説明

軌跡情報生成装置、方法およびプログラム

【課題】自立航法軌跡の精度を向上する技術の提供。
【解決手段】時系列の自立航法情報が示す車両の軌跡である自立航法軌跡を取得し、時系列のGPS情報が示す前記車両の軌跡であるGPS軌跡を取得し、前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡とを比較して前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡との一致度を最も高くするための前記自立航法情報の第1補正量を取得し、当該第1補正量より小さい第2補正量によって前記自立航法情報を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行軌跡を示す軌跡情報を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、方位センサや距離センサによる検出結果に基づく自立航法によって車両の推測現在位置を取得する技術が知られている。例えば、特許文献1に開示された技術においては、方位センサや距離センサによる検出結果に基づいて車両の推測現在位置を取得し、推測位置軌跡と道路上における候補位置を比較して最有力道路を特定し、最有力道路上の候補位置に基づいて推測現在位置を補正する技術が開示されている。また、推測現在位置とGPSによる測位位置とに基づいて、候補位置を特定する対象となる道路を絞り込むための誤差円を特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−298028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術のような自立航法に利用される方位センサや距離センサは基準方位からの方位差や基準位置からの距離を検出するセンサであるため、基準方位や基準位置が不正確であると推測現在位置が不正確となる。また、センサの誤差の累積量は時間とともに増大していくため、基準方位や基準位置から遠くなるほど推測現在位置が不正確になる。そこで、従来の技術においては、推測現在位置に基づいて道路上に候補位置を設定し、当該候補位置が推測現在位置であるとみなすような補正を行う。しかし、センサによって取得した推測現在位置は誤差を含むため、当該補正が正しいとは限らない。そして、一旦誤った補正をしてしまうと、センサによって検出する各情報が基準方位などの基準からの相対的な変位であることに起因して、正しい現在位置に補正することが困難になってしまう。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、自立航法軌跡の精度を向上させる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、時系列の自立航法軌跡と時系列のGPS軌跡とを取得して比較して自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなるように自立航法情報を補正するための第1補正量を取得する。そして、当該第1補正量より小さい第2補正量によって自立航法情報を補正する。すなわち、自立航法は車両自体に搭載されたセンサによって車両の動作を検出して基準からの位置変位や方位変位に基づいて規定の座標系内での車両の位置や方位を間接的に特定する航法であるため、緯度や経度などの規定の座標系内での位置を直接的に取得することはできない。従って、基準が不正確であると、真の位置や方位と全く異なる位置や方位が検出されることがあり得る。
【0006】
一方、GPS情報は、緯度や経度などの規定の座標系内での位置および方位を直接的に示す情報である。従って、誤差を含み得るとしても、GPS情報においては誤差範囲内で緯度や経度を信頼することができる。このため、GPS情報においては、真の位置や方位と全く異なる位置や方位が検出されることはない。そこで、自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなるような第1補正量による補正を行えば、自立航法情報が示す位置や方位が真の位置や方位と全く異なる状態となることを防止することができる。
【0007】
但し、GPS情報は、規定の座標系内での位置および方位を直接的に示すが、GPS情報は車両とGPS衛星との関係の他、マルチパス等の影響を受けるため、自立航法情報と比較して誤差の規則性に乏しく、急変し得る。そして、上述のように、自立航法軌跡に対して一旦誤った補正を行ってしまうと自立航法情報に基づく車両の現在位置等を正しく補正し直すことは困難になる。そこで、本発明においては、第1補正量よりも小さい第2補正量によって自立航法情報を補正する構成とすることで、仮に誤った補正を行ったとしてもその影響が抑制されるように構成している。従って、容易に自立航法軌跡の精度を向上させることができる。なお、第2補正量は第1補正量よりも小さく、第1補正量によって実現される補正の一部を実現するように設定されればよい。
【0008】
なお、GPS情報の誤差は規則性に乏しく急変し得るため、1サンプルのGPS情報を補正の際の目標とするには信頼性が乏しいが、GPS情報を時系列的な集合で捉えれば、総度数の増加によって統計的に位置および方位の信頼性を高めることができる。一方、自立航法情報は、車両の動作等に起因する誤差を含んでおり、車速や加速度、方位等の累積によって基準からの相対的な変位を特定する性質上、自立航法軌跡においては累積誤差が時間とともに増大していく。そこで、時系列の自立航法軌跡と時系列のGPS軌跡とを比較し、自立航法軌跡とGPS軌跡との相違が減少するように自立航法情報を補正すれば、当該補正によって自立航法軌跡の累積誤差を抑制することができ、累積誤差が時間とともに増大していくことを防止することができる。従って、自立航法情報が示す自立航法軌跡の精度を向上させることができる。
【0009】
ここで、自立航法軌跡取得手段は、自立航法軌跡を取得することができればよく、例えば、車両に搭載されたセンサの時系列の出力信号を取得して車両の動作を検出することによって基準からの位置や方位の相対的な変位を特定することで間接的に車両の位置および方位を時系列的に取得することができればよい。従って、車両の動作としては、車両における各種の物理量が想定し得る。例えば、車速や加速度、角速度等を取得するセンサを車両に搭載すれば、当該センサの出力によって自立航法軌跡を取得することが可能になる。
【0010】
GPS軌跡取得手段は、時系列のGPS情報に基づいてGPS軌跡を取得することができればよい。従って、GPS衛星からの信号を取得し、当該信号に基づいて車両の現在位置や現在方位を規定の座標系で特定可能であればよい。なお、規定の座標系は、緯度および経度によって構成される座標系や経度、緯度および高度で構成される座標系等を想定可能である。
【0011】
自立航法情報補正手段は、自立航法軌跡とGPS軌跡とを比較して自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度を最も高くするための自立航法情報の第1補正量を取得し、当該第1補正量よりも小さい第2補正量によって自立航法情報を補正することができればよい。すなわち、自立航法軌跡とGPS軌跡とを比較して両者の相違を特定すれば、両者の相違を最小化して両者の一致度を最も高くするために自立航法情報に対して行うべき補正を特定することができる。例えば、自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなるように自立航法軌跡を回転させるとともに移動させ、当該回転および移動を行った後の自立航法軌跡を示すような自立航法情報を補正目標として設定し、現在の自立航法情報を補正目標に一致させるための補正量を第1補正量とすることができる。
【0012】
すなわち、自立航法軌跡を回転させるとともに移動させることによって自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなるのであれば、自立航法情報は、当該回転および移動に対応する物理量の分だけ不正確であるとみなすことができる。そこで、当該回転および移動を行った後の自立航法軌跡を示すような自立航法情報を補正目標として設定し、当該補正目標と自立航法情報とを一致させるための補正量を第1補正量とすれば、当該第1補正量よりも小さい第2補正量によって自立航法情報を補正することにより、自立航法軌跡の精度を向上させることができる。なお、第1補正量よりも小さい第2補正量での補正を繰り返せば、自立航法軌跡をGPS軌跡に対して徐々に近づけることが可能になる。また、仮に、GPS軌跡の誤差が大きいことに起因して誤った補正を行ってしまった場合であっても、一度の補正によって自立航法軌跡とGPS軌跡との相違を解消する補正を行うよりも誤った補正の影響を抑制することができる。
【0013】
さらに、第2補正量は、第1補正量よりも小さく設定される限りにおいてその大きさは任意であるが、第2補正量の大きさを決定するための構成例として、GPS軌跡の信頼度が高いほど大きくなる第2補正量によって自立航法情報を補正する構成を採用可能である。すなわち、時系列のGPS情報によって構成されるGPS軌跡の信頼度が高いほど、GPS軌跡に一致させるような自立航法軌跡の補正が誤りである確率は低くなる。そこで、GPS軌跡の信頼度が高いほど大きくなるように第2補正量の大きさを設定すれば、誤補正の発生確率を抑制し、かつ、早期に自立航法軌跡の精度を向上させることができる。
【0014】
なお、GPS軌跡の信頼度は、GPS軌跡が示す車両の位置や方位等の情報の信頼性を示していればよく、例えば、自立航法軌跡とGPS軌跡とを比較することによってGPS軌跡の信頼度を特定可能である。すなわち、自立航法情報の誤差はGPS情報の誤差と比較して規則的に発生し、急変する度合いが小さい。従って、自立航法情報の誤差は時間とともに累積するものの、近い時刻に出力された自立航法情報同士で自立航法情報の信頼度が著しく異なることはない。このため、センサの時系列の自立航法情報が示す自立航法軌跡の形状自体は正確である。
【0015】
そこで、自立航法軌跡とGPS軌跡との形状の一致度が高いほどGPS軌跡が正確であるとみなすことができ、当該一致度が高いほどGPS軌跡の信頼度が高くなるように当該信頼度を定義することが可能である。また、ここでは、GPS軌跡の信頼度が高いほど第2補正量の大きさが大きくなる傾向を有するように設定できればよく、GPS軌跡の信頼度に応じて第2補正量が連続的に変化しても良いし、GPS軌跡の信頼度に応じて第2補正量が段階的に変化する構成であっても良い。
【0016】
さらに、自立航法軌跡の信頼度に基づいて第2補正量の大きさを決定しても良い。例えば、GPS軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値が大きいほど大きくなる第2補正量によって自立航法情報を補正する構成を採用可能である。すなわち、GPS軌跡は、自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度を最も高くするための第1補正量を特定する際の基準であり、自立航法軌跡は補正対象である。従って、GPS軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値は、補正の基準の信頼度から補正対象の信頼度を減じた値となり、補正の基準の方が補正対象よりも信頼度が高いほど当該値が大きくなる。そこで、GPS軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値が大きいほど大きくなるように第2補正量の大きさを設定すれば、誤補正の発生確率を抑制し、かつ、早期に自立航法軌跡の精度を向上させることができる。
【0017】
なお、自立航法軌跡の信頼度は、自立航法軌跡が示す車両の位置や方位等の情報の信頼性を示していればよく、例えば、補正を行った場合に当該補正の基準となった情報(GPS軌跡等)の信頼度を補正後の自立航法軌跡の信頼度とする構成等を採用可能である。むろん、ここでも、自立航法軌跡の信頼度からGPS軌跡の信頼度を減じた値の大きさが大きいほど第2補正量の大きさが大きくなる傾向を有するように設定できればよい。従って、自立航法軌跡の信頼度からGPS軌跡の信頼度を減じた値の大きさに応じて第2補正量が連続的に変化しても良いし、自立航法軌跡の信頼度からGPS軌跡の信頼度を減じた値の大きさに応じて第2補正量が段階的に変化する構成であっても良い。
【0018】
さらに、第1補正量が大きいほど大きくなる第2補正量によって自立航法情報を補正する構成としても良い。すなわち、第1補正量の大きさは自立航法軌跡とGPS軌跡との乖離度合いを示している。そこで、両者の乖離が大きいほど大きな第2補正量となるように設定することにより、早期に自立航法軌跡の精度を向上させることができる。ここでも、第1補正量の大きさが大きいほど第2補正量の大きさが大きくなる傾向を有するように設定できればよく、第1補正量の大きさに応じて第2補正量が連続的に変化しても良いし、第2補正量が段階的に変化する構成であっても良い。
【0019】
さらに、GPS軌跡の信頼度が所定の基準を満たす場合に、第1補正量より小さい一定の第2補正量によって自立航法情報を補正する構成であっても良い。すなわち、補正の基準となるGPS軌跡の信頼度が所定の基準を満たすことで、補正の基準に一定以上の信頼性が確保されている場合に、一定の補正量によって自立航法情報を補正する構成とする。この構成によれば、誤補正による影響を極めて小さく抑制した状態で自立航法軌跡の精度を向上させることができる。
【0020】
以上のように、第2補正量の大きさはGPS軌跡の信頼度等に応じて変動しても良いし、固定の大きさであっても良い。また、GPS情報の性質によって第2補正量の性質を変化させても良い。例えば、車両の位置を示す自立航法情報について補正する際に、GPS軌跡に含まれる車両の位置を示す情報の信頼度を特定し、当該車両の位置を示す情報の信頼度等に応じて第2補正量の大きさを調整する構成を採用可能である。また、車両の方位を示す自立航法情報について補正する際に、GPS軌跡に含まれる車両の方位を示す情報の信頼度を特定し、当該車両の方位を示す情報の信頼度が所定の基準を満たす場合に第1補正量より小さい一定の大きさの第2補正量によって自立航法情報を補正する構成を採用可能である。
【0021】
さらに、本発明のように、時系列の自立航法軌跡と時系列のGPS軌跡との一致度を最も高くするための補正量より小さい補正量によって自立航法情報を補正する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】軌跡情報生成装置のブロック図である。
【図2】自立航法情報補正処理を示すフローチャートである。
【図3】GPS軌跡と自立航法軌跡との比較処理を示すフローチャートである。
【図4】(4A)〜(4C)は自立航法軌跡の回転および移動を説明するための説明図である。
【図5】(5A)〜(5D)は方位差と代表値を特定するための統計処理を説明するための説明図である。
【図6】(6A)〜(6C)は位置差と代表値を特定するための統計処理を説明するための説明図である。
【図7】自立航法情報補正処理を示すフローチャートである。
【図8】(8A)は自立航法位置を補正する様子を例示する図であり、(8B)は自立航法方位を補正する様子を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)軌跡情報生成装置の構成:
(2)軌跡情報生成処理:
(2−1)マップマッチング処理:
(2−2)自立航法情報補正処理:
(3)他の実施形態:
【0024】
(1)軌跡情報生成装置の構成:
図1は、本発明にかかる軌跡情報生成装置10の構成を示すブロック図である。軌跡情報生成装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとしてナビゲーションプログラム21を実行可能である。ナビゲーションプログラム21は、自立航法情報に基づいてマップマッチング処理を行って道路上の車両の位置を特定し、当該車両の位置を地図上に表示させる機能を備えている。本実施形態において、ナビゲーションプログラム21は、複数の手法によって車両の軌跡を示す軌跡情報を生成する軌跡情報生成処理を実行可能であり、特に、自立航法情報に基づいて生成される自立航法軌跡を高精度に生成する機能を備えている。
【0025】
記録媒体30には、予め地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、車両の位置の特定等に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物の位置および種類等を示す地物データ等を含んでいる。なお、本実施形態において、リンクデータには当該リンクに対応する道路の道路幅を示す情報が含まれている。
【0026】
本実施形態における軌跡情報生成装置10が搭載された車両は、ユーザI/F部40と車速センサ41とジャイロセンサ42とGPS受信部43とを備えている。また、ナビゲーションプログラム21は、自立航法軌跡取得部21aとマッチング軌跡取得部21bとGPS軌跡取得部21cと自立航法情報補正部21dとを備えている。ナビゲーションプログラム21は、車速センサ41とジャイロセンサ42とGPS受信部43と協働し、自立航法情報に基づいて生成される自立航法軌跡を高精度に生成する機能を実行する。
【0027】
車速センサ41は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力し、ジャイロセンサ42は、車両に作用する角速度に対応した信号を出力する。自立航法軌跡取得部21aは、時系列の自立航法情報が示す車両の軌跡である自立航法軌跡を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、自立航法軌跡取得部21aの処理により、図示しないインタフェースを介して車速センサ41およびジャイロセンサ42の出力信号を自立航法情報として取得する。
【0028】
そして、制御部20は、車速センサ41の出力信号に基づいて基準位置からの相対的な車両の位置変位を特定して現在の車両の位置を特定し、ジャイロセンサ42の出力信号に基づいて基準方位からの相対的な車両の方位変位を特定して現在の車両の方位を特定する。なお、本明細書では、車速センサ41の出力信号に基づいて特定された車両の位置を自立航法位置と呼び、ジャイロセンサ42の出力信号に基づいて特定された車両の方位を自立航法方位と呼ぶ。なお、上述の基準位置や基準方位は、所定の時刻において特定された車両の位置や車両の方位(進行方向)であれば良く、例えば、所定の時刻において後述するGPS情報から特定された車両の位置や車両の方位等によって構成可能である。さらに、制御部20は、複数の時点において自立航法位置および自立航法方位を特定することにより時系列の自立航法位置および自立航法方位を示す情報を特定し、自立航法軌跡として取得する。
【0029】
マッチング軌跡取得部21bは、自立航法軌跡と地図情報30aが示す道路の形状とが最も一致する道路を車両が走行している道路とみなすマップマッチング処理を行い、当該マップマッチング処理によって特定される時系列の車両の軌跡であるマッチング軌跡を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照して車両の周辺に存在する道路の道路形状と自立航法軌跡とを照合する。そして、両者の一致度が最も高い道路を特定し、車両が当該道路を走行している道路とみなして当該道路上で車両の位置および方位として推定される位置および方位を車両の位置および方位として特定する。
【0030】
なお、本明細書では、以上のようなマップマッチング処理によって特定された車両の位置をマッチング位置と呼び、マップマッチング処理によって特定された車両の方位をマッチング方位と呼ぶ。さらに、制御部20は、複数の時点においてマッチング位置およびマッチング方位を特定することにより時系列のマッチング位置およびマッチング方位を示す情報を特定し、マッチング軌跡として取得する。
【0031】
そして、制御部20は、当該マッチング位置、マッチング方位、マッチング軌跡をユーザI/F部40に表示する。すなわち、ユーザI/F部40は、ユーザが指示を入力し、またはユーザに各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しない表示部やボタン、スピーカー等を備えている。本実施形態において制御部20は、ユーザI/F部40の表示部に対して地図を表示するとともに、マッチング位置、マッチング方位、マッチング軌跡を示すアイコンを当該地図上に表示する。このため、制御部20は、地図およびマッチング位置、マッチング方位、マッチング軌跡を示すアイコンを示す画像データを生成し、ユーザI/F部40に対して出力する。ユーザI/F部40は、当該画像データに基づいて地図およびマッチング位置、マッチング方位、マッチング軌跡を示すアイコンを表示部に表示する。
【0032】
なお、制御部20は、マッチング軌跡取得部21bの処理により、マップマッチング処理によって特定されたマッチング位置およびマッチング方位についての信頼度を特定することが可能である。本実施形態において制御部20は、マップマッチング処理によって特定された車両が走行しているとみなされた道路の道路幅に基づいてマッチング位置の信頼度を特定し、マップマッチング処理を行っている過程における車両の方位変動に基づいてマッチング方位の信頼度を特定する。
【0033】
GPS軌跡取得部21cは、時系列のGPS情報が示す車両の軌跡であるGPS軌跡を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、GPS軌跡取得部21cの処理により、車両の現在位置および現在方位を算出するためのGPS情報をGPS受信部43に取得させ、当該GPS情報に基づいて車両の位置および方位を特定する。なお、本明細書ではGPS情報に基づいて特定された車両の位置をGPS位置と呼び、GPS情報に基づいて特定された車両の方位をGPS方位と呼ぶ。制御部20は、さらに、複数の時点においてGPS位置およびGPS方位を特定することにより時系列のGPS位置およびGPS方位を示す情報を特定し、GPS軌跡として取得する。なお、本実施形態におけるGPS情報には、GPS情報の精度を示すGPS精度情報が含まれている。
【0034】
本実施形態においてGPS精度情報は、GPS情報とともに取得される指標と車両の状態に基づいて取得される指標とから構成されている。すなわち、GPS情報は、衛星と車両との相対関係や通信環境(マルチパスの程度等)の影響を受けることによって精度が低下し、このような精度の低下を示す指標(HDOP(Horizontal Dilution Of Precision)等のDOP(Dilution Of Precision)や高精度での測位が可能な状態,位置にある衛星の数等)がGPS情報に含まれている。そこで、本実施形態において、制御部20は、GPS軌跡取得部21cの処理により、当該GPS情報に含まれるGPS精度情報をGPS情報とともに取得する。
【0035】
また、GPS情報の精度は、車両の状態に依存するため、本実施形態においては、車両の状態によるGPS情報の精度の低下度合いを示す指標も取得する。具体的には、制御部20は、GPS軌跡取得部21cの処理により、車速センサ41の出力情報およびジャイロセンサ42の出力情報を取得し、車両の車速が低速となるほどGPS情報の精度が低下し、所定期間における車両の方位の変化量の最大値が大きいほどGPS情報の精度が低下するような指標をGPS精度情報として取得する。なお、本実施形態においてGPS精度情報は、GPS位置、GPS方位のそれぞれにおいて特定され、GPS位置に関してはGPS情報に含まれる精度の指標に基づいて精度が特定される。また、GPS方位(後述するGPS衛星方位)に関してはGPS情報に含まれる精度の指標と車両の状態によるGPS情報の精度の低下度合いを示す指標に基づいて精度が特定される。なお、本実施形態においては、GPS位置、GPS方位のそれぞれにおいて最も精度が高い状態が100、最も精度が低い状態が0となるように規格化されている。
【0036】
上述のように、本実施形態は、自立航法軌跡とマッチング軌跡とを照合しながらマッチング位置およびマッチング方位を取得してユーザI/F部40に表示する構成であるが、さらに、本実施形態においては、自立航法軌跡とマッチング軌跡とGPS軌跡とのそれぞれの性質を考慮し、自立航法軌跡をマッチング軌跡あるいはGPS軌跡によって補正する構成を採用している。
【0037】
すなわち、ユーザI/F部40に表示されるマッチング位置およびマッチング方位は、自立航法軌跡と道路形状との照合によって特定される位置および方位であるため、自立航法軌跡が不正確であると、マッチング位置およびマッチング方位も不正確になる。具体的には、自立航法においては、車速センサ41の出力情報に基づいて基準位置からの相対的な車両の位置変位を特定して自立航法位置を特定し、ジャイロセンサ42の出力信号に基づいて基準方位からの相対的な車両の方位変位を特定して自立航法方位を特定する。従って、自立航法位置の基準位置や自立航法方位の基準方位が不正確であると、自立航法軌跡の位置や方位が不正確となり、真の位置や方位と全く異なる位置や方位がマッチング位置およびマッチング方位として検出されることがあり得る。また、車速センサ41やジャイロセンサ42の出力情報の誤差が時間とともに累積するため、自立航法位置や自立航法方位は時間とともに精度が低下し、この場合においても、真の位置や方位と全く異なる位置や方位がマッチング位置およびマッチング方位として検出されることがあり得る。
【0038】
一方、GPS情報は、緯度や経度などの規定の座標系内での位置および方位を直接的に示す情報である。従って、誤差を含み得るとしても、GPS情報においては誤差範囲内で緯度や経度を信頼することができる。このため、GPS情報においては、真の位置や方位と全く異なる位置や方位が検出されることはない。そこで、自立航法軌跡とGPS軌跡との相違が減少するように自立航法情報を補正すれば、自立航法情報が示す位置や方位が真の位置や方位と全く異なる状態となることを防止することができる。
【0039】
さらに、地図情報30aに含まれるノードデータや形状補間データ等は、実際に存在する道路上の位置を緯度や経度などを示しているため、マッチング位置やマッチング方位は道路上の位置や方位として現実的にあり得る位置や方位となる。従って、自立航法軌跡とマッチング軌跡との相違が減少するように自立航法情報を補正すれば、自立航法情報が示す位置や方位を少なくとも現実的にあり得る位置や方位に補正することができる。
【0040】
このような軌跡の特性に鑑み、本実施形態において制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS軌跡とマッチング軌跡とのそれぞれに対して設定される軌跡の信頼度のうち、より高い信頼度の軌跡を補正目標軌跡とし、自立航法軌跡と補正目標軌跡との相違が減少するように自立航法情報を補正する。すなわち、GPS軌跡とマッチング軌跡とは、規定の座標系内での位置や方位を直接的に示す情報であるため、位置や方位を間接的に示す自立航法軌跡を補正する際の基準になり得る。そこで、GPS軌跡とマッチング軌跡とでより高い信頼度の軌跡を自立航法情報の補正基準として選定することにより、車両において得られた情報の中でより信頼度の高い情報を基準にして自立航法軌跡を補正することが可能である。この結果、効果的に自立航法軌跡の精度を向上させることが可能になる。なお、本実施形態において、マッチング軌跡の信頼度は、マッチング軌跡取得部21bの処理によって取得され、GPS軌跡の信頼度は自立航法情報補正部21dの処理によって取得される。これらの信頼度の詳細は後述する。
【0041】
自立航法情報の補正は、自立航法軌跡と補正目標軌跡との相違が減少するように実行されれば良く、本実施形態において制御部20は、自立航法軌跡と補正目標軌跡との一致度が最も高くなるように自立航法軌跡を回転させるとともに移動させ、当該回転および移動を行った後の軌跡に基づいて自立航法情報の補正目標を設定し、補正目標との相違が減少するように自立航法情報を補正する。なお、補正目標軌跡がマッチング軌跡の場合、上述の回転や移動を行って設定される補正目標とマッチング位置およびマッチング方位は実質的に等価である。すなわち、補正目標軌跡がマッチング軌跡の場合、補正目標の位置がマッチング軌跡、補正目標の方位がマッチング方位となる。
【0042】
補正目標軌跡がGPS軌跡の場合、自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなるように自立航法軌跡が回転および移動される。すなわち、制御部20は、自立航法軌跡の形状を維持した状態で自立航法軌跡を回転させ、また、並行移動させた結果得られる自立航法位置および自立航法方位とGPS位置およびGPS方位を比較し、複数の位置および方位における差異が最も小さくなる状態を一致度が最も高くなると見なす。この結果、比較された自立航法軌跡についての回転角と移動量が特定され、制御部20は、現在の自立航法方位に対して当該回転角を加え、自立航法位置に対して当該移動量を加えた結果が補正目標であると見なす。
【0043】
制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、以上のようにして特定された補正目標に対して自立航法位置および自立航法方位が近づくように車速センサ41の出力情報やジャイロセンサ42の出力情報を補正する。ここでは、車速センサ41やジャイロセンサ42の出力情報に基づいて特定される自立航法位置および自立航法方位が補正されれば良く、むろん、基準位置や基準方位を補正しても良い。なお、本実施形態においては、自立航法情報補正部21dが補正目標に対して自立航法位置および自立航法方位が近づくように繰り返し補正を行うが、各補正の際に自立航法方位および自立航法方位が補正目標と一致しないように構成している。
【0044】
すなわち、自立航法位置や自立航法方位を補正目標と一致させるように補正する際の補正量を第1補正量としたとき、制御部20は、当該第1補正量より小さい第2補正量によって自立航法情報を補正する構成を採用している。上述のように、自立航法軌跡に対して一旦誤った補正を行ってしまうと自立航法位置や自立航法方位を正しく補正し直すことは困難になる。そこで、本発明においては、第1補正量よりも小さい第2補正量によって自立航法情報を補正する構成とすることで、仮に誤った補正を行ったとしてもその影響が抑制されるように構成している。従って、容易に自立航法軌跡の精度を向上させることができる。なお、第2補正量は第1補正量よりも小さく、第1補正量によって実現される補正の一部を実現するように設定されればよい。
【0045】
(2)軌跡情報生成処理:
次に、ナビゲーションプログラム21による軌跡情報生成処理を説明する。ナビゲーションプログラム21による軌跡情報生成処理は所定の期間毎に実行され、この処理の過程で自立航法軌跡の精度を向上する自立航法情報補正処理が実行される。図2は自立航法情報補正処理を示すフローチャートである。一方、制御部20は、当該自立航法情報補正処理と並行して所定の期間毎にマッチング軌跡取得部21bの処理を実行している。ここでは、まず、当該マップマッチング処理を説明する。
【0046】
(2−1)マップマッチング処理:
マップマッチング処理において、制御部20は、マッチング軌跡取得部21bの処理により、地図情報30aと自立航法軌跡とを取得し、照合する。すなわち、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理によって、車速センサ41およびジャイロセンサ42の出力情報を取得し、前回当該出力情報を取得した後の車両の位置および方位の変位を特定する。そして、制御部20は、基準位置からの位置の変位の累積値および基準方位からの方位の変位の累積値に基づいて自立航法位置および自立航法方位を特定し、所定期間内に特定された時系列の自立航法位置および自立航法方位を自立航法軌跡とする。なお、基準位置および基準方位は時間の経過とともに更新され得るが、初期値はGPS情報等に基づいて決定される。
【0047】
また、制御部20は、地図情報30aを参照し、自立航法位置の周辺の所定範囲内に存在する道路の形状を示すリンクデータ、ノードデータ、形状補間データを取得する。そして、制御部20は、自立航法軌跡と地図情報30aから取得された各データを照合し、自立航法軌跡と最も一致する道路を特定する。
【0048】
次に、制御部20は、マッチング軌跡取得部21bの処理により、マッチング軌跡を取得する。すなわち、制御部20は、自立航法軌跡と最も一致する道路上を車両が走行している道路とみなし、自立航法軌跡と当該道路が最も一致するように自立航法軌跡を回転、移動させる。そして、制御部20は、当該回転および移動がなされた自立航法軌跡において最新の自立航法位置に対応する位置をマッチング位置とし、当該マッチング位置における道路上での車両の進行方向をマッチング方位とする。さらに、制御部20は、所定期間内に特定された時系列のマッチング位置およびマッチング方位をマッチング軌跡として取得する。
【0049】
さらに、制御部20は、マッチング軌跡の信頼度を取得する。本実施形態においては、マッチング位置とマッチング方位とのそれぞれについて異なる手法で信頼度を取得する。すなわち、制御部20は、車両が連続した道路を走行しているとみなされていた場合の距離と、車両が走行している道路とみなされた道路の道路幅とに基づいてマッチング位置の信頼度を設定する。本実施形態においては、以下の表1に示すように5段階でマッチング位置の精度を定義している。すなわち、制御部20は、車両が連続した道路を走行しているとみなされていた場合の距離が所定距離Ts(m)以下である場合にマッチング位置の信頼度を1に設定し、所定距離Tsより大きい場合にマッチング位置の信頼度が1〜5のいずれかになるように設定する。このため、制御部20は、地図情報30aのリンクデータを参照し、車両が走行している道路とみなされた道路の道路幅を特定する。そして、制御部20は、当該道路幅が所定の閾値T4以下である場合にはマッチング位置の信頼度を5に設定し、道路幅が所定の閾値T4より大きく所定の閾値T3以下である場合にはマッチング位置の信頼度を4に設定する。また、道路幅が所定の閾値T3より大きく所定の閾値T2以下である場合にはマッチング位置の信頼度を3に設定し、道路幅が所定の閾値T2より大きく所定の閾値T1以下である場合にはマッチング位置の信頼度を2に設定する。そして、道路幅が所定の閾値T1より大きい場合にはマッチング位置の信頼度を1に設定する。すなわち、制御部20は、車両が走行している道路とみなされた道路の道路幅が狭いほどマッチング位置の信頼度を高く設定する。
【表1】

【0050】
さらに、制御部20は、車両が連続した道路を走行しているとみなされていた場合の距離と、マップマッチング処理を行っている過程における車両の方位変動とに基づいてマッチング方位の信頼度を設定する。本実施形態においては、5段階でマッチング方位の精度を定義している。すなわち、制御部20は、車両が連続した道路を走行しているとみなされていた場合の距離が所定距離Ts(m)以下である場合にマッチング方位の信頼度を1に設定し、所定距離Tsより大きい場合にマッチング方位の信頼度が2以上になるように設定する。このため、さらに、制御部20は、過去の所定期間内のジャイロセンサ42の出力情報に基づいて当該所定期間内の方位変化を特定する。そして、制御部20は、当該方位変化が所定の閾値Tdより小さい場合にはマッチング方位の信頼度を3に設定し、方位変化が所定の閾値Td以上である場合にはマッチング方位の信頼度を2に設定する。すなわち、マッチング処理の過程での方位変動が小さいほどマッチング方位の信頼度が高くなるように設定する。
【表2】

【0051】
本実施形態においては、以上のように、マッチング位置とマッチング方位とで異なる手法で信頼度を設定する構成としている。但し、特定の場合には、マッチング位置とマッチング方位とで共通の手法によってマッチング位置とマッチング方位の信頼度を設定する構成としている。すなわち、車両が通常の道路を走行している場合には上述の表1および表2に基づいてマッチング位置およびマッチング方位のそれぞれを特定するが、トンネル内においてはGPS情報を取得することが不可能であるため、マッチング軌跡が補正目標軌跡とされやすくなるように、表1、表2と異なる手法も採用している。
【0052】
具体的には、車両がトンネル内の道路を走行しているとみなされている場合、制御部20は、マッチング軌跡取得部21bの処理により、地図情報30aに含まれるノードデータ、形状補間点データ、リンクデータを参照して車両周辺の所定範囲内の道路の形状を特定し、道路上の複数の位置での方位(道路を走行する際の進行方向前方)と時系列の自立航法位置とを照合して方位の一致度を特定する。そして、方位の一致度が高いほどマッチング位置およびマッチング方位の信頼度が高くなるように信頼度を設定する。なお、方位の一致度は方位の分散等によって特定可能である。以上のようなマッチング位置およびマッチング方位の信頼度は最新のマッチング位置およびマッチング方位のそれぞれが特定されるたびにそれぞれについて設定される。
【0053】
また、この構成は一例であり、位置の一致度を解析しても良いし、GPS情報を取得することができない駐車場において同様の処理を行っても良い。さらに、マッチング位置の信頼度およびマッチング方位の信頼度は、マップマッチング処理の結果として得られる情報の信頼度であるため、マップマッチング処理の精度が低下し得る状況である場合に信頼度を低下させる構成としても良い。例えば、車両による走行開始(電源投入開始)後の所定期間内や車両が走行している道路とみなされた道路の周囲所定距離以内に他の有力な候補道路(例えば、鋭角の分岐路や並走路)が存在する場合、ジャイロセンサ42の出力情報が示す方位と道路の方位との差が所定以上の差となっている場合、車両が走行している道路とみなされた道路が高速道路の付属施設(サービスエリアやパーキングエリア等)内である場合などには、マッチング位置やマッチング方位の信頼度を低下させ、また、一定の低い値(信頼度1等)に設定する等の構成を採用可能である。
【0054】
(2−2)自立航法情報補正処理:
図2に示す自立航法情報補正処理において、制御部20は、GPS軌跡取得部21cの処理により、GPS精度情報を取得する(ステップS100)。次に、制御部20は、GPS軌跡と自立航法軌跡との比較処理を行う(ステップS105)。当該GPS軌跡と自立航法軌跡との比較処理は、GPS軌跡の信頼度を取得し、また、自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度を最も高くするための第1補正量(回転角および移動量)を取得するための処理であり、図3に示すフローチャートによって実現される。また、図4A〜図4Cは経度をx軸緯度をy軸とした座標系において自立航法軌跡の回転および移動を説明するための図である。
【0055】
図4Aは実線の曲線矢印により自立航法軌跡Tnの例を示しており、図4Bは黒丸および矢印によってGPS軌跡の例を示している。すなわち、図4Bにおいては、黒丸によってGPS位置Gpを示し、実線の直線矢印により各GPS位置GpにおけるGPS衛星方位Gdsを示し、破線の直線矢印により各GPS位置Gp間のGPS座標間方位Gdcを示している。すなわち、GPS情報には車両の方位を示す情報が含まれるが、当該車両の方位とは別に車両の位置間ベクトルの向きを車両の方位とみなすことも可能である。そこで、本実施形態においては、GPS情報に含まれる車両の方位をGPS衛星方位、車両の位置間ベクトルの向きをGPS位置間方位と呼び、GPS衛星方位とGPS位置間方位との双方に基づいてGPS方位を評価する構成となっている。
【0056】
なお、本来は自立航法軌跡Tnも複数の自立航法位置および自立航法方位によって構成されるが、本実施形態においては、自立航法情報の方がGPS情報よりもサンプリング周期が短いため、図4Aにおいては実線の曲線矢印によって自立航法軌跡Tnを示すとともに、一カ所についてのみ自立航法位置Npおよび自立航法方位Ndを例示している。すなわち、図4Aの自立航法軌跡Tnにおいて、実線の曲線矢印は当該曲線上のいずれかの位置が自立航法位置であることを示し、曲線矢印の先端において矢印が示す方位が最新の自立航法方位であり、各自立航法位置における曲線矢印の接線が各自立航法位置における自立航法方位であることを示している。
【0057】
図4A,4Bに示すように、一般的に自立航法軌跡TnとGPS軌跡とは類似しているが異なっている。GPS情報は車両とGPS衛星との関係の他、マルチパス等の影響を受けるため、自立航法情報と比較して誤差の規則性に乏しく、急変し得る。一方、車速センサ41やジャイロセンサ42の出力情報の誤差はGPS情報の誤差と比較して規則的に発生し、急変する度合いが小さい。従って、自立航法情報Tnの誤差は時間とともに累積するものの、近い時刻に出力された出力情報同士で出力情報の信頼度が著しく異なることはない。このため、自立航法軌跡Tnの形状自体はGPS軌跡よりも正確である。そこで、自立航法軌跡Tnの形状を維持した状態で回転および移動させ、GPS軌跡と最も一致度が高くなる状態としたとき、回転および移動後の自立航法軌跡TnとGPS軌跡との一致度が高いほどGPS軌跡の信頼度が高いと評価することができる。また、GPS軌跡の信頼度が高く補正目標軌跡となり得る場合には、自立航法軌跡Tnの形状を維持した状態で回転および移動させ、GPS軌跡と最も一致度が高くなる状態としたときの回転角および移動量が自立航法方位の第1補正量および自立航法位置の第1補正量であるとみなすことができる。
【0058】
そこで、本実施形態においては、複数のGPS位置と自立航法位置とに対応するGPS衛星方位およびGPS座標間方位と自立航法方位とに基づいて統計的に自立航法方位の第1補正量を特定する。すなわち、複数のGPS衛星方位と複数の自立航法方位との方位差および複数のGPS座標間方位と自立航法方位との方位差の代表値が自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなる状態における自立航法軌跡Tnの回転角であるとみなす。
【0059】
回転前の自立航法軌跡Tnは、実際には複数の自立航法位置Npおよび自立航法方位Ndによって構成されるため、同時刻における自立航法方位NdとGPS方位(GPS衛星方位GdsおよびGPS座標間方位Gdc)との方位差(回転角)を特定すれば、当該時刻において自立航法軌跡Tnを回転させることによってGPS軌跡と自立航法軌跡Tnとの一致度が最も高くなる回転角が特定される。従って、複数の時刻における自立航法方位NdとGPS方位との方位差の代表値を特定すれば、当該代表値がGPS軌跡と自立航法軌跡Tnとの一致度を最も高くするための回転角であるとみなすことができる。図4Cにおいては破線の曲線矢印によって回転前の自立航法軌跡Tn、一点鎖線の曲線矢印によって回転後の自立航法軌跡Tnrを示しており、同図4CにおいてGPS軌跡と自立航法軌跡Tnとの一致度を最も高くするための回転角をαによって示している。
【0060】
さらに、本実施形態においては、複数のGPS位置と自立航法位置とに基づいて統計的に自立航法位置の第1補正量を特定する。すなわち、複数のGPS位置と複数の自立航法位置との位置差の代表値が自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなる状態における自立航法軌跡の移動量であるとみなす。例えば、図4Cにおいては破線の曲線矢印が移動前の自立航法軌跡Tnrであり、実線の曲線矢印によって移動後の自立航法軌跡Tnmを示している。
【0061】
移動前の自立航法軌跡Tnrは、上述の回転角αで自立航法軌跡を回転させて得られる軌跡であるため、回転後の複数の自立航法位置および自立航法方位で構成される。そこで、同時刻における回転後の自立航法位置とGPS位置との位置差(x軸、y軸に沿った移動量)を特定すれば、当該時刻において回転後の自立航法軌跡Tnrを移動させることによってGPS軌跡と自立航法軌跡Tnとの一致度が最も高くなる移動量が特定される。従って、複数の時刻における自立航法位置とGPS位置との位置差の代表値を特定すれば、当該代表値がGPS軌跡と自立航法軌跡Tnとの一致度を最も高くするための移動量(図4Cに示すXおよびY)であるとみなすことができる。
【0062】
図3に示すGPS軌跡と自立航法軌跡との比較処理は、以上のような回転角および移動量の決定と、当該回転角および移動量に基づく信頼度の特定を実現する処理である。この処理を実行するため、まず、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、前回図3に示すGPS軌跡と自立航法軌跡との比較処理を実行した時点からの走行距離を取得し、当該走行距離が所定距離以上である否かを判定する(ステップS200)。ステップS200にて当該走行距離が所定距離以上であると判定されない場合にはステップS205以降の処理をスキップする。すなわち、所定距離毎に比較処理が実行されるように構成されている。
【0063】
ステップS200にて、前回GPS軌跡と自立航法軌跡との比較処理を実行した時点からの走行距離が所定距離以上であると判定された場合、制御部20は、GPS軌跡取得部21cの処理によりGPS軌跡を取得し、自立航法情報補正部21dの処理により自立航法軌跡を取得する(ステップS205)。次に、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS衛星方位と自立航法方位との方位差を取得する(ステップS210)。すなわち、制御部20は、所定期間内に取得したGPS情報および自立航法情報に基づいて複数の位置に関するGPS衛星方位、自立航法方位を取得し、同時刻における方位同士の方位差を取得する。
【0064】
さらに、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS精度に応じた重み付けを行って方位差の度数分布を作成する(ステップS215)。すなわち、各GPS方位(GPS衛星方位)の精度はGPS精度情報によって特定されているため、GPS軌跡と自立航法軌跡との方位差を特定するための統計処理においては、GPS方位の精度が高いほどそのGPS情報が方位差の決定に大きく寄与するように構成している。具体的には、制御部20は、GPS精度を取得し、GPS方位の精度が高くなるほど大きな度数となるようにステップS210にて取得された各方位差の度数を決定し、度数分布に追加するようにして度数分布を作成する。なお、度数はGPS方位の精度が高くなるほど大きな度数となるように設定されていれば良く、例えば、精度が高くなるほど大きい値となるように規格化されたGPS方位の精度情報自体を度数としても良いし、所定の係数を乗じた値を度数としても良い。
【0065】
図5A〜図5Dは、GPS方位と自立航法方位との方位差およびその代表値を特定するための統計処理を説明するための図である。これらの5A〜図5Dにおいては、左側において黒丸から延びる直線矢印によって座標系内での方位を示しており、右側においては左側に示す方位に基づいて作成される度数分布を示している。図5A,5Bにおいては、GPS衛星方位と自立航法方位についての統計処理を示している。
【0066】
すなわち、図5Aにおいては、ある時刻におけるGPS衛星方位Gds1および同時刻における自立航法方位Nd1を示している。この例においては、自立航法方位Nd1とGPS衛星方位Gds1との方位差が10°であり、GPS方位のGPS方位の精度情報は40であり、GPS方位の精度情報に2を乗じた値である80を当該方位差10°に関する度数の総数としている。さらに、この例においては、比較的少ないサンプル数でも度数分布のピークが一つになるように度数を平滑化する構成が採用されており、自立航法方位Nd1とGPS衛星方位Gds1との方位差の度数は上述の度数の総数の1/2とされる。さらに、自立航法方位Nd1とGPS衛星方位Gds1との方位差に対して10°を加えた方位差の度数を上述の度数の総数の1/4とし、自立航法方位Nd1とGPS衛星方位Gds1との方位差から10°を減じた方位差の度数を上述の度数の総数の1/4としている。すなわち、自立航法方位Nd1とGPS衛星方位Gds1との方位差の周囲においても有意な度数を持たせた分布(図5Aに示すPa)を形成し、度数分布に加える統計処理を行っている。
【0067】
図5Bにおいては、GPS衛星方位Gds1の次の時刻におけるGPS衛星方位Gds2およびGPS衛星方位Gds2と同時刻における自立航法方位Nd2を示している。この例においては、自立航法方位Nd2とGPS衛星方位Gds2との方位差が20°であり、GPS方位のGPS方位の精度情報は20である。従って、当該方位差20°に関する度数の総数は40であり、自立航法方位Nd2とGPS衛星方位Gds2との方位差である20°の度数は20(40×1/2)である。また、自立航法方位Nd2とGPS衛星方位Gds2との方位差である20°に対して10°を加えた方位差の度数および10°を減じた方位差の度数は10(40×1/4)である。図5Bにおいてはこのようにして作成された分布Pbが度数分布に追加される様子をハッチングによって示している。
【0068】
以上のようにして、GPS衛星方位に基づいて度数分布を作成すると、制御部20は、当該度数分布に対してGPS座標間方位と自立航法方位との方位差に基づく度数を追加する処理を行う。このために、まず、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS座標間方位と自立航法方位との方位差を取得する(ステップS220)。具体的には、制御部20は、所定期間内に取得したGPS情報に基づいて隣接する2カ所のGPS位置を結ぶベクトルを特定し、当該ベクトルに基づいてGPS座標間方位を取得し、所定期間内に取得した自立航法情報に基づいて自立航法方位を取得し、同時刻における方位同士の方位差を取得する。
【0069】
さらに、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS精度に応じた重み付けを行って方位差を度数分布に追加する(ステップS225)。GPS座標間方位は、隣接する2カ所のGPS位置によって特定されるため、GPS座標間方位の精度はGPS位置の精度に依存する。このため、GPS座標間方位の精度は、当該GPS座標間方位を特定する際に参照した上述の隣接する2カ所のGPS位置に関するGPS精度の相乗平均によって特定される。そして、制御部20は、当該GPS座標間方位の精度が高くなるほど大きな度数となるようにステップS220にて取得された各方位差の度数を決定し、度数分布に追加する。なお、ここでも度数はGPS精度が高くなるほど大きな度数となるように設定されていれば良く、本例では上述の相乗平均自体を度数とする。
【0070】
図5C,5Dにおいては、GPS座標間方位と自立航法方位についての統計処理を示している。すなわち、図5Cにおいては、ある時刻におけるGPS座標間方位Gdc1および同時刻における自立航法方位Nd1を示している。この例においては、自立航法方位Nd1とGPS座標間方位Gdc1との方位差が−10°であり、GPS座標間方位を特定するためのGPS位置の精度情報が60および80であってGPS座標間方位の精度情報が69(=(60×80)1/2)である状態を示している。この場合、GPS座標間方位の精度情報である69が方位差−10°に関する度数の総数となり、方位差−10°の度数が69に1/2を乗じた値となり、方位差−20°および方位差0°の度数が69の1/4を乗じた値となるようにして作成された分布Pcが度数分布に追加される。
【0071】
同様に、図5Dにおいては、GPS座標間方位Gdc1の次の時刻におけるGPS座標間方位Gdc2およびGPS座標間方位Gdc2と同時刻における自立航法方位Nd2を示している。この例においては、自立航法方位Nd2とGPS座標間方位Gdc2との方位差が20°であり、GPS座標間方位を特定するためのGPS位置の精度情報が80および100であってGPS座標間方位の精度情報が89(=(80×100)1/2)である状態を示している。この場合、GPS座標間方位の精度情報である89が方位差20°に関する度数の総数となり、方位差20°の度数が89に1/2を乗じた値となり、方位差30°および方位差10°の度数が89の1/4を乗じた値となるようにして作成された分布Pdが度数分布に追加される。図5Cにおいては分布Pcが度数分布に追加される様子をハッチングによって示し、図5Dにおいては分布Pdが度数分布に追加される様子をハッチングによって示している。
【0072】
次に、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、自立航法軌跡Tnの回転角を取得する(ステップS230)。すなわち、制御部20は、ステップS215,S225の処理によって作成した度数分布に基づいて方位差の代表値を特定し、当該代表値を自立航法軌跡Tnの回転角として取得する。具体的には、制御部20は、ステップS215,S225の処理によって作成した度数分布において最も度数が大きい方位差を自立航法軌跡TnとGPS軌跡との方位差の代表値とみなし、当該代表値が自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなるように自立航法軌跡を回転させる際の回転角(図4Cに示すα)とみなす。従って、本実施形態においては、当該回転角が自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度を最も高くするための自立航法方位の第1補正量となる。
【0073】
さらに、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS方位の信頼度を取得する(ステップS235)。本実施形態において制御部20は、ステップS215,S225の処理によって作成した度数分布に基づいてGPS方位の信頼度を取得する。具体的には、制御部20は、ステップS215,S225の処理によって作成した度数分布において最も度数が大きい方位差と当該方位差における分散と、度数分布における総度数を特定する。そして、当該最も度数が大きい方位差の度数が大きいほど信頼度が高く、当該方位差における分散が小さいほど信頼度が高く、度数分布における総度数が大きいほど信頼度が高くなるように信頼度を設定する。なお、本実施形態においては、5段階でGPS方位の信頼度を定義するように構成されている。すなわち、最も度数が大きい方位差の度数と、当該方位差における分散と、度数分布における総度数に応じて信頼度を特定可能な図示しないマップが作成されており、制御部20は、当該マップに基づいてGPS方位の信頼度を取得する。
【0074】
次に制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、自立航法軌跡を回転させる(ステップS240)。すなわち、制御部20は、規定の座標系内で自立航法軌跡の形状を維持した状態で、当該自立航法軌跡をステップS230にて取得した回転角だけ回転させる。例えば、図4Cに示すように、x−y座標系内で自立航法軌跡Tnにおいて最も過去の自立航法位置を中心にして角度αだけ自立航法軌跡Tn回転させて自立航法軌跡Tnrを取得する。
【0075】
次に、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS位置と自立航法位置との位置差を取得する(ステップS245)。すなわち、制御部20は、所定期間内に取得したGPS情報およびステップS240にて回転された自立航法情報に基づいて複数のGPS位置、自立航法位置を取得し、同時刻における位置同士の位置差を取得する。
【0076】
さらに、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS精度に応じた重み付けを行って位置差の度数分布を作成する(ステップS250)。すなわち、各GPS位置の精度はGPS精度情報によって特定されているため、ここでもGPS位置の精度が高いほどそのGPS情報が位置差の決定に大きく寄与するように構成している。具体的には、制御部20は、GPS精度を取得し、GPS位置の精度が高くなるほど大きな度数となるようにステップS245にて取得された各位置差の度数を決定し、度数分布に追加するようにして度数分布を作成する。なお、度数はGPS位置の精度が高くなるほど大きな度数となるように設定されていれば良く、例えば、精度が高くなるほど大きい値となるように規格化されたGPS位置の精度情報自体を度数としても良いし、所定の係数を乗じた値を度数としても良い。
【0077】
図6A〜図6Cは、GPS位置と自立航法位置との位置差およびその代表値を特定するための統計処理を説明するための図である。これらの図6A〜図6Cにおいては、左側において黒丸によって座標系内での位置を示しており、右側においては左側に示す位置に基づいて作成される度数分布を示している。図6Aにおいては、ある時刻におけるGPS位置Gp1および同時刻における自立航法位置Np1を示している。また、図6Bにおいては、GPS位置Gp1の次の時刻におけるGPS位置Gp2およびGPS位置Gp2と同時刻における自立航法位置Np2を示し、図6Cにおいては、GPS位置Gp2の次の時刻におけるGPS位置Gp3およびGPS位置Gp3と同時刻における自立航法位置Np3を示している。
【0078】
これらの例に示すように自立航法位置Np1とGPS衛星位置Gp1との位置差は、x軸方向の位置差Δxとy軸方向の位置差Δyとによって定義することができ、各軸方向の位置差のそれぞれについて度数分布を作成するが、図6A〜図6Cの右側においては、x軸方向の位置差Δxについて説明する。むろん、y軸方向の位置差についても位置差として取得する差分が異なるのみで度数分布を作成する際の処理は同様である。
【0079】
位置差においても、度数分布を作成する際には位置差に関する度数の総数をGPS位置の精度情報から特定し、比較的少ないサンプル数でも度数分布のピークが一つになるように度数を平滑化する構成が採用されている。図6Aに示す例においては、自立航法位置Np1とGPS衛星位置Gp1との位置差Δxが80であり、GPS位置の精度情報は80である。図6Bに示す例においては、自立航法位置Np2とGPS衛星位置Gp2との位置差Δxが60であり、GPS位置の精度情報は40である。さらに、図6Cに示す例においては、自立航法位置Np3とGPS衛星位置Gp3との位置差Δxが40であり、GPS位置の精度情報は100である。
【0080】
GPS位置に関しては、GPS位置の精度情報が度数の総数となるように構成されており、図6AにおいてはGPS位置の精度情報が80であるため、自立航法位置Np1とGPS位置Gp1との位置差Δx=80に関する度数の総数は80となる。そして、位置差Δx=80の度数は度数の総数の1/2、自立航法位置Np1とGPS衛星位置Gp1との位置差Δxに対して20を加えた位置差の度数と20を減じた位置差の度数は度数の総数の1/4である。以上のようにして自立航法位置Np1とGPS衛星位置Gp1との位置差Δxの周囲においても有意な度数を持たせた分布(図6Aに示すPe)を形成し、度数分布に加える。
【0081】
図6Bにおいては、GPS位置の精度情報が40であるため、自立航法位置Np2とGPS位置Gp2との位置差Δx=60に関する度数の総数は40となる。そして、位置差Δx=60の度数を度数の総数の1/2、位置差Δx=40、80の度数を度数の総数の1/4として分布Pfを形成する。図6Cにおいては、GPS位置の精度情報が100であるため、自立航法位置Np3とGPS位置Gp3との位置差Δx=40に関する度数の総数は100となる。そして、位置差Δx=40の度数を度数の総数の1/2、位置差Δx=20、60の度数を度数の総数の1/4として分布Pgを形成する。図6A〜図6Cにおいては、分布Pe〜Pgが度数分布に追加される様子をハッチングによって示している。
【0082】
以上のようにして、GPS位置に基づいて度数分布を作成すると、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、自立航法軌跡の移動量を取得する(ステップS255)。すなわち、制御部20は、ステップS250の処理によって作成した度数分布に基づいて位置差の代表値を特定し、当該代表値を自立航法軌跡の移動量として取得する。具体的には、制御部20は、ステップS250の処理によって作成した度数分布において最も度数が大きい位置差をΔx、Δyのそれぞれについて特定し、それぞれを自立航法軌跡とGPS軌跡との位置差の代表値とみなす。そして、制御部20は、当該代表値が自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度が最も高くなるように自立航法軌跡を移動させる際のx軸方向への移動量およびy軸方向への移動量(図4Cに示すXおよびY)とみなす。従って、本実施形態においては、当該x軸方向への移動量およびy軸方向への移動量が自立航法軌跡とGPS軌跡との一致度を最も高くするための自立航法位置の第1補正量となる。
【0083】
さらに、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS位置の信頼度を取得する(ステップS260)。本実施形態において制御部20は、ステップS250の処理によって作成した度数分布に基づいてGPS位置の信頼度を取得する。具体的には、制御部20は、ステップS250の処理によって作成した度数分布において最も度数が大きい位置差と当該位置差における分散と、度数分布における総度数を特定する。そして、当該最も度数が大きい位置差の度数が大きいほど信頼度が高く、当該位置差における分散が小さいほど信頼度が高く、度数分布における総度数が大きいほど信頼度が高くなるように信頼度を設定する。なお、本実施形態においては、5段階でGPS位置の信頼度を定義するように構成されている。すなわち、最も度数が大きい位置差の度数と、当該位置差における分散と、度数分布における総度数に応じて信頼度を特定可能な図示しないマップが作成されており、制御部20は、当該マップに基づいてGPS位置の信頼度を取得する。
【0084】
以上のようなGPS方位やGPS位置の信頼度は、複数のGPS方位やGPS位置の統計に基づいて特定されるため、GPS軌跡の信頼度を示している。一方、GPS精度情報は、個々のGPS方位やGPS位置の精度を示している。従って、GPS方位やGPS位置の信頼度は、GPS精度情報に基づいて統計処理を行うことによって特定されることになり、GPS情報から特定される軌跡としての信頼度を定義することができる。なお、信頼度の特定法は以上の手法に限定されず、例えば、GPS精度情報を信頼度とする構成等を採用しても良い。
【0085】
以上のようにしてGPS軌跡と自立航法軌跡との比較処理が行われると、制御部20は、図2に示す処理に復帰する。すなわち、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS方位の信頼度とマッチング方位の信頼度とを比較し、GPS方位の信頼度がマッチング方位の信頼度以上であるか否かを判定する(ステップS110)。そして、ステップS110にて、GPS方位の信頼度がマッチング方位の信頼度以上であると判定された場合、制御部20は、GPS軌跡を補正目標軌跡として方位の補正目標を設定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、ステップS230にて取得された回転角だけ自立航法軌跡を回転させ、ステップS255にて取得された移動量だけ自立航法軌跡を移動させ、最新の時点での自立航法方位が回転および移動の結果配向する方位を補正目標の方位とする。例えば、図4Cに示すような回転および移動後の自立航法軌跡Tnmにおいては、矢印の先端が配向する方位が、最新の時点での自立航法方位が回転および移動の結果配向する方位となるため、当該矢印の先端が配向する方位が補正目標の方位となる。
【0086】
一方、ステップS110にて、GPS方位の信頼度がマッチング方位の信頼度以上であると判定されない場合、制御部20は、マッチング軌跡を補正目標軌跡として方位の補正目標を設定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、マッチング方位を補正目標の方位とする。
【0087】
次に、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、GPS位置の信頼度とマッチング位置の信頼度とを比較し、GPS位置の信頼度がマッチング位置の信頼度以上であるか否かを判定する(ステップS125)。そして、ステップS125にて、GPS位置の信頼度がマッチング位置の信頼度以上であると判定された場合、制御部20は、GPS軌跡を補正目標軌跡として位置の補正目標を設定する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、ステップS230にて取得された回転角だけ自立航法軌跡を回転させ、ステップS255にて取得された移動量だけ自立航法軌跡を移動させ、最新の時点での自立航法位置が回転および移動の結果存在する位置を補正目標の位置とする。例えば、図4Cに示すような回転および移動後の自立航法軌跡Tnmにおいては、矢印の先端の位置(図4Cに示す白丸の位置)が、最新の時点での自立航法位置が回転および移動の結果存在する位置となるため、当該矢印の先端が存在する位置が補正目標の位置となる。
【0088】
一方、ステップS125にて、GPS位置の信頼度がマッチング位置の信頼度以上であると判定されない場合、制御部20は、マッチング軌跡を補正目標軌跡として位置の補正目標を設定する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、マッチング位置を補正目標の位置とする。
【0089】
次に、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、補正目標の信頼度を取得する(ステップS140)。本実施形態においては、方位と位置のそれぞれについて補正目標が設定されるため、方位と位置のそれぞれについて信頼度が取得される。ここで、補正目標の信頼度は、補正目標軌跡の信頼度である。従って、ステップS115が実行された場合はGPS位置の信頼度、ステップS120が実行された場合はマッチング位置の信頼度が位置の補正目標の信頼度として取得される。また、ステップS130が実行された場合はGPS方位の信頼度、ステップS135が実行された場合はマッチング方位の信頼度が方位の補正目標の信頼度として取得される。
【0090】
さらに、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、自立航法方位および自立航法位置を補正する自立航法情報補正処理を実行する(ステップS145)。図7は、自立航法情報補正処理を示すフローチャートである。自立航法情報補正処理において制御部20は、まず、自立航法位置の第2補正量を取得する(ステップS300)。本実施形態においては、補正目標軌跡(GPS軌跡あるいはマッチング軌跡)の信頼度と補正目標軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値と自立航法位置の第1補正量の大きさとに基づいて自立航法位置の第2補正量を決定する構成を採用している。
【0091】
具体的には、補正目標軌跡の信頼度が高いほど自立航法位置の第2補正量が大きくなり、補正目標軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値が大きいほど自立航法位置の第2補正量が大きくなり、自立航法位置の第1補正量の大きさが大きいほど自立航法位置の第2補正量が大きくなるように図示しないマップにて定義されている。但し、当該マップにおいて自立航法位置の第2補正量は第1補正量よりも小さい値となっている。制御部20は、当該マップに基づいて自立航法位置の第2補正量を取得する。
【0092】
すなわち、補正目標軌跡の信頼度が高いほど、補正目標軌跡に一致させるような自立航法軌跡の補正が誤りである確率は低くなる。そこで、GPS軌跡の信頼度が高いほど大きくなるように自立航法位置の第2補正量の大きさを設定することで、誤補正の発生確率を抑制し、かつ、早期に自立航法軌跡の精度を向上させることが可能になる。
【0093】
また、補正目標軌跡は、自立航法軌跡と補正目標軌跡との一致度を最も高くするための自立航法位置の第1補正量を特定する際の基準であり、自立航法軌跡は補正対象である。従って、補正目標軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値は、補正の基準の信頼度から補正対象の信頼度を減じた値となり、補正の基準の方が補正対象よりも信頼度が高いほど当該値が大きくなる。そこで、補正目標軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値が大きいほど大きくなるように自立航法位置の第2補正量の大きさを設定することで、誤補正の発生確率を抑制し、かつ、早期に自立航法軌跡の精度を向上させることができる。なお、自立航法軌跡の信頼度は、自立航法位置や自立航法方位等の情報の信頼性を示していればよい。本実施形態において当該自立航法位置や自立航法方位に対する補正は繰り返し行われ、過去に行われた補正において参照された補正の基準は過去の補正目標軌跡である。従って、本実施形態において補正が行われた後には、当該補正の基準となった過去の補正目標軌跡の信頼度を補正後の自立航法位置や自立航法方位の信頼度とみなしている。
【0094】
さらに、自立航法位置の第1補正量の大きさは自立航法軌跡と補正目標軌跡との乖離度合いを示している。そこで、両者の乖離が大きいほど大きな自立航法位置の第2補正量となるように設定することにより、早期に自立航法軌跡の精度を向上させることができる。なお、本実施形態において、補正目標軌跡および自立航法軌跡の信頼度は5段階に定義されるため、補正目標軌跡の信頼度が高いほど自立航法位置の第2補正量が段階的に大きくなり、補正目標軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値が大きいほど自立航法位置の第2補正量が段階的に大きくなるように構成してあればよい。また、自立航法位置の第1補正量の大きさに応じて自立航法位置の第2補正量が連続的に変化するように構成してもよいし、段階的に変化するように構成してもよい。
【0095】
むろん、ここでは補正目標軌跡の信頼度が高いほど第2補正量が傾向として大きくなり、補正目標軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値が大きいほど第2補正量が傾向として大きくなり、自立航法位置の第1補正量が大きいほど第2補正量が傾向として大きくなればよい。従って、信頼度のn段階(nは自然数)の変化に応じて第2補正量がm段階(mは自然数)変化するように構成されていてもよい。さらに、第2補正量は、補正目標軌跡の信頼度と、補正目標軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値と、自立航法位置の第1補正量の大きさとのいずれかまたは2個の組み合わせに応じて第2補正量を決定する構成であっても良い。
【0096】
以上のようにして、ステップS300にて自立航法位置の第2補正量を取得すると、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、自立航法位置の第2補正量が0より大きいか否かを判定し(ステップS305)、ステップS305にて自立航法位置の第2補正量が0より大きいと判定されない場合にはステップS310をスキップする。
【0097】
ステップS305にて自立航法位置の第2補正量が0より大きいと判定された場合、制御部20は、自立航法位置の第2補正量により自立航法位置を補正する(ステップS310)。図8Aは、自立航法位置の第2補正量によって自立航法位置を補正する様子を例示する図である。図8Aにおいては、補正目標軌跡がGPS軌跡である場合の位置の補正目標Gpの例を一点鎖線の円で示し、補正前の自立航法位置Npを破線の円で示している。この例において、自立航法位置Npの第1補正量はA1、第2補正量はA2である。
【0098】
同図8Aに示すように、第2補正量A2は第1補正量A1によって実現される補正の一部を実現するように設定され、かつ、第1補正量A1の大きさより小さい。すなわち、第1補正量A1によって実現される補正は、例えば、自立航法位置Npから補正目標Gpに向かうベクトルV1に沿って自立航法位置Npを移動させる補正であり、当該ベクトルV1は例えば図4Cに示す例であれば、x軸に沿った長さがX、y軸に沿った長さがYである。一方、第2補正量A2は当該ベクトルV1に係数C(0<C<1)を乗じて得られるベクトルV2に沿って自立航法位置Npを移動させる補正に相当する。当該係数Cは上述のステップS310にて特定されることになる。従って、例えば図4Cに示す例であれば、X,Yのそれぞれに第2補正量の大きさを示す係数Cを乗じることによって第2補正量A2による補正を特定することができ、実線で示す円のように補正後の自立航法位置Npaが特定される。以上の補正において、制御部20は、自立航法軌跡と補正目標軌跡との一致度を最も高くするための自立航法位置の補正量である第1補正量A1よりも小さい第2補正量A2によって自立航法位置を補正することになる。従って、仮に誤った補正を行ったとしてもその影響が抑制されるように補正を行うことができ、容易に自立航法軌跡の精度を向上させることができる。
【0099】
次に、制御部20は、ステップS315,320において自立航法方位を補正する。本実施形態において、制御部20は、一定の補正量で自立航法方位を補正する構成を採用している。そこで、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、方位の補正目標の信頼度が所定の基準を満たすか否かを判定する(ステップS315)。本実施形態において、制御部20は、方位の補正目標の信頼度が、補正の基準として必要とされる予め決められた最低限の信頼度以上である場合に方位の補正目標の信頼度が所定の基準を満たすと判定する。
【0100】
そして、ステップS315にて、方位の補正目標の信頼度が所定の基準を満たすと判定されない場合にはステップS320をスキップする。一方、ステップS315にて、方位の補正目標の信頼度が所定の基準を満たすと判定された場合、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、自立航法方位の第2補正量によって自立航法方位を補正する(ステップS320)。ここで、自立航法方位の第2補正量は一定の値であり、例えば第1補正量が1°より大きい場合には第2補正量が1°等に設定され、第1補正量が1°以下である場合もには第2補正量が0°等に設定される。
【0101】
図8Bは、自立航法方位の第2補正量によって自立航法方位を補正する様子を例示する図である。図8Bにおいては、補正目標軌跡がGPS軌跡である場合の方位の補正目標Gdを一点鎖線の直線矢印で例示し、補正前の自立航法方位Ndを破線の直線矢印で例示している。この例において、自立航法方位Ndの第1補正量はA1、第2補正量はA2である。
【0102】
すなわち、第1補正量A1によって実現される補正は、例えば、自立航法方位Ndを回転させて補正目標Gdに一致させる補正であり、回転角は例えば図4Cに示す例であれば、αである。一方、第2補正量A2によって実現される補正は、例えば、自立航法方位Ndを1°回転させて補正目標Gdに近づける補正である。以上の補正において、制御部20は、自立航法軌跡と補正目標軌跡との一致度を最も高くするための自立航法方位の補正量である第1補正量A1よりも小さく、かつ一定の値の第2補正量A2によって自立航法方位を補正することになる。従って、誤補正による影響を極めて小さく抑制した状態で自立航法軌跡の精度を向上させることができる。
【0103】
以上の処理により、自立航法情報の補正を行うと図2に示す処理に復帰し、制御部20は、自立航法情報補正部21dの処理により、自立航法情報の信頼度を更新する(ステップS150)。すなわち、制御部20は、ステップS140にて取得した位置の補正目標の信頼度を自立航法位置の信頼度とし、ステップS140にて取得した方位の補正目標の信頼度を自立航法方位の信頼度とする。
【0104】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、GPS軌跡の信頼度が補正の基準となり得るほど高い限りにおいては、GPS軌跡を補正目標軌跡とする構成を採用しても良い。すなわち、GPS軌跡の信頼度が所定の基準を超えている場合にGPS軌跡を補正目標軌跡とし、GPS軌跡の信頼度が所定の基準未満である場合にマッチング軌跡を補正目標軌跡とし、自立航法軌跡と補正目標軌跡との相違が減少するように自立航法情報を補正する構成を採用しても良い。
【0105】
このような構成は、上述の実施形態において、図2のステップS110およびS125を変更することによって実現可能である。具体的には、ステップS110において、制御部20がGPS方位の信頼度が所定の基準を満たすか否か判定し、所定の基準を満たす場合にステップS115,所定の基準を満たさない場合にステップS120を実行するように構成する。また、ステップS125において、制御部20がGPS位置の信頼度が所定の基準を満たすか否か判定し、所定の基準を満たす場合にステップS130,所定の基準を満たさない場合にステップS135を実行するように構成する。なお、所定の基準は、GPS軌跡を補正目標軌跡として自立航法情報を補正した場合に、自立航法情報の精度が向上し得るか否かを判定するための基準であれば良く、例えば、信頼度に対して下限値を設定し、当該下限値以上であるか否かを判定する構成等を採用可能である。
【0106】
この構成によれば、GPS軌跡の信頼性が高い場合にはGPS軌跡を補正目標軌跡とすることになり、より客観的な情報に基づいて自立航法情報を補正することが可能になる。すなわち、GPS軌跡はGPS情報に基づいて生成され、当該GPS情報は自立航法情報に依存しないが、マッチング軌跡は自立航法軌跡と地図情報が示す道路の形状との比較に基づいて特定されるため自立航法情報に依存する。従って、GPS情報の信頼度が高く正確であれば、当該GPS情報は自立航法情報を補正する際の基準として相応しい。そこで、GPS軌跡の信頼性が所定の基準を超えている場合には自立航法情報を補正する際の基準をGPS軌跡とすることにより、自立航法情報に依存しない信頼性の高い情報に基づいて自立航法情報を補正することが可能になる。
【0107】
さらに、上述の実施形態においては、信頼度に基づいてGPS軌跡とマッチング軌跡とのいずれかを補正目標軌跡として選択しているが、GPS軌跡とマッチング軌跡とのいずれにおいても補正の基準として相応しくない(補正を行っても自立航法情報の精度が向上しない)程度の低い信頼度である場合には補正を行わない構成としても良い。
【0108】
さらに、GPS軌跡の信頼度が所定の基準を超えている場合にGPS軌跡を補正目標軌跡とする構成において、補正目標軌跡を決定するためにマッチング軌跡の信頼度を特定することは必須ではないが、補正目標軌跡を決定する目的以外のためにマッチング軌跡の信頼度を特定する構成を採用し得る。例えば、マッチング軌跡が補正目標軌跡となった場合に補正後の自立航法軌跡の信頼度を特定するためにマッチング軌跡の信頼度を特定し、また、補正の基準として相応しくないほど低い信頼度であるか否かを判定するためにマッチング軌跡の信頼度を特定するように構成してもよい。
【0109】
さらに、上述の実施形態においては、補正軌跡に基づいて位置および方位の補正目標を設定し、当該補正目標に対して徐々に近づくように第2補正量を設定して補正を行ったが、具体的な補正目標の値を設定することなく自立航法情報を補正する構成としても良い。例えば、少なくとも自立航法軌跡が補正目標軌跡に近づくような自立航法軌跡の回転角や移動量を特定し、当該回転角や移動量に対応する回転や移動を行うように自立航法情報を補正する構成としても良い。
【0110】
さらに、上述の実施形態においては、位置と方位とについて別個に信頼度を定義し、別個の軌跡が補正の基準となり得る状態で補正を行っていたが、補正の基準が単一の軌跡となるように構成してもよい。例えば、GPS位置、GPS方位、マッチング位置、マッチング方位のそれぞれについて信頼度を定義し、最も信頼度が高いものがGPS位置の信頼度であれば、方位についてもGPS方位を補正目標とすることでGPS軌跡のみを補正の基準とするような構成等を採用可能である。
【0111】
さらに、上述の実施形態においては、GPS衛星方位とGPS座標間方位とに基づいてGPS方位を特定していたが、GPS衛星方位とGPS座標間方位とのいずれかをGPS方位としても良い。さらに、上述の実施形態においては、位置と方位とで異なる手法で第2補正量を決定していたが、互いに同じ手法でも良いし、上述の実施形態と逆の手法であっても良い。例えば、位置の第2補正量を一定の移動量としても良いし、方位の第2補正量が、補正目標軌跡の信頼度が高いほど大きくなり、補正目標軌跡の信頼度から自立航法軌跡の信頼度を減じた値が大きいほど大きくなり、自立航法方位の第1補正量が大きいほど大きくなるように構成してもよい。
【0112】
さらに、自立航法情報を取得するセンサとして、加速度センサ等の他のセンサが追加されても良い。さらに、GPS位置やGPS方位の代表値は統計上の平均値や中央値であっても良い。さらに、GPS情報の精度に応じて自立航法軌跡とGPS軌跡とを比較する際の処理を変更しても良い。例えば、GPS精度情報が示すGPS情報の精度が高いほど短い距離の自立航法軌跡とGPS軌跡とを比較する構成を採用可能である。すなわち、自立航法軌跡においては累積誤差が時間とともに増大していくため、GPS情報の精度が高いのであれば、時系列のGPS情報を多数取得して統計精度を高めるよりも、GPS情報の精度が高いうちに自立航法軌跡との比較を行った方がよい。そこで、GPS情報の精度が高いほど短い距離の自立航法軌跡とGPS軌跡とを比較する構成とすれば、容易に自立航法軌跡の精度を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0113】
10…軌跡情報生成装置、20…制御部、21…ナビゲーションプログラム、21a…自立航法軌跡取得部、21b…マッチング軌跡取得部、21c…GPS軌跡取得部、21d…自立航法情報補正部、30…記録媒体、30a…地図情報、40…ユーザI/F部、41…車速センサ、42…ジャイロセンサ、43…GPS受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列の自立航法情報が示す車両の軌跡である自立航法軌跡を取得する自立航法軌跡取得手段と、
時系列のGPS情報が示す前記車両の軌跡であるGPS軌跡を取得するGPS軌跡取得手段と、
前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡とを比較して前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡との一致度を最も高くするための前記自立航法情報の第1補正量を取得し、当該第1補正量より小さい第2補正量によって前記自立航法情報を補正する自立航法情報補正手段と、
を備える軌跡情報生成装置。
【請求項2】
前記自立航法情報補正手段は、
前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡とを比較して前記GPS軌跡の信頼度を取得し、前記GPS軌跡の信頼度が高いほど大きくなる前記第2補正量によって前記自立航法情報を補正する、
請求項1に記載の軌跡情報生成装置。
【請求項3】
前記自立航法情報補正手段は、
前記自立航法軌跡の信頼度を取得し、前記GPS軌跡の信頼度から前記自立航法軌跡の信頼度を減じた値が大きいほど大きくなる前記第2補正量によって前記自立航法情報を補正する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の軌跡情報生成装置。
【請求項4】
前記自立航法情報補正手段は、
前記第1補正量が大きいほど大きくなる前記第2補正量によって前記自立航法情報を補正する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の軌跡情報生成装置。
【請求項5】
前記自立航法情報補正手段は、
前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡とを比較して前記GPS軌跡の信頼度を取得し、前記GPS軌跡の信頼度が所定の基準を満たす場合に、前記第1補正量より小さい一定の前記第2補正量によって前記自立航法情報を補正する、
請求項1に記載の軌跡情報生成装置。
【請求項6】
時系列の自立航法情報が示す車両の軌跡である自立航法軌跡を取得する自立航法軌跡取得工程と、
時系列のGPS情報が示す前記車両の軌跡であるGPS軌跡を取得するGPS軌跡取得工程と、
前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡とを比較して前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡との一致度を最も高くするための前記自立航法情報の第1補正量を取得し、当該第1補正量より小さい第2補正量によって前記自立航法情報を補正する自立航法情報補正工程と、
を含む軌跡情報生成方法。
【請求項7】
時系列の自立航法情報が示す車両の軌跡である自立航法軌跡を取得する自立航法軌跡取得機能と、
時系列のGPS情報が示す前記車両の軌跡であるGPS軌跡を取得するGPS軌跡取得機能と、
前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡とを比較して前記自立航法軌跡と前記GPS軌跡との一致度を最も高くするための前記自立航法情報の第1補正量を取得し、当該第1補正量より小さい第2補正量によって前記自立航法情報を補正する自立航法情報補正機能と、
をコンピュータに実現させる軌跡情報生成プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−7938(P2012−7938A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142604(P2010−142604)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】