説明

車輪および軸の角度測定方法および装置

【課題】軸または車輪上の複数の標識を、これら標識等が問題にされている回転軸線と一致するように調整するのにかかる時間をなくす。
【解決手段】 軸の角度の測定方法および装置であって、測定すべき軸または車輪上には、カメラで記録可能な2個の標識(2,4)が配置され、これらの標識は、上記軸の回転軸に対して偏心しかつ軸線方向に離隔されている。上記軸は回転され、上記2個の標識の回転経路またはそれらの一部分が上記カメラによって記録され、かつ上記軸の角度位置または中心線の角度位置の計算に用いられる。上記装置は自動車の車輪角度の測定に用いることができ、傾いた車輪に関する補正は必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の軸に関する角度および平行度、例えば、複数の車両の車輪角度、または機械の複数の軸の平行度を測定するための方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の軸に関する角度および平行度、例えば、複数の車両の車輪角度、または機械の複数の軸の平行度を測定するための方法および装置が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より具体的には、本発明の目的は、軸または車輪上の複数の標識を、これら標識等が問題にされている回転軸線と一致するように調整するのにかかる時間をなくすことにある。車両の車輪の場合は、車輪の傾きによる影響およびそれに伴う調整の手間がなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、測定すべき軸または車輪に、機器を用いて記録可能な1個または複数の標識が配置されることによって上記目的が達成され、このまたはこれらの標識は、軸の回転軸線に関して偏心して配置される。上記軸は回転せしめられ、かつ上記1個または複数の標識およびその一部分の回転経路が記録され、上記軸の角度位置または中心線を計算するのに用いられる。
【0005】
それぞれが中心から離れておりかつ軸線方向の位置が異なる、機器で観察可能な2個の標識によって、より高い精密性および単純性が達成される。軸が回転すると、標識は軸または車輪の回転軸線の延長線上に中心がある二つの円を描く。二つの標識の測定面上にある経路の中心間の距離、および二つの標識間の軸線方向距離は、例えば1個の標識を用いた場合のような処理の反復によって得られる角度を提供する。
【0006】
上記円に対する記録手段の遠近を考慮するのが好ましい。これを容易にするために、円と記録機器との間の距離を測定する。
【0007】
自動車における車輪の角度測定の場合には、車輪または車輪上の標識担体の傾きに影響されない2個の標識を備えていることが注目される。標識間の軸線方向の距離を知ることによって、標識間の軸線方向距離によって水平方向に分離される二つの円の中心間の距離として、カメラが対面する自動車のトーインまたはトーアウトが計算される。
【0008】
キャンバー角は、二つの標識間の軸線方向距離によって垂直方向に分離される二つの円の中心間の距離から得られる。
【0009】
上記測定は、上記複数の標識に対する上記カメラの距離および遠近を考慮することによって標準化されなければならない。これは、巻尺によって、または例えば車輪に最も近い標識と同一平面内の追加の標識を標識ブラケット上に配置することによって達成可能である。上記カメラは、三角法によってカメラと標識との間の距離を測量することができる。
【0010】
本発明のさらなる効果および特徴は、添付の図面を参照した下記の好ましい実施の形態の説明によって明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図示された本発明による装置の実施の形態は、複数の標識を備えかつ車輪の外側に取り付けることを目的とする標識担体と、使用時には車両の各側部に配置されて車輪に対向する2台のカメラと、これらカメラに接続されたコンピュータと、車両の車輪が載せられる2個のベルトコンベアとを有する。
【0012】
上記標識担体は、車輪のリム14の外側にしっかりとクランプで留められたまたはスナップ留めされたブラケット13を備えている。さらに標識担体は、リムと原則的に平行な、外方に向いた丸いディスク1を備えている。ディスク自体は黒色であるが、このディスク上に、明るい色のまたは反射性の材料からなる1個の円形の標識2が偏心して配置されている。上記ディスク上には、リムから離れてディスクから直角に延出するピン3がさらに偏心して固定されている。ピンの外端には円形の標識4が配置され、この標識も明るい色または反射性である。車輪に、したがって標識にも対向して、通常の形式の2台のカメラが配置され、特に標識の位置を記録し、かつこの情報を上記コンピュータに送る。
【0013】
自動車の車輪がその上に乗り上げる双方のベルトコンベア装置は、チェーン・スプロケットが設けられている各2本の平行な軸9をそれぞれ備え、各一対のチェーン・スプロケット上には、車輪を支える僅かに下方へ膨らんだベッドを双方で構成するように1本のチェーン7が走る。軸9はベアリングに軸支され、ベアリングハウスは平坦な基台6上に取り付けられている。車輪の転動方向には、車輪の乗り上げを許容する短い傾斜路12がチェーンの正面に配置され、チェーン7の反対側には、車輪の転がり出しを防止するための上方へ突出するストッパ11が配置されている。軸9は、その両端を掴むキーを備えており、したがって例えばナット回しで駆動することができる。車輪の走行方向と、チェーン上の車輪の転動時におけるチェーンの長手方向との間の偏差により車輪が一方側または他方側へ逸脱するのを防止するために、車輪が回転するときの車輪の方向に基づくチェーンの方向の調整が可能なように、チェーン支持基台6は枢動可能に軸支されている。
【0014】
上述した装置における測定方法は下記の通りである。上記カメラおよびベルトコンベアは、双方のカメラが外端に、双方のベルトコンベアがその間に来るように一列に配置される。カメラはコンピュータに接続され、コンピュータと同時に動作状態にされる。一対の車輪を備えた自動車がベルトコンベア上に乗り上げるのに先立って、カメラが整列させられる。勿論これは、コンピュータの画面上に示されかつ反対側のカメラによって生成された画像を用いることができるが、その代わりに適当な観察手段を用いて行なってもよい。また、人手による粗い位置合わせに加えて、計測に用いられる各カメラの座標系に適応するコンピュータによって、一方のカメラの他方のカメラに対する中心の整列状態を推測することもでき、このため、各カメラの接眼レンズには、例えば標識リングが備えられる。
【0015】
カメラが整列状態に並ぶと、車輪角度の測定、次いで特にトーインおよびキャンバーの測定のために、一対の車輪を備えた自動車の上記ベルトコンベア上への乗上げが行なわれる。先ず、各カメラから、各車輪上のディスクに設けられた標識までの距離が測定される。安全のために、ベルトコンベア上に乗っていない一対の車輪には車止めが施され、またはブレーキがかけられる。
【0016】
ベルトコンベア上にある一方または双方の車輪が回転される。車輪が回転されると、カメラは各標識に関するリング状の経路を記録する。ディスク上の標識と、軸線方向に突出するピン上の標識とは、コンピュータにおける識別のために、適当な態様で異なっていることが好ましい。記録されたリング状の標識経路は実際には大体が楕円形であるが、殆ど円形に見える。これらリング状の経路は、車輪の回転軸線の延長線上に中心を有する。コンピュータは、軸線方向に離れた標識間の間隔に基づいて、上述のトーイン角度およびキャンバー角度を計算する。標識ディスクからカメラまでの距離を巻尺で計測する代わりに、標識ディスク上に追加の標識14を設け、回転の開始に先立って、コンピュータを用いて三角法により上記距離を推測することができる。
【0017】
上述のような、遊離した部品を用いた配置の代りに、これらを床および壁にしっかりと取り付けることができる構成、すなわち、剛体の取付け手段が床上に配置され、ベルトコンベアおよびカメラは、測定が開始されるときに取り付けられるという構成も考えられる。
【0018】
たとえベルトコンベア上に載っている自動車の長手方向の対称線が、カメラ間を結ぶ線に対して正確に直角になっていないとしても、適度の誤差であればトーインの測定は十分に正確である。その理由は、前方直進のための車輪の方向回りの比較的広い領域においてトーインにおける変化が極めて小さいからである。もし自動車の位置が大きくずれているとしても、標識リングの相対位置の測定によってのみでなく、カメラの調整されたゼロ位置に関して例えば車輪に最も近い標識リングの位置をコンピュータは警告することができる。
【0019】
キャンバー角の測定に関しては、もしかして自動車が極端に非水平状態にローディングされているとしても、あるいは地面が大きく傾いているとしても、上述の傾いた位置は重要ではない。これはトーインと同様の方法で監視することができる。
【0020】
標識の識別のためには、種々のグレースケール、または種々の色彩を有するものでもよく、あるいは間違いが不可能な態様のもの、例えばディスク上の車輪にもっとも近い標識を、それが常に内側になるように、より小さい半径を有するものに代えてもよい。
【0021】
リング状の標識経路の中心の計算においては、内側エッジも外側エッジも、または式が簡単になるので、「楕円」上の多くの点を用いることもできる。
【0022】
本発明の思想の範囲内において、自動車上に取り付けられた冶具に取り付けられたカメラを想定することもでき、この冶具は測定時には地上を転がる。
【0023】
測定機器としてカメラを、かつ検知可能な標識を用いる代わりに、その他の種々の機器および標識を用いることができる。例えば、水平装置の用いられるのと同様な方法を用いることができ、その場合には、機器が発するレーザーを特殊な反射器で反射させて機器に戻し、機器では標識領域を走査して反射が得られた方向を記録する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による車輪角度測定装置の実施の形態を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 ディスク
2,4 標識
3 ピン
6 コンベアベルトの基台
7 チェーン
9 軸
11 ストッパ
12 傾斜路
13 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪角度または機械における軸の平行度等の、軸に関する角度または平行度を測定する方法であって、
測定すべき各軸または各車輪上には、前記軸または車輪の回転軸線に関して軸線方向に離隔されかつ偏心された2個の標識(2,4)が配置され、前記軸または車輪が回転せしめられ、前記2個の標識に関する経路またはこれら経路上の複数の点が記録され、該記録から出発して前記2個の標識の回転中心が計算されかつ前記軸または車輪の角度計算のために前記標識間の軸線方向の距離に関連付けられることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定のための機器がカメラであり、各標識に関し、前記カメラの視る方向に対し垂直方向にも水平方向にも直角な前記経路の中心の高さ座標および横座標が記録され、前記標識間の軸線方向の距離に関連付けられた前記座標間の差が、次に車輪のキャンバー角およびトーイン角である場合の角度を求めるために用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
1個の標識と用いられた測定機器との間の距離および遠近から出発し、前記距離を勘案して前記角度計算が修正されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
角度測定のために、前記カメラと、前記測定機器からの距離が前記標識の一方と同じ距離にある付加的な標識(14)とを用いて、前記測定機器と前記標識の一方または双方との間の距離が測定されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
両側の測定を同時に行なうために、互いに対向しかつ整列せしめられた2台のカメラが配置されることを特徴とする、車輪角度の測定に関する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記計算のためにコンピュータが用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記測定において前記車輪を回転させるために、前記車輪がベルトコンベア(7)上に配置されることを特徴とする、車輪角度の測定に関する請求項1記載の方法。
【請求項8】
軸または車輪の角度を測定するために、請求項1に記載された方法を実施するための測定装置であって、
前記車輪または前記軸の端部に対し側方から対面するカメラ等の記録機器を備え、さらに、偏心してかつ軸線方向に離隔して配置された2個の標識を前記記録機器に面する側に配置した標識担体を前記車輪または前記軸の端部に備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項9】
前記車輪のためのベルトコンベアを備え、該ベルトコンベアは、前記車輪の走行方向に一致させるために垂直軸上で枢動可能であり、前記車輪が回転せしめられる場合に、該車輪が前記コンベアから横に逸脱するのを防止することを特徴とする請求項7記載の測定装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−115790(P2009−115790A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−265080(P2008−265080)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(595009327)
【Fターム(参考)】