説明

車輪状態監視システムの検査方法、車輪状態監視システムおよび受信機

【課題】車輪の状態を監視する車輪状態監視システムの検査精度を向上する。
【解決手段】車輪の状態を監視する車輪状態監視システムにおいて、送信機は、車輪に関連する車輪情報を含む信号を無線で送信する。受信機18は、信号を受信し車輪の状態を推定する。通信状態設定手段38は、送信機と受信機18との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を行う場合、車輪の状態を監視している通常時における送信機と受信機18との通信状態よりも送信機から送信される信号が受信機18で車輪情報として受信されにくい通信状態を設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の状態を監視する車輪状態監視システムの技術に関し、特に、車輪状態監視システムの検査精度を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ空気圧モニタリングシステム(以下、「TPMS」と表記する)に代表されるように、タイヤの内部空気圧などの車輪状態を、各車輪に設けられたセンサ類により検出して、車体に設けられた電子制御装置(以下、「ECU」と表記する)などに送信することでタイヤの空気圧を監視するシステムが普及してきている。このようなシステムは、車両の出荷に先立ちセンサ類等に対して何らかの試験が行われ、合格、不合格が判断される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のタイヤ空気圧監視装置は、車両のタイヤ組付けラインにおいて、車両に組み付けられたコントロールユニットが受信した空気圧検知ユニットからの送信信号の受信電界強度が規定値未満の場合には、異常があると判定される。
【特許文献1】特開2006−1363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したTPMSでは、車輪に設けられた空気圧センサの情報は車両に取り付けられた受信機に電波で送信されるため、車両内外の状態によって受信機が受信する電波の状態が影響を受けることがある。例えば、車両が走行している路面状態や周囲の環境、車内のシート位置の変化、車両に搭載されている種々の電装品の動作状態等により、同じ車両であっても受信機で受信する電波の状態が影響を受ける。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のタイヤ空気圧監視装置のように、車両の組み付けラインにおいて空気圧検知ユニットからの送信信号の受信電界強度が規定値を満たすか否かによる検査では、車両が実際に使用される様々な環境の変化を考慮しておらず改善の余地があった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車輪の状態を監視する車輪状態監視システムの検査精度を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車輪状態監視システムの検査方法は、車輪に関連する車輪情報を含む信号を無線で送信する送信機と、前記信号を受信し車輪の状態を推定する受信機とにより車輪の状態を監視する車輪状態監視システムの検査方法であって、前記送信機と前記受信機との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を、車輪の状態を監視している通常時における前記送信機と前記受信機との通信状態よりも、前記送信機から送信される信号が前記受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態で行う検査ステップを有する。
【0008】
この態様によると、例えば、車輪状態監視システムが所定の性能や規格を満足しているか否かの検査を、通常時における送信機と受信機との通信状態よりも送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態で行うことができる。したがって、車両の周囲環境や使用状況等による通信状態のばらつきによっては送信機と受信機との間で満足に車輪情報が通信できないような車輪状態監視システムをが不合格品として選別することができる。換言すれば、車両の周囲環境や使用状況による通信状態のばらつきに対しても満足に車輪情報を送受信できる車輪状態監視システムを選別することができる。つまり、この態様によると、使用時に送信機と受信機との間で車輪情報を通信できないという事態を抑制することができ、検査精度を向上することができる。
【0009】
ここで、「受信されにくい通信状態」とは、例えば、通常時には車輪情報として受信機で受信できた信号であっても、受信機で受信できなくなる可能性のある通信状態ということができる。また、「受信できなくなる」とは、信号が受信機に届かない場合だけでなく、信号は受信機に届くが、その信号の波形の一部が欠落したり乱れたりすることにより、あるいは、ノイズの影響により信号に含まれる車輪情報を正しく受信機で認識できない場合も含む。なお、送信機は、信号の受信も行える通信機であってもよく、受信機は、信号の送信を行える通信機であってもよい。
【0010】
前記検査ステップは、前記受信機の受信感度を前記通常時の通信状態における受信感度よりも低下させる受信感度低下ステップを含んでもよい。これにより、送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を擬似的に作り出すことができる。また、車輪状態監視システムが複数の送信機を備える場合であっても、一つの受信機の受信感度を低下させることで受信機と複数の送信機とのそれぞれの通信状態を一括して変更することができる。
【0011】
前記検査ステップは、前記送信機の送信出力を前記通常時の通信状態における送信出力よりも小さくする送信出力制限ステップを含んでもよい。これにより、送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を擬似的に作り出すことができる。また、受信機に到達し解読される信号のS/N比は、受信機で受信感度が低下される場合のS/N比と比較して小さくなるため、送信機と受信機との間の通信が成立しにくい厳しい通信状態で検査を行うことになる。そのため、車両の周囲環境や使用状況等によるより大きな通信状態のばらつきに対しても送信機と受信機との間の通信が可能となる車輪状態監視システムの選別が可能となる。
【0012】
本発明の別の態様は、車輪状態監視システムである。この車輪状態監視システムは、車輪の状態を監視する車輪状態監視システムであって、車輪に関連する車輪情報を含む信号を無線で送信する送信機と、前記信号を受信し車輪の状態を推定する受信機と、前記送信機と前記受信機との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を行う場合、車輪の状態を監視している通常時における前記送信機と前記受信機との通信状態よりも前記送信機から送信される信号が前記受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を設定することができる通信状態設定手段とを備える。
【0013】
この態様によると、例えば、車輪状態監視システムが所定の性能や規格を満足しているか否かの検査が、通常時における送信機と受信機との通信状態よりも送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態で行われる。したがって、この態様の車輪状態監視システムは、車両の周囲環境や使用状況等による通信状態のばらつきによっては送信機と受信機との間で満足に車輪情報が通信できない場合、不合格品として選別される。換言すれば、この態様の車輪状態監視システムは、車両の周囲環境や使用状況による通信状態のばらつきに対しても満足に車輪情報を送受信できる場合に合格品として選別される。つまり、この態様によると、使用時に送信機と受信機との間で車輪情報を通信できないという事態を抑制することができ、検査精度を向上することができる。
【0014】
前記通信状態設定手段は、前記受信機の受信感度を前記通常時の通信状態における受信感度よりも低下させる受信感度低下部を有してもよい。これにより、送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を擬似的に作り出すことができる。また、車輪状態監視システムが複数の送信機を備える場合であっても、受信機に受信感度低下部を設けることで受信機と複数の送信機とのそれぞれの通信状態を一括して変更することができる。また、受信機に受信感度低下部を設けるだけで、受信機と複数の送信機とのそれぞれの通信状態を変更できるので、車輪状態監視システムのコストを低減することができる。
【0015】
前記通信状態設定手段は、前記送信機の送信出力を前記通常時の通信状態における送信出力よりも小さくする送信出力制限部を有してもよい。これにより、送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を擬似的に作り出すことができる。また、受信機に到達し解読される信号のS/N比は、受信機で受信感度が低下される場合のS/N比と比較して小さくなるため、送信機と受信機との間の通信が成立しにくい厳しい通信状態で検査が行われることになる。そのため、車両の周囲環境や使用状況等によるより大きな通信状態のばらつきに対しても送信機と受信機との間の通信が可能となる車輪状態監視システムの選別が可能となる。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、受信機である。この受信機は、車輪に関連する車輪情報を含む信号を無線で送信する送信機から該信号を受信し車輪の状態を推定する受信機であって、前記受信機は、前記送信機と前記受信機との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を行う場合、車輪の状態を監視している通常時における前記送信機と前記受信機との通信状態よりも前記送信機から送信される信号が該受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を設定することができる通信状態設定手段を有する。
【0017】
この態様によると、例えば、受信機が所定の性能や規格を満足しているか否かの検査が、通常時における送信機と受信機との通信状態よりも送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態で行われる。したがって、この態様の受信機は、車両の周囲環境や使用状況等による通信状態のばらつきによっては送信機との間で満足に車輪情報が通信できない場合、不合格品として選別される。換言すれば、この態様の受信機は、車両の周囲環境や使用状況による通信状態のばらつきに対しても満足に車輪情報を受信できる場合に合格品として選別される。つまり、この態様によると、使用時に送信機との間で車輪情報を通信できないという事態を抑制することができ、検査精度を向上することができる。
【0018】
前記通信状態設定手段は、前記受信機の受信感度を前記通常時の通信状態における受信感度よりも低下させる受信感度低下部を有してもよい。これにより、送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を擬似的に作り出すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車輪状態監視システムの検査精度を向上することができる。
することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0021】
[第1の実施の形態]
(車輪状態監視システム)
図1は、第1の実施の形態に係る車輪状態監視システムを備えた車両を示す概略構成図である。図1に示される車両10は、車体12に設けられた4個の車輪14FR,14FL,14RR,14RL(なお、以下では適宜、車輪14FR〜14RLを総称して「車輪14」という。)と、操舵輪である車輪14FR,14FLを操舵する図示されない操舵装置と、これら車輪14のうち駆動輪を駆動する図示されない走行駆動源等を備える。そして、車輪14は、それぞれホイールとタイヤとを含む。
【0022】
各車輪14には、その車輪の状態を示す車輪情報としてタイヤの空気圧や温度の情報を含む信号を無線で送信する送信機16FR,16FL,16RR,16RL(なお、以下では適宜、送信機16FR〜16RLを総称して「送信機16」という。)が装着されている。一方、車体12には、送信機16から送信された信号を受信し車輪の状態を推定する受信機18が搭載されている。
【0023】
受信機18は、推定された車輪の状態に応じて乗員や作業員に警報を発する警報装置20が接続されている。警報装置20としては、メータ等が配置されたディスプレイ、ウォーニングランプ、カーナビゲーションシステムの液晶表示部、音声等が適宜用いられる。また、受信機18は、後述する検査モードの際にモードの変更を受信機の外部から行うための診断装置を接続するためのコネクタ22が接続されている。
【0024】
本実施の形態に係る車輪状態監視システムは、前述の4個の送信機16と受信機18とを有し、各送信機16と受信機18との間でタイヤの空気圧の車輪情報を通信しタイヤの空気圧の監視をするタイヤ空気圧監視システム(Tire Pressure Monitoring System:TPMS)である。また、本実施の形態に係る送信機16は、タイヤの空気圧調整用バルブと一体化された状態でホイールの外周面に装着されている。
【0025】
(送信機)
図2は、第1の実施の形態に係る送信機16のブロック図である。バルブと一体化された送信機16のハウジングの内部には、図2に示されるように、空気圧センサ24、アンテナ25、車輪側送信部26、制御回路28およびバッテリ30が収容されている。そして、送信機16は、車輪に関連する車輪情報としてのタイヤ空気圧を取得するとともに取得した車輪情報を含む信号を受信機18に対して定期的に送信する。
【0026】
空気圧センサ24は、例えば半導体センサであり、タイヤ内部空間内の空気圧を検出し、空気圧に応じた空気圧検出信号を出力する。車輪側送信部26は、空気圧センサ24の検出値を示す信号をアンテナ25を介して所定周期(例えば1分間隔)で定期的に無線送信可能である。制御回路28は、ICチップ等に実装されており、空気圧センサ24や車輪側送信部26を制御する。バッテリ30は、空気圧センサ24、車輪側送信部26および制御回路28に電力を供給する。なお、送信機16は、タイヤの内部空間の空気温度を検出する温度センサや、前後加速度センサ、横Gセンサ、接地圧センサ等を更に備えるものであってもよい。
【0027】
また、本実施の形態に係る車両10は、各車輪14に装着されている送信機16に含まれる車輪側送信部26の記憶部に対して、自己の車輪を他の車輪と識別するための識別情報としてそれぞれ固有のIDコードが付与されている。これにより、各車輪側送信部26から空気圧の情報とともにIDコードの情報が含まれる信号が送信されるので、その信号を受信した受信機18は、どの車輪の空気圧の情報かを判別することができる。
【0028】
(受信機)
図3は、第1の実施の形態に係る受信機のブロック図である。受信機18は、車輪に関連する車輪情報を含む信号を無線で送信する送信機16からその信号を受信し車輪の状態を推定する。具体的には、受信機18は、受信用のアンテナ32と、アンテナ32を介して車輪側送信部26から空気圧やIDコードの情報が含まれた信号を受信する車体側受信部34と、受信機全体を統括的に制御する電子制御ユニット(以下、「ECU」という)36と、を備える。ECU36は、車体側受信部34で受信した信号に基づいて取得した各車輪の車輪情報に応じて警報装置20を制御したり、後述する検査モードによる制御をしたりする。
【0029】
また、アンテナ32と車体側受信部34との間には、送信機16と受信機18との通信状態を複数の通信状態の中から選択的に設定することができる通信状態設定手段38が設けられている。本実施の形態に係る通信状態設定手段38は、送信機16から送信される信号が受信機18で車輪情報として受信されにくい通信状態を擬似的に作り出すために、アンテナ32で受信した信号の電圧を減衰させるアッテネータ40を有している。ここで、アッテネータ40は、受信機18の受信感度を通常時の通信状態における受信感度よりも低下させる受信感度低下部として機能する。アッテネータ40の性能としては、車両の周囲環境や使用状況等による通信状態のばらつきを考慮して、例えば、4dB程度のものを用いることができる。
【0030】
また、通信状態設定手段38は、アンテナ32で受信した信号がアッテネータ40を介して車体側受信部34に入力される回路R2と、アンテナ32で受信した信号がアッテネータ40を介さずに車体側受信部34に入力される回路R1とを切り替えることができるスイッチ42を有する。そして、スイッチ42は、ECU36による制御により適宜切り替えが行われ、送信機16と受信機18との通信状態を複数の通信状態の中から選択的に設定することができる。
【0031】
また、上述のように、車輪状態監視システムが複数の送信機16を備える場合であっても、受信機18にアッテネータ40を設けることで受信機18と複数の送信機16とのそれぞれの通信状態を一括して変更することができる。また、受信機18にアッテネータ40を設けるだけで、受信機18と複数の送信機16とのそれぞれの通信状態を変更できるので、車輪状態監視システムのコストを低減することができる。
【0032】
本実施の形態に係る車輪状態監視システムは、車輪の状態を監視している通常時において、アンテナ32で受信した信号がアッテネータ40を介さずに車体側受信部34に入力される回路R1側にスイッチ42が切り替わっている。そして、この通信状態で各送信機16と受信機18との信号の送受信が行われ、ECU36は、車体側受信部34から受け取った車輪情報に基づいてタイヤの状態を把握する。ECU36は、タイヤの空気圧が所定値を下回ったりタイヤの温度が所定値を超えたりしたときに、警報装置20を動作させ、ランプを点灯させたりブザーに警告音を鳴らせたりすることにより、タイヤの状態を乗員に知らせる。
【0033】
(車輪状態監視システムの検査方法)
次に、車輪状態監視システムの検査方法について説明する。車輪状態監視システムは、車両の出荷に先立ち、車両に取り付けた状態で送信機16と受信機18との間で車輪情報を通信できるか否かの検査をすることがある。しかし、前述したように、車輪14に設けられた空気圧センサ24の情報等は車両10に取り付けられた受信機18に電波で送信されるため、車両内外の状態によって受信機18が受信する電波の状態が影響を受けることがある。そのため、工場の検査ライン等の環境が一様な場所で、かつ、車輪の状態を監視している通常時と同じ回路R1(図3参照)で設定される通信状態で車輪状態監視システムの検査が行われた場合、車両が実際に使用される様々な環境の変化が考慮されていないため、更なる改善の余地がある。
【0034】
そこで、本実施の形態に係る検査方法では、送信機16と受信機18との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を、車輪の状態を監視している通常時における送信機16と受信機18との通信状態よりも、送信機16から送信される信号が受信機18で車輪情報として受信されにくい通信状態で行う検査ステップを有する。
【0035】
図4は、第1の実施の形態に係る車輪状態監視システムの検査方法を説明するためのフローチャートである。この処理はECU36を含む受信機18が起動されることで開始される。具体的には、作業者は、コネクタ22を介して受信機18に不図示の診断装置を接続し受信機18を起動する。ECU36は、その時点で車輪の状態を監視している通常時における監視モードが選択されているか、送信機16と受信機18との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を行う検査モードが選択されているかを判定する(S10)。
【0036】
検査モードが選択されていないと判定された場合(S10のNo)、この処理は一度終了する。一方、診断装置において検査モードが選択され、この検査モードを示す信号や検査の対象となる送信機のIDコード等の情報がECU36に送信された場合、ECU36は、検査モードが選択されていると判定し(S10のYes)、スイッチ42によりアッテネータ40が挿入された回路R2(図3参照)に切り替え(S12)、検査を開始する(S14)。ここで、S12は、受信機18の受信感度を通常時の通信状態における受信感度よりも低下させる受信感度低下ステップに相当する。これにより、通常時における送信機16と受信機18との通信状態よりも送信機16から送信される信号が受信機18で車輪情報として受信されにくい通信状態で検査が行われることになる。また、本実施の形態に係る車輪状態監視システムのように、複数の送信機16を備える場合であっても、一つの受信機18の受信感度を低下させることで受信機18と複数の送信機16とのそれぞれの通信状態を一括して変更することができる。
【0037】
検査が開始されると、受信機18は、各送信機16から送信された信号を正しく車輪情報のデータとして受信できたか否かを判定する(S16)。なお、各送信機16からは定期的に空気圧やIDコードの情報を含む信号が送信されている。受信機18において全送信機からのデータの受信が完了されてない場合(S16のNo)、検査の開始から所定時間が経過しているか否かを判定する(S18)。所定時間が経過していないと判定された場合(S18のNo)、受信機18は、送信機16から送信される信号を受信できるように受信状態で維持される。所定時間が経過していると判定された場合(S18のYes)、ECU36は、データを受信できなかった送信機に何らかの異常があると判定し、警報装置20により作業員に異常を報知する(S20,S22)。作業員は、この検査結果に基づいて不具合が想定される送信機や受信機の交換、再調整をすることで、不具合のある車輪状態監視システムが出荷されることを防止することができる。
【0038】
一方、全送信機からのデータを受信できたと判定された場合(S16のYes)、受信機18を含む車輪状態監視システムは検査に合格したと判定される(S24)。その後、ECU36は、スイッチ42によりアッテネータ40が挿入されていない回路R1に切り替え(S26)、検査モードを終了する。
【0039】
このように、本実施の形態に係る車輪状態監視システムの検査方法によれば、アッテネータ40で減衰された信号が車体側受信部34に入力される状態で検査が行われているため、車両の周囲環境や使用状況等による通信状態のばらつきによっては送信機16と受信機18との間で満足に車輪情報が通信できないような車輪状態監視システムを不合格品として選別することができる。換言すれば、本実施の形態に係る車輪状態監視システムの検査方法は、車両の周囲環境や使用状況による通信状態のばらつきに対しても満足に車輪情報を送受信できる車輪状態監視システムを選別することができる。つまり、この検査方法によると、使用時に送信機16と受信機18との間で車輪情報を通信できないという事態を抑制することができ、検査精度を向上することができる。
【0040】
なお、上述の受信機に対しては、受信機が所定の性能や規格を満足しているか否かの検査をすることができる。この場合、送信機としては、所定の性能を満たしていることが明らかな標準品を用いることで、通常時における送信機と受信機との通信状態よりも送信機から送信される信号が受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態で受信機単体の検査が行える。したがって、この受信機は、車両の周囲環境や使用状況等による通信状態のばらつきによっては送信機との間で満足に車輪情報が通信できない場合、不合格品として選別される。換言すれば、この受信機は、車両の周囲環境や使用状況による通信状態のばらつきに対しても満足に車輪情報を受信できる場合に合格品として選別される。
【0041】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、受信機に通信状態設定手段を設けた構成について説明したが、第2の実施の形態では、送信機に通信状態設定手段を設けた構成について説明する。なお、第2の実施の形態に係る車輪状態監視システムの概略構成は、図1で説明した第1の実施の形態に係る車輪状態監視システムと同様であり、適宜説明を省略する。また、第1の実施の形態と同様の内容についても適宜説明を省略する。
【0042】
(受信機)
図5は、第2の実施の形態に係る受信機118のブロック図である。受信機118は、第1の実施の形態に係る受信機18から通信状態設定手段38を除いた他は、受信機18と同じ構成である。
【0043】
(送信機)
図6は、第2の実施の形態に係る送信機116のブロック図である。送信機116の内部には、第1の実施の形態に係る送信機16と同様に、空気圧センサ24、アンテナ25、車輪側送信部26、制御回路28およびバッテリ30が収容されている。また、アンテナ25と車輪側送信部26との間には、送信機116と受信機118との通信状態を複数の通信状態の中から選択的に設定することができる通信状態設定手段138が設けられている。本実施の形態に係る通信状態設定手段138は、送信機116から送信される信号が受信機118で車輪情報として受信されにくい通信状態を擬似的に作り出すために、車輪側送信部26から出力された空気圧やIDコードの情報を含んだ信号の電圧を減衰させるアッテネータ140を有している。ここで、アッテネータ140は、送信機116の送信出力を通常時の通信状態における送信出力よりも小さくする送信出力制限部として機能する。アッテネータ140の性能としては、車両の周囲環境や使用状況等による通信状態のばらつきを考慮して、例えば、4dB程度のものを用いることができる。
【0044】
また、通信状態設定手段138は、車輪側送信部26から出力された信号がアッテネータ140を介してアンテナ25から送信される回路と、車輪側送信部26から出力された信号がアッテネータ140を介さずにアンテナから送信される回路とを切り替えることができるスイッチ142を有する。そして、スイッチ142は、制御回路28による制御により適宜切り替えが行われ、送信機116と受信機118との通信状態を複数の通信状態の中から選択的に設定することができる。
【0045】
本実施の形態に係る車輪状態監視システムは、車輪の状態を監視している通常時において、車輪側送信部26から出力された信号がアッテネータ140を介さずにアンテナ25から送信される回路R3側にスイッチ142が切り替わっている。そして、この通信状態で送信機116と受信機118との信号の送受信が行われ、受信機118におけるECU36は、車体側受信部34から受け取った車輪情報に基づいてタイヤの状態を把握する。ECU36は、タイヤの空気圧が所定値を下回ったりタイヤの温度が所定値を超えたりしたときに、警報装置20を動作させ、ランプを点灯させたりブザーに警告音を鳴らせたりすることにより、タイヤの状態を乗員に知らせる。
【0046】
なお、本実施の形態に係る送信機116は、トリガ回路44を備えている。トリガ回路44は、外部からの電波を受けて空気圧センサ24や制御回路28の起動や設定変更を行うことができる。そこで、本実施の形態に係る検査方法では、第1の実施の形態で説明したように車輪状態監視システムの検査をする場合に、受信機118に診断装置を接続するとともに、トリガツール46を用いてスイッチ142の切り替えを指示する切り替え信号をトリガ回路44に送信する。
【0047】
制御回路28は、トリガ回路44で受信した切り替え信号に基づいて、スイッチ142により車輪側送信部26から出力された信号がアッテネータ140を介してアンテナ25から送信される回路R4に切り替える。この工程は、送信機116の送信出力を通常時の通信状態における送信出力よりも小さくする送信出力制限ステップに相当する。これにより、通常時における送信機116と受信機118との通信状態よりも送信機116から送信される信号が受信機118で車輪情報として受信されにくい通信状態で検査が行われることになる。なお、送信出力制限ステップ以外の工程は、第1の実施の形態に係る検査方法のS14〜S26とほぼ同様である。
【0048】
このように、本実施の形態に係る車輪状態監視システムの検査方法は、送信出力制限ステップを含んでいるため、送信機116から送信される信号が受信機118で車輪情報として受信されにくい通信状態を擬似的に作り出すことができる。特に、受信機118に到達し解読される信号のS/N比は、第1の実施の形態のように受信機18で受信感度が低下される場合のS/N比と比較して小さくなるため、送信機と受信機との間の通信が成立しにくいより厳しい通信状態で検査をすることができる。
【0049】
より詳述すると、第1の実施の形態に係る車輪状態監視システムのように、受信機18においてアッテネータ40で受信感度を低下させると、アンテナ25で取り込まれた信号に含まれるノイズについても同様に減衰されるため、車体側受信部34でのS/N比は、アッテネータ40の有無では変わらない。一方、本実施の形態に係る車輪状態監視システムのように、送信機116においてアッテネータ40により送信出力を小さくすると、受信機118のアンテナ25で取り込まれた信号に含まれるノイズは減衰されていないため、車体側受信部34でのS/N比は小さくなる。
【0050】
したがって、本実施の形態に係る車輪状態監視システムの検査方法によれば、車両の周囲環境や使用状況等によるより大きな通信状態のばらつきに対しても送信機と受信機との間の通信が可能となる車輪状態監視システムの選別が可能となる。
【0051】
[第3の実施の形態]
本実施の形態に係る車輪状態監視システムは、上述の各実施の形態における車輪側送信部26に受信機能を持たせ、車体側受信部34に送信機能を持たせることで、送信機と受信機との間の双方向の通信が可能な構成である。これにより、受信機からの信号で送信機の送信出力を切り替えることができるため、第2の実施の形態のように作業員がトリガツールを用いて送信機の送信出力を切り替える必要がなく、検査効率を向上することができる。
【0052】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0053】
例えば、上述の各実施の形態に係る送信機は、タイヤの空気圧調整用バルブと一体化されているが、バルブと別体で用いてもよい。また、上述の各実施の形態に係る通信状態変更手段は、送信機や受信機の内部に一体的に設けられているが、送信機や受信機と別体でアンテナとの間に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施の形態に係る車輪状態監視システムを備えた車両を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る送信機のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係る受信機のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態に係る車輪状態監視システムの検査方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る受信機のブロック図である。
【図6】第2の実施の形態に係る送信機のブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
10 車両、 12 車体、 14 車輪、 16 送信機、 18 受信機、 20 警報装置、 22 コネクタ、 24 空気圧センサ、 25 アンテナ、 26 車輪側送信部、 28 制御回路、 30 バッテリ、 32 アンテナ、 34 車体側受信部、 36 ECU、 38 通信状態設定手段、 40 アッテネータ、 42 スイッチ、 44 トリガ回路、 46 トリガツール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に関連する車輪情報を含む信号を無線で送信する送信機と、前記信号を受信し車輪の状態を推定する受信機とにより車輪の状態を監視する車輪状態監視システムの検査方法であって、
前記送信機と前記受信機との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を、車輪の状態を監視している通常時における前記送信機と前記受信機との通信状態よりも、前記送信機から送信される信号が前記受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態で行う検査ステップを有することを特徴とする車輪状態監視システムの検査方法。
【請求項2】
前記検査ステップは、前記受信機の受信感度を前記通常時の通信状態における受信感度よりも低下させる受信感度低下ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の車輪状態監視システムの検査方法。
【請求項3】
前記検査ステップは、前記送信機の送信出力を前記通常時の通信状態における送信出力よりも小さくする送信出力制限ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の車輪状態監視システムの検査方法。
【請求項4】
車輪の状態を監視する車輪状態監視システムであって、
車輪に関連する車輪情報を含む信号を無線で送信する送信機と、
前記信号を受信し車輪の状態を推定する受信機と、
前記送信機と前記受信機との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を行う場合、車輪の状態を監視している通常時における前記送信機と前記受信機との通信状態よりも前記送信機から送信される信号が前記受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を設定することができる通信状態設定手段と、
を備えることを特徴とする車輪状態監視システム。
【請求項5】
前記通信状態設定手段は、前記受信機の受信感度を前記通常時の通信状態における受信感度よりも低下させる受信感度低下部を有することを特徴とする請求項4に記載の車輪状態監視システム。
【請求項6】
前記通信状態設定手段は、前記送信機の送信出力を前記通常時の通信状態における送信出力よりも小さくする送信出力制限部を有することを特徴とする請求項4に記載の車輪状態監視システム。
【請求項7】
車輪に関連する車輪情報を含む信号を無線で送信する送信機から該信号を受信し車輪の状態を推定する受信機であって、
前記受信機は、
前記送信機と前記受信機との間で車輪情報を通信できるか否かの検査を行う場合、車輪の状態を監視している通常時における前記送信機と前記受信機との通信状態よりも前記送信機から送信される信号が該受信機で車輪情報として受信されにくい通信状態を設定することができる通信状態設定手段を有することを特徴とする受信機。
【請求項8】
前記通信状態設定手段は、前記受信機の受信感度を前記通常時の通信状態における受信感度よりも低下させる受信感度低下部を有することを特徴とする請求項7に記載の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−201179(P2008−201179A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36920(P2007−36920)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】