説明

車輌用情報提供システム

【目的】 車輌情報を確実かつ正確に車輌ディーラ等の連絡先へ送信することのできる車輌用情報提供システムを提供する。
【構成】 この発明の車輌量情報提供システムは車輌に関する車輌情報を二次元バーコードに変換するエンコーダと、前記二次元バーコードを表示する表示装置と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用情報提供システムのひとつとしてナビゲーションシステムがある。ナビゲーションシステムはこれが取り付けられた車輌の位置を特定し、これをディスプレイ上に表示するとともに、指定した目的地までの経路を案内する。
かかるナビゲーションシステムに対して目的地等をバーコード入力する方法が提案されている(特許文献1等)。
他方、車輌の故障を自動的に検出してその故障内容を予め登録された所定の連絡先へ通知する車輌故障連絡システムが提案されている(特許文献2)。この車輌故障連絡システムでは携帯電話機により電話回線を介して故障内容が音声案内にて伝えられる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−3−9403号公報
【特許文献2】特開2000―67347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、車輌用のナビゲーションシステムの普及率が向上するとともに、これを使用した新たなサービスの提供が求められている。
そこで、本発明者は既述の特許文献2で開示されている車輌故障連絡システムと当該ナビゲーションシステムとの統合について検討を行ってきた。
ナビゲーションシステムをインターネットに接続する技術は提案されているが、全てのナビゲーションシステムがインターネット接続されているわけではないので、緊急を要する車輌故障連絡システムに適用するには、現在のところ、汎用的とはいえない。
【0005】
特許文献2に開示される車輌故障連絡システムでは、携帯電話機を用いる連絡方式が採用されているので、昨今の携帯電話機の普及率に鑑みれば、汎用性の面で問題はない。
しかしながら、特許文献2の連絡システムにおいては故障内容が音声情報として連絡されるので、その情報量が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく検討を重ねてきたところ、撮影機能付きの携帯電話の広い普及に着目し、故障の内容をナビゲーションシステムの表示装置に表示させ、それを携帯電話のカメラで撮影して車輌ディーラ、修理工場、JAF、ヘルプセンター等の連絡先へ送信すれば、充分な情報量を瞬時に提供できることに気がついた。さらに、故障内容を二次元バーコード化しておけば、携帯電話での撮影が容易になり、緊急事態においても故障内容を正確に連絡先へ送信可能となる。
【0007】
この発明は、かかる発明者の着想に基づき、かつこれを敷衍して完成されたものであり、次の構成を採用する。即ち、
車輌に関する車輌情報を二次元バーコードに変換するエンコーダと、前記二次元バーコードを表示する表示装置と、を備えてなる車輌用情報提供システム。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明の情報提供装置によれば、故障内容等を含んだ車輌情報が二次元バーコード化されて表示装置に表示される。車輌情報を二次元バーコード化表示することにより、携帯電話機のカメラでの撮影が容易になる。これにより、車輌情報をより確実にかつ正確に車輌ディーラ等の連絡先へ送信することができる。
これに対し、車輌情報を文字情報として表示装置に表示させることも考えられるが、全ての文字が正確に読み取れるように撮影するには撮影技術を要することとなるので、汎用性の点で問題が生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の各要素について詳細に説明する。
車輌とは、この発明の情報提供システムが取り付けられる対象をいう。四輪自動車の他、二輪自動車等も対象となる。
車輌情報には、車輌自体の状態に関する情報の他、ナビゲーションシステムから得られる情報が含まれる。前者においては、車輌自体若しくはその付属品の故障内容に関する情報(ダイアグ情報)が含まれる。他方、ナビゲーションシステムから得られる情報には、車輌の位置情報の他、走行履歴に関する情報や周囲の交通状態に関する情報などが含まれる。
【0010】
車輌自体の状態を診断する診断部は車輌の各部の状態(故障内容)を診断し、その結果をダイアグ情報として出力することができる。
診断を実行するタイミングは、何らかの指令コマンドを受信したときに行う他、予めプログラムされた所定のタイミングでこれを行うこともできる。診断の結果、異常が見つかったときにその内容を二次元バーコード化して表示する。診断の結果は、その正異常にかかわらず、継続的にメモリ装置に保存しておくことが好ましい。正常な情報と異常な情報とを比較することにより、故障対象をより特定し易くなるからである。
【0011】
連絡先特定部は上記診断の結果及び/又は位置情報に基づき、連絡先を特定する。連絡先としてメモリ装置には、例えば車輌の車輌ディーラ、一般修理工場、JAFの各支店のアドレスが登録されている。また、診断の結果(故障内容)について対応可能か否かの情報が付加されている。従って連絡先特定部は車輌の位置情報から当該車輌に近い連絡先を、その近い順に、複数ピックアップし、さらに連絡先において診断の結果(故障内容)に対応可能か否かをチェックする。
【0012】
二次元バーコードとは対象となる情報をX方向とY方向とにコード化したものをいい、二次元シンボルと称されることもある。二次元バーコードにはQRコード、PDF417コード、Maxiコードなどを採用することができる。これら二次元バーコードを用いることにより、大容量の情報を小面積で表示可能となる。また、低い解像度のスキャナによっても読み取りが可能である。
従って、ナビゲーションシステムのディスプレイ等の制限された面積の表示部においても充分な情報を表示可能となる。また、このように表示された二次元バーコードは高い読み取り精度を要求しないので、一般ユーザが写真機能付き携帯電話機を用いて簡単に二次元バーコードを読み取りこれを連絡先へ送信可能となる。換言すれば、車輌情報を簡易かつ正確に連絡先へ送信可能となる。
【0013】
以下、実施例を参照しながらこの発明を更に詳細に説明する。
図1はこの発明の情報提供装置の実施例としてのナビゲーションシステム1の構成を示すブロック図である。
制御部3は専用のCPUからなり、この制御部3にバスラインを通じて後述する各種の装置が接続されている。
位置特定部4は、ナビゲーションシステム1を搭載した車輌の現在位置を特定するものであり、GPS信号受信部、ジャイロ、地磁気センサ、その他のセンサを備えている。ディスプレイ5は地図や案内の内容を表示し、音声出力部6は音声ガイダンスを出力する。入力部7はユーザとのインターフェースを構成し、各種の入力ボタン、スティック等からなる。
診断部9は車輌及びその付属部品の正常、異常を診断し、ダイアグ情報を生成する。
エンコーダ10はダイアグ情報、位置情報、連絡先情報その他の情報を所定のルールに従い二次元バーコード化する。
連絡先特定部11は車輌の位置情報やダイアグ情報(故障内容)に応じて適当な連絡先(車輌ディーラの各支店、修理工場、JAFの各支店等)を特定する。
【0014】
メモリ装置20はハードディスクからなり、そのプログラム保存領域21には制御プログラムが保存されている。制御部3を構成するCPUはこの制御プログラムを読み出してシステム全体の制御を行う。
地図データ保存領域23はナビゲーションを行うための地図データを保存する。地図データには道路情報、施設情報など汎用的なナビゲーションを実行するために必要なコンテンツデータが含まれている。
診断部9が車輌の制御装置や各種のセンサへアクセスしてそれから得られる信号は診断用データ保存領域24に保存されているデータに参照される。これにより、診断内容が具体化され故障内容が特定される。かかる情報がダイアグ情報となる。
このようにして得られたダイアグ情報は全てダイアグ情報保存領域に保存することが好ましい。ダイアグ情報を定期的に保存しておくことにより、正常時のダイアグ情報と異常時(故障時)のダイアグ情報とを比較することにより、その故障内容をより正確に特定できるからである。
【0015】
連絡先情報保存領域27は車輌情報の連絡先のデータ(連絡先情報)を保存する。かかる連絡先情報には、少なくとも、連絡先の所在地、連絡先で対応可能な故障内容、メールアドレスが保存されている。更には、連絡先の電話番号、対応可能時間帯などのデータを含ませることができる。
【0016】
次に、このナビゲーションシステム1の動作を図2のフローチャートに従って説明する。
ユーザが車輌に異常を感じたとき、ナビゲーションシステム1の入力装置7を操作して診断モードを起動する。診断モードが起動すると、診断部9が動作して車輌自体の状態を検査する(ステップ1)。具体的には、診断部9が車輌の各制御部やセンサへアクセスしてそれから得られる信号に基づき、診断用データ24を参照して、診断を行う。その結果はダイアグ情報としてダイアグ情報保存領域271に保存される(ステップ3)。ダイアグ情報として故障部分及び故障の程度を特定することが好ましい。
診断結果に異常が無かったときは、異常の無い旨(即ち、正常表示)を行い処理を終了する。
異常が見つかったときは、位置特定部4を用いて車輌の位置を特定し、位置情報を取得し、これを位置情報保存領域273に保存する。
【0017】
ステップ9では、情報保存領域27に保存されているダイアグ情報と位置情報とを読み出し、これらを合成してエンコーダ10により1つの第1の二次元バーコードに変換する。このとき、車輌を特定する情報、ユーザを特定する情報、時刻なども併せて二次元バーコード化することができる。
【0018】
次に、上記で特定した位置情報及びダイアグ情報を参照して連絡先を特定する(ステップ11)。この実施例では、まず、車輌の現在位置から例えば半径10km以内に所在するか否かに基づき連絡先を絞り込み、次にダイアグ情報で特定された故障内容に対応可能か否かに基づき連絡先を選択する。そして、ステップ11により選択された連絡先のリストをディスプレイ5に表示し、最終的にはユーザに指定させる(ステップ13)。
【0019】
ステップ15では指定された連絡先に関する情報を二次元バーコード化する。
ステップ9で生成された第1の二次元バーコード31とステップ15で生成された第2の二次元バーコード32は、図4に示すとおり、ディスプレイ5において別の領域に分離して表示される。
【0020】
携帯電話機の二次元バーコード読み取り機能を用いて、第2の二次元バーコード32を読み取ることにより、ステップ11で特定された連絡先のメールアドレスに接続状態となる。次に、第1の二次元バーコードを撮影し、既述のメールアドレスに送信する。第1の二次元バーコードを受信した連絡先では、当該二次元バーコードをデコードして、ダイアグ情報及び位置情報を得る。かかる情報を検証して、適切な処置を行うことができる。
上記のシステムによれば、車輌の故障を特定するための充分な知識をユーザが持っていなくても、車輌の状態を正確に車輌ディーラ等へ連絡することができる。これにより、車輌ディーラ等にとって車輌を直接診断する手間が省けることになり、修理時間の短縮となる。特に、高速道路において故障停車した車輌においては、予めその故障内容が特定されておれば、その対処方法を早急に確定することができることとなり、安全確保の点からも好ましいものとなる。
【0021】
再現性のない故障について一般的には故障後に当該故障部分を特定することは困難である。従って、車輌ディーラ等へ何度も車輌を持ち込む場合がある。かかる再現性の無い故障についても、当該故障を感じたときに即時に上記システムを作動させることにより、故障の特定をすることができ、かつこれを車輌ディーラ等へ通知できる。
【0022】
事故により車輌に損傷が生じたときは、ステップ1においてエアバックの開閉情報や、車輌速度、アクセル開度、ホイール圧力センサ等の情報が収集されて、正異常が判断される。
なお、ステップ11の連絡先の選択において、ステップ1において収集した情報から事故の程度を判断し、その程度に応じて連絡先を選択することが好ましい。連絡先として、警察、道路管理事務所なども含まれる。
【0023】
図4は他の実施例の装置を示す。図4において、図2と同一の動作のステップには同一の参照番号を付してその説明を部分的に省略する。なお、ハード構成は図1に示すものを使用することができる。
図4においては、ステップ3で得られたダイアグ情報の全てを、正常であるか異常であるかにかかわらず、例えばテキスト情報としてダイアグ情報保存領域271に保存する(ステップ4)。車輌が正常運行されているときのダイアグ情報を保存しておくことにより、異常が発見された際のダイアグ情報とこれとを比較することにより、異常時の特異点を容易に抽出できる。よって、故障内容を迅速かつ的確に特定可能となって、修理作業の効率が向上する。
【0024】
図5は他の実施例の情報提供装置の動作を示すフローチャートである。なお、ハード構成は図1に示すものを使用することができる。
ナビゲーションシステムの機能を用い、ステップ31では車輌の位置情報を取得し、ステップ32においてVICS機能を有すものにおいては経路案内する道路の渋滞情報を取得し、目的地の到着予測時間を取得する(ステップ33)。これら各種車輌情報を合成して1つの二次元バーコードを生成する(ステップ35)。
次に、これら車輌情報を送信したい相手を特定し(ステップ37)、その相手(連絡先)のアドレスを二次元バーコード化する(ステップ39)。
ステップ41では、ステップ35で生成された第3の二次元バーコードとステップ39で生成された第4の二次元バーコードとをディスプレイ5の別の領域に分離して表示する。
【0025】
ユーザは携帯電話機の二次元バーコード読み取り機能を用いて、第4の二次元バーコードを読み取ることにより、ステップ37で特定された連絡先のメールアドレスに接続状態となる。次に、第3の二次元バーコードを撮影し、既述のメールアドレスに送信する。第3の二次元バーコードを受信した連絡先では、当該二次元バーコードをデコードして、車輌の現在位置と到着予想時間を知ることができる。
なお、この実施例では、渋滞情報も併せて送信されているので、遅刻の理由も併せて知ることができる。
【0026】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1はこの発明の実施例の情報提供装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は同じく情報提供装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は二次元バーコードの表示例を示す模式図である。
【図4】図4は他の実施例の情報提供装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は他の実施例の情報提供装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1 ナビゲーションシステム
3 制御部
4 位置特定部
5 ディスプレイ
6 音声出力部
7 入力部
8 通信インターフェース
9 診断部
10 エンコーダ
11 連絡先特定部
20 メモリ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に関する車輌情報を二次元バーコードに変換するエンコーダと、
前記二次元バーコードを表示する表示装置と、を備えてなる車輌用情報提供システム。
【請求項2】
前記車輌情報は、前記車輌の位置に関する位置情報及び前記車輌自体の状態に関するダイアグ情報を含んでいる、ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用情報提供システム。
【請求項3】
前記車輌自体の状態を診断して前記ダイアグ情報を生成する診断部と、
該診断部の診断結果及び/又は前記位置情報に基づき連絡先を特定する連絡先特定部と、が更に備えられ、
前記エンコーダは前記連絡先特定部により特定された連絡先の情報を二次元バーコードに変換し、前記表示装置は該二次元バーコードを表示する、ことを特徴とする請求項2に記載の車輌用情報提供システム。
【請求項4】
前記診断部は前記車輌自体の状態を所定のタイミングで診断し、
前記車輌自体が正常なときはそのダイアグ情報を保存し、前記車輌自体が異常となったときはそのダイアグ情報を前記エンコーダにより二次元バーコードに変換して、該二次元バーコードを前記表示装置により表示する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車輌用情報提供システム。
【請求項5】
前記車輌情報に関する二次元バーコートと前記連絡先情報に関する二次元バーコードとは分離して前記表示装置に表示される、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車輌用情報提供システム。
【請求項6】
前記車輌情報にはダイアグ情報と位置情報とが含まれており、これらの情報が合成されて1つの二次元バーコードとして表示される、ことを特徴とする請求項5に記載の車輌用情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−1486(P2007−1486A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185513(P2005−185513)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】