説明

軌道の座屈防止装置

【課題】 道床バラストの堀込みが簡単で済み、従って、設置作業の省力化を比較的図れ、しかも、従来構造より効果的なレールの座屈防止装置を提供する。
【解決手段】 レールRに、該レールRの底部Rcを挟持するようにして取付けた座屈防止金具本体1に、下端をバラストb内に打ち込み、しかも、前記レールRを受支する枕木mの並設方向に沿う板面を備えた座屈防止板2の上端部を止着する。止着手段は、前記防止金具本体1に横設したねじ孔3と、該ねじ孔3に前記座屈防止板2を通じて螺合する止着ボルト15で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化による伸縮作用によってレールに生じる軸圧力に対処し、該レールの座屈を防止するために適用する、軌道の座屈防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レールは温度変化によって伸縮作用して軸圧力が生じるので、レールを締結した枕木を道床の構成材であるバラスト内に埋設固定しているが、前記軸圧力による座屈を防ぐために、該枕木を鉄材で囲い付けて、枕木に移動抵抗を付加させた構造のものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭47−11845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来構造のものは、座屈防止材である鉄材を枕木に取り付ける際、枕木周辺を大きく掘り込んで取付けなければならず、また、取付け後に、掘り込むことによって緩んでしまった道床バラスト(砕石)をタイタンパ等の工具で突き固めする必要があり、取付け作業に大変な手間と時間を要している。
【0005】
本発明は斯様な従来例の欠点に着目し、道床バラストの掘込みも簡単ですみ、従って、設置作業の省力化を比較的図れ、しかも、従来構造より効果的な座屈防止装置を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
レールに、該レールの底部を挟持するようにして取付けた座屈防止金具本体に、下端をバラスト内に打ち込み、しかも、前記レールを受支する枕木の並設方向に沿う板面を備えた座屈防止板の上端部を止着した構成としたものである。なお、防止金具本体にねじ孔を横設し、該ねじ孔に座屈防止板を通じて止着ボルトを螺合するようにすると、レールに予め取付けた防止金具本体に対して座屈防止板を簡単かつ確実に取付けられ、設置作業の尚一層の省力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、座屈が生じるレールに、座屈防止板を直接取付けたものであるから、枕木に間接的に取付けるものと較べ、より効果的な座屈防止降下を期待でき、設置する(取付ける)際の枕木周辺のバラスト掘込み作業と較べ、レール周辺のバラスト掘込み作業で足りるから、当該設置作業を簡便に行うことができ、また、座屈防止板は枕木の並設方向に沿う板面を備えて道床バラスト内に打ち込んだ構成を採るものであるから、大きな座屈抵抗を得られ、従って、座屈防止効果の優れた装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】座屈防止金具本体をレールに組付けた状態の側面図。
【図4】座屈防止板をレールに組付ける前の状態を示す一部欠截正面図。
【図5】座屈防止板を案内金具を用いてレールに組付けた状態を示す一部欠截側面図。
【図6】図5の一部欠截平面図。
【図7】案内金具の斜視図。
【実施例】
【0009】
図中、mは道床を構成するバラスト(砕石)b上に所要間隔を置いて並べて設置した枕木で、該枕木m,m間にレールRをわたすように敷設し、このレールRの前記枕木m,m間の中間部分に、本発明に係る、レール座屈防止装置Aを設置する。
【0010】
レール座屈防止装置Aは、前記枕木mに取付けた防止金具本体1と、該本体1に組付けた座屈防止板2とで構成する。
【0011】
防止金具本体1は、方形状の主体部片1aと支持部片1bをT字状に互いに止着し、支持部片1b下部側の片面1b´´と、主体部片1aの下面1a´´との間の両側に、三角形状の補強部片1c,1cをわたして構成した枠体で成り、前記支持部片1bの前記下部側の片面1b´´と上部側の片面1b´の各両側に、ナット材3A,3Aをそれぞれ止着(熔接)して各片面1b´,1b´´に設けた透孔と連通するねじ孔3,3を設け、このねじ孔3側の前記支持部片1bの基部には断面略L字状の挟持部片4を、支持部片1bの板面に沿わせて立設し、前記主体部片1aの先端部には一対のねじ孔5,5を設けて構成したものである。
【0012】
このような構成の防止金具本体1は、レールRの底部Rcの、長手方向に沿う一端Rc´を、前記挟持部片4と主体部片1aが成す係合溝6に係合するようにして、主体部片1aの上面を、レールRの底部Rcにあてがい、やや横伏L字状の挟持片7の先端部を、レールRの長手方向に沿う他端Rc´´上に載せ、該挟持片7に設けた透孔8を通じて締結ボルト9の先端を前記ねじ孔5に螺合締付けて、底部Rcを挟持するようにしてレールRに取付けたものである。
【0013】
前記座屈防止板2は、縦長方形状の下部側の両隅部を面取り状にして、下端部を下端方向に次第に幅狭くした変形六角形の平板体の上部側両端に、前記防止金具本体1に設けた、ナット材3Aで成る前記ねじ孔3位置に対応させて縦長長孔10,10を設け、前記枕木mの並設方向に沿う一方の片面2´には、一対の、長い補強リブ11と、該長い補強リブ11,11間に配した一対の短い補強リブ11´、11´を接ぐようにして打圧用の肉厚部12を設け、該肉厚部12の中央に組付け穴13を設け、これにレベル確認ブロック14を係合するようにして構成したものである。
【0014】
このように構成した座屈防止板2は、前記肉厚部12又は該肉厚部12に組付けたレベル確認ブロック14をハンマー等の工具で打圧して、下端をバラストb内に埋入させつつ、レールRに止着した防止金具本体1の支持部片1bの、外側面である前記片面に沿わせて降下させ、本体1側のねじ孔3,3と防止板2側の縦長長孔10が一致する位置まで降下させた段階で、各長孔10を通じて該長孔10に対応するねじ孔3に止着ボルト15を螺合、締付けることにより、座屈防止板2は、その板面(片面)が枕木m,mの並設方向に沿うようにして枕木m、m間のレールR部分に取付けられ、レールの座屈防止を機能するのである。
【0015】
なお、実施例の座屈防止板2は、前記防止金具本体1の設置位置に着脱自在にしてレールRに組付けた案内金具16に案内されてバラストb内所定位置に打ち込まれ(このとき、レベル確認ブロック14の上端とレール頭部との位置関係によって設定位置を確認し)、設定どおりに配置できるようにしてある。
【0016】
案内金具16は、上部片16aの下面両側に側部片16b,16cを相対設した、下面開口の方形溝枠体の一方の前記側部片に、固着ねじ19螺合用の一対のねじ孔17,17を並設し、一方の側部片16bに相対する他方の側部片16cの両側に、該側部片16cの縦幅より長い、断面ややL字形の案内杆16d,16dを取付けて(熔接して)、側部片16cの縦幅内において存する案内溝18,18を相対設して構成したものである。
【0017】
そして、案内金具16は、レールRに組付けた防止金具本体1の設置位置で側部片16b,16c間にレールRの頭部Raを係合するようにして該頭部Ra上に上部片16aを載せるようにして、レールRに組合わせ(この組合わせ作業は既設の防止金具本体1に対する案内金具16位置を経験と勘で行うが、何等かの目印を付しておけばその作業性は増す)て、一方の側部片16bに設けたねじ孔17に固着ねじ19を螺合して、その先端をレール腹部Rbに圧接させることによりレールRに固着する。
【0018】
この状態で、案内金具16の案内溝18,18にその上端開口端から座屈防止板2を係合し、該座屈防止板2を案内溝18に沿って降下させ、前記の通り、適宜、工具で打圧して下端をバラストb内に埋入させると、座屈防止板2は、案内溝18から下端開口端を通じて離脱し、本体1側のねじ孔3と防止板2側の縦長長孔10が一致する位置まで降下させた段階で、各長孔10を通じて該長孔10に対応するねじ孔3に止着ボルト15と螺合、締付けることにより座屈防止板2は、板面(片面)が枕木mの並設方向に沿うよう配せられ、すなわち、レールRの長手方向に交差する方向(直交方向が理想であるが)に配せられる。そして、座屈防止板2の、この打込み操作後、固着ねじ19を緩めてレールRの頭部Raに重なり合って車輌の通過に邪魔となる案内金具16をレールRより取り外す(取外し後、防止金具本体1と案内金具16をレールRに組付けるために形成した掘込み穴にバラストを充填して原道床バラスト状態にする)ことによりレールの座屈防止を期待したレール(軌道)状態を得るのである。
【0019】
なお、図中23は補強ブロックである。
【符号の説明】
【0020】
1 座屈防止金具本体
2 座屈防止板
3 ねじ孔
15 止着ボルト
R レール
b バラスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに、該レールの底部を挟持するようにして取付けた座屈防止金具本体に、下端をバラスト内に打ち込み、しかも、前記レールを受支する枕木の並設方向に沿う板面を備えた座屈防止板の上端部を止着した、レールの座屈防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−21292(P2012−21292A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158586(P2010−158586)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(391030125)保線機器整備株式会社 (39)