車輌のフロアパネル
【課題】電気ケーブルの周囲に電磁波シールドを形成可能であると共に、輸送時の電気ケーブルの積載効率の向上を図ることのできる車輌のフロアパネルを提供する。
【解決手段】車輌1のフロアパネル30は、交流電力ケーブル28を収容可能な収容溝32が形成された金属製のパネル本体部31と、収容溝32を塞ぐ金属製の蓋部材34と、を備えている。
【解決手段】車輌1のフロアパネル30は、交流電力ケーブル28を収容可能な収容溝32が形成された金属製のパネル本体部31と、収容溝32を塞ぐ金属製の蓋部材34と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等の電動モータを走行駆動源とする車輌のフロアパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の電動モータを走行駆動源とする車輌において、インバータと電動モータ、又はバッテリとインバータを接続するために電気ケーブルが用いられている。この種の電気ケーブルには高電圧が印加されるため、その周囲に電磁波シールドを形成する必要がある。
【0003】
こうしたシールド付きの電気ケーブルとして、電気ケーブルの配索径路に沿って三次元的に曲げ加工したリジットな金属製パイプに、電気ケーブルを挿通させたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気ケーブルの製造工場と自動車の組立工場とが離れていると、トラック等によってシールド付き電気ケーブルを輸送する必要があるが、上記のリジットパイプを曲げ加工したものは、輸送時の荷姿容積が大きくなり積載効率に劣るという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電気ケーブルの周囲に電磁波シールドを形成可能であると共に、輸送時の電気ケーブルの積載効率の向上を図ることのできる車輌のフロアパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、車輌のフロアパネルであって、電気ケーブルを収容可能な溝が形成された金属製のパネル本体部と、前記溝を塞ぐ金属製の蓋部材と、を備えたことを特徴とするフロアパネルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属製のパネル本体部に形成した収容溝に電気ケーブルを収容して、金属製の蓋部材によってその収容溝を塞ぐので、電気ケーブルの周囲に電磁波シールドを形成可能であると共に、輸送時には電気ケーブルの荷姿容積を小型化して積載効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施形態における電気自動車を示す底面図(床裏図)である。
【図2】図2は、図1の電気自動車を示す側面図である。
【図3】図3は、図1の電気自動車の駆動系を示すブロック図である。
【図4】図4は、図1のVI-VI線に沿った断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの収容溝の変形例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態において電気自動車のフロントフロアパネルに電力ケーブルを組み付ける様子を示す分解断面図である。
【図7】図7は、図4のVII-VII線に沿った断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの保持手段の第1変形例を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの保持手段の第2変形例を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの保持手段の第3変形例を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの保持手段の第4変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図3は本実施形態における電気自動車を示す図、図4はフロントフロアパネルに形成された収容溝の断面図、図5は収容溝の変形例を示す断面図、図6はフロントフロアパネルに電力ケーブルを組み付ける様子を示す分解断面図、図7は収容溝の縦断面図、図8〜図11はフロントフロアパネルの保持手段の変形例を示す図である。なお、図7〜図9では電気ケーブルを省略して図示している。
【0012】
以下に、電動モータを走行駆動源とする電気自動車において、インバータと電動モータとを接続する電力供給ラインに本発明を適用した例について説明する。なお、バッテリとインバータの間の電力供給ラインに本発明を適用してもよい。また、電動モータを走行駆動源とする電気自動車には、本例にて説明する以外に、内燃機関と電動モータの両方を走行駆動源とするハイブリッド電気自動車や、二次電池からなるバッテリに代えて燃料電池を電源とする燃料電池自動車が含まれる。
【0013】
本実施形態における電気自動車1は、図3に示すように、リチウムイオン電池などの二次電池からなるバッテリ21と、当該バッテリ21の直流電力を交流電力に変換するインバータ22と、走行駆動源である三相交流の電動モータ23と、を備えている。電動モータ23の出力軸23aに接続された変速機24及びディファレンシャルギア25を介して、電動モータ23の出力が駆動輪26,26に伝達される。
【0014】
直流電力のバッテリ21とインバータ22は直流電力ケーブル27によって接続されている。一方、インバータ22と電動モータ23は交流電力ケーブル28によって接続されている。なお、図4に示すように、交流電力ケーブル(ワイヤハーネス)28は、三相交流電力(U,V,W相)用の3本の電気ケーブル281から構成されている。
【0015】
インバータ22は、図3に示すように、直列に接続された2つのスイッチング素子(トランジスタTr)が3列並列に接続された回路を備え、6つのスイッチング素子を所定の駆動信号によりスイッチングさせることにより、バッテリ21からの直流電力を三相交流電力に変換する電力変換装置である。また、電動モータ23の回生時には回生された交流電力をインバータ22により直流電力に変換し、これをバッテリ21に充電することもできる。
【0016】
本実施形態における電気自動車1では、図1及び図2に示すように、電動モータ23はフロントトランクルーム11(所謂エンジンルーム)に配置されている一方で、バッテリ21とインバータ22はリアトランクルーム12に配置されている。このため、バッテリ21とインバータ22とを接続する直流電力ケーブル27はリアトランクルーム12内で配索されるが、インバータ22と電動モータ23とを接続する交流電力ケーブル28は、リアトランクルーム12からフロントフロアパネル30内を通って、フロントトランクルーム11まで配索されている。
【0017】
本実施形態における電気自動車1の車体10のアンダボディは、フロントトランクルーム11と車室内13とを仕切るダッシュパネル14と、車室内13の床面を構成するフロントフロアパネル30と、リアトランクルーム12の床面を構成するリアフロアパネル15と、フロントフロアパネル30とリアフロアパネル15とを繋ぐエクステンションパネル16と、が溶接等により接合されている。
【0018】
そして、こうした車体構造に対して交流電力ケーブル28は、図2に示すように、インバータ22が搭載されたリアトランクルーム12からリアフロアパネル15に形成された孔を介して床裏に挿通され、ここからエクステンションパネル16の下面に沿ってフロントフロアパネル30の後端に至り、さらにここからフロントフロアパネル30内を通ってダッシュパネル14の下端まで至り、ダッシュパネル14の下面に沿って立ち上がり電動モータ23まで配索されている。
【0019】
この交流電力ケーブル28の一端は、コネクタ282を介して、電動モータ23の入出力端子に接続されている。また、交流電力ケーブル28の他端も、コネクタ283を介して、インバータ22の入出力端子に接続されている。
【0020】
インバータ22からフロントフロアパネル30の後端までの間や、フロントフロアパネル30の先端から電動モータ23までの間では、交流電力ケーブル28は、可撓性を有する蛇腹状の筒部材29に挿通されることで、電磁波シールド性、水密性、耐チッピング性が確保されている。この筒部材29は、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、銅、アルミニウム合金、又は銅合金等の電磁波シールド性を有する金属材料から構成されている。
【0021】
なお、コネクタ282,283の少なくとも一方の近傍を筒部材29に代えて、導電性金属細線を編み込んだ編組部材で構成してもよい。これにより、インバータ22や電動モータ23へのコネクタ282,283への装着作業性がより向上する。
【0022】
本実施形態におけるフロントフロアパネル30は、収容溝32が形成されたパネル本体部31と、収容溝32を塞ぐ蓋部材34と、を備えている。
【0023】
パネル本体部31は、電磁波シールド性を有する金属材料から構成されている。図1及び図2に示すように、このパネル本体部31の下面には、交流電力ケーブル28を収容可能な収容溝32が形成されている。この収容溝32は、交流電力ケーブル28の配索経路に沿うように、フロントフロアパネル30の後端から先端まで形成されている。
【0024】
図4に示すように、収容溝32は、3本の電気ケーブル281を収容可能な大きさの半楕円形の断面を有している。なお、収容溝に収容可能な電気ケーブルの本数は特に限定されない。また、収容溝の断面形状も特に限定されず、例えば、図5に示すように、収容溝32Bの断面を矩形形状としてもよい。
【0025】
図4に示すように、収容溝32の内部には、内壁面から中心に向かって突出するリブ321が形成されている。交流電力ケーブル28をフロントフロアパネル30に配索する際、車体10を45度程度傾斜させて持ち上げた状態とするが、本実施形態では、図6に示すように、蓋部材44によって収容溝32を塞ぐ前に、収容溝32内に収容した電気ケーブル281をリブ321に仮保持させておくことができるので、交流電力ケーブル28の配索作業性が向上する。
【0026】
このリブ321は、図7に示すように、収容溝32の全長に亘って形成されている。なお、図8に示すように、収容溝32の全長方向においてリブ321を間欠的に設けてもよい。或いは、リブ321に代えて、図9に示すようなピン322を収容溝32内に設けたり、図10に示すように、収容溝32Cの一部に凹部323を形成してもよい。
【0027】
また、パネル本体部31には、図4及び図6に示すように、収容溝32の周囲にボルト37を挿入するための複数の挿入孔33が形成されている。
【0028】
蓋部材34は、電磁波シールド性を有する金属材料から構成される板状部材である。この蓋部材34は、図1に示すように、パネル本体部31の収容溝32と同様に、交流電力ケーブル28の配索経路に対応した形状となっており、パネル本体部31の収容溝32全体を塞ぐことが可能となっている。
【0029】
図4及び図6に示すように、この蓋部材34の一方の主面には、収容溝32よりも若干幅広の位置にシール溝341が形成されている。このシール溝341は、蓋部材34の全長に亘って形成されており、例えば弾性を有する合成樹脂等から構成されるシール部材39を圧入可能となっている。また、蓋部材34には、パネル本体部31の挿入孔33に対応した位置に、ボルト37を挿入するための挿入孔342が形成されている。なお、収容溝32のリブ321に代えて、図11に示すように、蓋部材34にリブ343を設けてもよい。
【0030】
本実施形態では、交流電力ケーブル28を以下の要領でフロントフロアパネル30に組み付ける。
【0031】
すなわち、図6に示すように、車体10を45度程度傾けて持ち上げた状態で、3本の電気ケーブル281を収容溝32内に挿入し、収容溝32内のリブ321に電気ケーブル281を一時的に保持させる。
【0032】
次いで、蓋部材34のシール溝341にシール部材39を圧入して、その蓋部材34で収容溝32を塞ぐ。次いで、ボルト37を挿入孔33,342に挿入して、ボルト37とナット38とを螺合させることで、蓋部材34をパネル本体部31に固定する。
【0033】
以上のように、本実施形態では、交流電流ケーブル28をフロントフロアパネル30の収容溝32に収容することで、電気自動車1の車体10に交流電流ケーブル28を配索する。そのため、交流電流ケーブル28の製造工場から電気自動車1の組立工場への輸送の際に、交流電気ケーブル28を纏めるように変形させて荷姿容積を小型化することができるので、交流電気ケーブル29の積載効率の向上を図ることができる。
【0034】
一方で、フロントフロアパネル30に交流電力ケーブル28を組み付けると、金属製のパネル本体部31に形成された収容溝32と、金属製の蓋部材34とによって交流電力ケーブル28が囲まれている。このため、交流電力ケーブル28が電磁的にシールドされると共に、交流電力ケーブル28の耐チッピング性(飛石防止)が確保される。
【0035】
また、パネル本体部31における収容溝32の周囲と蓋部材34との間に配置されたシール部材39によって、収容溝32と蓋部材34によって形成される空間S(図4参照)において高い水密性が確保される。
【0036】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0037】
例えば、図1及び図2に示すバッテリ21、インバータ22、及び電動モータ23のレイアウトに代えて、バッテリ21をリアトランクルームに配置し、インバータ22をフロントトランクルームに配置することもできる。この場合は、バッテリ21とインバータ22を接続する直流電力ケーブル27を本発明に係るフロアパネル内を通過させることが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
1…電気自動車
10…車体
21…バッテリ
22…インバータ
23…電動モータ
28…交流電力ケーブル
281…電気ケーブル
282,283…コネクタ
30…フロントフロアパネル
31…パネル本体部
32…収容溝
321…リブ
34…蓋部材
37…ボルト
38…ナット
39…シール部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等の電動モータを走行駆動源とする車輌のフロアパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の電動モータを走行駆動源とする車輌において、インバータと電動モータ、又はバッテリとインバータを接続するために電気ケーブルが用いられている。この種の電気ケーブルには高電圧が印加されるため、その周囲に電磁波シールドを形成する必要がある。
【0003】
こうしたシールド付きの電気ケーブルとして、電気ケーブルの配索径路に沿って三次元的に曲げ加工したリジットな金属製パイプに、電気ケーブルを挿通させたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気ケーブルの製造工場と自動車の組立工場とが離れていると、トラック等によってシールド付き電気ケーブルを輸送する必要があるが、上記のリジットパイプを曲げ加工したものは、輸送時の荷姿容積が大きくなり積載効率に劣るという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電気ケーブルの周囲に電磁波シールドを形成可能であると共に、輸送時の電気ケーブルの積載効率の向上を図ることのできる車輌のフロアパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、車輌のフロアパネルであって、電気ケーブルを収容可能な溝が形成された金属製のパネル本体部と、前記溝を塞ぐ金属製の蓋部材と、を備えたことを特徴とするフロアパネルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属製のパネル本体部に形成した収容溝に電気ケーブルを収容して、金属製の蓋部材によってその収容溝を塞ぐので、電気ケーブルの周囲に電磁波シールドを形成可能であると共に、輸送時には電気ケーブルの荷姿容積を小型化して積載効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施形態における電気自動車を示す底面図(床裏図)である。
【図2】図2は、図1の電気自動車を示す側面図である。
【図3】図3は、図1の電気自動車の駆動系を示すブロック図である。
【図4】図4は、図1のVI-VI線に沿った断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの収容溝の変形例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態において電気自動車のフロントフロアパネルに電力ケーブルを組み付ける様子を示す分解断面図である。
【図7】図7は、図4のVII-VII線に沿った断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの保持手段の第1変形例を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの保持手段の第2変形例を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの保持手段の第3変形例を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態におけるフロントフロアパネルの保持手段の第4変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図3は本実施形態における電気自動車を示す図、図4はフロントフロアパネルに形成された収容溝の断面図、図5は収容溝の変形例を示す断面図、図6はフロントフロアパネルに電力ケーブルを組み付ける様子を示す分解断面図、図7は収容溝の縦断面図、図8〜図11はフロントフロアパネルの保持手段の変形例を示す図である。なお、図7〜図9では電気ケーブルを省略して図示している。
【0012】
以下に、電動モータを走行駆動源とする電気自動車において、インバータと電動モータとを接続する電力供給ラインに本発明を適用した例について説明する。なお、バッテリとインバータの間の電力供給ラインに本発明を適用してもよい。また、電動モータを走行駆動源とする電気自動車には、本例にて説明する以外に、内燃機関と電動モータの両方を走行駆動源とするハイブリッド電気自動車や、二次電池からなるバッテリに代えて燃料電池を電源とする燃料電池自動車が含まれる。
【0013】
本実施形態における電気自動車1は、図3に示すように、リチウムイオン電池などの二次電池からなるバッテリ21と、当該バッテリ21の直流電力を交流電力に変換するインバータ22と、走行駆動源である三相交流の電動モータ23と、を備えている。電動モータ23の出力軸23aに接続された変速機24及びディファレンシャルギア25を介して、電動モータ23の出力が駆動輪26,26に伝達される。
【0014】
直流電力のバッテリ21とインバータ22は直流電力ケーブル27によって接続されている。一方、インバータ22と電動モータ23は交流電力ケーブル28によって接続されている。なお、図4に示すように、交流電力ケーブル(ワイヤハーネス)28は、三相交流電力(U,V,W相)用の3本の電気ケーブル281から構成されている。
【0015】
インバータ22は、図3に示すように、直列に接続された2つのスイッチング素子(トランジスタTr)が3列並列に接続された回路を備え、6つのスイッチング素子を所定の駆動信号によりスイッチングさせることにより、バッテリ21からの直流電力を三相交流電力に変換する電力変換装置である。また、電動モータ23の回生時には回生された交流電力をインバータ22により直流電力に変換し、これをバッテリ21に充電することもできる。
【0016】
本実施形態における電気自動車1では、図1及び図2に示すように、電動モータ23はフロントトランクルーム11(所謂エンジンルーム)に配置されている一方で、バッテリ21とインバータ22はリアトランクルーム12に配置されている。このため、バッテリ21とインバータ22とを接続する直流電力ケーブル27はリアトランクルーム12内で配索されるが、インバータ22と電動モータ23とを接続する交流電力ケーブル28は、リアトランクルーム12からフロントフロアパネル30内を通って、フロントトランクルーム11まで配索されている。
【0017】
本実施形態における電気自動車1の車体10のアンダボディは、フロントトランクルーム11と車室内13とを仕切るダッシュパネル14と、車室内13の床面を構成するフロントフロアパネル30と、リアトランクルーム12の床面を構成するリアフロアパネル15と、フロントフロアパネル30とリアフロアパネル15とを繋ぐエクステンションパネル16と、が溶接等により接合されている。
【0018】
そして、こうした車体構造に対して交流電力ケーブル28は、図2に示すように、インバータ22が搭載されたリアトランクルーム12からリアフロアパネル15に形成された孔を介して床裏に挿通され、ここからエクステンションパネル16の下面に沿ってフロントフロアパネル30の後端に至り、さらにここからフロントフロアパネル30内を通ってダッシュパネル14の下端まで至り、ダッシュパネル14の下面に沿って立ち上がり電動モータ23まで配索されている。
【0019】
この交流電力ケーブル28の一端は、コネクタ282を介して、電動モータ23の入出力端子に接続されている。また、交流電力ケーブル28の他端も、コネクタ283を介して、インバータ22の入出力端子に接続されている。
【0020】
インバータ22からフロントフロアパネル30の後端までの間や、フロントフロアパネル30の先端から電動モータ23までの間では、交流電力ケーブル28は、可撓性を有する蛇腹状の筒部材29に挿通されることで、電磁波シールド性、水密性、耐チッピング性が確保されている。この筒部材29は、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、銅、アルミニウム合金、又は銅合金等の電磁波シールド性を有する金属材料から構成されている。
【0021】
なお、コネクタ282,283の少なくとも一方の近傍を筒部材29に代えて、導電性金属細線を編み込んだ編組部材で構成してもよい。これにより、インバータ22や電動モータ23へのコネクタ282,283への装着作業性がより向上する。
【0022】
本実施形態におけるフロントフロアパネル30は、収容溝32が形成されたパネル本体部31と、収容溝32を塞ぐ蓋部材34と、を備えている。
【0023】
パネル本体部31は、電磁波シールド性を有する金属材料から構成されている。図1及び図2に示すように、このパネル本体部31の下面には、交流電力ケーブル28を収容可能な収容溝32が形成されている。この収容溝32は、交流電力ケーブル28の配索経路に沿うように、フロントフロアパネル30の後端から先端まで形成されている。
【0024】
図4に示すように、収容溝32は、3本の電気ケーブル281を収容可能な大きさの半楕円形の断面を有している。なお、収容溝に収容可能な電気ケーブルの本数は特に限定されない。また、収容溝の断面形状も特に限定されず、例えば、図5に示すように、収容溝32Bの断面を矩形形状としてもよい。
【0025】
図4に示すように、収容溝32の内部には、内壁面から中心に向かって突出するリブ321が形成されている。交流電力ケーブル28をフロントフロアパネル30に配索する際、車体10を45度程度傾斜させて持ち上げた状態とするが、本実施形態では、図6に示すように、蓋部材44によって収容溝32を塞ぐ前に、収容溝32内に収容した電気ケーブル281をリブ321に仮保持させておくことができるので、交流電力ケーブル28の配索作業性が向上する。
【0026】
このリブ321は、図7に示すように、収容溝32の全長に亘って形成されている。なお、図8に示すように、収容溝32の全長方向においてリブ321を間欠的に設けてもよい。或いは、リブ321に代えて、図9に示すようなピン322を収容溝32内に設けたり、図10に示すように、収容溝32Cの一部に凹部323を形成してもよい。
【0027】
また、パネル本体部31には、図4及び図6に示すように、収容溝32の周囲にボルト37を挿入するための複数の挿入孔33が形成されている。
【0028】
蓋部材34は、電磁波シールド性を有する金属材料から構成される板状部材である。この蓋部材34は、図1に示すように、パネル本体部31の収容溝32と同様に、交流電力ケーブル28の配索経路に対応した形状となっており、パネル本体部31の収容溝32全体を塞ぐことが可能となっている。
【0029】
図4及び図6に示すように、この蓋部材34の一方の主面には、収容溝32よりも若干幅広の位置にシール溝341が形成されている。このシール溝341は、蓋部材34の全長に亘って形成されており、例えば弾性を有する合成樹脂等から構成されるシール部材39を圧入可能となっている。また、蓋部材34には、パネル本体部31の挿入孔33に対応した位置に、ボルト37を挿入するための挿入孔342が形成されている。なお、収容溝32のリブ321に代えて、図11に示すように、蓋部材34にリブ343を設けてもよい。
【0030】
本実施形態では、交流電力ケーブル28を以下の要領でフロントフロアパネル30に組み付ける。
【0031】
すなわち、図6に示すように、車体10を45度程度傾けて持ち上げた状態で、3本の電気ケーブル281を収容溝32内に挿入し、収容溝32内のリブ321に電気ケーブル281を一時的に保持させる。
【0032】
次いで、蓋部材34のシール溝341にシール部材39を圧入して、その蓋部材34で収容溝32を塞ぐ。次いで、ボルト37を挿入孔33,342に挿入して、ボルト37とナット38とを螺合させることで、蓋部材34をパネル本体部31に固定する。
【0033】
以上のように、本実施形態では、交流電流ケーブル28をフロントフロアパネル30の収容溝32に収容することで、電気自動車1の車体10に交流電流ケーブル28を配索する。そのため、交流電流ケーブル28の製造工場から電気自動車1の組立工場への輸送の際に、交流電気ケーブル28を纏めるように変形させて荷姿容積を小型化することができるので、交流電気ケーブル29の積載効率の向上を図ることができる。
【0034】
一方で、フロントフロアパネル30に交流電力ケーブル28を組み付けると、金属製のパネル本体部31に形成された収容溝32と、金属製の蓋部材34とによって交流電力ケーブル28が囲まれている。このため、交流電力ケーブル28が電磁的にシールドされると共に、交流電力ケーブル28の耐チッピング性(飛石防止)が確保される。
【0035】
また、パネル本体部31における収容溝32の周囲と蓋部材34との間に配置されたシール部材39によって、収容溝32と蓋部材34によって形成される空間S(図4参照)において高い水密性が確保される。
【0036】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0037】
例えば、図1及び図2に示すバッテリ21、インバータ22、及び電動モータ23のレイアウトに代えて、バッテリ21をリアトランクルームに配置し、インバータ22をフロントトランクルームに配置することもできる。この場合は、バッテリ21とインバータ22を接続する直流電力ケーブル27を本発明に係るフロアパネル内を通過させることが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
1…電気自動車
10…車体
21…バッテリ
22…インバータ
23…電動モータ
28…交流電力ケーブル
281…電気ケーブル
282,283…コネクタ
30…フロントフロアパネル
31…パネル本体部
32…収容溝
321…リブ
34…蓋部材
37…ボルト
38…ナット
39…シール部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌のフロアパネルであって、
電気ケーブルを収容可能な収容溝が形成された金属製のパネル本体部と、
前記収容溝を塞ぐ金属製の蓋部材と、を備えたことを特徴とするフロアパネル。
【請求項2】
請求項1記載のフロアパネルであって、
前記パネル本体部における前記収容溝の周囲と、前記蓋部材との間に介在するシール部材を備えたことを特徴とするフロアパネル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のフロアパネルであって、
前記電気ケーブルを一時的に保持する保持手段を備えたことを特徴とするフロアパネル。
【請求項4】
請求項3記載のフロアパネルであって、
前記保持手段は、前記収容溝の内部に設けられていることを特徴とするフロアパネル。
【請求項5】
請求項3記載のフロアパネルであって、
前記保持手段は、前記蓋部材に設けられていることを特徴とするフロアパネル。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のフロアパネルであって、
前記電気ケーブルは、電気モータを走行駆動源とする車輌の駆動電力供給用のケーブルであることを特徴とするフロアパネル。
【請求項1】
車輌のフロアパネルであって、
電気ケーブルを収容可能な収容溝が形成された金属製のパネル本体部と、
前記収容溝を塞ぐ金属製の蓋部材と、を備えたことを特徴とするフロアパネル。
【請求項2】
請求項1記載のフロアパネルであって、
前記パネル本体部における前記収容溝の周囲と、前記蓋部材との間に介在するシール部材を備えたことを特徴とするフロアパネル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のフロアパネルであって、
前記電気ケーブルを一時的に保持する保持手段を備えたことを特徴とするフロアパネル。
【請求項4】
請求項3記載のフロアパネルであって、
前記保持手段は、前記収容溝の内部に設けられていることを特徴とするフロアパネル。
【請求項5】
請求項3記載のフロアパネルであって、
前記保持手段は、前記蓋部材に設けられていることを特徴とするフロアパネル。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のフロアパネルであって、
前記電気ケーブルは、電気モータを走行駆動源とする車輌の駆動電力供給用のケーブルであることを特徴とするフロアパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−131714(P2011−131714A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292497(P2009−292497)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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