説明

車載通信端末装置および車両内部データ配信方法

【課題】車両からセンタ装置へリアルタイムで配信する情報のデータ量を削減し、車両とセンタ装置との間の通信負荷を分散させ、低減させる。
【解決手段】車載通信端末装置10は、車両内電子装置から出力された車両内部データを、車載ネットワークIF処理部1011を介して受信し、その車両内部データを車両内部データ分類処理部1013で安全用データ、車両診断用データ、走行履歴用データ、情報端末用データに分類する。さらに、車載通信端末装置10は、安全用データについては、安全用データ配信処理部1032により直ちに配信し、他の車両内部データについては、それぞれ、車両診断用データバッファ1023、走行履歴用データバッファ1024、情報端末用データバッファ1025に一時記憶した後、配信するが、車両診断用データについては、車両の走行が停止した後にセンタへ配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内電子装置から取得された車両内部データを分類してセンタシステムへ配信する車載通信端末装置および車両内部データ配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路を走行する車両においては、安全性向上の要請や、排ガス規制など環境対応の要請に応えるために、エンジン、ブレーキ、エアバッグなどの各種の制御装置の電子化が進行し、その電子化された制御装置(ECU:Electric Control Unit)を用いることによって、高度な情報処理を伴う様々な制御が実現されつつある。さらに、これらのECUは、車内ネットワークで相互に接続され、互いに協調した制御が行われるようになり、それぞれのECUで取得された様々なセンサデータや制御データがその車載ネットワークを介して送受信されている。
【0003】
さらに、各ECUがセンサデータや制御データの履歴を内部に保持しておき、その履歴を運転診断や車両の故障診断へ利用するための試みが始められている。例えば、テレマティクスサービスの一環として、ECUなどに保持されているデータが運転診断用の車両情報として携帯電話網を介して車両からセンタシステムに収集されている。今後、携帯電話網などの無線通信手段を用いた車両情報の収集は、運転診断用のみならず車両診断用にも適用されていくことが見込まれている。
【0004】
特許文献1には、車両内のECUから車両診断用の故障情報を収集し、収集した故障情報をセンタシステムに送信する車両情報収集システムの例が開示されている。また、特許文献2には、車両の走行履歴情報をリアルタイムで収集するシステムにおいて、車両の速度や走行距離に応じて、走行履歴情報をセンタシステムに送信する頻度を変え、無線通信回線における通信量を削減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−134529号公報
【特許文献2】特開2006−79504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、特許文献1および特許文献2に開示されているように、車両からセンタシステムへ送信される情報の種別は、おおむね1つに限られることが多かった。これは、その情報を利用する目的や用途が、「車両診断用」などのようにあらかじめ限定されていたからである。しかしながら、各車両1台から、車両診断、運転診断、交通情報取得など様々な目的で車両情報を取得しようとするセンタシステムは、すでに構想されているところであり、その構想が実現された場合には、車両からセンタシステムへ送信されるデータ量が膨大なものとなり、各車両とセンタシステムとをつなぐ無線通信回線は、帯域不足に陥る恐れがある。
【0007】
以上の従来技術の問題点に鑑み、本発明は、車両からセンタシステムへリアルタイムで配信する情報のデータ量を削減させ、車両とセンタシステムとの間の通信負荷を分散させ、低減させることが可能な車載通信端末装置および車両内部データ配信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の従来技術の問題点に鑑み、本発明の車載通信端末装置では、車両内電子装置から出力された車両内部データを取得したとき、その取得した車両内部データを、あらかじめ定められた車両内部データ分類定義情報に基づき分類し、その分類した車両内部データを、その分類種別ごとにあらかじめ定められたタイミングでセンタシステムへ配信するようにした。
【0009】
このように、車両内部データを分類し、分類した車両内部データのセンタシステムへの配信タイミングをそれぞれ設定することにより、その用途により不急のデータについては、その情報配信タイミングを車両の運転終了後に設定することができる。従って、車両走行中にリアルタイムで送信すべきデータの転送量を削減することが可能になる。従って、車両とセンタシステムとをつなぐ無線通信回線の通信負荷を分散することができ、そのため、その無線通信回線が帯域不足に陥ることを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両からセンタ装置へリアルタイムで配信する情報のデータ量を削減し、車両とセンタ装置との間の通信負荷を分散させ、低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る車載通信端末装置が適用される車両情報収集システムの構成の例を示した図。
【図2】本発明の実施形態に係る車載通信端末装置の機能ブロック構成の例を示した図。
【図3】車両内部データおよびその分類種別の例を示した図。
【図4】配信データ分類定義情報および車両内部データ分類定義情報の構成の例を示した図。
【図5】記憶部に確保される車両診断用データバッファ、走行履歴用データバッファおよび情報端末用データバッファの構成の例を示した図。
【図6】受信処理部における車両内データの受信・分類・蓄積処理の処理フローの例を示した図。
【図7】車両診断用データバッファにおいて車両診断用データが蓄積される様子を示した図。
【図8】車両診断用データ蓄積処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図9】配信処理部における蓄積データ配信処理部の処理フローの例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る車載通信端末装置が適用される車両情報収集システムの構成の例を示した図である。
【0014】
図1に示すように、車両情報収集システム100は、車両2に搭載された様々な電子装置の集合体である車載システム1と、車両情報を利用する1つ以上のサーバ装置(センタ装置)からなるセンタシステム4と、その両者を通信可能に接続する通信ネットワーク3と、を含んで構成される。
【0015】
センタシステム4は、例えば、車両2のエアバッグ作動を検知して、人命救助や事故処置などを手配する安全管理サーバ41、車両2の走行位置や速度などを取得して、渋滞情報などの交通情報を生成する交通情報管理サーバ42などのサーバ装置を含んで構成される。図示を省略したが、センタシステム4のサーバ装置としては、さらに、地図情報を管理する地図情報管理サーバや、車両2の走行特性や操作特性などを診断する車両診断サーバなどを想定することができる。
【0016】
通信ネットワーク3は、車両2と基地局32と接続する無線回線31、基地局32とセンタシステム4とを接続する公衆通信ネットワーク33などによって構成される。ここで、無線回線31としては、携帯電話回線や、IEEE802.11シリーズ規格の無線LAN(Local Area Network)の回線などが用いられる。また、公衆通信ネットワーク33としては、インターネットや公衆交換電話回線網(PSTN:Public Switched Telephone Network)などが用いられる。
【0017】
車載システム1は、車両2に搭載された様々な電子装置の集合体である。これら複数の電子装置を統合するために、車両2内に張り巡らされた情報系ネットワーク21および制御系ネットワーク22が利用される。その場合、情報系ネットワーク21および制御系ネットワーク22は、車載ゲートウェイ装置14によって相互に接続される。
【0018】
情報系ネットワーク21は、CAN(Controller Area Network)、IEEE1394、MOST(Media Oriented System Transport)などの規格に準拠したネットワークである。そして、その情報系ネットワーク21には、センタシステム4に対する端末として機能する車載通信端末装置10、車両2の走行誘導情報をドライバに提供するカーナビゲーション装置12、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信して、車両2の位置情報を出力するGPS装置13など、主としてドライバへの情報提供サービスを行う電子装置が接続される。
【0019】
従って、情報系ネットワーク21では、ドライバへの情報提供サービスに関連する情報が送受信される。例えば、カーナビゲーション装置12は、情報系ネットワーク21を介して、GPS装置13から1秒ごとに車両2の現在位置情報を取得する。また、車載通信端末装置10は、情報系ネットワーク21を介して、カーナビゲーション装置12から周辺地図情報の取得要求情報を受信すると、センタシステム4の地図情報管理サーバ(図示せず)から車両2の現在位置周辺の周辺地図情報を取得して、その取得した周辺地図情報を、情報系ネットワーク21を介してカーナビゲーション装置12へ送信する。
【0020】
制御系ネットワーク22は、CAN、FlexRayなどの規格に準拠したネットワークである。制御系ネットワーク22には、車両2の動力・機械系の装置を駆動するための電子制御装置(ECU)、例えば、エアバッグを制御するためのエアバッグECU15、バッテリを制御するためのバッテリECU16、ブレーキを制御するためのブレーキECU17、モータを制御するためのモータECU18、ステアリングを制御するためのステアリングECU19などが接続される。なお、本実施形態では、車両2は、電気自動車であることを想定しているが、内燃エンジンを搭載した自動車であってもよい。
【0021】
制御系ネットワーク22では、モータの回転数、バッテリ残量、ブレーキやアクセルの踏み込み量など、主として、車両の走行制御に関するデータが送受信され、データ送受信の高速性が求められる。例えば、ブレーキECU17によるブレーキ制御に関しては、時速60kmで走行している車両2は、1秒間に17m走行するため、ブレーキ制御は最低でも100m秒単位での応答精度が求められる。従って、制御系ネットワーク22から取得されるデータに対しても同程度の時間精度が求められる。また、その制御の信頼性を確保するために、制御系ネットワーク22で送受信されるデータは、しばしば、多重化など冗長化されることが多い。
【0022】
車載ゲートウェイ装置14は、情報系ネットワーク21と制御系ネットワーク22との間、つまり、異なるネットワーク間でのデータ送受信の制御を行う。
【0023】
車載システム1内の異なるネットワーク間でのデータ転送の例として、情報系ネットワーク21上のカーナビゲーション装置12と、制御系ネットワーク22上のステアリングECU19およびブレーキECU17との連携がある。カーナビゲーション装置12は、地図情報、車両2の位置情報および予想進路から、前方にカーブが迫っていることを予測することができる。そこで、カーナビゲーション装置12は、この予測した前方カーブの曲率データをステアリングECU19およびブレーキECU17へ送信する。そして、ステアリングECU19は、現在のステア角で前方カーブを安全に曲がることができるか否かを判定し、曲がれないと判定したときには、ステア角を変更するよう制御する。また、ブレーキECU17は、現在の車両速度で前方カーブを安全に曲がることができるか否かを判定し、曲がれないと判定したときには、安全に曲がることができる速度までブレーキをかけて減速させる制御を行う。これらの制御により、ドライバが前方のカーブに気付かずスピードを出し過ぎていたとしても、自動的にステアリング操作や減速がなされ、車両2は、安全にカーブを曲がることができる。
【0024】
本実施形態では、いわゆるイグニッションキーにより車両2が走行可能にされている状態を、IGN ON状態と呼び、車両2が走行不可にされている状態を、IGN OFF状態と呼ぶ。なお、電気自動車の場合には、「イグニッション」の用語は、必ずしも適切ではないが、本実施形態は、内燃エンジンの自動車にも適用可能であるので、本明細書では、これらの慣用されている用語を利用する。
【0025】
IGN ON状態では、車載システム1を構成する全ての電子装置には、図示しないバッテリからの電源が供給される。一方、IGN OFF状態では、車載通信端末装置10および通信装置11には、バッテリからの電源が供給されるが、他の電子装置への電源供給は停止される。従って、車載通信端末装置10は、IGN OFF状態でもセンタシステム4との間で通信を行うことができる。
【0026】
センタシステム4と車載システム1と間でのデータ転送の例として、情報系ネットワーク21上のGPS装置13と、制御系ネットワーク22上のモータECU18と、センタシステム4の交通情報管理サーバ42と、の間の連携がある。車載通信端末装置10は、情報系ネットワーク21上のGPS装置13で取得された位置情報、および、制御系ネットワーク22上のモータECU18でモータ回転数などから演算された車速情報を、定期的に交通情報管理サーバ42へ送信する。交通情報管理サーバ42は、このような情報を複数の車両2から収集することによって、道路の渋滞状態を推定することが可能になる。つまり、交通量の測定装置が設置されていない道路であっても、渋滞状態の情報の取得が可能になり、その予測を精度よく行うことが可能となる。
【0027】
図2は、本発明の実施形態に係る車載通信端末装置10の機能ブロック構成の例を示した図である。
【0028】
図2に示すように、車載通信端末装置10は、大別すると、受信処理部101、記憶部102、配信処理部103を含んで構成される。ここで、記憶部102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなど、主として半導体メモリによって構成されるが、ハードディスク装置などを含んでもよい。また、受信処理部101および配信処理部103(以下、処理部と総称する)は、ハードウエアとしては、集積回路のマイクロプロセッサなどからなるCPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、処理部1101,103の機能は、そのCPUが記憶部102に格納された所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0029】
ここで、受信処理部101は、車載ネットワークIF処理部1011、車両内部データ分類処理部1013、車両診断用データ蓄積処理部1014、走行履歴用データ蓄積処理部1015、情報端末用データ蓄積処理部1016、車両状態解析処理部1012などのサブブロックにより構成される。
【0030】
車載ネットワークIF処理部1011は、情報系ネットワーク21、車載ゲートウェイ装置14および制御系ネットワーク22を介して、それらに接続された電子装置との間で行われるデータの送受信の処理を制御する。つまり、情報系ネットワーク21や制御系ネットワーク22を流れる車両内部データは、まず、車載ネットワークIF処理部1011で受信される。なお、本明細書では、車載システム1に含まれる各電子装置により取得または生成されるデータを車両内部データと総称する。
【0031】
車載ネットワークIF処理部1011で受信されたデータは、記憶部102にあらかじめ記憶されている車両内部データ分類定義情報1022に基づき、車両内部データ分類処理部1013によって、例えば、4つの分類種別(安全用データ、車両診断用データ、走行履歴用データおよび情報端末用データ)に分類される。なお、車両内部データ分類定義情報1022の構成については、後記にて詳しく説明する。
【0032】
車両内部データ分類処理部1013により分類された車両内部データは、それぞれ、車両診断用データ蓄積処理部1014、走行履歴用データ蓄積処理部1015および情報端末用データ蓄積処理部1016によって、記憶部102に設けられた車両診断用データバッファ1023、走行履歴用データバッファ1024、情報端末用データバッファ1025に蓄積される。ただし、安全用データについては、直ちにセンタシステム4へ送信すべく、配信処理部103の安全用データ配信処理部1032へ受け渡される。なお、これらの処理の処理フローの詳細については、別途、図面を用いて説明する。
【0033】
車両状態解析処理部1012は、車載ネットワークIF処理部1011によって得られる情報系ネットワーク21を介してのデータ受信状況に基づき、車両2の状態、つまり、車両2がIGN ON状態にあるか、IGN OFF状態にあるかを判定する。なお、後記するように、IGN ON状態のときには、例えば、モータECU18からモータ回転数が100m秒おきに送信されているので、車両状態解析処理部1012は、その受信状態を監視することによって、IGN ON/OFF状態を知ることができる。車両状態解析処理部1012によって判定された車両状態(IGN ON/OFF状態)は、記憶部102の車両状態情報1026として記憶される。
【0034】
一方、配信処理部103は、無線通信IF処理部1035、安全用データ配信処理部1032、蓄積データ配信処理部1033、車両状態確認処理部1031、送信タイミング管理処理部1034などのサブブロックを含んで構成される。
【0035】
無線通信IF処理部1035は、携帯電話などからなる無線の通信装置11と基地局32との間のデータ送受信の制御を行うとともに、公衆通信ネットワーク33を介して、センタシステム4との間のデータ送受信の処理を行う。
【0036】
安全用データ配信処理部1032は、車両内部データ分類処理部1013から安全用データを受け渡されたとき、直ちに、その受け渡された安全用データから配信用の安全用データを生成して、センタシステム4の安全管理サーバ41へ配信する。この安全用データ配信処理部1032の処理は、車両2のドライバの安全に関係する処理であるため、最高の優先度で実行される。ちなみに、走行履歴用データなど他のデータがセンタシステム4へ配信されているときであっても、そのデータ配信処理はいったん停止され、安全用データ配信処理が優先して実行される。
【0037】
これに対し、蓄積データ配信処理部1033の処理は、送信タイミング管理処理部1034によって起動されて実行が開始される。そして、その実行が開始されたときには、車両状態確認処理部1031の処理によって車両状態情報1026に記憶されている車両状態(IGN ON/OFF状態)が確認され、その車両状態に応じて、車両診断用データバッファ1023、走行履歴用データバッファ1024、情報端末用データバッファ1025のそれぞれに蓄積されている車両診断用データ、走行履歴用データ、情報端末用データがセンタシステム4へ配信される。なお、その配信処理の詳細については、別途、図面を用いて説明する。また、車両状態に応じた配信可能な車両内部データの分類種別は、配信データ分類定義情報1021に記憶されている。
【0038】
図3は、車両内部データおよびその分類種別の例を示した図である。本実施形態では、車両内部データは、例えば、安全用データ、情報端末用データ、走行履歴用データおよび車両診断用データに分類される。
【0039】
安全用データとしては、例えば、エアバッグECU15から出力される、エアバックが作動したことを示すエアバッグ作動情報がある。エアバックが作動したことは、車両2に何らかの事故が生じことを意味するので、エアバッグ作動情報、つまり安全用データは、直ちにセンタシステム4へ送信される。なお、エアバック作動情報に、GPS装置13から得られる位置情報を付随させて安全情報としてもよい。
【0040】
情報端末用データとしては、例えば、カーナビゲーション装置12を操作したときに得られる操作の履歴情報(以下、ナビ操作ログという)がある。ナビ操作ログは、例えば、センタシステム4でカーナビゲーション装置12の操作性の検証をするような場合に用いられる。
【0041】
走行履歴データとしては、GPS位置情報、バッテリ残量、モータ回転数、ステア角、ABS(Antilock Brake System)作動情報、車速などがあり、それぞれ、GPS装置13、バッテリECU16、モータECU18、ステアリングECU19、ブレーキECU17により出力される。これらの走行履歴データは、センタシステム4において、例えば、車両2の省エネ特性などの走行特性を取得したり、道路の渋滞情報など取得したりする場合に用いられる。
【0042】
車両診断用データとしては、エアバッグ作動情報、ABS作動情報、ブレーキ踏み込み量、GPS位置情報、バッテリ残量、モータ回転数、ステア角、車速などがあり、それぞれ、エアバッグECU15、ブレーキECU17、GPS装置13、バッテリECU16、モータECU18、ステアリングECU19により出力される。これらの車両診断用データは、センタシステム4において、主として、車両走行中に生じたイベントやドライバの操作に対する車両2の応答特性を取得する場合に用いられる。そして、その応答特性から、車両2の一般的な性能を評価したり、個々の車両2の性能劣化を診断したりすることが可能になる。
【0043】
図4は、配信データ分類定義情報1021および車両内部データ分類定義情報1022の構成の例を示した図である。これらの配信データ分類定義情報1021および車両内部データ分類定義情報1022は、車両情報収集システム100または車載システム1が設計されたときに設定される情報である。従って、それらのシステムの仕様が変更されない限り、変更されることはないので、配信データ分類定義情報1021および車両内部データ分類定義情報1022は、記憶部102のROMの領域に記憶しておくことができる。
【0044】
図4(A)に示すように、配信データ分類定義情報1021は、分類名称、分類識別子、配信可能車両状態、優先順位の各フィールドを含んで構成される。
【0045】
ここで、分類名称は、図3に示した安全用データ、情報端末用データ、走行履歴用データおよび車両診断用データを指す。分類識別子は、それぞれの分類種別に対して付された識別記号である。配信可能車両状態は、当該分類種別のデータのセンタシステム4への配信が可能な状態を示した情報である。優先順位は、当該分類種別のデータをセンタシステム4へ配信するときの優先度を示した情報である。
【0046】
なお、分類識別子は、車載通信端末装置10のプログラムで用いられる記号であり、配信データ分類定義情報1021によれば、安全用データ、情報端末用データ、走行履歴用データおよび車両診断用データは、それぞれ、“Type1”、“Type2”、“Type3”、Type4”と表される。また、車両状態のIGN ON状態を“ST1”と表し、IGN OFF状態を、“ST2”と表す。
【0047】
すなわち、本実施形態では、“Type1”のデータ(安全用データ)は、“ST1”の状態(IGN ON状態)でも“ST2”の状態(IGN OFF状態)でも配信可能なデータとして設定され、その優先順位は“1”であるので、最優先で配信される。また、“Type2”のデータ(情報端末用データ)および“Type3”のデータ(走行履歴用データ)は、“ST1”の状態(IGN ON状態)のとき配信され、“ST2”の状態(IGN OFF状態)のときには配信されないデータとして設定されている。そして、その優先順位は、それぞれ、“2”および“3”に設定されている。また、“Type4”のデータ(車両診断用データ)は、“ST2”の状態(IGN OFF状態)のとき配信され、“ST1”の状態(IGN ON状態)のときには配信されないデータとして設定されている。
【0048】
次に、図4(B)に示すように、車両内部データ分類定義情報1022は、車両内部データ名称、データ識別子、分類識別子、取得周期の各フィールドを含んで構成される。
【0049】
ここで、車両内部データ名称は、車載システム1の含まれる各電子装置から取得される車両内部データを個別に識別する名称であり、データ識別子は、その車両内部データの識別記号、分類識別子は、当該車両内部データが属する分類の識別記号、取得周期は、当該車両内部データを取得する時間周期を表している。
【0050】
なお、車両内部データ名称またはデータ識別子で識別される1つのデータに対して、複数の分類識別子を対応付けてもよい。すなわち、1つのデータが複数の種別に分類されてもよい。ちなみに、データ識別子“0x0110”のABS作動情報は、“Type3”(走行履歴用データ)および“Type4”(車両診断用データ)の両方に分類されている。
【0051】
ただし、1つの車両内データが複数の種別に分類され、それぞれの分類で取得周期が異なる場合には、車両内部データ分類定義情報1022では、2レコード(2行のデータ)として記憶されるものとする(例えば、図4(B)のバッテリ残量やモータ回転数などのデータを参照)。
【0052】
また、取得周期の“Event”は、そのデータが、ある事象が生じたことによって取得されることを意味する。すなわち、エアバッグ作動情報は、エアバッグECU15がエアバックの作動を検出したときに取得されるデータであることを表し、ABS作動情報は、ブレーキECU17がABSの作動を検出したときに取得されるデータであることを表す。
【0053】
例えば、データ識別子が“0x0100”のエアバッグ作動情報は、エアバッグが作動したときにエアバッグECU15から制御系ネットワーク22出力される“Event”のデータであり、“Type1”(安全用データ)および“Type4”(車両診断用データ)に分類されている。また、データ識別子が“0x0110”のABS作動情報は、ABSの作動が検出されたときにブレーキECU17から制御系ネットワーク22出力される“Event”のデータであり、“Type3”(走行履歴用データ)および“Type4”(車両診断用データ)に分類される。
【0054】
一方、データ識別子が“0x0200”のナビ操作ログは、カーナビゲーション装置12から1分ごとに情報系ネットワーク21に出力されるデータであり、“Type2”(情報端末用データ)に分類される。また、データ識別子が“0x0210”のGPS位置情報は、GPS装置13から1分ごとに情報系ネットワーク21に出力されるデータであり、“Type3”(走行履歴用データ)および“Type4”(車両診断用データ)に分類される。また、データ識別子が“0x0250”のブレーキ踏み込み量は、ブレーキECU17から100m秒ごとに制御系ネットワーク22に出力される情報であり、“Type4”(車両診断用データ)に分類される。
【0055】
また、データ識別子が“0x0300”のバッテリ残量、データ識別子が“0x0320”のモータ回転数、データ識別子が“0x0330”の車速、および、データ識別子が“0x0340”のステア角は、それぞれ、バッテリECU16、モータECU18、ブレーキECU17およびステアリングECU19から100m秒ごとに制御系ネットワーク22に出力されるデータである。そして、そのデータから間引いて取得周期を1分として得られたデータが“Type3”(走行履歴用データ)に分類され、間引くことなく取得周期を100m秒として得られたデータが“Type4”(車両診断用データ)に分類される。
【0056】
図5は、記憶部102に確保される車両診断用データバッファ1023、走行履歴用データバッファ1024および情報端末用データバッファ1025の構成の例を示した図である。
【0057】
図5(A)に示すように、車両診断用データバッファ1023は、データ識別子、データ内容、タイムスタンプの各フィールドを含んで構成される。ここで、データ識別子は、蓄積される車両診断用データのデータ識別子、データ内容は、蓄積される車両診断用データそのもの、タイムスタンプは、蓄積される車両診断用データが取得された日付や時刻を識別する情報である。
【0058】
車両診断用データバッファ1023への車両診断用データの蓄積指示は、車両診断用データ蓄積処理部1014によって行われ、その蓄積指示が行われるたびに、バッファアドレスのインクリメントが行われつつ、車両診断用データが車両診断用データバッファ1023に書き込まれる。
【0059】
車両診断用データバッファ1023は、いわゆるリングバッファの形式で構成されている。すなわち、バッファアドレスが最後の“0xFFFF”に到達すると、次のバッファアドレスは、最初の“0x0000”へ戻り、バッファアドレス“0x0000”以下の領域には、順次、新しい車両診断用データが上書きされていくことになる。なお、車両診断用データ蓄積処理部1014による車両診断用データバッファ1023への車両診断用データ蓄積処理の詳細については、別途、図面を参照して説明する、
【0060】
図5(B)に示すように、走行履歴用データバッファ1024は、データ識別子、データ内容、タイムスタンプ、送信完了識別子の各フィールドを含んで構成される。ここで、データ識別子は、蓄積される走行履歴用データのデータ識別子、データ内容は、蓄積される走行履歴用データそのもの、タイムスタンプは、蓄積される走行履歴用データが取得された日付や時刻を識別する情報、送信完了識別子は、当該走行履歴用データが送信済か、または、未送信であるかを示すフラグ情報である。
【0061】
走行履歴用データバッファ1024への走行履歴用データの蓄積指示は、走行履歴用データ蓄積処理部1015によって行われ、その蓄積指示が行われるたびに、図示しないバッファアドレスのインクリメントが行われつつ、走行履歴用データが走行履歴用データバッファ1024に順次書き込まれる。そして、その書き込み時には、送信完了識別子のフィールドは、未送信を意味する“0”が書き込まれる。また、蓄積データ配信処理部1033によりその蓄積された走行履歴用データがセンタシステム4へ配信されたときには、その送信完了識別子のフィールドには、送信済を意味する“1”が書き込まれる。
【0062】
なお、走行履歴用データ蓄積処理部1015による走行履歴用データバッファ1024への走行履歴用データの蓄積処理と、蓄積データ配信処理部1033による蓄積済の走行履歴用データのセンタシステム4への配信処理と、が同期して行われる場合には、走行履歴用データバッファ1024は、アドレスインクリメント方式のバッファを用いないでもよい。
【0063】
すなわち、走行履歴用データバッファ1024への書き込み周期と読み出し周期が同じである場合には、蓄積されるデータの数やその名称は、あらかじめ定められているので、データ識別子のフィールドには、そのあらかじめ定められたデータ名称に対応するデータ識別子を書き込んでおく。そうすれば、走行履歴用データ蓄積処理部1015は、走行履歴用データに分類されたデータを、そのデータの識別子に対応するレコード(行)のデータ内容フィールドに書き込むだけでよい。そして、そのときには、そのレコードのタイムスタンプおよび送信完了識別子の各フィールドには、日時情報および未送信フラグ“0”が書き込まれる。
【0064】
また、図5(C)に示すように、情報端末用データバッファ1025は、データ識別子、データ内容、タイムスタンプ、送信完了識別子の各フィールドを含んで構成される。この情報端末用データバッファ1025の構成およびその蓄積機能は、蓄積対象のデータが異なることを除き、前記の走行履歴用データバッファ1024と同じであるので、その説明を省略する。
【0065】
図6は、受信処理部101における車両内データの受信・分類・蓄積処理の処理フローの例を示した図である。図6に示すように、車載通信端末装置10のCPUは、まず、車載ネットワークIF処理部1011を介して車両内部データを受信し(ステップS10)、車両内部データ分類処理部1013の処理として、その受信した車両内部データを分類する(ステップS11)。
【0066】
そして、前記受信データが安全用データであった場合には(ステップS12でYes)、CPUは、配信処理部103における安全用データ配信処理部1032の処理を実行し、前記受信データ、すなわち、安全用データをセンタシステム4へ送信する(ステップS13)。続いて、CPUは、そのステップS13に続けて、または、前記受信データが安全用データでなかった場合には(ステップS12でNo)、さらに、前記受信データが情報端末用データであるか否かを判定する(ステップS14)。
【0067】
そして、前記受信データが情報端末用データであった場合には(ステップS14でYes)、CPUは、情報端末用データ蓄積処理部1016の処理として、前記受信データ、すなわち、情報端末用データを情報端末用データバッファ1025に蓄積する(ステップS15)。続いて、CPUは、そのステップS15に続けて、または、前記受信データが情報端末用データでなかった場合には(ステップS14でNo)、さらに、前記受信データが走行履歴用データであるか否かを判定する(ステップS16)。
【0068】
そして、前記受信データが走行履歴用データであった場合には(ステップS16でYes)、CPUは、走行履歴用データ蓄積処理部1015の処理として、前記受信データ、すなわち、走行履歴用データを走行履歴用データバッファ1024に蓄積する(ステップS17)。続いて、CPUは、そのステップS17に続けて、または、前記受信データが走行履歴用データでなかった場合には(ステップS16でNo)、さらに、前記受信データが車両診断用データであるか否かを判定する(ステップS18)。
【0069】
そして、前記受信データが車両診断用データであった場合には(ステップS18でYes)、CPUは、車両診断用データ蓄積処理部1014の処理として、前記受信データ、すなわち、車両診断用データを車両診断用データバッファ1023に蓄積する(ステップS19)。続いて、CPUは、そのステップS17に続けて、または、前記受信データが車両診断用データでなかった場合には(ステップS18でNo)、処理を終了する。
【0070】
次に、図7および図8を参照して、図6のステップS19の車両診断用データ蓄積処理の詳細について説明する。ここで、図7は、車両診断用データバッファ1023において車両診断用データが蓄積される様子を示した図、図8は、車両診断用データ蓄積処理の詳細な処理フローの例を示した図である。
【0071】
図5(A)に示したように、車両診断用データバッファ1023は、記憶部102に確保された記憶領域であり、その記憶領域には、データ識別子、データ内容およびタイムスタンプからなる車両診断用データが順次蓄積される。また、本実施形態では、車両診断用データバッファ1023は、リングバッファであり、そのリングバッファには、車載ネットワークから供給される車両診断用データが、常に、蓄積されている状態にある。
【0072】
本実施形態では、車両診断用データ取得のために、所定のトリガが設定されている。トリガとは、車両診断用データ取得を指示する情報であり、トリガは、車両2の走行状態が所定の条件を満たした、すなわち、所定のトリガ検知条件を満たしたときに発行される。例えば、ABSが作動したときや、ブレーキの踏み込み量が急に増大したときなどに発行される。このようなトリガを設定しておくことによって、トリガ発生時、例えば、スリップ発生時や急ブレーキがかけられたときなどの車両2の詳細な挙動データを取得することが可能になる。
【0073】
図7に示すように、車両診断用データバッファ1023では、バッファ本体の領域の他に、バッファポインタ、トリガ検知済フラグ、データ蓄積済フラグ、トリガアドレス、プレトリガアドレスを記憶する領域が確保されている。
【0074】
バッファポインタには、新しい車両診断用データを蓄積するときのバッファアドレスが記憶され、トリガアドレスには、車両診断用データ蓄積処理部1014の処理でトリガが検知されたときのバッファアドレスが記憶され、プレトリガアドレスには、トリガ検知時よりも所定の時間(例えば、10秒)前に車両診断用データが蓄積されたときのバッファアドレスが記憶される。また、トリガ検知済フラグは、トリガが検知されたときに、“未済”から“済”に書き換えられる。また、データ蓄積済フラグは、トリガ検知後、新たな車両診断用データが順次蓄積されてゆき、そのバッファアドレスが、プレトリガアドレスの1つ前に到達したときに、“未済”から“済”に書き換えられる。
【0075】
図7の例では、バッファポインタは、“0x7123”、トリガアドレスは、“0x03FF”、プレトリガアドレスは、“0x0310”であり、また、トリガ検知済フラグは、“済”、データ蓄積済フラグは、“未済”である。従って、このとき、車両診断用データとして有効な蓄積データは、バッファアドレスが“0x03FF”から“0x7122”までのデータである。なお、この状態では、新たな車両診断用データがさらに続けて蓄積されている状態にある。
【0076】
以上のような車両診断用データ蓄積処理は、図8に示した処理フローに従って実行される。すなわち、CPUは、まず、データ蓄積済フラグを参照して、データ蓄積済であるか否かを判定する(ステップS21)。そして、データ蓄積済であれば(ステップS21でYes)、処理を終了する。すなわち、あるトリガが検知され、そのトリガにより車両診断用データが車両診断用データバッファ1023にいったん蓄積された場合には、その後の車両診断用データの蓄積は行われない。
【0077】
一方、データ蓄積済でなかった場合には(ステップS21でNo)、CPUは、トリガ検知済フラグを参照して、トリガ検知済であるか否かを判定する(ステップS22)。そして、トリガ検知済でなかった場合には(ステップS22でNo)、さらに、受信した車両診断用データが所定のトリガ検知条件を満たすか否かを判定し(ステップS23)、トリガ検知条件を満たしたときには、トリガ検知済フラグに“済”を設定する(ステップS24)。
【0078】
また、ステップS22でトリガ検知済であった場合(ステップS22でYes)、ステップS23でトリガ検知条件を満たさなかった場合(ステップS23でNo)、または、ステップS24の次には、CPUは、受信した車両診断用データが蓄積対象データであるか否かを判定する(ステップS25)。そして、CPUは、受信した車両診断用データが蓄積対象データであった場合には(ステップS25でYes)、その車両診断用データを車両診断用データバッファ1023に蓄積する(ステップS26)。また、蓄積対象データでなかった場合には(ステップS25でNo)、処理を終了する。
【0079】
さらに、ステップS26に引き続いて、CPUは、バッファポインタをインクリメントし、バッファポインタがプレトリガアドレスに到達したか否か、つまり、バッファが満杯になったか否かを判定する(ステップS27)。そして、バッファポインタがプレトリガアドレスに到達した、つまり、バッファが満杯になった場合には(ステップS27でYes)、データ蓄積済フラグに“済”を設定し(ステップS28)、処理を終了する。また、バッファが満杯になっていなかった場合には(ステップS27でNo)、そのまま処理を終了する。
【0080】
なお、以上に説明した車両診断用データ蓄積処理では、車両が走行するとき、1種または1回のトリガしか受付けられないが、図7に示した車両診断用データバッファ1023を複数個用意しておけば、複数種または複数回のトリガを受け付けることが可能になる。その場合には、トリガ条件で設定されたときの車両2の挙動データをより多く取得することが可能になる。
【0081】
図9は、配信処理部103における蓄積データ配信処理部1033の処理フローの例を示した図である。蓄積データ配信処理部1033の処理は、送信タイミング管理処理部1034から通知されるタイミング情報によって起動される。
【0082】
すなわち、送信タイミング管理処理部1034は、例えば、情報端末用データは1分ごと、走行履歴用データは5分ごと、車両診断用データは車両状態がIGN ONからIGN OFF状態になったとき、というように送信タイミングの条件を定めておき、その送信タイミングの条件が検知されたとき、その送信タイミング情報を蓄積データ配信処理部1033へ通知する。
【0083】
車載通信端末装置10のCPUは、その送信タイミング情報を受けると、まず、車両状態確認処理部1031を介して車両状態情報1026を参照して、車両状態がIGN ON状態にあるか否かを判定する(ステップS31)。そして、その車両状態がIGN ON状態であった場合には(ステップS31でYes)、CPUは、さらに、情報端末用データのタイミングであるか否かを判定し(ステップS32)、情報端末用データのタイミングであったときには(ステップS32でYes)、そのとき情報端末用データバッファ1025に蓄積されている情報端末用データで未送信のデータをセンタシステム4へ配信する(ステップS33)。
【0084】
また、CPUは、情報端末用データのタイミングでなかったとき(ステップS32でNo)、または、ステップS33の次には、走行履歴用データのタイミングであるか否かを判定する(ステップS34)。そして、走行履歴用データのタイミングであったときには(ステップS34でYes)、CPUは、そのとき走行履歴用データバッファ1024に蓄積されている走行履歴データで未送信のデータをセンタシステム4へ配信する(ステップS35)。
【0085】
また、ステップS31で車両状態がIGN OFF状態であった場合には(ステップS31でNo)、CPUは、車両診断用データバッファ1023のデータ蓄積済フラグを参照して、車両診断用データが蓄積済であるか否かを判定する(ステップS36)。そして、車両診断用データが蓄積済であったときには(ステップS36でYes)、CPUは、車両診断用データバッファ1023に蓄積されている車両診断用データをセンタシステム4へ配信する(ステップS37)。
【0086】
また、ステップS34で走行履歴用データのタイミングでなかったとき(ステップS34でNo)、ステップS36で車両診断用データが蓄積済でなかったとき(ステップS36でYes)、ステップS35の次、または、ステップS37の次には、当該蓄積データ配信処理を終了する。
【0087】
以上、本実施形態によれば、車両内部データ分類処理部1013により、車両2の内部の様々な電子装置から出力される車両内部データを、安全用データ、車両診断用データ、走行履歴用データおよび情報端末用データに分類することができる。このうち、車両診断用データは、必ずしもリアルタイムでセンタシステム4へ送信する必要のないデータであるため、車両2の走行が終了した後にセンタシステム4に配信されるようにされている。すなわち、車両2からセンタシステム4へのデータ配信は、分散化されたことになり、車両走行中のデータ配信量は削減されたことになる。そのため、車両2とセンタシステム4とをつなぐ無線通信回線が帯域不足に陥ることを防止することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 車載システム
2 車両
3 通信ネットワーク
4 センタシステム
10 車載通信端末装置
11 通信装置
12 カーナビゲーション装置
13 GPS装置
14 車載ゲートウェイ装置
15 エアバッグECU
16 バッテリECU
17 ブレーキECU
18 モータECU
19 ステアリングECU
21 情報系ネットワーク
22 制御系ネットワーク
31 無線回線(無線通信回線)
32 基地局
33 公衆通信ネットワーク
41 安全管理サーバ(センタ装置)
42 交通情報管理サーバ(センタ装置)
100 車両情報収集システム
101 受信処理部(処理部)
102 記憶部
103 配信処理部(処理部)
1011 車載ネットワークIF処理部
1012 車両状態解析処理部
1013 車両内部データ分類処理部
1014 車両診断用データ蓄積処理部
1015 走行履歴用データ蓄積処理部
1016 情報端末用データ蓄積処理部
1021 配信データ分類定義情報
1022 車両内部データ分類定義情報
1023 車両診断用データバッファ
1024 走行履歴用データバッファ
1025 情報端末用データバッファ
1026 車両状態情報
1031 車両状態確認処理部
1032 安全用データ配信処理部
1033 蓄積データ配信処理部
1034 送信タイミング管理処理部
1035 無線通信IF処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、処理部と記憶部とを備えてなり、前記車両の車両内電子装置によって取得された車両内部データを、無線通信回線を含む通信ネットワークを介してセンタ装置へ配信する車載通信端末装置であって、
前記処理部は、
前記車両内電子装置から出力された車両内部データを取得したとき、前記取得した車両内部データを、前記記憶部にあらかじめ記憶されている車両内部データ分類定義情報に基づき分類し、
前記分類した車両内部データを、その分類種別ごとに定められたタイミングで前記センタ装置へ配信すること
を特徴とする車載通信端末装置。
【請求項2】
前記タイミングは、
前記車両が走行可能にされた状態から走行不可にされた状態に遷移するタイミングを含むこと
を特徴とする請求項1に記載の車載通信端末装置。
【請求項3】
前記車両内部データ分類定義情報は、
前記車両内電子装置のそれぞれから取得される車両内部データごとに、その車両内部データとその車両内部データが属すべき分類種別とが対応付けられて構成され、
前記車両内部データが属すべき分類種別として、
エアバックを含む車載安全装置から出力される安全用データが属する第1の種別、
カーナビゲーション装置を含む車載情報端末装置から出力される情報端末用データが属する第2の種別、
前記車両の位置および速度を含む車両の走行状況を計測する計測装置から出力される走行履歴データが属する第3の種別、または、
前記車両の走行特性または操作特性を診断するために用いられる車両診断用データが属する第4の種別、
の少なくとも1つを含むこと
を特徴とする請求項1に記載の車載通信端末装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記取得した車両内部データが前記第1の種別の車両内部データであったときには、前記取得した車両内部データを、直ちに、前記センタ装置へ配信し、
前記取得した車両内部データが前記第2または第3の種別の車両内部データであったときには、前記取得した車両内部データを前記記憶部に一時記憶しながら、所定の時間ごとに、前記一時記憶した車両内部データを前記センタ装置へ配信し、
前記取得した車両内部データが前記第4の種別の車両内部データであったときには、前記取得した車両内部データを前記記憶部に一時記憶しておき、前記車両内電子装置の電源がオフされた後に、前記一時記憶した車両内部データを前記センタ装置へ配信すること
を特徴とする請求項3に記載の車載通信端末装置。
【請求項5】
車両に搭載され、処理部と記憶部とを備えてなり、前記車両の車両内電子装置によって取得された車両内部データを、無線通信回線を含む通信ネットワークを介してセンタ装置へ配信する車載通信端末装置おける車両内部データ配信方法であって、
前記処理部は、
前記車両内電子装置から出力された車両内部データを取得したとき、前記取得した車両内部データを、前記記憶部にあらかじめ記憶されている車両内部データ分類定義情報に基づき分類し、
前記分類した車両内部データを、その分類種別ごとに定められたタイミングで前記センタ装置へ配信すること
を特徴とする車両内部データ配信方法。
【請求項6】
前記タイミングは、
前記車両が走行可能にされた状態から走行不可にされた状態に遷移するタイミングを含むこと
を特徴とする請求項5に記載の車両内部データ配信方法。
【請求項7】
前記車両内部データ分類定義情報は、
前記車両内電子装置のそれぞれから取得される車両内部データごとに、その車両内部データとその車両内部データが属すべき分類種別とが対応付けられて構成され、
前記車両内部データが属すべき分類種別は、
エアバックを含む車載安全装置から出力される安全用データが属する第1の種別、
カーナビゲーション装置を含む車載情報端末装置から出力される情報端末用データが属する第2の種別、
前記車両の位置および速度を含む車両の走行状況を計測する計測装置から出力される走行履歴データが属する第3の種別、または、
前記車両の走行特性または操作特性を診断するために用いられる車両診断用データが属する第4の種別、
の少なくとも1つを含むこと
を特徴とする請求項5に記載の車両内部データ配信方法。
【請求項8】
前記処理部は、
前記取得した車両内部データが前記第1の種別の車両内部データであったときには、前記取得した車両内部データを、直ちに、前記センタ装置へ配信し、
前記取得した車両内部データが前記第2または第3の種別の車両内部データであったときには、前記取得した車両内部データを前記記憶部に一時記憶しながら、所定の時間ごとに、前記一時記憶した車両内部データを前記センタ装置へ配信し、
前記取得した車両内部データが前記第4の種別の車両内部データであったときには、前記取得した車両内部データを前記記憶部に一時記憶しておき、前記車両内電子装置の電源がオフされた後に、前記一時記憶した車両内部データを前記センタ装置へ配信すること
を特徴とする請求項7に記載の車両内部データ配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−76322(P2011−76322A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226303(P2009−226303)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】