説明

車輌用灯具

【課題】 太陽光に含まれる赤外光の発光ダイオードへの集光を防止する。
【解決手段】 光源として用いられた発光ダイオード15bと、発光ダイオードから出射された光を反射する反射面17aを有し光を透過する材料によって形成されたリフレクター17とを設け、リフレクターの反射面に可視光を反射し赤外光を透過する赤外線透過膜31を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用灯具に関する。詳しくは、リフレクターに可視光を反射し赤外光を透過する赤外線透過膜を形成して太陽光に含まれる赤外光の発光ダイオードへの集光を防止する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具には、ランプボデイと該ランプボデイの開口を閉塞するアウターカバーとによって構成された灯具外筐の内部に、光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられたランプユニットが配置されたタイプがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなランプユニットは、光源(発光ダイオード)、リフレクター、シェード及び投影レンズ等の各部又はその一部によって構成されている。
【0004】
上記のような車輌用灯具にあっては、例えば、発光ダイオードから出射された光がリフレクターによって投影レンズへ向けて反射され、一部がシェードによって遮蔽された状態で投影レンズ及びアウターカバーを透過されて外部へ照射される。
【0005】
【特許文献1】特開2007−207527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車輌の走行中や停車中には太陽光が車輌用灯具の内部に入射される可能性がある。例えば、走行中や停車中に偶然に車輌用灯具の光軸と太陽の光線の進行方向が一致した状態になると、太陽光が発光ダイオードから出射された光の経路と反対の経路を通って車輌用灯具の内部に入射され、発光ダイオードの出射点に集光されるおそれがある。
【0007】
このような太陽光の集光が生じてしまうと、発光ダイオードの損傷や破壊等と言った不具合を生じるおそれがある。
【0008】
太陽光に含まれる赤外光は、熱線としての性質を有し加熱作用が高いため、特に、車輌用灯具の内部への赤外光の入射を抑制する必要がある。
【0009】
そこで、本発明車輌用灯具は、太陽光に含まれる赤外光の発光ダイオードへの集光を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車輌用灯具は、上記した課題を解決するために、光源として用いられた発光ダイオードと、前記発光ダイオードから出射された光を反射する反射面を有し光を透過する材料によって形成されたリフレクターとを設け、前記リフレクターの反射面に可視光を反射し赤外光を透過する赤外線透過膜を形成したものである。
【0011】
従って、車輌用灯具にあっては、太陽光に含まれる赤外光がリフレクターの反射面に形成された赤外線透過膜及びリフレクターを透過される。
【発明の効果】
【0012】
本発明車輌用灯具は、光源として用いられた発光ダイオードと、前記発光ダイオードから出射された光を反射する反射面を有し光を透過する材料によって形成されたリフレクターとを備え、前記リフレクターの反射面に可視光を反射し赤外光を透過する赤外線透過膜を形成したことを特徴とする。
【0013】
従って、太陽光に含まれる赤外光が赤外線透過膜を透過され発光ダイオードへの集光を防止することができ、発光ダイオードの損傷や破壊等と言った不具合の発生を防止することができる。
【0014】
請求項2に記載した発明にあっては、一方に開口されたランプボデイと該ランプボデイに取り付けられ前記開口を閉塞するアウターカバーとによって構成された灯具外筐を設け、前記灯具外筐の内部に配置されると共に前記発光ダイオードと前記リフレクターをそれぞれ有する複数のランプユニットを設け、前記複数のランプユニットのうち照射領域の最も狭いランプユニットにおける前記リフレクターの反射面に前記赤外線透過膜を形成している。
【0015】
従って、照射領域が最も狭く最も集光性の高いランプユニットに対して赤外線透過膜を形成することにより、製造コストの高騰を来たすことなく赤外光の集光の防止又は抑制を最も効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明車輌用灯具を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
以下に示した最良の形態は、本発明車輌用灯具を車輌用前照灯に適用したものである。尚、本発明車輌用灯具の適用範囲は車輌用前照灯に限られることはなく、本発明は、光源として発光ダイオードが用いられた各種の車輌用灯具に適用することができる。
【0018】
車輌用灯具(車輌用前照灯)1は、車体の前端部における左右両端部にそれぞれ取り付けられて配置されている。
【0019】
車輌用灯具1は、図1及び図2に示すように、例えば、前方に開口されたランプボデイ2と該ランプボデイ2の前端部に取り付けられたアウターカバー3とによって構成された灯具外筐4の内部が灯室5として形成され、該灯室5に第1のランプユニット6と第2のランプユニット7と第3のランプユニット8が配置されて構成されている。
【0020】
灯室5には保持部材9が光軸調整機構10を介して水平方向及び垂直方向に傾動自在に配置されている。
【0021】
保持部材9は熱伝導性の高い金属材料によって形成され、前後方向を向くベース部11と、該ベース部11の上下方向における中央部から前方へ突出された取付突部12と、ベース部11の下端寄りの位置から前方へ突出された配置用突部13とを有している。
【0022】
ベース部11の下端部にはリフレクター14が取り付けられている。リフレクター14は光を透過する材料によって形成され、ベース部11から下方へ行くに従って前方へ変位する緩やかな曲面状に形成され、内面が反射面14aとして形成されている。
【0023】
ベース部11の上下両端部には被支持部11a、11a、11aが設けられている。ベース部11の後面には後方へ突出された放熱フィン11b、11b、・・・が設けられている。
【0024】
取付突部12の上面には第1の発光ユニット15と第2の発光ユニット16が左右に離隔して配置されている。
【0025】
第1の発光ユニット15は回路基板15aと該回路基板15a上に搭載され光源として機能する発光ダイオード15bと該発光ダイオード15bを閉塞して保護する保護カバー15cとを有している。
【0026】
第2の発光ユニット16は回路基板16aと該回路基板16a上に搭載され光源として機能する発光ダイオード16bと該発光ダイオード16bを閉塞して保護する保護カバー16cとを有している。
【0027】
取付突部12の上面における後端部には左右に離隔してリフレクター17、18が取り付けられている。リフレクター17、18はそれぞれ光を透過する材料によって形成され、内面が反射面17a、18aとして形成されている。
【0028】
配置用突部13の下面には第3の発光ユニット19、19が左右に離隔して配置されている。
【0029】
第3の発光ユニット19は回路基板19aと該回路基板19a上に搭載され光源として機能する発光ダイオード19bと該発光ダイオード19bを閉塞して保護する保護カバー19cとを有している。
【0030】
ベース部11に設けられた放熱フィン11b、11b、・・・の後方には放熱用ファン20が配置されている。
【0031】
取付突部12の前面には連結部材21、22が左右に離隔して取り付けられている。連結部材21、22はそれぞれ後半部がシェード21a、22aとして設けられ、前半部がシェード21a、22aからそれぞれ前方へ突出された保持突部21b、22bとして設けられている。
【0032】
連結部材21、22の保持突部21b、22bの前端部にはそれぞれ投影レンズ23、24が取り付けられて保持されている。
【0033】
車輌用灯具1において、上記した第1の発光ユニット15、リフレクター17、連結部材21及び投影レンズ23によって第1のランプユニット6が構成され、上記した第2の発光ユニット16、リフレクター18、連結部材22及び投影レンズ24によって第2のランプユニット7が構成される。
【0034】
また、上記した第3の発光ユニット19、19及びリフレクター14によって第3のランプユニット8が構成される。
【0035】
光軸調整機構10はエイミングスクリュー25、25とレベリングアクチュエーター26を有している。
【0036】
エイミングスクリュー25、25は灯室5の上部において左右に離隔して位置され、回転操作部27、27と該回転操作部27、27からそれぞれ前方へ突出された軸部28、28とから成り、該軸部28、28の前端部が螺軸部28a、28aとして設けられている。
【0037】
エイミングスクリュー25、25は回転操作部27、27がそれぞれランプボデイ2の後端部に回転自在に支持され、螺軸部28a、28aがそれぞれ保持部材9の上側の被支持部11a、11aに螺合されている。
【0038】
レベリングアクチュエーター26は駆動部29と該駆動部29から前方へ突出された軸部30とから成り、該軸部30の前端部が螺軸部30aとして設けられている。レベリングアクチュエーター26は螺軸部30aが保持部材9の下側の被支持部11aに螺合されている。
【0039】
車輌用灯具1において、回転操作部27が図示しないドライバー等の治具によって操作されて被支持部11aに連結されたエイミングスクリュー25が回転されると、その回転方向に応じた方向へ他の被支持部11a、11aを支点として保持部材9が傾動され、第1のランプユニット6、第2のランプユニット7及び第3のランプユニット8の光軸調整(エイミング調整)が行われる。
【0040】
また、駆動部29の駆動力によって被支持部11aに連結された軸部30が回転されると、その回転方向に応じた方向へ他の被支持部11a、11aを支点として保持部材9が傾動され、第1のランプユニット6、第2のランプユニット7及び第3のランプユニット8の光軸調整(レベリング調整)が行われる。
【0041】
リフレクター14、17、18の反射面14a、17a、18aにはそれぞれ赤外線透過膜31、32、33が形成されている。赤外線透過膜31、32、33はそれぞれ可視光を反射し赤外光を透過する機能を有している。従って、第1の発光ユニット15の発光ダイオード15b、第2の発光ユニット16の発光ダイオード16b及び第3の発光ユニット19の発光ダイオード19bから出射された光に含まれる可視光は赤外線透過膜31、32、33で反射されるが、太陽光に含まれる赤外光は赤外線透過膜31、32、33を透過される。
【0042】
以上のように構成された車輌用灯具1において、第1のランプユニット6の発光ダイオード15bから光が出射されると、出射された光はリフレクター17の反射面17a(赤外線透過膜32)で反射され投影レンズ23及びアウターカバー3を透過されて前方へ照射される。第2のランプユニット7の発光ダイオード16bから光が出射されると、出射された光はリフレクター18の反射面18a(赤外線透過膜33)で反射され投影レンズ24及びアウターカバー3を透過されて前方へ照射される。このとき発光ダイオード15b、16bから出射された光は、それぞれ一部が連結部材21、22のシェード21a、22aで遮蔽される。
【0043】
また、第3のランプユニット8の発光ダイオード19b、19bから光が出射されると、出射された光はリフレクター14の反射面14a(赤外線透過膜31)で反射されアウターカバー3を透過されて前方へ照射される。
【0044】
上記のように第1のランプユニット6、第2のランプユニット7及び第3のランプユニット8から出射された光は所定の配光パターンで前方へ照射され、図2に示すように、第1のランプユニット6から出射された光の照射領域が最も狭くされている。従って、第1のランプユニット6が最も集光性の高いランプユニットとして設けられている。
【0045】
第1のランプユニット6、第2のランプユニット7及び第3のランプユニット8から出射された光の照射領域は、図2に示すように、少なくとも一部が重なり合う領域とされており、第1のランプユニット6の照射領域6Aと第2のランプユニット7の照射領域7Aと第3のランプユニット8の照射領域8Aによって合成された配光パターンが形成される。
【0046】
上記した車輌用灯具1を備えた車輌の走行中や停車中には太陽光が車輌用灯具1の内部に入射される可能性がある。例えば、走行中や停車中に偶然に車輌用灯具1の光軸と太陽の光線の進行方向が一致した状態になると、太陽光が発光ダイオード15b、16b、19bから出射された光の経路と反対の経路を通って車輌用灯具1の内部に入射される可能性がある(図3及び図4参照)。
【0047】
このとき車輌用灯具1の内部に入射された太陽光に含まれる赤外光Aは、それぞれリフレクター14、17、18に形成された赤外線透過膜31、32、33及び光を透過する材料によって形成されたリフレクター14、17、18を透過され、発光ダイオード15b、16b、19bに集光されない。従って、太陽光に含まれる赤外光A以外の光の成分Bは赤外線透過膜31、32、33で反射されて発光ダイオード15b、16b、19bに集光される可能性があるが、赤外光A以外の光の成分Bは熱線としての性質を有しないか又は熱線としての作用が低いため、光の成分Bは発光ダイオード15b、16b、19bに悪影響を及ぼさない。
【0048】
以上に記載した通り、車輌用灯具1にあっては、リフレクター14、17、18の反射面14a、17a、18aにそれぞれ赤外線透過膜31、32、33を形成しているため、太陽光に含まれる赤外光が赤外線透過膜31、32、33を透過され発光ダイオード15b、16b、19bへの集光を防止することができる。従って、発光ダイオード15b、16b、19bの損傷や破壊等と言った不具合の発生を防止することができる。
【0049】
尚、複数のランプユニットが配置されて構成された所謂コンビネーションランプにおいて、集光型のランプユニットと拡散型のランプユニットが配置されている場合には、集光型のランプユニットのリフレクターに対してのみ赤外線透過膜を形成し発光ダイオードへの赤外光の集光の防止を図ればよい。
【0050】
また、車輌用灯具1においては、第1のランプユニット6のリフレクター17のみに対して赤外線透過膜31を形成してもよい。
【0051】
このように照射領域が最も狭く最も集光性の高い第1のランプユニット6に対してのみ赤外線透過膜31を形成することにより、製造コストの高騰を来たすことなく赤外光の集光の防止又は抑制を最も効率的に行うことができる。
【0052】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図2乃至図4と共に本発明車輌用灯具の最良の形態を示すものであり、本図は、車輌用灯具の概略縦断面図である。
【図2】車輌用灯具の概略正面図である。
【図3】投影レンズを有するランプユニットのリフレクターに太陽光が入射された状態を示す概念図である。
【図4】投影レンズを有しないランプユニットのリフレクターに太陽光が入射された状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0054】
1…車輌用灯具、2…ランプボデイ、3…アウターカバー、4…灯具外筐、6…第1のランプユニット、7…第2のランプユニット、8…第3のランプユニット、14…リフレクター、14a…反射面、15b…発光ダイオード、16b…発光ダイオード、17…リフレクター、17a…反射面、18…リフレクター、18a…反射面、19b…発光ダイオード、31…赤外線透過膜、32…赤外線透過膜、33…赤外線透過膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源として用いられた発光ダイオードと、
前記発光ダイオードから出射された光を反射する反射面を有し光を透過する材料によって形成されたリフレクターとを備え、
前記リフレクターの反射面に可視光を反射し赤外光を透過する赤外線透過膜を形成した
ことを特徴とする車輌用灯具。
【請求項2】
一方に開口されたランプボデイと該ランプボデイに取り付けられ前記開口を閉塞するアウターカバーとによって構成された灯具外筐を設け、
前記灯具外筐の内部に配置されると共に前記発光ダイオードと前記リフレクターをそれぞれ有する複数のランプユニットを設け、
前記複数のランプユニットのうち照射領域の最も狭いランプユニットにおける前記リフレクターの反射面に前記赤外線透過膜を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−262768(P2010−262768A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110935(P2009−110935)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】