説明

車載音響装置およびその組立て方法

【課題】 車室内の天井部にスピーカが取り付けられた車載音響装置およびその組立て方法を提供する。
【解決手段】 天井部2において天井内張り5に開口部5aを形成する。開口部5aは、スピーカ20の直径Dよりも小さく形成する。スピーカ20を開口部5aに設置し、スピーカ20の中心部20aに形成された取付け穴20bに取付けねじ15を挿入し、取付けねじ15の先部を、天板3の内側に位置する補強材4に形成された雌ねじ穴4aに螺着する。このとき、スピーカ20のフレーム21の外周部21aがフレーム介装材11を介して、天井内張り5の開口部5aの周縁部5bに押し付けられながら、スピーカ20の中心部20aが補強材4に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室の天井部にスピーカが取り付けられた車載音響装置およびその組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車載音響装置として、特許文献1,2には、自動車のリアトレイにスピーカが取り付けられたものが開示されている。
【0003】
これらの車載音響装置は、いずれも、自動車のリアトレイに開口部が形成され、リアトレイの内方に位置する車両鉄板にブラケットが取り付けられている。スピーカの中央部が開口部の内部に挿入されて、スピーカのフレームの外周部がリアトレイの前記開口部の周囲に設置される。そして、スピーカの中心部を貫通する取付け穴に取付けねじが挿入されて、この取付けねじが前記ブラケットに固定される。
【0004】
特許文献3に記載された車載音響装置では、自動車ドアの内壁板に開口が形成され、内装板の内面に取付アングルが固定されている。スピーカの中心部が開口の内部に挿入され、スピーカのフレームの外周部が内装板の表面に設置される。そして、スピーカの中心部を貫通する取付け穴に取付けねじが挿入されて、この取付けねじが取付アングルに螺着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願平3−86063号(実開平5−35499号)のCD−ROM
【特許文献2】実願平5−70494号(実開平7−42288号)のCD−ROM
【特許文献3】実願平5−2478号(実開平6−62694号)のCD−ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の車載音響装置は、特許文献1,2や特許文献3に記載されているように、スピーカの取付け箇所がリアトレイや自動車ドアに限られていた。そのため、車室内での音響品質の向上に限界があった。また、リアトレイや自動車ドアでは、設置されるスピーカの寸法が限られるため、例えば大径のウーハーなどを取り付けることが難しかった。
【0007】
特許文献1,2に記載の車載音響装置は、いずれも硬質な板材で形成されたリアトレイに開口部が形成され、この開口部内にスピーカの中心部が挿入されて、スピーカのフレームの外周部が硬質の板材の表面に設置される構造である。そのため、これら従来の取付け構造を用いて、比較的軟質な内装内張りが設けられた天井部にスピーカを取り付けることは難しい。
【0008】
前記特許文献3には、スピーカの取付け箇所として自動車ドアの他に天井などに取り付けられることが記載されている。しかし、特許文献3は、硬質の板材の内側に取付アングルが固定され、スピーカの中心部に設けられた取付けねじが取付アングルに螺着される構造であるため、特許文献3に記載された取付け構造を使用して、スピーカを天井部に取り付けることはほとんど不可能である。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、比較的軟質な天井内張りを有する天井部にスピーカが取り付けられる車載音響装置およびその組立て方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自動車の天井部にスピーカが取り付けられた車載音響装置において、
前記スピーカが、振動板の外周を支持するフレームと、前記振動板を駆動する磁気駆動部を支持する中心部と、前記中心部を貫通する取付け穴とを有し、
自動車の天井部に、天板と、その内側に設けられた補強材と、前記天板および前記補強材を内側から覆う天井内張りとが設けられ、前記天井内張りの前記補強材と対向する領域に、前記フレームの直径よりも内径が小さい開口部が形成されており、
前記フレームの外周部で、前記天井内張りの前記開口部の周縁部が車室内側から前記天板に向けて押さえられて、前記中心部が前記開口部の内部に位置し、前記中心部が、前記取付け穴によって前記補強材に固定されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の車載音響装置は、スピーカの中心部が天井部の補強材に固定されるので、スピーカを天井部に強固に固定することができる。天井部に設けられた天井内張りに、スピーカのフレームの直径よりも内径が小さい開口部が形成され、フレームの外周部が開口部の周縁部において天井内張りに押し付けられているため、天井内張りをバッフル壁として使用でき、天板と天井内張りとの間の空間の音圧が車室内に洩れ出るのを防止でき、車室内の音響が良好になる。また、大型のウーハーを取り付けたときであっても、十分にスペースを確保できる。
【0012】
本発明は、前記フレームの外周部と、前記天井内張りの前記開口部の周縁部との間に、弾性材料で形成されたフレーム介装材が設けられているものが好ましい。
【0013】
上記のフレーム介装材を設けることで、フレームと天井内張りとの間に隙間が形成されにくくなり、天板と天井内張りとの間の空間と、車室内との間の遮蔽効果を高めることができるようになる。
【0014】
本発明は、前記中心部と前記補強材との間に、弾性材料で形成された中心介装材が配置され、前記取付け穴に挿入された取付けねじが前記補強材に螺着されて、前記中心部が前記中心介装材を介して前記補強材に固定されている。
【0015】
または、前記天板または前記補強材と、前記天井内張りの前記開口部の周縁部との間に、弾性部材で形成された外周介装材が配置され、前記取付け穴に挿入された取付けねじが前記補強材に螺着されて、前記天井内張りの前記開口部の周縁部が、前記フレームの外周部と前記外周介装材との間に挟まれているものである。
【0016】
上記の中心介装材または外周介装材を設けることで、取付けねじを弛みなく補強材に螺着できるようになる。また、スピーカの振動が補強材や天板に直接に作用するのを防止できるようになる。
【0017】
本発明は、前記天板と前記補強材の内側に、前記フレームよりも面積が大きい吸音材が設けられているものであってもよい。
【0018】
また、本発明の車載音響装置は、前記取付け穴に挿入されて前記補強材に巻き付けられた線材または帯材によって、前記中心部が前記補強材に固定されているものであってもよい。
【0019】
上記取付け構造では、補強材に雌ねじ穴を形成しなくても、スピーカを補強材に強固に固定することが可能である。
【0020】
次に、本発明は、天板と、その内側に設けられた補強材と、前記天板および前記補強材を内側から覆う天井内張りとが設けられた自動車の天井部に、振動板の外周を支持するフレームと、前記振動板を駆動する磁気駆動部を支持する中心部とを有するスピーカを取り付ける車載音響装置の組立て方法において、
前記天井内張りの前記補強材と対向する領域に、前記フレームの直径よりも内径が小さい開口部を形成し、
前記フレームの外周部で、前記天井内張りの前記開口部の周縁部を車室内側から前記天板に向けて押さえた状態で、前記中心部を前記開口部の内部に位置させ、前記中心部を貫通する取付け穴によって、前記中心部を前記補強材に固定することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の車載音響装置の組立て方法は、天井部の天井内張りを剥がしたり、車体を分解する必要がなく、車室内側からスピーカを簡単に組み付けることが可能である。
【0022】
本発明の車載音響装置の組立て方法では、前記フレームの外周部と、前記天井内張りの前記開口部の周縁部との間に、弾性材料で形成されたフレーム介装材を配置することが好ましい。
【0023】
本発明では、前記中心部と前記補強材との間に、弾性材料で形成された中心介装材を配置し、前記取付け穴に挿入された取付けねじを前記補強材に螺着して、前記中心部を前記中心介装材を介して前記補強材に固定する。
【0024】
あるいは、前記天板または前記補強材と、前記天井内張りの前記開口部の周縁部との間に、弾性部材で形成された外周介装材を配置し、前記取付け穴に挿入された取付けねじを前記補強材に螺着して、前記天井内張りの前記開口部の周縁部を、前記フレームの外周部と前記外周介装材との間に挟む。
【0025】
本発明は、前記天板と前記補強材の内側に、前記フレームよりも面積が大きい吸音材を設けることが可能である。
【0026】
また、本発明の車載音響装置の組立て方法は、前記取付け穴に挿入し前記補強材に巻き付けた線材または帯材によって、前記中心部を前記補強材に固定することも可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の車載音響装置は、車室内の天井部を使用しているため、スピーカを設置するための広いスペースを利用でき、例えば直径の大きいウーハーなどを設置できるようになる。
【0028】
天井内張りに、スピーカのフレームの直径よりも内径が小さい開口部を形成し、フレームの外周部を開口部の周縁部で天井内張りに押し付けることで、フレームと天井内張りとの間に隙間が形成されにくくなり、天井内張りをバッフル壁として利用し、天井内張りと天板との間の空間と、車室内との間の遮蔽効果を高くして、音響品質を向上させることができる。
【0029】
また、本発明の車載音響装置の組立て方法は、天井内張りを外したり、天井部を分解などすることなく、車室内の内側からスピーカを取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態の車載音響装置を示す断面図、
【図2】本発明の第2の実施の形態の車載音響装置を示す断面図、
【図3】図2の車載音響装置の平面図、
【図4】本発明の第3の実施の形態の車載音響装置を示す断面図、
【図5】本発明の第4の実施の形態の車載音響装置を示す断面図、
【図6】各実施の形態の車載音響装置が取り付けられる自動車の平面図、
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示す第1の実施の形態の車載音響装置10Aは、自動車1の天井部2に設けられている。
【0032】
自動車1は、例えば図6に示すワンボックスタイプの乗用車である。この自動車の天井部2には、図1に示す金属板の天板3が設けられている。天板3の外表面3aは、自動車1の外装面である。天板3の内面3bに補強材4が固定されている。補強材4は鉄製のチャンネル材で形成された補強フレームであり、図6に示すように、自動車の天井部2を左右方向に横切るように設置され、天板3と溶接などの手段で固定されている。
【0033】
図1に示すように、天板3および補強材4よりも車室内1aの側に、天井内張り5が設けられている。天井内張り5は、鉄材よりも軟質であるが樹脂シートよりは剛性がやや高い合成レザーで形成されている。天井内張り5は、天板3および補強材4よりも車室内1a側に離れた位置で、天板3および補強材4を覆っており、天井内張り5と、天板3および補強材4との間に、空間6が形成されている。
【0034】
車載音響装置10Aは、天井部2にスピーカ20が取り付けられている。このスピーカ20は、直径Dが15〜25cm、高さ寸法Hが2〜5cmの、大型で且つ薄型であり、低音域の発音用のいわゆるウーハーである。実際の例としては、前記直径Dが20cmで、前記高さ寸法Hが2.5cmである。
【0035】
スピーカ20は、非磁性金属材料製または合成樹脂製の円形のフレーム21と、フレーム21の中心部20aに設けられた磁気駆動部22とを有している。フレーム21の前部にコーンと称される振動板23が設けられており、振動板23の外周部は外周ダンパー24aを介して、フレーム21の外周部21aに支持されている。振動板23の内周部と、フレーム21との間は、内周ダンパー24bによって連結され、振動板23が振動可能に支持されている。振動板23の内周部にはボイルコイル25が設けられている。
【0036】
図1に示すように、中心部20aに設けられた磁気駆動部22は、磁性材料で形成された筒状の外周ヨーク26と、外周ヨーク26の先部に固定された磁性材料製の先部ヨーク27と、外周ヨーク26の内側で、先部ヨーク27の内面に固定された磁石28と、磁石28の内側に固定された磁性材料製の中間ヨーク29とを有しており、外周ヨーク26の内周面と、中間ヨーク29の外周面との間の空間ギャップ内に、前記ボイルコイル25が移動自在に挿入されている。
【0037】
スピーカ20の中心部20aでは、先部ヨーク27と磁石28および中間ヨーク29の中心部を前後に貫通する取付け穴20bが形成されている。
【0038】
次に、スピーカ20を天井部2に取り付ける車載音響装置10Aの組立て方法を説明する。
【0039】
天井部2において、天井内張り5の補強材4に対向する領域に開口部5aを形成する。開口部5aは天井内張り5を円形に切断することで形成される。開口部5aは円形であり、その中心を、補強材4の幅方向での中心に一致させる。開口部5aの内径寸法は、スピーカ20の直径Dよりも一回り小さくしておく。
【0040】
補強材4の1箇所に雌ねじ穴4aを加工する。この雌ねじ穴4aは、天井内張り5に形成された開口部5aの曲率中心に位置させる。
【0041】
図1に示すように、天井内張り5の車室内1aに向く面で、且つ開口部5aの周縁部5bにフレーム介装材11を貼り付ける。または、フレーム介装材11を、スピーカ20のフレーム21の外周部21aにおいて、天井内張り5に対向する面に貼り付けてもよい。フレーム介装材11は弾性材料で形成されており、例えば、発泡合成樹脂で形成されている。
【0042】
スピーカ20を取り付けるときには、中心部20aを、開口部5aから空間6の内部に入り込ませる。このとき、スピーカ20の中心部20aと補強材4との間に、中心介装材12を介在させる。中心介装材12は、合成ゴムで形成されており、フレーム介装材11よりも硬質のものが使用される。中心介装材12の中心に貫通穴12aが形成されている。
【0043】
図1に示すように、取付けねじ15を、スピーカ20の取付け穴20bおよび中心介装材12の貫通穴12aに挿通させて、補強材4の雌ねじ穴4aに螺着する。この取付けねじ15を締め付けることで、フレーム21の外周部21aによってフレーム介装材11が押され、さらに天井内張り5における開口部5aの周縁部5bが、車室内1a側から天板3側に向けて押し付けられる。そして、取付けねじ15によって、中心部20aが中心介装材12を介して補強材4に固定される。
【0044】
組み立てられた車載音響装置10Aでは、スピーカ20のフレーム21の外周部21aが、フレーム介装材11を介して、天井内張り5の周縁部5bに押し付けられているが、天井内張り5は、所定の張力を有して張られているため、外周部21aを押し付けるだけで、フレーム21の外周部21aと周縁部5bとの間を閉じることができる。
【0045】
すなわち、天井内張り5が張力を有しているため、フレーム介装材11が天井内張り5に接着剤などで貼り付けられているときは、フレーム介装材11とフレーム21の外周部21aとを接着しなくても、フレーム21の取付け時の押圧力によって、フレーム介装材11と外周部21aとを密着させることができる。また、フレーム介装材11が、フレーム21の外周部21aに接着剤などで貼り付けられているときは、フレーム介装材11と天井内張り5とを接着しなくても、フレーム21の取付け時の押圧力によって、フレーム介装材11と天井内張り5とを密着させることができる。
【0046】
ただし、外周部21aとフレーム介装材11との間と、フレーム介装材11と天井内張り5との間の双方を、両面接着テープなどで接着してもよい。
【0047】
開口部5aの周縁部5bで、フレーム介装材11と天井内張り5との間に隙間が形成されにくく、またフレーム21の外周部21aとフレーム介装材11との間で隙間が形成されにくい構造であるため、天井内張り5をバッフル壁として機能させて、天板3と天井内張り5との間の空間6と、車室内1aとを遮断できるようになる。そのため、振動板23が振動したときに、車室内1aと空間6との間で音圧が干渉しにくくなり、車室内1aでの音響品質を向上させることができる。
【0048】
また、スピーカ20と補強材4との間に弾性材料で形成された中心介装材12が設けられているため、スピーカ20の振動が補強材4から天板3へ直接に伝達されにくくなる。そのため、不要な振動音の発生を防止できるようになる。
【0049】
次に、他の実施の形態の車載音響装置10B〜10Dを説明する。以下の他の実施の形態の説明では、図1に示す車載音響装置10Aと同じ構造の部分には図1と同じ符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0050】
図2に示す第2の実施の形態の車載音響装置10Bは、図1に示す中心介装材12が使用されておらず、その代わりに複数個の外周介装材13が使用されている。外周介装材13は、中心介装材12と同じ弾性材料で形成されている。
【0051】
外周介装材13は、開口部5aの周縁部5bにおいて、天板3または補強材4と、天井内張り5との間に介装されている。図3に示すように、外周介装材13は、開口部5aの周縁部5bに沿って一定の角度間隔で複数個が配置されている。
【0052】
天井内張り5に開口部5aを形成した後で、且つスピーカ20が設置される前の工程で、それぞれの外周介装材13と天板3の内面3bとの間を接着剤で固定することが好ましく、さらには、外装介装材13と天井内張り5との間を接着剤で固定することが好ましい。
【0053】
図2に示すように、スピーカ20のフレーム21の外周部21aをフレーム介装材11に押し付けた状態で、中心部20aの取付け穴20bに取付けねじ15を挿通させて補強材4に螺着させる。取付けねじ15の締め付けにより、フレーム21の外周部21aがフレーム介装材11に押し付けられ、天井内張り5の開口部5aの周縁部5bが、フレーム介装材11と共に、外周介装材13と、フレーム21の外周部21aとの間に挟みこまれる。そのため、天井内張り5の開口部5aの周縁部5bとフレーム21の外周部21aとの間を強固に密着させることができる。また、スピーカ20の磁気駆動部22と補強材4と間に間隔を空けることができるので、スピーカ20の振動が補強材4に伝達されにくくなる。
【0054】
図4に示す第3の実施の形態の車載音響装置10Cは、天板3の内面3bに、吸音材14が設置されている。吸音材14は、制振材としても機能するものであり、合成ゴムや発泡樹脂材料などの弾性材料で形成されている。
【0055】
吸音材14は、スピーカ20の面積よりも大きい面積を有しており、天板3の内面3bおよび補強材4を覆うように設置され、少なくとも一部が天板3に接着剤などで固定されている。
【0056】
スピーカ20を取り付けるときに、吸音材14の一部が、スピーカ20の中心部20aと補強材4との間に挟まれて、取付けねじ15の締め付け力によって、中心部20aと補強材4との間で固定される。吸音材14によって、図1に示した中心介装材12と同様に、スピーカ20の振動が補強材4に直接に作用するのを抑制する効果を発揮することができる。
【0057】
天板3と天井内張り5との間の空間6内で、スピーカ20よりも大きい吸音材14が天板3と補強材4の内側に設けられているため、振動板23が振動したときの空間6内に与えられる逆位相の音圧を吸音材14で吸収して抑制することができ、天井内張り5の振動を抑制でき、車室内1aでの音響効果を高めることができる。
【0058】
なお、図4に示す実施の形態において、吸音材14と共に、図1に示す中心介装材12や図2に示す外周介装材13を併用することもできる。
【0059】
図5に示す第4の実施の形態の車載音響装置10Dは、取付けねじ15を使用しないで、スピーカ20が補強材4に固定される。
【0060】
補強材4の左右両縁部に補助ガイド16が取り付けられる。補助ガイド16,16は合成樹脂製である。スピーカ20は締め付け材17を使用して補強材4に固定される。締め付け材17は、金属製または合成樹脂製の線材または帯材である。この締め付け材17の2箇所に、ロック部材18,19が設けられている。ロック部材18,19は、これに挿入された締め付け材17の逆戻りを防止する機能を有している。
【0061】
ロック部材18は、締め付け材17の第1の端部17aに固定されている。まず、スピーカ20を取り付ける前に、締め付け材17の第2の端部17bを、補強材4と天板3との間に挿入し、さらに、第2の端部17bをロック部材18に挿入する。ロック部材18を補強材4に押し付けながら第2の端部17bを引っ張ることで、締め付け材17が補強材4に巻きつけられて締め付けられる。
【0062】
スピーカ20を設置するときは締め付け材17の第2の端部17bを、スピーカ20の取付け穴20bに対して、空間6側から車室内1a側に向けて挿入する。そして、第2の端部17bをロック部材19に挿通し、ロック部材19を取付け穴20bに押し付けながら第2の端部17bを車室内1a側に引っ張る。これにより、スピーカ20の中心部10aが補強材4にしっかり固定される。
【0063】
このとき、スピーカ20のフレーム21の外周部21aが、フレーム介装材11を介して天井内張り5の開口部5aの周縁部5bに押し付けられる。
【符号の説明】
【0064】
1 自動車
1a 車室内
2 天井部
3 天板
4 補強材
4a 雌ねじ穴
5 天井内張り
5a 開口部
5b 周縁部
6 空間
10A,10B,10C,10D 車載音響装置
11 フレーム介装材
12 中心介装材
13 外周介装材
14 吸音材
15 取付けねじ
17 締め付け材
18,19 ロック部材
20 スピーカ
20a 中心部
20b 取付け穴
21 フレーム
21a 外周部
22 磁気駆動部
23 振動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の天井部にスピーカが取り付けられた車載音響装置において、
前記スピーカが、振動板の外周を支持するフレームと、前記振動板を駆動する磁気駆動部を支持する中心部と、前記中心部を貫通する取付け穴とを有し、
自動車の天井部に、天板と、その内側に設けられた補強材と、前記天板および前記補強材を内側から覆う天井内張りとが設けられ、前記天井内張りの前記補強材と対向する領域に、前記フレームの直径よりも内径が小さい開口部が形成されており、
前記フレームの外周部で、前記天井内張りの前記開口部の周縁部が車室内側から前記天板に向けて押さえられて、前記中心部が前記開口部の内部に位置し、前記中心部が、前記取付け穴によって前記補強材に固定されていることを特徴とする車載音響装置。
【請求項2】
前記フレームの外周部と、前記天井内張りの前記開口部の周縁部との間に、弾性材料で形成されたフレーム介装材が設けられている請求項1記載の車載音響装置。
【請求項3】
前記中心部と前記補強材との間に、弾性材料で形成された中心介装材が配置され、前記取付け穴に挿入された取付けねじが前記補強材に螺着されて、前記中心部が前記中心介装材を介して前記補強材に固定されている請求項1または2記載の車載音響装置。
【請求項4】
前記天板または前記補強材と、前記天井内張りの前記開口部の周縁部との間に、弾性部材で形成された外周介装材が配置され、前記取付け穴に挿入された取付けねじが前記補強材に螺着されて、前記天井内張りの前記開口部の周縁部が、前記フレームの外周部と前記外周介装材との間に挟まれている請求項1または2記載の車載音響装置。
【請求項5】
前記天板と前記補強材の内側に、前記フレームよりも面積が大きい吸音材が設けられている請求項1または2記載の車載音響装置。
【請求項6】
前記取付け穴に挿入されて前記補強材に巻き付けられた線材または帯材によって、前記中心部が前記補強材に固定されている請求項1または2記載の車載音響装置。
【請求項7】
天板と、その内側に設けられた補強材と、前記天板および前記補強材を内側から覆う天井内張りとが設けられた自動車の天井部に、振動板の外周を支持するフレームと、前記振動板を駆動する磁気駆動部を支持する中心部とを有するスピーカを取り付ける車載音響装置の組立て方法において、
前記天井内張りの前記補強材と対向する領域に、前記フレームの直径よりも内径が小さい開口部を形成し、
前記フレームの外周部で、前記天井内張りの前記開口部の周縁部を車室内側から前記天板に向けて押さえた状態で、前記中心部を前記開口部の内部に位置させ、前記中心部を貫通する取付け穴によって、前記中心部を前記補強材に固定することを特徴とする車載音響装置の組立て方法。
【請求項8】
前記フレームの外周部と、前記天井内張りの前記開口部の周縁部との間に、弾性材料で形成されたフレーム介装材を配置する請求項7記載の車載音響装置の組立て方法。
【請求項9】
前記中心部と前記補強材との間に、弾性材料で形成された中心介装材を配置し、前記取付け穴に挿入された取付けねじを前記補強材に螺着して、前記中心部を前記中心介装材を介して前記補強材に固定する請求項7または8記載の車載音響装置の組立て方法。
【請求項10】
前記天板または前記補強材と、前記天井内張りの前記開口部の周縁部との間に、弾性部材で形成された外周介装材を配置し、前記取付け穴に挿入された取付けねじを前記補強材に螺着して、前記天井内張りの前記開口部の周縁部を、前記フレームの外周部と前記外周介装材との間に挟む請求項7または8記載の車載音響装置の組立て方法。
【請求項11】
前記天板と前記補強材の内側に、前記フレームよりも面積が大きい吸音材を設ける請求項7または8記載の車載音響装置の組立て方法。
【請求項12】
前記取付け穴に挿入し前記補強材に巻き付けた線材または帯材によって、前記中心部を前記補強材に固定する請求項7または8記載の車載音響装置の組立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95312(P2013−95312A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241133(P2011−241133)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】