説明

車輌ドアシステム

【課題】停車位置に応じたきめ細かいセンシング領域設定を行い、シチュエーションに応じた適切なドア制御を実行する車輌ドアシステムを提供する。
【解決手段】障害物に対するドアの接触防止のための制御を行う車輌ドアシステムであって、車輌が停車状態であるか否かに係る情報を取得する自車輌情報取得部200と、車輌の現在位置が路上であるのか駐車スペースであるのかに係る情報を取得するナビゲーション部300と、ドア幅程度の距離の監視を行う近距離周辺監視用センサ部540と、遠くの距離の監視を行う遠距離後方監視用センサ部510と、ドアの接触防止のための制御を行うドア制御部600と、を有し、該自車輌情報取得部200で取得した情報及び該ナビゲーション部300で取得した情報に応じて、該近距離周辺監視用センサ部540及び/又は遠距離後方監視用センサ部510を稼働させて、該ドア制御部600のドアの制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション情報とリンクさせることによって、シチュエーションに応じた適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行する車輌ドアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車輌を駐車し降車する際、乗員は駐車する場所によって適切な行動をとらないと、路上では後続車にドアを接触させたり、駐車場では開けたドアを隣接する他車輌や障害物に接触させることとなる。こうしたことは免許を取得した者にとっては安全意識として常識であるが、免許を持たない者、特に子供などにとっては知識の外であり、降車の際にトラブルを起こすことは珍しくない。そこで、このような問題に対処するための車輌ドアシステムが種々提案さている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平4−62283号公報)には、車輌の周囲の状況を検出する周囲状況検出手段と、車輌ドアの開動作を抑制するドア開作動抑制手段と、上記周囲状況検出手段の検出状況に応じて上記ドア開作動抑制手段を作動させるドア開作動抑制動作制御手段とを備えてなる車輌のドア開閉装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平10−176462号公報)には、障害物を検出する障害物検出手段と、この障害物検出手段によって障害物が検出されたときにドアの開放を制動するドア制動機構とを備えた車載用ドアシステムにおいて、前記障害物検出手段が、自車の後方から接近する障害物までの距離を測定する測距部を備え、前記ドア制動機構に、前記測距部によって障害物が検出されたときに当該障害物までの距離に応じて前記ドアの開放を制動する制御をする制御部を併設したことを特徴とする車載用ドアシステムが開示されている。
【特許文献1】特開平4−62283号公報
【特許文献2】特開平10−176462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、特許文献2のいずれに記載のものも、後方から近づいてくる障害物に対するセンシングを行い、これに対処するようにドアを制御するものである。
【0006】
車輌ドアシステムを機能させるために、例えば車輌周辺の監視を行うにしても路上と駐車場では求められるセンシング方向、範囲や精度が大きく異なる。しかしながら、特許文献1、特許文献2については、車輌が存在する場所に応じた車輌周辺のセンシングを行うようなものではなく、問題であった。
【0007】
また、近年、あらゆるケースを想定する為に複数の周辺監視システムを搭載する車輌が市場に出てきているが、安全確保を行う為には全てのセンサシステムを同時に駆動するのでは、システムリソースの無駄な消費を招く。すなわち、車輌ドアの開放制御においても、必要ないシチュエーションでも動作すれば使い勝手の悪いシステムとなる。
【0008】
しかしながら、従来、車輌ドアシステムにおいて、シチュエーションに応じた車輌周辺の監視を行うことについては提案されていない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、車輌に搭載され障害物に対するドアの接触防止のための制御を行う車輌ドアシステムであって、車輌が停車状態であるか否かに係る情報を取得する自車輌情報取得部と、少なくとも車輌の現在位置が路上であるのか駐車スペースであるのかに係る情報を取得するナビゲーション部と、ドアが最大に開放したときの略ドア幅程度の距離の監視を行う近距離監視用センサ部と、該近距離監視用センサの監視範囲より遠くの距離の監視を行う遠距離監視用センサ部と、ドアの接触防止のための制御を行うドア制御部と、を有し、該自車輌情報取得部で取得した情報及び該ナビゲーション部で取得した情報に応じて、該近距離監視用センサ部及び/又は該遠距離監視用センサ部を稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車輌ドアシステムにおいて、該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が駐車スペースであるという情報を取得したときには、該近距離監視用センサ部のみを稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行うことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の車輌ドアシステムにおいて、さらに開放されるドアを検出するドアタッチセンサ部と、ドア断面に設けられ後続車輌へ警告表示を行うドア開サイン表示部と、を有し、該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが車道側であるという情報を取得したときには、該遠距離監視用センサ部を稼働さて該ドア制御部によるドアの制御を行い、かつ、該ドア開サイン表示部による表示を行うことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車輌ドアシステムにおいて、さらに路肩と車輌との間の距離を計測する距離計測部を有し、該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが路肩側であるという情報を取得し、かつ該距離計測部で計測された路肩と車輌との間の距離がドア幅以内であるという情報が取得されたときには、該遠距離監視用センサ部を稼働させ、かつ、該近距離監視用センサ部を稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行うことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車輌ドアシステムにおいて、該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが路肩側であるという情報を取得し、かつ該距離計測部で計測された路肩と車輌との間の距離がドア幅を超えるという情報が取得されたときには、該遠距離監視用センサ部を稼働させ、かつ、該近距離監視用センサ部を稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行い、かつ、該ドア開サイン表示部による表示を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る車輌ドアシステムによれば、ナビゲーション情報とリンクさせることによって、車輌が停車する場所が路上か駐車場かであるのかを判断して、この判断結果に応じて車輌周辺監視部を動作させので、シチュエーションに応じた適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。そして、ひいては、後続車輌にドアが接触する事故を防止することができたり、開けたドアを隣接車輌や障害物に接触させるミスを解消することができたりするものである。
【0015】
本発明の請求項2に係る車輌ドアシステムによれば、該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が駐車スペースであるという情報を取得したときに、該近距離監視用センサ部のみを稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行うので、駐車スペースなどを想定した適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。そして、開けたドアを隣接車輌や障害物に接触させるミスを解消することができたりするものである。
【0016】
本発明の請求項3に係る車輌ドアシステムによれば、さらに開放されるドアを検出するドアタッチセンサ部と、ドア断面に設けられ後続車輌へ警告表示を行うドア開サイン表示部と、を有し、該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが車道側であるという情報を取得したときに、該遠距離監視用センサ部を稼働さて該ドア制御部によるドアの制御を行い、かつ、該ドア開サイン表示部による表示を行うので、後続車輌へのドア開放の報知及び、適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。そして、後続車輌にドアが接触する事故を防止することができたりするものである。
【0017】
本発明の請求項4に係る車輌ドアシステムによれば、さらに路肩と車輌との間の距離を計測する距離計測部を有し、該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが路肩側であるという情報を取得し、かつ該距離計測部で計測された路肩と車輌との間の距離がドア幅以内であるという情報が取得されたときに、該遠距離監視用センサ部を稼働させ、かつ、該近距離監視用センサ部を稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行うので、路肩に近接して停車した場合などのドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。そして、開けたドアをガードレールなどの障害物に接触させるミスを解消することができたりするものである。
【0018】
本発明の請求項5に係る車輌ドアシステムによれば、該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが路肩側であるという情報を取得し、かつ該距離計測部で計測された路肩と車輌との間の距離がドア幅を超えるという情報が取得されたときには、該遠距離監視用センサ部を稼働させ、かつ、該近距離監視用センサ部を稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行い、かつ、該ドア開サイン表示部による表示を行うので、後続車輌へのドア開放の報知及び、路肩側から進入しようとする他車輌を監視しつつ、適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。そして、後続車輌にドアが接触する事故を防止することができたりするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムのブロック構成を示す図であり、図2は本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムが搭載された車輌の上面図であり、図3は本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムの左後ドアの外観斜視図である。
【0020】
図1乃至図3において、1は車輌ドアシステムを搭載した車輌、2は右前ドア、3は右後ドア、4は左前ドア、5は左後ドア、100はECU、200は自車輌情報取得部、210はパーキングSW、220は車輌速度センサ、300はナビゲーション部、310はGPS座標データ取得部、320は地図情報データベース、400はドアタッチセンサ部、410は右前ドアタッチセンサ、420は右後ドアタッチセンサ、430は左前ドアタッチセンサ、440は左後ドアタッチセンサ、500は車輌周辺監視部、510は遠距離後方監視用センサ、520は右側監視用センサ、530は左側監視用センサ、540は近距離周辺監視用センサ、550は右前ドア範囲監視用センサ、560は右後ドア範囲監視用センサ、570は左前ドア範囲監視用センサ、580は左後ドア範囲監視用センサ、600はドア制御部、610はドア開放角度制御部(右前ドア)、620はドア減衰機構制御部(右前ドア)、630はドア減衰機構制御部(右後ドア)、640はドア減衰機構制御部(右後ドア)、650はドア開放角度制御部(左前ドア)、660はドア減衰機構制御部(左前ドア)、670はドア開放角度制御部(左後ドア)、680はドア減衰機構制御部(左後ドア)、700はドア開サイン表示部、710は右前ドア用ディスプレイ、720は右後ドア用ディスプレイ、730は左前ドア用ディスプレイ、740は左後ドア用ディスプレイ、800は距離計測部、810は右側距離計測用センサ、820は左側距離計測用センサをそれぞれ示している。
【0021】
なお、本実施形態では、車輌ドアシステムを搭載した車輌1は、左側通行の道路で、運転席が右側(車道側)、助手席が左側(路肩側)の標準的な日本車を例に挙げて説明しているが、本発明の車輌ドアシステムは、右側通行の道路でも左ハンドル車にも適用可能なものである。本発明の車輌ドアシステムを、右側通行の道路や左ハンドル車に適用するときには、後に示すフローチャートのアルゴリズムにおいて、「路肩側」か「車道側」かに応じて判断するようにすればよい。
【0022】
また、本実施形態では、車輌ドアシステムを搭載した車輌1は左右2枚ずつの計4枚のドアを具備するものを例にとるが、このドアの枚数も本発明を限定するものではない。
【0023】
本実施形態の車輌ドアシステムには、主たる構成として、ECU(判定処理部)100、自車輌情報取得部200、ナビゲーション部300、ドアタッチセンサ部400、車輌周辺監視部500、ドア制御部600、ドア開サイン表示部700、距離計測部800を有するものである。
【0024】
ECU100はエレクトロニックコントロールユニットであり、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構である。
【0025】
自車輌情報取得部200は、車輌に搭載される各種のセンサ類の情報を取得するものであり、このような車輌に搭載される各種のセンサ類として、例えば、車輌速度センサ220やパーキングスイッチ210がある。なお、パーキングスイッチ210は、ギアの「パーキング」モードなどを含むより広い概念であり、運転者がパーキングしようとするときに用いるものと定義する。 本発明の車輌ドアシステムにおいては、自車輌情報取得部200を用いて、車輌が走行しているか、駐車しようとしているのか、或いは駐車しているかなどの判断を行う。
【0026】
ナビゲーション部300は、GPS座標データ取得部310やこのGPS座標データ取得部310が参照する地図情報データベース320とからなっている。この地図情報データベース320は、ある座標データの地点が駐車スペースであるのか、或いは路上であるのかに係る情報を少なくとも有しているものとする。GPS座標データ取得部310は、GPS衛星からのGPS信号を受信して自らの位置を計算するGPS測位部を用いることによって、車両の位置情報を取得することができる。
【0027】
本発明の車輌ドアシステムにおいては、位置情報を取得することができれば、このようなGPS測位法によらずとも、その他の測位法を用いることができるものである。また、本発明の車輌ドアシステムにおいては、ナビゲーション部300の位置情報を参照することによって、車輌1の位置が駐車スペースにあるのか、路上にあるのかを判定するものである。
【0028】
ドアタッチセンサ部400は、例えば人が触れることによる静電容量の変化などを検出するタッチセンサであり、ドアのドアノブなどに設けられる。本実施形態では、車輌ドアシステムが開放ドアを判断するために当該タッチセンサの検出結果が用いられる。このドアタッチセンサ部400は、右前ドア2に設けられる右前ドアタッチセンサ410、右後ドア3に設けられる右後ドアタッチセンサ420、左前ドア4に設けられる左前ドアタッチセンサ430、左後ドア5に設けられる左後ドアタッチセンサ440から構成されている。
【0029】
車輌周辺監視部500は、車輌1周囲に存在する車輌を監視するためのものであり、本実施形態では、近距離の監視を行う近距離周辺監視用センサ540、遠距離の監視を行う遠距離後方監視用センサ510の2種類のセンサを備えてなるものである。これら近距離周辺監視用センサ540、遠距離後方監視用センサ510にはレーザーレーダーやソナーなどの探知手段、撮像装置を備えてなる画像処理手段、変調赤外線光源とCMOSセンサーとからなる画像距離カメラなどを用いることができる。
【0030】
ここで、近距離周辺監視用センサ540は、ドアが最大に開放したときの略ドア幅程度の距離の監視を行うためのセンサであり、遠距離後方監視用センサ510は、それ以上の距離の監視を行うためのセンサである。なお、「ドア幅」とは図2に示すように、ドアを最大限に開放したときのボディーからの距離として定義される。また、遠距離後方監視用センサ510は、近距離周辺監視用センサ540がセンシングを行う距離より遠い距離の監視を行うものである、と定義される。
【0031】
本実施形態では、遠距離後方監視用センサ510として、右サイドミラー部に右側監視用センサ520を、また、左サイドミラー部に左側監視用センサ530を配置するように構成したが、必ずしもこのような配置に限定されるものではない。
【0032】
また、本実施形態では、近距離周辺監視用センサ540として、右側のAピラーに右前ドア範囲監視用センサ550を、右側ルーフ部に右後ドア範囲監視用センサ560を、左側のAピラーに左前ドア範囲監視用センサ570を、左側ルーフ部に左後ドア範囲監視用センサ580を、配置するように構成したが、必ずしもこのような配置に限定される必要はない。
【0033】
ドア制御部600は、ドアの開放角度をコントロールするドア開放角度制御部と、ドア開閉に必要な力を変化させるドア減衰機構制御部とからなり、これら二つの制御部は右前ドア2、右後ドア3、左前ドア4、左後ドア5の各ドアに設けられている。ドア開放角度制御部は、障害物に接触する直前でドアがそれ以上開かないように制御するものであり、ドア減衰機構制御部は、障害物の近さに応じて減衰機構により、ドア開閉に必要な力を変化させる。
【0034】
本実施形態では、このようなドア開放角度制御部とドア減衰機構制御部を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限らず、障害物に対するドアの接触防止のための制御するようなドア制御部であればどのようなものでも利用することができる。
【0035】
ドア開サイン表示部700は、図3に示すようなドア断面におけるLEDなどによる矢印表示のことであり、これによりドアが開くことを後続車輌に警告するものである。このドア開サイン表示部700は、右前ドア2に設けられる右前ドア用ディスプレイ710、右後ドア3に設けられる右後ドア用ディスプレイ720、左前ドア4に設けられる左前ドア用ディスプレイ730、左後ドア5に設けられる左後ドア用ディスプレイ740からなる。これらのドア開サイン表示部700は、ECU100からの制御信号によって点灯する。
【0036】
距離計測部800は、車輌1から略ドア幅程度にある物体の距離を計測するレーザーレーダーなどの測距装置である。この距離計測部800は、車輌1の左右のガードレールや縁石と車輌1との距離を計測するものである。本実施形態では、右側距離計測用センサ810は右側のルーフ部に、また、左側距離計測用センサ820は左側のルーフ部に設けられているが、このようなレイアウトに限定されなくても良い。
【0037】
次に、以上のように構成される本発明の車輌ドアシステムの制御フローについて説明する。図4は本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムの制御処理のフローチャートである。なお、このようなフローチャートは、ECU100が実行する車輌1全体の制御のためのメインルーチンにおけるサブルーチン的なものとして実行される。
【0038】
図4において、ステップS100で車輌ドアシステムの制御処理が開始されると、次に、ステップS101に進み、車輌速度センサ220からの情報によって車輌1の時速が5km/h以下であるかが判定される。本実施形態では、ドライバーが停車しようとしているか否かを、車輌時速5km/hの基準によって判断しているが、これに限定されることなく、ほかの時速を基準として判断してもよいし、また、ドライバーがパーキングSW210を操作したか否かによって判断してもよい。
【0039】
ステップS101の判定の結果がYESであるときにはステップS102に進み、ステップS101の判定の結果がNOであるときにはステップS1118に進み処理を終了する。
【0040】
ステップS102では、ナビゲーション部300から車輌1の現在位置に係るナビゲーション情報が取得され、次のステップS103では、当該現在位置が路上であるのか、駐車スペースであるのかが判定される。
【0041】
ステップS103における判断の結果が「路上」であるときにはステップS104に進み、ステップS103における判断の結果が「駐車スペース」であるときにはステップS112に進む。
【0042】
ステップS103における判断の結果が「路上」であるときに進むステップS104では、車道側の後方遠距離監視を実行する。すなわち、遠距離後方監視用センサ510の右側監視用センサ520によって右側後方遠距離の監視を行うようにする。なお、本実施形態では、左側通行を前提としているので、右側監視用センサ520を用いているが、右側通行の場合は左側監視用センサ530を用いるようにすればよい。
【0043】
ステップS105では、ドアタッチセンサ部400からの情報を用いてどのドアが開放されるのかが検出され、ステップS106では、開放されるドアが車道側であるのか、路肩側であるのかが判定される。
【0044】
ステップS106における判定の結果が「車道側」であるときにはステップS114に進み、ステップS106における判定の結果が「路肩側」であるときにはステップS107に進む。
【0045】
開放ドアが路肩側であるときのステップS107では、距離計測部800の左側距離計測用センサ820によって、路肩(ガードレール等の障害物も含む)と車輌1との間の距離が検知される。
【0046】
ステップS108では、この検知の結果に基づいて、(路肩−車輌間距離)>(ドア幅)であるか否かが判定される。そして、ステップS108における判定の結果がNOであるときにはステップS116に進み、ステップS108における判定の結果がYESであるときにはステップS109に進む。
【0047】
ステップS109では、左側監視用センサ530によって、路肩側の後方遠距離監視が実行される。このときの監視センサの稼働状況を示しているのが図5である。監視センサによるセンシング領域については網掛けの領域にて示されている。以下の同様の図においても、監視センサのセンシング領域については網掛け領域で示すものとする。
【0048】
図5に示されるように、車輌1は路上に停車(或いは停車しようとしている状態)しているので、基本的には右側監視用センサ520によって右側後方遠距離の監視を実行している。さらに、路肩と車輌1間の距離がドア幅よりも大きいので、この間に自転車やオートバイなどが進入することが考えられる。このため、ステップS109では、左側監視用センサ530によって、路肩側の後方遠距離監視を行うようにしている。
【0049】
ステップS110では、ドア開サイン表示部700によって、開放用としているドアに搭載されているディスプレイの点灯を行い、後続車輌に警告する。また、ステップS111では、右側監視用センサ520と左側監視用センサ530からの情報に基づいて、ドア制御部600がドア開放角度制御及びドア減衰力制御を行う。ステップS118で処理を終了する。
【0050】
このように本発明の車輌ドアシステムでは、停車位置に応じたきめ細かいセンシング領域設定を行うので、シチュエーションに応じた適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。
【0051】
次に、ステップS103における判断の結果が「駐車スペース」であるときに進むステップS112について説明する。ステップS112では、ナビゲーション部300からの情報によって停車位置が駐車スペースであることが判明しているので、遠距離後方監視センサ510によるセンシングは行わず、近距離周辺監視用センサ540によるセンシングのみを行う。このときの監視センサの稼働状況を示しているのが図6である。
【0052】
図6に示されるように、車輌1は駐車スペースに停車(或いは停車しようとしている状態)しており、近距離のみのセンシングで対応することができるので、右前ドア範囲監視用センサ550、右後ドア範囲監視用センサ560、左前ドア範囲監視用センサ570、左後ドア範囲監視用センサ580を稼働させる。そして、ステップS113では、これらの各ドア範囲監視用センサからの情報に基づいて、ドア制御部600がドア開放角度制御及びドア減衰力制御を行う。ステップS118で処理を終了する。
【0053】
このように本発明の車輌ドアシステムでは、車輌1の停車位置が駐車スペースであるのか路上であるのかに応じたきめ細かいセンシング領域設定を行うので、シチュエーションに応じた適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。
【0054】
次に、ステップS106における判定の結果が「車道側」であるとき進むステップS114について説明する。ステップS114時点での監視用の稼働状況を図示したものが図7である。
【0055】
図7に示されるように、車輌1は路上に停車(或いは停車しようとしている状態)しているので、基本的には右側監視用センサ520によって右側後方遠距離の監視を実行している。
【0056】
ステップS114では、ドア開サイン表示部700によって、開放用としているドアに搭載されているディスプレイの点灯を行い、後続車輌に警告する。また、ステップS115では、右側監視用センサ520と左側監視用センサ530からの情報に基づいて、ドア制御部600がドア開放角度制御及びドア減衰力制御を行う。ステップS118で処理を終了する。
【0057】
このように本実施形態の車輌ドアシステムでは、停車位置に応じたきめ細かいセンシング領域設定を行うので、シチュエーションに応じた適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。
【0058】
次に、ステップS108における判定の結果がNOであるときに進むステップS116について説明する。ステップS116では、開放しようとしているドアに搭載されているドア範囲監視用センサによって路肩側の近距離監視が実行される。
【0059】
このときの監視センサの稼働状況を示しているのが図8である。図8に示されるように、車輌1は路上に停車(或いは停車しようとしている状態)しているので、基本的には右側監視用センサ520によって右側後方遠距離の監視を実行している。さらに、路肩側については、ドア範囲監視用センサ(570、580)によって、路肩側の近距離監視を行うようにしている。
【0060】
ステップS117では、ドア範囲監視用センサ(570、580)からの情報に基づいて、ドア制御部600がドア開放角度制御及びドア減衰力制御を行う。ステップS118で車輌ドアシステム制御処理を終了する。
【0061】
このように本実施形態の車輌ドアシステムでは、停車位置に応じたきめ細かいセンシング領域設定を行うので、シチュエーションに応じた適切なドア開放角度制御、ドア減衰力制御を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムのブロック構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムが搭載された車輌の上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムの左後ドアの外観斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムの制御処理のフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムにおける監視センサの稼働状況を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムにおける監視センサの稼働状況を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムにおける監視センサの稼働状況を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る車輌ドアシステムにおける監視センサの稼働状況を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・車輌、2・・・右前ドア、3・・・右後ドア、4・・・左前ドア、5・・・左後ドア、100・・・ECU、200・・・自車輌情報取得部、210・・・パーキングSW、220・・・車輌速度センサ、300・・・ナビゲーション部、310・・・GPS座標データ取得部、320・・・地図情報データベース、400・・・ドアタッチセンサ部、410・・・右前ドアタッチセンサ、420・・・右後ドアタッチセンサ、430・・・左前ドアタッチセンサ、440・・・左後ドアタッチセンサ、500・・・車輌周辺監視部、510・・・遠距離後方監視用センサ、520・・・右側監視用センサ、530・・・左側監視用センサ、540・・・近距離周辺監視用センサ、550・・・右前ドア範囲監視用センサ、560・・・右後ドア範囲監視用センサ、570・・・左前ドア範囲監視用センサ、580・・・左後ドア範囲監視用センサ、600・・・ドア制御部、610・・・ドア開放角度制御部(右前ドア)、620・・・ドア減衰機構制御部(右前ドア)、630・・・ドア減衰機構制御部(右後ドア)、640・・・ドア減衰機構制御部(右後ドア)、650・・・ドア開放角度制御部(左前ドア)、660・・・ドア減衰機構制御部(左前ドア)、670・・・ドア開放角度制御部(左後ドア)、680・・・ドア減衰機構制御部(左後ドア)、700・・・ドア開サイン表示部、710・・・右前ドア用ディスプレイ、720・・・右後ドア用ディスプレイ、730・・・左前ドア用ディスプレイ、740・・・左後ドア用ディスプレイ、800・・・距離計測部、810・・・右側距離計測用センサ、820・・・左側距離計測用センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載され障害物に対するドアの接触防止のための制御を行う車輌ドアシステムであって、
車輌が停車状態であるか否かに係る情報を取得する自車輌情報取得部と、
少なくとも車輌の現在位置が路上であるのか駐車スペースであるのかに係る情報を取得するナビゲーション部と、
ドアが最大に開放したときの略ドア幅程度の距離の監視を行う近距離監視用センサ部と、
該近距離監視用センサの監視範囲より遠くの距離の監視を行う遠距離監視用センサ部と、
ドアの接触防止のための制御を行うドア制御部と、を有し、
該自車輌情報取得部で取得した情報及び該ナビゲーション部で取得した情報に応じて、該近距離監視用センサ部及び/又は該遠距離監視用センサ部を稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行うことを特徴とする車輌ドアシステム。
【請求項2】
該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が駐車スペースであるという情報を取得したときには、該近距離監視用センサ部のみを稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車輌ドアシステム。
【請求項3】
さらに開放されるドアを検出するドアタッチセンサ部と、
ドア断面に設けられ後続車輌へ警告表示を行うドア開サイン表示部と、を有し、
該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが車道側であるという情報を取得したときには、該遠距離監視用センサ部を稼働さて該ドア制御部によるドアの制御を行い、かつ、該ドア開サイン表示部による表示を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌ドアシステム。
【請求項4】
さらに路肩と車輌との間の距離を計測する距離計測部を有し、
該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが路肩側であるという情報を取得し、かつ該距離計測部で計測された路肩と車輌との間の距離がドア幅以内であるという情報が取得されたときには、該遠距離監視用センサ部を稼働させ、かつ、該近距離監視用センサ部を稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車輌ドアシステム。
【請求項5】
該自車輌情報取得部で車輌が停止状態であるという情報を取得し、かつ、該ナビゲーション部で現在位置が路上であるという情報を取得し、かつ、該ドアタッチセンサ部で開放されるドアが路肩側であるという情報を取得し、かつ該距離計測部で計測された路肩と車輌との間の距離がドア幅を超えるという情報が取得されたときには、該遠距離監視用センサ部を稼働させ、かつ、該近距離監視用センサ部を稼働させて、該ドア制御部によるドアの制御を行い、かつ、該ドア開サイン表示部による表示を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車輌ドアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−41209(P2009−41209A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204907(P2007−204907)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】