説明

車輌積付け方法およびその装置

【課題】フォークリフトと人力のみを用いて、3台の車輌を海上コンテナ内に簡単に積付けることができるようにする。
【解決手段】3台のラック機構5,6,7上に海上コンテナ2外で車輌13を搭載,固縛する。海上コンテナ2内に第1スペーサ機構3を固定した状態で、フォークリフトを用いて第1ラック機構5を海上コンテナ2内に搬入するとともに、車輌13が斜めに傾斜した状態とする。そして、この第1ラック機構5を、人力で固定位置まで移動させて固定する。第2スペーサ機構を海上コンテナ2内に固定した後、第2ラック機構6も第1ラック機構5と同様の方法により海上コンテナ2内に固定する。最後に、第3ラック機構7をフォークリフトを用いて海上コンテナ2内に搬入し、車輌13を水平状態にしたままで、第3ラック機構7を海上コンテナ2内に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上コンテナ内に乗用車等の完成車を積付けて輸送する際に用いられる車輌積付け方法およびその装置に係り、特にフォークリフトと人力のみで簡単に積付けることができる車輌積付け方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、海上コンテナ内に乗用車等の完成車を積付けて輸送できるようにした車輌積付け装置は一般的に知られている。
【特許文献1】実公平4−1118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の車輌積付け装置においては、車輌を自走させてコンテナ内に積付ける方法が採られているため、車輌を積付ける際に、車輌積付け装置をセットする作業員とは別に、特別に訓練された専用のドライバを要すると云う問題があるとともに、コンテナ内でのドライバの乗降の際に、車輌とコンテナあるいは車輌とドライバとの接触による車輌側のダメージが発生し易いと云う問題もある。また、特別に加工された専用のコンテナを要し、使い勝手が悪いと云う問題もある。
【0004】
本発明は、かかる現況に鑑みなされたもので、コンテナに加工を施すことなく車輌を積付けることができるとともに、車輌積付け時に専用のドライバを手配する必要もなく、また装置構成を簡素化して軽量化およびコストダウンを図ることができる車輌積付け方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の他の目的は、既存の殆どすべての乗用車を、無理なく3台積付けることができるようにすることにある。
【0006】
本発明の他の目的は、ラック機構を複数種類製造する必要がなく、保管しておいたラック機構のうちで、ある特定の構造のラック機構が不足したために車輌を積付けることができないと云った不具合がないようにすることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、第3ラック機構の構造を簡素化してコストダウンを図ることができるようにすることにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、各単位レール機構の構造を簡素化して軽量化およびコストダウンを図り、しかも人力でも容易に取扱えるようにして、レール機構を用いることによる利点を最大限に引出すことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明は、長手方向に連続して配置される複数の単位レール機構で構成され、コンテナドア側の端部からコンテナ底面上の途中位置まで配置されるレール機構と;コンテナ外において車輌がほぼ水平状態で搭載されて固縛される第1,第2および第3の3台のラック機構と;第1ラック機構のフロント側のコンテナ底面上および第1,第2ラック機構の間のコンテナ底面上にそれぞれ固定されて各ラック機構のコンテナ内における位置決めを行なう第1および第2の2台のスペーサ機構と;を設け、第1スペーサ機構をコンテナフロント側の端部に配置した後、車輌が搭載されている第1ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナドア側の端部のレール機構上に載置するとともに、第1ラック機構のコンテナドア側の端部を、フォークリフトで持ち上げて車輌が斜めになった状態とし、次いでこの第1ラック機構を、レール機構上を移動させるとともに、コンテナ底面上を移動させて、先端が第1スペーサ機構に接触した位置でコンテナ内に固定し、次いでレール機構の一部を撤去するとともに、先端が第1ラック機構に接触した位置で第2スペーサ機構をコンテナ底面上に配置し、次いで車輌が搭載されている第2ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナドア側の端部のレール機構上に載置するとともに、第2ラック機構のコンテナドア側の端部を、フォークリフトで持ち上げて車輌が斜めになった状態とし、次いでこの第2ラック機構を、レール機構上を移動させるとともに、コンテナ底面上を移動させて、先端が第2スペーサ機構に接触した位置でコンテナ内に固定し、次いでレール機構をすべて撤去するとともに、車輌が搭載されている第3ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナ内に搬入し、車輌がほぼ水平となったままの状態で、第3ラック機構をコンテナ内に固定するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明はまた、第1および第2の各ラック機構には、車輌をコンテナドア側に向けて固縛するとともに、第3ラック機構には、車輌をコンテナフロント側に向けて固縛するようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明はまた、長手方向に連続して配置される複数の単位レール機構で構成され、コンテナドア側の端部からコンテナ底面上の途中位置まで配置されるレール機構と;コンテナ外において車輌がほぼ水平状態で搭載されて固縛される第1,第2および第3の3台のラック機構と;第1ラック機構のフロント側のコンテナ底面上および第1,第2ラック機構の間のコンテナ底面上にそれぞれ固定されて各ラック機構のコンテナ内における位置決めを行なう第1およひ第2の2台のスペーサ機構と;を設け、前記3台のラック機構のうち、少なくとも第1ラック機構および第2ラック機構を、上面側に車輌が固縛されるとともに、コンテナへの搬入先端側を支点として、車輌がほぼ水平の状態から斜めになった状態まで揺動可能なラック本体と;ラック本体両側の長手方向中間部に揺動可能に連結され、ラック本体を斜めに傾斜させた際に下端部が接地する一対のアームと;各アームの下端近傍位置に揺動可能に連結され、ラック本体を斜めに傾斜させた際に揺動先端部がラック本体の揺動先端部に着脱可能に連結固定される一対の孫アームと;で構成するようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明はまた、第3ラック機構を、第1ラック機構および第2ラック機構と同一構造となるようにしたことを特徴とする。
【0013】
本発明はまた、第3ラック機構には、搭載された車輌を斜めに傾斜させる機能を持たせないようにしたことを特徴とする。
【0014】
本発明はさらに、各単位レール機構を、ラック機構を案内する溝形レール状で別体構造の2条のレール本体と、各レール本体の外側に取付けられコンテナ側壁に接触させることによりレール本体の位置決めを行なう把手兼用の位置決め部材とで構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、長手方向に連続して配置される複数の単位レール機構で構成され、コンテナドア側の端部からコンテナ底面上の途中位置まで配置されるレール機構と;コンテナ外において車輌がほぼ水平状態で搭載されて固縛される第1,第2および第3の3台のラック機構と;第1ラック機構のフロント側のコンテナ底面上および第1,第2ラック機構の間のコンテナ底面上にそれぞれ固定されて各ラック機構のコンテナ内における位置決めを行なう第1および第2の2台のスペーサ機構と;を設け、第1スペーサ機構をコンテナフロント側の端部に配置した後、車輌が搭載されている第1ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナドア側の端部のレール機構上に載置するとともに、第1ラック機構のコンテナドア側の端部を、フォークリフトで持ち上げて車輌が斜めになった状態とし、次いでこの第1ラック機構を、レール機構上を移動させるとともに、コンテナ底面上を移動させて、先端が第1スペーサ機構に接触した位置でコンテナ内に固定し、次いでレール機構の一部を撤去するとともに、先端が第1ラック機構に接触した位置で第2スペーサ機構をコンテナ底面上に配置し、次いで車輌が搭載されている第2ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナドア側の端部のレール機構上に載置するとともに、第2ラック機構のコンテナドア側の端部を、フォークリフトで持ち上げて車輌が斜めになった状態とし、次いでこの第2ラック機構を、レール機構上を移動させるとともに、コンテナ底面上を移動させて、先端が第2スペーサ機構に接触した位置でコンテナ内に固定し、次いでレール機構をすべて撤去するとともに、車輌が搭載されている第3ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナ内に搬入し、車輌がほぼ水平となったままの状態で、第3ラック機構をコンテナ内に固定するようにしているので、車輌積付時に専用のドライバを手配する必要がなく、またレール機構を用いることで、第1および第2ラック機構のコンテナ内での移動が容易で、人力のみで簡単に各ラック機構を移動させることができる。しかも、第1および第2ラック機構が固定されるのはコンテナ底面上であるので、レール機構の撤去が容易である。また、車輌をコンテナに積付ける際に、車輌のドアを開閉したり、ドライバが車輌に乗降すると云った行為を伴なうことがないので、これらの行為に起因して車輌側にダメージが発生するおそれがない。
【0016】
本発明はまた、第1および第2の各ラック機構には、車輌をコンテナドア側に向けて固縛するとともに、第3ラック機構には、車輌をコンテナフロント側に向けて固縛するようにしているので、既存の殆どすべての乗用車を、無理なく3台積付けることができる。
【0017】
本発明はまた、長手方向に連続して配置される複数の単位レール機構で構成され、コンテナドア側の端部からコンテナ底面上の途中位置まで配置されるレール機構と;コンテナ外において車輌がほぼ水平状態で搭載されて固縛される第1,第2および第3の3台のラック機構と;第1ラック機構のフロント側のコンテナ底面上および第1,第2ラック機構の間のコンテナ底面上にそれぞれ固定されて各ラック機構のコンテナ内における位置決めを行なう第1およひ第2の2台のスペーサ機構と;を設け、前記3台のラック機構のうち、少なくとも第1ラック機構および第2ラック機構を、上面側に車輌が固縛されるとともに、コンテナへの搬入先端側を支点として、車輌がほぼ水平の状態から斜めになった状態まで揺動可能なラック本体と;ラック本体両側の長手方向中間部に揺動可能に連結され、ラック本体を斜めに傾斜させた際に下端部が接地する一対のアームと;各アームの下端近傍位置に揺動可能に連結され、ラック本体を斜めに傾斜させた際に揺動先端部がラック本体の揺動先端部に着脱可能に連結固定される一対の孫アームと;で構成するようにしているので、装置構成を簡素化して軽量化およびコストダウンを図ることができ、しかも簡単なラック機構でありながら、車輌を安定に支持することができる。
【0018】
本発明はまた、第3ラック機構を、第1ラック機構および第2ラック機構と同一構造となるようにしているので、ラック機構を複数種類製造する必要がなく、保管しておいたラック機構のうちで、ある特定の構造のラック機構が不足したために車輌を積付けることができないといった不具合がない。
【0019】
本発明はまた、第3ラック機構には、搭載された車輌を斜めに傾斜させる機能を持たせないようにしているので、第3ラック機構を、第1および第2ラック機構とは別に製造する必要はあるが、第3ラック機構の構造を簡素化して軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0020】
本発明はさらに、各単位レール機構を、ラック機構を案内する溝形レール状で別体構造の2条のレール本体と、各レール本体の外側に取付けられコンテナ側壁に接触させることによりレール本体の位置決めを行なう把手兼用の位置決め部材とで構成していてるので、各単位レール機構の構造を簡素化して軽量化およびコストダウンを図り、しかも人力でも容易に取扱えるようにして、レール機構を用いることによる利点を最大限に引出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る車輌積付け装置を示すもので、この車輌積付け装置1は、40フィートの海上コンテナ2の底面上に配置固定される第1スペーサ機構3,第2スペーサ機構4と、第1ラック機構5,第2ラック機構6,第3ラック機構7とを備えており、前記第1ラック機構5および第2ラック機構6は、後述するレール機構8を用いることにより、海上コンテナ2内を人力のみで容易に移動させることができるようになっている。
【0022】
前記第1スペーサ機構3および第2スペーサ機構4は、図2ないし図4に示すように海上コンテナ2の幅員とほぼ同一の長さを有する前端部材9および後端部材10と、これら両部材9,10を所定間隔で連結する2本の連結部材11とから、概略方形の枠状に形成されており、第1スペーサ機構3は、図1に示すように、海上コンテナ2底面のフロント側の端部に設置された後、図示しないラッシングベルト等を用いて、海上コンテナ2内のラッシングリング12に固縛されるようになっている。
【0023】
すなわち、海上コンテナ2底部の両側縁には、図5に示すように、フロント側の端部からドア2a側の端部まで、ほぼ等間隔で例えば各側10個ずつ,合計20個のラッシングリング12が予め設けられている。そして、前記各スペーサ機構3,4は、これら各ラッシング12にラッシングベルト等を用いて固縛されるようになっている。
【0024】
また、前記第1ラック機構5および第2ラック機構6は、図1,図6ないし図9に示すように、上面側に車輌13が搭載,固縛されるラック本体14と、ラック本体14両側の長手方向中間部に揺動可能に連結された一対のアーム15と、一対のアーム15の下端近傍位置に揺動可能に連結された一対の孫アーム16とで構成されている。
【0025】
前記ラック本体14は、図6に示すように、幅方向両側位置に、車輌13を自走方式で搭載するためのタイヤ走行路17を有しているとともに、その内側に、両側開放の角筒状をなすフォークポケット部材18を有しており、前記両タイヤ走行路17およびフォークポケット部材18の図6における左端部には、ストッパ19が設けられ、このストッパ19は、図10に示すように、前記各スペーサ機構3,4に当接して、各ラック機構5,6の海上コンテナ2内での位置決めを行なうようになっている。
【0026】
また、前記各タイヤ走行路17の図6における左端部には、タイヤ止め17aが設けられており、自走方式で搭載される車輌13の位置決めを行なうようになっている。
【0027】
また、前記各タイヤ走行路17の前後端位置および各フォークポケット部材18内側の図6における左端部位置には、合計6個のラック本体ローラ20がそれぞれ設けられており、これら各ラック本体ローラ20は、後に詳述するレール機構8を設置した状態でも、レール機構8上は転動せず、常に海上コンテナ2の底面上を転動するようになっている。
【0028】
一方、前記アーム15は、図6ないし図9に示すように、揺動上端部がラック本体14両側の長手方向中間部に枢着されているとともに、揺動下端部には、レール機構8上を転動するアームローラ21が設けられており、ラック14を傾斜させた際には、このアームローラ21と図中左端のラック本体ローラ20とを用いて、ラック機構5,6を海上コンテナ2内で移動させることができるようになっている。
【0029】
前記各アーム15の揺動下端近傍位置には、図6ないし図9に示すように、前記孫アーム16の揺動基端部が枢着されており、孫アーム16の揺動先端部は、傾斜させたラック本体14の揺動先端部に、図示しない止めピン等を介して着脱可能に連結固定されるようになっている。そしてこれにより、図1および図9に示すように、ラック機構5,6の両側部に、2個の三角形が形成された状態となり、簡単な構造であっても、大きな強度が得られるようになっている。
【0030】
以上の構成を有する両ラック機構5,6の間には、前述のように第2スペーサ機構4が配置されるが、第1ラック機構5と第2スペーサ機構4との位置決めは、図11に示すよように、アーム15の揺動下端部に第2スペーサ機構4を当接させることにより、行なわれるようになっている。
【0031】
一方、前記第3ラック機構7は、図12に示すように、所定間隔で連結した角筒状の2本のフォークポケット部材22の外側に、前輪搭載部23および後輪搭載部24をそれぞれ設けて構成されており、両フォークポケット部材22の内側前端部、両前輪搭載部23の外側前端部、および両後輪搭載部24の外側前後端部には、合計8個のラックローラ25がそれぞれ設けられている。
【0032】
前記各前輪搭載部23は、図12に示すように、枠材のみで構成されていて、搭載した車輌13の前輪の下端部が枠材内に落とし込まれるようになっており、これにより搭載された車輌13のボンネットの高さを可及的低く抑えることができるようになっている。
【0033】
以上の構成を有する第3ラック機構7は、前記第1および第2の各ラック機構5,6と異なり、搭載された車輌13を斜めに傾斜させる機能は有しておらず、その分構造の簡素化が図られている。
【0034】
また、前記レール機構8は、図13に示すように、長手方向に連続して配置される2組の単位レール機構26で構成され、海上コンテナ2のドア2a側の端部からコンテナ底面上の途中位置まで配置されるようになっており、2組の単位レール機構26を配した状態では、そのフロント側に、図13に示すように、第1スペーサ機構3および第1ラック機構5が配置される空間(レール機構8がない空間)が形成されるようになっているとともに、1組の単位レール機構26を配した状態では、そのフロント側に、図14に示すように、両スペーサ機構3,4および両ラック機構5,6が配置される空間が形成されるようになっている。また、第3ラック機構7を配置する際には、図15に示すように、すべての単位レール機構26が撤去されるようになっている。なお、これについては後に詳述する。
【0035】
前記各単位レール機構26は、図13ないし図17に示すように、前記第1および第2の各ラック機構5,6を案内する溝形レール状で別体構造の2条のレール本体27と、各レール本体27の外側に取付けられコンテナ側壁に接触させることによりレール本体27の位置決めを行なう把手兼用の門形状をなす位置決め部材28とで構成されており、人力のみで簡単に取扱うことができるようになっている。
【0036】
図18ないし図39は、前記車輌積付け装置1における車輌積付け方法を、手順に従って順次示すもので、以下これら各図を参照して、本実施の形態の作用を説明する。
【0037】
車輌13の積付けに際しては、図18(a),(b)に示すように、まず地面に置かれた各ラック機構5,6,7上に、車輌13を自走方式で搭載する。この際、第1ラック機構5および第2ラック機構6には、車輌13を後進させて搭載し、一方第3ラック機構7には、車輌13を前進させて搭載する。そして、搭載した各車輌13を、図示しないラッシング資材を用いて各ラック機構5,6,7に固縛する。
【0038】
この作業と並行して、あるいは相前後して、図19に示すように、海上コンテナ2内に2組の単位レール機構26で構成されるレール機構8を配置するとともに、第1スペーサ機構3を配置し、第1スペーサ機構3をコンテナ底面上に固定する。
【0039】
次いで、図19ないし図21に示すように、第1ラック機構5を、フォークリフト29を用いて海上コンテナ2のドア2a側の端部位置に搬入する。
【0040】
次いで、図22ないし図24に示すように、フォークリフト29のフォーク29aの先端を、第1ラック機構5のフォークポケット部材18に挿入し、この状態でフォーク29aを上昇させる。すると、ラック本体14が例えば20度程度の傾斜角度で傾斜した状態となる。そこで、図24に示すように、孫アーム16を揺動させ、その揺動先端部を、ラック本体14の揺動先端部に図示しない止めピン等を用いて連結固定する。なお、この作業は、図23に示すように、フォーク29aの先端でラック本体14の傾斜状態を支えている状態で行なわれる。
【0041】
次いで、この第1ラック機構5を、図25ないし図27に示すように、人力を用いて海上コンテナ2内を移動させ、先端が第1スペーサ機構3に当接した状態とする。そして、この第1ラック機構5を、ラッシング資材30を用いて、海上コンテナ2のラッシングリング12(図5参照)に固縛する。
【0042】
なおこの際、第1ラック機構5のアームローラ21は、コンテナ底面の途中位置まではレール機構8に案内されてレール本体27上を転動することになるが、固定位置の直前からは、ラック本体ローラ20と同様に、コンテナ底面上を転動することになる。このため、後述するレール機構8の撤去作業に支障を来すおそれが全くなく、しかも途中位置まではアームローラ21がレール本体27上を転動することになるので、第1ラック機構5の移動が極めてスムースである。
【0043】
このようにして、第1ラック機構5を海上コンテナ2の所定位置に固縛したならば、図27に示すように、レール機構8のうちの1組の単位レール機構26を撤去するとともに、第2スペーサ機構4を第1ラック機構5に当接させた位置に配置し、コンテナ底面上に固定する。より具体的には、ラッシングリング12にラッシングベルト等を用いて固縛する。
【0044】
次いで、図28ないし図30に示すように、第2ラック機構6を、フォークリフト29を用いて海上コンテナ2のドア2側の端部位置に搬入する。
【0045】
次いで、図31ないし図33に示すように、フォークリフト29のフォーク29aの先端を、第2ラック機構6のフォークポケット部材18に挿入し、この状態でフォーク29aを上昇させる。すると、ラック本体14が例えば20度程度の傾斜角度で傾斜した状態となる。そこで、図33に示すように、孫アーム16を揺動させ、その揺動先端部を、ラック本体14の揺動先端部に図示しない止めピン等を用いて連結固定する。なお、この作業は、図32に示すように、フォーク29aの先端でラック本体14の傾斜状態を支えている状態で行なわれる。
【0046】
次いで、この第2ラック機構6を、図34ないし図36に示すように、人力を用いて海上コンテナ2内を移動させ、先端が第2スペーサ機構4に当接した状態とする。そして、この第2ラック機構6を、ラッシング資材30を用いて、海上コンテナ2のラッシングリング12(図5参照)に固縛する。
【0047】
次いで、図36に示すように、残っていた1組の単位レール機構26を撤去して、海上コンテナ2内にレール機構8がない状態とし、その後図37ないし図39に示すように、フォークリフト29を用いて第3ラック機構7を海上コンテナ2内に搬入する。そして、この第3ラック機構7を、図示しないラッシング資材を用いてコンテナ底面上に固定する。
【0048】
しかして、各ラック機構5,6,7には、海上コンテナ2外において、車輌13を自走方式で搭載して固縛するようにしているので、特別なドライバを必要としない。また、第1および第2各ラック機構5,6は、海上コンテナ2内への搬入を行なったフォークリフト29を用いて、海上コンテナ2内において斜めに傾斜させるようにしているので、海上コンテナ2内のスペースを有効に利用して車輌13を積付けることができる。
【0049】
すなわち、海上コンテナ2は、ドア2aで閉止される開口部分の上端縁が、内部の天井部分よりも一段低くなっている。このため、海上コンテナ2外で各ラック機構5,6を傾斜させて海上コンテナ2内に搬入する方法を採ると、搭載されている車輌13が開口部の上端縁に衝突するおそれがあるが、海上コンテナ2内で傾斜させると、このような不具合がなく、内部の天井部分までのスペースを有効に利用して車輌13を積付けることができる。
【0050】
また、レール機構8は、第1および第2の各ラック機構5,6を海上コンテナ2の途中位置までは案内するが、各ラック機構5,6の固定位置までは案内しない構造になっているので、車輌13の積付け地に1セット用意しておくだけで足りる。このため、レール機構8の構造が極めて簡単であることと相俟って、保管の際等に邪魔になることがない。しかも、各ラック機構5,6を海上コンテナ2内で移動させる際に、アームローラ21がレール本体27上を転動することになるので、人力のみで各ラック機構5,6を容易に移動させることができる。
【0051】
なお、前記実施の一形態においては、第3ラック機構7が他のラック機構5,6と構造を異にする場合について説明したが、他のラック機構5,6と同一構造のラック機構を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明に係る車輌積付け方法およびその装置は、3台の車輌13を海上コンテナ2に積付ける際に用いる車輌積付け方法およびその装置として有用であり、特に3台の乗用車を積付ける際に用いる車輌積付け方法およびその装置として適している。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の一形態に係る車輌積付け装置を示す全体構成図である。
【図2】第1および第2の各スペーサ機構を上方から見た詳細構成図である。
【図3】図2の底面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】海上コンテナに設けられているラッシングリングを示す説明図である。
【図6】第1および第2の各ラック機構を上方から見た詳細構成図である。
【図7】図6の底面図である。
【図8】ラック本体の傾斜状態を孫アームで固定する方法を示す説明図である。
【図9】ラック本体が傾斜状態で固定された状態を示す説明図である。
【図10】第1スペーサ機構と第1ラック機構との位置決め関係を示す説明図である。
【図11】第2スペーサ機構と第1ラック機構との位置決め関係を示す説明図である。
【図12】第3ラック機構の詳細構成を示す図6相当図である。
【図13】レール機構と第1スペーサ機構および第1ラック機構との位置関係を示す説明図である。
【図14】第1および第2の両ラック機構を海上コンテナ内に積付けた際のレール機構との位置関係を示す説明図である。
【図15】3台のラック機構を海上コンテナ内に積付けた状態を示す説明図である。
【図16】レール機構を構成する単位レール機構を示す詳細平面図である。
【図17】レール本体とラック本体ローラおよびアームローラとの関係を示す説明図である。
【図18】(a)は第1および第2の各ラック機構に車輌を搭載する方法を示す説明図、(b)は第3ラック機構に車輌を搭載する方法を示す説明図である。
【図19】第1ラック機構をフォークリフトを用いて海上コンテナまで運搬してきた状態を示す説明図である。
【図20】第1ラック機構をフォークリフトを用いて海上コンテナ内に搬入した状態を示す説明図である。
【図21】第1ラック機構を搬入後、一旦フォークリフトを退避させた状態を示す説明図である。
【図22】フォークリフトを海上コンテナに接近させ、フォークの先端を、フォークポケット部材に挿入した状態を示す説明図である。
【図23】フォークを上昇させてラック本体を傾斜させた状態を示す説明図である。
【図24】孫アームでラック本体を傾斜状態を固定した後、フォークリフトを退避させた状態を示す説明図である。
【図25】第1ラック機構を人力を用いて海上コンテナ内で移動させている状態を示す説明図である。
【図26】第1ラック機構を固定位置まで移動させた状態を示す説明図である。
【図27】第1ラック機構を固定位置に固定した状態を示す説明図である。
【図28】第2ラック機構をフォークリフトを用いて海上コンテナまで運搬してきた状態を示す説明図である。
【図29】第2ラック機構をフォークリフトを用いて海上コンテナ内に搬入した状態を示す説明図である。
【図30】第2ラック機構を搬入後、フォークリフトを一旦退避させた状態を示す説明図である。
【図31】フォークリフトを海上コンテナに接近させ、フォークの先端をフォークポケット部材に挿入した状態を示す説明図である。
【図32】フォークを上昇させてラック本体を傾斜させた状態を示す説明図である。
【図33】孫アームでラック本体を傾斜状態で固定した後、フォークリフトを退避させた状態を示す説明図である。
【図34】第2ラック機構を人力を用いて海上コンテナ内で移動させている状態を示す説明図である。
【図35】第2ラック機構を固定位置まで移動させた状態を示す説明図である。
【図36】第2ラック機構を固定位置に固定した状態を示す説明図である。
【図37】第3ラック機構をフォークリフトを用いて海上コンテナまで運搬してきた状態を示す説明図である。
【図38】第3ラック機構をフォークリフトを用いて海上コンテナ内に搬入した状態を示す説明図である。
【図39】第3ラック機構を固定位置に固定した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 車輌積付け装置
2 海上コンテナ
2a ドア
3 第1スペーサ機構
4 第2スペーサ機構
5 第1ラック機構
6 第2ラック機構
7 第3ラック機構
8 レール機構
12 ラッシングリング
13 車輌
14 ラック本体
15 アーム
16 孫アーム
17 タイヤ走行路
17a タイヤ止め
18,22 フォークポケット部材
19 ストッパ
20 ラック本体ローラ
21 アームローラ
23 前輪搭載部
24 後輪搭載部
25 ラックローラ
26 単位レール機構
27 レール本体
28 位置決め部材
29 フォークリフト
29a フォーク
30 ラッシング資材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に連続して配置される複数の単位レール機構で構成され、コンテナドア側の端部からコンテナ底面上の途中位置まで配置されるレール機構と;コンテナ外において車輌がほぼ水平状態で搭載されて固縛される第1,第2および第3の3台のラック機構と;第1ラック機構のフロント側のコンテナ底面上および第1,第2ラック機構の間のコンテナ底面上にそれぞれ固定されて各ラック機構のコンテナ内における位置決めを行なう第1および第2の2台のスペーサ機構と;を備え、第1スペーサ機構をコンテナフロント側の端部に配置した後、車輌が搭載されている第1ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナドア側の端部のレール機構上に載置するとともに、第1ラック機構のコンテナドア側の端部を、フォークリフトで持ち上げて車輌が斜めになった状態とし、次いでこの第1ラック機構を、レール機構上を移動させるとともに、コンテナ底面上を移動させて、先端が第1スペーサ機構に接触した位置でコンテナ内に固定し、次いでレール機構の一部を撤去するとともに、先端が第1ラック機構に接触した位置で第2スペーサ機構をコンテナ底面上に配置し、次いで車輌が搭載されている第2ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナドア側の端部のレール機構上に載置するとともに、第2ラック機構のコンテナドア側の端部を、フォークリフトで持ち上げて車輌が斜めになった状態とし、次いでこの第2ラック機構を、レール機構上を移動させるとともに、コンテナ底面上を移動させて、先端が第2スペーサ機構に接触した位置でコンテナ内に固定し、次いでレール機構をすべて撤去するとともに、車輌が搭載されている第3ラック機構を、フォークリフトを用いてコンテナ内に搬入し、車輌がほぼ水平となったままの状態で、第3ラック機構をコンテナ内に固定することを特徴とする車輌積付け方法。
【請求項2】
第1および第2の各ラック機構には、車輌がコンテナドア側に向けて固縛されるとともに、第3ラック機構には、車輌がコンテナフロント側に向けて固縛されることを特徴とする請求項1記載の車輌積付け方法。
【請求項3】
長手方向に連続して配置される複数の単位レール機構で構成され、コンテナドア側の端部からコンテナ底面上の途中位置まで配置されるレール機構と;コンテナ外において車輌がほぼ水平状態で搭載されて固縛される第1,第2および第3の3台のラック機構と;第1ラック機構のフロント側のコンテナ底面上および第1,第2ラック機構の間のコンテナ底面上にそれぞれ固定されて各ラック機構のコンテナ内における位置決めを行なう第1およひ第2の2台のスペーサ機構と;を備え、前記3台のラック機構のうち、少なくとも第1ラック機構および第2ラック機構は、上面側に車輌が固縛されるとともに、コンテナへの搬入先端側を支点として、車輌がほぼ水平の状態から斜めになった状態まで揺動可能なラック本体と;ラック本体両側の長手方向中間部に揺動可能に連結され、ラック本体を斜めに傾斜させた際に下端部が接地する一対のアームと;各アームの下端近傍位置に揺動可能に連結され、ラック本体を斜めに傾斜させた際に揺動先端部がラック本体の揺動先端部に着脱可能に連結固定される一対の孫アームと;を備えていることを特徴とする車輌積付け装置。
【請求項4】
第3ラック機構は、第1ラック機構および第2ラック機構と同一構造をなしていることを特徴とする請求項3記載の車輌積付け装置。
【請求項5】
第3ラック機構は、搭載された車輌を斜めに傾斜させる機能を有していないことを特徴とする請求項3記載の車輌積付け装置。
【請求項6】
各単位レール機構は、ラック機構を案内する溝形レール状で別体構造の2条のレール本体と、各レール本体の外側に取付けられコンテナ側壁に接触させることによりレール本体の位置決めを行なう把手兼用の位置決め部材とを備えていることを特徴とする請求項3,4または5記載の車輌積付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2006−44730(P2006−44730A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227545(P2004−227545)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)
【Fターム(参考)】