説明

車載通信システム、車載通信装置、および位置判定方法

【課題】車載機の送信アンテナの数を削減してシステムコストの削減を図ることができる車載通信システムを得ること。
【解決手段】携帯機は、車載機から受信した信号の受信信号強度を検出して車載機へ送信し、車載機は、運転席側車内送信アンテナ7と、助手席側車内送信アンテナ8と、トランク側車内送信アンテナ9と、送信アンテナを選択する送信アンテナ選択部6と、3本の送信アンテナのそれぞれから異なる時間帯で信号を送信するよう送信アンテナ選択部6を制御するECU4と、携帯機から受信した送信アンテナごとの受信信号強度を所定の閾値と比較することにより当該受信信号強度に対応する段階を求め、送信アンテナごとの求めた段階に基づいて携帯機が存在するエリアを判定する閾値判定型車内外判定部42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載通信システム、車載通信装置および位置判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両が備える車載機からの質問信号に対して、ユーザが所有する携帯機が回答信号を返送し、車載機側で回答信号に格納されたコードを照合することにより車両扉の施錠/解錠を行うスマートエントリシステムが実用化されている。また、同様の構成でコードを照合することにより、車両のエンジンスタートを可能とするスマートスタートシステムが実用化されている。
【0003】
スマートエントリシステム/スマートスタートシステムでは、車両への不正侵入や不正なエンジンスタート動作による車両盗難の可能性を低減するために、携帯機が車内/車外いずれのエリアに存在するかの位置判定(以下、車内外判定という)を実施する。この車内外判定を行う手法として、例えば、下記特許文献1,2では、車載機送信アンテナを車内,車外それぞれのエリアに設置した上で、一定の規則に基づき順番に送信を行い、携帯機からの応答有無を車載機側で確認することにより車内外判定を行う手法が開示されている。
【0004】
車内外判定では、車載機から携帯機に対して、通信可能な領域を所望のエリアに形成しやすい性質を有するLF(Low Frequency)帯の磁界信号を送信し、携帯機から車載機に対してはUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送信する手法が一般的である。
【0005】
しかしながら、このLF帯に対応する車載機送信アンテナは、システムコストの大きな増大要因となっている。このため、下記特許文献3では、車載機送信アンテナの数を削減するために、車載機の各送信アンテナを複数軸一体型構成として、指向性制御機能を備える構成とし、アンテナ1本あたりの機能向上を実現する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−84406号公報
【特許文献2】特開2005−76329号公報
【特許文献3】特開2011−127368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2に記載の方式を用いる場合、スマートエントリシステム/スマートスタートシステムで考慮するエリア全域に対して車内外判定を実現するためには、車内および車外の各エリアに対して、複数の車載機送信アンテナを設置する必要があり、車載機送信アンテナの総数は、合計して5本以上となるのが一般的である。しかしながら、特許文献1,2に記載の方式では、車載機送信アンテナの本数を削減することはできず、システムコストの削減が難しいという問題がある。
【0008】
一方、特許文献3に記載の方式では、車載機送信アンテナ数は削減できるものの、各アンテナに指向性制御機能を備える必要がある。このため、アンテナ1本あたりの構造が複雑となりコスト増大を伴い、システムコストの抜本的な削減が難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車載機の送信アンテナの数を削減してシステムコストの削減を図ることができる車載通信システム、車載通信装置および位置判定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、携帯機と、車両に搭載され複数のエリアのうち前記携帯機が存在するエリアを判定する車載機と、を備える車載通信システムであって、前記携帯機は、前記車載機から受信した信号の受信信号強度を検出する受信信号強度検出部と、前記受信信号強度を前記車載機へ送信する受信信号強度フィードバック部と、を備え、前記車載機は、前記車両内の運転席近傍に設置された運転席側車内送信アンテナと、前記車両内の助手席近傍に設置された助手席側車内送信アンテナと、前記車両内のトランク近傍に設置されたトランク側車内送信アンテナと、前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナの3本の送信アンテナのうちから信号の送信に用いる送信アンテナを選択する送信アンテナ選択部と、前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナのそれぞれから異なる時間帯で信号を送信するよう前記送信アンテナ選択部を制御する車載機制御部と、前記携帯機から受信した前記送信アンテナごとの受信信号強度を所定の閾値と比較することにより当該受信信号強度に対応する強度段階を求め、前記送信アンテナごとの求めた強度段階に基づいて前記携帯機が存在するエリアを判定する位置判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車載機の送信アンテナの数を削減してシステムコストの削減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1の車載機の機能構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1の携帯機の機能構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1の車内外のエリア区分に関する概念を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態1のフレームフォーマットの構成例を示す図である。
【図5】図5は、スマートエントリシステムとしての車載機の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、車内外判定のアルゴリズムにおける車内外エリア分割例と各車載機送信アンテナのRSSIの一例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態1の車内外判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、スマートスタートシステムとしての車載機の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施の形態2の車載機の機能構成例を示す図である。
【図10】図10は、実施の形態2の携帯機の機能構成例を示す図である。
【図11】図11は、実施の形態2のフレームフォーマットの構成例を示す図である。
【図12】図12は、実施の形態2のスマートエントリシステムとしての車載機の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態2のスマートスタートシステムとしての車載機の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる車載通信システム、車載通信装置および位置判定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる車載通信システムにおける車載機(車載通信装置)の実施の形態1の機能構成例を示す図である。図2は、本実施の形態の車載通信システムにおける携帯機の機能構成例を示す図である。本実施の形態の車載通信システムは、いわゆるスマートエントリシステムやスマートスタートシステム等であり、携帯機からの信号により、自動車等の車両に対する操作を可能とする。以下では、本実施の形態の車載通信システムが、スマートエントリシステムとしての機能とスマートスタートシステムとしての機能の両方を有する例について説明するが、いずれか一方の機能を有してもよい。また、本実施の形態の車内外判定処理および構成は、スマートエントリシステム、スマートスタートシステムに限らず、車載機が携帯機に関する位置判定処理を実施するシステムであればどのようなシステムにも適用可能である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の車載機は、トリガ動作検出部1、扉施錠/解錠部2、エンジンスタート部3、ECU(Electronic Control Unit)4、送信部5、送信アンテナ選択部6、運転席側車内送信アンテナ7、助手席側車内送信アンテナ8、トランク側車内送信アンテナ9、受信アンテナ10および受信部11を備える。
【0016】
図2に示すように、本実施の形態の携帯機は、CPU(Central Processing Unit)21、送信部22、送信アンテナ23、受信アンテナ24および受信部25を備える。
【0017】
図3は、本実施の形態の車内外のエリア区分に関する概念を示す図である。車両100は、本実施の形態の車載通信システムを搭載する車両であり、図3では自動車の例を示している。図3に示すように、本実施の形態では、車内外のエリアを、車内エリア200と近傍車外エリア300と遠方車外エリアとに区分する。車内エリア200は、図3に示すように、車両100の車内のエリアである。近傍車外エリア300は、一般に扉から半径80〜100cm程度のエリアが確保される。本実施の形態では、近傍車外エリア300は、運転席側の扉、助手席側の扉、トランクの3箇所にそれぞれ半径80〜100cm程度のエリアとして設定されている。遠方車外エリアは、車内エリア200外であり、かつ近傍車外エリア300外のエリアである。
【0018】
スマートエントリシステムでは、携帯機からの信号による運転席,助手席,トランクの扉の施錠/解錠動作を可能とする。この際、近傍車外エリア300に携帯機が存在すると判定された場合にのみ、施錠/解錠動作が許可される。例えば、ユーザが携帯機を所有したまま車内で睡眠をとっている場合などに外から他人の操作により扉の解錠が行われてしまうと防犯上困ることから、携帯機が車内エリア100に存在する場合には施錠/解錠動作が実施されない仕組みとする。
【0019】
一方、スマートスタートシステムでは、車内エリア100に携帯機が存在すると判定された場合にのみ、エンジンスタート等が許可される。例えば、ユーザが車両周辺にある自動販売機などで飲料を購入している際に、悪意を持った人が車両100に乗り込み、エンジンスタートして乗り逃げすることを防ぐために、携帯機が車外エリア(近傍車外エリア300および遠方車外エリア)に存在する場合にはエンジンスタートが許可されない仕組みとする。
【0020】
なお、携帯機が遠方車外エリアに存在すると判定された場合には、スマートエントリシステム/スマートスタートシステムの両方の動作の対象外と見なし、扉の施錠/解錠動作もエンジンスタート動作も実施されない仕組みとする。
【0021】
以上のように、携帯機が車内エリア200/近傍車外エリア300/遠方車外エリアのいずれに存在するかを判定する処理(車内外判定処理)は、スマートエントリシステム/スマートスタートシステムにとって、きわめて重要な処理となっている。
【0022】
次に、図1〜3を用いて、本実施の形態の車載機および携帯機の各部の機能を説明する。図1に示す車載機の各部の機能について説明する。運転席側車内送信アンテナ7、助手席側車内送信アンテナ8およびトランク側車内送信アンテナ9は、送信信号を送信するためのアンテナである。運転席側車内送信アンテナ7は、運転席近傍の車内エリア(例えば、運転席側のドアピラー部分やドアの壁面部分など)に設置される。助手席側車内送信アンテナ8は、助手席近傍の車内エリア(例えば、助手席側のドアピラー部分やドアの壁面部分など)に設置される。トランク側車内送信アンテナ9は、トランク近傍の車内エリア(例えば、トランク扉の壁面部分など)に設置される。
【0023】
トリガ動作検出部1は、ユーザが扉のハンドルに手をかざしたり、扉脇に設置されたボタンを押したりなどの扉施錠/解錠のためのトリガ動作や、エンジンスタートのためのトリガ動作を検出し、ECU4へ検出したトリガを通知する。この際、トリガ動作検出部1は、トリガ動作を検出した位置(例えば、運転席側の扉のハンドルに手をかざしたと特定する等)も特定して特定した位置もECU4へ通知する。なお、ここでは、扉施錠/解錠のためのトリガ動作を検出する機能(エントリトリガ動作検出部としての機能)と、エンジンスタートのためのトリガ動作を検出する機能(エンジントリガ動作検出部としての機能)と、の両方を備えるトリガ動作検出部1を備える例を説明するが、扉施錠/解錠と、エンジンスタートと、で個別にトリガ動作検出部を備えるようにしてもよい。
【0024】
ECU4は、車載機全体の動作を制御する車載機制御部である。ECU4は、受信部11から入力された受信データに基づいて、扉施錠/解錠やエンジンスタートの可否の判定を行い、扉施錠/解錠部2およびエンジンスタート部3を制御する。また、ECU4は、携帯機への送信データを生成して送信部5へ出力する。
【0025】
ECU4は、メモリ部41と閾値判定型車内外判定部(位置判定部)42を備える。メモリ部41は、自身のID(IDentifier)コードや暗号キー等を格納しておくための不揮発性の記憶手段である。閾値判定型車内外判定部42は、各車載機送信アンテナ(運転席側車内送信アンテナ7、助手席側車内送信アンテナ8、トランク側車内送信アンテナ9)から送信された信号を用いて携帯機において検出されたRSSI(Received Signal Strength Indication:受信信号強度)情報に基づいて閾値判定処理を施すことにより、携帯機に対する車内外判定を行う。
【0026】
送信部5は、ECU4から出力された送信データを変調して送信信号を生成し、送信信号を送信アンテナ選択部6へ出力する。送信アンテナ選択部6は、ECU4からの指示に基づいて、運転席側車内送信アンテナ7、助手席側車内送信アンテナ8、トランク側車内送信アンテナ9の3本の送信アンテナのうち信号を送信するアンテナを選択する。
【0027】
受信アンテナ10は、受信信号を受信するためのアンテナであり、受信信号を受信部11へ出力する。受信部11は、受信信号を復調して受信データを得て、受信データをECU4へ出力する。
【0028】
扉施錠/解錠部2は、ECU4において実施された携帯機に対する車内外判定結果に基づいて扉の施錠/解錠動作を行う。エンジンスタート部3は、ECU4において実施された携帯機に対する車内外判定結果に基づいてエンジンスタート動作を行う。
【0029】
図2に示す携帯機の各部の機能について説明する。受信アンテナ24は、受信信号を受信するためのアンテナであり、受信信号を受信部25へ出力する。受信部25は、受信信号を復調して受信データを得て、受信データをCPU21へ出力する。また、受信部25はRSSI検出部251を備える。RSSI検出部251は、受信信号のRSSIを検出する。受信部25は、RSSI検出部251により検出されたRSSIをCPU21へ出力する。
【0030】
CPU21は、携帯機全体の動作を制御する携帯機制御部である。CPU21は、車載機への送信データを生成して送信部22へ出力する。また、CPU21は、メモリ部211とRSSIフィードバック部212を備える。メモリ部211は、自身のID(IDentifier)コードや暗号キー等を格納しておくための不揮発性の記憶手段である。RSSIフィードバック部212は、RSSI検出部251にて検出された各車載機送信アンテナからの信号のRSSI情報を送信データとして送信部22へ出力する。
【0031】
送信部22は、CPU21から出力された送信データを変調して送信信号を生成し、送信信号を送信アンテナ23に出力する。送信アンテナ23は、送信信号を送信する。
【0032】
図4は、本実施の形態にかかる車載機および携帯機が送信するフレームのフレームフォーマットの構成例を示す図である。図4の1段目は、(a)車載機から携帯機へ送信する呼出信号のフレームフォーマットを示す。呼出信号のフレームは、フレーム同期をとるためのプリアンブルと、固定長のID情報からなる固定IDコードと、当該フレームが呼出信号であることを示すビットや同じIDを有する携帯機番号等の情報を含む付加コードと、誤り検出を行うためのパリティビット(パリティ)と、で構成される。
【0033】
図4の2段目は、(b)携帯機から車載機へ、呼出信号への応答として送信される応答信号のフレームフォーマットを示す。応答信号のフレームは、フレーム同期をとるためのプリアンブルと、固定長のID情報からなる固定IDコードと、呼出信号の受信が成功したか否かを示すビットや携帯機番号等の情報を含む付加コードと、誤り検出を行うためのパリティビットと、で構成される。
【0034】
図4の3段目は、(c)車載機から携帯機へ送信する質問信号のフレームフォーマットを示す。質問信号のフレームは、フレーム同期をとるためのプリアンブルと、固定長のID情報からなる固定IDコードと、当該フレームが質問信号であることを示すビットや応答すべき携帯機番号等の情報を含む付加コードと、毎回乱数に基づきランダムに生成される質問コードと、運転席側車内送信アンテナ7から送信される無変調キャリア信号CAと、助手席側車内送信アンテナ8から送信される無変調キャリア信号CBと、トランク側車内送信アンテナ9から送信される無変調キャリア信号CCと、誤り検出を行うためのパリティビットと、で構成される。
【0035】
図4の4段目は、(d)携帯機から車載機へ、質問信号への応答として送信される回答信号のフレームフォーマットを示す。回答信号のフレームは、フレーム同期をとるためのプリアンブルと、固定長のID情報からなる固定IDコードと、当該フレームが回答信号であることを示すビットや携帯機番号等の情報を含む付加コードと、受信した質問コードを暗号キーで暗号化した暗号文である回答コードと、運転席側車内送信アンテナ7から携帯機が受信した信号のRSSI情報RAと、助手席側車内送信アンテナ8から携帯機が受信した信号のRSSI情報RBと、トランク側車内送信アンテナ9から携帯機が受信した信号のRSSI情報RCと、誤り検出を行うためのパリティビットと、で構成される。
【0036】
なお、図4のフレームフォーマットは一例であり、同様の内容を含めばよく、図4のフレームフォーマットに限定されない。
【0037】
以下、本実施の形態における動作の詳細について説明する。まず、本実施の形態の車載通信システムのスマートエントリシステムとしての動作について説明する。図5は、スマートエントリシステムとしての車載機の動作手順の一例を示すフローチャートである。スマートエントリシステムの動作においては、車載機は、常時携帯機の呼出信号を送信しているわけではなく、ユーザが扉を施錠/解錠しようとする意思表示タイミングをトリガとして呼出信号の送信が開始される。
【0038】
扉の施錠/解錠が要求されたことを示すトリガ動作としては、例えば、ユーザが扉のハンドルに手をかざしたり、扉脇に設置されているボタンを押したりする動作などが挙げられる。ここでは、車載機が当該トリガ動作を検出した後のスマートエントリシステムとしての詳細動作について説明する。
【0039】
車載機は、トリガ動作を検出すると携帯機に対して呼出信号を送信する(ステップS1)。この呼出信号を送信する車載機送信アンテナとしては、運転席側車内送信アンテナ7、助手席側車内送信アンテナ8、トランク側車内送信アンテナ9の3本のうちいずれを用いてもよいが、本実施の形態では、トリガ動作を検出した扉に設置された車載機送信アンテナから送信を行うものとする。例えば、ユーザが手をかざした扉のハンドルやユーザが押したボタンが、運転席の扉のものである場合には運転席側車内送信アンテナ7から呼出信号を送信する。トリガ動作がトランクの扉に対応するものである場合には、トランク側車内送信アンテナ9から呼出信号を送信する。
【0040】
呼出信号の送信までの動作を、図1を用いて具体的に説明する。ECU4が、トリガ動作検出部1からトリガを検出した通知を受けると、呼出信号を送信データとして生成し、生成した送信データを送信部5へ渡す。また、ECU4は、トリガ動作検出部1から通知されたトリガ検出位置に基づいて、呼出信号を送信する車載機送信アンテナを決定し、送信アンテナ選択部4に対して、決定した送信アンテナを選択するよう通知する。送信アンテナ選択部4は、通知に基づいて、3本の車載機送信アンテナのうちの1本を選択して呼出信号を送信する。このような構成とすることにより、ユーザが所有する携帯機に最も近い位置にある車載機送信アンテナから呼出信号の送信を行うことが可能となり、携帯機が車載機からの呼出信号を受信しやすくなるという利点がある。
【0041】
図5の説明に戻り、携帯機は、車載機からの呼出信号を受信すると、CPU21内のメモリ部211に格納されている自身の携帯機番号を含む応答信号を生成して返送する。車載機では、ECU4が当該応答信号を受信したか否かを判断する(ステップS2)。具体的には、ECU4は、受信アンテナ10および受信部11経由で受信した応答信号が、ステップS1で送信した呼出信号に対応する携帯機番号を有する携帯機からのものであるか否かを判断する。応答信号を受信したと判断した場合(ステップS2 Yes)、ECU4は、乱数に基づき生成した質問コードを格納した図4に示したフォーマットの質問信号を生成して送信する(ステップS3)。
【0042】
質問信号は、呼出信号と同様に基本的にはトリガ動作を検出した扉に設置された車載機送信アンテナより送信を実施する。しかしながら、図4に示したように、質問信号には、各車載機送信アンテナから送信される無変調キャリア信号が含まれる。従って、各車載機送信アンテナから送信される無変調キャリア信号を送信する際は、ECU4は、図4に示した順に各車載機送信アンテナから無変調キャリア信号が送信されるよう、送信アンテナ選択部6へアンテナの切り替えを指示する。このような構成とすることにより、携帯機は、自らの存在位置によらず、全車載機送信アンテナについてRSSI情報を得ることが可能となる。
【0043】
携帯機のCPU21は、受信した質問信号に含まれる質問コードに対して、メモリ部211に格納された暗号キーを用いて暗号化処理を行い、回答コードを生成し、回答コードを格納した回答信号を送信部22および送信アンテナ23経由で返送する。携帯機のRSSI検出部251は、質問信号に含まれる各車載機送信アンテナから送信された無変調キャリア信号に基づいて車載機送信アンテナごとのRSSI情報を検出する。CPU21のRSSIフィードバック部212は、上述の回答信号に車載機送信アンテナごとのRSSI情報を格納する。このように、各車載機送信アンテナに対応するRSSI情報を携帯機から車載機へと回答信号によりフィードバックする構成とすることにより、処理性能の高い車載機側のECU4を用いて車内外判定処理を行うことが可能となり、小型化,低消費電力化が特に求められる携帯機側では車内外判定処理を行う必要がなくなるという利点がある。
【0044】
車載機のECU4は、上記の回答信号を受信しかつ回答コードに対して認証処理が正しく行われたか(認証が成功したか)否かを判断する(ステップS4)。回答信号を受信しかつ回答コードに対して認証処理が正しく行われた場合(ステップS4 Yes)、閾値判定型車内外判定部42が、回答信号に含まれる車載機送信アンテナごとのRSSI情報を閾値と比較することにより、車内外判定を実施する(ステップS5)。そして、ECU4は、車内外判定の判定結果が、車内エリア200、近傍車外エリア300、遠方車外エリア車内外判定のいずれであったかを判断し(ステップS6)、判定結果が近傍車外エリア300であった場合(ステップS6 近傍車外)は、ユーザから要求された扉施錠または解錠の動作を実施するよう扉施錠/解錠部2を制御して処理を終了する(ステップS7)。
【0045】
一方、ステップS2で応答信号を受信していないと判断した場合(ステップS2 No)、ユーザから要求された扉施錠または解錠の動作を実施せずに処理を終了する(ステップS8)。ステップS4で携帯機から回答信号を受信していないまたは正しく認証されなかったと判断した場合(ステップS4 No)、ステップS8へ進む。ステップS6で、判定結果が車内エリア200または遠方車外エリアであった場合(ステップS6 車内、遠方車外)もステップS8へ進む。
【0046】
ここで、閾値判定型車内外判定部42における車内外判定のアルゴリズムについて例を挙げて説明する。このアルゴリズムは、車内外エリアを複数のエリアに分割して判定処理を実施する。図6は、車内外判定のアルゴリズムにおける車内外エリア分割例と各車載機送信アンテナのRSSIの一例を示す図である。
【0047】
図6に示すように、ここでは、車内エリア200を、エリアA1(運転席側車内エリア)とエリアA2(助手席側車内エリア)とエリアA3(トランク側車内エリア)の3つに分けている。また、近傍車外エリア300を、エリアA4(運転席側車外エリア)とエリアA5(助手席側車外エリア)とエリアA6(トランク側車外エリア)の3つに分けている。このように遠方車外エリア以外をエリアA1〜A6の合計6つのエリアに区分している。また、図6の下に示した表は、エリアA1〜A6の各エリアにおけるRSSIの大小関係の一例を示している。図6において、ANT#1は運転席側車内送信アンテナ7を示し、ANT#2は助手席側車内送信アンテナ8を示し、ANT#3はトランク側車内送信アンテナ9を示している。図6の表では、各エリアに携帯機が存在する場合に、携帯機により検出される各車載機送信アンテナから送信された信号のRSSIの大小関係を示している。
【0048】
携帯機が存在するエリアによって、どの車載機送信アンテナに対応するRSSIが大きくなりどの車載機送信アンテナに対応するRSSIが小さくなるかの傾向が異なる。このことから、図6の表に基づいて、予め適切なRSSI閾値を設定しておけば、各RSSIに対する閾値判定結果の組み合わせにより、携帯機がどのエリアに存在するかの判定を行うことが可能となる。
【0049】
例えば、ANT#1のRSSIが大となり、かつANT#2のRSSIが中となるのはエリアA1だけである。このため、ANT#1のRSSIが大となり、かつANT#2のRSSIが中の場合は、携帯機はエリアA1に存在すると推定できる。同様に、ANT#2のRSSIが大となり、かつANT#1のRSSIが中となるのはエリアA2だけである。したがって、ANT#2のRSSIが大となり、かつANT#1のRSSIが中の場合は、携帯機はエリアA2に存在すると推定できる。同様に各エリアと判定するための条件を抽出していけば、携帯機が存在するエリアを推定できる。
【0050】
図7は、本実施の形態の車内外判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、図6のRSSIの大小関係を前提とし、ANT#1,ANT#2に対応するRSSIが大であると判定するための閾値を閾値Aとする。また、ANT#1,ANT#2に対応するRSSIが中以上であると判定するための閾値Bを設定しておく。すなわち、閾値A以上の場合には、ANT#1,ANT#2に対応するRSSIは大であり、閾値A未満かつ閾値B以上の場合は、ANT#1,ANT#2に対応するRSSIは中である。また、ANT#3に対応するRSSIが大であると判定するための閾値を閾値Cとし、ANT#1、ANT#2に対応するRSSIが小であると判定されるための下限値を閾値Dとする(すなわち、閾値B未満かつ閾値D以上の場合は、ANT#1,ANT#2に対応するRSSIは小である)。また、ANT#3に対応するRSSIが中以上であると判定するための閾値を閾値Eとする。閾値A〜Eは、図7で示す車内外判定処理により携帯機が存在するエリアの判定ができるよう、各エリアに携帯機が存在する場合のRSSIを実測する等によりあらかじめ決定しておく。
【0051】
図7に示すように、閾値判定型車内外判定部42は、まず、ANT#1からのRSSI(ANT#から送信された信号を受信して携帯機が測定したRSSI)が閾値A以上でありかつANT#2からのRSSIが閾値B以上であるか否かを判断し(ステップS11)、ANT#1からのRSSIが閾値A以上でありかつANT#2からのRSSIが閾値B以上である場合(ステップS11 Yes)、車内エリア200(エリアA1)と判定して処理を終了する(ステップS12)。
【0052】
ANT#1からのRSSIが閾値A以上でないかまたはANT#2からのRSSIが閾値B以上でない場合(ステップS11 No)、ANT#1からのRSSIが閾値B以上でありかつANT#2からのRSSIが閾値A以上であるかを判断する(ステップS13)。ANT#1からのRSSIが閾値B以上でありかつANT#2からのRSSIが閾値A以上である場合(ステップS13 Yes)、車内エリア200(エリアA2)と判定して処理を終了する(ステップS14)。
【0053】
ANT#1からのRSSIが閾値B以上でないかまたはANT#2からのRSSIが閾値A以上でない場合(ステップS13 No)、ANT#3からのRSSIが閾値C以上でありかつANT#1からのRSSIが閾値B以上でありかつANT#2からのRSSIが閾値B以上であるか否かを判断する(ステップS15)。ANT#3からのRSSIが閾値C以上でありかつANT#1からのRSSIが閾値B以上でありかつANT#2からのRSSIが閾値B以上である場合(ステップS15 Yes)、車内エリア200(エリアA3)と判定して処理を終了する(ステップS16)。
【0054】
ANT#3からのRSSIが閾値C以上でなくまたはANT#1からのRSSIが閾値B以上でなくまたはANT#2からのRSSIが閾値B以上でない場合(ステップS15 No)、ANT#1からのRSSIが閾値D以上であるか否かを判断する(ステップS17)。ANT#1からのRSSIが閾値D以上である場合(ステップS17 Yes)、近傍車外エリア300(エリアA4)と判定して処理を終了する(ステップS18)。
【0055】
ANT#1からのRSSIが閾値D以上でない場合(ステップS17 No)、ANT#2からのRSSIが閾値D以上であるか否かを判断する(ステップS19)。ANT#2からのRSSIが閾値D以上である場合(ステップS19 Yes)、近傍車外エリア300(エリアA5)と判定して処理を終了する(ステップS20)。
【0056】
ANT#2からのRSSIが閾値D以上でない場合(ステップS19 No)、ANT#3からのRSSIが閾値E以上であるか否かを判断する(ステップS21)。ANT#3からのRSSIが閾値E以上である場合(ステップS21 Yes)、近傍車外エリア300(エリアA6)と判定して処理を終了する(ステップS22)。
【0057】
ANT#3からのRSSIが閾値E以上でない場合(ステップS21 No)、遠方車外エリアと判定して処理を終了する(ステップS23)。
【0058】
なお、図6に示したエリアの分割方法、および図7に示した処理手順は一例であり、エリア分割方法および車内外判定処理手順は、上述の例に限定されず、各車載機送信アンテナに対応するRSSIの値の組み合わせによりエリアを特定できるようなエリア分割方法および車内外判定処理手順であればよい。
【0059】
また、閾値の設定方法も上述の例に限定されない。図7の例では、ANT#1、ANT#2については閾値を共通化し(大、中、小の判定に共通の閾値A、B、Dを使用)、ANT#3についてはANT#1、ANT#2とは別の閾値(閾値C、E)用いている。これに限らず、例えば、ANT#3についてもANT#1、ANT#2と共通の閾値を用いてもよいし、またアンテナごとにそれぞれ個別に閾値を設定してもよい。また、上述の例では、RSSIを、閾値を用いて大、中、小の3つに区分して、図6に示したエリアごとのパターンに基づいて、携帯機が存在するエリアを判定するようにしたが、RSSIを区分する数はこれに限定されない。
【0060】
以上、スマートエントリシステムとしての動作例について説明したが、続いて、スマートスタートシステムとしての動作の詳細について説明する。図8は、スマートスタートシステムとしての車載機の動作手順の一例を示すフローチャートである。スマートスタートシステムの動作においても、スマートエントリシステムの動作と同様に、車載機は、常時携帯機の呼出信号を送信しているわけではなく、ユーザがエンジンをスタートしようとする意思表示をトリガとして呼出信号の送信が開始される。このトリガ動作としては、例えば、エンジン停止状態でユーザがブレーキを踏みエンジンスタートボタンを押すなどの動作が挙げられる。ここでは、車載機のトリガ動作検出部1がエンジンスタートの要求を示すトリガ動作を検出した後のスマートスタートシステムとしての動作を説明する。
【0061】
車載機は、ユーザのトリガ動作を検出後、携帯機に対して呼出信号を送信する。この呼出信号を送信する車載機送信アンテナとしては、運転席側車内送信アンテナ7、助手席側車内送信アンテナ8、トランク側車内送信アンテナ9のうちのどれを用いてもよい。本実施の形態では車載機送信アンテナは全て車内エリア200内に設置することから、携帯機が車内エリア200に存在すればどの車載機送信アンテナから呼出信号が送信されても十分な大きさのRSSIが得られると想定できる。したがって、呼出信号を送信する車載機送信アンテナについては規定せず、3本の車載機送信アンテナのうちの任意の車載機送信アンテナより送信が行われればよい。
【0062】
呼出信号の送信処理以降、車載機が回答信号を受信して車内外判定処理を行うまで(ステップS31〜ステップS35)は、前述したスマートエントリシステムの(ステップS1〜ステップS5)動作と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0063】
ステップS35の車内外判定の後、ECU4は、車内外判定の判定結果が、車内エリア200、近傍車外エリア300、遠方車外エリアのいずれであったかを判断し(ステップS36)、判定結果が車内エリア200であった場合(ステップS36 車内)は、エンジンスタートの動作を実施するようエンジンスタート部3を制御して処理を終了する(ステップS37)。判定結果が近傍車外エリア300または遠方車外エリアであった場合(ステップS36 近傍車外/遠方車外)、エンジンスタートを実施せずに動作を終了する(ステップS38)。
【0064】
また、ステップS32で応答信号を受信していないと判断した場合(ステップS32 No)、ステップS38へ進む。ステップS34で携帯機から回答信号を受信していないまたは正しく認証されなかったと判断した場合(ステップS34 No)、ステップS38へ進む。
【0065】
以上のように、本実施の形態では、車載機送信アンテナの設置箇所を、一般的な車両において施錠/解錠動作が必要とされる運転席扉、助手席扉、トランク扉の近傍エリアの3箇所に限定し、各車載機送信アンテナから携帯機が受信する車載機送信アンテナごとのRSSI情報に対して閾値判定により車内外判定を実施するようにした。このため、車載機送信アンテナを削減し、また、指向性制御機能を備える必要がないため、システムコストの抜本的な削減を図ることができる。また、RSSI情報を携帯機から車載機へとフィードバックする構成とすることにより、処理性能の高い車載機側のECU4を用いて車内外判定処理を行うことが可能となり、小型化,低消費電力化が特に求められる携帯機側で車内外判定処理を行う必要がなくなるという利点がある。
【0066】
実施の形態2.
図9は、本発明にかかる車載通信システムにおける車載機の実施の形態2の機能構成例を示す図である。図9に示すように、本実施の形態の車載機は、ECU4の替わりにECU4aを備える以外は、実施の形態1の車載機と同様である。図10は、本実施の形態の携帯機の機能構成例を示す図である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる部分を説明する。
【0067】
本実施の形態では、車載機のECU4aは、実施の形態1の閾値判定型車内外判定部42を備えず、携帯機のCPU21aが閾値判定型車内外判定部213を備える。また、携帯機のCPU21aは、車内外判定結果を車載機へフィードバックする車内外判定結果フィードバック部(判定結果フィードバック部)214を備える。
【0068】
本実施の形態では、携帯機は、自身が検出したRSSI情報に基づいて車内外判定処理を実施し、車内外判定結果を車載機へ送信する。車載機は、通知された車内外判定結果に基づいて扉施錠/解錠、エンジンスタート等の動作を制御する。
【0069】
本実施の形態の車内外のエリア区分は、実施の形態1と同様であり、例えば図6に示したエリア区分を用いるとする。図11は、本実施の形態にかかる車載機および携帯機が送信するフレームのフレームフォーマットの構成例を示す図である。図11に示すように、(a)〜(c)の呼出信号、応答信号、質問信号のフレームフォーマットは実施の形態1と同様である。
【0070】
図11の(d)携帯機から車載機へ送信される回答信号のフレームは、RSSI情報(RA、RB、RC)の替わりに車内外判定結果を含む以外は実施の形態1の回答信号と同様である。
【0071】
以下、本実施の形態の動作の詳細を説明する。まず、本実施の形態の車載通信システムのスマートエントリシステムとしての動作について説明する。図12は、本実施の形態のスマートエントリシステムとしての車載機の動作手順の一例を示すフローチャートである。車載機が、トリガを検出し、質問信号を送信するまでの動作(ステップS1〜ステップS3)は、実施の形態1のステップS1〜ステップS3と同様である。
【0072】
携帯機は、質問信号を受信し、各車載機送信アンテナから送信された信号に対するRSSIを検出する。その後、携帯機の閾値判定型車内外判定部213は、RSSI検出部251が検出したRSSIに基づいて、車内外判定を実施する。このときに用いる車内外判定アルゴリズムは、実施の形態1で説明したアルゴリズムと同様である。そして、車内外判定結果フィードバック部214は、図11の回答信号のフォーマットに示したように、車内外判定結果を回答信号に格納する。このようにして、車内外判定結果が格納された回答信号が携帯機から車載機へ送信される。
【0073】
車載機のECU4aは、携帯機からの回答信号を受信しかつ回答コードの認証が正しく行われたか否かを判断する(ステップS41)。回答信号を受信しかつ回答コードによる認証が正しく行われたたと判断した場合(ステップS41 Yes)、回答信号に格納された車内外判定結果に基づいて、携帯機が車内エリア200、近傍車外エリア300、遠方車外エリアのいずれであるかを判断する(ステップS6)。車内外判定結果が、近傍車外エリア300であった場合(ステップS6 近傍車外)、ユーザから要求された扉施錠または解錠の動作を実施するよう扉施錠/解錠部2を制御して処理を終了する(ステップS7)。
【0074】
判定結果が車内エリア200または遠方車外エリアであった場合(ステップS6 車内、遠方車外)、ユーザから要求された扉施錠または解錠の動作を実施せずに処理を終了する(ステップS8)。ステップS2で応答信号を受信していないと判断した場合(ステップS2 No)、およびステップS41で携帯機から回答信号を受信していないまたは回答コードによる認証が正しく行なわなかったと判断した場合(ステップS41 No)、ステップS8へ進む。
【0075】
全ての車載機送信アンテナからのRSSI情報を車載機へフィードバックする場合、フィードバックする情報量が増大し、回答信号のフレーム長が長くなってしまう。これに対し、車内外判定結果をフィードバックする場合、フィードバックする情報量はRSSI情報をフィードバックする場合に比べ小さくすることができる。車内外判定処理は処理性能の高い車載機側のECUを用いて行う方が携帯機の小型化,低消費電力化にとっては有利であるが、携帯機の小型化,低消費電力化に大きな影響を及ぼさない範囲であれば本実施の形態の構成にしてフィードバックの情報量を小さくすることが望ましい。
【0076】
以上、スマートエントリシステムとしての動作について説明したが、続いて、スマートスタートシステムとしての動作の詳細について説明する。図13は、スマートスタートシステムとしての車載機の動作手順の一例を示すフローチャートである。車載機が、トリガを検出し、質問信号を送信するまでの動作(ステップS31〜ステップS33)は、実施の形態1のステップS31〜ステップS33と同様である。
【0077】
携帯機は、質問信号を受信すると、スマートエントリシステムの場合と同様に車内外判定結果が格納された回答信号を車載機へ送信する。車載機のECU4aは、携帯機からの回答信号を受信しかつ回答コードの認証が正しく行われたか否かを判断する(ステップS42)。回答信号を受信しかつ回答コードによる認証が正しく行われたたと判断した場合(ステップS42 Yes)、回答信号に格納された車内外判定結果に基づいて、携帯機が車内エリア200、近傍車外エリア300、遠方車外エリアのいずれであるかを判断する(ステップS36)。車内外判定結果が、車内エリア200であった場合(ステップS36 車内)、ユーザから要求されたユーザから要求されたエンジンスタート動作を実施するようエンジンスタート部3を制御して処理を終了する(ステップS37)。
【0078】
判定結果が近傍車外エリア300または遠方車外エリアであった場合(ステップS36 近傍車外/遠方車外)、エンジンスタート動作を実施せずに処理を終了する(ステップS38)。ステップS2で応答信号を受信していないと判断した場合(ステップS32 No)、およびステップS42で携帯機から回答信号を受信していないまたは回答コードによる認証が正しく行なわなかったと判断した場合(ステップS42 No)、ステップS38へ進む。
【0079】
以上のように、本実施の形態では、車載機送信アンテナの設置箇所を、一般的な車両において施錠/解錠動作が必要とされる運転席扉、助手席扉、トランク扉の近傍エリアの3箇所に限定し、各車載機送信アンテナから携帯機が受信する車載機送信アンテナごとのRSSI情報に対して、携帯機が閾値判定により車内外判定を実施して、判定結果を車載機へ送信するようにした。このため、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、携帯機から車載機へフィードバックする情報量を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明にかかる車載通信システム、車載通信装置および位置判定方法は、スマートエントリシステム、スマートスタートシステムに有用であり、特に、携帯機の位置の判定を行うシステムに適している。
【符号の説明】
【0081】
1 トリガ動作検出部
2 扉施錠/解錠部
3 エンジンスタート部
4,4a ECU
5,22 送信部
6 送信アンテナ選択部
7 運転席側車内送信アンテナ
8 助手席側車内送信アンテナ
9 トランク側車内送信アンテナ
10,24 受信アンテナ
11,25 受信部
21,21a CPU
23 送信アンテナ
100 車両
200 車内エリア
41,211 メモリ部
42,213 閾値判定型車内外判定部
212 RSSIフィードバック部
214 車内外判定結果フィードバック部
300 近傍車外エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機と、車両に搭載され複数のエリアのうち前記携帯機が存在するエリアを判定する車載機と、を備える車載通信システムであって、
前記携帯機は、
前記車載機から受信した信号の受信信号強度を検出する受信信号強度検出部と、
前記受信信号強度を前記車載機へ送信する受信信号強度フィードバック部と、
を備え、
前記車載機は、
前記車両内の運転席近傍に設置された運転席側車内送信アンテナと、
前記車両内の助手席近傍に設置された助手席側車内送信アンテナと、
前記車両内のトランク近傍に設置されたトランク側車内送信アンテナと、
前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナの3本の送信アンテナのうちから信号の送信に用いる送信アンテナを選択する送信アンテナ選択部と、
前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナのそれぞれから異なる時間帯で信号を送信するよう前記送信アンテナ選択部を制御する車載機制御部と、
前記携帯機から受信した前記送信アンテナごとの受信信号強度を所定の閾値と比較することにより当該受信信号強度に対応する強度段階を求め、前記送信アンテナごとの求めた強度段階に基づいて前記携帯機が存在するエリアを判定する位置判定部と、
を備えることを特徴とする車載通信システム。
【請求項2】
携帯機と、車両に搭載され、複数のエリアのうち前記携帯機が存在するエリアを判定する車載機と、を備える車載通信システムであって、
前記携帯機は、
前記車載機から受信した信号の受信信号強度を検出する受信信号強度検出部と、
前記受信信号強度検出部が検出した前記送信アンテナごとの受信信号強度を所定の閾値と比較することにより当該受信信号強度に対応する強度段階を求め、前記送信アンテナごとの求めた強度段階に基づいて前記携帯機が存在するエリアを判定する位置判定部と、
前記位置判定部の判定結果を前記車載機へ送信する判定結果フィードバック部と、
を備え、
前記車載機は、
前記車両内の運転席近傍に設置された運転席側車内送信アンテナと、
前記車両内の助手席近傍に設置された助手席側車内送信アンテナと、
前記車両内のトランク近傍に設置されたトランク側車内送信アンテナと、
前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナの3本の送信アンテナのうちから信号の送信に用いる送信アンテナを選択する送信アンテナ選択部と、
前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナのそれぞれから信号を送信するよう前記送信アンテナ選択部を制御する車載機制御部と、
を備えることを特徴とする車載通信システム。
【請求項3】
前記車載機は、
前記車載機制御部からの指示に基づいて前記車両の扉の施錠または解錠を行う扉施錠解錠部と、
前記車両の扉の施錠または解錠が要求されたことを示すトリガ動作を検出するエントリトリガ動作検出部と、
を備え、
前記車載機制御部は、前記エントリトリガ動作検出部によりトリガ動作が検出されると、前記携帯機と通信を開始するための呼出信号を送信することを特徴とする請求項1または2に記載の車載通信システム。
【請求項4】
前記エントリトリガ動作検出部は、トリガ動作を検出した場所を特定し、
前記車載機制御部は、前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナのうち、トリガ動作が検出された場所に近い送信アンテナを用いて前記呼出信号を送信するよう前記送信アンテナ選択部を制御することを特徴とする請求項3に記載の車載通信システム。
【請求項5】
前記車載機制御部は、前記位置判定部により判定された判定結果に基づいて前記トリガ動作により要求された車両の扉の施錠または解錠を行うか否かを判断し、判断結果に基づいて前記扉施錠解錠部へ扉の施錠または解錠を指示することを特徴とする請求項3または4に記載の車載通信システム。
【請求項6】
前記車載機は、
前記車載機制御部からの指示に基づいて前記車両のエンジンスタート動作を行うエンジンスタート部と、
前記車両のエンジンスタートが要求されたことを示すトリガ動作を検出するエンジントリガ動作検出部と、
を備え、
前記車載機制御部は、前記エンジントリガ動作検出部によりトリガ動作が検出されると、前記携帯機と通信を開始するための呼出信号を送信することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の車載通信システム。
【請求項7】
前記車載機制御部は、前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナのうち任意の1つの送信アンテナを用いて前記呼出信号を送信するよう前記送信アンテナ選択部を制御することを特徴とする請求項6に記載の車載通信システム。
【請求項8】
前記車載機制御部は、前記位置判定部により判定された判定結果に基づいて前記トリガ動作により要求されたエンジンスタートを行うか否かを判断し、判断結果に基づいて前記エンジンスタート部へエンジンスタート動作の開始を指示することを特徴とする請求項6または7に記載の車載通信システム。
【請求項9】
車両に搭載され複数のエリアのうち携帯機が存在するエリアを判定する車載通信装置であって、
前記車両内の運転席近傍に設置された運転席側車内送信アンテナと、
前記車両内の助手席近傍に設置された助手席側車内送信アンテナと、
前記車両内のトランク近傍に設置されたトランク側車内送信アンテナと、
前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナの3本の送信アンテナのうちから信号の送信に用いる送信アンテナを選択する送信アンテナ選択部と、
前記運転席側車内送信アンテナ、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナのそれぞれから異なる時間帯で信号を送信するよう前記送信アンテナ選択部を制御する車載機制御部と、
前記携帯機から受信した前記送信アンテナごとの受信信号強度を所定の閾値と比較することにより当該受信信号強度に対応する強度段階を求め、前記送信アンテナごとの求めた強度段階に基づいて前記携帯機が存在するエリアを判定する位置判定部と、
を備えることを特徴とする車載通信装置。
【請求項10】
携帯機と、車両に搭載され複数のエリアのうち前記携帯機が存在するエリアを判定する車載機と、を備える車載通信システムにおける前記携帯機の位置判定方法であって、
前記車載機は、
前記車両内の運転席近傍に設置された運転席側車内送信アンテナと、
前記車両内の助手席近傍に設置された助手席側車内送信アンテナと、
前記車両内のトランク近傍に設置されたトランク側車内送信アンテナと、
を備え、
前記車載機が、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナのそれぞれから異なる時間帯で信号を送信する信号送信ステップと、
前記携帯機が、前記車載機から受信した信号の受信信号強度を検出する受信信号強度検出ステップと、
前記携帯機が、前記受信信号強度を前記車載機へ送信する受信信号強度フィードバック部と、
前記携帯機から受信した前記送信アンテナごとの受信信号強度を所定の閾値と比較することにより当該受信信号強度に対応する強度段階を求め、前記送信アンテナごとの求めた強度段階に基づいて前記携帯機が存在するエリアを判定する位置判定ステップと、
を含むことを特徴とする位置判定方法。
【請求項11】
携帯機と、車両に搭載され複数のエリアのうち前記携帯機が存在するエリアを判定する車載機と、を備える車載通信システムにおける前記携帯機の位置判定方法であって、
前記車載機は、
前記車両内の運転席近傍に設置された運転席側車内送信アンテナと、
前記車両内の助手席近傍に設置された助手席側車内送信アンテナと、
前記車両内のトランク近傍に設置されたトランク側車内送信アンテナと、
を備え、
前記車載機が、前記助手席側車内送信アンテナ、前記トランク側車内送信アンテナのそれぞれから異なる時間帯で信号を送信する信号送信ステップと、
前記携帯機が、前記車載機から受信した信号の受信信号強度を検出する受信信号強度検出ステップと、
前記車載機が、前記受信信号強度検出ステップで検出した前記送信アンテナごとの受信信号強度を所定の閾値と比較することにより当該受信信号強度に対応する強度段階を求め、前記送信アンテナごとの求めた強度段階に基づいて前記携帯機が存在するエリアを判定する位置判定ステップと、
前記位置判定部の判定結果を前記車載機へ送信する判定結果フィードバックステップと、
を含むことを特徴とする位置判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−100672(P2013−100672A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244637(P2011−244637)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】