説明

軋み音を低減した熱可塑性樹脂組成物製接触用部品

【課題】部品が擦れあうときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれても軋み音低減効果が低下せずに維持され、耐衝撃性及び成形品表面外観性にも優れた接触用部品を提供する。
【解決手段】下記(A)成分5〜100質量部と(B)成分0〜95質量部を含有してなり、両成分(A)(B)の合計が100質量部である熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする接触用部品:
(A)ポリオルガノシロキサン(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物、または、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体(b)を重合してなるポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂、
(B)1種または2種以上のビニル単量体(c)を重合してなるビニル系重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接触用部品に関し、更に詳しくは、他の部品と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させた熱可塑性樹脂組成物製接触用部品に関する。
【0002】
ABS樹脂は、その優れた機械的性質、耐熱性、成形性等により自動車内装部品等接触用部品の製造に広範囲に使用されている。
【0003】
しかし、自動車走行時の振動に伴い、ABS樹脂製自動車内装部品同士や該部品とクロロプレンゴム、ポリウレタン、天然ゴム、ポリエステルまたはポリエチレン製の内張りシート、フォームなどの接触して擦れ合うような場合において、軋み音(擦れ音)を発生することがある。また、例えばABS樹脂製のベンチレーターには、風量を調整するためにクロロプレンゴム製フォーム等をシール材として使用したバルブシャッターが内部に装着されており、風量調整のためにバルブシャッターを回転させるとシール材とベンチレーターのケースとが互いに擦れ合う。このようにABS樹脂製自動車内装部品が機能上他の部品と擦れ合う使用状況下でも軋み音が発生する場合がある。
【0004】
また、ABS樹脂、ASA樹脂は非晶性プラスチックであるため、結晶性プラスチックであるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタールなどの樹脂と比較すると摩擦係数が高く、自動車内のエアコン吹き出し口やカーステレオのボタン等のように、他樹脂からなる部品と嵌合する場合に、スティックスリップ現象(非特許文献1)が発生し、異音(軋み音)が発生することもよく知られている。これらの軋み音は乗車時の快適性、静粛性を損ねる大きな原因となっており、軋み音の低減が強くの望まれていた。
【0005】
そこで、これらの軋み音を防止するため、部品表面にテフロン(登録商標)コーテイングを施す方法、テフロン(登録商標)テープを装着する方法、シリコーンオイルを塗布する方法などが行われてきたが、装着、塗布といった工程は非常に煩雑で手間がかかるばかりでなく、高温下に置かれた場合は効果が持続しないという問題があった。
【0006】
また、自動車内装部品に用いられる材料自体を改質する方法として、例えば、ポリカーボネート樹脂およびABS樹脂からなる樹脂に有機ケイ素化合物を配合する技術(特許文献1)が、またABS樹脂に難燃剤、難燃助剤およびシリコーンオイルを配合する技術( 特許文献2) が、またABS樹脂、MBS樹脂およびHIPS(ハイインパクトポリスチレン) 樹脂にシリコーンオイルを配合する技術(特許文献3)が、またABS樹脂にアルカンスルホネート系界面活性剤を配合する技術(特許文献4) が、さらにABS樹脂にエポキシ基、カルボキシル基および酸無水物基から選ばれる少なくとも1 種の反応基を有する変性ポリオルガノシロキサンを配合し、撥水性を高め浴室内やトイレ内の水廻り部品に使用する技術(特許文献5) が開示されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法による軋み音の低減効果は十分とはいえず、成形直後にはある程度の軋み音防止効果を示しても効果の持続性に乏しく、特に、高温下に長時間置かれた場合にはその効果が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭63−56267号公報
【特許文献2】特許第2798396号公報
【特許文献3】特許第2688619号公報
【特許文献4】特許第2659467号公報
【特許文献5】特開平10−316833号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】表面科学Vol.24,No.6, P328-333,2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑み、部品が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せず維持され、さらには耐衝撃性及び成形品表面外観性に優れた熱可塑性樹脂組成物からなる接触用部品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のゴム強化スチレン系樹脂、または、ゴム強化スチレン系樹脂に特定の添加剤を特定量配合することにより、軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、下記の接触用部品が提供される。
1.下記の(A)成分5〜100質量部と(B)成分0〜95質量部を含有してなり、両成分(A)、(B)の合計が100質量部である熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする接触用部品:
(A)ポリオルガノシロキサン(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物、または、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体(b)を重合してなるポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂、
(B)1種または2種以上のビニル単量体(c)を重合してなるビニル系重合体。
2.更に、共役ジエン系ゴム系熱可塑性樹脂(C)を含有してなる熱可塑性樹脂組成物(D)であって、該共役ジエン系ゴム系熱可塑性樹脂(C)は共役ジエン系ゴム質重合体(d)の存在下に、芳香族ビニル化合物、または、芳香族ビニル化合物および該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系単量体(b)を重合してなり、前期熱可塑組成樹脂組成物(D)中のポリオルガノシロキサン(a)と共役ジエン系ゴム質重合体(d)の質量比(a):(d)が5〜95:95〜5であることを特徴とする上記1.の接触用部品。
3.更に、オレフィン系樹脂(E)、低分子量ポリエチレン(F)、超高分子量ポリエチレン(G)、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂(H)、シリコーンオイル(I)、水素添加ブロック共重合体(J)から選ばれる少なくとも1種を、上記1.の熱可塑性樹脂組成物または上記2.の熱可塑性樹脂組成物(D)100質量部に対して0.1〜30質量部配合してなることを特徴とする接触用部品。
4.自動車内装部品、スイッチ部品、事務機器用部品、デスク用ロック部品、住宅用内装部品、又は室内扉の開閉ダンパー部品に使用される上記1.〜3.のいずれかに記載の接触用部品。
5.自動車内装部品が自動車用ベンチレーター、自動車用エアコンの板状羽根、バルブシャッター、ルーバー、スイッチ部品、又はカーナビゲーション用外装部品である上記1 .〜4.の接触用部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、(A)成分と(B)成分からなる熱可塑性樹脂組成物、更に(C)成分を配合してなる熱可塑性樹脂組成物からなる、耐衝撃性及び成形品表面外観性に優れ、部品が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下しない接触用部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は軋み音の発生を調べる方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書において、「 (共)重合」 とは、単独重合および共重合を意味し、「 (メタ)アクリル」 とは、アクリル及び/またはメタクリルを意味する。
【0016】
本発明の(A)成分は、ポリオルガノシロキサン(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物、または、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体(b)を重合してなるポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂である。
本発明で使用されるポリオルガノシロキサン(a)は、オルガノシロキサン(a−1)あるいは必要に応じてこれとグラフト交叉剤(a−2)とを共縮合して得られる変性ポリオルガノシロキサンがあるが、耐衝撃性及び成形品表面外観性から前記変性ポリオルガノシロキサンが好ましい。ここで、オルガノシロキサン(a−1)としては、例えば一般式R1nSiO(4−n)/2(式中、R1は置換または非置換の1価の炭化水素基であり、nは0〜3の整数を示す)で表わされる構造単位を有するものであり、直鎖状、分岐状または環状構造を有するものの何れもが使用できるが、好ましくは環状構造を有するオルガノシロキサンである。
【0017】
このオルガノシロキサン(a−1)の有する置換基または非置換の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、およびそれらをハロゲン原子またはシアノ基で置換した置換炭化水素基などを挙げることができる。
【0018】
オルガノシロキサン(a)の具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン等の環状化合物の他に、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。尚、このオルガノシロキサン(a−1)は、予め縮合された、例えばポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンを用いることもできる。また、オルガノシロキサン(a−1)が、ポリオルガノシロキサンである場合、その分子末端基は、例えば水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封鎖されているものも使用できる。
【0019】
グラフト交叉剤(a−2)としては、例えば次の化合物が使用できる。すなわち、下記(イ)で表わされる不飽和基とアルコキシシリル基とを併せ持つグラフト交叉剤
(イ) CH2 =CR3 −R2
(式中、R2 はフェニル基、R3 は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)
この化合物の具体例としては、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、1−(p−ビニルフェニル)メチルジメチルイソプロポキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチレンメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルフェノキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)−1,1,2−トリメチル−2,2−ジメトキシジシラン等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
グラフト交叉剤(a−2)としては、他にビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基、メルカプト基(チオール基)、アミノ基等を有するシラン化合物を使用することもできる。これらの他のグラフト交叉剤としては、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することもできるし、上記(イ)で記載したグラフト交叉剤と組み合わせて使用することもできる。ここでグラフト交叉剤(a−2)として好ましいものは、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチレンメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
このグラフト交叉剤(a−2)の使用割合は、上記(a−1)成分と上記(a−2)成分の合計量中に、0〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.3〜5質量%であり、特に好ましくは0.5〜3質量%である。グラフト交叉剤(a−2)の割合が50質量%を超えると、グラフト率は大きくなるがグラフトされた(共)重合体の分子量が低下し、その結果、衝撃強度が低下する傾向にある。
【0022】
変性ポリオルガノシロキサン(a)は、前記オルガノシロキサン(a−1)と前記グラフト交叉剤(a−2)とを、通常アルキルベンゼンスルホン酸などの乳化剤の存在下でホモミキサー、ホモジナイザーなどを用いてせん断混合し、縮合させることによって製造することができる。変性ポリオルガノシロキサン(a)の製造に際し、得られる樹脂の耐衝撃性を向上させる目的から、第3成分として架橋剤を添加することもできる。架橋剤としてはメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン等の3官能あるいは4官能の架橋剤を使用することができる。
ここで使用される上記架橋剤としては、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。この架橋剤の使用量は、オルガノシロキサン(a−1)およびグラフト交叉剤(a−2)の合計量に対して、通常、10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
【0023】
ここで、変性ポリオルガノシロキサン(a)のポリスチレン換算の重量平均分子量は
通常30,000以上であり、好ましくは30,000〜1,000,000が好ましく、更に好ましくは50,000〜300,000である。この範囲で本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性および成形品表面外観性のバランスに優れる。
【0024】
(A)成分の製造で使用される芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのうちスチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0025】
芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物、(メタ) アクリル酸エステル、マレイミド化合物、及びカルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等の官能基を1種以上有する官能基含有不飽和化合物等があり、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0027】
(メタ) アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうちメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルが好ましい。
【0028】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのうち、N−シクロヘキシルマレイミド及びN−フェニルマレイミドが好ましい。
尚、このマレイミド化合物からなる単量体を重合体に導入する方法としては、予め、無水マレイン酸を共重合させ、その後、イミド化する方法も好ましく使用される。
【0029】
カルボキシル基含有不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのうちアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0030】
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのうち無水マレイン酸が好ましい。
【0031】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのうちメタクル酸2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0032】
アミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノメチル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノメチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、p−アミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
アミド基含有不飽和化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかで、好ましいものはアクリルアミドである。
【0034】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で好ましいものは、グリシジルメタクリレートである。
【0035】
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記したビニル単量体は、上記芳香族ビニル化合物または芳香族ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物と上記共重合可能な他のビニル単量体の組み合わせで使用されるが、好ましいものは芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体との組み合わせである。ここで更に好ましい組み合わせは、芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物/(メタ) アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物/(メタ) アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物/マレイミド化合物であり、特に好ましくはスチレン/アクリロニトリル(60〜90/10〜40; 質量比)、スチレン/メタクリル酸メチル(10〜90/10〜90;質量比)、スチレン/フェニルマレイミド(50〜95/5〜50;質量比)である。
【0037】
また、上記した好ましい単量体の組み合わせに対して官能基含有不飽和化合物を組み合わせる場合、単量体全量100質量%に対して、通常0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜15質量%である。
【0038】
本発明の(A)成分は、前記ポリオルガノシロキサン(a)の存在下に前記単量体(b)をグラフト重合して得られるポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂であるが、ここで、通常は、単量体成分(b)の(共)重合体が(a)成分にグラフトしているグラフト共重合体と、(a)成分にグラフトしていない(b)成分の(共)重合体が含まれる。ただし、このグラフト共重合体に、(b)成分の(共)重合体がグラフトしていない(a)成分が含まれていてもよい。
【0039】
ポリオルガノシロキサン(a)に単量体(b)をグラフト重合する際の仕込み組成は、(a)成分は5〜80質量%が好ましく、更に好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは10〜70質量%である。一方、(b)成分は20〜95質量%が好ましく、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%である〔但し、(a)+(b)=100質量%〕。(a)成分の範囲が5質量%未満、(b)成分の範囲が95質量%を超えると、軋み音低減性及び耐衝撃性が劣る傾向にあり。一方、(a)成分の範囲が80質量%を超え、(b)成分の範囲が20質量%未満では耐衝撃性及び成形品表面外観性が劣る傾向にある。
【0040】
このようにして得られるポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂(A)のグラフト率は10質量%以上が好ましく、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30〜150質量%である。(A)成分のグラフト率が10質量%未満であると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性及び成形品表面外観性が劣る傾向にある。上記グラフト率は、(A)成分1グラム中のゴム成分をX、(A)成分中のメチルエチルケトン不溶分をYとすると、下記の計算式により求まられる。
グラフト率(%)=〔(Y−X)/X〕×100
また、(A)成分中のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕( メチルエチルケトン中、30℃で測定) は、好ましくは0.1〜1.5dl/g、更に好ましくは0.3〜1.0dl/gである。極限粘度〔η〕がこの範囲であると、耐衝撃性と成形加工性のバランスに優れる。
【0041】
ポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂(A)の製造時に用いるポリオルガノシロキサン(a)の体積平均粒子径は、好ましくは800nm以下、更に好ましくは50〜500nmであり、特に好ましくは80〜300nmである。体積平均粒子径が800nmを超えると成形品表面外観性が劣る傾向にある。ここで体積平均粒子径は、動的光散乱法などの公知の方法で測定することができる。
【0042】
本発明のポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂(A)は乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合およびこれらを組み合わせた重合法で製造することができるが、本発明の目的である軋み音低減性、耐衝撃性及び成形品表面外観性のバランスから乳化重合で製造されたものである。
上記、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合で使用される乳化剤、溶媒、懸濁剤、重合開始剤、連鎖移動剤等は、公知のものが全て使用される。また、重合条件(重合温度、攪拌回転数、攪拌翼形状等)、重合方法(主副原料の添加方法等)及び重合体の回収方法等は全て公知のものが使用できる。
【0043】
本発明の(B)成分であるビニル系重合体は、1種または2種以上のビニル単量体(c)を重合してなる(共)重合体であり、ここで使用されるビニル単量体としては、(A)成分の単量体(b)で記載した芳香族ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体が全て使用できる。
【0044】
本発明の(B)成分で好ましいビニル単量体の組み合わせは、芳香族ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体との組み合わせである。ここで更に好ましい組み合わせは、芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物/(メタ) アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物/(メタ) アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物/マレイミド化合物であり、特に好ましくはスチレン/アクリロニトリル(60〜90/10〜40; 質量比)、スチレン/メタクリル酸メチル(10〜90/10〜90;質量比)、スチレン/フェニルマレイミド(50〜95/5〜50;質量比)、α−メチルスチレン/アクリロニトリル/スチレン(50〜80/20〜40/0〜10;質量比)、スチレン/アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル(0〜40/5〜30/30〜95;質量比)である。ここで芳香族ビニル化合物/マレイミド化合物からなる共重合体には、芳香族ビニル化合物/無水マレイン酸共重合体の酸無水物をアミン化合物( 例えばアニリン等) でイミド化したものも含まれる。その際、完全にイミド化されず酸無水物が一部残る場合があるが、このものも芳香族ビニル化合物/マレイミド化合物共重合体に含まれる。
【0045】
また、上記した好ましい単量体の組み合わせに対して官能基含有不飽和化合物を組み合わせる場合、単量体全量100質量%に対して、通常0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜15質量%である。
【0046】
上記本発明のビニル系重合体(B)は、公知の重合法である乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合及びこれらを組み合わせた重合法で製造することができる。
本発明の(B)成分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内にあれば、成形加工性と耐衝撃性のバランスに優れる。本極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類および使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における上記(A)成分と(B)成分の配合割合は、(A)成分が5〜100質量部に対し、(B)成分が0〜95質量部であり、熱可塑性樹脂組成物中のポリオルガノシロキサン量が、好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは7〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%になるように配合割合を決められる。ポリオルガノシロキサン量が5質量%未満では軋み音低減性及び耐衝撃性が劣る傾向にあり、一方、40質量%を超えると成形品表面外観性が劣る傾向にある。
【0048】
本発明の(C)成分は、共役ジエン系ゴム質重合体(d)5〜80質量%の存在下に、芳香族ビニル化合物、または、芳香族ビニル化合物と該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体(b)20〜95質量%をグラフト重合してなる共役ジエンゴム系熱可塑性樹脂である。
ここで使用される共役ジエン系ゴム質重合体(d)としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエンランダム共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンランダム共重合体等のブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレンランダム共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等のイソプレン系共重合体等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。共役ジエン系ゴム質重合体(d)は、架橋重合体であってもよいし、未架橋重合体であってもよい。特に好ましい(d)成分は、ポリブタジエンの単独重合体及びスチレン・ブタジエンのランダム共重合体である。尚、必要に応じ、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体やアクリル系ゴム質重合体と併用することも可能である。
【0049】
ここで使用される単量体(b)は、前記(A)成分で記載した単量体(b)が全て使用でき、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
ここで好ましいものは、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体との組み合わせである。ここで更に好ましい組み合わせは、芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物/(メタ) アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物/(メタ) アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物/マレイミド化合物であり、特に好ましくはスチレン/アクリロニトリル(60〜90/10〜40; 質量比)、スチレン/メタクリル酸メチル(10〜90/10〜90;質量比)、スチレン/フェニルマレイミド(50〜95/5〜50;質量比)である。
【0051】
また、上記した好ましい単量体の組み合わせに対して官能基含有不飽和化合物を組み合わせる場合、単量体全量100質量%に対して、通常0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜15質量%である。
【0052】
本発明の(C)成分は、前記共役ジエン系ゴム質重合体(d)の存在下に前記単量体(b)をグラフト重合して得られるグラフト重合体であるが、ここで、通常は、単量体成分(b)の(共)重合体が(d)成分にグラフトしているグラフト共重合体と、(d)成分にグラフトしていない(b)成分の(共)重合体が含まれる。ただし、このグラフト共重合体に、(b)成分の(共)重合体がグラフトしていない(d)成分が含まれていてもよい。
【0053】
本発明の(C)成分は、公知の重合法である乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合及びこれ等の組み合わせの方法で製造することができる。
本発明の(C)成分は、本発明の目的である軋み音低減性、成形品表面外観性を維持したままで耐衝撃性を更に向上させるために配合されるが、成形品表面外観性から乳化重合で製造されたものが好ましく、ここで使用される共役ジエン系ゴム質重合体(d)ラテックスのゴム粒子径は、体積平均粒子径で50nm〜800nm、好ましくは100nm〜700nmのものを用いることが好ましい。ここで体積平均粒子径は、動的光散乱法などの公知の方法で測定することができる。また、乳化重合で使用される共役ジエン系ゴム質重合体(d)のゲル含率は、好ましくは10〜99%、更に好ましくは20〜98%、特に好ましくは30〜98%であり、ゲル含率が上記範囲にあると成形加工性、耐衝撃性および成形品表面外観性のバランスに優れる。
【0054】
尚、上記ゲル含率は、以下の方法で求めることができる。
まず、共役ジエン系ゴム質重合体(d)1グラムをトルエン100mlに投入し、室温で48時間静置した後、100メッシュの金網( 質量をW1グラムとする) で濾過したトルエン不溶分と金網を80℃で6時間真空乾燥して秤量し(質量W2グラムとする)、以下の式で算出する。
【0055】
ゲル含率(質量%)=(W2−W1)/1×100
【0056】
また、共役ジエン系ゴム質重合体(d)に単量体(b)をグラフト重合する際の仕込み組成は、(d)成分5〜80質量%が好ましく、更に好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは10〜70質量%である。一方、(b)成分は20〜95質量%が好ましく、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%である〔但し、(d)+(b)=100質量%〕。(d)成分の範囲が5質量%未満、(b)成分の範囲が95質量%を超えると、耐衝撃性が劣る傾向にある。一方、(d)成分の範囲が80質量%を超え、(b)成分の範囲が20質量%未満では耐衝撃性及び成形品表面外観性が劣る傾向にある。
【0057】
このようにして得られた共役ジエンゴム系熱可塑性樹脂(C)のグラフト率は、通常30〜200質量%、好ましくは40〜100質量%である。このグラフト率が30質量%未満及び200質量%を超えると、耐衝撃性が低下する場合がある。またグラフト率は、下記式で求めることができる。
【0058】
グラフト率(質量%) =〔(S−T)/T〕×100
【0059】
上記式中、Sは共役ジエンゴム系熱可塑性樹脂(C)1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件で、振とう機により2時間振とうした後、室温で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(グラム)であり、Tは(C)成分1グラムに含まれる共役ジエン系ゴム質重合体(d)の質量(グラム)である。この共役ジエン系ゴム質重合体(d)の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法または赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等で得ることができる。
【0060】
上記共役ジエンゴム系熱可塑性樹脂(C)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、いずれも、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内にあれば、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。ここで極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類および使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
【0061】
本発明の(A)成分、必要に応じて(B)成分、(C)成分を含有する熱可塑性樹脂組成物(D)の場合、該組成物(D)のポリオルガノシロキサン(a)と共役ジエン系ゴム質重合体(d)の質量比(a):(d)が5〜95:95〜5の範囲で使用することが耐衝撃性、成形品表面外観及び軋み音低減効果から好ましく、更に好ましくは50〜90:50〜10、特に好ましくは60〜88:40〜12である。また、(A)成分、必要に応じて(B)成分、(C)成分の合計100質量部におけるポリオルガノシロキサン(a)と共役ジエン系ゴム質重合体(d)の合計の量は3〜40質量部であることが、耐衝撃性の面から好ましい。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、更に、オレフィン系樹脂(E)、低分子量酸化ポリエチレン(F)、超高分子量ポリエチレン(G)、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂(H)およびシリコーンオイル(I)から選ばれた少なくとも1種を、熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物(D)(以下、両者の組成物を単に熱可塑性樹脂組成物と記す場合がある)100質量部に対して0.1〜30質量部配合することができる。
【0063】
ここで使用されるオレフィン形樹脂(E)としては、例えば炭素数2〜10のオレフィン系樹脂の少なくとも1種からなるオレフィン系樹脂が挙げられる。このオレフィン系樹脂(E)は、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0064】
上記オレフィン系樹脂(E)の形成に用いるオレフィン類の例としては、エチレン、及びプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルへキセン−1等のα−オレフィン、更にノルボルネン等の環状オレフィン等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのうち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1およびノルボルネンが好ましい。
オレフィン系樹脂(E)の形成において必要に応じて用いることのできる他の単量体としては、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチルー1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
【0065】
オレフィン系樹脂(E)としては、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体等のプロピレン単位を主として含む重合体、ポリエチレン、エチレン・ノルボルネン共重合体が好ましく、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。尚、上記プロピレン・エチレン共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等があり何れも使用できる。
また、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の何れのものでも使用できる。
本発明で使用されるポリオレフィン系樹脂としては、重合触媒を脱触したもの、または、酸無水物基、カルボキシル基およびエポキシ基で変性してものを用いることもできる。
【0066】
オレフィン系樹脂(E)の結晶性の有無は問わないが、室温下、X線回折による結晶化度が10%以上であるものを少なくとも1 種用いることが好ましい。
また、オレフィン系樹脂(E)のJISK7212に準拠して測定した融点が40℃以上であるものを少なくとも1 種用いることが好ましい。
本発明の(E)成分としてポリプロピレン系樹脂を使用する場合、JISK7210:1999(230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、ポリエチレン系樹脂を使用する場合は、JISK6922−2(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、特に好ましくは0.1〜60g/10分である。
更に、本発明の目的である軋み音低減効果をより有効に達成するためには、オレフィン系樹脂の中でポリエチレン系樹脂を使用するか、ポリエチレン系樹脂を含むものである。
【0067】
上記オレフィン系樹脂(E)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、更に好ましくは5〜80質量部、特に好ましくは10〜60質量部であり、その使用量が5質量部未満では軋み音を改良する効果が得られない傾向があり、一方、100質量部を超えると軋み音を改良する効果が劣り好ましくない。
【0068】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に上記オレフィン系樹脂(E)を配合する場合、本熱可塑性樹脂とオレフィン系樹脂との相溶性を向上させる目的からスチレンを主体とする重合体ブロックとブタジエンを主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体またはその水素化物(J)を配合することが好ましい。これらのブロック共重合体の構造としては、(水素添加)スチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体が特に好ましい。
当該(水素添加)ブロック共重合体(J)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、5〜100質量部の範囲で使用できる。
【0069】
低分子量酸化ポリエチレン(F)とは、カルボン酸基及び/または酸無水物基で変性された数平均分子量(GPC法で測定)が800〜10,000、好ましくは800〜6,000、更に好ましくは1,000〜5,000、特に好ましくは1,200〜4,000のものである。また、酸成分の付加量を表わす酸価は、通常1〜40(mgKOH/g)、好ましくは10〜40(mgKOH/g)、更に好ましくは10〜35(mgKOH/g)、特に好ましくは10〜30(mgKOH/g)である。分子量が800未満では軋み音の改良効果が少なくなり、一方、10,000を超えると耐衝撃性が劣る場合がある。また、酸価が1未満では軋み音の改良効果が少なく、40を超えると成形時にシルバーストリーク等の外観不良を起すことがあり好ましくない。
上記低分子量酸化ポリエチレン(F)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部、特に好ましくは0.3〜3質量部の範囲で使用され、0.1部未満では軋み音が低減されない傾向にあり、30質量部を超えると耐衝撃性及び成形品表面外観性が劣る傾向にある。
【0070】
超高分子量ポリエチレン(G)としては、ASTMD4020に準拠して溶融粘度法で測定した平均分子量が40万〜650万のポリエチレンであり、好ましい平均分子量は40万〜350万、更に好ましくは40万〜250万である。本発明の(A)成分及び( B) 成分に配合し溶融混練した場合でも本発明の超高分子量ポリエチレン(G)は未溶融状態で存在することから、形態として粉体のものを用いることが好ましく、コールターカウンター法で測定した平均粒子径は、50μm以下のものを用いることが好ましく、更に好ましくは5〜40μmの範囲のものである。
上記(G)成分は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部、特に好ましくは0.3〜3質量部の範囲で使用され、0.1部未満では軋み音が低減されない傾向にあり、30質量部を超えると耐衝撃性及び成形品表面外観性が劣る傾向にある。
【0071】
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂(H)としては、通常乾性の潤滑剤として使用されるものである。好ましくは、微粉末状であり、微粉末の粒子径は,パークロルエチレン中に分散させた分散液を光透過法により測定する方法で平均0.1〜100μmのものである。また、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の融点は、DSC測定法で320℃以上のものが好ましい。ポリテトラフルオロエチレン微粉末は再凝集しやすいので再凝集し難くするために焼成処理等の処理を施したものもあり、これらも好ましく使用できる。
上記(H)成分は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部、特に好ましくは0.3〜3質量部の範囲で使用され、0.1部未満では軋み音が低減されない傾向にあり、30質量部を超えると耐衝撃性及び成形品表面外観性が劣る傾向にある。
【0072】
上記(I)成分のシリコーンオイルは、ポリオルガノシロキサン構造を持つものであれば周知のものを用いることができる。これらには、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等の未変性シリコーンオイルであってもよいし、ポリオルガノシロキサン構造中の側鎖の一部及び/またはポリオルガノシロキサン構造の片末端部分、または、ポリオルガノシロキサン構造の両末端部分に各種有機基が導入された変性シリコーンオイルであってもよい。上記変性シリコーンオイルとしては、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アクリル酸変性シリコーンオイル、メタクリル酸変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等を使用することができる。
尚、これらのシリコーンオイルは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
本発明で使用するシリコーンオイル(I)の23℃における動粘度は、60〜500.000cStが好ましく、更に好ましくは500〜350,000cSt、特に好ましくは1,000〜200,000cStであり、この範囲外では軋み音低減効果が劣り好ましくない。また、シリコーンオイルの動粘度の測定は,ASTMD445−46T(JIS8803でも可)によるウベローデ粘度計により測定されたものである。
【0074】
上記シリコーンオイル(I)成分は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜8質量部であり、更に好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは2.5〜3.5質量部である。上記(I)成分の配合量が0.1質量部未満では、軋み音の低減効果が劣る傾向にあり、8質量部を超えると成形品表面外観性及び耐衝撃性が劣る傾向にある、また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際の溶融混練が困難になる場合がある。
【0075】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、造核剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、防かび剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
【0076】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、公知の無機または有機充填材を配合することができる。ここで使用される充填材としは、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラス繊維のミルドファイバー、ガラス粉、ガラスビース、中空ガラスビーズ、炭素繊維、炭素繊維のミルドファイバー、銀、銅、黄銅、鉄等の粉体あるいは繊維状物質、カーボンブラック、錫コート酸化チタン、錫コートシリカ、ニッケルコート炭素繊維、多ルク、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムウイスカー、ワラストナイト、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ヘキトライト、酸化亜鉛ウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、板状アルミ、板状シリカ及び有機処理されたスメクタイト、アラミド繊維、フェニール樹脂、ポリエステル繊維等があり、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
更に、上記充填材の分散性を向上させる目的から、公知のカップリング剤、表面処理、集束剤等で処理したものを用いることができ、公知のカップリング剤、表面処理剤、集束剤等で処理してものを用いることができ、公知のカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等がある。
上記無機または有機充填材は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、1〜200質量部の範囲で通常使用される。
【0078】
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、要求される性能に応じて、他の重合体、例えば他のポリオレフィン樹脂、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂、熱可塑性脂肪族ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタンエラストマー等を適宜配合することができる。、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混合機を用いて、適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練方法は、押出機を用いる方法である。さらに、それぞれの成分を混練するに際しては、それぞれの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によりペレット化することもできる。また、充填材のうち繊維状のものは、混練中での切断を防止するためにサイドフィーダー等の添加方法を用いて押出機の途中から供給する方が好ましい。溶融混練温度は、通常180〜300℃の範囲である。
【0080】
本発明の接触用部品は、上記の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる。該熱可塑性樹脂組成物からなる本発明の接触用部品を製造する方法には何等制限はなく、射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、異形押出成形、フィルム成形等の公知の方法により製造することができる。
【0081】
本発明の接触用部品が接触する他の部材に特に制限はなく、例えば、本発明のゴム強化スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、有機質材料、無機質材料、金属材料等が挙げられる。
ここで熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル、PC及びまたはPBT/ABS樹脂、PC及びまたはPBT/AES樹脂、PA/ABS樹脂、PA/AES樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリウレタン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
ゴムとしては、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、スチレン・ブタジエン系ブロック共重合体、水素添加スチレン・ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン・ イソプレン系ブロック共重合体、水素添加スチレン・ イソプレン系ブロック共重合体等の各種合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0084】
有機質材料としては、例えば、インシュレーションボード、MDF( 中質繊維板) 、ハードボード、ポーティクルボード、ランバーコア、LVL(単板積層板)、OSB(配向性ボード)、PSL(パララム)、WB(ウエハーボード)、硬質繊維板、軟質繊維板、ランバーコア合板、特殊コア−合板、ベニアコア−ベニア板、タップ樹脂を含浸させた紙の積層シート・ 板、(古) 紙等を砕いた細かい小片・線状体に接着剤を混合して加熱圧縮したボード、各種の木材等が挙げられる。
【0085】
無機質材料としては、例えば、珪酸カルシウムボード、フレキシブルボード、ホモセメントボード、石膏ボード、シージング石膏ボード、石膏ラスボード、化粧石膏ボード、複合石膏ボード、各種セラミック、ガラス等が挙げられる。
更に、金属材料としては、鉄、アルミニウム、銅、各種の合金等が挙げられる。
上記した本発明の接触用部品が接触する他の部材において、本発明の目的である軋み音低減の効果が特に大きいものは、上記熱可塑性樹脂、上記熱硬化性樹脂、上記ゴムが好ましく、更に好ましくは、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、及びPCとの組成物である。
【0086】
本発明の接触用部品は、他の部材と接触、接合、嵌合する箇所を有する自動車内装用部品、事務用機器、住宅内装用部品等に好適に用いることができる。
本発明の自動車内装用部品は、他の部材と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能ある。さらには、延性破壊することにより、衝突時の安全性に優れる。このような自動車内装部品としてはドアトリム、ドアライニング、ピラーガーニッシュ、コンソール、ドアポケット、ベンチレータ、ダクト、エアコン、メーターバイザー、インパネアッパーガーニッシュ、インパネロアガーニッシュ、A/T インジケーター、オンオフスイッチ類(スライド部、スライドプレート)、グリルフロントデフロスター、グリルサイドデフロスター、リッドクラスター、カバーインストロアー、マスク類(マスクスイッチ、マスクラジオなど)、グローブボックス、ポケット類(ポケットデッキ、ポケットカードなど)、ステアリングホイールホーンパッド、スイッチ部品、カーナビゲーション用外装部品等を挙げることができる。その中でも、自動車用ベンチレーター、自動車用エアコンの板状羽根、バルブシャッター、ルーバー、スイッチ部品、カーナビゲーション用外装部品等として特に好適に用いることができる。
【0087】
本発明の事務機器用部品は、他の部材と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。さらには、延性破壊することにより、衝突等の安全性に優れる。このような事務用機器用の接触用部品としては、デスクロック部品、デスク引き出し等に好適に用いることができる。
【0088】
本発明の住宅内装用部品は、他の部材と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。さらには、延性破壊することにより、衝突等の安全性に優れる。このような住宅内装用部品としては、シェルフ扉、チェアダンパー、テーブル折りたたみ脚可動部品、扉開閉ダンパー、引き戸レール、カーテンレール等として特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、実施例中において部および%は、特に断らない限り質量基準である。
【0090】
(1)評価方法:
実施例、比較例中の各種測定は、下記の方法に拠った。
【0091】
(1−1)軋み音評価1
株式会社日本製鋼所製の射出成形機「 J−100E」 (型式名)を用い、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物およびテクノポリマー株式会社製のPC/ABS樹脂「 CK43」 (商品名)からなる、ISOダンベル試験片を230℃で射出成形した。次に、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるISO試験片を5枚と、「 CK43」 からなるISOダンベル試験片5枚を交互に重ね合わせ、この両端を手でひねって軋み音の発生状況を評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づいて判定を行った。
◎:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生はなかった。
〇:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生は僅かであった。
△:5回の評価において、軋み音の発生が顕著な場合が含まれていた。
×:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生が顕著であった。
(1−2)軋み音評価2:
上記で得た試験片を80℃のギアオーブンに400時間放置した。その試験片を用い、上記(1−1)の軋み音評価1と同じ方法で軋み音の発生状況を評価した。
【0092】
(1−3)耐衝撃性(落錘衝撃強さ):
日精樹脂工業株式会社製の電動射出成形機「 エルジェクトNEX30」 (型式)を用い、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる、80mm×55mm×2.4mmの平板型の試験片を230℃で射出成形した。
次に、株式会社島津製作所の島津ハイドロショット・高速パンクチャー衝撃試験機「 HITS−P10」 (型式名)を用い、下記条件で上記試験片を打ち抜いて破壊エネルギー(J)を測定した。
測定温度 :23℃
打ち抜き速度 :5.6mm/s
打ち抜き試験用治具のストライカ先端r:12.7mm
【0093】
(1−4)成形品表面外観性:
上記落錘衝撃強さ測定用試験片の表面状態を目視観察し、下記判断基準で評価した。
〇:フローマーク等の外観不良がなく良好である。
△:フローマーク等の外観不良がやや認められ外観性がやや劣る。
×:フローマーク等の外観不良が顕著であり外観性が劣る。
【0094】
(2)(A)成分
(2−1)製造例1:変性ポリオルガノシロキサンラテックス
p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン1.5部とオクタメチルシクロテトラシロキサン98.5部を混合し、これをドデシルベンゼンスルホン酸2.0部を溶解した蒸留水300部中に投入し、ホモミキサーにより3分間攪拌して乳化分散させた。この混合液をコンデンサー、窒素導入口、および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに移し,攪拌混合しながら90℃で6時間加熱し、5℃で24時間冷却することで縮合反応を完了させた。得られた変性ポリオルガノシロキサンの縮合率は92.8%であった。この変性ポリオルガノシロキサンのラテックスを炭酸ナトリウム水溶液で中和した。
得られた変性ポリオルガノシロキサンラテックスの体積平均粒子径は2,80nmであった。
【0095】
(2−2)製造例2;ポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂A1(ポリオルガノシロキサン/スチレン/アクリロニトリル共重合体)
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコにイオン交換水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、変性ポリオルガノシロキサン40部(固形分) 、スチレン15部、アクリロニトリル5部を加え、攪拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第一鉄7水和物0.004部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・2水和物0.2部およびイオン交換水15部よりなる水溶液、ならびにジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間反応を続けた。その後、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルヒドロパーオキサイド0.2部、スチレン30部およびアクリロニトリル10部からなる連続添加成分を3時間かけて重合系に添加しながら重合反応を続けた。添加終了後、さらに攪拌を1時間継続した。この時点での重合転化率は97%であった。2,2´−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結させた。フラスコより反応生成物ラテックスを取り出し、塩化カルシウム2部の水溶液で凝固し、水洗した後、80℃で乾燥した後、ポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂A1の白色粉末を得た。本樹脂A1のグラフト率は90%、極限粘度〔η〕は0.47dl/gであった。
【0096】
(3−1)製造例3;ビニル系重合体B1(スチレン/アクリロニトリル共重合体)
内容積30リットルのリボン翼を備えたステンレス製オートクレーブを2基連結し、窒素置換した後、1基目の反応容器にスチレン75部、アクリルニトリル25部、トルエン20部を連続的に添加した。分子量調節剤としてtert−ドデシルメルカプタン0.12部およびトルエン5部の溶液、および重合開始剤として、1,1´―アゾビス(シクロへキサン−1−カーボニトリル)0.1部、およびトルエン5部の溶液を溶液を連続的に供給した。1基目の重合温度は110℃にコントロールし、平均滞留時間2.0時間、重合転化率57%であった。得られた重合体溶液は、1基目の反応容器の外部に設けられたポンプによりスチレン、アクリロニトリル、トルエン、分子量調節剤及び重合開始剤の供給量と同量を連続的に取り出し2基目の反応容器に供給した。2基目の反応容器の重合温度は、130℃で行い、重合転化率は75%であった。2基目の反応容器で得られた共重合体溶液は、2軸3段ベント付き押出機を用いて、直接未反応単量体と溶剤を脱揮し、極限粘度〔η〕0.48dl/gのビニル系重合体B1を得た。
【0097】
(4)(C)成分
(4−1)製造例4;共役ジエン系ゴム系熱可塑性樹脂C1(共役ジエン系ゴム/スチレン/アクリロニトリル共重合体)
攪拌翼を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに窒素気流中で、イオン交換水95部、ロジン酸カリウム0.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径200nm、ゲル含率85%)30部(固形分)、ブタジエン・スチレンランダム重合体ラテックス(平均粒子径600nm、スチレン含量25%)10部(固形分)、スチレン14.6部、アクリロニトリル5.4部を加え、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。1時間重合させた後、更にイオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン29.2部、アクリロニトリル10.8部、tert−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、更に1時間重合を継続させた後の重合体転化率は98%であった。その後、2,2´−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。得られた重合体ラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥して、共役ジエン系ゴム系熱可塑性樹脂C1を得た。
この樹脂C1のグラフト率は68%、アセトン可溶分に極限粘度〔η〕は0.45dl/gであった。
【0098】
(5)(E)成分;オレフィン系樹脂
日本ポリエチレン社製の下記のものを用いた。
E1;ノバテックHDHJ560(商品名)
高密度ポリエチレン、メルトフローレート7g/10分
【0099】
(6)(F)成分;低分子量ポリエチレン
三洋化成工業社製の下記のものを用いた。
F1;サンワックスEP−250P(商品名)
酸価20mgKOH/g、平均分子量2000
【0100】
(7)G)成分;超高分子量ポリエチレン
三井化学社製の下記のものを用いた。
G1;ミペロンXM−221U(商品名)
平均分子量200万、平均粒径25μm
【0101】
(8)(H)成分;ポリテトラフルオロエチレン系樹脂
ダイキン工業社製下記のものを用いた。
H1;ルブロンL−5(商品名)
平均粒子径約7μm
【0102】
(9)(I) 成分;シリコーンオイル
信越シリコーン社製の下記のものを用いた。
I1;KF−96H−1 万cSt(商品名)
ジメチルシリコーンオイル、25℃における動粘度10,000cSt
【0103】
(10)(J)成分;水素添加ブロック共重合体
旭化成ケミカルズ社製の下記のものを用いた。
J1;タフテックH1041(商品名)
スチレン/ブタジエン比30/70のスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、メルトフローレート5.0g/10分〔JISK7210(230℃、荷重2.16kgf)に準拠〕
【0104】
実施例1〜11、比較例1
表1記載の配合割合で各構成成分をヘンシェルミキサーにより混合した後、ベント付き二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX44、バレル設定温度240℃)を用いて溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を得、これをペレット化した。得られたぺレットを十分に乾燥したのち、このペレットを用いて前記方法で試験片を成形し、そして得られた試験片を用いて、前記方法で評価した。評価結果を表1に示した。
【0105】
【表1】

【0106】
表1から明らかなように、実施例1〜11で代表される本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的とする軋み音が低減され、更に、耐衝撃性と成形品表面外観性をバランスよく備えた成形品を提供する。
これに対して、比較例1は、本発明の(A)成分のゴム種として、本発明のポリオルガノシロキサン(a)の代わりにブタジエン系ゴム質重合体(d)を使用した例であり、軋み音低減効果が劣る。
【0107】
実施例12
図1に示すように、接触用部品Aとして、実施例1の熱可塑性樹脂組成物からなり、底部1と立ち上り部2とからなるT字状部品と、他の接触用部品Bとして、テクノポリマー製のPC/ABS「CK43」(商品名)からなり、底部3と、上記立ち上り部2を密に挟み付ける2個の立ち上り部4、4とからなる挟着部品とを作製し、両者を80℃のギアオーブンに200時間放置した後、T字状部品の立ち上り部2を挟着部品の2個の立ち上り部4、4の間に挟み付けるように組み付け、矢示したように摺動させて軋み音の発生の有無を調べた。その結果、軋み音の発生は認められなかった。
【0108】
比較例2
接触用部品Aとして、T字状部品の熱可塑性樹脂組成物を比較例1の熱可塑性樹脂組成物にそれぞれ変更した他は、実施例12と同様にして軋み音の発生の有無を調べた。その結果、いずれの場合も軋み音の発生が認められた。
【0109】
以上から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品は、他の部材と接触、接合、嵌合する箇所を有する自動車内装用部品、事務用機器、住宅内装用部品等に好適であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の接触用部品は、部材が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物からなる接触用部品を提供することができ、他の部材と接触、接合、嵌合する箇所を有する自動車内装部品、事務用機器、住宅内装用部品等に好適に用いることができる。自動車内装部品としては、特に自動車用ベンチレーター等に好適である。
【符号の説明】
【0111】
1 底部
2 立ち上り部
3 底部
4 立ち上り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分5〜100質量部と(B)成分0〜95質量部を含有してなり、両成分(A)(B)の合計が100質量部である熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする接触用部品:
(A)ポリオルガノシロキサン(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物、または、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体(b)を重合してなるポリオルガノシロキサン系熱可塑性樹脂、
(B)1種または2種以上のビニル単量体(c)を重合してなるビニル系重合体。
【請求項2】
更に、共役ジエン系ゴム系熱可塑性樹脂(C)を含有してなる熱可塑性樹脂組成物(D)であって、該共役ジエン系ゴム系熱可塑性樹脂(C)は共役ジエン系ゴム質重合体(d)の存在下に、芳香族ビニル化合物、または、芳香族ビニル化合物および該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系単量体(b)を重合してなり、前記熱可塑組成樹脂組成物(D)中のポリオルガノシロキサン(a)と共役ジエン系ゴム質重合体(d)の質量比(a):(d)が5〜95:95〜5であることを特徴とする請求項1記載の接触用部品。
【請求項3】
更に、オレフィン系樹脂(E)、低分子量ポリエチレン(F)、超高分子量ポリエチレン(G)、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂(H)、シリコーンオイル(I)、水素添加ブロック共重合体(J)から選ばれる少なくとも1種を、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物または請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物(D)100質量部に対して0.1〜30質量部配合してなることを特徴とする接触用部品。
【請求項4】
自動車内装部品、スイッチ部品、事務機器用部品、デスク用ロック部品、住宅用内装部品、又は室内扉の開閉ダンパー部品に使用される請求項1〜3のいずれかに記載の接触用部品。
【請求項5】
自動車内装部品が自動車用ベンチレーター、自動車用エアコンの板状羽根、バルブシャッター、ルーバー、スイッチ部品、又はカーナビゲーション用外装部品である1〜4のいずれかに記載の接触用部品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−77275(P2012−77275A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226747(P2010−226747)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】