歩行による移動軌跡データを所有する歩行者の挙動を確実に予測することができ、結果的に、対歩行者事故が発生する可能性のある箇所を高精度に予測することができるという効果がある。
【0028】
また、判定手段による判定の閾値を、歩行による移動であると判定可能な速度に設定した場合、歩行以外、即ち、車両(自動車、バイク、自転車など)搭乗の際に取得された可能性の高い移動軌跡データが注意箇所の予測に使用されないので、注意箇所が過剰に予測されることを防止でき、その結果、過剰に予測された注意箇所に基づく過剰な運転者への心理的負担を抑制することができる。
【0029】
請求項5記載の車載装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の車載装置の奏する効果に加えて、地図記憶手段には、地図データ上における施設及び当該施設の開放時間が記憶されている。そして、施設の開放時間内において当該施設を含む所定範囲内に位置する移動軌跡データを用いて、注意箇所予測手段により注意箇所が予測される。よって、歩行者が存在する可能性が高く、対歩行者事故の発生する可能性の高い開放時間帯における施設の付近を高精度に予測することができるという効果がある。
【0030】
請求項6記載の車載装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の車載装置の奏する効果に加えて、位置特定手段により自車両の位置が特定され、一方で、歩行者位置取得手段により歩行者の位置が取得されると、確認手段によって、特定された自車両の位置及び取得された歩行者の位置に基づき、注意箇所予測手段により予測された注意箇所から所定範囲内に、自車両及び歩行者が存在するか否かが確認される。そして、注意箇所から所定範囲内に自車両及び歩行者が存在すると確認された場合には、注意箇所予測手段により予測された注意箇所が、報知手段によって報知される。よって、運転者は、自車両の付近に注意箇所及び歩行者が存在することを確実に認識することができ、歩行者を意識しつつ車両を運転することができるという効果がある。その結果、その注意箇所付近において歩行者が不測の挙動を取ったとしても、運転手が最良な事故回避策を取ることができ、対歩行者事故を効果的に防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における対歩行者事故防止システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、対歩行者事故防止システム1は、車両Cに搭載され、車両Cの現在位置を表示可能なナビゲーション装置100と、この車両位置表示装置100とインターネット300を介して通信可能であり、歩行者によって携帯可能な携帯端末200とから構成されるシステムである。
【0032】
また、図1に示すように、車両Cは、上記の車両位置表示装置100の他に、インターネット300を介して携帯端末200から、その携帯端末200の所持者が過去において歩行などによる移動によって行動した軌跡を示す蓄積軌跡データ(軌跡データの蓄積体)を含む歩行者データを受信するためのアンテナ130aを備える端末情報受信装置130と、GPS(Global Positioning System)衛星400から位置情報(例えば、緯度情報及び経度情報)を受信するためのアンテナ140aを備えるGPS受信機140と、車両Cの操舵や速度を制御する車両制御装置150と、VICS(Vehicle Information and Communication System)センタなどの情報センタや渋滞情報などの蓄積されたデータベースなどから、渋滞情報のような交通情報を受信するためのアンテナ160aを備える交通情報受信機160と、車両Cの近辺を撮像可能な車載カメラ170とを備えている。
【0033】
また、図1に示すように、車両位置表示装置100は、CPU10と、ROM12と、RAM14等を備えており、これらのCPU10とROM12とRAM14とがバスライン16によって互いに接続されている。また、このバスライン16には、入出力ポート20が接続されている。
【0034】
CPU10は、車両位置表示装置100全体を制御する中央演算処理装置であり、ROM12には、このCPU10により実行される各種の制御プログラムや、その実行の際に参照される固定値データが格納されている。なお、後述する図4〜図8に示すフローチャートを実行するプログラムは、このROM12に格納されている。また、RAM14は、CPU10で実行される制御プログラムに必要な各種レジスタ群などが設定されたワーキングエリアや、処理中のデータを一時的に格納するテンポラリエリア等を有しランダムにアクセスできる書き換え可能なメモリである。
【0035】
入出力ポート20には、バスライン16を介して接続されるCPU10,ROM12,RAM14の他に、ハードディスク18(以下、HDD18と称する)と、地図データなどの種々の情報が記憶されたDVDから、情報を読み取るためのDVD装置22と、車両位置表示装置100に操作指示を入力する操作スイッチ24と、地図データや車両Cの現在位置などの各種表示情報を表示する表示器であるLCD26と、音声案内など音声を出力するスピーカ28と、端末情報受信機130と接続するためのインターフェイス30(I/F30)と、車両制御装置150と接続するためのインターフェイス40(I/F40)と、交通情報受信装置160と接続するためのインターフェイス42(I/F42)と、GPS受信機140と接続するためのインターフェイス32(I/F32)を含む位置検出器38とを備えている。
【0036】
ここで、位置検出器38は、図1に示すように、I/F32の他に、車両Cの回転角速度を検出するジャイロスコープ34と、車両Cの移動速度を検出する車速センサ36とを備えており、I/F32を介してGPS受信機140から入力された位置情報と、ジャイロスコープ34により検出された回転角速度と、車速センサ36により検出された移動速度とに基づいて、CPU10において車両Cの現在位置が求められる。
【0037】
RAM14は、受信軌跡データメモリ14aを備えている。受信軌跡データメモリ14aは、携帯端末200からインターネット300を介して送信され、端末情報受信機130により受信された歩行者データを一時的に記憶するためのメモリである。なお、この受信軌跡データメモリ14aのより具体的な構成については、図3を参照して後述する。
【0038】
HDD18は、地図データメモリ18aと、渋滞情報メモリ18bとを備えている。地図データメモリ18aは、DVD装置22によって、地図データの記録されたDVDから読み取られた地図データを記憶するメモリである。
【0039】
渋滞情報メモリ18bは、交通情報受信機160により、VICSセンタなどの情報センタやデータベースから受信した渋滞情報、即ち、どの道路がいつ渋滞したかを示す情報を記憶するメモリである。
【0040】
渋滞情報メモリ18bには、データベースから受信した過去から蓄積された渋滞情報が記憶されるので、後述するフィルタ処理A(図6参照)では、この渋滞情報メモリ18bを参照することによって、どの道路がいつ渋滞するかに対する情報を得ることができる。同様に、渋滞情報メモリ18bに、VICSセンタのようにリアルタイムの渋滞データを送信する情報センタからの渋滞情報を蓄積しておくことにより、後述するフィルタ処理A(図6参照)において、どの道路がいつ渋滞するかに関する情報を与えることができる。
【0041】
一方で、携帯端末200は、図1に示すように、携帯端末200全体を制御する中央演算処理装置であるCPU50と、このCPU50により実行される各種の制御プログラムや、その実行の際に参照される固定値データが格納されているROM52と、RAM54と、フラッシュメモリ56と、インターネット300を介して車両Cへ歩行者データを送信したり、インターネット300を介して地図データを受信するためのアンテナ58aを備える情報送受信部58と、GPS衛星400から位置情報(例えば、緯度情報及び経度情報)を受信するためのアンテナ60aを備えるGPS処理部60と、携帯端末200に操作指示を入力する操作スイッチ62と、携帯端末200の所持者の現在位置や地図データなどの各種表示情報を表示する表示器であるLCD64とを備え、これらの各構成間はバスライン70により互いに接続されている。
【0042】
ここで、GPS処理部60は、GPS衛星400から受信した位置情報をCPU50において処理可能なデータに変換し、CPU50へ出力するものである。このGPS処理部60から出力されたデータに基づいて、CPU50において、携帯端末200の現在位置、即ち、その携帯端末200の所持者の現在位置が求められる。
【0043】
RAM54は、CPU50で実行される制御プログラムに必要な各種レジスタ群などが設定されたワーキングエリアや、処理中のデータを一時的に格納するテンポラリエリア等を有しランダムにアクセスできる書き換え可能なメモリであり、現在位置メモリ54aを備えている。
【0044】
現在位置メモリ54aは、GPS衛星400から受信した位置情報に基づいて取得された携帯端末200の現在位置を示す現在位置データを記憶するメモリである。なお、この現在位置メモリ54aのより具体的な構成については、図2(a)を参照して後述する。
【0045】
フラッシュメモリ56は、書き換え可能な不揮発性のメモリであり、このフラッシュメモリ56に記憶されたデータは、携帯端末200をオフした後であっても保持される。フラッシュメモリ56は、地図データメモリ56aと、ユーザ情報メモリ56bと、軌跡データメモリ56cと、ユーザ情報送信フラグ56dと、ユーザ情報暗号化フラグ56eとを備えている。
【0046】
地図データメモリ56aは、例えば、インターネット300を介して情報センタ(非図示)から受信した地図データを記憶するメモリである。
【0047】
ユーザ情報メモリ56bは、携帯端末200の所持者に関するユーザ情報を記憶するメモリである。なお、このユーザ情報メモリ56bのより具体的な構成については、図2(b)を参照して後述する。
【0048】
軌跡データメモリ56cは、現在位置メモリ54aに記憶された現在位置データに基づいて、携帯端末200を所持者が過去において歩行によって行動した軌跡点(軌跡データ)の蓄積体を蓄積軌跡データとして記憶するメモリである。なお、この軌跡データメモリ56cのより具体的な構成については、図2(c)を参照して後述する。
【0049】
ユーザ情報送信フラグ56dは、図9を参照して後述する歩行者データ出力処理において、ユーザ情報メモリ56bに記憶されているユーザ情報を車両位置表示装置100へ送信するか否かを示すフラグである。
【0050】
携帯端末200の所持者が、車両位置表示装置100へのユーザ情報の送信を許可する場合には、その所持者による操作スイッチ62の操作によって、このユーザ情報送信フラグ56dはオンに設定される。一方、携帯端末200の所持者が、車両位置表示装置100へのユーザ情報の送信を禁止する場合には、その所持者による操作スイッチ62の操作によって、このユーザ情報送信フラグ56dはオフに設定される。
【0051】
ユーザ情報暗号化フラグ56eは、図9を参照して後述する歩行者データ出力処理において、ユーザ情報メモリ56bに記憶されているユーザ情報を車両位置表示装置100へ送信する場合に、そのユーザ情報を暗号化して送信するか否かを示すフラグである。
【0052】
携帯端末200の所持者が、ユーザ情報を暗号化して送信することを所望する場合には、その所持者による操作スイッチ62の操作によって、このユーザ情報暗号化フラグ56eはオンに設定される。一方、携帯端末200の所持者が、ユーザ情報の暗号化を所望しない場合には、その所持者による操作スイッチ62の操作によって、このユーザ情報暗号化フラグ56eはオフに設定される。
【0053】
次に、図2を参照して、携帯端末200における現在位置メモリ54a、ユーザ情報メモリ56b、及び軌跡データメモリ56cの具体的構成を説明する。図2(a)は、現在位置メモリ54aに記憶される現在位置データを示す模式図である。
【0054】
図2(a)に示すように、現在位置メモリ54aには、GPS衛星400から受信した東経データを現在位置として記憶するエリア54a1と、北緯データをを現在位置として記憶するエリア54a2とが備えられており、これらのエリア54a1及びエリア54a2にそれぞれ記憶される東経データ及び北緯データによって、携帯端末200の現在位置、即ち、携帯端末200の所持者の現在位置が規定される。
【0055】
また、図2(a)に示すように、現在位置メモリ54aは、エリア54a1及びエリア54a2の他に、地図データメモリ56aに記憶される地図データにおける、上記のように規定された携帯端末200の現在位置を含むメッシュ(以下、携帯端末200の現在位置を含むメッシュを「現在メッシュ」と称する)番号を記憶するエリア54a3と、この現在位置データを取得した時間を現在時間として記憶するエリア54a4とを備えている。
【0056】
なお、本実施形態において使用される地図のメッシュは、携帯端末200の地図データメモリ56aに記憶される地図データ及び車両位置表示装置100の地図データメモリ18aに記憶される地図データのいずれの場合も250mメッシュであるものとする。
【0057】
図2(b)は、ユーザ情報メモリ56bに記憶されるユーザ情報を示す模式図である。図2(b)に示すように、ユーザ情報メモリ56bは、携帯端末200の所持者のユーザ属性(例えば、学童、社会人、主婦など)を記憶するエリア56b1と、性別を記憶するエリア56b2と、年齢を記憶するエリア56b3と、自宅住所を記憶するエリア56b4と、職場又は学校など、携帯端末200の所持者が自宅以外で滞在頻度の高い場所の住所を記憶するエリア56b5とを備えている。なお、これらエリア56b1〜56b5に記憶される各情報は、携帯端末200の所持者により操作スイッチ62が操作されることによって入力される。
【0058】
図2(c)は、軌跡データメモリ56cに記憶される蓄積軌跡データ及び1の軌跡データ(軌跡点)を示す模式図である。図2(c)に示すように、ユーザ情報メモリ56bは、蓄積されている蓄積軌跡データを構成する軌跡データの数xを記憶するエリア56c0と、携帯端末200の所持者が過去において歩行によって行動したx個の軌跡データをそれぞれ記憶するエリア56c1〜56cxとを備えている。
【0059】
エリア56c1〜56cxは、それぞれ、エリア56cx1〜56cx4(x=1〜x)を備えている。なお、以下では、エリア56cx1〜56cx4に対し、変数xの範囲(x=1〜x)の記載を省略するが、例えば、エリア56cx1と記載した場合は、エリア56c11からエリア56cx1までのそれぞれエリアを指すことを意味する。
【0060】
この軌跡データメモリ56cには、現在位置メモリ54aに記憶された現在位置データに基づいて1の軌跡データ(軌跡点)が記憶されるので、エリア56cx1〜56cx4にはそれぞれ、図2(a)において説明したエリア54a1〜54a4に対応するデータが記憶される。
【0061】
これらの現在位置メモリ54aに記憶されている現在位置データ、及び軌跡データメモリ56cに記憶されている蓄積軌跡データに、携帯端末200の識別番号と携帯端末200のハードウェアに関する情報と携帯端末200のソフトウェアに関する情報とから構成される端末固有情報を付加したデータが、歩行者データとして、情報送受信部58からインターネット300を介して車両位置表示装置100へ送信される。
【0062】
また、この歩行者データには、後述する歩行者データ出力処理(図9参照)で説明するように、必要に応じてユーザ情報メモリ56bに記憶されているユーザ情報を付加した上で、車両位置表示装置100へ送信される。なお、以下の説明では、ユーザ情報が付加されているか否かにかかわらず、車両位置表示装置100へ送信される情報を「歩行者データ」と称するものとする。
【0063】
次に、図3を参照して、車両位置表示装置100における受信軌跡データメモリ14aの具体的構成を説明する。図3は、受信軌跡データメモリ14aに記憶されるデータを示す模式図である。
【0064】
図3に示すように、受信軌跡データメモリ14aは、携帯端末200から受信したn個の歩行者データを記憶するn個のエリア14a1〜14anを備えている。なお、以下では、特に説明がない限り、「エリア14an」と記載した場合には、エリア14a1からエリア14anまでのn個のエリアを指すものとする。
【0065】
n個のエリア14anのそれぞれに記憶される各歩行者データは、端末固有情報を記憶するエリア14an01と、ユーザ情報を記憶するエリア14an02と、携帯端末200の現在位置を示す現在位置データを記憶するエリア14an03と、蓄積されている蓄積軌跡データを構成する軌跡データの数yを記憶するエリア14an04と、y個の蓄積軌跡データを記憶するエリア14an1〜14anyとを備えている。なお、n個のエリア14anのそれぞれに含まれる軌跡データの数を、便宜上、全て変数yで表現したが、この変数yに代入される値は各歩行者データ毎に異なっていてもよい。
【0066】
受信軌跡データメモリ14aにおけるエリア14a1〜14anに記憶される歩行者データは、携帯端末200から送信された歩行者データを受信する毎に、適宜、追加又は書き換えられる。また、その一方で、適宜、新たな歩行者データの上書きによって消去される。受信軌跡データメモリ14aへの歩行者データの記憶タイミングは、本発明の要旨ではないので省略する。
【0067】
エリア14an1〜14anyは、それぞれ、蓄積データを構成する1の軌跡データを記憶するエリア14any1と、その1の軌跡データに対応付けられた注意フラグ14any2とを備えている(いずれも、n=1〜n,y=1〜y:但し、yの値は、各歩行者データに含まれる軌跡データの数)。なお、以下では、エリア14any1及び注意フラグ14any2について、変数nの範囲(n=1〜n)及び変数yの範囲(y=1〜y:但し、yの値は、各歩行者データに含まれる軌跡データの数)の記載をを省略する。
【0068】
エリア14any1にそれぞれ記憶される各軌跡データ(各軌跡点)は、図2(c)において説明したエリア56cx1〜56cx4に記憶される情報により構成される軌跡データ(軌跡点)に対応するデータが記憶される。
【0069】
一方で、注意フラグ14any2は、対応するエリア14any1に記憶される軌跡データが注意箇所であるか否かを示すフラグであり、後述するフィルタ処理A及びフィルタ処理B(それぞれ図6及び図7参照)において、エリア14any1に記憶される軌跡データが注意箇所であると予測された場合に、対応する注意フラグ14ny2がオンされる。
【0070】
次に、図4〜図9を参照して、上記のように構成された対歩行者事故防止システム1において実行される各処理について説明する。ここで、図4は、車両位置表示装置100で実行されるメイン処理を示すフローチャートである。
【0071】
このメイン処理は、車両Cの現在位置を地図と共にLCD26に表示する機能(以下、この機能を「車両位置表示機能」と称する)がオンにされると起動する処理であり、まず、車両位置表示機能がオンであるかを確認し(S1)、オンであれば(S1:Yes)、位置検出器38から出力された車両Cの位置情報、回転角速度、及び移動速度とに基づいて、車両Cの現在位置を取得する車両位置情報取得処理(S2)を実行する。
【0072】
次いで、操作スイッチ24の操作によってルートすべき目的地が設定されたかを確認し(S3)、目的地が設定されたことが確認された場合には(S3:Yes)、設定された目的地までのルート探索を行う公知のルート探索処理を実行し(S4)、S5の処理へ移行する。
【0073】
一方で、S3の処理により確認した結果、目的地の設定が確認されない場合には(S3:No)、S4の処理をスキップしてS5の処理へ移行する。
【0074】
S5では、S2の処理により取得された車両Cの現在位置を、地図データメモリ18aに記憶される地図データに対応する地図と共にLCD26に表示する車両位置表示処理を実行する。
【0075】
次いで、ルート案内中かを確認し(S6)、ルート案内中であれば(S6:Yes)、経路案内出力処理を実行し(S7)、S8の処理へ移行する。この経路案内出力処理(S7)は、S4の処理による探索結果に基づく経路案内を、LCD26に視覚的に表示すると共に、音声としてスピーカ28から出力する処理である。
【0076】
一方で、S6の処理により確認した結果、ルート案内中でなければ(S6:No)、S7の処理をスキップして、S8の処理へ移行する。
【0077】
S8では、対歩行者事故防止処理を実行する。なお、この対歩行者事故防止処理(S8)で実行される処理については、図5〜図8を参照して詳述する。対歩行者事故防止処理(S8)の実行後、S1の処理へ移行し、車両位置表示機能がオフされたことが確認されるまで、S1〜S8の処理を繰り返し実行する。そして、S1において車両位置表示機能がオフされたことが確認されると(S1:No)、このメイン処理を終了する。
【0078】
図5は、上記した対歩行者事故防止処理(S8)を示すフローチャートである。この対歩行者事故防止処理(S8)では、まず、受信軌跡データメモリ14aに記憶されているn個の歩行者データについて、全ての注意フラグ14any2をオフする(S501)。
【0079】
S501の処理後、フィルタ処理Aを実行し(S502)、次いで、フィルタ処理B(S503)を実行する。これらのフィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)はいずれも、受信軌跡データメモリ14aに記憶されているy個の歩行者データにおける全ての軌跡データ、即ち、エリア14any1に記憶されている全ての軌跡データに対し、1の軌跡データ毎にその軌跡データが注意箇所であるか否かを予測するため処理である。なお、これらのフィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)において実行される具体的処理については、図6及び図7を参照して後述する。
【0080】
フィルタ処理B(S503)の実行後、フィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)によって注意箇所であると予測された軌跡データに基づいて、車両Cの運転者に対し、注意及び警告の報知や車両制御装置150への制御指示を行う注意/警告処理(S504)を実行する。なお、注意/警告処理(S504)において実行される具体的処理については、図8を参照して後述する。
【0081】
そして、注意/警告処理(S504)の実行後、この対歩行者事故防止処理(S8)を終了する。
【0082】
図6は、上記したフィルタ処理A(S502)を示すフローチャートである。このフィルタ処理A(S502)では、まず、受信軌跡データメモリ14aにおけるエリア14any1に記憶されている各軌跡データに基づいて、n個の歩行者データのそれぞれに対応する携帯端末200の所持者の移動速度を算出する移動速度算出処理(S601)を実行する。
【0083】
この移動速度算出処理(S601)は、時間的に隣接する2つの軌跡データ(軌跡点)を用い、式[(該当軌跡データにおける位置座標−その該当軌跡データから時間的に1つ前の軌跡データにおける位置座標)/(該当軌跡データが取得された時間−その該当軌跡データから時間的に1つ前の軌跡データが取得された時間)]によって求められる。なお、軌跡データにおける位置座標は、軌跡データに含まれる東経データと北緯データとに基づいて得られる座標である。
【0084】
移動速度算出処理(S601)の実行後、各歩行者データに含まれる各軌跡データについて、携帯端末200の所持者の移動速度が歩行者速度(例えば、時速10km/h)を超えるかを確認する(S602)。なお、この「歩行者速度」は、この速度以上で移動する携帯端末200の所持者は、車両搭乗による移動など、歩行による移動でないと判定するための速度の閾値である。
【0085】
S602の処理により確認した結果、携帯端末200の所持者の移動速度が歩行者速度を超える軌跡データに対しては(S602:Yes)、その軌跡データは、携帯端末200の所持者が歩行以外の移動(例えば、車両搭乗など)の際に取得された軌跡データであるとみなされるので、このフィルタ処理Aを終了する。
【0086】
一方で、S602の処理により確認した結果、携帯端末200の所持者の移動速度が歩行者速度以下である軌跡データに対しては(S602:No)、現在が、その軌跡データに対応する道路の渋滞時間に一致するかを確認する(S603)。なお、このS603の処理において使用する道路の渋滞時間としては、渋滞情報メモリ18bに記憶されている渋滞情報が用いられる。
【0087】
S603の処理により確認した結果、渋滞時間に一致する軌跡データに対しては(S603:Yes)、その軌跡データは、携帯端末200の所持者が渋滞中の車両搭乗の際に取得された軌跡データである可能性があるので、次いで、移動速度が渋滞定義速度以下であるかを確認する(S605)。
【0088】
なお、この「渋滞定義速度」は、渋滞情報メモリ18bに記憶されている渋滞情報の取得先により定義される速度であり、例えば、5km/h,10km/h,20km/hなどの種々の速度が定義され得る。
【0089】
S605の処理により確認した結果、携帯端末200の所持者の移動速度が渋滞速度以下である軌跡データに対しては(S605:Yes)、その軌跡データは、携帯端末200の所持者が渋滞中の車両搭乗の際に取得された軌跡データであるとみなされるので、このフィルタ処理を終了する。
【0090】
一方で、S603において渋滞時間に一致しないことが確認された軌跡データ(S603:No)、及び、S605において携帯端末200の所持者の移動速度が渋滞速度を超える軌跡データ(S605:No)に対しては、その軌跡データは、携帯端末200の所持者が歩行の際に取得された軌跡データであるとみなされるので、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2をオンし(S604)、このフィルタ処理Aを終了する。
【0091】
よって、このフィルタ処理A(S502)の実行により、エリア14any1に記憶されている全ての軌跡データのうち、軌跡データの取得が携帯端末200の所持者の歩行による移動によって取得されたとみなされる軌跡データが注意箇所として予測され、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2がオンされる。
【0092】
図7は、上記したフィルタ処理B(S503)を示すフローチャートである。このフィルタ処理B(S503)では、まず、受信軌跡データメモリ14aにおけるエリア14any1に記憶されている各軌跡データについて、対応する注意フラグ14any2がオンであるかを確認する(S701)。
【0093】
S701の処理により確認した結果、注意フラグ14any2がオフである軌跡データに対しては(S701:No)、その軌跡データは、フィルタ処理A(S502)において既に注意箇所ではないと予測されたデータであるので、このフィルタ処理B(S503)を終了する。
【0094】
一方で、S701の処理により確認した結果、注意フラグ14any2がオンである軌跡データに対しては(S701:Yes)、その軌跡データが地図データにおける車道上の座標に位置する点であるかを確認する(S702)。
【0095】
S702の処理により確認した結果、地図データにおける車道上の座標に位置しない軌跡データに対しては(S702:No)、その軌跡データは車道上に位置しない安全な軌跡点であるとみなされるので、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2をオフし(S707)、このフィルタ処理B(S503)を終了する。
【0096】
一方で、S702の処理により確認した結果、地図データにおける車道上の座標に位置する軌跡データに対しては(S702:Yes)、ルート探索済みであるかを確認し(S703)、ルート探索済みであれば(S703:Yes)、地図データにおける車道上の座標に位置する軌跡データが、探索されたルート上に位置するか否かを確認する(S704)。
【0097】
S704の処理により確認した結果、探索されたルート上に位置する軌跡データに対しては(S704:Yes)、その軌跡データは車両Cの進路上に位置する注意箇所であるとみなされるので、このフィルタ処理B(S503)を終了する。
【0098】
一方で、S704の処理により確認した結果、探索されたルート上に位置しない軌跡データに対しては(S704:No)、その軌跡データは車両Cの進路上に位置しない安全な軌跡点であるとみなされるので、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2をオフし(S705)、このフィルタ処理B(S503)を終了する。
【0099】
また、S703の処理により確認した結果、ルート探索済みでなければ(S703:No)、S702の処理により地図データにおける車道上の座標に位置すると判定された軌跡データが、車両Cが現在位置するメッシュ(以下、このような車両Cが現在位置するメッシュもまた「現在メッシュ」と称する)又は現在メッシュの近傍にあるメッシュ(以下、「近傍メッシュ」と称する)上に位置するかを確認する(S706)。
【0100】
なお、S706の処理において使用される「近傍メッシュ」は、現在メッシュの近傍にある種々の数のメッシュを取り得るが、本実施形態では、「近傍メッシュ」を現在メッシュを中心とする5×5=25枚のメッシュであるとするが、近傍メッシュの数は適宜変更してもよい。また、現在メッシュの位置が近傍メッシュの中心であることに限定されず、現在メッシュとその近傍のメッシュを含む複数のメッシュであればよい。
【0101】
S706の処理により確認した結果、現在メッシュ又は近傍メッシュ上に位置する軌跡データに対しては(S706:Yes)、その軌跡データは車両Cに近い注意箇所であるとみなされるので、このフィルタ処理B(S503)を終了する。
【0102】
一方で、S706の処理により確認した結果、現在メッシュ又は近傍メッシュ上に位置しない軌跡データに対しては(S706:No)、その軌跡データは車両Cから離れており、安全な軌跡点であるとみなされるので、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2をオフし(S707)、このフィルタ処理B(S503)を終了する。
【0103】
よって、このフィルタ処理B(S503)の実行により、エリア14any1に記憶されている全ての軌跡データのうち、携帯端末200の所持者が、車両Cの進路上及び車両Cの近くにおける車道上を通行したことによって取得されたとみなされる軌跡データが注意箇所として予測され、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2をオンのまま維持し、それ以外の安全であるとみなされる軌跡データについては対応する注意フラグ14any2がオフされる。
【0104】
従って、フィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)を実行した結果として、車両Cの進路上及び車両Cの近くにおける車道上を歩行によって通行したことを示す軌跡点(軌跡データ)が注意箇所として予測されたことになる。
【0105】
図8は、上記した注意/警告処理(S504)を示すフローチャートである。この注意/警告処理(S504)では、まず、受信軌跡データメモリ14aにおけるエリア14any1に記憶されている各軌跡データについて、対応する注意フラグ14any2がオンであるかを確認する(S801)。
【0106】
S801の処理により確認した結果、注意フラグ14any2がオフである軌跡データに対しては(S801:No)、その軌跡データは、フィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)において安全であるとみなされたデータであるので、この注意/警告処理(S504)を終了する。
【0107】
一方で、S801の処理により確認した結果、注意フラグ14any2がオンである軌跡データに対しては(S801:Yes)、その軌跡データと車両Cの現在位置との距離が安全距離である700m以下であるかを確認する(S802)。
【0108】
なお、「安全距離」は、その距離を越えた位置に歩行者が存在した場合であっても、運転者の操作によって、その実在する歩行者を安全に回避できると判定するための距離の閾値である。本実施形態では、この安全距離を一律700mであるとしたが、車両Cの速度やブレーキ能力によって適宜変動させるようにしてもよい。
【0109】
S802の処理により確認した結果、車両Cの現在位置までの距離が700mを超えている軌跡データに対しては(S802:No)、その軌跡データの付近に歩行者が存在したとしても、安全に回避可能な距離であるとみなされたデータであるので、この注意/警告処理(S504)を終了する。
【0110】
一方で、S802の処理により確認した結果、車両Cの現在位置までの距離が700m以下にある軌跡データに対しては(S802:Yes)、その軌跡データの付近に歩行者が実在するかを確認する(S803)。
【0111】
このS803の処理において、軌跡データ付近に実在する歩行者を確認する方法の1つとしては、受信軌跡データメモリ14aにおけるエリア14an03に記憶されている携帯端末200の現在位置(即ち、携帯端末200の所持者の現在位置)を示す現在位置データを利用することができる。
【0112】
また、軌跡データ付近に実在する歩行者を確認する別の方法として、車載カメラ170の映像や、赤外センサや超音波センサのようなセンサ手段による歩行者の検出など、携帯端末200から送信された歩行者データを利用しない方法を利用することができる。車載カメラ170の映像などのように、携帯端末200から送信された歩行者データを利用しない方法を利用することによって、携帯端末200を所持しない歩行者に対しても、軌跡データに基づいて予測された注意箇所において、後述するような十分な注意喚起を図ることができ、その結果として、対歩行者事故を効果的に防止できる。
【0113】
S803の処理により、軌跡データ付近に実在する歩行者が確認された場合には(S803:Yes)、確認された歩行者と車両Cの現在位置との距離が至近距離(最大減速により停止できる最短の距離以下)であるかを確認する(S804)。
【0114】
S804の処理により確認した結果、確認された歩行者と車両Cの現在位置との距離が至近距離である場合には(S804:Yes)、車両制御装置150に対し、最大減速及び操舵による回避を指示する(S805)。
【0115】
S805の処理により、車両制御装置150に対して最大減速及び操舵による回避が指示された結果として、車両Cは、車両制御装置150の制御によって、最大減速で制動されると共に、操舵による歩行者回避を行う。
【0116】
S805の処理後、所定の警告表示をLCD26に表示する警告表示処理を実行し(S806)、この注意/警告処理(S504)を終了する。
【0117】
一方で、S804の処理により確認した結果、確認された歩行者と車両Cの現在位置との距離が至近距離でない場合には(S804:No)、歩行者と車両Cの現在位置との距離が、0.4G減速による停止が可能な距離以下であるかを確認する(S807)。
【0118】
S807の処理により確認した結果、確認された歩行者と車両Cの現在位置との距離が、0.4G減速による停止が可能な距離以下である場合には(S807:Yes)、車両制御装置150に対し、最大減速を指示し(S808)、警告表示処理を実行して(S806)、この注意/警告処理(S504)を終了する。
【0119】
S808の処理により、車両制御装置150に対して最大減速が指示された結果として、車両Cは、車両制御装置150の制御によって、最大減速で制動される。
【0120】
一方で、S807の処理により確認した結果、確認された歩行者と車両Cの現在位置との距離が、0.4G減速による停止が可能な距離より長い場合には、(S807:No)、歩行者と車両Cの現在位置との距離が、0.1G減速による停止が可能な距離以下であるかを確認する(S809)。
【0121】
S809の処理により確認した結果、確認された歩行者と車両Cの現在位置との距離が、0.1G減速による停止が可能な距離以下である場合には(S809:Yes)、車両制御装置150に対し、0.1G減速を指示し(S810)、警告表示処理を実行して(S806)、この注意/警告処理(S504)を終了する。
【0122】
S810の処理により、車両制御装置150に対して0.1G減速が指示された結果として、車両Cは、車両制御装置150の制御によって、0.1G減速で制動される。
【0123】
一方で、S809の処理により確認した結果、確認された歩行者と車両Cの現在位置との距離が、0.1G減速による停止が可能な距離より長い場合には(S809:No)、警告表示処理(S806)より警告レベルの低い注意喚起表示をLCD26に表示する注意喚起表示処理を実行し(S812)、この注意/警告処理(S504)を終了する。
【0124】
また、S803の処理により確認した結果、軌跡データ付近に実在する歩行者が確認されなかった場合も(S803:No)、所定の注意喚起表示をLCD26に表示する注意喚起表示処理を実行し(S812)、この注意/警告処理(S504)を終了する。
【0125】
よって、この注意/警告処理(S504)の実行により、注意箇所であると予測された軌跡データ付近に実在する歩行者が確認された場合には、その確認された歩行者と車両Cの現在位置との距離に応じて、各場合において最も適切な指示が車両制御装置150へ出力されるので、歩行者との接触又は衝突(対歩行者事故)を効果的に防止することができる。
【0126】
また、歩行者と車両Cの現在位置との距離に応じて、各場合において適切な警告表示又は注意喚起表示がLCD26に表示されるので、運転者は、車両Cの現在位置に対して注意すべき歩行者がいることを視覚的に認識することができる。その結果、運転者は、その視覚的認識に基づいて、対歩行者事故を防止するための最良の策を講じることができる。
【0127】
また、注意箇所であると予測された軌跡データ付近に実在する歩行者が確認されなかった場合であっても、注意箇所と予測された軌跡データと車両Cとの距離が安全距離より短い場合には、LCD26に注意喚起表示が表示されるので、運転者は、注意して通行すべき場所を確実に認識することができる。その結果として、運転者は、その注意して通行すべき場所を意識しつつ運転できるので、対歩行者事故を効果的に防止できる。
【0128】
また、上記のように、注意箇所であると予測された軌跡データ付近に実在する歩行者の存在状況に応じて、存在する場合には、存在しない場合に比べてより高度な警告表示や車両制御装置150への制御指示出力を行う。よって、注意箇所であると予測された軌跡データ付近に存在しない場合には、過剰な徐行運転を防止することができ、運転者への負担を軽減することができる。
【0129】
なお、この注意/蓄積処理(S504)において、S801の判断処理によってYesと判断された後、S802の処理を実行する前に、注意フラグ14any2がオンである軌跡データを統計的に処理する統計処理を設け、その統計処理を実行した結果、軌跡データの出現率の高いとされた注意箇所を、S802以降の処理において重要な注意箇所として扱うように構成してもよい。このように統計処理を実行することによって、より効果的に対歩行者事故防止を図ることができる。
【0130】
次に、図9を参照して、携帯端末200における、軌跡データの蓄積、及び車両位置表示装置100への歩行者データの出力について説明する。図9は、携帯端末200で実行される歩行者データ出力処理を示すフローチャートである。なお、この図9に示すフローチャートを実行するプログラムは、このROM52に格納されている。
【0131】
この歩行者データ出力処理は、携帯端末200がオンされている間、所定時間毎(例えば、5秒毎)に起動する処理である。この歩行者データ出力処理が起動すると、まず、GPS衛星400から受信した位置情報に基づいて、携帯端末200の現在位置を示す現在位置データを取得し(S901)、取得した現在位置データを現在位置メモリ54aに記憶する(S902)。
【0132】
S902の処理後、現在位置メモリ54aにおけるエリア54a3に記憶される現在メッシュ番号に基づいて、軌跡データメモリ56cに蓄積された蓄積軌跡データを構成する軌跡データのうち、現在メッシュ及び隣接メッシュ内に位置する軌跡データがあるかを確認する(S903)。なお、本実施形態では、「隣接メッシュ」は、現在メッシュを中心とする3×3=9枚のメッシュであるとするが、隣接メッシュの数は適宜変更してもよい。
【0133】
S903の処理により確認した結果、軌跡データメモリ56cに記憶されている軌跡データの中に、現在メッシュ及び隣接メッシュ内に位置する軌跡データがある場合には(S903:Yes)、軌跡データメモリ56cから、現在メッシュ及び隣接メッシュ内に位置する軌跡データを抽出する(S904)。
【0134】
S904の処理後、ユーザ情報送信フラグ56dがオンであるかを確認し(S905)、ユーザ情報送信フラグ56dがオンであれば(S905:Yes)、ユーザ情報暗号化フラグ56eがオンであるかを確認する(S906)。
【0135】
S906の処理により確認した結果、ユーザ情報暗号化フラグ56eがオンであれば(S906:Yes)、S904において抽出された軌跡データと現在位置データと暗号化されたユーザ情報と端末固有情報とを、歩行者データとして、現在メッシュ及び隣接メッシュ内の車両Cに対し、インターネット300を介してブロードキャスト発信する(S907)。
【0136】
S907の処理の結果として、現在メッシュ及び隣接メッシュ内に位置する車両Cの車両位置表示装置100は、S904において抽出された軌跡データと現在位置データと暗号化されたユーザ情報と端末固有情報とから構成される歩行者データを受信することになる。
【0137】
このように、携帯端末200の所持者がユーザ情報暗号化フラグ56eがオンされるように設定を予め行っておくことにより、S907の処理によって、個人情報であるユーザ情報が暗号化されて送信されることになる。従って、現在メッシュ及び隣接メッシュ内に位置する不特定多数の車両Cに送信した個人情報が、意に反して利用されたことに基づく被害を防止することができる。
【0138】
一方で、S906の処理により確認した結果、ユーザ情報暗号化フラグ56eがオフであれば(S906:No)、S904において抽出された軌跡データと現在位置データと暗号化されないユーザ情報と端末固有情報とを、歩行者データとして、現在メッシュ及び隣接メッシュ内の車両Cに対し、インターネット300を介してブロードキャスト発信する(S913)。
【0139】
S913の処理の結果として、現在メッシュ及び隣接メッシュ内に位置する車両Cの車両位置表示装置100は、S904において抽出された軌跡データと現在位置データと暗号化されないユーザ情報と端末固有情報とから構成される歩行者データを受信することになる。
【0140】
また、S905の処理により確認した結果、ユーザ情報送信フラグ56dがオフであれば(S905:No)、S904において抽出された軌跡データと現在位置データと端末固有情報とを、歩行者データとして、現在メッシュ及び隣接メッシュ内の車両Cに対し、インターネット300を介してブロードキャスト発信する(S912)。
【0141】
S912の処理の結果として、現在メッシュ及び隣接メッシュ内に位置する車両Cの車両位置表示装置100は、S904において抽出された軌跡データと現在位置データと端末固有情報とから構成される歩行者データを受信することになる。
【0142】
よって、携帯端末200の所持者がユーザ情報送信フラグ56dがオフされるように予め設定した場合には、S912の処理により、ユーザ情報がブロードキャスト発信されることはない。従って、携帯端末200の所持者の意に反した個人情報の発信を防止することができる。
【0143】
S903の処理により確認した結果、軌跡データメモリ56cに記憶されている軌跡データの中に、現在メッシュ及び隣接メッシュ内に位置する軌跡データがない場合には(S903:No)、S907,S912,S913のような軌跡データの発信を行うことなく、S908の処理へ移行する。
【0144】
よって、携帯端末200の所持者の現在位置からある程度離れている位置の軌跡データは発信されないので、通信量を抑制することができ、通信量の多さに伴う通信障害の発生などを抑制できる。
【0145】
また、S907,S912,S913の処理後、S908の処理へ移行する。S908では、携帯端末200の所持者の現在位置は、軌跡取得除外対象領域であるかを確認する。
【0146】
なお、この「軌跡取得除外対象領域」は、携帯端末200における軌跡データの取得を禁止する領域である。本実施形態では、携帯端末200の所持者が滞在する頻度の高い場所を中心とする所定範囲の領域を軌跡取得除外領域とする。具体的には、ユーザ情報メモリ56bにおけるエリア56b4に記憶される、携帯端末200の所持者の自宅住所を中心とする所定範囲の領域と、エリア56b5に記憶される、携帯端末200の所持者が自宅以外で訪れる頻度の高い場所の住所を中心とする所定範囲の領域とを軌跡取得除外対象領域とする。
【0147】
S908の処理により確認した結果、携帯端末200の所持者の現在位置が軌跡取得除外対象位置でなければ(S908:No)、現在位置メモリ54aに記憶される現在位置データを、軌跡データとして、軌跡データメモリ56cに記憶(蓄積)し(S909)、S910の処理へ移行する。
【0148】
一方で、S908の処理により確認した結果、携帯端末200の所持者の現在位置が軌跡取得除外対象位置であれば(S908:Yes)、S909の処理をスキップして、S910の処理へ移行する。
【0149】
よって、S909,S910の処理により、携帯端末200の所持者が滞在する頻度の高い場所を中心とする所定範囲の領域(軌跡取得除外対象領域)では、軌跡データ200が蓄積されないので、無駄に重複する軌跡データの取得が抑制されてメモリが無駄に使われることを抑制することができる。
【0150】
S910では、現在位置メモリ54aをクリアする。次いで、軌跡データメモリ56cに記憶されている軌跡データのうち、エリア56cx4に記憶される軌跡データの取得時間を参照して、1ヶ月以上前に取得された軌跡データを消去し(S911)、この歩行者データ出力処理を終了する。
【0151】
S911の処理により、ある程度古いデータは自動的に消去されるので、手動による消去に頼らなくとも、新たな軌跡データを記憶するためのメモリ容量を確保することができる。なお、本実施形態では、S911の処理において消去する軌跡データを1ヶ月以上前のものとしたが、軌跡データが消去されるまでの期間はこれに限定されるものではない。また、この期間を適宜設定できるように構成してもよい。
【0152】
以上説明したように、この第1実施形態における対歩行者事故防止システム1は、携帯端末200の所持者の位置を蓄積した蓄積軌跡データを参照するので、対歩行者事故に対する注意箇所、即ち、車両と携帯端末の所持者を含む歩行者とが接触又は衝突する可能性のある箇所を高精度に予測することができる。
【0153】
その理由としては、地図上における蓄積データの存在箇所は、今後も、その蓄積データを蓄積した携帯端末の所持者が通行する可能性があり、また、携帯端末の所持者以外の他の移動者が今後通過する可能性も有している箇所でもあるからである。
【0154】
そして、対歩行者事故に対する注意箇所が高精度で予測されると、予測された注意箇所を必要に応じて車両Cの運転手に報知することによって、運転手は注意箇所を意識しつつ車両を運転することができる。その結果、その注意箇所において、歩行者が不測の挙動を取ったとしても、運転手が最良な事故回避策を取ることができ、対歩行者事故を確実に防止できるのである。
【0155】
次に、図10を参照して、本発明の対歩行者事故防止システム1における第2実施形態について説明する。
【0156】
上記した第1実施形態の対歩行者事故防止システム1では、受信軌跡データメモリ14aに記憶されているy個の歩行者データにおける全ての軌跡データに対し、1の軌跡データ毎にその軌跡データが注意箇所であるか否かを予測するため処理として、フィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)を実行するように構成した。
【0157】
これにに対し、この第2実施形態の対歩行者事故防止システム1では、フィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)に換えて、以下で説明するフィルタ処理Cを実行するものである。なお、この第2実施形態では、フィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)がフィルタ処理C(図10参照)に置換される以外は、第1実施形態と同一であるので、それら同一の部分に関する説明は省略する。
【0158】
図10は、フィルタ処理Cを示すフローチャートであり、このフィルタ処理Cでは、まず、受信軌跡データメモリ14aにおけるエリア14any1に記憶されている各軌跡データについて、軌跡データが、地図データにおける横断歩道の座標に一致するかを確認する(S1001)。
【0159】
S1001により確認した結果、地図データにおける横断歩道の座標に位置しない軌跡データに対しては(S1001:No)、その軌跡データは、横断歩道以外を通行した際に取得された軌跡データであるとみなされるので、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2をオンし(S1002)、このフィルタ処理Cを終了する。
【0160】
一方で、S1001により確認した結果、地図データにおける横断歩道の座標に位置する軌跡データに対しては(S1001:Yes)、その横断歩道が信号のある横断歩道であるか否かを確認する(S1003)。
【0161】
S1003の処理により確認した結果、信号のある横断歩道であれば(S1003:Yes)、軌跡データが横断歩道を通過した時間が青信号のタイミングであったかを確認する(S1004)。なお、S1004において、軌跡データが横断歩道を通過した時間は、その軌跡データに含まれる軌跡データの取得時間により得られる。
【0162】
また、青信号のタイミングは、信号スケジュールを情報として発信する情報センタから、交通情報受信機160を介して受信したものを利用することができる。交通情報受信機160を介して受信した信号スケジュールは、HDD18内に設けた信号スケジュールメモリ(非図示)に記憶されている。あるいは、信号に設けた発信機から信号スケジュールデーや点灯中の信号の色を示す点灯信号を携帯端末200に発信し、それを軌跡データの一部として記憶したものを利用するような構成であってもよい。
【0163】
S1004の処理により確認した結果、横断歩道を通過した時間が青信号のタイミングにない軌跡データに対しては(S1004:No)、その軌跡データは、横断歩道を青信号以外(赤信号又は黄信号)で通過した際に取得された軌跡データであるとみなされるので、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2をオンし(S1002)、このフィルタ処理Cを終了する。
【0164】
一方で、S1003において信号のない横断歩道の座標に一致することが確認された軌跡データ(S1003:No)、及び、S1004において横断歩道を通過した時間が青信号のタイミングであったことが確認された軌跡データ(S1004:Yes)に対しては、その軌跡データは、安全な軌跡点であるとみなされるので、フィルタ処理Cを終了する。
【0165】
よって、このフィルタ処理Cの実行により、エリア14any1に記憶されている全ての軌跡データのうち、横断歩道を通過した時間が青信号以外のタイミングであった軌跡データ、及び横断歩道以外を通行した際に取得された軌跡データが注意箇所として予測され、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2がオンされる。
【0166】
その結果として、このフィルタ処理Cの後で実行される注意/警告処理では、フィルタ処理Cによって、注意フラグ14any2がオンされた軌跡データに基づいて、車両制御装置150への制御指示の出力やLCD26への表示が行われる。
【0167】
信号が青信号でない時間帯(通行が許可されていない時間帯)を通過したことにより取得された軌跡データは、信号を無視して横断歩道を通過した者が過去にいたことを示すものであり、今後も、信号を無視して横断歩道を通過する歩行者がいる可能性のある軌跡点を示すものである。従って、この第2実施形態のように、横断歩道を通過することが許可されていない時間帯に取得された軌跡データを注意箇所と予測することにより、信号を無視して横断歩道を通過するかもしれない歩行者の存在を、運転者に、LCD26への表示によって視覚的に認識させたることができる。また、実際に信号を無視して横断歩道を通過する歩行者がいた場合であっても、車両制御装置150への制御指示によって歩行者との接触又は衝突を回避することができる。その結果として、対歩行者事故を効果的に防止することができる。
【0168】
次に、図11を参照して、本発明の対歩行者事故防止システム1における第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、第1実施形態におけるフィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)に換えて、以下で説明するフィルタ処理Dを実行するものである。
【0169】
この第3実施形態における車両位置表示装置100のHDD18は、施設メモリ(非図示)を備えている。この非図示の施設メモリは、商店や病院などの施設毎に、施設の所在位置(地図データに対応する座標)と、営業時間や開院時間などの施設の開放時間とを記憶するメモリである。この施設メモリに記憶される情報は、インターネット300を介して所定のサーバ(非図示)などから受信したり、情報が記録されたDVDをDVD機器22で読み込むなどの各種方法によって取得することができる。
【0170】
なお、この第3実施形態では、HDD18に非図示の施設メモリが設けられていることと、フィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)がフィルタ処理D(図11参照)に置換されている以外は、第1実施形態と同一であるので、それら同一の部分に関する説明は省略する。
【0171】
図11は、フィルタ処理Dを示すフローチャートであり、このフィルタ処理Dでは、まず、受信軌跡データメモリ14aにおける全てのエリア14any1に記憶されている各軌跡データについて、軌跡データの近くに、施設メモリ(非図示)に記憶されている施設があるかを確認する(S1101)。
【0172】
S1101により確認した結果、その近くに施設メモリ(非図示)に記憶されている施設があった軌跡データに対しては(S1101:Yes)、軌跡データの取得時間が、施設メモリ(非図示)に記憶されている施設の開放時間中(例えば、営業時間中や開院中)であるかを確認する(S1102)。
【0173】
S1102により確認した結果、軌跡データの取得時間が、施設メモリ(非図示)に記憶されている施設の開放時間中であれば(S1102:Yes)、現在が施設の開放時間中であるかを確認する(S1103)。
【0174】
S1103により確認した結果、現在が施設の開放時間中であれば(S1103:Yes)、その軌跡データに対応する注意フラグ14any2をオンし(S1104)、このフィルタ処理Dを終了する。
【0175】
一方で、S1101において、施設メモリ(非図示)に記憶されている施設の近くにないことが確認された軌跡データ(S1101:No)、S1102において、施設メモリ(非図示)に記憶されている施設の開放時間外に通過したことが確認された軌跡データ(S1102:No)に対しては、その軌跡データは、安全な軌跡点であるとみなされるので、フィルタ処理Dを終了する。また、S1103において現在が施設の開放時間外であることが確認された場合もまた(S1103:No)、フィルタ処理Dを終了する。
【0176】
よって、このフィルタ処理Dの実行により、開放時間中の施設の近くを過去に通行した者によって取得された軌跡データが存在した場合に、現在がその施設の営業中であれば、その軌跡データは注意箇所として予測され、対応する注意フラグ14any2がオンされる。
【0177】
その結果として、このフィルタ処理Cの後で実行される注意/警告処理では、フィルタ処理Cによって、注意フラグ14any2がオンされた軌跡データに基づいて、車両制御装置150への制御指示の出力やLCD26への表示が行われる。
【0178】
施設の開放時間中は、その近辺における歩行者の往来が開放時間外に比べて格段に増大するので、この第3実施形態のように、開放時間中の施設の近くを過去に通行した者によって取得された軌跡データが存在し、かつ、現在がその施設の営業中である場合に、その軌跡データを注意箇所として予測することにより、効果的に対歩行者事故防止を図ることができる。
【0179】
次に、図12を参照して、本発明の対歩行者事故防止システム1における第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、第1実施形態におけるフィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)に換えて、以下で説明するフィルタ処理Eを実行するものである。
【0180】
なお、この第4実施形態では、フィルタ処理A(S502)及びフィルタ処理B(S503)がフィルタ処理E(図12参照)に置換されている以外は、第1実施形態と同一であるので、それら同一の部分に関する説明は省略する。
【0181】
図12は、フィルタ処理Eを示すフローチャートであり、このフィルタ処理Eでは、まず、受信軌跡データメモリ14aに記憶される各歩行者データについて、エリア14an2に記憶されているユーザ情報に含まれるユーザ属性が学童を示すものであるかを確認する(S1201)。
【0182】
S1201の処理により確認した結果、ユーザ情報に含まれるユーザ属性が学童を示す歩行者データに対しては(S1201:Yes)、今日が登校日であるかを確認し(S1202)、今日が登校日であれば(S1202:Yes)、現在が登下校時間帯であるかを確認する(S1203)。
【0183】
なお、登校日及び登下校時間帯に関する情報は、学校又は所定の機関などによって、インターネット300などを介して公表される登校日及び登下校時間帯を用いることができる。あるいは、特定の曜日(例えば、月曜日〜金曜日)を登校日とし、特定の時間帯(例えば、平日の7:00〜8:30及び15:00〜17:00)を登下校時間帯としてもよい。
【0184】
S1203の処理により確認した結果、現在が登下校時間帯であれば(S1203:Yes)、スクールゾーン警告処理を実行し(S1204)、このフィルタ処理Eを終了する。このスクールゾーン警告処理(S1204)は、ユーザ属性が学童を示す歩行者データに含まれる軌跡データのうち、取得時間が登校日の登下校時間である軌跡データを含むメッシュが、車両Cの現在位置を含むメッシュと同じであった場合に、スクールゾーン内にいることを警告するスクールゾーン警告をLCD26に表示する処理である。
【0185】
S1201の処理により確認した結果、ユーザ情報に含まれるユーザ属性が学童を示さない歩行者データに対しては(S1201:No)、S1202〜S1204の処理を実行することなくフィルタ処理Eを終了する。
【0186】
また、S1202の処理により確認した結果、今日が登校日でない場合(S1202:No)、及び、S1203の処理により確認した結果、現在が登下校時間帯でない場合(S1203:No)もまた、フィルタ処理Eを終了する。
【0187】
学童を示すユーザ属性を含む軌跡データであって、登校日の登下校時間帯に取得された軌跡データは、学校の登下校時に取得された軌跡データであるので、その軌跡データを対歩行者事故の注意箇所であると予測することができる。
【0188】
上記したフィルタ処理Dを実行した結果、車両Cが、学童という特定のユーザ属性を含む軌跡データに対し、登校日の登下校時間帯に取得された軌跡データを含むメッシュと、登校日の登下校時間帯に同じメッシュに位置した場合には、その車両Cの運転者に対し、例外なくスクールゾーン警告が運転者に対して報知される。
【0189】
その結果として、車両Cの運転者は、現在位置が学童の通行するスクールゾーンであることを認識しつつ運転できるので、学童である歩行者が不測の挙動を取ったとしても、運転手が最良な事故回避策を取ることができ、対歩行者事故を確実に防止できる。
【0190】
この第5実施形態のように、ユーザ情報に含まれるユーザ属性や性別や年齢のように、携帯端末200の所持者の行動様式が区別できる情報を利用することによって、行動様式に応じた注意箇所を高精度に予測することができ、その結果として、効率的に対歩行者事故防止を図ることができる。
【0191】
なお、この第5実施形態では、行動様式を区別可能な情報としてユーザ属性を使用し、そのユーザ属性が学童である場合について説明したが、学童に対して限定されるものではなく、例えば、ユーザ属性が主婦であった場合には、商店(スーパー)などの営業日及び営業時間を利用して同様の処理を行うことができる。
【0192】
次に、図13及び図14を参照して、本発明の対歩行者事故防止システム1における第5実施形態について説明する。
【0193】
上記した第1実施形態の対歩行者事故防止システム1では、携帯端末200からインターネット300を介して送信され、端末情報受信機130により受信された歩行者データが、車両表示装置100における受信軌跡データメモリ14aに一時的に記憶されるように構成されていた。受信軌跡データメモリ14aに一時的に記憶された歩行者データは、携帯端末200から歩行者データを受信する毎に、適宜、追加又は書き換えられたり、新たな歩行者データの上書きによって消去される。
【0194】
これに対し、この第5実施形態の対歩行者事故防止システム1では、携帯端末200から送信された歩行者データを不揮発的に記憶する車側軌跡データメモリ18c(図13参照)をHDD18に設け、携帯端末200から送信された歩行者データを蓄積し歩行者データのデータベースとして利用するものである。
【0195】
なお、この第5実施形態では、HDD18に車側軌跡データメモリ18c(図13参照)が設けられていることと、図5〜図8に示すフローチャートにおける各処理において、受信軌跡データメモリ14aに記憶されているy個の歩行者データにおける全ての軌跡データに加えて、車側軌跡データメモリ18c(図13参照)に記憶されているm個の歩行者データにおける全ての軌跡データを利用することと、データ蓄積/出力処理(図14参照)を実行すること以外は、第1実施形態と同一であるので、それら同一の部分に関する説明は省略する。
【0196】
図13は、車両位置表示装置100のHDD18に設けられた車側軌跡データメモリ18cに記憶されるデータを示す模式図である。
【0197】
ここで、この車側軌跡データメモリ18cには、図14を参照して後述するデータ蓄積/出力処理(S505)により、受信軌跡データメモリ14aに記憶される1の歩行者データのうち、エリア14an03に記憶される現在位置データを除いた部分が記憶される。そのため、図13に示すように、車側軌跡データメモリ18cは、m個の歩行者データを記憶するm個のエリア18c1〜18cmを備えている。エリア18c1〜18cmに記憶される各歩行者データは、それぞれ、端末固有情報を記憶するエリア18cm01と、ユーザ情報を記憶するエリア18cm02と、蓄積されている蓄積軌跡データを構成する軌跡データの数zを記憶するエリア18cm04と、z個の蓄積軌跡データを記憶するエリア18cm1〜18cmzとを備えている(いずれもm=1〜m)。
【0198】
エリア18cm1〜18cmzは、それぞれ、蓄積データを構成する1の軌跡データを記憶するエリア18cmz1と、その1の軌跡データに対応付けられた注意フラグ18cmz2とを備えている(いずれも、m=1〜m,z=1〜z:但し、zの値は、各歩行者データに含まれる軌跡データの数)。エリア18cmz1(m=1〜m,z=1〜z:但し、zの値は、各歩行者データに含まれる軌跡データの数)にそれぞれ記憶される各軌跡データ(各軌跡点)は、受信軌跡データメモリ14aにおける軌跡データを記憶するエリア14any1と同様に、図2(c)において説明したエリア56cx1〜56cx4に記憶される情報により構成される軌跡データ(軌跡点)に対応するデータが記憶される。
【0199】
なお、エリア18cm01に記憶される端末固有情報は、受信軌跡データメモリ14aにおける端末固有情報を記憶するエリア14an01に対応するデータである。また、エリア18cm02に記憶されるユーザ情報は、受信軌跡データメモリ14aにおけるユーザ情報を記憶するエリア14an02に対応するデータである。
【0200】
また、m個のエリア18c1〜18cmに記憶される歩行者データに対し、対応する蓄積軌跡データを構成する軌跡データの数を、便宜上、全て変数zで表現したが、この変数zに代入される値は各歩行者データ毎に異なっていてもよい。
【0201】
注意フラグ18cmz2(m=1〜m,z=1〜z:但し、zの値は、各歩行者データに含まれる軌跡データの数)は、対応するエリア18cmz1に記憶される軌跡データが注意箇所であるか否かを示すフラグであり、フィルタ処理A及びフィルタ処理B(それぞれ図6及び図7参照)において、エリア18cmz1に記憶される軌跡データが注意箇所であると予測された場合に、対応する注意フラグ18cmz2がオンされる。
【0202】
次に、図14を参照して、受信軌跡データメモリ14aから車側軌跡データメモリ18cへの歩行者データの蓄積について説明する。図14は、車両位置表示装置100で実行されるデータ蓄積/出力処理(S505)を示すフローチャートである。
【0203】
この軌跡データ蓄積処理(S505)は、受信軌跡データメモリ14aに記憶されている歩行者データを、車側軌跡データメモリ18cへ移動する処理であり、対歩行者事故防止処理(S8,図5参照)における注意/警告処理(S504)の後に実行される処理である。
【0204】
この軌跡データ蓄積処理(S505)では、まず、受信軌跡データメモリ14aに記憶されている歩行者データがあるかを確認する(S1401)。S1401の処理により確認した結果、受信軌跡データメモリ14aに歩行者データが記憶されていなければ(S1401:No)、この軌跡データ蓄積処理(S505)を終了する。
【0205】
一方で、S1401の処理により確認した結果、受信軌跡データメモリ14aに記憶されている歩行者データがあれば(S1401:Yes)、携帯端末200を持たない歩行者が所定割合以上検出されたかを確認する(S1402)。
【0206】
このS1402の処理において、携帯端末200を持たない歩行者の割合を検出する方法の1つとしては、受信軌跡データメモリ14aのエリア14an3に記憶されている現在データのうち、車載カメラ170の撮像領域内に対応する現在データの数に対する、車載カメラ170によって撮像された歩行者の割合を利用することができる。車載カメラ170の代わりに、赤外線センサや超音波センサなどのセンサ手段により検出された歩行者の割合を利用してもよい。
【0207】
また、携帯端末200を持たない歩行者の割合を検出する別の方法としては、携帯端末200の販売会社などによって、インターネット300などを介して公表される携帯端末200の普及率に関する情報を用いることができる。例えば、携帯端末200の普及率が所定値以下であった場合には、このS1402の処理において、携帯端末200を持たない歩行者が所定割合以上であると判定するように構成することができる。
【0208】
S1402の処理により確認した結果、携帯端末200を持たない歩行者が所定割合以上検出された場合には(S1402:Yes)、受信軌跡データメモリ14aにおける、エリア14an03に記憶される現在位置データを除いた全ての歩行者データを、車側軌跡データメモリ18cに記憶する(S1403)。
【0209】
S1403の処理後、受信軌跡データメモリ14aに記憶される全ての歩行者データをクリアし(S1404)、この軌跡データ蓄積処理(S505)を終了する。
【0210】
一方で、S1402の処理により確認した結果、携帯端末200を持たない歩行者が所定割合以上検出されなかった場合には(S1402:No)、S1403の処理をスキップして、S1404の処理へ移行する。
【0211】
よって、この軌跡データ蓄積処理(S505)の実行により、携帯端末200を持たない歩行者が所定割合以上存在することが検出された場合には、携帯端末200から送信された蓄積軌跡データが、車側軌跡データメモリ18cに不揮発的に蓄積されて記憶されることになる。
【0212】
携帯端末200から送信された歩行者データを不揮発的に車側軌跡データメモリ18cへ蓄積することにより、蓄積軌跡データを送信可能な携帯端末200の普及率が少ない場合であっても、注意箇所の予測に用いる蓄積軌跡データのサンプル数を十分に確保できるので、常時、注意箇所を高精度に予測することができるのである。
【0213】
また、携帯端末200から送信された歩行者データが車側軌跡データメモリ18cに不揮発的に蓄積されることにより、携帯端末200から送信された歩行者データ(歩行者データに含まれる蓄積軌跡データ)の数がリアルタイムにおいて少なく、受信軌跡データメモリ14aに記憶される歩行者データ数が少ない場合であっても、注意箇所を高精度に予測することができる。
【0214】
なお、請求項1記載の軌跡取得手段としては、車両位置表示装置100が、歩行者データ出力処理(図9)におけるS907,S912,S913の処理の結果として出力された歩行者データを受け取ることが該当し、請求項1記載の「移動軌跡データ」としては、上記実施形態の説明中における「蓄積軌跡データ」が該当する。また、請求項1記載の注意箇所予測手段としては、フィルタ処理A(図6)、フィルタ処理B(図7)、フィルタ処理C(図10)、フィルタ処理D(図11)、及びフィルタ処理E(図12)が該当する。
【0215】
また、請求項3記載の経路設定手段としては、メイン処理(図4)におけるルート探索処理(S4)が該当する。また、請求項4記載の移動速度取得手段としては、フィルタ処理A(図6)における移動速度算出処理(S601)が該当し、請求項4記載の判定手段としては、フィルタ処理A(図6)におけるS602の処理が該当する。
【0216】
また、請求項6記載の位置特定手段としては、メイン処理(図4)における車両位置情報取得処理(S2)の処理が該当する。また、請求項6記載の確認手段としては、注意/警告処理(図8)におけるS803の処理が該当する。また、請求項6記載の歩行者位置取得手段としては、上記の確認処理(S803の処理に該当する処理)において利用される歩行者の位置を示す情報、例えば、現在位置データ14an03や車載カメラ170による映像などを取得することが該当する。また、請求項6記載の報知手段としては、注意/警告処理(図8)における警告表示処理(S806)及び注意喚起表示処理(S812)が該当する。
【0217】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0218】
例えば、上記各実施態様では、対歩行者事故防止システム1で使用される携帯端末200として、通話機能を持たない携帯端末を例示したが、携帯端末200に通話機能が付加されたもの(所謂、携帯電話)であってもよい。
【0219】
また、携帯端末200は、GPSによって現在位置を検出し、その検出された位置を取得するように構成されるものであったが、位置を検出する方法としては、GPSに限定されるものではなく、携帯電話の基地局からの割り出しによる位置検出、慣性航法による位置検出、路面に埋め込んだ磁気マーカ(RFIDチップなど)や2次元バーコードなどのマーカを利用した位置検出、電柱や標識の文字やマークの認識による位置検出など、種々の位置検出を利用することができる。
【0220】
また、端末端末200の位置検出を、端末装置200ではなく、インフラ側や車載端末側で行い、インフラ側や車載端末側で検出された位置を端末装置200において受信することによって取得するようにしてもよい。
【0221】
また、携帯端末200において蓄積軌跡データを記憶するメモリとして、フラッシュメモリ56を例示したが、これに限定されるものではなく、フラッシュメモリ56以外の書き換え可能な不揮発性メモリ(SRAM(バックアップ電源付き)やハードディスクなど)、光ディスクなどの各種媒体や、RAMなどの揮発性メモリに記憶させるように構成してもよい。
【0222】
また、携帯端末200と車載装置100との通信手段として、インターネット300を例示したが、これに限定されるものではなく、インターネット300を含む公衆回線(携帯電話、PHS)、各種無線LAN(802.11a、802.11b、802.11g、UWB、ワイヤレスUSBなど)、無線(トランシーバ、アマチュア無線など)、IrDaなどの光通信、超音波などの音波を利用した通信などを利用することができる。
【0223】
また、上記した実施形態では、携帯端末200は、インターネット300を介してブロードキャスト発信をすることによって現在メッシュ及び隣接メッシュに位置する不特定多数の車両Cへ蓄積軌跡データを送信するように構成したが、複数の車両Cに対し、個々に順次接続したり、車載端末100側でバケツリレー式に伝達するような構成であってもよい。
【0224】
また、車載端末100において、不揮発的に蓄積軌跡データ(歩行者データの一部)を記憶するメモリとして、HDD18(車側軌跡データメモリ18c)を例示したが、これに限定されるものではなく、HDD18以外の書き換え可能な不揮発性メモリ(FeRAMなど)や、光ディスクなどの各種媒体や、RAMなどの揮発性メモリに記憶させるように構成してもよい。なお、車側軌跡データメモリ18cに記憶された歩行者データは、取得後、所定期間経過したものを消去するように構成してもよい。
【0225】
また、上記実施形態では、地図データはHDD18(地図データメモリ18a)に記憶されたものを読み出すように構成したが、DVDや光ディスクなどの媒体に記憶されている地図データの読み出したものや、インターネット300などの回線を介して外部から地図データを受信したものを用いるように構成してもよい。なお、車載装置100において地図データを記憶する記憶装置として、HDD18以外の書き換え可能な不揮発性メモリ(FeRAMなど)や、ROMのような書き換え不能な不揮発性メモリや、RAMなどの揮発性メモリを用いるように構成してもよい。また、本実施形態で使用した地図データには、第3実施形態のHDD18に設けられている施設メモリ(非図示)の内容が複合的に記録されている構成であってもよい。
【0226】
また、上記実施形態では、携帯端末200から車載装置100へ送信される歩行者データが、「現在位置データ」と「蓄積軌跡データ」と「端末固有情報」と、必要に応じて「ユーザ情報」を付加するように構成したが、これらを全て実装する必要はない。例えば、ユーザ情報及び端末固有情報を必要としない第1実施形態の場合は、ユーザ情報及び端末固有情報を歩行者データに含めないように構成してもよい。
【0227】
また、上記実施形態では、携帯端末200において、地図データメモリ56aに地図データが記憶されるように構成し、この地図データメモリ56aに記憶される地図データに基づいて、携帯端末200の所持者の現在位置データにおけるメッシュ番号を得るものであった。地図データメモリ56aを設けることなく、インターネット300を介して接続可能な情報センタにアクセスし、その情報センタに記憶されている地図データを参照してメッシュ番号を得るような構成であってもよい。
【0228】
また、上記第1実施形態では、2つのフィルタ処理(フィルタ処理A(図6)及びフィルタ処理B(図7))を実行し、一方で、第2実施形態から第4実施形態ではそれぞれ1つのフィルタ処理(フィルタ処理C(図10)、フィルタ処理D(図11)、フィルタ処理E(図12))を実行するように構成した。フィルタ処理A〜Eの実行の仕方は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、フィルタ処理A〜Eをそれぞれ1つずつ実行するように構成してもよいし、フィルタ処理A〜Eのうちの少なくとも2つを組み合わせて実行するように構成してもよい。
【0229】
また、注意/警告処理(図8参照)におけるS803の処理において、歩行者が実在するか否かを確認するように構成したが、(1)歩行者が実在する、(2)歩行者が実在しない、及び(3)歩行者が実在するか否か不明である、の3通りに判定するように構成してもよい。
【0230】
この場合、(3)不明であると判定された場合には、車両制御装置150への制御指示は出力しないが、注意喚起表示処理(S812)による報知よりは、警告レベルの高い警告表示処理(S806)を実行するように構成してもよい。
【0231】
このように、(3)不明であると判定された場合に、(1)歩行者が実在した場合より警告レベルが低く、(2)歩行者が実在しなかった場合より警告レベルを高くすることによって、運転者への過剰な警告(注意喚起)を抑制しつつ、歩行者が実在するかもしれない領域に対し注意を払わせることにより、効果的に対歩行者事故防止を図ることができる。
【0232】
また、注意/警告処理(図8参照)における警告表示処理(S806)及び注意喚起表示処理(S812)はいずれも、LCD26への表示により運転者に注意箇所を報知するものであったが、注意箇所の報知は、LCD26への視覚的な表示に限定されず、スピーカ28から出力される音声によるものであってもよいし、LCD26への視覚的な表示とスピーカ28から出力される音声との組み合わせによるものであってもよい。
【0233】
また、上記フィルタ処理A(図6)では、軌跡データに基づいて携帯端末200の所持者の移動速度を算出し、その移動速度が歩行者速度以上であるか否かを確認することによって、歩行者と車両搭乗者(非歩行者)とを区別するように構成した。歩行者と車両搭乗者との区別は、電車などの軌道に対応する軌跡データを無視するように構成してもよい。また、車両側からの信号などによって、携帯端末200の所持者が車両に搭乗したことが確認された時点で、携帯端末200が軌跡データの取得を中止するように構成してもよい。また、車両に搭乗した際に、携帯端末200の所持者が手動操作によって、携帯端末200が軌跡データの取得を中止するように構成してもよい。また、車載端末100が、自車と同じ軌跡を描く携帯端末200に対して信号を発信して、携帯端末200に軌跡データの取得を中止させるように構成してもよい。また、携帯端末200において所持者の移動速度を検出し、所定速度以上になった場合に、軌跡データの取得を中止するように構成してもよい。
【0234】
また、注意/警告処理(図8参照)におけるS804,S807,S809では、車両Cと歩行者との距離を減速Gの値に応じて判断しているが、車両Cのブレーキ能力が低い場合には、ブレーキ能力に応じた適切な閾値に優先的に変更されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】本発明の第1実施形態における対歩行者事故防止システムの構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、現在位置メモリに記憶される現在位置データを示す模式図であり、(b)は、ユーザ情報メモリに記憶されるユーザ情報を示す模式図であり、(c)は、軌跡データメモリに記憶される蓄積軌跡データ及び1の軌跡データを示す模式図である。
【図3】受信軌跡データメモリに記憶されるデータを示す模式図である。
【図4】車両位置表示装置で実行されるメイン処理を示すフローチャートである。
【図5】車両位置表示装置で実行される対歩行者事故防止処理を示すフローチャートである。
【図6】車両位置表示装置で実行されるフィルタ処理Aを示すフローチャートである。
【図7】車両位置表示装置で実行されるフィルタ処理Bを示すフローチャートである。
【図8】車両位置表示装置で実行される注意/警告処理を示すフローチャートである。
【図9】携帯端末200で実行される歩行者データ出力処理を示すフローチャートである。
【図10】車両位置表示装置で実行されるフィルタ処理Cを示すフローチャートである。
【図11】車両位置表示装置で実行されるフィルタ処理Dを示すフローチャートである。
【図12】車両位置表示装置で実行されるフィルタ処理Eを示すフローチャートである。
【図13】車側軌跡データメモリに記憶されるデータを示す模式図である。
【図14】車両位置表示装置で実行されるデータ蓄積/出力処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0236】
1 対歩行者事故防止システム
100 車両位置表示装置(車載装置)
200 携帯端末
18a 地図データメモリ(地図記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の移動軌跡データを外部から取得する軌跡取得手段と、
地図データを記憶する地図記憶手段と、
前記軌跡取得手段により取得した移動軌跡データに基づいて、前記地図記憶手段に記憶された地図上における対歩行者事故の注意箇所を予測する注意箇所予測手段とを備えていることを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記注意箇所予測手段は、前記軌跡取得手段により取得した移動軌跡データが車道上に位置する場合に、注意箇所として予測することを特徴とする請求項1記載の車載装置。
【請求項3】
目的地までの経路を設定する経路設定手段を備え、
前記注意箇所予測手段は、前記軌跡取得手段により取得した移動軌跡データの示す位置が、前記経路設定手段により設定された経路上に位置した場合に、注意箇所として予測することを特徴とする請求項1又は2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記移動軌跡データと共に、当該移動軌跡データの移動速度を取得する移動速度取得手段と、
その移動速度取得手段により取得された移動速度が所定値以下であるかを判定する判定手段とを備え、
前記注意箇所予測手段は、前記判定手段により所定値以下であると判定された場合に、注意箇所を予測することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車載装置。
【請求項5】
前記地図記憶手段は、地図データ上における施設及び当該施設の開放時間を記憶し、
前記注意箇所予測手段は、前記施設の開放時間内において、前記施設を含む所定範囲内に位置する前記移動軌跡データを用いて注意箇所を予測することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車載装置。
【請求項6】
自車両の位置を特定する位置特定手段と、
前記歩行者の位置を取得する歩行者位置取得手段と、
前記位置特定手段により特定した自車両の位置及び前記歩行者位置取得手段により取得した歩行者の位置に基づき、前記注意箇所予測手段により予測された注意箇所から所定範囲内に、前記自車両及び前記歩行者が存在するか否かを確認する確認手段と、
その確認手段により前記自車両及び前記歩行者が存在すると確認された場合に、前記注意箇所予測手段により予測された注意箇所を運転者に報知する報知手段とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−330822(P2006−330822A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149583(P2005−149583)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】