説明

車載通信装置および通信方法

【課題】複数の無線方式により運転支援情報が提供される場合に、車両等に状況に応じて適切な運転支援情報を取得することができる車載通信装置を得ること。
【解決手段】地図情報を保持する地図情報提供部6と、自車両の現在位置を含む位置情報を取得する位置取得部7と、自車両の走行速度を含む走行情報を取得する走行情報取得部8と、現在位置の周辺の地図情報を前記地図情報提供部6から取得し、位置情報と周辺情報と走行情報と、に基づいて、使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択し、選択した組み合わせを指示する無線制御部5と、無線制御部5の指示に基づいて無線通信処理部3−1〜3−nとアンテナ1−1,1−2,2を接続するアンテナ切り替え部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載され、外部から無線通信により情報を取得する車載通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両の運転支援に無線通信を適用することが検討されている。たとえば、下記非特許文献1では、車両等に搭載される無線局である移動局が、周辺車両の位置等の情報を受信し、この情報を用いて事故を削減するためのシステムが開示されている。下記非特許文献1では、対象とする事象として、左折巻き込み事故、右直事故、出会い頭事故、自専道での追突事故、緊急車両、の5つの事象を抽出している。そして、事象ごとに事故等を防止するための通信の通信エリアなどの定義し、無指向性のアンテナを用いて、UHF(Ultra High Frequency)帯の周波数の車々間通信にて全ての事象に対応する(事故等を防止するための通信を行う)検討がなされている。
【0003】
同様に、運転支援のための車々間通信が下記非特許文献2に記載されている。下記非特許文献2では、5.8GHz帯の周波数を用いた車々間通信により、上記のような事故等の事象に対応する検討がなされている。
【0004】
一方、国外では下記非特許文献3および非特許文献4に示すように、5.9GHz帯の無線LAN(Local Area Netowork)をベースとした路車間および車々間システムを採用した安全運転支援システムの検討がなされている。
【0005】
また、国内の路車間通信として、下記非特許文献5に記載の狭域通信(DSRC:Dedicated Short−Range Communication)システムを用いて、交差点付近や高速道路から車両等に情報提供することにより、交通事故の削減をする検討がなされている。
【0006】
以上のように、車両の運転支援のための無線方式は多数検討されている。これら複数のシステムに対応できるようにするためには、車載の移動局は、複数の無線方式に対応する必要がある。たとえば、下記特許文献1および下記特許文献2には、複数の無線方式に対応する車載無線端末が開示されている。下記特許文献1の車載無線端末では、地図情報として基地局のカバーエリアを保持し、自身の位置と基地局のカバーエリアとの位置関係と、あらかじめ定めた無線方式に対する優先度に基づいて無線方式を切替えている。また、下記特許文献2に記載の車載無線端末は、ETC(Electronic Toll Collection System)と無線LANの両方に対応している場合に、ETCの基地局の位置をあらかじめ保持しておき、自身がETCの基地局に近づいた場合に、無線LANの通信を停止することにより、無線方式間の干渉を避ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−80420号公報
【特許文献2】特開2004−120081号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ITS(Intelligent Transportation Systems) FORUM,「700MHz帯を用いた運転支援通信システムの実験用ガイドライン」,ITS FORUM RC-006 1.0版,平成21年2月12日策定
【非特許文献2】ITS FORUM,「5.8GHzを用いた車々間通信システムの実験用ガイドライン」,ITS FORUM RC−005 1.0版,平成19年5月18日策定
【非特許文献3】IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11 Working Group of the IEEE 802 Committee,“IEEE P802.11pTM/D4.0 Draft Standard for Information Technology − Telecommunications and information exchange between systems −Local and metropolitan area networks −Specific requirements −Part 11:Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer(PHY) specifications Amendment 8:Wireless Access in Vehicular Environments”,March 2008
【非特許文献4】IEEE Vehicular Technology Society,“IEEE Trial−Use Standard for Wireless Access in Vehicular Environments(WAVE) Multi−channel Operation”,IEEE Std 1609.4TM−2006
【非特許文献5】電波産業会,ARIB STD−T75 1.5版,「狭域通信(DSRC)システム」平成20年12月12日改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の安全運転支援システムによれば、700MHz帯を用いて運転支援情報を提供している。そのため、携帯電話やテジタルテレビなどの隣接システムへの干渉が大きい、という問題があった。また、距離都市部の停車時(渋滞)には、電波の伝播範囲が広くなり、必要のない情報まで受信する車両台数が増大してしまう、という問題があった。
【0010】
また、上記非特許文献2に記載の安全運転支援システムでは、5.8GHz帯を用いて運転支援情報を提供している。そのため、電波の伝播範囲が狭くなり、出会い頭衝突などを回避することができない、という問題があった。また、この周波数が使用できるのは日本国内限定であり、さらに同じく5.8GHz帯を用いる、ETCシステムおよび上記非特許文献5に記載のDSRCシステムとの間で使用チャネルの調整が必要である。
【0011】
また、上記非特許文献3および上記非特許文献4に記載の安全運転支援システムでは、5.9GHz帯を用いて運転支援情報を提供している。この周波数帯は、日本国内では車両等の無線通信用に割り当てられていない。そのため、日本国内で、この安全運転支援システムを適用することはできない、という問題があった。
【0012】
また、上記非特許文献5に記載のDSRCシステムでは、5.8GHz帯を用いて交差点付近や高速道路から車両等に情報を提供している。そのため、上記非特許文献2と同様の問題があった。さらに、交差点付近や高速道路等に基地局を設置する必要がある、という問題があった。
【0013】
一方、必要な情報は事故パターンに応じて異なる。すなわち、車両等の状況に応じて必要な運転支援情報が異なる。したがって、多様な事故パターンに対応するためには、車両等の状況に応じて、複数の情報(路車間通信、車々間通信による情報)のうち必要な情報を適切に選択することが望ましい。したがって、多様な事故パターンに対応するため、複数の路車間通信、車々間通信を連携させて適切に動作する装置が必要になる。
【0014】
路車間通信と車々間通信が共存する場合に無線方式を連携させる技術は、上記非特許文献1、非特許文献2および非特許文献4に開示されている。しかし、これらの技術では路車間通信と車々間通信を同じ無線方式で共存させているだけであり、路車間通信と車々間通信の無線方式が異なる場合には適用できない、という問題があった。
【0015】
また、上記特許文献1および特許文献2では、自身の位置とあらかじめ保持している基地局の位置とに基づいて複数の無線方式の切替えや無線方式間の干渉の低減を行なっている。しかし、この方式を安全運転支援システムに適用する場合には、あらかじめ保持している基地局の位置近傍でしか適用できず、適用範囲が限定され、多様な事故パターンに対応できない、という問題があった。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の無線方式により運転支援情報が提供される場合に、車両等に状況に応じて適切な運転支援情報を取得することができる車載通信装置および通信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、2つ以上の無線通信処理手段と2つ以上のアンテナとを備える車載通信装置であって、地図情報を保持する地図情報提供手段と、自車両の現在位置を含む位置情報を取得する位置取得手段と、自車両の走行速度を含む走行情報を取得する走行情報取得手段と、前記現在位置を前記位置取得手段から取得し、前記現在位置の周辺の地図情報を前記地図情報提供手段から取得し、前記走行情報を前記走行情報取得手段から取得し、前記位置情報と前記周辺情報と前記走行情報と、に基づいて、使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて無線通信処理手段とアンテナを接続するよう指示する無線制御手段と、前記無線制御手段の指示に基づいて無線通信処理手段とアンテナを接続するアンテナ切り替え手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無線制御手段が、車両等の位置情報と走行情報と地図情報とに基づいて、無線方式およびアンテナを選択し、選択した無線方式に対応する無線通信処理手段と選択したアンテナを接続するよう指示し、アンテナ切り替え手段が指示に基づいて選択した無線通信処理部と選択したアンテナを接続するようにしたので、複数の無線方式により運転支援情報が提供される場合に、車両等に状況に応じて適切な運転支援情報を取得することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施の形態1の車載通信装置の機能構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態2の無線通信処理部およびアンテナの選択方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、実施の形態2の無線通信処理部およびアンテナの選択方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施の形態2の無線通信処理部およびアンテナの選択方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施の形態2の無線通信処理部およびアンテナの選択方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施の形態3の車載通信装置が保持する管理情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる車載通信装置および通信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる車載通信装置の実施の形態1の機能構成例を示す図である。本実施の形態の車載通信装置は、自動車等の移動体(車両)に搭載され、また、図1に示すように、指向性アンテナ1−1,1−2と、無指向性アンテナ2と、無線通信処理部3−1〜3−n(nは2以上の整数)と、アンテナ切り替え部4と、無線制御部5と、地図情報提供部6と、位置取得部7と、走行情報取得部8と、で構成される。
【0022】
指向性アンテナ1−1,1−2は特定の方向の感度が高いアンテナであり、無指向性アンテナ2は全方向に感度を有するアンテナである。なお、図1の例では、指向性アンテナを2本、無指向性アンテナ2を1本として示しているが、それぞれのアンテナの数は、これに限らず、何本ずつとしてもよい。また、図1の例では、指向性アンテナ1−1,1−2と無指向性アンテナ2を別のハードウェアとしているが、両方の機能を有する1つのアンテナを備えるようにしてもよい。
【0023】
本実施の形態では、使用周波数や無線方式の異なる、複数の種別の情報を受信する。この情報は、たとえば、路車間通信や車々間通信によって送信された運転支援情報等である。これら複数の全ての種別の情報について、それぞれ、指向性アンテナ1−1,1−2および無指向性アンテナ2のうちすくなくとも1つのアンテナがその情報が送信される周波数を受信可能とする。
【0024】
本実施の形態が前提とする無線方式は、たとえば、ETC/DSRCに代表される路車間無線方式、5.8GHz帯等を用いた車々間無線方式、700MHz帯や5.9GHz帯を用いた路車間通信/車々間通信ハイブリッド方式(路車間通と車々間通信の両方を行なう無線方式)などであり、本実施の形態の車載通信装置が用いられる国内で定められた電波法に合致した無線方式とする。なお、ここでは、無線方式の例として、現存している無線方式を列挙したが、今後提案される、路車間無線方式、車々間無線方式および路車間通信/車々間ハイブリッド方式についても、使用する周波数、送信電力、アンテナ利得などの情報が既知であれば対応可能である。
【0025】
例えば、携帯電話の第4世代システムは現時点で仕様(使用周波数も含む)が未定であるが、第4世代システムの仕様が確定した時点で、その仕様に対応した周波数、や無線方式を無線通信処理部3−1〜3−nのいずれかに設定することで、対応することができる。
【0026】
無線通信処理部3−i(i=1,2,…,n)は、上述のような路車間無線方式、車々間無線方式および路車間通信/車々間ハイブリッド方式等の無線方式のうちの1つに対応した無線通信処理を行う。たとえば、無線通信処理部3−1は、ETCシステムに対応した所定の無線通信処理を行い、無線通信処理部3−2は、700MHz帯の路車間通信/車々間通信ハイブリッド方式に対応した所定の無線通信処理を行う等、それぞれが自身に設定された無線方式で無線通信処理を行う。
【0027】
また、無線通信処理部3−iが行なう無線通信処理は、それぞれの無線方式に対応した所定の受信処理を含むが、その無線方式に対応した送信処理を含むようにしてもよい。特に、車々通信の場合は、車両間で互いに自身の位置等の情報をやりとりするため一般に送信処理も実施する。送信処理を含む場合には、対応する指向性アンテナ1−1,1−2,無指向性アンテナ2についても受信のみでなく送信も行なうとする。
【0028】
無線制御部5は、地図情報提供部6から出力される後述の周辺情報と走行情報取得部8から地図情報提供部6経由で取得する走行情報とに基づいて無線方式を選択し、選択した無線方式に基づいて、無線通信処理部3−1〜3−nのうちの1つ以上を選択し、また、指向性アンテナ1−1,1−2,無指向性アンテナ2のうちの1つ以上を選択して、選択した無線通信処理部と選択したアンテナとを接続するようアンテナ切り替え部4に指示する。また、無線制御部5は、選択した無線通信処理部へ所定の無線通信処理を行うよう指示する。なお、この際、アンテナおよび無線通信処理部をそれぞれ複数選択する場合は、接続するアンテナと無線通信処理部の組み合わせも指示することとする。
【0029】
アンテナ切り替え部4は、無線制御部5からの指示に基づいて、無線通信処理部3−1〜3−nのうちのいずれか1以上(アンテナ切り替え部4が選択した無線通信処理部)と指向性アンテナ1−1,1−2,無指向性アンテナ2のうちの1つ以上(アンテナ切り替え部4が選択したアンテナ)とを接続する。
【0030】
地図情報提供部6は、無線制御部6の指示に基づいて、位置取得部7から自身が搭載されている車両等の位置情報(現在位置等)を取得して、その位置情報と保持している地図情報とに基づいて、周辺情報を求め、周辺情報を無線制御部5へ通知する。周辺情報は、例えば、現在位置から所定の範囲内の地図情報であり、交差点や信号機の位置、路側機(DSRCシステム等で情報の送信を行なう基地局)等の路車間通信の情報の発信元の基地局の位置、などの情報を含むとする。なお、地図情報提供部6は、存在の有無を判定する対象となる対象物(交差点、信号機、路側機等の基地局)の種別とその位置を地図情報としてあらかじめ保持しているとする。
【0031】
地図情報提供部6は、本実施の形態の車載通信装置として専用に設けてもよいが、例えばカーナビゲーションシステムやパソコン上の電子地図ソフトウェア等を地図情報提供部6として用いることもできる。その場合には、カーナビゲーションシステムやパソコン上の電子地図ソフトウェア等に上述の周辺情報を求める際の対象物の種別とその位置を保持させておくこととする。
【0032】
位置情報取得部7は、本実施の形態の車載通信装置が搭載されている車両の現在の位置情報を取得する装置である。位置情報取得部7としては、例えば、GPS(Global Positioning System)受信システムや無線LANを用いた測距装置等を用いることができる。位置情報取得部7は、本実施の形態の車載通信装置専用に設置してもよいし、既存のGPS受信システム等を用いてもよい。位置情報取得部7は、位置情報として、例えば、経度、緯度等を取得する。
【0033】
走行情報取得部8は、車の走行情報を取得する。位置情報取得部7の具体的な例としては、車載ネットワークと接続するためのインタフェースを有し、車載ネットワークにより車両の制御システム等から車速や車両の向き等を走行情報として取得する装置である。車載ネットワークとしては、たとえば既存のCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等を用いることができる。なお、走行情報の取得方法は、これに限らずどのような方法を用いてもよい。
【0034】
なお、図1の構成例では、位置取得部7および走行情報取得部8を地図情報提供部6に接続し、地図情報提供部6が、走行情報取得部8を地図情報提供部6経由で無線制御部5へ入力しているが、走行情報取得部8を無線制御部5に接続し、無線制御部5が、直接走行情報取得部8から走行情報を取得するようにしてもよい。また、位置取得部7を無線制御部5に接続し、無線制御部5が、位置取得部7から取得した位置情報を地図情報提供部6へ渡すようにしてもよい。
【0035】
無線制御部5の無線通信処理部およびアンテナの選択方法については、例えば、周辺に路車間通信の基地局がある場合には、その基地局に対応した路車間通信の無線方式を選択し、その無線方式に対応した無線通信処理部を選択し、基地局がない場合には、車々間通信に対応した無線方式に対応した無線通信処理部を選択する。交差点や信号、基地局等が近傍にあるか否かの判断は、たとえば、その対象物の位置と車両の現在位置との距離が所定の値未満である場合に近傍であると判断する。また、交差点や信号については、さらに走行情報に基づいて車両の進行方向に交差点や信号があるか否かについても考慮するようにしてもよい。
【0036】
また、無線制御部5は、たとえば、走行情報に基づいて、自身が搭載されている車両が停止している場合には、電波の伝播距離の短い無線方式に対応した無線通信処理部を選択し、走行中の場合には、電波の伝播距離の長い(遠距離まで伝播が到達する)無線方式に対応する無線通信処理部を選択する。この場合、停止中に車々通信により送信を行なった電波が遠方まで送信されることを防ぎ、携帯電話やテジタルテレビへの干渉の発生を低減するとともに、不要な情報を受信する車両の数を低減することができる。
【0037】
また、アンテナの選択については、たとえば、交差点以外を走行中には、全方向からの情報を取得しやすくするために、無指向性アンテナ2を用い、交差点付近では、前方向を指向する(前方向の)指向性アンテナ1−1,1−2を用いると、走行中には多方向から他車両の位置情報等を取得することができ、また交差点付近では、交差点付近に存在する車両や霧局から必要な情報を精度よく取得できる。また、交差点付近で後方向の指向性アンテナ1−1,1−2を用いると、後ろに車両の位置等を確認でき、交差点への侵入により自身が速度を落とした時に、後方からの追突の回避を支援することができる。
【0038】
なお、無線通信処理部およびアンテナの選択方法は、一例であり、走行情報および周辺情報に基づいて、適切に無線通信処理部およびアンテナを選択する方法であればどのような選択方法を用いてもよい。なお、無線制御部5は、利用可能な車々間通信および路車間通信等について、それぞれ無線方式ごとの使用周波数帯等の情報を把握しているとする。
【0039】
また、本実施の形態では、路車間通信の基地局があるか否かを周辺情報に含め、路車間通信の基地局が周辺に存在するか否かを無線通信処理部およびアンテナの選択に考慮しているが、これに限らず、信号、路車間通信の基地局の有無を考慮せず、信号や交差点等の有無の情報に基づいて選択するようにしてもよい。この場合、地図情報には路車間通信の基地局の位置を含む必要は無い。
【0040】
このように、本実施の形態では、無線制御部5が、車両等の位置情報と走行情報と地図情報とに基づいて、無線通信処理部およびアンテナを選択し、選択した無線通信処理部と選択したアンテナを接続するよう指示し、アンテナ切り替え部4が指示に基づいて選択した無線通信処理部と選択したアンテナを接続するようにした。また、無線制御部5は、選択した無線通信処理部に対して処理を行うよう指示するようにした。そのため、複数の無線方式により運転支援情報が提供される場合に、車両等に状況に応じて適切な運転支援情報を取得することができる。すなわち、複数の路車間、車々間方式等を併用することで、左折巻き込み事故、右直事故、出会い頭事故、自専道での追突事故などの様々な事象に応じて適切に運転支援のための情報を得ることができる。
【0041】
実施の形態2.
図2〜5は、本発明にかかる車載通信装置の実施の形態2の無線通信処理部およびアンテナの選択方法の一例を示すフローチャートである。本実施の形態の車載通信装置の構成は、実施の形態1の車載通信装置と同様である。
【0042】
本実施の形態では、実施の形態1で説明した本実施の形態の車載通信装置の無線制御部5が実施する無線通信処理部およびアンテナの選択方法の具体例について図2〜図5を用いて説明する。ここでは、一例をして指向性アンテナ1−1,1−2のうちいずれかが後方を指向し、いずれかが前方を指向するとする。
【0043】
まず、本実施の形態の車載通信装置の起動や操作者の操作等により無線通信処理部およびアンテナの選択処理が開始されると、無線制御部5は、所定の初期化処理を実施した後に、地図情報、位置情報、走行情報を取得する(ステップS11)。なお、ここでは、無線制御部5が、位置取得部7から位置情報を取得し、地図情報提供部6から現在位置の周辺の地図情報(周辺情報)を取得し、走行情報取得部8から走行情報を取得することとする。
【0044】
つぎに、無線制御部5は、走行情報に基づいて自身が搭載されている車両が走行中であるか停止中であるかを判断する(ステップS12)。たとえば、走行情報に含まれる車速に基づいて、車速が所定の速度未満の場合に停止中とし、車速が所定の速度以上の場合に走行中と判断してもよいし、走行情報に停止中であるか否かの情報が含まれる場合にはその情報を用いて判断するようにしてもよい。
【0045】
ステップS12で走行中と判断した場合(ステップS12 Yes)は、走行時の無線通信及びアンテナ切り替え制御を開始する。具体的には、まず、周辺情報(地図情報)に基づいて、現在位置が交差点近傍か否かの判断を行う(ステップS13)。交差点の近傍でないと判断した場合(ステップS13 No)は、無線制御部5は、無指向性アンテナ2を選択し、また、利用可能な車々間の無線方式のうち、使用周波数帯や最大送信電力等に基づいて、最も遠距離に飛ばせる車々間通信に対応する無線方式(車々間通信または路車間通信/車々間ハイブリッド方式)を選択し、選択した無線方式に対応する無線通信処理部を選択し(ステップS15)、ステップS11に戻る。
【0046】
また、ステップS12で走行中でないと判断した場合(ステップS12 No)は、後述の停止時処理を実施する(ステップS14)。
【0047】
ステップS13で交差点の近傍であると判断した場合(ステップS13 Yes)は、周辺情報に基づいて、信号の近傍であるか否か(近傍に信号かあるか否か)を判断する(ステップS16)。信号の近傍でないと判断した場合(ステップS16 No)は、前後方向の指向性アンテナ1−1,1−2を選択し、また、利用可能な車々間の無線方式のうち、使用周波数帯や最大送信電力等に基づいて、最も遠距離に飛ばせる車々間通信に対応する無線方式(車々間通信または路車間通信/車々間ハイブリッド方式)を選択し、選択した無線方式に対応する無線通信処理部を選択し(ステップS17)、ステップS1へ戻る。
【0048】
ステップS16で信号の近傍であると判断した場合(ステップS16 Yes)は、無線制御部5は、周辺情報に基づいて基地局(車々間通信、路車間、路車間通信/車々間ハイブリッド方式等に対応した無線基地局)が近傍に存在するか否かを判断する(ステップS18)。基地局が近傍に存在しないと判断した場合(ステップS18 No)は、ステップS17と同様に、前後方向の指向性アンテナ1−1,1−2を選択し、また、利用可能な車々間の無線方式のうち、使用周波数帯や最大送信電力等に基づいて、最も遠距離に飛ばせる車々間通信に対応する無線方式を選択し、選択した無線方式に対応する無線通信処理部を選択し(ステップS19)、ステップS11に戻る。
【0049】
また、ステップS18で、基地局が近傍に存在すると判断した場合(ステップS18 Yes)は、前方向の指向性アンテナ1−1,1−2を選択し、その基地局が搭載している路車間通信に対応する無線方式を選択し、その無線方式に対応する無線通信処理部を選択する(図3のステップS20)。つぎに、無線制御部5は、走行情報に基づいて、車両が低速で走行しているか(所定の速度しきい値以下であるか)否かを判断する(ステップS21)。低速で走行している場合(ステップS21 Yes)は、複数車々間通信を搭載しているか(複数の車々間通信(路車間/車々間ハイブリッド方式を含む)を同時に実施できるような構成であるか)否かを判断する(ステップS22)。複数車々間通信を搭載している場合とは、複数の車々間通信(路車間/車々間ハイブリッド方式を含む)を同時に使用できるような構成である場合である。たとえば、複数の指向性アンテナを搭載している場合に、アンテナの指向方向ごとに異なる無線方式を選択し、選択した無線方式による通信を同時に実施するケース等に相当する。
【0050】
ステップS21で低速で走行していないと判断した場合(ステップS21 No)は、ステップS17と同様に、前後方向の指向性アンテナ1−1,1−2を選択し、また、利用可能な車々間(路車間/車々間ハイブリッド方式を含む)の無線方式のうち、使用周波数帯や最大送信電力等に基づいて、最も遠距離に飛ばせる車々間通信に対応する無線方式を選択し、選択した無線方式に対応する無線通信処理部を選択し(ステップS23)、ステップS11に戻る。また、複数車々間通信を搭載していない場合(ステップS22 No)も、ステップS23へ進む。なお、複数車々間通信を搭載していない場合(ステップS22 No)に、ステップS23の代りに、前後方向の指向性アンテナ1−1,1−2を選択し、近距離(電波の到達距離が長くない)の無線方式に対応する無線通信処理部を選択し、ステップS11へ戻るようにしてもよい。
【0051】
ステップS22で複数の車々間通信を搭載していると判断した場合(ステップS22 Yes)、無線制御部5は、自身が搭載されている車両が、車列の最後尾であるか否かを判断する(ステップS24)。最後尾であるか否かの判断方法は、どのような方法を用いてもよい。
【0052】
ステップS24で最後尾であると判断した場合(ステップS24 Yes)は、1つのめの車々間通信用として、近距離(電波の到達距離が長くない)の無線方式に対応する無線通信処理部と前方向の指向性アンテナ1−1,1−2とを選択し、また2つめの車々間通信用として、遠距離(電波の到達距離が長い)無線方式に対応する無線通信処理部と後方向の指向性アンテナ1−1,1−2とを選択し(ステップS25)、ステップS11に戻る。近距離の無線方式の選択方法としては、たとえば、車々間通信をサポートする(車々間通信または路車間/車々間通信ハイブリッド方式に対応する)無線方式のうち、最も電波の到達距離の短い方式を選択する。
【0053】
ステップS24で最後尾でないと判断した場合(ステップS24 No)は、1つのめの車々間通信用として、近距離(電波の到達距離が長くない)無線方式に対応する無線通信処理部と前方向の指向性アンテナ1−1,1−2とを選択し、また2つめの車々間通信用として、近距離無線方式に対応する無線通信処理部と後方向の指向性アンテナ1−1,1−2とを選択し(ステップS26)、ステップS11に戻る。
【0054】
つぎに、図5を用いて停止時処理(上述のステップS14)について説明する。停止時処理では、まず、周辺情報に基づいて交差点近傍であるか否かを判断する(ステップS27)。交差点近傍でないと判断した場合(ステップS27 No)、無線制御部5は、無指向性アンテナ2を選択し、また、利用可能な車々間の無線方式のうち、使用周波数帯や最大送信電力等に基づいて、最も遠距離に飛ばせる車々間通信に対応する無線方式(車々間通信または路車間通信/車々間ハイブリッド方式)を選択し、選択した無線方式に対応する無線通信処理部を選択し(ステップS28)、ステップS11に戻る。
【0055】
ステップS27で交差点近傍であると判断した場合(ステップS27 Yes)、周辺情報に基づいて近傍に基地局があるか否かを判断する(ステップS29)。近傍に基地局がないと判断した場合(ステップS29 No)、後方の指向性アンテナ1−1,1−2を選択し、また、利用可能な車々間の無線方式のうち、使用周波数帯や最大送信電力等に基づいて、最も遠距離に飛ばせる車々間通信に対応する無線方式を選択し、選択した無線方式に対応する無線通信処理部を選択し(ステップS30)、ステップS11に戻る。
【0056】
ステップS29で近傍に基地局があると判断した場合(ステップS29 Yes)、図3のステップS20と同様に、前方の指向性アンテナ1−1,1−2を選択し、その基地局が搭載している路車間通信に対応する無線方式を選択し、その無線方式に対応する無線通信処理部を選択する(図5のステップS20)。なお、この場合、アンテナについては前方の指向性アンテナ1−1,1−2以外を選択してもよい。
【0057】
つぎに、複数車々間搭載しているか否かを判断する(ステップS31)。複数車々間搭載していない場合(ステップS31 No)は、後方の指向性アンテナ1−1,1−2を選択し、また、利用可能な車々間の無線方式のうち、使用周波数帯や最大送信電力等に基づいて、最も遠距離に飛ばせる車々間通信に対応する無線方式を選択し、選択した無線方式に対応する無線通信処理部を選択し(ステップS32)、ステップS11に戻る。また、複数車々間搭載している場合(ステップS31 Yes)は、ステップS24へ進む。
【0058】
なお、ステップS24の最後尾であるか否かの判定は、例えば、以下のような方法で実施する。はじめに、周辺に存在するほぼすべての車両が車々間通信を行っていると想定される場合について説明する。この場合、まず、車々間通信によって周辺の車両から進行方向、送信元の位置、速さなどの情報を取得する。なお、車々間通信では、例えば、上記非特許文献1に示すように、アプリケーションデータ定義がされているとし、ここでは進行方向、送信元の位置、速さなどの情報が提供されるとする。
【0059】
無線制御部5は、車々間通信により他の車両から取得した情報に基づいて、周辺の他車両が、全て自車両と進行方向が同じで、かつ周辺の全ての他車両の位置が自車両の位置より前(自車両の進行後方)にしかない場合は、最後尾と判断する。それ以外の場合は、最後尾でないと判断する。
【0060】
つぎに、周辺に存在する車両のうち車々間通信を行っている車両が少ないと想定される場合について説明する。この場合は、他車両から車々間通信によって情報を取得できない可能性が高いため、自車両に前後方向に車載レーダー等を搭載し、後方の車が存在するか否かの検知を行うことにより、最後尾であるか否かの判断を行う。以上述べた動作以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。
【0061】
なお、上述した無線通信処理部およびアンテナの選択方法は、一例であり、これに限らず、どのような選択方法としてもよい。また、各処理の順序もこれに限らず、同様の結果が得られる限り、どのように順序を変更してもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、前方および後方の指向性アンテナ1−1,1−2を用いる場合について説明したが、さらに横後方や斜め前または斜め後ろを指向する指向性アンテナを組み合わせて用いるようにしてもよい。また、指向性アンテナが1つの場合には、たとえば前方向を指向するようにする。
【0063】
また、本実施の形態で述べたように、複数の無線方式またはアンテナを選択して、同時に機能させるようにしてもよい。1つの無線方式で複数のアンテナ(たとえば、前方の指向性アンテナと後方の指向性アンテナ)を用いる場合、そのアンテナの数分だけ無線通信処理部を備えるようにしてもよいし、1つの無線通信処理部が複数のアンテナを用いた所定の送受信処理を行うような構成としてもよい。
【0064】
なお、本実施の形態では、基地局については、信号近傍に存在する基地局のみを考慮したが、信号の近傍以外に基地局が存在する場合には、その位置を地図情報に格納しておき、無線制御部5が周辺情報としてその位置も取得し、基地局が近傍にある場合に、その基地局に対応した無線方式を選択するようにしてもよい。
【0065】
以上のように、本実施の形態では、無線制御部5が、走行時に交差点近傍以外では、無指向アンテナ2を用いた遠距離の車々通信をサポートする無線方式を選択し、走行時の交差点近傍では、前後方向の指向性アンテナ1−1,1−2を用いて遠距離の車々通信をサポートする無線方式を選択し、また、基地局が近傍にある場合には、前方向の指向性アンテナ1−1,1−2を用いたその基地局に対応する路車間通信の無線方式を選択する。また、低速または停止時には、さらに最後尾であるか否かを判断し、最後尾の場合は前方向の指向性アンテナ1−1を用いた近距離の車々通信をサポートする無線方式と、後方向の指向性アンテナ1−1を用いた遠距離の車々通信をサポートする無線方式と、を選択し、最後尾でない場合には、前後後方の指向性アンテナを用いた近距離の車々通信をサポートする無線方式を選択するようにした。そのため、車両等に状況に応じて適切な運転支援情報を取得することができる。
【0066】
実施の形態3.
図6は、本発明にかかる実施の形態3の車載通信装置が保持する管理情報の一例を示す図である。本実施の形態の車載通信装置の構成は、実施の形態1の車載通信装置と同様である。
【0067】
本実施の形態では、本実施の形態の車載通信装置の無線制御部5が無線方式およびアンテナの選択時に考慮する電波の到達距離について説明する。本実施の形態では、たとえば、実施の形態2で示した手順により、無線制御部5が無線方式およびアンテナを選択するとする。この際、たとえば、実施の形態2で説明したステップS15では車々間通信をサポートする無線方式のうち到達距離の最も長い無線方式を選択している。また、ステップS24では、到達距離の短い(近距離の)無線方式を選択している。
【0068】
以下では、上記の無線方式を選択する際に考慮する、無線方式ごとの到達距離の具体的な求め方の一例を示す。本実施の形態では、無線制御部5は、図6に示したような管理情報を保持しているとする。無線方式#1,#2,…,#nは、それぞれ無線通信処理部3−1,3−2,…,3−nに対応する無線方式の番号である。また、ここでは、指向性アンテナ1−1,1−2および無指向性アンテナ2について、指向性か無指向性かを区別せずに各アンテナに番号を割り当ており、アンテナ#1,#2,#m(mはアンテナの総数)は、たとえば、指向性アンテナ1−1,1−2,無指向性アンテナ2にそれぞれ対応する。なお、実施の形態1で述べたとおり、指向性アンテナの数および無指向性アンテナの数に制約はないため、ここでは一般化して総数をmとしている。
【0069】
管理情報は、無線方式ごとの各情報を示す無線方式情報と、アンテナごとの情報を示すアンテナ情報と、で構成される。図6の上側は、無線方式情報の一例を示している。無線方式情報は、無線方式番号、無線方式周波数、送信電力、ケーブル等のロスおよび対応システムで構成される。また、アンテナ情報は、アンテナ番号と「アンテナ形状+利得」で構成される。
【0070】
無線方式情報の周波数は、その無線方式が対応する周波数を記載する。例えば、上記非特許文献5に記載されているDSRCシステムの場合では5.8GHzとなる。送信電力は、国毎の電波に関する規制に合致した送信電力とする。また、ケーブル等のロスは、その無線方式に従って処理を実施する際に発生するケーブルロス等の損失であり、その無線方式に対応する無線通信処理部ごとに設計値や試験結果等を用いて求めておく。
【0071】
対応システムは、その無線方式が車々間通信に対応しているか(車々間only)、路車間通信に対応しているか(路車間only)、路車間/車々間ハイブリッド方式に対応しているか(路車間+車々間共用)、の別を示している。また、車々間通信、路車間通信、路車間/車々間ハイブリッド方式のそれぞれについて、複数の方式がある場合はどの方式に対応しているかの識別情報([方式#1],[方式#2]等)も含む。これら以外の無線通信システムに対応する場合には、その無線通信システムを識別する情報を記載する。
【0072】
アンテナ情報の「アンテナ形状+利得」は、国毎の電波に関する規制に合致した値とし、アンテナごとに設計値や試験結果等を用いて求めておく。
【0073】
以下、上記非特許文献5に記載されている例に基づいて説明する。非特許文献5に記載のシステムでは、送信電力は空中線電力で規定されており、基地局の空中線電力は300mW以下と、移動局の空中線電力は10nW以下と、それぞれ規定されている。
【0074】
また、アンテナ形状+利得については、上記非特許文献5では、基地局に接続される空中線の絶対利得は30dBi以下、移動局に接続される空中線の絶対利得は10dBiと規定されている。形状については、基地局用空中線については規定せず、移動局用の空中線については、上下角±90°で−5dB以下、方位角±90°で−5dB以下、半値幅は、上下角、方位角とも60°以上であると規定されている。
【0075】
つぎに、到達距離の具体的な計算例を示す。ここでは、まず、一般的な回線設計手法に基づいて(たとえば、“三瓶正一著「基礎からシステム設計までディジタルワイヤレス伝送技術」ピアソン・エデュケーション,p366−P367”参照)、下記式(1)に従って受信レベルを求める。
rec[dBm]=PEIRP[dBm]−Lp[dB]+GR[dBi]−Lfr[dB]
…(1)
rec[dBm]:受信信号レベル
EIRP[dBm]:実行放射電力
p[dB]:パスロス
R[dBi]:受信アンテナ利得
fr[dB]:ケーブルなどのロス
【0076】
なお、パスロスLp[dB]は環境によって変動するが、本実施の形態では“守倉 正博,久保田周治著「改定版802.11 高速無線LAN教科書」,インプレス,P255”に記載の自由空間減衰とした場合を一例として示す。パスロスLp[dB]は、以下の式(2)に従って算出する。
p[dB]=20log10f+20log10d+20log10(4π/c)+120
…(2)
f:周波数[MHz]
d:到達距離[m]
c:光速[m/s]
【0077】
上記式(1)および式(2)に基づいて、一連のパラメータを入力すれば、受信レベルごとに到達距離dを計算することができる。したがって、所望の受信レベルを決定し、無線方式とアンテナの組み合わせを決定すれば到達距離d[m]が一意に決まる。無線方式とアンテナの組み合わせごとに到達距離を求め、最も遠い距離まで電波を飛ばしたい場合は到達距離d[m]が最も大きい、無線方式とアンテナの組み合わせを選択すればよい。逆に最も近距離となるような選択をしたい場合には、パスロス計算にて最もパスロスが大きい無線方式を選択する。
【0078】
なお、無線方式とアンテナの組み合わせの選択は、各々の制約のなかで上記の到達距離d[m]に基づいて選択する。たとえば、実施の形態2のステップS15では、無指向性アンテナで、車々間通信をサポートという制約があるため、無線制御部5は、図6に例示した管理情報のうち、無線方式情報に基づいて、対応システムが車々間通信onlyまたは路車間+車々間共用の無線方式を抽出する。また、アンテナについては、送受信アンテナ形状に基づいて無指向性アンテナを抽出する。そして、抽出した無線方式と抽出したアンテナについて、無線方式とアンテナの組み合わせごとに、管理情報を参照して到達距離を求め、到達距離が最も長い組み合わせを選択すればよい。
【0079】
なお、本実施の形態では、回線設計手法に基づく例として式(1)および式(2)を用いて算出例を記載したが、これらの計算結果として、たとえば無線方式とアンテナの組み合わせごとの到達距離をあらかじめテーブル等で保持しておき、そのテーブルを用いて選択してもよい。
【0080】
このように、本実施の形態では、無線制御部5が、到達距離の算出に必要な無線方式およびアンテナに関するパラメータを管理情報として保持し、回線設計手法と自由空間減衰の仮定を用いて、無線方式とアンテナの組み合わせごとに到達距離を求め、その到達距離に基づいて無線方式およびアンテナを選択するようにした。そのため、車両等に状況に応じて、要求される電波の到達距離に適する無線方式およびアンテナを適切に選択することができ、適切な運転支援情報を取得することができる。
【0081】
実施の形態4.
つぎに、本発明にかかる実施の形態4の無線方式およびアンテナの選択方法について説明する。本実施の形態の車載通信装置の構成は、実施の形態1の車載通信装置と同様である。
【0082】
本実施の形態では、実施の携帯1〜実施の形態3で述べた無線方式およびアンテナの選択する際に、一度、無線方式およびアンテナの選択をしてから、次の無線方式およびアンテナの選択までの処理を実施するまでに所定の時間をおく。すなわち、無線方式およびアンテナの選択を所定の周期で実施する。例えば、実施の形態2で述べたフローチャートで無線方式およびアンテナの選択(ステップS15,ステップS17,ステップS19,ステップS23,ステップS25,ステップS26,ステップS28,ステップS30,ステップS32)の後にステップS11へ戻るが、この際、所定の時間が経過した後にステップS11へ戻るようにする。
【0083】
無線方式およびアンテナの選択までの処理の周期の長さについては、一定としてもよいし、地図情報(周辺情報)、位置情報、走行情報等に基づいて長さを変えるようにしてもよい。例えば、無線制御部5は、周辺情報に基づいて、交差点が少ない郊外であると判断した場合は周期を長くし、交差点が多いエリアであると判断した場合には、無線方式やアンテナを頻繁に変える可能性があるため、周期を短くする。また、直線道路などの場合には頻繁な切り替えは不要なため、周期を長くする。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1の動作と同様である。
【0084】
このように、本実施の形態では、無線方式およびアンテナの選択を所定の周期で実施するようにした。地図情報等に基づいて、無線方式およびアンテナの切り替えの確率の高い場合には周期を短くし、無線方式およびアンテナの切り替えが不要な場合は周期を長くすることにより、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、不要な電波の送受信を防いで、干渉の発生頻度を低減し、また消費電力も低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明にかかる車載通信装置および通信方法は、自動車等の車両に搭載され、外部から無線通信により情報を取得する車載通信装置に有用であり、特に、複数の無線方式に対応する車載通信装置に適している。
【符号の説明】
【0086】
1−1,1−2 指向性アンテナ
2 無指向性アンテナ
3−1〜3−n 無線通信処理部
4 アンテナ切り替え部
5 無線制御部
6 地図情報提供部
7 位置取得部
8 走行情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の無線通信処理手段と2つ以上のアンテナとを備える車載通信装置であって、
地図情報を保持する地図情報提供手段と、
自車両の現在位置を含む位置情報を取得する位置取得手段と、
自車両の走行速度を含む走行情報を取得する走行情報取得手段と、
前記現在位置を前記位置取得手段から取得し、前記現在位置の周辺の地図情報を前記地図情報提供手段から取得し、前記走行情報を前記走行情報取得手段から取得し、前記位置情報と前記周辺情報と前記走行情報と、に基づいて、使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて無線通信処理手段とアンテナを接続するよう指示する無線制御手段と、
前記無線制御手段の指示に基づいて無線通信処理手段とアンテナを接続するアンテナ切り替え手段と、
を備えることを特徴とする車載通信装置。
【請求項2】
前記地図情報として、交差点の位置を含むこととし、
前記無線制御手段は、前記地図情報と前記位置情報とに基づいて自車両が交差点の近傍であるか否かを判定し、判定した結果に基づいて使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車載通信装置。
【請求項3】
前記無線制御手段は、自車両が交差点の近傍であるかと判断した場合には指向性アンテナを選択し、自車両が交差点の近傍でないと判断した場合には無指向性アンテナを選択する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車載通信装置。
【請求項4】
前記地図情報として、信号の位置を含むこととし、
前記無線制御手段は、前記地図情報と前記位置情報とに基づいて、自車両が信号の近傍であるか否かを判定し、判定した結果に基づいて使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の車載通信装置。
【請求項5】
前記地図情報として、路車間通信の基地局の位置を含むこととし、
前記無線制御手段は、前記地図情報と前記位置情報とに基づいて、自車両が前記基地局の近傍であるか否かを判定し、判定した結果に基づいて使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車載通信装置。
【請求項6】
前記無線制御手段は、自車両が前記基地局の近傍であると判断した場合にはその基地局が採用する通信方式に対応する無線通信処理手段を選択する、
ことを特徴とする請求項5に記載の車載通信装置。
【請求項7】
前記無線制御手段は、前記走行情報に基づいて、自車両が停止しているか否かを判定し、判定した結果に基づいて使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の車載通信装置。
【請求項8】
自車両が停止していると判断した場合に、他車両の位置情報に基づいて、自車両が最後尾に位置しているか否かを判定し、判定した結果に基づいて使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択する、
ことを特徴とする請求項7に記載の車載通信装置。
【請求項9】
前記他車両の位置情報を、車々通信によって取得する、
ことを特徴とする請求項8に記載の車載通信装置。
【請求項10】
前記他車両の位置情報を取得するレーダー、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の車載通信装置。
【請求項11】
前記無線制御手段は、無線通信処理手段ごとに、無線通信に用いる周波数、無線通信に用いる送信電力、ロスを無線方式情報として保持し、またアンテナごとに送信アンテナ形状および利得をアンテナ情報として保持し、前記無線方式情報およびアンテナ情報に基づいて、無線通信処理手段とアンテナの組み合わせごとに、通信の到達距離を計算し、前記到達距離に基づいて、使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択する、
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の車載通信装置。
【請求項12】
前記無線制御手段は、使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせの選択を周期的に行なう、
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の車載通信装置。
【請求項13】
前記無線制御手段は、使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせの選択を行なう周期を、前記地図情報に基づいて決定する、
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の車載通信装置。
【請求項14】
2つ以上の無線通信処理手段と2つ以上のアンテナとを備える車載通信装置における通信方法であって、
地図情報を保持する地図情報提供ステップと、
自車両の現在位置を含む位置情報を取得する位置取得ステップと、
自車両の走行速度を含む走行情報を取得する走行情報取得ステップと、
前記位置情報と、前記地図情報提供ステップで保持する地図情報のうち前記現在位置の周辺の地図情報と、前記走行情報と、に基づいて、使用する無線通信処理手段とアンテナの組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて無線通信処理手段とアンテナを接続するよう指示する無線制御ステップと、
前記無線制御ステップでの指示に基づいて無線通信処理手段とアンテナを接続するアンテナ切り替えステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−191946(P2011−191946A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56618(P2010−56618)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】