説明

車輪給電装置

【課題】直流電源から電磁給電部を経て車輪側モータへ電力を供給する際、モータ駆動用のインバータ以外に、交流・直流変換用のコンバータが不要な構成となす。
【解決手段】モータ4L,4Rに係わる電磁給電部20L,20Rのコイル14L,14Rはそれぞれ、対応する側のモータ4L,4Rを個々に駆動しつつ出力制御するためのインバータ22L,22Rを介して相互に接続した後、共通な給電回路23により、電源21に接続する。電源21から供給される電力は、インバータ22L,22Rにより交流に変換された後、モータ4L,4Rに係わる電磁給電部20L,20Rのコイル14L,14Rにそれぞれ供給される。コイル14L,14Rは、交流電流の供給により磁束を発生し、コイルで発生した磁束は、モータ4L,4Rに係わるコイル16L,16Rに鎖交し交流の起電力を発生させる。これら交流起電力はそれぞれ、モータ4L,4Rを個々に駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側直流電源から車輪側電動モータへの給電を行う車輪給電装置に関し、特にその低廉化および軽量化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車輪給電装置は、例えば電気自動車に有用である。
電気自動車の車輪駆動方式としては様々なものが提案されており、そのうちの一つとして、車輪を内蔵モータにより直接駆動するようにした、所謂インホイールモータドライブ方式がある。
【0003】
当該インホイールモータドライブ方式を採用した電気自動車は、車室内の有効利用空間が拡大するという利点や、各輪独立駆動により、従来の一般的な自動車とは異なる運転感覚が得られるという利点がある。
【0004】
ところでインホイールモータドライブ方式を実現するには、車体側直流電源から車輪側電動モータへ電力を供給する必要がある。
この給電に際し、単純に車体側直流電源から車輪側電動モータまで給電線を配索し、この給電線を経て車体側直流電源から車輪側電動モータへ電力供給を行うのでは、給電線がサスペンションストロークや転舵に伴う車輪の変位で繰り返し曲げられ、疲労により断線してしまう可能性ある。
【0005】
かかる給電線の断線を低減するには、サスペンションストロークや転舵によっても、給電線が常に曲げ曲率を小さくされているよう給電線を配索することが考えられる。
しかし当該対策では、給電線の配索に大きなスペースを必要とし、その分だけ車室内空間が犠牲になり、上記したインホイールモータドライブ方式の利点の一つである、車室内有効利用空間が拡大するという利点が相殺されてしまう。
【0006】
なお、スリップリング等のブラシを用いたデバイスにより給電線の曲げを吸収することも考えられるが、この場合、機械的なブラシのメンテナンスが不可避であって維持管理にコストがかかるという問題や、ブラシが大きな設置スペースを必要として設置が困難であるという問題を生じ、実際的でない。
【0007】
そこで本願出願人は先に、特許文献1に記載のごとく、車体に対するサスペンションアームの枢支部に、車体側のコイルおよび磁性体と、サスペンションアーム側のコイルおよび磁性体とから成り、車体側コイルへの通電により発生した磁束が両磁性体を介してサスペンションアーム側コイルに鎖交し、磁束変化によってサスペンションアーム側コイルに起電力が発生するようにした電磁給電部を設け、この電磁給電部での磁気結合により車体側バッテリから車輪側モータへの給電が可能な車輪給電装置を提案済みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−160033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載のような電磁誘導現象を用いた給電方式では、非接触式電磁給電部が、上記の磁束変化を惹起する交流電流しか電力を通過させることができない。
一方で、電気自動車の電動モータとしては、ロータに永久磁石を組み込んだ同期式回転電動機を用いるのが主流であり、車両停車時に発進用のトルクを発生させるには直流電流が必要である。
【0010】
そこで、特許文献1に記載のように電磁誘導現象を利用した非接触式電磁給電部を用いる場合、車体側直流電源から電磁給電部へ交流電流を供給するために車体側のDC/ACコンバータが必要であり、また、サスペンションアーム側コイルに発生した交流起電力を直流に戻すために車輪側のAC/DCコンバータも必要であり、更に、車輪側モータを回転駆動しつつ出力制御するために車輪側のインバータ(DC/AC変換器)が必要である。
【0011】
そして、車輪を内蔵モータにより直接駆動するようにしたインホイールモータドライブ式電気自動車においては、上記した車体側のDC/ACコンバータ、車輪側のAC/DCコンバータ、および車輪側のインバータ(DC/AC変換器)がそれぞれ、駆動車輪ごとに、つまり駆動車輪の個数だけ必要である。
【0012】
左右前輪または左右後輪の2輪を駆動するインホイールモータドライブ式電気自動車について考察すると、非接触式電磁給電部を用いる場合、有線給電方式を用いる場合に比べて、車体側のDC/ACコンバータが2個、また車輪側のAC/DCコンバータが2個、余分に必要になり、コスト高になると共に重量も増大してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、車輪側モータとして、ロータに永久磁石が埋め込まれていない型式の磁石レスモータを用いれば、これを回転駆動しつつ出力制御するためのインバータ(DC/AC変換器)を車体側に配置することで、当該インバータの出力が交流であることにより、車体側直流電源から電磁給電部へ交流電流を供給するための車体側のDC/ACコンバータも、またサスペンションアーム側コイルに発生した交流起電力を直流に戻すための車輪側のAC/DCコンバータも必要でなくなるとの事実認識に基づき、この着想を具体化して、車輪給電装置の上記コスト高および重量増に関した問題を解消、若しくは少なくとも緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のため、本発明による車輪給電装置は、以下のようにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる車輪給電装置を説明するに、これは、車体に懸架された車輪を含むバネ下部材側の電動モータが、車体側の直流電源から電力供給を受けて上記車輪を駆動するようにしたものである。
【0015】
本発明は、かかる車輪給電装置における上記のバネ下部材側電動モータを磁石レスモータとし、
該磁石レスモータを駆動するためのDC/AC変換器を上記車体側に配置すると共に、上記車体側直流電源に接続する。
そして、車体側における第1コイルと、バネ下部材側における第2コイルとの電磁結合により、車体側からバネ下部材側への給電が可能な電磁給電部を設け、
該電磁給電部を経て上記DC/AC変換器から上記電動モータへの給電を行う構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0016】
かかる本発明による車輪給電装置によれば、車輪側モータとして磁石レスモータを用い、これを回転駆動しつつ出力制御するためのDC/AC変換器を車体側に配置したため、
当該DC/AC変換器の交流出力を車体側から、その後何ら変換することなく、車体側の第1コイルおよびバネ下部材側の第2コイルよりなる電磁給電部により車輪側モータ(磁石レスモータ)に供給することができる。
【0017】
従って、電磁給電部の直前における車体側DC/ACコンバータも、また電磁給電部の直後におけるバネ下部材側AC/DCコンバータも必要でなくなり、これらコンバータを排除し得て、電磁給電部を車体およびバネ下部材間に具える車輪給電装置のコスト高および重量増に関した前記の問題を解消、若しくは少なくとも緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例になる車輪給電装置の要部を成す非接触式電磁給電部を具えたインホイールモータドライブ式電気自動車の駆動輪懸架部を示す側面図である。
【図2】図1のII−II線上で断面とし、矢の方向に見て示す非接触式電磁給電部の詳細断面図である。
【図3】図2に示す、第1実施例で用いた非接触式電磁給電部に係わる給電回路図である。
【図4】本発明の第2実施例になる車輪給電装置の給電回路を示す、図3と同様な回路図である。
【図5】本発明の第3実施例になる車輪給電装置の給電回路内における電磁給電部を示す回路図である。
【図6】図5に示すように共振回路を設けた第3実施例の車輪給電装置内におけるインバータの周波数特性を、共振回路を設けない場合と比較して示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1〜3は、本発明の第1実施例になる車輪給電装置を示し、
図1は、車輪給電装置の要部を構成する非接触式電磁給電部を具えたインホイールモータドライブ式電気自動車の駆動輪懸架部を示す側面図、
図2は、図1のII−II線上で断面とし、矢の方向に見て示す非接触式電磁給電部の詳細断面図、
図3は、この非接触式電磁給電部に係わる給電回路図である。
【0020】
先ず図1,2により電磁給電部を説明するに、図1において、1は、インホイールモータドライブ式電気自動車の車体を示し、2Lは、インホイールモータドライブ式電気自動車の駆動輪(例えば左右前輪のうち、左前輪)を示す。
図1に示すように、駆動輪(左前輪)2Lをサスペンション装置3により車体1に懸架し、このサスペンション装置3は、車体1および駆動輪(左前輪)2L間に車両上下方向へ架設されたストラット部材3aや、車体1および駆動輪(左前輪)2L間に車両前後方向へ架設されたサスペンションアーム3bなどの各種サスペンション部材でリンク組して構成される通常のストラット式サスペンション装置とする。
【0021】
駆動輪(左前輪)2Lは電動モータ4Lを内蔵し、図示せざる左右方向反対側の駆動輪(右前輪)も同様に電動モータ(図3に4Rで示す)を内蔵し、これらモータによる左右前輪の個別駆動により電気自動車の走行が行われるものとする。
なお電動モータ4L,4Rはそれぞれ、ロータ内に永久磁石が埋め込まれていない磁石レスモータとし、例えば誘導モータを用いるが、同期モータでもよいのは言うまでもない。
【0022】
サスペンションアーム3bは、駆動輪(左前輪)2Lから遠い後端をブッシュ5により車体1に上下方向揺動可能に取り付ける。
そのためブッシュ5は、ブラケット6を介して車体1に車幅方向へ延在するよう取り付けた枢支ピン7と、サスペンションアーム3bの後端に固設した、図2に明示する円筒部8とを有し、当該円筒部8の内周を図2に示すごとく、その軸線方向両端近傍におけるベアリング9を介し枢支ピン7上に回転自在に支持して構成する。
【0023】
かくして駆動輪(左前輪)2Lは車体1に対し、上下方向へサスペンションストローク可能に取り付けられ、
駆動輪(左前輪)2Lはストラット部材3aや、サスペンションアーム3bなどの各種サスペンション部材と共にバネ下部材を構成し、車体1はバネ上部材を構成する。
【0024】
図3に符号「21」を付して示す強電バッテリ(車体に搭載した直流電源)から、駆動輪(左前輪)2Lの内蔵モータ4Lへ駆動電力を供給するための電磁給電部20Lは、図2に基づき以下に説明するごとくに構成する。
【0025】
サスペンションアーム3bの後端円筒部8には、その外周に円環状の空所を画成する筒箱11を一体に設け、円筒部8の軸線方向中程にスリットが形成されるよう切り欠いて、円筒部8および筒箱11より成るサスペンションアーム3bの後端部をC字断面形状となす。
円筒部8の軸線方向中程におけるスリット状の切り欠き内にハブ12を介在させ、ハブ12の内周を枢支ピン7上に嵌着し、ハブ12の外周に車体側における円環状の第1磁性体13Lを嵌着する。
そして円環状の第1磁性体13Lの外周には、車体側の第1コイル14Lを巻装する。
【0026】
円筒部8および筒箱11より成るサスペンションアーム3bの後端部内には、当該サスペンションアーム後端部のC字断面形状と同じ断面形状となした、車輪側(バネ下部材側)における円環状の第2磁性体15Lを収納して設ける。
円環状の第2磁性体15L内には、車体側の第1コイル14Lを挟んで軸線方向両側に同心に配置させた、車輪側(バネ下部材側)における一対の第2コイル16Lを巻装する。
【0027】
次に、上記した電磁給電部20Lに係わる給電回路を図3に基づき説明する。
第2コイル16Lは、その各相をY結線として(図では三相として示したが、それより多相でもよい)、多相交流の各相が通電されるものとし、この第2コイル16Lを駆動輪(左前輪)2Lの内蔵モータ4Lに直接接続する。
左右方向反対側の駆動輪(右前輪)の内蔵モータ4Rについても、図3にサフィックス「L」を「R」に置き換えた同符号で示すごとく同様に、電磁給電部21Rの第2コイル16Rを、反対側駆動輪(右前輪)の内蔵モータ4Rに直接接続し、この第2コイル16Rも、その各相をY結線として(図では三相として示したが、それより多相でもよい)、多相交流の各相が通電されるようにする。
【0028】
左右駆動輪(左右前輪)に係わる車体側の第1コイル14L,14Rはそれぞれ、各相をΔ結線とし(図では三相として示したが、それより多相でもよい)、
これら第1コイル14L,14Rはそれぞれ、対応する側の電動モータ4L,4Rを個々に回転駆動しつつ出力制御するためのインバータ(DC/AC変換器)22L,22Rを介して相互に接続した後、
共通な給電回路23により、モータ駆動用の強電バッテリ(車体側直流電源)21に接続する。
【0029】
<第1実施例の作用>
上記した第1実施例の構成において、強電バッテリ21から供給される電力は、インバータ(DC/AC変換器)22L,22Rにより交流に変換された後、左右駆動輪(左右前輪)に係わる車体側の第1コイル14L,14Rにそれぞれ供給される。
【0030】
第1コイル14L,14Rは、交流電流の供給により、図2に矢印で示すような磁束を発生し、これら第1コイル14L,14Rで発生した磁束は、車体側の第1磁性体13L,13R(図3では省略した)および車輪側の第2磁性体15L,15R(図3では省略した)を介して、左右駆動輪(左右前輪)に係わる車輪側の第2コイル16L,16Rに鎖交する。
そのため、交流に起因した磁束の変化により左右駆動輪側の第2コイル16L,16Rに交流の起電力が発生する。
【0031】
これら交流起電力はそれぞれ、左右駆動輪(左右前輪)の内蔵モータ4L,4Rを個々に回転駆動して車両を走行させる。
この間、アクセル操作に応答してインバータ22L,22Rにより第1コイル14L,14Rへの交流電力を加減することで、上記のごとく第2コイル16L,16Rに発生する交流起電力(モータ4L,4Rへの供給電力)を加減することができ、左右駆動輪(左右前輪)をアクセル操作に応答した制御下に駆動して車両の走行時駆動力制御を行うことができる。
【0032】
よって、車体側の第1コイル14L,14Rおよび第1磁性体13L,13Rと、車輪側の第2コイル16L,16Rおよび第2磁性体15L,15Rとにより構成される電磁給電部での磁気結合により、車体1上における強電バッテリ21から左右駆動輪(左右前輪)の内蔵モータ4L,4Rへの給電を行うことができる。
【0033】
なお、インバータ22L,22Rは、双方向に通電が可能な構成として、電気自動車の減速時に左右駆動輪(左右前輪)の内蔵モータ4L,4Rで発生した回生電力を強電バッテリ(車体側直流電源)21に蓄電し得るようになし、エネルギー効率の向上を図る。
【0034】
<第1実施例の効果>
上述したように本実施例では、車体側の第1コイル14L,14Rおよび第1磁性体13L,13Rと、車輪側の第2コイル16L,16Rおよび第2磁性体15L,15Rとで構成される電磁給電部20L,20Rでの磁気結合により、車体1上における強電バッテリ(車体側直流電源)21から左右輪駆動モータ4L,4Rへの給電を行うため、
サスペンションアーム3bの揺動(サスペンションストローク)によっても、図2に示す磁束の磁路長が変化せず、車体側の第1コイル14L,14Rと、車輪側の第2コイル16L,16Rとの間の相互インダクタンスが一定で、強電バッテリ21から車輪駆動モータ4L,4Rへの安定した給電が可能となる。
【0035】
しかしその反面、電磁給電部20L,20Rを用いる場合、電磁給電部20L,20Rで電力の受け渡しを行い得るようにするため交流・直流間変換用のコンバータが必要になり、その分だけコスト高および重量増を招く。
【0036】
しかし本実施例では前記した通り、車輪側モータ4L,4Rとして誘導モータを可とする磁石レスモータを用い、これを回転駆動しつつ出力制御するためのインバータ22L,22Rを車体側に配置したため、
当該インバータ22L,22Rの交流出力を車体側から、その後何ら変換することなく、車体側の第1コイル14L,14Rおよびバネ下部材側の第2コイル16L,16Rよりなる電磁給電部20L,20Rにより車輪側モータ4L,4Rに供給することができる。
【0037】
従って、電磁給電部20L,20Rで電力の受け渡しを行うための専用の交流・直流間変換用コンバータを省くことができ、このため、電磁給電部20L,20Rの直前に、インバータ22L,22R以外の車体側DC/ACコンバータが必要でなくなると共に、電磁給電部20L,20Rの直後におけるバネ下部材側AC/DCコンバータも必要でなくなる。
これによって、電磁給電部20L,20Rを車体1およびバネ下部材(車輪2L,2R)間に具える車輪給電装置のコスト高および重量増を解消、若しくは少なくとも緩和することができる。
【0038】
また本実施例のように、車輪側モータ(磁石レスモータ)4L,4Rとして誘導モータを用いる場合、当該モータ4L,4Rの回転数と、インバータ22L,22Rの出力周波数とを同期させる必要がないため、電磁給電部20L,20Rに通す周波数の自由度が大きくなって、制御が容易になる。
ちなみに、車輪側モータ(磁石レスモータ)4L,4Rとして磁石レス同期モータを用いる場合は、モータの回転数によって、同期/非同期を不連続に切り換える必要があるが、本実施例のごとく誘導モータを用いる場合は、同期/非同期を不連続に切り換える必要がなくて、この点でも制御が容易である。
【0039】
更に本実施例のように、第1コイル14L,14Rの各相をΔ結線とし、第2コイル16L,16Rの各相をY結線とする場合、逆に第1コイル14L,14Rの各相をY結線とし、第2コイル16L,16Rの各相をΔ結線とする場合も同様であるが、
車体側の一次側と車輪側の二次側とで、磁路構成およびコイル構成などが全く同一であっても、Δ結線よりY結線側の端子電圧を高くできるため、電磁給電部20L,20Rにおいて昇圧または降圧が可能となり、電圧設定の自由度が増す。
ちなみに電磁給電部20L,20Rを昇圧により高圧化すると、バネ下部材側の給電線を細くすることができ、逆に電磁給電部20L,20Rを低圧化すると、バネ下部材側の絶縁対策が容易になる。
【0040】
<第2実施例>
図4は、本発明の第2実施例になる車輪給電装置の給電回路を示し、図3に対応する図で、図3におけると同様な部分に同一符号を付して示し、重複説明を避けた。
【0041】
本実施例においては、前記したとおりΔ結線とした車体側第1コイル14L,14Rの各相を相互に直接接続し、これら相互に接続した各相を、第1実施例における図3に示したインバータ(DC/AC変換器)22L,22Rに代えて、これらを一纏めにした共通なインバータ(DC/AC変換器)24を介し強電バッテリ(車体側直流電源)21に接続する。
このためインバータ24は、強電バッテリ21から遠い交流側を三相として第1コイル14L,14Rの各相に接続し、反対側における直流側を強電バッテリ21に接続する。
【0042】
<第2実施例の効果>
上記した本実施例の車輪給電装置も、第1実施例の車輪給電装置と同様に作用し、また車体側のインバータ(DC/AC変換器)24が、左右輪駆動モータ4L,4Rに共通な1個のインバータのみでよく、前記コスト高および重量増の問題解決を更に顕著なものにすることができる。
【0043】
更に、左右輪駆動モータ4L,4R用の車体側インバータ(DC/AC変換器)24が左右輪駆動モータ4L,4Rに共通な1個のインバータである場合は、図3に示す第1実施例のごとく左右輪駆動モータ4L,4R用に個別にインバータ22L,22Rを設ける場合に較べ、これらインバータ22L,22R間の共通部品(コンデンサなど)を削減し得ると共に、ケースの共通化を実現し得て、これらによる更なるコスト低減も期待することができる。
【0044】
<第3実施例>
図5は、本発明の第3実施例になる車輪給電装置の電磁給電部2L,22Rを示し、図3,4におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
【0045】
本実施例においては、電磁給電部2L,22Rにそれぞれ、Δ結線とした第1コイル14L,14R側における共振回路部分25と、第2コイル16L,16R側における共振回路部分26とから成る共振回路を接続して設ける。
それ以外は、前記した第1実施例または第2実施例と同様に構成する。
【0046】
<第3実施例の効果>
かかる本実施例の車輪給電装置も、第1実施例の車輪給電装置または第2実施例の車輪給電装置と同様に作用し、同様にコスト高および重量増の問題解決を実現できるほか、以下の効果を奏し得る。
【0047】
つまり、電磁給電部2L,22Rにそれぞれ共振回路25,26を設けたことで、モータ駆動周波数が変化したり、電磁給電部2L,22Rの磁性体ギャップが変化した場合でも、インバータ22L,22R(24)の力率が極端に低下することがなくなる。
【0048】
つまり、図6に示すインバータ22L,22R(24)の破線および実線で示す周波数特性の比較から明らかなように、
電磁給電部2L,22Rに共振回路25,26を設けない場合は、周波数に対する位相およびインピーダンスの変化特性が破線のごとく急変特性になるのに対し、電磁給電部2L,22Rに共振回路25,26を設けた場合は同じ条件のもとでも、周波数に対する位相およびインピーダンスの変化特性を実線のごとく、破線特性よりもなだらかな変化特性にすることができ、インバータ22L,22R(24)の力率が極端に低下することがない。
【0049】
<その他の実施例>
なお上記した何れの実施例でも、左右前輪を個々の内蔵モータ4L,4Rで駆動する二輪駆動のインホイールモータドライブ式電気自動車である場合について説明したが、
左右後輪をも個々の内蔵モータで駆動する四輪駆動のインホイールモータドライブ式電気自動車である場合も、本発明の前記着想は適用可能であり、駆動車輪数が多いほど前記した効果は顕著になる。
【0050】
また本発明の着想は、インホイールモータドライブ式電気自動車に限られず、他の型式の電気自動車や、エンジンおよび電動モータの協調により走行されるハイブリッド車両や、燃料電池車など、あらゆる型式の電動車両に用いることができ、いずれの場合も同様な作用効果を達成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 車体
2L 左駆動輪(左前輪:バネ下部材)
3 サスペンション装置
3a ストラット部材(サスペンション部材:バネ下部材)
3b サスペンションアーム(サスペンション部材:バネ下部材)
4L,4R 左右駆動輪(左右前輪)内蔵モータ(電動モータ)
5 ブッシュ
6 ブラケット
7 枢支ピン
8 サスペンションアーム後端円筒部
9 ベアリング
11 筒箱
12 ハブ
13L,13R 第1磁性体
14L,14R 第1コイル
15L,15R 第2磁性体
16L,16R 第2コイル
20L,20R 電磁給電部
21 強電バッテリ(車体側直流電源)
22L,22R インバータ(DC/AC変換器)
24 共通なインバータ(DC/AC変換器)
25 第1コイル側共振回路部分(共振回路)
26 第2コイル側共振回路部分(共振回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に懸架された車輪を含むバネ下部材側の電動モータが、車体側の直流電源から電力供給を受けて前記車輪を駆動するようにした車輪給電装置において、
前記バネ下部材側電動モータを磁石レスモータとし、
該磁石レスモータを駆動するためのDC/AC変換器を前記車体側に配置すると共に、前記車体側直流電源に接続し、
車体側における第1コイルと、バネ下部材側における第2コイルとの電磁結合により、車体側からバネ下部材側への給電が可能な電磁給電部を設け、
該電磁給電部を経て前記DC/AC変換器から前記電動モータへの給電を行うよう構成したことを特徴とする車輪給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車輪給電装置において、
前記バネ下部材側電動モータとして誘導モータを用いたものであることを特徴とする車輪給電装置。
【請求項3】
前記バネ下部材側電動モータを複数個一組として具える、請求項1または2に記載された車輪給電装置において、
これらバネ下部材側電動モータを駆動するための前記DC/AC変換器を1つに統合して共通化し、該共通化したDC/AC変換器により、前記複数個一組のバネ下部材側電動モータをそれぞれ駆動するよう構成したことを特徴とする車輪給電装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載された車輪給電装置において、
前記第1コイルおよび第2コイルのうち、一方のコイルの各相をΔ結線とし、他方のコイルの各相をY結線としたものであることを特徴とする車輪給電装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された車輪給電装置において、
前記電磁給電部に共振回路を接続して設けたことを特徴とする車輪給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−5544(P2013−5544A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132826(P2011−132826)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】