説明

車輌における乗員拘束装置のガスバッグ用カバー

【課題】 事故の際にエンブレム・バッジの取付け部に働くエネルギを十分に消散させて、結合部の破断を防ぐ車輌の乗員拘束装置のガスバッグ用カバーの提供。
【解決手段】 複数の凹所(20)を備えた座金(16)を、標章バッジ(12)の取付けピン(14)とカバー板(10)との間に設ける。これによって、事故の際、カバーがハンドルのリムを打撃するときに座金(16)が容易に変形するため、標章バッジの取付け部に作用するエネルギが一層容易に消散される。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、標章(エムブレム)を帯びたバッジがその上に固定されるカバー板を有した車輌の乗員拘束装置のガスバッグ用カバーに関し、該バッジは、該カバー板に面したその側部に少くとも1本の取付けピンを有し、該ピンは、カバー板を貫通して延び、カバー板からのバッジの分離を防止するためにカバー板の後側において座金と協働する。
【0002】
【従来の技術】
そのようなカバーは、例えばドイツ実用新案DE−U第9,402,922号
に開示される。前記取付けピンは、この場合にはカバー板の後側へ縁曲げされる管状リベットの形状である。更に、標章がバッジへ接着状に結合され、取付けピンが通常のリベットまたはねじ継手を使用して固定されるカバー装置は、周知である。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
この型式の標章バッジ取付けの場合には、事故中のガスバッグの展開時に、カバーがハンドルのリムを打撃すると、標章バッジの取付け部に作用するエネルギが十分に消散されず、ねじ継手またはリベット継手に働くてこ作用によって該結合部が破断し得る問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は、冒頭に述べた型式の乗員拘束装置のガスバッグ用カバーの場合には複数の凹所を設けられた座金を採用することにより、この問題を解決せんとするものである。凹所は、座金内で外側端縁から半径方向に延在することが好ましい。同様に、凹所は、座金の面積部にわたって分散され且つ貫通孔の形状でもよい。好ましくは、一つないしそれ以上の保持要素がカバー板の後側に設けられて、凹所内に係合し、それによりカバーが破裂開放する際に作用する遠心力の方向への変位を防ぐように座金を保持する。噛合うねじ山を取付けピンに切削する雌ねじ山をも座金が有していれば、有利である。この雌ねじ山は、取付けピンを受け入れるように座金に形成されるスリーブ内に設けられてもよい。この型式の標章バッジ取付けの場合には、座金がカバー板に面した側に、あごのある鉤のようにカバー板の後側に噛み込んで座金の回転して緩むのを防止する複数の輪止め(sprag)端縁を有していれば、特に有利である。
以下、添付図面を参照して本考案を詳細に説明する。
【0005】
【考案の実施の形態】
例として、図1は、車輌の運転者の側に対する乗員拘束装置のカバー板10から成るガスバッグカバーを示す。カバー板10の前側、即ち、車輌の運転者に面する側には、車輌の製造者の標章ないし標識を帯びたバッジ12が固定される。
矢印は、カバー板の開放の方向を示す。
【0006】
図2は、カバーのカバー板10およびバッジ12の横断面を示す。図示の実施例の場合、バッジは、流れプレス加工(flow pressing)によって金属ブランクから製造される。バッジは後側に少くとも1本の取付けピン14を形成され、該ピンは、カバー板10に形成される開口部を通って貫通ないし延びる。取付けピンは、管状リベットの形状に設計され、カバー板10の後側で折曲げて広げられる。管状リベットの折曲げて広げられる端部とカバー板10の後側との間には、座金16が配置される。該座金は、取付けの強い保持力を与える。
バッジ12はさらにカバー板10の前側に面した後側にピン18を有し、このピンはカバー板の前側に形成された対応の整合開口部に係合する。ピン18によって、バッジ12の前側上の標章の正確な整合が確実になる。バッジの寸法および形状によっては、複数のピン18をバッジの後側に形成することも可能である。
図2に示す管状リベットの代りに、その他の好適な型式のリベットを使用することも可能である。取付けピン14は、ねじ山を設けられてねじ継手により所定の位置に保持されてもよい。
【0007】
図3は本考案による座金16を示し、この座金には凹所20が設けられている。凹所は、座金の外側端縁から半径方向内方へ延びている。図3に示す座金16は、星形の形状のものである。従って、この座金は容易に変形可能である。カバーが車輌のハンドルリムと衝突する際に取付けピンの後端に働くテコ作用(leverage)は低減され、該衝撃の際に変換されるエネルギが一層容易に消散される。
【0008】
図4は、本考案に用いる別の実施例を示す。この実施例の場合、凹所20は、座金の面積部ないし表面にわたって分散され、円形の丸孔の形状である。しかしながら、凹所20の形状および数は、所望により自由に変更でき、座金16の形状と寸法に依存する。座金16の表面にわたる凹所20の分布は、対称であることが好ましい。
【0009】
図4に示す座金を用いた本考案によるカバーの有利な発展例が、図5に示される。この実施例の場合には、カバー板10の後側に一つないしそれ以上の保持要素22が形成され、これら要素は座金16の凹所20内に係合し、従って、所定の位置から外れる座金の滑りを防止するように座金をさらに固定する。バッジ12は、この場合にはサポート12aから成り、該サポートのカバー板10に面した側に取付けピン14が形成される。サポート12aおよび取付けピン14は、好ましくはアルミニウムで製作される。サポート12aの前側、即ち、車輌の内部に面する側では、車輌の製造者の標識を帯びた標章12bがサポート12aへ接着状に結合される。座金16の凹所20内に係合する保持要素22は、所定の位置から外れる座金の滑りの防止に関して、最適の効果を発揮する。凹所20のために、標章固定装置は全体として重量が一層軽くなる。
【0010】
図6に示される実施例の場合、座金16は、自己切削の雌ねじ山26を有している。この雌ねじ山は、噛合うねじ山を、好ましくはアルミニウムで製作される取付けピンに切削するように構成される。座金は、図6の矢印によって示される方向へ回転することによって締付けられる。カバー板10の後側を向いた座金16の側には、複数の輪止め端縁24が設けられる。輪止め端縁24は、好ましくは凹所20の縁の部分を折り上げることによって形成される。
【0011】
図7は、線B−Bに沿った本考案による座金16の部分を示す。輪止め端縁24は、カバー板10の樹脂面に噛込んで取付けピン14と座金16との間のねじ結合ないし締付けの緩むのを防止するように、凹20の縁部に配され且つ斜めに設置される。
【0012】
最後に、図8は座金16の別の断面を示し、ここにはスリーブ28に設けられた雌ねじ山26がある。スリーブは、少くとも一部がカバー板10内に延び、取付けピン14を収容する。ねじ山面の増大する寸法の故に、座金16またはスリーブ28の夫々と取付けピン14との間のねじ結合によって信頼性のある保持が保証される。尚、本例では、輪止め端縁24が、ねじ継手の回転による如何なる緩みをも防止する。しかしながら、本考案による座金16の作用は、スリーブ28なしでも保証される。この実施例は、標章を固定する際にトルクを測定して調節することによって、バッジ12の所定位置への制御された組立てを可能にする。ねじ結合は、一般に、向上した安全性と、一層良好な保持性とを保証する。
【図面の簡単な説明】
【図1】車輌の乗員拘束装置のガスバッグ用カバーの概略の斜視図。
【図2】バッジが固定されるカバー板の横断面図。
【図3】本考案による座金の概略図。
【図4】本考案による座金の別の実施例の図。
【図5】本考案に従った、標章の取付けを示す図。
【図6】噛合うねじ山を切削するようになった雌ねじ山と、輪止め端縁とを有する本考案による座金の図。
【図7】図6の座金の線B−Bに沿った部分的な断面図。
【図8】図6の座金の別の断面図。
【符号の説明】
10 カバー板
12 バッジ
14 取付けピン
16 座金
18 ピン
20 凹所
22 保持要素
24 輪止め端縁
26 雌ねじ山
28 スリーブ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 標章を帯びたバッジ(12)が固定されるカバー板(10)を備え、前記バッジ(12)が前記カバー板に面した側に少くとも1つの取付けピン(14)を有し、該ピン(14)が、前記カバー板を貫いて延び、該カバー板からの前記バッジの分離を防止するように該カバー板の後側において座金(16)と協働する、車輌における乗員拘束装置のガスバッグ用カバーにおいて、前記座金が複数の凹所(20)を設けられていることを特徴とするカバー。
【請求項2】 請求項1に記載のカバーにおいて、前記凹所(20)が前記座金の端縁から半径方向内方へ延びるカバー。
【請求項3】 請求項1に記載のカバーにおいて、前記凹所(20)が前記座金の表面にわたって分散され、貫通孔の形状であるカバー。
【請求項4】 請求項1から請求項3のいづれか一項に記載のカバーにおいて、少くとも一つの保持要素(22)が前記カバー板の後側に配置され、前記凹所(20)のうちの一つの中に係合するカバー。
【請求項5】 請求項1から請求項3のいづれか一項に記載のカバーにおいて、前記座金(16)が、噛合うねじ山を前記取付けピン(14)に切削するように構成された雌ねじ山(26)を有し、前記座金が回転して緩むのを防止するように前記カバー板の後側に噛込む複数の輪止め端縁(24)が、該座金(16)の該カバー板(10)に面した側に設けられるカバー。
【請求項6】 請求項5に記載のカバーにおいて、前記座金が前記取付けピン(14)を受け入れるスリーブ(28)を有し、噛合うねじ山を切削するように構成された前記雌ねじ山(26)が、前記スリーブ(28)内に配置されるカバー。
【請求項7】 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のカバーにおいて、前記バッジ(12)が、前記カバー板(10)の前側に形成された整合開口部内に係合する少くとも一つのピン(18)を形成されるカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【登録番号】第3057813号
【登録日】平成11年(1999)3月10日
【発行日】平成11年(1999)6月8日
【考案の名称】車輌における乗員拘束装置のガスバッグ用カバー
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平10−7244
【出願変更の表示】特願平8−115863の変更
【出願日】平成8年(1996)5月10日
【出願人】(595141122)ティーアールダブリュ オキュパント リストレイント システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)