説明

車輌用塩化ビニル系樹脂組成物

本発明の車輛用塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100質量部に、(イ)トリメリット酸エステル系可塑剤の少なくとも一種及び(ロ)セバチン酸エステル系可塑剤の少なくとも一種を、質量比〔(イ)成分/(ロ)成分〕で99/1〜60/40の比率で且つ(イ)成分及び(ロ)成分の総量で5〜200質量部含有させてなるもので、熱安定性、耐熱老化性、耐寒性及び耐フォギング性に優れ、さらに、ゲル化性、脱型性及び金型汚染性等の成型性に優れ粉体成型用に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輛用塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは、熱安定性、耐熱老化性、耐寒性、耐フォギング性等の改良された、自動車内装材料に適する車輛用塩化ビニル系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、機械的強度、耐薬品性、耐候性等の物性に優れ、且つ比較的安価であるため、自動車内装用のカバーリング材料として、半硬質又は軟質の塩化ビニル樹脂が多く使用されている。
【0003】
しかし、近年、コストダウンのための薄肉化及び要求される性能の高級化に伴い、加工安定性はもとより、使用時の熱老化特性、耐光特性等のレベル向上が望まれている。
【0004】
さらに、内装材のソフト感を出すために、塩化ビニル系樹脂のカバーリング材料は、ウレタンによって裏打ちされることがあり、これは特に塩化ビニル系樹脂の安定性に悪影響を与えるため、その改善が強く求められている。
【0005】
また、近年、自動車内装材料としてのクラッシュパッド、アームレスト、ヘッドレスト、コンソール、メーターカバーあるいはドアトリム等のカバーリング材料においては、軽量で且つソフト感に優れ、しかも、皮しぼ模様やステイッチ模様等を施した高級感のあるものが一段と求められている。
【0006】
従来では、これらのカバーリング材料としては、塩化ビニル樹脂とABS樹脂とを主体とした軟質シートの真空成型品や、ペースト用塩化ビニル樹脂と可塑剤とを主体としたゾルの回転成型品又はスラッシュ成型品(以下、「ゾル成型品」という)が用いられてきた。
しかしながら、上記真空成型品は、軽量化という点ではその目的を達しているものの、ソフト感に乏しく、かたい感触のものしか得られず、さらには、高級感のある皮しぼ模様あるいはスティッチ模様等を施した複雑な形状を賦形させることは困難であった。また、上記真空成型品は、成型時の残留歪みが大きく、長時間使用していると、成型品に亀裂が生じ易いという欠点もかかえている。
【0007】
他方、上記ゾル成型品は、ソフト感はあるものの、ゲル化温度が低いために金属内での溶融が速く、フローマークやリップあるいはゾルの糸引き等の現象が起こるために、表面平滑性に欠ける、金型からのゾルの排出に時間がかかり過ぎる、カバーリング材料が肉厚化する等の欠点をかかえている。また、ゾル成型の場合は、色替え時のタンクや配管等の掃除が大変である、経日による粘度変化を伴なうために長時間の保存には耐えられない等の問題もある。
【0008】
これらの欠点や問題点を解決する方法として、最近、粉末成型法が脚光を浴びてきている。この粉末成型法には、一般には、流動浸漬法、静電塗装法、粉末溶射法、粉末回転成型法又は粉末スラッシュ成型法等があるが、特に自動車内装用のカバーリング材料には、粉末回転成型法又は粉末スラッシュ成型法が適している。
【0009】
かかる粉末回転成型法又は粉末スラッシュ成型法は、180℃以上の温度にある金型と粉末供給ボックスとを一体化して回転又は揺動あるいは噴射させて金型内面に粉末を溶着させ、未溶着粉末は自動的あるいは強制的に粉末供給ボックスに回収する方法である。
【0010】
かかる粉末成型法に使用される金型の加熱方法には、ガス加熱炉方式、熱媒体油循環方式、熱媒体油又は熱流動砂内への浸漬方式あるいは高周波誘導加熱方式等がある。
【0011】
上記粉末成型法に使用される粉末組成物は、高温により短時間で加工を完了させるという粉末成型法の特徴から、熱安定性に優れていることはもちろん、速やかに金型でゲル化し、尚且つ脱型性に優れ、金型汚染の少ないものであることが要求される。
【0012】
また、自動車の内装材として使用される場合には、比較的高温に曝されることがあり、特に真夏の炎天下に曝された場合には、100℃近くまで上昇することも考えられ、塩化ビニル系樹脂を用いた場合は着色を生じる(熱老化)等の欠点を生じる。
【0013】
また、塩化ビニル系樹脂組成物を自動車の内装材に使用すると、上記熱老化に加えて、可塑剤、安定剤等の塩化ビニル系樹脂の添加剤が樹脂中より揮発し、車窓に付着して曇りを生じる現象(フォギング)が起きる。車窓の曇りは安全性に著しく影響を与えるものであるため、自動車の内装材に用いられる素材にはフォギング性の改善も求められる。
【0014】
さらに、自動車の内装材は、冬の北海道や北欧等の寒冷地で使用される場合には、低温に曝されることによって硬く脆くなるため、衝撃によって容易に破壊されると言う問題が生じる。例えば、エアーバックのカバーに使用する場合には、耐寒性の劣る素材を使用すると、この破壊が怪我の原因にもなるため、自動車の内装材に用いられる素材には、耐寒性の改善も求められている。
【0015】
自動車内装材用のカバーリング材料には、耐熱性向上のために、高温加熱時の蒸散や裏打ちしたウレタン発泡層への移行の少ないトリメリット酸エステル系可塑剤が好んで使用されているが、トリメリット酸エステル系可塑剤は耐寒性が劣るという欠点があった。
【0016】
上記問題を解決するために、例えば、特許文献1及び2には、特定のアルコール成分から得られるトリメリット酸エステル系可塑剤を使用することが提案されており、特許文献3及び4には、特定の塩化ビニル系樹脂とトリメリット酸エステル系可塑剤とを組み合わせて使用することが提案されているが、未だ満足できるものではなかった。
【0017】
【特許文献1】特開平2−138355号公報
【特許文献2】特開平2−209941号公報
【特許文献3】特開平5−279485号公報
【特許文献4】特開平10−306187号公報
【発明の開示】
【0018】
解決しようとする問題点は、上述したように、自動車内装材に用いられる素材に要求される特性である熱安定性、耐熱老化性、耐寒性及び耐フォギング性に優れ、さらに、ゲル化性、脱型性及び金型汚染性等の成型性に優れ粉体成型に適した塩化ビニル系樹脂組成物が、これまで得られていなかったということである。
【0019】
従って、本発明の目的は、熱安定性、耐熱老化性、耐寒性及び耐フォギング性に優れ、さらに、ゲル化性、脱型性及び金型汚染性等の成型性に優れ粉体成型用に好適な車輛用塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
【0020】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、可塑剤としてトリメリット酸エステル系可塑剤及びセバチン酸エステル系可塑剤を特定の比率にて組み合わせて使用してなる塩化ビニル系樹脂組成物が、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0021】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、塩化ビニル系樹脂100質量部に、(イ)トリメリット酸エステル系可塑剤の少なくとも一種及び(ロ)セバチン酸エステル系可塑剤の少なくとも一種を、質量比〔(イ)成分/(ロ)成分〕で99/1〜60/40の比率で且つ(イ)成分及び(ロ)成分の総量で5〜200質量部含有させてなる車輛用塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の車輌用塩化ビニル系樹脂組成物について詳細に説明する。
【0023】
本発明に使用される塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリテン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、及びこれら相互のブレンド品、あるいは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。
【0024】
本発明に使用される(イ)トリメリット酸エステル系可塑剤としては、トリメリット酸と一価アルコールとのトリエステル化合物が用いられる。
【0025】
(イ)成分として用いられる上記トリエステル化合物を製造するために使用される一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第二ブチルアルコール、第三ブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、ヘンイコサノール、ドコサノール等の直鎖又は分岐のアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
これらの一価アルコールの中でも、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デカノール等の炭素原子数7〜10の一価アルコールあるいはこれらの混合アルコールと、トリメリット酸とのトリエステル化合物を(イ)成分として使用すると、耐フォギング性及び耐寒性に優れた成型品が得られるため好ましい。
【0027】
本発明に使用される(ロ)セバチン酸エステル系可塑剤としては、セバチン酸と一価アルコールとのジエステル化合物が用いられる。
【0028】
(ロ)成分として使用される上記ジエステル化合物を製造するために使用される一価アルコールとしては、(イ)成分の製造に使用される一価アルコールとして前記に例示した如き直鎖又は分岐のアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
前記に例示した一価アルコールの中でも、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デカノール等の炭素原子数8〜10の一価アルコールあるいはこれらの混合アルコールと、セバチン酸とのジエステル化合物を(ロ)成分として使用すると、耐フォギング性及び耐寒性に優れた成型品が得られるため好ましい。
【0030】
これらの(イ)トリメリット酸エステル系可塑剤及び(ロ)セバチン酸エステル系可塑剤は、質量比〔(イ)成分/(ロ)成分〕で99/1〜60/40、好ましくは97/3〜65/35、特に好ましくは95/5〜70/30の比率で使用され、(イ)成分の使用量が多い場合には耐寒性の劣るものしか得られず、(ロ)成分の使用量が多い場合には、フォギング性が低下するため好ましくない。
【0031】
(イ)成分及び(ロ)成分の使用量は、上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、総量で5〜200質量部、好ましくは10〜100質量部である。該使用量が5質量部未満の場合には、耐寒性の改善効果が小さく、200質量部を超えると、耐フォギング性が低下し、プレートアウト、ブリード等を発生するおそれがある。
【0032】
本発明は、可塑剤成分として(イ)成分と(ロ)成分とを組み合わせて使用することによって、耐熱性、耐熱老化性、耐寒性、耐フォギング性等に優れた車輌用塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものであるが、本発明の車輌用塩化ビニル系樹脂組成物には、(イ)成分及び(ロ)成分の他に、塩化ビニル系樹脂に通常用いられている可塑剤も少量であれば必要に応じて使用することができる。(イ)成分及び(ロ)成分以外の可塑剤の使用量は、全可塑剤成分中、多くとも20質量%以下とする。
該可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート等のフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等のホスフェート可塑剤系;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等と、二塩基酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸等を用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタール酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、ビフェニルテトラカルボン酸エステル系可塑剤、塩素系可塑剤等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の車輌用塩化ビニル系樹脂組成物には、塩化ビニル系樹脂組成物に通常用いられる他の添加剤、例えば、有機カルボン酸、フェノール類及び有機リン酸類の金属塩、ゼオライト化合物、ハイドロタルサイト化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン化合物、多価アルコール、リン系、フェノール系及び硫黄系等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、過塩素酸塩類、その他の無機金属化合物等を任意で添加することができる。
【0034】
上記の有機カルボン酸、フェノール類及び有機リン酸類の金属塩を構成する金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、錫、セシウム、アルミニウムあるいは有機錫等が挙げられる。
【0035】
また、上記有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−第三オクチルサリチル酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等の一価カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、ヒドロキシフタール酸、クロルフタール酸、アミノフタール酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸等の二価カルボン酸あるいはこれらのモノエステル又はモノアマイド化合物;ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の三価又は四価カルボン酸のジ又はトリエステル化合物が挙げられる。
【0036】
また、上記フェノール類としては、例えば、第三ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、n−ブチルフェノール、イソアミルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、イソオクチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、第三オクチルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクタデシルフェノール、ジイソブチルフェノール、メチルプロピルフェノール、ジアミルフェノール、メチルイソヘキシルフェノール、メチル第三オクチルフェノール等が挙げられる。
【0037】
また、上記有機リン酸類としては、例えば、モノ又はジオクチルリン酸、モノ又はジドデシルリン酸、モノ又はジオクタデシルリン酸、モノ又はジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステル等が挙げられる。
【0038】
また、上記の有機カルボン酸、フェノール類及び有機リン酸類の金属塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩あるいは塩基性塩の塩基の一部又は全部を炭酸で中和した過塩基性錯体であってもよい。
【0039】
上記の有機カルボン酸、フェノール類あるいは有機リン酸類の金属塩の添加量は、上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、更に好ましくは0.05〜5質量部である。
【0040】
上記ゼオライト化合物は、独特の三次元のゼオライト結晶構造を有するアルカリ又はアルカリ土類金属のアルミノケイ酸塩であり、その代表例としては、A型、X型、Y型及びP型ゼオライト、モノデナイト、アナルサイト、ソーダライト族アルミノケイ酸塩、クリノブチロライト、エリオナイト及びチャバサイト等を挙げることができ、これらのゼオライト化合物の結晶水(いわゆるゼオライト水)を有する含水物又は結晶水を除去した無水物のいずれでもよく、また、その粒径が0.1〜50μのものを用いることができ、特に0.5〜10μのものが好ましい。
【0041】
上記ハイドロタルサイト化合物は、下記一般式(I)で表わされる様に、マグネシウム及び/又はアルカリ金属とアルミニウムあるいは亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムからなる複合塩化合物であり、結晶水を脱水したものであってもよい。
【0042】

(式中、Iaはアルカリ金属原子を表わし、x1、x2、x3、y及びzは各々下記式で表わされる条件を示し、mは実数を示す。
0≦x1≦10,0≦x2≦10,0≦x3≦10,0≦y≦10,0≦z≦10,但しx1及びx2は同時に0となることはない。)
【0043】
上記ハイドロタルサイト化合物は、天然物であってもよく、また合成品であってもよい。該合成品の合成方法としては、特公昭46−2280号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129号公報、特公平3−36839号、特開昭61−174270号公報、特開平5−179052号公報、特開2001−164042号公報、特開2002−293535号公報等に記載の公知の方法を例示することができる。また、上記ハイドロタルサイト化合物は、その結晶構造、結晶粒子系等に制限されることなく使用することが可能である。
【0044】
また、上記ハイドロタルサイト化合物としては、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックス等で被覆したものであってもよい。
【0045】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール型及びノボラック型のエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化トール油脂肪酸オクチル、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシステアリン酸メチル、−ブチル、−2−エチルヘキシル又は−ステアリル、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシル−6−メチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
【0046】
上記β−ジケトン化合物としては、例えば、デヒドロ酢酸、ジベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン等が挙げられ、これらの金属塩も同様に有用である。
【0047】
上記多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールのステアリン酸部分エステル、ビス(ジペンタエリスリトール)アジペート、グリセリン、ジグリセリン、トリス(2ーヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0048】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリブチルホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリラウリルホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)−1,4−シクロヘキサンジメチルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、ヘキサキス(トリデシル)−1,1,3−トリス(2’−メチル−5’−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブタントリホスファイト、テトラ(C12〜15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(4−ヒドロキシ−2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ジフェニル・ビス〔4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)〕チオジエタノールジホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス〔4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)〕−1,6−ヘキサンジオールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、テトラトリデシル〔4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)〕ジホスファイト、2,2’−メチレンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)・オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0049】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドルキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0050】
上記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0051】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’.5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類が挙げられる。
【0052】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ドデシルコハク酸イミド、1−〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物等が挙げられる。
【0053】
上記過塩素酸塩類としては、過塩素酸金属塩、過塩素酸アンモニウム等が挙げられる。該過塩素酸金属塩を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛、アルミニウム等が例示できる。該過塩素酸金属塩及び該過塩素酸アンモニウムは、無水物でも含水塩でもよく、また、ブチルジグリコール、ブチルジグリコールアジペート等のアルコール系及びエステル系の溶剤に溶かしたもの及びその脱水物でもよい。
本発明の車輛用塩化ビニル系樹脂組成物に上記過塩素酸塩類を含有させると、車輌用途において重要な比較的低温における熱安定性(熱老化性)の改善を一層確実に図ることができるため好ましい。
過塩素酸塩類の配合量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.001〜5質量部、特に0.01〜3質量部であることが好ましい。0.001質量部未満ではその効果を十分発揮することができず、5質量部を超えて使用した場合には熱安定性が低下するなどの欠点を生じるおそれがある。
【0054】
上記無機金属化合物としては、前記有機カルボン酸等の金属塩を構成する金属として例示した金属種の、例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、珪酸塩、リン酸塩等の無機酸塩及びその塩基性塩等が挙げられる。
【0055】
さらに、本発明の車輛用塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、耐衝撃性改善剤、架橋剤、充填剤、発泡剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、螢光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤等も任意成分として配合することができる。
【0056】
本発明の車輛用塩化ビニル系樹脂組成物は、粉体成型加工に使用されるのが好ましい。また、本発明の車輛用塩化ビニル系樹脂組成物は、主として自動車内装用のカバーリング材料等の車輛用途、特に、クラッシュパッド、アームレスト、ヘッドレスト、コンソール、メーターカバーあるいはドアトリム等の半硬質又は軟質のカバーリング材料に好適に使用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、次に挙げられた実施例等によって何等限定されるものではない。
【0058】
[実施例1及び比較例1]
下記の配合による塩化ビニル系樹脂組成物を、ギヤーオーブンにより130℃で2時間ドライアップした後、らいかい器を用いて15分間撹拌してコンパウンドを作成した。クロム製鏡面板を300℃のギヤーオーブンに約15分間入れて取り出した後、鏡面板が240℃になった時点で該コンパウンドを速やかに均一の厚さに広げ、10秒間放置した。鏡面板(金型)を逆さにし、そのまま30秒間放置した後、水槽に浸漬して冷却し、シート(厚さ1.0mm)を得た。
【0059】
このときのシートのゲル化状態を観察し、ゲル化性を以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
◎:完全にゲル化している。
○:ゲル化しているが内部に粒状物が残存している。
△:ゲル化しているが表面に凹凸がある。
×:未ゲル化部分がある。
【0060】
また、上記シートを250℃のギヤーオーブン中に入れ、分解時間を測定した。
【0061】
また、上記シートの黄色度を測定した。
【0062】
また、上記シートを120℃のオーブンで300時間劣化させた後、シートの着色性を目視により5段階(良好な場合を1とし、数値が増えるほど着色性が劣ることを表す。)で評価し、且つ、劣化促進前後のシートについて、JIS K 7113に従い引張試験を行い、伸び残率(%)を求めた(熱老化性)。
【0063】
また、Crash&Berg試験機を用いて、上記シートのぜい化温度を測定した。該ぜい化温度が−38℃以下であれば、寒冷地使用に十分耐え得る。
【0064】
さらに、フォギング性の評価のため、50mm×50mmの上記シートを1リットルのフラスコに入れガラス板で蓋をし、130℃に保ったオイルバスで3時間加熱し、ガラス板についた曇り(霞度)をヘーズメーターで測定した。この霞度の数値が10以下であれば、実用上問題ない。
【0065】
これらの結果を下記〔表1〕に示す。
【0066】
(配合) 質量部
懸濁重合PVC 90
ペーストPVC 10
エポキシ化大豆油 5
ステアリン酸亜鉛 0.2
ナトリウムA型ゼオライト(NA−Z) 3.0
過塩素酸処理ハイドロタルサイト(C−HT) 1.0
(組成式:Mg4.5Al(OH)13・(CO0.2(ClO0.8・4.5HO)
過塩素酸ナトリウム 0.1
ヘキサキス(トリデシル)・1,1,4−ブチリデン 1.0
トリス(6−第三ブチル−m−クレゾール)トリホスファイト
試験化合物(下記〔表1〕参照) 下記〔表1〕参照
【0067】


【0068】
[実施例2及び比較例2]
下記の配合によって、実施例1と同様に、シートを作成し、ゲル化性、250℃での分解時間、黄色度、ぜい化温度及び霞度を測定した。これらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0069】
(配合) 質量部
懸濁重合PVC 90
ペーストPVC 10
エポキシ化大豆油 5
二酸化チタン(ルチル型) 2
ステアリン酸亜鉛 0.2
ナトリウムA型ゼオライト(NA−Z) 3.0
ハイドロタルサイト(HT−1) 1.0
(組成式:MgAl(OH)12・CO・3HO)
過塩素酸ナトリウム 0.8
ヘキサキス(トリデシル)・1,1,4−ブチリデン 1.0
トリス(6−第三ブチル−m−クレゾール)トリホスファイト
試験化合物(下記〔表2〕参照) 下記〔表2〕参照
【0070】

【0071】
[実施例3及び比較例3]
下記の配合により、実施例1と同様に、シートを作成し、ぜい化温度及び霞度を測定した。さらに、クロム製鏡面板上の成型シートに発泡ウレタンを一定の厚さで注入し、ウレタン裏打ちシートを作成した。この裏打ちシートを120℃のオーブンに入れ、300時間及び450時間経過後の裏打ちシートの着色度をハンター比色計を用いて測定し、オーブンに入れる前の裏打ちシート(オリジナル)との色差(ΔE)を求めて、比較的低温で暴露した時の着色性とした。
【0072】
これらの結果を下記〔表3〕に示す。
【0073】
(配合) 質量部
懸濁重合PVC 90
ペーストPVC 10
エポキシ化アマニ油 5
ビスフェノールAジグリシジルエーテル 3
ステアリン酸亜鉛 0.3
過塩素酸処理ハイドロタルサイト(C−HT) 1.0
2,2’−メチレンビス(2−第三ブチル−5−メチル 0.5
フェノール)・オクチルホスファイト
テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4− 0.2
ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート
過塩素酸アンモニウム 0.1
試験化合物(下記〔表3〕参照) 下記〔表3〕参照
【0074】


【0075】
[実施例4及び比較例4]
下記の配合により、カレンダー加工機にて、160℃で厚さ0.7mmのロール上げシートを作成し、該ロール上げシートを用いて、プレス加工機にて、170℃、5分で厚さ1mmの張り合わせシートを作成した。上記ロール上げシートを、200℃のギヤーオーブン中に入れて黒化(褐色化)時間(熱安定性)を測定し、また、上記プレスシートを用い、実施例1と同様に、黄色度、ぜい化温度及び霞度を測定した。これらの結果を下記〔表4〕に示す。
【0076】
(配合) 質量部
懸濁重合PVC 90
ペーストPVC 10
エポキシ化アマニ油 5
ビスフェノールAジグリシジルエーテル 3
ステアリン酸酸亜鉛 0.3
ハイドロタルサイト(HT−2) 1.0
(組成式:MgAl(OH)12・CO
NaAゼオライト 2.0
テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4− 0.2
ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート
テトラ(C12〜15混合アルキル)−4,4’− 1.0
イソプロピリデンジフェニルジホスファイト
過塩素酸アンモニウム 0.1
ジベンゾイルメタン 0.1
試験化合物(下記〔表4〕参照) 下記〔表4〕参照
【0077】

【0078】
上記表1〜4から、以下のことが明らかである。
塩化ビニル樹脂にトリメリット酸エステル系可塑剤を単独で含有させた場合には、耐フォギング性には優れるものの、耐寒性が全く不十分である(比較例1−1、2−1、3−1及び4−1)。また、トリメリット酸エステル系可塑剤とフタル酸エステル系可塑剤を質量比50/50で組み合わせて使用した場合には、耐寒性は改善されるものの、耐フォギング性が低下する(比較例1−2)。また、トリメリット酸エステル系可塑剤に少量(質量比92/8)のアジピン酸エステル系可塑剤を組み合わせて使用した場合には、耐寒性は改善されるものの、耐フォギング性が低下し(比較例1−3)、フタル酸エステル系可塑剤とセバチン酸エステル系可塑剤とを質量比83/17で組み合わせて使用した場合には、耐寒性は優れるものの、耐フォギング性に劣る(比較例1−4)。さらに、トリメリット酸エステル系可塑剤とセバチン酸エステル系可塑剤とを質量比50/50で組み合わせた場合には、耐寒性の向上は見られるが、耐フォギング性が著しく低下する(比較例1−5、2−2、3−2及び4−2)。
【0079】
これに対し、塩化ビニル系樹脂に、トリメリット酸エステル系可塑剤とセバチン酸エステル系可塑剤とを特定の質量比(75/25、83/17、85/15、92/8)で組み合わせて含有させた場合には、耐寒性及び耐フォギング性が共に優れた性能を示し、ゲル化性、熱安定性、耐老化性等も良好である(実施例1〜4)。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の車輛用塩化ビニル系樹脂組成物は、熱安定性、耐熱老化性、耐寒性及び耐フォギング性に優れ、自動車内装用のカバーリング材料等の車輛用途に好適に使用することができる。また、本発明の車輛用塩化ビニル系樹脂組成物は、ゲル化性、脱型性及び金型汚染性等の成型性に優れるため、粉体成型加工に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100質量部に、(イ)トリメリット酸エステル系可塑剤の少なくとも一種及び(ロ)セバチン酸エステル系可塑剤の少なくとも一種を、質量比〔(イ)成分/(ロ)成分〕で99/1〜60/40の比率で且つ(イ)成分及び(ロ)成分の総量で5〜200質量部含有させてなる車輛用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
(イ)トリメリット酸エステル系可塑剤が、炭素原子数7〜10の単独あるいは混合アルコールに由来するエステル化合物であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の車輌用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
(ロ)セバチン酸エステル系可塑剤が、炭素原子数8〜10の単独あるいは混合アルコールに由来するエステル化合物であることを特徴とする請求の範囲第1又は2項記載の車輌用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
さらに過塩素酸塩類0.001〜5質量部を含有させてなる請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の車輌用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
粉体成型加工に使用されることを特徴とする請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載の車輌用塩化ビニル系樹脂組成物。

【国際公開番号】WO2005/033197
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514378(P2005−514378)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013115
【国際出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】