説明

車載電子装置の基板収納筐体

【課題】この発明は、回路基板に搭載された発熱部品の発生熱を、密閉筐体に伝熱と放射によって放散させる車載電子装置の基板収納筐体を提供するものである。
【解決手段】金属製のベース30と金属製のカバー20によって構成された金属筐体には回路基板40が密閉収納され、第一基板面43に対向するカバー20はコネクタハウジング41に対向する背高平面部22と、発熱部品43aに対向する背低平面部21を有し、発熱部品43aの発生熱は伝熱機構12と伝熱充填材13を介してベース30の伝熱台座部35に直接伝熱する。発熱部品43aの表面とカバー20の対向内面は、相互に熱放射率が0.7から1.0となる表面処理が施され、カバー20の背低平面部21に対して効率よく放射伝熱が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車載電子制御装置用の電子回路基板に関する基板収納筐体の改良、特には回路基板に搭載された発熱部品の発生熱を伝熱及び放射によって効率よく金属筐体に拡散して、金属筐体を構成する一対のベースとカバーの両方から筐体外部への放熱を行うようにした車載電子装置の基板収納筐体の改良構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発熱部品を搭載した回路基板を、ベースとカバーによって構成された金属筐体内に密閉収納して、発熱部品の発生熱をベース又はカバーに対して伝熱材を介して接触伝熱させたり、黒色塗装されたベース又はカバーの内面に放射熱として間接放散させて、発熱部品の温度上昇を抑制することが行われている。
【0003】
例えば、従来のものとして、下記の特許文献1「エンジン制御用電子制御機器」によれば、複数の発熱部品を搭載した回路基板を、カバー(本願で言うベース)とケース(本願で言うカバー)によって構成された金属筐体内に密閉収納して、カバー(ベース)側に設けられた主たる発熱部品の発生熱をカバー(ベース)に対して伝熱材を介して接触伝熱させるとともに、カバー(ベース)の内面を黒色塗装して放射熱として間接放散を行い、更には、ケース(カバー)側に設けられた小型発熱部品の発生熱を黒色塗装されたケース(カバー)の内面に放射熱として間接放散させて、発熱部品の温度上昇を抑制することが行われている。
【0004】
また、他の従来のものとして、下記の特許文献2「電子装置」によれば、発熱部品を搭載した回路基板を、ベースとケース(本願で言うカバー)によって構成された金属筐体内に密閉収納して、ケース(カバー)側に設けられた発熱部品の発生熱を反対面のベースに対して伝熱材を介して接触伝熱させるようになっており、ここではベース又はケース(カバー)の内面に対する熱放射に関しては何等の配慮も行われていない。なお、ケース(カバー)は背高平面部と背低平面部の段差形状となっていて、発熱部品は背高平面部に対向するようになっている。
【0005】
更に、他の従来のものとして、下記の特許文献3「電子基板の取付構造」によれば、回路基板の一方の面に搭載された発熱部品の発生熱を、回路基板の他方の面に設けられた伝熱台座に対して伝熱放散させるための伝熱用貫通孔となるサーマルバイアと、伝熱材を充填するための細隙を構成する隔離突起の概念が示されている。
【0006】
更に、他の従来のものとして、下記の特許文献4「電子基板装置」によれば、回路基板の一方の面に搭載された発熱部品の発生熱を、回路基板の他方の面に設けられた伝熱台座の中央突起部に対して伝熱放散させるための基板貫通部と、伝熱材を充填するための細隙を構成する隔離突起の概念が示されている。なお、この特許文献4の場合には、発熱部品の発生熱をベース側とカバー側の両側に対して伝熱材を介して接触伝熱させる構成となっているが、カバーは背高平面部と背低平面部の段差形状となっていて、発熱部品は背低平面部に対向するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4091568号公報(図1、段落[0006])
【特許文献2】特開2007−184428号公報(図1、図2、段落[0030])
【特許文献3】特開2009−124023号公報(図3、要約)
【特許文献4】特開2010−123787号公報(図3、要約、図6、段落[0040])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の特許文献1「エンジン制御用電子制御機器」は、主たる発熱部品の発生熱はカバー(本願で言うベース)側のみに伝熱放散し、ケース(本願で言うカバー)側への熱放射は考慮されていない。従って、カバー(ベース)側が高温環境にあって、ケース(カバー)が低温環境にある場合には十分な熱放散が行えないというという問題点がある。
【0009】
また、主たる発熱部品は一般に他の小型発熱部品よりは大型であり、カバー(ベース)側の厚さ寸法が増大する欠点があるとともに、発熱部品の高さ寸法にバラツキがあると伝熱材の厚さ寸法が変動して、伝熱特性が大幅に変化したり、半田接続端子に対するストレスが発生する問題点がある。
【0010】
また、ケース(カバー)の高さ寸法は外部接続コネクタの高さ寸法によって規制されていて、小型発熱部品とケース(カバー)の内面までの寸法が大きくなるので熱放射特性が悪化する問題点がある。
【0011】
上述した特許文献2「電子装置」の場合には、発熱部品がケース(本願で言うカバー)と対向する回路基板面に搭載され、回路基板を貫通してベース側に伝熱熱放散するようになっている。従ってベース側の厚さ寸法が増大せず、発熱部品の高さ寸法にバラツキがあっても伝熱特性が変化せず、半田接続端子に対するストレスが発生しないことになるが、ケース(カバー)側への熱放射に対する配慮がなされておらず、ベース側の環境がケース(カバー)側の環境に比べて高温である場合には、発熱部品の温度上昇が十分に抑制できない問題点がある。
【0012】
また、上述した特許文献3「電子基板の取付構造」の場合も同様であり、ベースに対する伝熱熱放散は行われるが、カバーに対する熱放射による熱放散は配慮されておらず、ベース側の環境がカバー側の環境に比べて高温である場合には、発熱部品の温度上昇が十分に抑制できない問題点がある。
【0013】
また、上述した特許文献4「電子基板装置」の場合には、発熱部品の発生熱をベース側とカバー側の両側に対して伝熱熱放散させるようになっており、発熱部品の高さ寸法にバラツキがあると伝熱材の厚さ寸法が変動して、伝熱特性が大幅に変化したり、半田接続端子に対するストレスが発生する欠点がある。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、主たる発熱部品に対して伝熱による熱放散と、放射による熱放散を併用し、良好な熱放散特性が得られる車載電子装置の基板収納筐体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明による車載電子装置の基板収納筐体は、発熱部品と外部接続用コネクタとが第一基板面に搭載され、金属製のベースと金属製のカバーとによって構成された筐体内部に密閉挟持されて、樹脂製のコネクタハウジングの端面を前記筐体の側面に露出させてなる回路基板を収納する車載電子装置の基板収納筐体であって、前記ベースの材料の厚さは前記カバーの材料の厚さと同等以上の厚さ寸法であるとともに、前記ベースは被取付面に固定設置するための取付足を備え、前記ベースは前記回路基板の第二基板面と対向し、前記カバーは前記回路基板の第一基板面と対向するとともに、前記コネクタハウジングと対向する背高平面部と、前記発熱部品と対向する背低平面部を備え、前記カバー及び前記ベースはシール材を介して相互に当接する輪郭外周部と、前記コネクタハウジングの外周部に対して前記シール材を介して当接する部分外周部とを備え、前記発熱部品は、伝熱機構と伝熱充填材が充填される細隙部とを介して前記ベースの伝熱台座部に対して熱的に連結され、前記発熱部品は熱放射率が0.7〜1.0となっており、前記カバーの内面であって少なくとも前記発熱部品と間隙をおいて対向する前記背低平面部は熱放射率が0.7〜1.0となる表面処理が施されているものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明による車載電子装置の基板収納筐体によれば、金属製のベースと金属製のカバーによって挟持され、消費電力の大きな発熱部品に対して金属製のベースに対する伝熱熱放散と、金属製のカバーに対する放射熱放散とが併用され、カバーに対する放射熱放散はカバーの背低平面部において間隙寸法を低減するとともに、相互に熱放射率を大きくする表面処理が施され、カバー外面又はベース外面における温度環境に相違があっても、平均化されて安定した熱放散を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる車載電子装置の基板収納筐体を示す平面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1のIII−III線における断面図である。
【図4】図1の正面図である。
【図5】図1のV−V線における断面図である。
【図6】図1のVI−VI線における断面図である。
【図7】図1のカバーの単品外観図である。
【図8】図1のものの温度上昇の特性を示す特性線図である。
【図9】図8のものの測定パラメータの一覧表を示す図である。
【0018】
【図10】この発明の実施の形態2に係わる車載電子装置の基板収納筐体における伝熱機構を示す断面図である。
【図11】図10のXI−XI線における断面図である。
【図12】図10で示す伝熱機構の平面図である。
【図13】図10で示す伝熱機構の平面図である。
【0019】
【図14】この発明の実施の形態3に係わる車載電子装置の基板収納筐体における伝熱機構を示す断面図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係わる車載電子装置の基板収納筐体におけるカバー及び隔離台座部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係わる車載電子装置の基板収納筐体の平面図である図1と、図1のものの右側面図である図2と、図1のもののIII−III線による断面図である図3と、図1のものの下側面図である図4と、図1のもののV−V線による断面図である図5と、図1のもののVI−VI線による断面図である図6と、図1のもののカバーの単品外観図である図7について、順次詳細に説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0021】
図1および図2において、基板収納筐体10は金属製のカバー20と、金属製のベース30を主体として構成されており、点線で示された回路基板40はカバー20とベース30によって挟持されて筐体内に密閉収納されている。
【0022】
ベース30は左右の取付足31,32を介して図示しない被取付面に設置固定されるようになっていて、筐体重量を支えるためにベース30の材料の厚さはカバー20の材料の厚さ以上の厚さ寸法となっている。
【0023】
また、回路基板40には図3で後述する外部接続用コネクタ42が半田付けされ、複数の外部接続用コネクタ42が圧入固定された樹脂製のコネクタハウジング41の端面は筐体側面(図1の下面)に露出するようになっている。
【0024】
なお、カバー20はコネクタハウジング41と対向する背高平面部22と、図3で後述する発熱部品43aと対向する背低平面部21によって構成されている。
【0025】
図3において、カバー20とベース30とは防水用のシール材11aを介して相互に当接する三方の輪郭外周部23,33と、シール材11b,11cを介してコネクタハウジング41の外周と当接する部分外周部24,34とを備え、三方の輪郭外周部23,33によって回路基板40を挟持するようになっている。
【0026】
回路基板40の第一基板面43には外部接続用コネクタ42の一端が半田接続されているとともに、消費電力が大きい発熱部品43aと消費電力が比較的小さな第一の小型発熱部品43bが搭載されていて、第一基板面43はカバー20の内面と対向するようになっている。
カバー20の内面において、少なくとも発熱部品43aと対向する背低平面部21の一部領域は熱放射率が0.7以上となるように表面処理が行われている。
【0027】
回路基板40の第二基板面44には消費電力が比較的小さな第二の小型発熱部品44bが搭載されていて、第二基板面44はベース30の内面と対向するようになっている。ベース30の内面は熱伝導性の暗色塗料が塗布されているとともに、ベース30の一部領域には伝熱台座部35が生成されていて、図6でも示すとおり発熱部品43aの発生熱は伝熱機構12と伝熱充填材13を介して伝熱台座部35へ伝熱するようになっている。なお、伝熱機構12の詳細は図10〜図13、又は図14によって後述する。
【0028】
図4および図5において、カバー20は図7で後述するとおり4隅に折曲片25a〜25d(25cは図示せず)を備え、図4で示すとおり折曲片25a〜25d(25a,25bは図示せず)を折り曲げることによってカバー20とベース30を一体化するようになっている。
【0029】
また、カバー20とベース30の三方の輪郭外周部23,33や部分外周部24,34は、図5と図3で示すとおり、防水用のシール材11a,11b,11cが塗布される凸凹面となっている。
【0030】
図6において、ベース30に設けられた伝熱台座部35は、図1の左上隅部分に設けられていて発熱部品43aの発生熱は後述する伝熱機構12と伝熱充填材13を介して伝熱台座部35に伝熱し、ベース30の全体に拡散して熱放散が行われるようになっている。
【0031】
また、発熱部品43aの発生熱は伝熱台座部35からシール材11aを介してカバー20に伝熱し、カバー20の全体に拡散して熱放散が行われるようになっている。
【0032】
図7において、カバー20の四隅に設けられた折曲片25a〜25d(25cは図示せず)のうち、折曲片25c,25dは図4において図示され、折曲片25a,25bは図6において図示されている。
【0033】
折曲片25a〜25dの内で、折曲片25a,25bにはばか穴26a,26bが設けられていて、カバー20の内面全体、又は内外面全体を暗色系塗料で静電塗装するときには、図示しない搬送吊具をばか穴26a,26bに通して安定した姿勢で搬送することができるようになっている。
【0034】
なお、ばか穴26a,26bに代わって図示しないばか穴26c,26dを設けることも可能であるが、誤った方向での吊下げが行われないようにするためには、ばか穴は2箇所に限定して設けるようになっている。
【0035】
なお、カバー20の背高平面部22と背低平面部21の各内面と、回路基板40の第一基板面43との間の間隙寸法は1.5〜2.5倍の落差があり、当該落差面は45度以上の急傾斜の傾斜角で連結されている。
【0036】
そのため、背の高い部品は背高平面部22へ移動して、発熱部品43aと背低平面部21との間隙を短縮するとともに、カバー20の表面積を大きくして熱放散性を向上するようになっている。
【0037】
以下、この発明の実施の形態1による車載電子装置の基板収納筐体10の作用と効果について、温度上昇の特性線図である図8と、図8のものの測定パラメータの一覧表を示す図である図9に基づいて詳細に説明する。
【0038】
図8において、縦軸で示された温度上昇値と横軸で示された消費電力との関係は、回路基板40を収納した基板収納筐体10を所定の設置場所に設置固定し、所定の環境温度のもとで回路基板40に搭載された図示しない電源回路と制御回路部品に対して可変の電源電圧を印加して、印加された電源電圧に対応した消費電力と発熱部品の外面温度の最大温度上昇値との関係を示したものである。
【0039】
図8で示された4本の特性線図のうち、ノーマル、サンプル1〜4と記載されたものの相違点は、図9で示されたパラメータの相違によるものである。
【0040】
図9において、ノーマルと記載されたものはアルミニウム製のカバー20とアルミニウム製のベース30を用い、カバー20とベース30との表面が暗色塗装を施さないアルミニウムの素地となっている場合であって、この場合には、温度上昇値が許容温度上昇値30℃となる消費電力が3.7Wとなっている。
【0041】
なお、発熱部品43aの表面は黒色であり、その平面寸法は15×20mmであるのに対し、カバー20の背低平面部21の内面との隙間は10mmとなっている。
また、伝熱充填材13が充填される細隙部G1の寸法は0.5mmとなっている。
【0042】
サンプル1と記載されたものは、ノーマル品に比べてカバー20の内外面に非伝熱性の黒色塗装を施したものであって、この実験における熱放射率は0.8となっている。
この場合には、温度上昇値が許容温度上昇値30℃となる消費電力が5.1Wとなっていて、ノーマル品に比べて138%の改善効果が得られている。
【0043】
サンプル2と記載されたものは、ノーマル品に比べてカバー20とベース30の内外面に非伝熱性の暗色塗装を施したものであって、いずれも熱放射率は0.8となっている。
この場合には、温度上昇値が許容温度上昇値30℃となる消費電力が4.9Wとなっていて、ノーマル品に比べて132%の改善効果が得られている。
但し、サンプル1と比べると96%の悪化となっているが、これは伝熱機構12によってベース30へ伝熱するときに、非伝熱性の暗色塗装によって伝熱抵抗が増大したことによるものである。
【0044】
サンプル3と記載されたものは、ノーマル品に比べてベース30の内面に非伝熱性の暗色塗装を施したものであって、この実験における熱放射率は0.8となっている。
この場合には、温度上昇値が許容温度上昇値30℃となる消費電力が3.5Wとなっていて、ノーマル品に比べて94%の悪化となっている。
これは伝熱機構12によってベース30へ伝熱するときに、非伝熱性の暗色塗装によって伝熱抵抗が増大したことによるものである。
【0045】
なお、カバー20とベース30の外面の塗装色は、外面の近傍に高温の発熱源がある場合には光沢のある白色にしておくのがよいが、カバー20とベース30の外面から熱放散が行われる設置環境となっている場合には内面と同様の暗色塗装を施すのが有利である。暗色塗装による表面の熱放射率は1.0に近いものがよいが、市場での入手性と実際の効果とを勘案すると0.7〜1.0の範囲とするのが適当である。
【0046】
また、ベース30の内面については、酸化金属又はセラミック系の伝熱フィラーを含む熱伝導性の暗色塗料を使用することによって、伝熱機構12によってベース30へ伝熱するときに、伝熱抵抗が増大せず、伝熱熱放散と放射熱放散とが併用されてサンプル1よりも優れた改善特性が得られることになる。
【0047】
更に、カバー20の輪郭外周部23とベース30の輪郭外周部33との間に塗布されるシール材11aは、伝熱機構12と伝熱台座部35との間に充填塗布される伝熱充填材13と同様に、伝熱フィラーを含むシリコン樹脂材を使用することによって、発熱部品43aの発生熱は伝熱台座部35からベース30へ拡散するだけでなく、シール材11aを介してカバー20へも拡散し、熱放散特性が改善されることになる。
この場合、輪郭外周部23,33の内面は非塗装であるか、塗装を行う場合には熱伝導性の暗色塗料を使用するのが効果的である。
【0048】
以上の説明では、少なくともカバー20の内面は全面塗装するようになっているが、第一基板面43に設けられる第一の小型発熱部品43bの個数が少なく、発熱要因とならない場合には、カバー20の内面の一部に暗色塗装を行うようにしても良い。
その場合の塗装面積は少なくとも発熱部品43aの表面積である15×20mm以上で、カバー20内面との間隙寸法10mmを考慮して(10+15+10)×(10+20+10)=35×40mm以下の寸法にしておけばよい。
【0049】
以上の説明では、カバー20とベース30はアルミニウムの板材を板金加工したものとして表現されているが、少なくとも一方又は両方をアルミダイキャストにすることも可能である。
【0050】
また、カバー20の4隅に設けた折曲片25a〜25dを廃止して、カバー20又はベース30の4隅にねじ穴を設け、反対側のベース30又はカバー20の4隅にばか穴を設け、4本のねじによって両者をねじ締め固定することも可能である。
【0051】
なお、発熱部品43aは熱放散性を高めるために薄型扁平構造とされるのが一般的であるが、この種の発熱部品43aに加えて背高部品でありながらも比較的消費電力が大きい特殊な発熱部品がある場合には、これを背高平面部22の下に配置して、発熱部品43aの場合と同様に伝熱機構12と伝熱充填材13を介してベース30への伝熱放散を行うとともに、背高平面部22の内面に塗布した暗色塗料によって熱放射特性を向上することができる。
【0052】
以上の説明で明らかなとおり、この発明の実施形態1による車載電子装置の基板収納筐体10は、発熱部品43aと外部接続用コネクタ42とが第一基板面43に搭載され、金属製のベース30と金属製のカバー20とによって構成された筐体内部に密閉挟持されて、樹脂製のコネクタハウジング41の端面を前記筐体の側面に露出させてなる回路基板40に対する車載電子装置の基板収納筐体10であって、前記ベース30の材料の厚さは前記カバー20の材料の厚さと同等以上の厚さ寸法であるとともに、前記ベース30は被取付面に固定設置するための取付足31,32を備え、取付足31,32を介して被取付面に固定設置されるとともに、当該ベース30は前記回路基板40の第二基板面44と対向し、前記カバー20は前記回路基板40の第一基板面43と対向するとともに、前記コネクタハウジング41と対向する背高平面部22と、前記発熱部品43aに対向する背低平面部21を備え、前記カバー20及びベース30は防水用のシール材11aを介して相互に当接する輪郭外周部23,33と、前記コネクタハウジング41の外周部に対して前記シール材11b,11cを介して当接する部分外周部24,34とを備え、前記発熱部品43aは、伝熱機構12と伝熱充填材13が充填される細隙部G1とを介して前記ベース30の伝熱台座部35に対して熱的に連結され、前記発熱部品43aの外装材の材質又は色調は熱放射率が0.7〜1.0となっており、前記カバー20の内面であって少なくとも前記発熱部品43aと間隙をおいて対向する背低平面部21は熱放射率が0.7〜1.0となる表面処理が施されている。
【0053】
前記カバー20の背高平面部22と背低平面部21の各内面と、前記回路基板40の第一基板面43との間の間隙寸法は1.5〜2.5倍の落差があり、当該落差面は45度以上の急傾斜の傾斜角で連結されている。
【0054】
以上のとおり、この発明の請求項2に関連し、カバー20の背高平面部22と背低平面部21は所定以上の落差があり所定以上の急傾斜で連結されている。
【0055】
従って、背の高い部品は背高平面部22へ移動して、発熱部品43aと背低平面部21との間隙を短縮することができるとともに、カバー20の表面積を大きくして熱放散性を向上することができる特徴がある。
【0056】
前記カバー20の室内表面に施される表面処理は、暗色系シートの貼付或いは暗色系塗料を吹きつけ又は捺印塗布又は刷毛塗りしたものであって、当該表面処理の領域は前記発熱部品43aに対向した平面領域を下限とし、当該下限領域に対して前記発熱部品43aに対する間隙寸法分を四方に拡張した平面領域を上限とした面積となっている。
【0057】
以上のとおり、この発明の請求項3に関連して、カバー20の室内表面に施される表面処理の領域は、発熱部品との対向面を下限とし、間隙寸法分を加算した拡張対向面を上限としている。
【0058】
従って、塗料又は貼付シートの使用量を抑制しながら、発熱部品43aの発生熱を効率よくカバー20に放熱することができるとともに、簡単な加工設備によって表面処理を行うことができる特徴がある。
【0059】
前記回路基板40の第一基板面43には前記カバー20の内面に対して間隙をおいて対抗する複数の小容量発熱部品である第一の小型発熱部品43bが搭載されているとともに、前記カバー20の室内表面に施される表面処理は、少なくとも前記カバー20の内面に対して暗色塗料を全面塗装したものであり、前記カバー20の4隅には前記ベース30に対して加締固定される折曲片25a〜25dが設けられ、当該折曲片25a〜25dの一部には前記全面塗装を行なうときに搬送吊具が嵌入するばか穴26a,26bが設けられている。
【0060】
以上のとおり、この発明の請求項5に関連して、カバー20の内面には暗色塗料が全面塗装され、カバー20とベース30を加締固定する折曲片25a〜25dには搬送吊具が嵌入するばか穴26a,26bが設けられている。
【0061】
従って、回路基板40に複数の小型発熱部品43b,44bが点在して搭載されているときに、カバー20の内面に対する表面処理が容易となるとともに、安定した姿勢で全面塗装が行なわれる特徴がある。
【0062】
前記回路基板40の第二基板面44には前記ベース30の内面に対して間隙をおいて対抗する複数の小容量発熱部品である第二の小型発熱部品44bが搭載されているとともに、前記ベース30の内面全体には酸化金属又はセラミック系の伝熱フィラーを含む熱伝導性の暗色塗料が塗布されて、熱放射率が0.7〜1.0となっている。
【0063】
以上のとおり、この発明の請求項6によれば、ベース30の内面全体には例えばセラミック系塗料である高熱伝導性の暗色塗料が塗布されている。
【0064】
従って、伝熱機構12と伝熱充填材13を介してベース30内面に伝熱される消費電力の大きな発熱部品の熱伝導性がベース30の内面に施された塗料によって阻害されることがなく、回路基板40の第二基板面44に搭載された第二の小型発熱部品44bの発生熱を効率よくベース30内面に放散することができる特徴がある。
【0065】
前記伝熱台座部35は前記ベース30の輪郭外周部33の直近位置に配置されているとともに、前記カバー20及びベース30の輪郭外周部23,33の当接面に充填される前記シール材11aは、前記発熱部品43aと前記伝熱台座部35との間に充填される前記伝熱充填材13と同一材料であって、電気的に不導通である伝熱フィラーを包含したシリコン樹脂となっており、前記カバー20とベース30の輪郭外周部23,33の内面は非塗装であるか、又は熱伝導性の暗色塗料が塗布されている。
【0066】
以上のとおり、この発明の請求項7によれば、発熱部品43aの伝熱台座部35はベース30の輪郭外周部33に設けられ、ベース30とカバー20の輪郭外周部23は伝熱性のシール材11a,11b,11cで防水されるようになっている。
【0067】
従って、発熱部品43aの発生熱はベース30及びカバー20の両方に対して接触伝熱され、熱放散特性が向上する特徴がある。
【0068】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2による車載電子装置の基板収納筐体の伝熱機構12Aの断面図である図10および図11と平面図である図12および図13について説明する。 なお,図11は図10におけるXI−XI線による断面図となっており,各図において同一符号は同一又は相当部分を示している。
また、この実施形態2は実施形態1における伝熱機構12の詳細を示したものであり、その他の符号はそのまま援用されるか、又は符号Aを付加して識別するようになっている。
【0069】
図10、図11において、複数の隔離突起部36A,36Aを有する伝熱台座部35Aには、隔離突起部36Aの高さ寸法で規制される細隙部G1を置いて電子基板40Aが配置され、その反対面には放熱電極46Aと表面接続電極45を有する発熱部品43Aaが設けられている。
【0070】
発熱部品43Aaの左右に配列された複数の表面接続電極45は、回路基板40Aの第一基板面43に設けられた複数の配線パターン48cのそれぞれに対して半田ペースト50を介して載置されている。
【0071】
発熱部品43Aaの放熱電極46Aは、回路基板40Aの第一基板面43に設けられた第一の伝熱パターン48aに対して半田ペースト50を介して載置されている。但し、図11では半田ペースト50は加熱溶融する前の状態を示しており、実際には加熱溶融によって半田付けが行われた後に回路基板40Aがベース30の内面に載置されるものである。
【0072】
回路基板40Aの第二基板面44には第二の伝熱パターン48bが設けられ、第一の伝熱パターン48aと第二の伝熱パターン48bとは、図10で後述するメッキ層47bで接続されている。なお、第二の伝熱パターン48bには、図13で後述する空白窓52が設けられていて、隔離突起部36Aはこの空白窓52に当接するようになっている。
【0073】
回路基板40Aの第一基板面43、第二基板面44において、半田ペースト50が塗布されて半田付けが行われる部位を除いて、半田レジスト膜49が印刷塗布されていて、余分な半田の流出を防止するとともに銅箔パターンの酸化腐食を防止するようになっている。
【0074】
隔離突起部36Aによって、例えば0.5mmの細隙寸法をおいて対向する回路基板40Aと伝熱台座部35Aとの間には、電気的に不導通であって例えば酸化金属又はセラミックス系の伝熱性フィラーを包含したシリコン樹脂である伝熱充填材13が充填塗布されている。
【0075】
なお、半田レジスト膜49が非熱伝導性である場合には、伝熱台座部35Aと対向する部位には半田レジスト膜49は設けられず、第二の伝熱パターン48bが伝熱充填材13を介して直接伝熱台座部35Aに当接するようになっている。
【0076】
図10において、第一の伝熱パターン48a、第二の伝熱パターン48b間には回路基板40Aを貫通する伝熱用貫通孔47aが設けられ、この伝熱用貫通孔47aの内周面にはメッキ層47bが設けられている。
【0077】
なお、この伝熱用貫通孔47aは図12および図13で後述するとおり第一の伝熱パターン48a、第二の伝熱パターン48b間の伝熱を目的として複数箇所に設けられるものであるが、実態としては電気的にも導通していることになる。
【0078】
また、回路基板40Aには様々な回路パターンを層間接続するために多数のバイアホール57aが設けられ、バイアホール57aの内周に設けられたメッキ層57bによって電気的に接続されている。
【0079】
これ等のバイアホール57aの一部又は全部には半田レジスト膜49は施されておらず、回路基板40Aの表裏間の通気性を確保し、カバー20側の密閉空間とベース30側の密閉空間を連通して、著しい温度差が発生しないようになっている。
【0080】
半田レジスト膜49は回路基板40Aの略全面にわたって生成されているので、その熱放射率を高めるのは有意義である。特に、半田レジスト膜49は銅箔パターンがエッチング除去されて樹脂基材が露出している部位にも塗膜されているので、半田レジスト膜49の熱伝導性と熱放射率を高くしておくと、カバー20やベース30の内面に対する熱放射率を高めることができる。
【0081】
半田レジスト膜49の熱伝導性と熱放射率は極力高い値であることが望ましいが、市場での入手性と温度上昇抑制効果とのバランスから、酸化金属又はセラミックス系の伝熱フィラーを包含した暗色系の半田レジスト材であって、熱放射率としては0.6〜1.0のものを選択するのが適当である。
【0082】
図12において、第一の伝熱パターン48aは電子基板40Aの部品実装面に設けられた銅箔パターンであり、その大半部分には半田ペースト50が塗布されていて、発熱部品43Aaの放熱電極46Aが半田接続される位置となっている。
【0083】
なお、多数の伝熱用貫通孔47aは第一の伝熱パターン48a内にあって、半田ペースト50が塗膜されない位置に設けられていて、これ等の領域は図10および図11で図示した半田レジスト膜49が塗布又は除外されている。
【0084】
また、配線パターン48cにつながる信号電極用ランド51には半田ペースト50が塗布されて、発熱部品43Aaの表面接続電極45が半田付けされるようになっている。
【0085】
図13において、第二の伝熱パターン48bは回路基板40Aの銅箔パターンによって生成され、多数の伝熱用貫通孔47aによって反対面の第一の伝熱パターン48aと伝熱接続されている。
【0086】
複数の空白窓52,52は隔離突起部36A,36Aが接触する位置に相当し、銅箔パターンが切除されて樹脂基材が露出した位置となっている。但し、空白窓52を含む第二の伝熱パターン48bの全体表面には熱伝導性の半田レジスト膜49を施して、隔離突起部36A,36Aは半田レジスト膜49を介して樹脂基材と接触するようにしてもよい。
【0087】
以上の説明で明らかなとおり、この発明の実施形態2による車載電子装置の基板収納筐体10は、発熱部品43Aaと外部接続用コネクタ42とが第一基板面43に搭載され、金属製のベース30と金属製のカバー20とによって構成された筐体内部に密閉挟持されて、樹脂製のコネクタハウジング41の端面を前記筐体の側面に露出させてなる回路基板40Aに対する車載電子装置の基板収納筐体10であって、前記ベース30の材料の厚さは前記カバー20の材料の厚さと同等以上の厚さ寸法であるとともに、前記ベース30は被取付面に固定設置するための取付足31,32を備え、取付足31,32を介して被取付面に固定設置されるとともに、当該ベース30は前記回路基板40Aの第二基板面44と対向し、前記カバー20は前記回路基板40Aの第一基板面43と対向するとともに、前記コネクタハウジング41と対向する背高平面部22と、前記発熱部品43Aaに対向する背低平面部21を備え、前記カバー20及びベース30は防水用のシール材11aを介して相互に当接する輪郭外周部23,33と、前記コネクタハウジング41の外周部に対して前記シール材11b,11cを介して当接する部分外周部24,34とを備え、前記発熱部品43Aaは、前記回路基板40Aを貫通する伝熱用貫通孔47aによる伝熱機構12Aと伝熱充填材13が充填される細隙部G1とを介して前記ベース30の伝熱台座部35Aに対して熱的に連結され、前記発熱部品43Aaの外装材の材質又は色調は熱放射率が0.7〜1.0となっており、前記カバー20の内面であって少なくとも前記発熱部品43Aaと間隙をおいて対向する背低平面部21は熱放射率が0.7〜1.0となる表面処理が施されている。
【0088】
前記伝熱機構12Aは前記第一基板面43に設けられ、前記発熱部品43Aaの放熱電極46Aが半田つけされる第一の伝熱パターン48aと、前記第二基板面44に設けられた第二の伝熱パターン48bとを熱的に連結するためのメッキ層47bを有する複数の伝熱用貫通孔47aによって構成され、前記伝熱台座部35Aには、前記伝熱充填材13が充填塗布される前記細隙部G1を構成するための隔離突起部36Aが設けられているとともに、前記回路基板40Aの表裏に連なって層間パターンを接続するバイアホール57aの一部と、半田接続部位を除く前記回路基板40aの表裏面には、熱放射率が0.6〜1.0となるよう規制された半田レジスト膜49が生成されている。
【0089】
以上のとおり、この発明の請求項8に関連して、伝熱機構12Aは回路基板40Aの表裏に設けられた第一の伝熱パターン48a、第二の伝熱パターン48bを熱的に接続する伝熱用貫通孔47aによって構成され、回路基板40Aには熱放射率の高い半田レジスト膜49が施されて、バイアホール57aによる回路基板40A表裏間での通気性が維持されるようになっている。
【0090】
従って、第一基板面43から第二基板面44への直接伝熱と、回路基板40Aの略全面に施された半田レジスト膜49からの熱放射性が向上するとともに、回路基板40Aの表裏の密閉空間の温度差が減少均一化されて、カバー20外面又はベース30外面における温度環境に相違があっても、どちらか一方の低温環境側への熱放散が強化され、一方にだけ依存した放熱ではなく平均化されて安定した熱放散を行うことができる特徴がある。
【0091】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3を図14に基づいて説明する。図14はこの発明の実施の形態3に係わる車載電子装置の基板収納筐体における伝熱機構を示す断面図である。なお、この実施形態3は上述した実施形態1における伝熱機構12の詳細を示したものであり、その他の符号はそのまま援用されるか、又は符号Bを付加して識別するようになっている。
【0092】
図14において、回路基板40Bの第一基板面43には発熱部品43Baが装着されており、当該発熱部品43Baは伝熱部材となるダイパッド46Bに取り付けられた発熱素子43Bbと、複数の表面接続電極45,45によって構成され、表面接続電極45,45は回路基板40Bの第一基板面43に設けられた配線パターン48cに半田接続されるようになっている。
【0093】
回路基板40Bには基板貫通部53が設けられ、当該基板貫通部53には伝熱台座部35Bと一体に設けられたれた中央突起部37が嵌入して、当該中央突起部37の端面は発熱部品43Baに内蔵されたダイパッド56Bと細隙部G2をおいて対向するようになっている。
【0094】
なお、この実施例における基板貫通部53は回路基板40Bの表面銅箔と裏面銅箔を電気的に接続するスルーホールメッキが施されている事例を示している。
【0095】
一方、伝熱台座部35Bには例えば0.5mm程度の高さを有する複数の隔離突起部36B,36Bが一体成形されていて、回路基板40Bの裏面と突合することによってダイパッド46Bと中央突起部37との間で細隙部G2を構成すると共に、回路基板40Bと伝熱台座部35Bとの対向面には細隙部G1が構成され、当該細隙部G1,G2には伝熱充填材13が充填塗布されるようになっている。
【0096】
なお、この実施例における隔離突起部36B,36Bと回路基板40Bとの突起当たり面は、図13の場合と同様に銅箔パターンを除去した絶縁基材となっているが、他の配線パターンとは分離された島状ランドを突当たり面とすることもできる。
【0097】
発熱部品43Baの左右に配列された複数の表面接続電極45は、回路基板40Bの第一基板面43に設けられた複数の配線パターン48cのそれぞれに対して半田ペースト50を介して載置されている。但し、図14では半田ペースト50は加熱溶融する前の状態を示しており、実際には加熱溶融によって半田付けが行われた後に回路基板40Bがベース30の内面に載置されるものである。
【0098】
回路基板40Bの第一基板面43、第二基板面44において、半田ペースト50が塗布されて半田付けが行われる部位を除いて、半田レジスト膜49が印刷塗布されていて、余分な半田の流出を防止するとともに銅箔パターンの酸化腐食を防止するようになっている。
【0099】
また、回路基板40Bには様々な回路パターンを層間接続するために多数のバイアホール57aが設けられ、バイアホール57aの内周に設けられたメッキ層57bによって電気的に接続されている。
【0100】
これ等のバイアホール57aの一部又は全部には半田レジスト膜49は施されておらず、回路基板40Bの表裏間の通気性を確保し、カバー20側の密閉空間とベース30側の密閉空間を連通して、著しい温度差が発生しないようになっている。
【0101】
半田レジスト膜49は回路基板40Bの略全面にわたって生成されているので、実施形態2の場合と同様にその熱伝導率と熱放射率を高めるのは有意義である。
【0102】
以上の説明で明らかなとおり、この発明の実施形態3による車載電子装置の基板収納筐体10は、発熱部品43Baと外部接続用コネクタ42とが第一基板面43に搭載され、金属製のベース30と金属製のカバー20とによって構成された筐体内部に密閉挟持されて、樹脂製のコネクタハウジング41の端面を前記筐体の側面に露出させてなる回路基板40Bに対する車載電子装置の基板収納筐体10であって、前記ベース30の材料の厚さは前記カバーの材料の厚さと同等以上の厚さ寸法であるとともに、前記ベース30は被取付面に固定設置するための取付足31,32を備え、取付足31,32を介して被取付面に固定設置されるとともに、当該ベース30は前記回路基板40Bの第二基板面44と対向し、前記カバー20は前記回路基板40Bの第一基板面43と対向するとともに、前記コネクタハウジング41と対向する背高平面部22と、前記発熱部品43Baに対向する背低平面部21を備え、前記カバー20及びベース30は防水用のシール材11aを介して相互に当接する輪郭外周部23,33と、前記コネクタハウジング41の外周部に対して前記シール材11b,11cを介して当接する部分外周部24,34とを備え、前記発熱部品43Baは、前記回路基板40Bを貫通する基板貫通部53による伝熱機構12Bと伝熱充填材13が充填される細隙部G1,G2とを介して前記ベース30の伝熱台座部35Bに対して熱的に連結され、前記発熱部品43Baの外装材の材質又は色調は熱放射率が0.7〜1.0となっており、前記カバー20の内面であって少なくとも前記発熱部品43Baと間隙をおいて対向する背低平面部21は熱放射率が0.7〜1.0となる表面処理が施されている。
【0103】
前記伝熱機構12Bは前記伝熱台座部35Bに設けられた中央突起部37が嵌入して、発熱部品43Baのダイパッド46Bと対向する基板貫通部53によって構成され、前記伝熱台座部35Bには、前記伝熱充填材13が充填塗布される前記細隙部G1,G2を構成するための隔離突起部36Bが設けられているとともに、前記回路基板40Bの表裏に連なって層間パターンを接続するバイアホール57aの一部と、半田接続部位を除く前記回路基板40Bの表裏面には、熱放射率が0.6〜1.0となるよう規制された半田レジスト膜49が生成されている。
【0104】
以上のとおり、この発明の請求項9に関連し、伝熱機構12Bは伝熱台座部35Bに設けられた中央突起部37を発熱部品43Baと対向させる基板貫通部53によって構成され、回路基板40Bには熱放射率の高い半田レジスト膜49が施されて、バイアホール57aによる回路基板40B表裏間での通気性が維持されるようになっている。
【0105】
従って、発熱部品43Baから伝熱台座部35Bへの直接伝熱と、回路基板40Bの略全面に施された半田レジスト膜49からの熱放射性が向上するとともに、回路基板40Bの表裏の密閉空間の温度差が減少均一化されて、カバー20外面又はベース30外面における温度環境に相違があっても、どちらか一方の低温環境側への熱放散が強化され、一方にだけ依存した放熱ではなく平均化されて安定した熱放散を行うことができる特徴がある。
【0106】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4を図15に基づいて説明する。図15はこの発明の実施の形態4に係わる車載電子装置の基板収納筐体におけるカバーおよび隔離台座部を示す図である。なお、この実施形態4は上述した実施形態1におけるカバー20とベース30とを相互に固定する部位の詳細を示したものであり、その他の符号はそのまま援用されるか、又は符号Bを付加して識別するようになっている。また、図15(A)はカバー20Aの内面の鳥瞰図、図15(B)はカバー20Aとベース30Aとを一体化した部分拡大図、図15(C)はその他の実施形態においてカバー20Bとベース30Bとを一体化した部分拡大図である。
【0107】
図15(A)において、カバー20Aは背低平面部21と背高平面部22と輪郭外周部23と部分外周部24と4隅に設けられた折曲片25a〜25dを有し、背低平面部21と背高平面部22の内面全体、又は少なくとも背低平面部21の一部領域には暗色系塗料が塗布されている。しかし、折曲片25a〜25dを含む4隅の領域(斜線で示されている)は塗装が行われていない地肌部分となっている。
【0108】
図15(B)において、カバー20Aとベース30Aとは折曲片25a〜25d(25b〜25dは図示されていない)を折り曲げることによって一体化されているが、カバー20Aとベース30Aとの当接面は隔離台座部28を構成し、この隔離台座部28によってシール材11a〜11c(図3参照)を塗布するためのシール間隙Gを確保するようになっている。
この隔離台座部28による当接面は図15(A)の斜線で示した地肌部分となっていて、この地肌部分によってカバー20Aとベース30Aとが電気的に導通接触するようになっている。
【0109】
図15(C)において、カバー20Bとベース30Bは折曲片25a〜25dによらないで固定ねじ39で締め付け固定されるようになっている。カバー20Bには折曲片25a〜25dに代わって打出部29が4隅に設けられ、この打出部29の内周には雌ねじが生成されて固定ねじ39が螺入するようになっている。ベース30Bの4隅には隔離台座部38が設けられ、この隔離台座部38によってシール材11a〜11c(図3参照)を塗布するためのシール間隙Gを確保するようになっている。
この隔離台座部38による当接面は塗装されない地肌部分となっていて、この地肌部分によってカバー20Bとベース30Bとが電気的に導通接触するようになっている。
【0110】
以上の説明で明らかなとおり、この発明の実施形態4による車載電子装置の基板収納筐体10は、発熱部品43a,43Aa,43Baと外部接続用コネクタ42とが第一基板面43に搭載され、金属製のベース30A,30Bと金属製のカバー20A,20Bとによって構成された筐体内部に密閉挟持されて、樹脂製のコネクタハウジング41の端面を前記筐体の側面に露出させてなる回路基板40,40A,40Bに対する車載電子装置の基板収納筐体10であって、前記ベース30A,30Bの材料の厚さは前記カバー20A,20Bの材料の厚さと同等以上の厚さ寸法であるとともに、前記ベース30は被取付面に固定設置するための取付足31,32を備え、取付足31,32を介して被取付面に固定設置されるとともに、当該ベース30A,30Bは前記回路基板40,40A,40Bの第二基板面44と対向し、前記カバー20A,20Bは前記回路基板40,40A,40Bの第一基板面43と対向するとともに、前記コネクタハウジング41と対向する背高平面部22と、前記発熱部品43a,43Aa,43Baに対向する背低平面部21を備え、前記カバー20A,20B及びベース30A,30Bは防水用のシール材11aを介して相互に当接する輪郭外周部23,33と、前記コネクタハウジング41の外周部に対して前記シール材11b,11cを介して当接する部分外周部24,34とを備え、前記発熱部品43a,43Aa,43Baは、前記回路基板40,40A,40Bを貫通する伝熱用貫通孔47a又は基板貫通部53による伝熱機構12,12A,12Bと伝熱充填材13が充填される細隙部G1,G2とを介して前記ベース30A,30Bの伝熱台座部35,35A,35Bに対して熱的に連結され、前記発熱部品43a,43Aa,43Baの外装材の材質又は色調は熱放射率が0.7〜1.0となっており、前記カバー20A,20Bの内面であって少なくとも前記発熱部品43a,43Aa,43Baと間隙をおいて対向する背低平面部21は熱放射率が0.7〜1.0となる表面処理が施されている。
【0111】
前記回路基板40,40A,40Bの第一基板面43には前記カバー20A,20Bの内面に対して間隙をおいて対抗する複数の小容量発熱部品である第一の小型発熱部品43bが搭載されているとともに、前記カバー20A,20Bの室内表面に施される前記表面処理は、前記発熱部品43a,43Aa,43Ba及び前記第一の小型発熱部品43bとの対向面又は前記背低平面部22の内面全域に対して施され、前記カバー20A,20Bの内面全体に表面処理を施す場合であっても、少なくとも前記ベース30A,30Bとの接合当たり面は除外されており、前記カバー20A,20B又は前記ベース30A,30Bの複数箇所には前記ベース30A,30B又は前記カバー20A,20Bに対する当たり面となって、前記シール材11aの厚さ寸法を決定するための隔離台座部28,38が設けられ、前記当たり面には前記暗色塗料の塗装が行われず、電気的に接触導通している。
【0112】
以上のとおり、この発明の請求項4に関連し、カバー20A,20Bの内面には暗色塗料が広域塗装され、カバー20A,20Bとベース30A,30Bとの間のシール材11a〜11cは非塗装の隔離台座部28,38によって間隙寸法が決定されるようになっている。
【0113】
従って、シール材11a〜11cの厚さ寸法が一定化されるとともに、カバー20A,20Bとベース30A,30Bとが電気的に一体化接触することによって、静電誘導による電子部品の破損や制御回路の誤動作の発生が抑制される特徴がある。
【産業上の利用可能性】
【0114】
この発明は、主たる発熱部品に対して伝熱による熱放散と、放射による熱放散を併用し、良好な熱放散特性が得られる車載電子装置の基板収納筐体の実現に好適である。
【符号の説明】
【0115】
10 基板収納筐体 11a シール材
11b シール材 11c シール材
12 伝熱機構 12A 伝熱機構
12B 伝熱機構 13 伝熱充填材
20 カバー 20A カバー
20B カバー 21 背低平面部
22 背高平面部 23 輪郭外周部
24 部分外周部 25a 折曲片
25b 折曲片 25c 折曲片
25d 折曲片 26a ばか穴
26b ばか穴 28 隔離台座部
30 ベース 30A ベース
30B ベース 33 輪郭外周部
34 部分外周部 35 伝熱台座部
35A 伝熱台座部 35B 伝熱台座部
36A 隔離突起部 36B 隔離突起部
37 中央突起部 38 隔離台座部
40 回路基板 40A 回路基板
40B 回路基板 41 コネクタハウジング
42 外部接続用コネクタ 43 第一基板面
43a 発熱部品 43Aa 発熱部品
43Ba 発熱部品 43b 第一の小型発熱部品
44 第二基板面 44b 第二の小型発熱部品
46A 放熱電極 46B ダイパッド
47a 伝熱用貫通孔 47b メッキ層
48a 第一の伝熱パターン 48b 第二の伝熱パターン
49 半田レジスト膜 53 基板貫通部
57a バイアホール 57b メッキ層
G シール間隙 G1 細隙部(細隙寸法)
G2 細隙部(細隙寸法)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と外部接続用コネクタとが第一基板面に搭載され、金属製のベースと金属製のカバーとによって構成された筐体内部に密閉挟持されて、樹脂製のコネクタハウジングの端面を前記筐体の側面に露出させてなる回路基板を収納する車載電子装置の基板収納筐体であって、前記ベースの材料の厚さは前記カバーの材料の厚さと同等以上の厚さ寸法であるとともに、前記ベースは被取付面に固定設置するための取付足を備え、前記ベースは前記回路基板の第二基板面と対向し、前記カバーは前記回路基板の第一基板面と対向するとともに、前記コネクタハウジングと対向する背高平面部と、前記発熱部品と対向する背低平面部を備え、前記カバー及び前記ベースはシール材を介して相互に当接する輪郭外周部と、前記コネクタハウジングの外周部に対して前記シール材を介して当接する部分外周部とを備え、前記発熱部品は、伝熱機構と伝熱充填材が充填される細隙部とを介して前記ベースの伝熱台座部に対して熱的に連結され、前記発熱部品は熱放射率が0.7〜1.0となっており、前記カバーの内面であって少なくとも前記発熱部品と間隙をおいて対向する前記背低平面部は熱放射率が0.7〜1.0となる表面処理が施されていることを特徴とする車載電子装置の基板収納筐体。
【請求項2】
前記カバーの前記背高平面部と前記背低平面部の各内面と、前記回路基板の前記第一基板面との間の間隙寸法は1.5〜2.5倍の落差があり、当該落差面は45度以上の急傾斜の傾斜角で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車載電子装置の基板収納筐体。
【請求項3】
前記カバーの室内表面に施される表面処理は、暗色系シートの貼付或いは暗色系塗料を吹きつけ又は捺印塗布又は刷毛塗りしたものであって、当該表面処理の領域は前記発熱部品に対向した平面領域を下限とし、当該下限領域に対して前記発熱部品に対する間隙寸法分を四方に拡張した平面領域を上限とした面積となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載電子装置の基板収納筐体。
【請求項4】
前記回路基板の前記第一基板面には前記カバーの内面に対して間隙をおいて対抗する複数の小容量発熱部品である第一の小型発熱部品が搭載されているとともに、前記カバーの室内表面に施される前記表面処理は、前記発熱部品及び前記第一の小型発熱部品との対向面又は前記背低平面部の内面全域に対して施され、前記カバーの内面全体に表面処理を施す場合であっても、少なくとも前記ベースとの接合当たり面は除外されており、前記カバー又は前記ベースの複数箇所には前記ベース又は前記カバーに対する当たり面となって、前記シール材の厚さ寸法を決定するための隔離台座部が設けられ、前記当たり面には前記暗色塗料の塗装が行われず、電気的に接触導通していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載電子装置の基板収納筐体。
【請求項5】
前記回路基板の前記第一基板面には前記カバーの内面に対して間隙をおいて対抗する複数の小容量発熱部品である第一の小型発熱部品が搭載されているとともに、前記カバーの室内表面に施される表面処理は、少なくとも前記カバーの内面に対して暗色塗料を全面塗装したものであり、前記カバーの4隅には前記ベースに対して加締固定される折曲片が設けられ、当該折曲片の一部には前記全面塗装を行なうときに搬送吊具が嵌入するばか穴が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載電子装置の基板収納筐体。
【請求項6】
前記回路基板の前記第二基板面には前記ベースの内面に対して間隙をおいて対抗する複数の小容量発熱部品である第二の小型発熱部品が搭載されているとともに、前記ベースの内面全体には酸化金属又はセラミック系の伝熱フィラーを含む熱伝導性の暗色塗料が塗布されていて、熱放射率が0.7〜1.0となっていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の車載電子装置の基板収納筐体。
【請求項7】
前記伝熱台座部は前記ベースの輪郭外周部の直近位置に配置されているとともに、前記カバー及び前記ベースの輪郭外周部の当接面に充填される前記シール材は、前記発熱部品と前記伝熱台座部との間に充填される前記伝熱充填材と同一材料であって、電気的に不導通である伝熱フィラーを包含したシリコン樹脂であり、前記カバーと前記ベースの前記輪郭外周部の内面は非塗装であるか、又は熱伝導性の暗色塗料が塗布されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車載電子装置の基板収納筐体。
【請求項8】
前記伝熱機構は前記第一基板面に設けられ、前記発熱部品の放熱電極が半田つけされる第一の伝熱パターンと、前記第二基板面に設けられた第二の伝熱パターンとを熱的に連結するためのメッキ層を有する複数の伝熱用貫通孔によって構成され、前記伝熱台座部には、前記伝熱充填材が充填塗布される前記細隙部を構成するための隔離突起部が設けられているとともに、前記回路基板の表裏に連なって層間パターンを接続するバイアホールの一部と、半田接続部位を除く前記回路基板の表裏面には、熱放射率が0.6〜1.0となるように規制された半田レジスト膜が生成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の車載電子装置の基板収納筐体。
【請求項9】
前記伝熱機構は前記伝熱台座部に設けられた中央突起部が嵌入して、前記発熱部品のダイパッドと対向する基板貫通部によって構成され、前記伝熱台座部には、前記伝熱充填材が充填塗布される前記細隙部を構成するための隔離突起部が設けられているとともに、前記回路基板の表裏に連なって層間パターンを接続するバイアホールの一部と、半田接続部位を除く前記回路基板の表裏面には、熱放射率が0.6〜1.0となるように規制された半田レジスト膜が生成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の車載電子装置の基板収納筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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