説明

車載通信システム及び通信制御機能付きコネクタ装置

【課題】車載ネットワークの通信方式等の変更やバージョンアップについて柔軟性を持たせ、各電装モジュール等の処理についての負荷を軽減する。
【解決手段】車載ネットワーク71の通信方式の制御を通信制御機能付きコネクタ装置69に委ね、電装モジュール63,65,67を通信方式以外のそれぞれ固有の処理に特化させる。各通信制御機能付きコネクタ装置69の書き換え可能な不揮発性記憶装置97に通信方式に係る制御プログラムを書換可能に格納し、通信方式の変更またはバージョンアップについて、各通信制御機能付きコネクタ装置69の不揮発性記憶装置97の制御プログラムのみを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電装ユニット間で通信を行う車載通信システム及び通信制御機能付きコネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子通信技術の発展に伴い、自動車の電装ユニットは増加の一途をたどっており、配線数の増大を抑制するために、自動車内のネットワーク化により多重通信が実施されつつある。これに伴い、車載ネットワークに接続される電装ユニットがモジュール化されている。
【0003】
例えば、図4の如く、自動車の電装ユニットとしては、エンジンモジュール1、リアシートモジュール3、ドアモジュール5a〜5d、運転席(D席)シートモジュール7、インストルメントパネル(インパネ)モジュール9、助手席(P席)シートモジュール11及びルーフモジュール13等が搭載される。そして、これらの各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13は、例えば光ケーブル等の各種通信経路、即ち、幹線15、制御系通信線17及び車体系通信線19等によって接続されて、車載ネットワークが構築される。
【0004】
このように、自動車内の電装ユニットをモジュール化して車載ネットワークを構築する場合、例えば図5の如く、電装ユニット43は、当該電装ユニット43側のコネクタ45に対して、光ケーブル47a,47b、給電線49及びグランド線51が接続されたコネクタ53を光学的及び電気的に接続し、光ケーブル47a,47bに対しては所定の光部品55で入出力を行い、この光部品55で入出力される信号がCPU57で処理されて、様々な負荷59の駆動が行われようになっている。尚、図5中の符号61は電源回路を示している。
【0005】
このような車載ネットワークを通じた各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43の通信は、各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43自身またはこれらとは別個に設けられた集中管理ユニット(図示省略)で管理される。これにより、多重通信のプロトコル等が一定である限り、非常に効率のよい通信システムを構築することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車に対する購買者のニーズは多様であり、製品としての自動車を個々のユーザーのニーズに合致させるためには、車載ネットワークに接続される電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43を個別に変更またはバージョンアップしていかなければならない。
【0007】
また、通信技術は日進月歩で進化しているため、通信速度や通信品質の向上を図るためには、車載ネットワークに適用される通信プロトコルの通信方式自体、例えば通信プロトコルの物理層やデータリンク層について変更またはバージョンアップを行うことが望ましい。
【0008】
このように、車載ネットワークに接続される電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43や通信方式等が変更またはバージョンアップされる場合において、車載ネットワークでの通信を各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43自身またはこれらとは別個に設けられた集中管理ユニットで管理する場合、これらのユニットに適用されるプログラムも、自動車に搭載される電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43や車載ネットワークでの通信方式(通信プロトコルの物理層またはデータリンク層)が変更またはバージョンアップされるたびに変更またはバージョンアップされる必要がある。
【0009】
しかしながら、自動車の電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43は、車種、車格及びオプション品に対するユーザーの嗜好により様々な組合せがあり、自動車に搭載される電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43の種類が増大すればするほど、その管理項目が増大する。そして、電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43の変更またはバージョンアップは、個々の電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43毎に個別に行われるため、そのための管理プログラム等の変更またはバージョンアップが煩雑となる。
【0010】
そして、かかる各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43の管理に加えて、これらの各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43とは別個に変更またはバージョンアップされる通信方式の管理まで各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43自身またはこれらとは別個に設けられた集中管理ユニットで行うこととすると、これらのユニットにおいて、多数の電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43の管理プログラムと通信方式の管理プログラム等の両方を頻繁に変更またはバージョンアップせざるを得ず、非効率である。
【0011】
さらに、各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43の管理と通信方式の管理とを各電装ユニット1,3,5a〜5d,7,9,11,13,43自身またはこれらとは別個に設けられた集中管理ユニットで行うこととすると、これらのユニット内のCPUの負荷が膨大なものとなり、処理能力に限界が生じることとなる。
【0012】
そこで、本発明の課題は、通信システムの通信方式等の変更やバージョンアップについて柔軟性を持たせることができ、且つ各電装ユニット等の処理についての負荷を軽減できる車載通信システム及び通信制御機能付きコネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、自動車内の複数の電装ユニットの間で所定の車載ネットワークを通じて通信を行う車載通信システムであって、複数の前記電装ユニットと、前記各電装ユニットにそれぞれ着脱自在に接続されるとともに前記車載ネットワークに接続され、前記車載ネットワークを通じた通信方式の制御を司る複数の通信制御機能付きコネクタ装置とを備えるものである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載通信システムであって、前記各通信制御機能付きコネクタ装置が、前記車載ネットワークを通じた通信方式の制御を司る通信処理部と、前記通信処理部での制御を規定する制御プログラムが格納される書き換え可能な不揮発性記憶装置とを備えるものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車載通信システムであって、前記各通信制御機能付きコネクタ装置が、所定の専用のプログラム書き換え装置に接続可能とされ、当該プログラム書き換え装置から、新たな通信方式の制御プログラムが与えられた場合に、当該通信制御機能付きコネクタ装置の不揮発性記憶装置内に格納された制御プログラムを前記新たな通信方式の制御プログラムに書き換えるとともに、前記新たな通信方式の制御プログラムを、前記車載ネットワークを通じて他の通信制御機能付きコネクタ装置に伝送する機能を有するものである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、自動車内の電装ユニットを所定の車載ネットワークに着脱自在に接続する通信制御機能付きコネクタ装置であって、前記車載ネットワークを通じた通信方式の制御を司るものである。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の通信制御機能付きコネクタ装置であって、前記車載ネットワークを通じた通信方式の制御を司る通信処理部と、前記通信処理部での制御を規定する制御プログラムが格納される書き換え可能な不揮発性記憶装置とを備えるものである。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の通信制御機能付きコネクタ装置であって、所定の専用のプログラム書き換え装置に接続可能とされ、前記プログラム書き換え装置から、新たな通信方式の制御プログラムが与えられた場合に、当該通信制御機能付きコネクタ装置の不揮発性記憶装置内に格納された制御プログラムを前記新たな通信方式の制御プログラムに書き換えるとともに、前記新たな通信方式の制御プログラムを、前記車載ネットワークを通じて他の通信制御機能付きコネクタ装置に伝送する機能と、不揮発性記憶装置内に格納された制御プログラムを、他の通信制御機能付きコネクタ装置から前記車載ネットワークを通じて与えられた前記新たな通信方式の制御プログラムに書き換える機能とを有するものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1及び請求項4に記載の発明によれば、通信制御機能付きコネクタ装置の処理能力を通信処理に特化させるとともに、電装ユニットの処理能力を当該電装ユニットでの固有の処理に特化させることができる。したがって、電装ユニットと通信制御機能付きコネクタ装置の両方の性能をフルに活用することが可能となり、各電装ユニットの処理速度及び通信の高速化を容易に行うことができる。
【0020】
請求項2及び請求項5に記載の発明によれば、通信方式の変更またはバージョンアップを行う場合に、通信制御機能付きコネクタ装置の不揮発性記憶装置内に格納された制御プログラムのみを更新するだけでよく、電装ユニットにおいてプログラムの変更またはバージョンアップを一切行わないで済む。したがって、通信方式の変更またはバージョンアップを容易に行うことができ、簡単な作業で通信方式を最新のものに変更できる。
【0021】
請求項3及び請求項6に記載の発明によれば、例えば車載ネットワークが既に自動車内に配設されている場合などにおいて、当該車載ネットワークに接続された複数の通信制御機能付きコネクタ装置のうち、プログラム書き換え装置を最も接続しやすい位置に配置された通信制御機能付きコネクタ装置のみに接続して新たなプログラム等を入力するだけで、自動車内の様々な位置に配設された通信制御機能付きコネクタ装置に対して、通信方式の変更またはバージョンアップを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<構成>
図1は本発明の一の実施形態に係る車載通信システムを示すブロック図、図2はこの車載通信システムの一部を示すブロック図である。
【0023】
この車載通信システムは、図1の如く、自動車内の複数の電装ユニット63,65,67の間で所定の車載ネットワーク71を通じて通信を行うよう構成されたものであり、複数の電装モジュール63,65,67と、この各電装モジュール63,65,67にそれぞれ接続される通信制御機能付きコネクタ装置69とを備える。
【0024】
各電装モジュール63,65,67は、図1の如く、例えば、ラジエータモジュール63、エンジンモジュール65及びその他モジュール67であり、図2の如く、所定の接続コネクタ75により通信制御機能付きコネクタ装置69に着脱自在に接続される構成となっており、それぞれ所定の負荷73を駆動するとともに、通信制御機能付きコネクタ装置69及び車載ネットワーク71を通じて他の電装モジュール63,65,67と通信を行うようになっている。
【0025】
各電装モジュール63,65,67には、制御機能部品としてのCPU等の処理部77が内蔵されており、この処理部77により、他の電装モジュール63,65,67と通信を行いながら、かかる通信により受信された制御指令信号等に基づいて負荷73の駆動制御が行われる。また、電装モジュール63,65,67の処理部77は、図示しない所定の記憶装置内に予め格納されたプログラムに従って、車載ネットワーク71を通じて行われる通信の通信プロトコルのネットワーク層、トランスポート層、セッション層、プレゼンテーション層及びアプリケーション層の通信制御を行うようになっている。
【0026】
尚、各電装モジュール63,65,67の接続コネクタ75と通信制御機能付きコネクタ装置69との間では、電気的信号の授受と給電とが行われるようになっている。図2中の符号79a,79bは制御系の電気的信号経路を、符号81は給電線を、符号83はグランド線をそれぞれ示している。
【0027】
通信制御機能付きコネクタ装置69は、各電装モジュール63,65,67に対して着脱自在に接続可能とされ、当該電装モジュール63,65,67との間で例えば汎用的な高速シリアル通信を行うとともに、車載ネットワーク71における通信プロトコルの物理層を規定し、且つ、同じくデータリンク層の制御を行う機能が付与されており、図2の如く、CPU等の通信処理部91と、電源回路93と、光通信インターフェースを成す光部品95と、フラッシュROM等の所定の書き換え可能な不揮発性記憶装置97とを備える。
【0028】
通信処理部91は、不揮発性記憶装置97内に予め格納された制御プログラムに規定された手順で動作するようになっており、光部品95及び車載ネットワーク71を通じて他の電装モジュール63,65,67と通信を行いながら、例えばこの通信により与えられた制御信号等に基づいて、電源回路93のオンオフ制御を行い、当該通信制御機能付きコネクタ装置69が直接接続された電装モジュール63,65,67の電源制御を行う機能を有する。
【0029】
また、通信処理部91は、光部品95及び車載ネットワーク71を通じて、制御プログラムの変更またはバージョンアップを行うよう指令するための指令信号(書換指令信号)と、書き換えられるべき新たな通信方式の制御プログラムとを受信した場合に、不揮発性記憶装置97内に格納された制御プログラムを新たな通信方式の制御プログラムに更新して変更またはバージョンアップを行う機能を有する。
【0030】
さらに、通信制御機能付きコネクタ装置69は、電装モジュール63,65,67に代えて、所定の専用のプログラム書き換え装置(図示省略)に接続可能となっており、このプログラム書き換え装置が接続されて、当該プログラム書き換え装置から書換指令信号及び新たな通信方式の制御プログラムが入力された場合に、不揮発性記憶装置97内に格納された制御プログラムを新たな通信方式の制御プログラムに更新して変更またはバージョンアップを行うとともに、この書換指令信号及び新たな通信方式の制御プログラムを、光部品95及び車載ネットワーク71を通じて、当該車載ネットワーク71に接続された他の全ての通信制御機能付きコネクタ装置69に、同報的に送信(ブロードキャスト送信)する機能を有する。
【0031】
電源回路93は、給電線101a、グランド線101b及び電源制御信号伝送用電線101cに接続されて、電源制御信号伝送用電線101cから与えられた電源制御信号に基づいて電源回路93自身電装モジュール63,65,67の電源のオンオフ制御を行うとともに、通信処理部91からの信号にも基づいて電源回路93自身電装モジュール63,65,67の電源のオンオフ制御を行うようになっている。
【0032】
光部品95は、発光素子及び受光素子を備えた光学結合装置であり、通信処理部91との間の電気的信号と、車載ネットワーク71の光ケーブル99a,99bとの間の光学的信号とを変換する光インターフェース部品である。
【0033】
尚、図1中の符号103はエンジンルーム内で車載ネットワーク71の中継接続を行うジャンクションボックスを示している。
【0034】
<車載通信システムの通信動作>
上記構成の車載通信システムにおいて、各電装モジュール63,65,67は、当該電装モジュール63,65,67自身の管理のみを集中的に行うこととし、従来においてこれらのユニットが行っていた通信方式(通信プロトコルの物理層またはデータリンク層)の管理は、通信制御機能付きコネクタ装置69側で実行する。
【0035】
具体的に、いずれかの電装モジュール63,65,67(送信元)から他の電装モジュール63,65,67(送信先)に対して何らかの伝送信号が送信される場合、当該電装モジュール63,65,67において、その伝送信号についての通信プロトコルのネットワーク層、トランスポート層、セッション層、プレゼンテーション層及びアプリケーション層の通信制御が行われ、当該送信元の電装モジュール63,65,67に直接接続された通信制御機能付きコネクタ装置69に対して、その伝送信号が入力される。
【0036】
伝送信号が入力された通信制御機能付きコネクタ装置69においては、通信処理部91によってデータリンク層の調整が行われて、光部品95によって光学的信号に変換され、光ケーブル99a,99bを通じて他の通信制御機能付きコネクタ装置69に伝送される。
【0037】
この際、光学的信号内には、送信先のアドレス等の情報が含まれているため、送信先の通信制御機能付きコネクタ装置69では、その光学的信号を光部品95により電気信号に変換し、その送信先内の通信処理部91で受信処理を行って、電源回路93により電装モジュール63,65,67の電源制御を行いながら、当該伝送信号が電装モジュール63,65,67に受け渡される。
【0038】
当該伝送信号を受け取った送信先の電装モジュール63,65,67では、当該伝送信号内の情報に基づいて、例えば負荷73の駆動制御を行う等の所定の処理を行う。
【0039】
かかる動作においては、通信プロトコルの物理層とデータリンク層の調整が通信制御機能付きコネクタ装置69に任されており、各電装モジュール63,65,67の処理部77は、負荷73の駆動制御等の本来的な機能に集中して動作することになる。したがって、負荷73の駆動制御と通信制御との両方を処理していた従来に比べて、電装モジュール63,65,67の処理部77の処理負荷を軽減することができ、効率的な処理を行うことが可能となる。特に、電装モジュール63,65,67による負荷73の駆動制御が高度化すればするほど、電装モジュール63,65,67の処理部77の処理効率が求められるため、処理を電装モジュール63,65,67と通信制御機能付きコネクタ装置69とに分散させることにより、電装モジュール63,65,67のさらなる高機能化を図ることが可能となる。
【0040】
また、通信制御機能付きコネクタ装置69側の通信処理部91でも、その処理能力を通信処理に特化させることができる。
【0041】
したがって、電装モジュール63,65,67と通信制御機能付きコネクタ装置69の各処理部77,91の両方の性能をフルに活用することが可能となり、負荷73の駆動制御の処理速度及び通信の高速化を容易に行うことができる。
【0042】
<車載通信システムの変更またはバージョンアップ動作>
まず、通信方式について、その変更またはバージョンアップを行う場合、通信制御機能付きコネクタ装置69内の不揮発性記憶装置97に格納された制御プログラムを変更またはバージョンアップするだけでよい。
【0043】
具体的に、作業者は、車載ネットワーク71に接続された複数の通信制御機能付きコネクタ装置69のうち、いずれかひとつの通信制御機能付きコネクタ装置69のみを選択し、この通信制御機能付きコネクタ装置69に、図示しない専用のプログラム書き換え装置を接続する。
【0044】
そして、このプログラム書き換え装置を動作させて、当該プログラム書き換え装置から、書換指令信号及び新たな通信方式の制御プログラムを、選択したひとつの通信制御機能付きコネクタ装置69に入力する。
【0045】
このとき、その選択された通信制御機能付きコネクタ装置69の通信処理部91は、不揮発性記憶装置97内に格納された制御プログラムを新たな通信方式の制御プログラムに更新して変更またはバージョンアップを行う。
【0046】
かかる動作ととともに、その選択された通信制御機能付きコネクタ装置69の通信処理部91は、この書換指令信号及び新たな通信方式の制御プログラムを、光部品95及び車載ネットワーク71を通じて、当該車載ネットワーク71に接続された他の全ての通信制御機能付きコネクタ装置69に同報的に送信(ブロードキャスト送信)する。
【0047】
そして、上記の他の通信制御機能付きコネクタ装置69においては、その各々の通信処理部91が、車載ネットワーク71から与えられた書換指令信号に応じて、同じく与えられた新たな通信方式の制御プログラムを、不揮発性記憶装置97内に更新的に格納する。
【0048】
このようにすることで、車載ネットワーク71に接続されている全ての通信制御機能付きコネクタ装置69の制御プログラムを一度に変更またはバージョンアップすることが可能である。
【0049】
あるいは、各通信制御機能付きコネクタ装置69において、必要に応じてのみ新たな通信方式の制御プログラムを不揮発性記憶装置97に記憶するだけであっても差し支えない。
【0050】
さらに、上記のように送信元の通信制御機能付きコネクタ装置69から送信先の通信制御機能付きコネクタ装置69にブロードキャスト送信するのではなく、いずれかひとつの送信元の通信制御機能付きコネクタ装置69に専用のプログラム書き換え装置が接続されている状態で、他の通信制御機能付きコネクタ装置69側で新たな通信方式の制御プログラムをダウンロードするようにしてもよい。この場合、他の通信制御機能付きコネクタ装置69側から、新たな通信方式の制御プログラムの発信要求信号を車載ネットワーク71に例えばブロードキャスト送信し、車載ネットワーク71上でこの発信要求信号を送信元の通信制御機能付きコネクタ装置69で検出したときに、かかる発信要求信号に対応して新たな通信方式の制御プログラムが送信される。これにより、任意の通信制御機能付きコネクタ装置69に対して新たな通信方式の制御プログラムの変更またはバージョンアップを行うことができる。
【0051】
このようにすることで、例えば車載ネットワーク71が既に自動車内に配設されている場合などにおいて、当該車載ネットワーク71に接続された複数の通信制御機能付きコネクタ装置69のうち、例えば自動車のトランクルームに設置される通信制御機能付きコネクタ装置69など、プログラム書き換え装置を最も接続しやすい位置に配置された通信制御機能付きコネクタ装置69のみに接続して新たなプログラム等を入力するだけで、自動車内の様々な位置に配設された通信制御機能付きコネクタ装置69に対して、通信方式の変更またはバージョンアップを容易に行うことができる。
【0052】
また、この場合において、負荷73に接続される電装モジュール63,65,67に対しては、そのプログラムの変更またはバージョンアップを一切行わないで済む。したがって、通信方式の変更またはバージョンアップを容易に行うことができ、簡単な作業で通信方式を最新のものに変更できる利点がある。
【0053】
さらに、電装モジュール63,65,67自身のプログラムの変更またはバージョンアップについては、それぞれの電装モジュール63,65,67自身の固有の方法でプログラムの変更またはバージョンアップを行えばよい。この場合、各電装モジュール63,65,67に新たに適用されるプログラムの処理手順が、通信制御機能付きコネクタ装置69で適用される通信方式に適合する限り、その通信制御機能付きコネクタ装置69や他の電装モジュール63,65,67についてプログラムの変更またはバージョンアップを行う必要がない。したがって、電装モジュール63,65,67自身のプログラムの変更またはバージョンアップを容易に行うことができる。
【0054】
したがって、電装モジュール63,65,67と通信制御機能付きコネクタ装置69の双方において、各プログラムの変更またはバージョンアップにおける影響範囲を限りなく狭くすることが可能となり便利である。
【0055】
尚、上記実施形態において、車載ネットワーク71に光ケーブル99a,99bを使用る例について説明したが、電気信号を伝送する電線等が使用されても差し支えない。
【0056】
また、上記実施形態では、電装モジュール63,65,67において、CPU等の単一の処理部77が内蔵されている例について説明したが、図3のように、電装モジュール63,65,67内に複数の電子ユニット111a,111bが備えられ、この各電子ユニット111a,111bがCPU等の処理部77をそれぞれ備えると共に、この各電子ユニット111a,111bの各処理部77が、モジュール内配線113を通じて通信制御機能付きコネクタ装置69に共通に接続されるような構成であっても差し支えない。この場合、通信制御機能付きコネクタ装置69において、車載ネットワーク(ワイヤーハーネス)71から受けた情報を、電装モジュール63,65,67内に複数の電子ユニット111a,111bの各処理部77に伝達するようにすればよい。かかる図3の例であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一の実施形態に係る車載通信システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の一の実施形態に係る車載通信システムの一部を示すブロック図である。
【図3】車載通信システムの他の例を示すブロック図である。
【図4】一般的な車載通信システムを示すブロック図である。
【図5】従来の車載通信システムの一部を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
63,65,67 電装モジュール
69 通信制御機能付きコネクタ装置
71 車載ネットワーク
73 負荷
75 接続コネクタ
77 処理部
91 通信処理部
93 電源回路
95 光部品
97 不揮発性記憶装置
99a,99b 光ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内の複数の電装ユニットの間で所定の車載ネットワークを通じて通信を行う車載通信システムであって、
複数の前記電装ユニットと、
前記各電装ユニットにそれぞれ着脱自在に接続されるとともに前記車載ネットワークに接続され、前記車載ネットワークを通じた通信方式の制御を司る複数の通信制御機能付きコネクタ装置と
を備える車載通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記各通信制御機能付きコネクタ装置が、
前記車載ネットワークを通じた通信方式の制御を司る通信処理部と、
前記通信処理部での制御を規定する制御プログラムが格納される書き換え可能な不揮発性記憶装置と
を備える車載通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車載通信システムであって、
前記各通信制御機能付きコネクタ装置が、所定の専用のプログラム書き換え装置に接続可能とされ、当該プログラム書き換え装置から、新たな通信方式の制御プログラムが与えられた場合に、当該通信制御機能付きコネクタ装置の不揮発性記憶装置内に格納された制御プログラムを前記新たな通信方式の制御プログラムに書き換えるとともに、前記新たな通信方式の制御プログラムを、前記車載ネットワークを通じて他の通信制御機能付きコネクタ装置に伝送する機能を有することを特徴とする車載通信システム。
【請求項4】
自動車内の電装ユニットを所定の車載ネットワークに着脱自在に接続する通信制御機能付きコネクタ装置であって、
前記車載ネットワークを通じた通信方式の制御を司ることを特徴とする通信制御機能付きコネクタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の通信制御機能付きコネクタ装置であって、
前記車載ネットワークを通じた通信方式の制御を司る通信処理部と、
前記通信処理部での制御を規定する制御プログラムが格納される書き換え可能な不揮発性記憶装置と
を備える通信制御機能付きコネクタ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の通信制御機能付きコネクタ装置であって、
所定の専用のプログラム書き換え装置に接続可能とされ、
前記プログラム書き換え装置から、新たな通信方式の制御プログラムが与えられた場合に、当該通信制御機能付きコネクタ装置の不揮発性記憶装置内に格納された制御プログラムを前記新たな通信方式の制御プログラムに書き換えるとともに、前記新たな通信方式の制御プログラムを、前記車載ネットワークを通じて他の通信制御機能付きコネクタ装置に伝送する機能と、
不揮発性記憶装置内に格納された制御プログラムを、他の通信制御機能付きコネクタ装置から前記車載ネットワークを通じて与えられた前記新たな通信方式の制御プログラムに書き換える機能と
を有することを特徴とする通信制御機能付きコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−27382(P2006−27382A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207006(P2004−207006)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)