説明

車載風力発電装置

【課題】風車31を含む車載風力発電装置を車両に搭載する場合に、風車31が、熱交換器(コンデンサ11及びラジエータ12)への車両走行風の供給を阻害したり車両衝突時の衝撃吸収性能に影響を及ぼしたりするのを抑制する。
【解決手段】風車31を、車両前部におけるフロントサイドフレーム1よりも車幅方向外側に配設する。好ましくは、風車31を、車両前部におけるフロントサイドフレーム1よりも車幅方向外側であってバンパレインフォースメント6よりも車両後方でかつ車両の前輪の前方位置に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行風によって回転する風車と該風車の回転により駆動される発電機とを含む車載風力発電装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1や特許文献2に示されているように、車両走行風を利用して風車を回転させ、この風車の回転力を発電機に伝達して該発電機を作動させ、この発電機の作動により車両のバッテリーを充電するようにすることが知られている。
【特許文献1】特開平11−155203号公報
【特許文献2】特開2003−299207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来例のものでは、車両構成部品のレイアウトを考慮して風車を配置しておらず、そのようなレイアウトを考慮すると、風車の配置位置によっては、風車が、熱交換器への車両走行風の供給を阻害したり車両衝突時の衝撃吸収性能に影響を及ぼしたりする可能性がある。
【0004】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、風車を含む車載風力発電装置を車両に搭載する場合に、その風車の配置に工夫を凝らすことによって、風車が、熱交換器への車両走行風の供給を阻害したり車両衝突時の衝撃吸収性能に影響を及ぼしたりするのを抑制しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明では、風車を、車両前部におけるフロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設するようにした。
【0006】
具体的には、請求項1の発明では、左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレーム間に配設された熱交換器とを備えた車両に搭載され、該車両走行風によって回転する風車と該風車の回転により駆動される発電機とを含む車載風力発電装置を対象とする。
【0007】
そして、上記風車は、上記車両前部における上記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されているものとする。
【0008】
上記の構成により、風車が、フロントサイドフレームに対して熱交換器(シュラウド)が配設された側とは反対側に配設されているので、熱交換器への車両走行風の供給を阻害するようなことがなく、熱交換器での熱交換を適切に行えるようにすることができる。また、車両の軽衝突時には、風車が熱交換器に当接して熱交換器を破損させるようなことはなく、重衝突時には、風車がダッシュパネルを後退させる要因にはならないので、車載風力発電装置を搭載していない車両と同等の衝撃吸収性能が得られる。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記車両は、上記両フロントサイドフレームに結合されかつ上記熱交換器の車両前方において車幅方向に延びるバンパレインフォースメントを備え、上記風車は、上記バンパレインフォースメントよりも車両後方でかつ上記車両の前輪の前方位置に配設されているものとする。
【0010】
このことにより、車両の側部におけるバンパレインフォースメントよりも車両後方でかつ前輪の前方部分には、比較的大きな空きスペースがあるので、そのスペースを有効に利用することができる。また、風車の羽根に対して車両走行風を十分に供給することが可能になる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記車両は、バンパフェイシャを備え、上記バンパフェイシャは、該バンパフェイシャの車幅方向略中央部に設けられかつ上記車両走行風を少なくとも上記熱交換器に導くための中央導風開口部と、該中央導風開口部の車幅方向外側に設けられかつ上記車両走行風を上記風車に導くための外側導風開口部とを有しているものとする。
【0012】
こうすることで、熱交換器等への車両走行風の供給を確実に行うことができるとともに、風車の羽根への車両走行風の供給をも確実に行うことができる。
【0013】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、上記バンパフェイシャは、平面視で車幅方向中央部が両端部に対して車両前方に突出するように湾曲した形状を有し、上記車両は、上記外側導風開口部を車両走行風の導入口としかつ該車両の側面部における前輪の前方に設けた開口部を、上記導入口より導入した車両走行風の排出口とするダクトを備え、上記風車は、上記ダクト内に収容されているものとする。
【0014】
このようにバンパフェイシャが、平面視で車幅方向中央部が両端部に対して車両前方に突出するように湾曲した形状を有する場合、車両の側面部における前輪の前方部分では、風速がかなり速くなって負圧が生じる。この結果、車両の側面部における前輪の前方部分にダクトの排出口を設けることで、吸出し効果によりダクト内の流速を速めることができるとともに、車両走行風のダクトに対する流出入を滑らかにすることができる。よって、車両の低速走行時においても、高い発電性能が得られる。
【0015】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、上記ダクト内における上記導入口と風車との間の部分に、当該部分を閉塞及び開放自在に切り換え可能な閉塞手段が設けられているものとする。
【0016】
すなわち、例えば発電機の電気的負荷がなくなると、発電機の回転数が高くなり過ぎて、風車及び発電機の機械的負担が増大したり、直流発電機の場合に高電圧が発生して他の電気機器にダメージを与えたりする可能性がある。しかし、この発明では、閉塞手段により外側導風開口部を閉塞状態にすることで、風車の羽根への車両走行風の供給を遮断することができ、この結果、発電機の過回転を防止することができ、風車や発電機、電気機器等の損傷を防止することができる。
【0017】
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか1つの発明において、上記発電機は、上記フロントサイドフレームにブラケットを介して支持されているものとする。
【0018】
このことで、重量物である発電機を確実にかつ強固に支持することができるとともに、発電機を風車の近傍に配置することができ、風車の回転軸の回転を発電機に容易に伝達することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の車載風力発電装置によると、風車を、車両前部におけるフロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設したことにより、車両走行風を熱交換器へ十分に供給して、熱交換器での熱交換を適切に行えるようにすることができるとともに、風車が、車両衝突時の衝撃吸収性能に影響を及ぼすのを抑制することができ、車両に車載風力発電装置を搭載しても、高い安全性能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る車載風力発電装置が搭載された車両の前部を示す。この車両の前部における左右両側部には、車両前後方向に延びかつ閉断面構造をなす左右一対のフロントサイドフレーム1,1がそれぞれ設けられている(尚、図1では、車両右側のフロントサイドフレーム1は見えていない)。これら両フロントサイドフレーム1,1間におけるエンジンルーム内には、上側をトップカバー51aで覆われたエンジン51、エンジン補機54等が配設されている。
【0022】
上記各フロントサイドフレーム1の上方には、該フロントサイドフレーム1の車両前側端よりも後方位置から車両後方へ延びるエプロンレインフォースメント2が設けられている。このエプロンレインフォースメント2にフェンダパネル62(図2参照)が取り付けられる。
【0023】
上記各フロントサイドフレーム1の車両後側部には、上下方向に延びかつ当該車両の前輪(図示せず)のサスペンションを支持するためのサスペンションタワー3の下部が固定され、このサスペンションタワー3の上部が、当該フロントサイドフレーム1の上方に位置する上記エプロンレインフォースメント2に固定されている。
【0024】
上記両フロントサイドフレーム1,1の車両前側端には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント6の左右両端部が、当該車両の衝突時に長手方向に潰れて衝撃エネルギーを吸収するクラッシュカン5,5(各フロントサイドフレーム1の車両前側端にそれぞれ取付固定されている(実際にはフランジ結合されるが、フランジの図示は省略している))を介してそれぞれ結合されている。このバンパレインフォースメント6は、その長手方向略全体に亘って閉断面構造をなす閉断面部6aを有しているとともに、後述のバンパフェイシャ9に略沿って、平面視で車幅方向中央部が両端部に対して車両前方へ突出するように湾曲した形状を有している。このバンパレインフォースメント6の車両前側面には、当該車両の歩行者との衝突時に衝撃エネルギーを吸収して該歩行者の脚部を保護するための衝撃吸収材7が取付固定されている。
【0025】
上記バンパレインフォースメント6の車両後方(上記両フロントサイドフレーム1,1間におけるエンジンルームの車両前側端部)には、例えばガラス繊維で強化したポリプロピレン等の樹脂からなるシュラウド10が配設されている。このシュラウド10は、空調装置のコンデンサ11とエンジン冷却水を冷却するためのラジエータ12(コンデンサ11及びラジエータ12は熱交換器に相当する)とを支持する、車両正面視で矩形枠状をなす支持部10aを有している。この支持部10aの車両前側部分にコンデンサ11が支持され、支持部10aの車両後側部分にラジエータ12が支持されて、コンデンサ11及びラジエータ12が車両前後方向に並んでいる。これにより、コンデンサ11及びラジエータ12は、両フロントサイドフレーム1,1間に配設されていることになる。また、バンパレインフォースメント6は、コンデンサ11の車両前方において車幅方向に延びていることになる。
【0026】
上記支持部10aは、略水平状に延びかつ上記コンデンサ11及びラジエータ12の上端部を支持する上枠部10bと、略水平状に延びかつコンデンサ11及びラジエータ12の下端部を支持する下枠部10cと、略鉛直方向に延びかつコンデンサ11及びラジエータ12の車幅方向両端部をそれぞれ支持する左右一対の縦枠部10d,10e(車両左側のものを左側縦枠部10dといい、車両右側のものを右側縦枠部10eという)とで構成されている。
【0027】
上記上枠部10bと左側縦枠部10dとの角部には、該角部から車幅方向外側(車両左側)に向かって車両後方に傾斜して延びる左側取付部10fが形成され、この左側取付部10fの先端部が、車両左側のエプロンレインフォースメント2の車両前側端部に取付固定されている。また、上記上枠部10bと右側縦枠部10eとの角部には、該角部から車幅方向外側(車両右側)に向かって車両後方に傾斜して延びる右側取付部10gが形成され、この右側取付部10gの先端部が、車両右側のエプロンレインフォースメント2の車両前側端部に取付固定されている。
【0028】
上記左側及び右側縦枠部10d,10eの車両前側面には、車両前方に延びる側方導風板15,15(図1にのみ示す)がそれぞれ取付固定されており、これら側方ガイド板15,15により、後述のバンパフェイシャ9に設けた導風開口部9a,9bよりエンジンルーム内に導入された車両走行風を、支持部10aの車両前側の空間から車幅方向外側に逃がさないようにしてコンデンサ11及びラジエータ12に確実に導くようにしている。
【0029】
また、上枠部10bの車両前側面には、車両前方に延びる上側導風板16(図2にのみ示す)が取付固定され、下枠部10cの車両前側面には、当該車両の歩行者との衝突時に歩行者の足を払って歩行者がボンネット61(図2参照)に倒れるようにするための歩行者足払い部材17が取付固定されている。この歩行者足払い部材17は、下側の導風板を兼ねており、上側導風板16及び歩行者足払い部材17によって、導風開口部9a,9bよりエンジンルーム内に導入された車両走行風を上下方向にも逃がさないようにしている。
【0030】
上記シュラウド10の支持部10aの車両後側には、後述の導風開口部9a,9bを通ってコンデンサ11の車両前方に導かれた車両走行風を、コンデンサ11及びラジエータ12を確実に通過するように吸い込むラジエータファン13が設けられている。また、支持部10aの車両後側におけるラジエータファン13以外の部分は、ラジエータカバー14で覆われている。
【0031】
上記バンパレインフォースメント6の車両前方には、樹脂製のバンパフェイシャ9(車両外観構成部材に相当)が配設されている。このバンパフェイシャ9は、上記バンパレインフォースメント6と同様に、平面視で車幅方向中央部が両端部に対して車両前方へ突出するように湾曲した形状を有している。このバンパフェイシャ9の上縁部における左右両側部は、ヘッドライト57(上記シュラウド10に取り付けられる)の形状に沿うように下側に凹んでいる。
【0032】
上記バンパフェイシャ9の下部における車幅方向略中央部には、車両走行風を上記コンデンサ11及びラジエータ12に導くための横長形状の下側導風開口部9aが設けられている。また、バンパフェイシャ9の上部における上記下側導風開口部9aの上側には、同じく車両走行風を上記コンデンサ11及びラジエータ12に導くための横長形状の上側導風開口部9bが設けられており、この上側導風開口部9bには、多数の導風開口部が設けられた不図示のグリル部材が配設される。これら下側導風開口部9a及び上側導風開口部9bの車幅方向に沿った長さは、上記シュラウド10の支持部10aにおける左側縦枠部10dと右側縦枠部10eとの間の距離に略等しく、上側導風開口部9bの上縁と下側導風開口部9aの下縁との間の上下方向に沿った距離は、上枠部10bと下枠部10cとの間の距離に略等しい(図4参照)。これら下側導風開口部9a及び上側導風開口部9bは、バンパフェイシャ9の車幅方向略中央部に設けられた中央導風開口部に相当する。
【0033】
尚、上記下側導風開口部9a及び上側導風開口部9bは、車両走行風をコンデンサ11及びラジエータ12のみに導くためのものであってもよく、コンデンサ11及びラジエータ12に加えて、インタークーラやその他の冷却装置等に車両走行風を導くためのものであってもよい。
【0034】
上記バンパフェイシャ9の下部における上記下側導風開口部9aの車幅方向外側(車両前面の左右両側部に相当する部分)には、外側導風開口部9c,9cがそれぞれ設けられている。また、バンパフェイシャ9の左右両端部(車両の側面部における前輪の前方に相当する部分)には、側部開口部9d,9dがそれぞれ設けられている(尚、図1では、車両右側のものは見えていない)。
【0035】
上記車両には、車載風力発電装置が搭載されており、この車載風力発電装置は、車両走行風によって回転する2つのプロペラ型風車31,31と、該各風車31の回転によりそれぞれ駆動される発電機32(図2及び図4参照)とを含んでいて、該発電機32の作動により、当該車両に搭載された不図示のバッテリーを充電するように構成されている。
【0036】
上記2つの風車31は、車両前部における左右両側部に、該風車31の回転軸31aが車両前後方向に延びるようにそれぞれ配設されている。具体的には、車両左側の風車31は、車両前部における車両左側のフロントサイドフレーム1よりも車幅方向外側(車両左側)であってバンパレインフォースメント6よりも車両後方でかつ車両左側の前輪の前方位置に配設されている。また、車両右側の風車31は、車両前部における車両右側のフロントサイドフレーム1よりも車幅方向外側(車両右側)であってバンパレインフォースメント6よりも車両後方でかつ車両右側の前輪の前方位置に配設されている。
【0037】
上記車両前部おける左右両側部(フロントサイドフレーム1よりも車幅方向外側)には、ダクト35,35がそれぞれ設けられており、該各ダクト31内に上記各風車31がそれぞれ収容されている。この各ダクト35は、上記各外側導風開口部9cを車両走行風の導入口としかつ上記側部開口部9dを、上記導入口より導入した車両走行風の排出口とするものである。
【0038】
上記各風車31の車両後側に、上記発電機32がそれぞれ配置されている。この各発電機32は、図4に拡大して示すように、上記フロントサイドフレーム1に対し、車両前後方向に離間して並ぶ2つのブラケット37.37を介して支持されている。尚、上記各ダクト35には、2つのブラケット37.37が貫通する1つの貫通孔35aが開けられており、この貫通孔35aにおける両ブラケット37.37間の部分が、不図示の蓋部材で閉塞されるようになっている。
【0039】
上記各風車31の回転軸31aは、各発電機32の回転軸を兼用しており、これにより、各風車31は各発電機32(延いてはフロントサイドフレーム1)に支持されていることになる。この各風車31の回転軸31aの車両前側端部に、外周面に3つの羽根31b,31b,…が周方向に略等間隔をあけて取り付けられたハブ31cが、該回転軸31aと一体回転するように固定されている。
【0040】
上記各風車31は、図3に示すように、車両正面視で該風車31の羽根31bの回転スペース(正確には、回転スペースの一部)が上記各外側導風開口部9cとそれぞれ重複するように配設されている。すなわち、車両正面視で、羽根31bの外周先端の回転軌跡円Cの内側部分が羽根31bの回転スペースであり、この回転スペースにおける回転軸31aよりも下側部分が外側導風開口部9cと重複している。
【0041】
上記発電機32は、本実施形態では、直流発電機であるが、その発生した電圧は脈動しているため、AC/DCコンバータにより一定の直流電圧に変換され、更にDC/DCコンバータにより所定の電圧に変換された後にバッテリーを充電するようになされている。
【0042】
上記各ダクト35内における上記導入口(外側導風開口部9c)と風車31との間の部分には、当該部分を閉塞及び開放自在に切り換え可能な閉塞手段39が設けられている(図2及び図4参照)。この閉塞手段39は、図4に示すように、車幅方向に延びる回動軸40と、この回動軸40に基端部が固定された遮風板41と、ダクト35の上壁面に取付固定され、回動軸40の両端部を回動可能にそれぞれ支持する支持部材43,43と、該一方の支持部材43(図4では、車両外側の支持部材43)に取付固定され、回動軸40を正逆両方向に回転させるモータ44とで構成されている。
【0043】
上記回動軸40におけるモータ44が配設された側の端部(車両外側端部)には、はすば歯車45が取付固定され、上記モータ44の回転軸には、該はすば歯車45と噛み合うウォーム歯車46が取付固定されており、このことで、モータ44によって回動軸40と共に遮風板41を回動可能になっている。そして、上記遮風板41は、モータ44によって、先端部が基端部に対して略真下に位置して略鉛直方向に延びた状態(図2及び図4に実線で示す状態)と、先端部が基端部に対して車両前方に位置してダクト35の上壁面に略沿った状態(図2及び図4に二点鎖線で示す状態)とに切り換えられる。尚、遮風板41は、モータ44とは反対側(車幅方向中央側)の支持部材43に固定したストッパー47に当接することで、略鉛直方向に延びた状態となるとともに、先端部がダクト35の上壁面に当接することで、ダクト35の上壁面に略沿った状態となる。
【0044】
上記遮風板41が略鉛直方向に延びた状態にあるときには、該遮風板41が、外側導風開口部9cと風車31との間の部分を閉塞することで、風車31の羽根31bへの車両走行風の供給がなされなくなって風車31の回転が停止する一方、遮風板41がダクト35の上壁面に略沿った状態にあるときには、風車31の羽根31bへの車両走行風の供給がなされる。
【0045】
このように風車31への車両走行風を非供給とするのは、例えば発電機32の電気的負荷がなくなったとき(バッテリーがフル充電状態になったとき)である。発電機32の電気的負荷がなくなると、発電機32の回転数が高くなり過ぎて、風車31及び発電機32の機械的負担が増大したり、高電圧が発生して他の電気機器にダメージを与えたりする可能性があるために、閉塞手段39を閉塞状態にすることで、発電機32の過回転を防止することができ、風車31や発電機32、電気機器等の損傷を防止することができる。
【0046】
したがって、本実施形態では、風車31及び発電機32を車両前部におけるフロントサイドフレーム1よりも車幅方向外側であってバンパレインフォースメント6よりも車両後方でかつ前輪の前方位置に配設したので、風車31及び発電機32がシュラウド10の車両前方に位置せず、コンデンサ11及びラジエータ12への車両走行風の供給を阻害するようなことがない。この結果、コンデンサ11及びラジエータ12での熱交換を適切に行うことができる。また、車両の軽衝突時には、風車31及び発電機32がコンデンサ11に当接してコンデンサ11及びラジエータ12を破損させるようなことはなく、重衝突時には、風車31及び発電機32がダッシュパネルを後退させる要因にはならないので、車載風力発電装置を搭載していない車両と同等の衝撃吸収性能が得られる。
【0047】
また、車両走行風を風車31に導くための外側導風開口部9cを、コンデンサ11及びラジエータ12に導くための下側及び上側導風開口部9a,9bとは別個に設けたので、車両走行風をコンデンサ11及びラジエータ12へより確実に供給することができるとともに、風車31へも確実に供給することができる。しかも、風車31をダクト35内に収容し、このダクト35の排出口を、車両の側面部における前輪の前方部分に設けた側部開口部9dとしたので、吸出し効果によりダクト35内の流速を速めることができる。すなわち、バンパフェイシャ9が、平面視で車幅方向中央部が両端部に対して車両前方に突出するように湾曲した形状を有する場合、車両の側面部における前輪の前方部分では、風速がかなり速くなって負圧が生じるため、導入口(外側導風開口部9c)より導入した車両走行風の排出速度を速めることができる。よって、車両の低速走行時においても、高い発電性能が得られる。
【0048】
尚、上記実施形態では、風車31をダクト35内に収容したが、車両正面視で風車31の羽根31bの回転スペースが外側導風開口部9cと重複するようにすれば、外側導風開口部9cからの車両走行風を風車31に導くことができるので、ダクト35は必ずしも必要ではない。但し、風車31をダクト35内に収容する方が、車両正面視で風車31の羽根31bの回転スペースが外側導風開口部9cと重複するようにする必要はなくて配置の点で有利であるとともに、上述の如く吸出し効果が確実に得られるようになって発電性能を高める上でも有利である。
【0049】
また、風車31の配設位置は、車両前部におけるフロントサイドフレーム1よりも車幅方向外側であればどこでもよいが、上記実施形態の如くバンパレインフォースメント6よりも車両後方でかつ車両の前輪の前方位置とすれば、スペース的に有利であるとともに、風車31の羽根31bに対して車両走行風を十分に供給することができて好ましい。
【0050】
さらに、上記実施形態では、発電機32をフロントサイドフレーム1に支持したが、発電機32は、必ずしもフロントサイドフレーム1に支持する必要はなく、クラッシュカン5やバンパレインフォースメント等の他の部材に支持するようにしてもよい。但し、発電機32を、風車31の近傍(風車31の近傍に配置すれば、風車31の回転軸31aの回転を発電機32に容易に伝達することができる)で確実にかつ強固に支持することができる点で、上記実施形態の如くフロントサイドフレーム1に支持することが好ましい。
【0051】
また、風車31の種類は、プロペラ型に限らず、他の種類のものを用いてもよいが、発電効率が高い点でプロペラ型風車が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、車両走行風によって回転する風車と該風車の回転により駆動される発電機とを含む車載風力発電装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る車載風力発電装置が搭載された車両の前部を示す斜視図である。
【図2】上記車両前部の左側側部を車両前後方向に沿って切断した断面図である。
【図3】風車と外側導風開口部との関係、及び、シュラウドの支持部と下側及び上側導風開口部との関係を示す車両正面図である。
【図4】車両の左側側部を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 フロントサイドフレーム
6 バンパレインフォースメント
9 バンパフェイシャ
9a 下側導風開口部(中央導風開口部)
9b 上側導風開口部(中央導風開口部)
9c 外側導風開口部
9d 側部開口部(車両側面部における前輪の前方に設けた開口部)
10 シュラウド
11 コンデンサ(熱交換器)
12 ラジエータ(熱交換器)
31 風車
31a 回転軸
31b 羽根
32 発電機
35 ダクト
37 ブラケット
39 閉塞手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレーム間に配設された熱交換器とを備えた車両に搭載され、該車両走行風によって回転する風車と該風車の回転により駆動される発電機とを含む車載風力発電装置であって、
上記風車は、上記車両前部における上記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されていることを特徴とする車載風力発電装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載風力発電装置において、
上記車両は、上記両フロントサイドフレームに結合されかつ上記熱交換器の車両前方において車幅方向に延びるバンパレインフォースメントを備え、
上記風車は、上記バンパレインフォースメントよりも車両後方でかつ上記車両の前輪の前方位置に配設されていることを特徴とする車載風力発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車載風力発電装置において、
上記車両は、バンパフェイシャを備え、
上記バンパフェイシャは、該バンパフェイシャの車幅方向略中央部に設けられかつ上記車両走行風を少なくとも上記熱交換器に導くための中央導風開口部と、該中央導風開口部の車幅方向外側に設けられかつ上記車両走行風を上記風車に導くための外側導風開口部とを有していることを特徴とする車載風力発電装置。
【請求項4】
請求項3記載の車載風力発電装置において、
上記バンパフェイシャは、平面視で車幅方向中央部が両端部に対して車両前方に突出するように湾曲した形状を有し、
上記車両は、上記外側導風開口部を車両走行風の導入口としかつ該車両の側面部における前輪の前方に設けた開口部を、上記導入口より導入した車両走行風の排出口とするダクトを備え、
上記風車は、上記ダクト内に収容されていることを特徴とする車載風力発電装置。
【請求項5】
請求項4記載の車載風力発電装置において、
上記ダクト内における上記導入口と風車との間の部分に、当該部分を閉塞及び開放自在に切り換え可能な閉塞手段が設けられていることを特徴とする車載風力発電装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の車載風力発電装置において、
上記発電機は、上記フロントサイドフレームにブラケットを介して支持されていることを特徴とする車載風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−74305(P2008−74305A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257506(P2006−257506)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】