説明

軌道敷き緑化装置及び同装置に用いる植物育成ブロック

【課題】緑化植物の生育に好適な水やり機能と水はけ機能を具備して、緑化の維持管理の容易な軌道敷き緑化装置を提供する。
【解決手段】レール間の空所を緑化するために、軌道敷きに設置する緑化装置であって、
レール13、14を固定するための手段として枕木13、14を具備し、レールを固定している上記枕木13、14の間に配置して、レール固定部の間を緑化空間とする植物育成のためのコンクリート製の植物育成ブロック17と、植物体を保持する床を形成し、上記植物育成コンクリート製の植物育成ブロック上に配置するための植物保持マット25及び上記コンクリート製の植物育成ブロック17と植物保持マット25との間に配置された給水制御部24を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール間の空所を緑化するために、軌道敷きに設置するための軌道敷き緑化装置及び同装置に用いる植物育成ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市景観の整備や交通事故対策及びCO削減等の解決方法の一つとして、路面電車の軌道敷きの緑化が計画され、また、現実に施工されるようになってきた。しかしながら、施工された緑化の維持管理の困難さも同時に明らかになってきている。緑化の維持管理如何によっては都市景観改善等の目的も果たされず、結局CO削減も不十分にしか達成されないことになるからである。
【0003】
この問題について検討するために、従来提案されている軌道敷きにおける緑化技術について調査すると、例えば特開2004−137683号に開示されている発明では、底面に通水部を有し、レールに沿って並べて設置された、耐踏圧性のある皿型容器と、皿型容器の内側に配置される植物栽培床と、植物栽培床で栽培される緑化植物とによって緑化構造体を構成している。この発明の植物栽培床は培養度や保水材、肥料分などで構成され、かつ合成樹脂の糸材を縦横に編んで網状に形成されており、皿型容器はその中央部分を削除して左右に分割した形態とし、植物がある程度根付いた後は、頻繁な手入れを行わなくても良好な状態を維持できるとするものである。しかしながら、この発明のように特別の植物栽培床に頼る装置では、植物栽培床自体の性能が問われ、それによって植物の栽培状況が左右されることになるのであるから、軌道敷きにおける植物の栽培状態の維持と、そのための手間等について、今後の評価を待たなければならない。
【0004】
特開2005−41号は、路面電車軌道の緑化構造として全体が柔軟な布材料で形成された緑化容器を用いるものに関する発明である。この緑化容器はレール内面の形状変化にしたがって変形するので安定した状態を得やすいほか、枕木等に固定しなくても安定な設置が可能という利点を有するものであるが、給水と排水については具体的な提案がなされておらず問題を残したままである。特開2007−111030号は、路面電車の軌道敷きにタイや滑り止め部を有する植物栽培室を設置し、その下部に貯水部を設けることにより、一年中安定した(量の)水を溜めることができ、貯水部の底面より突出する水路部により、均一な水量を確保するというものである。しかるに、鋳鉄製の緑化容器を用いて水を溜めることを記載している反面、排水に関する記載はなく、緑化の維持管理に関する理解については疑問が残る。
【0005】
【特許文献1】特開2004−137683号
【特許文献2】特開2005−41号
【特許文献3】特開2007−111030号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、緑化植物の生育に好適な水やり機能と水はけ機能を具備して、緑化の維持管理の容易な軌道敷き緑化装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、例えば、緑化植物の入れ替えであるとか、散水作業など、交通規制を伴う大掛かりな作業を極力不要化することが可能な軌道敷き緑化装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、上記の軌道敷き緑化装置に直接使用して最良の結果を得ることが可能な植物育成ブロックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明はレール間の空所を緑化するために、軌道敷きに設置する緑化装置について、レールを固定するための手段として枕木又はその他のレール固定部を具備し、レールを固定している上記レール固定部の間に配置して、レール固定部の間を緑化空間とする植物育成のためのコンクリート製の植物育成ブロックと、植物体を保持する床を形成し、上記植物育成コンクリート製の植物育成ブロック上に配置するための植物保持マット及び上記コンクリート製の植物育成ブロックと植物保持マットとの間に配置された給水制御部を有して構成するという手段を講じたものである。
【0008】
本発明の軌道敷き緑化装置は、基本的には、2本のレールを固定するための手段として枕木又はその他のレール固定部を具備している軌道敷きが設置対象になる。軌道には、従来から周知のバラスト軌道のほかに、路盤コンクリートに枕木を埋め込んだコンクリート道床や、バラスト軌道などの枕木にラダー枕木を用いたもの、或いは道床にコンクリートの平板を用いたスラブ軌道など様々な種類があり、本発明はそれらの多くの軌道に設置することができるものである。また、本発明はLRT(Light Rail Transit)システムや、路面電車の軌道敷きを主な対象とするものでもあり、都市緑化の一端を担うという側面を有している。
【0009】
本発明は、軌道敷きに施されている緑化の維持管理の容易化を主な目的として改良を加えたものであり、その植物育成のためにコンクリート製の植物育成ブロックと、植物保持マット及び給水制御部を主要な構成要件として有することが必要である。コンクリート製の植物育成ブロックは、本発明の装置の主要部分を構成するもので、後述する通り、レールを固定している上記レール固定部の間に配置して、レール固定部の間を緑化空間とするために植物の育成場所を提供するもので、いわば植物育成の基盤をなす。
【0010】
上記植物保持マットは、コンクリート製の植物育成ブロック上に育成植物を配置するための手段であり、植物体を保持する床を形成して、根付いた植物にとっては栽培土壌の役目を果たす。従って、土壌として植物を育成する床となることからマットと称しており、例えば、繊維状材料を加圧して一定の形状を保つように形成したもの、或いは繊維材製の袋内に土壌構成材を充填したものなどを使用することができる。また、土壌は一つの塊をなすものでもあるので、土そのものだけで構成されているものも植物保持マットに該当する。
【0011】
また、上記コンクリート製の植物育成ブロックと植物保持マットとの間には給水制御部を配置している。給水はある程度までは自然のままとし、限度を超えると判断された場合には人工的な散水によって給水することが望ましい。しかし、水を溜める量の上限は植物育成ブロックに形成する凹部の容積又はそこに充填する保水材の保水量によって決定し、それを超える量の水分は随時排水される構成とすることによって、給水過剰となる恐れがまず起こらないので、給水の管理は容易である。このように、本発明における給水制御部は植物保持マットに保持されている植物に供給すべき水分の管理を目的としており、後述するそのための具体的構成によって、保水機能と排水機能のバランスが保たれるようになる。
【0012】
本発明に係る軌道敷き緑化装置に用いる植物育成ブロックは、枕木又はその他のレール固定部の間に配置される一定の大きさ、形状を有するコンクリート製のブロック本体と、枕木又はその他のレール固定部間の内側の係合部と係合してブロック本体を固定するために、ブロック本体の両端部に形成した係合構造とを具備して構成する。このブロック本体は、軌道敷きに応じた一定の大きさと形状の規格を有するものとし、また、一定の大きさと形状ではない規格外のブロック本体を必要に応じ併用して、目的の軌道敷きに敷設するものである。
【0013】
植物育成ブロックは、本発明における軌道敷き緑化装置に用いる植物育成ブロックの本体として、2本のレールを固定するための手段である枕木又はその他のレール固定部の間に配置され、上記の目的のために、枕木又はその他のレール固定部の内側の係合部と係合してブロック本体を固定させるものである。このために、ブロック本体は両端部に係合構造を具備しており、この係合構造に基づき、2本のレール固定部に挟まれた位置関係のもとで、軌道敷きの左右方向における固定がなされる。つまりブロック本体は左右のレール固定部の間に固定される。
【0014】
上記ブロック本体は、レールを支える枕木又はその他のレール固定部にレールを固定するための犬釘のような固定具と係合して、その位置を決める位置決め部を有するものとする。これによって、ブロック本体は軌道敷きの左右方向のみならず敷設方向にも固定されることになり、また、犬釘などを固定具に利用することによって、特別の固定手段を設けることなくブロック本体の位置決めをすることができるようになる。従って、この構成を適用する場合、犬釘等の固定具はレールに沿って一定の間隔で設置されていることが前提になる。
【0015】
ブロック本体について、前述した給水制御部の機能を持たせるために、植物保持マットへの給水手段を構成する保水材を充填するとともに、複数箇所の凹部を係合構造部間のブロック本体の上面に設け、かつまた、植物保持マットへの給水量を調整するために、水抜き孔を上記凹部に有している。凹部は水を溜める手段であり、従ってその平面形状は方形や長方形その他の多角形、或いは円形、不定形等任意の形状から選択することができる。保水材は給水制御に必要な保水機能を得るために用意されており、水抜き穴は給水制御に必要な排水機能を確保するために設けられている。これらによって、単に水を溜めただけでは得られない適正な量の給水管理を長期間に亘って得ることができる。
【0016】
保水材は栽培植物に必要な期間水を溜めておくことができるものであれば、どのようなものを使用しても差し支えはない。例えば、パーライトの名称で知られる園芸用の発泡状の土(黒曜石や火山岩から成るパーライト(岩石)を含むものの総称。)を高温で熱処理してできる発泡体)は芝等の植物にとって好適である。或いはその他の多孔質の粒状物なども使用可能である。これらは、例えば概ねpH6.5に成分調整し、或いは特定の植物に適した保水材である場合には調整することなく、単独若しくは他のものと混合して使用する。なお、様々な種類の芝、ジャノヒゲ、セダム等の植物の保水材として好適なものの1つに、30〜40%の保水率を有するシラス土壌の粒状物から成るものがある。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、緑化植物の生育に好適な水やり機能と水はけ機能を発揮する給水制御部を具備しており、緑化の維持管理の容易な軌道敷き緑化装置を提供することができる。また、本発明によれば、植物保持マットにて植物を育成することによって、例えば、緑化植物の入れ替えであるとか、散水作業など、交通規制を伴う大掛かりな作業を極力不要化することが可能な軌道敷き緑化装置を提供することができる。また、本発明によれば、上記の軌道敷きに設置して最良の結果を得ることが可能な植物育成ブロックを提供することができ、それによって軌道敷き緑化装置を最良の形態で実施することができるようになるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は、ラダー方式の軌道敷き(バラスト軌道の枕木にラダー枕木を用いたもの、図13参照)に本発明に係る軌道敷き緑化装置10と同装置に用いる植物育成ブロックを適用した例1に関するものである。このラダー方式の軌道敷きは、2本のレール11、12を固定するために、レール方向に延びたレール固定部である枕木13、14を有しており、左右の枕木13、14を多数の横木15を用いて一定の間隔で結合したラダー枕木構造を備えている。ラダー枕木の枕木部分はコンクリート製、ラダー部分は金属パイプ製を想定している。また、左右のレール11、12は夫々を左右の枕木13、14に配置し、かつ、犬釘を固定具16に用いて固定している。
【0019】
横木15は後述する植物育成ブロック17よりも低位置にあり抵触することはない。上記横木15の間隔として一定のモジュールを設定し、そのモジュールの整数倍の寸法に横木15の設置間隔と植物育成ブロック17の長さを一致させれば、施工はより容易化される。なお、固定具16として、各犬釘等の固定具がレール11、12に沿って一定の間隔で設けられているものとする。上述の植物育成ブロック17は、レール固定部の間を緑化空間とする基盤として、植物の育成場所を提供するための構造を有する、ほぼ板状のブロックである(図5〜図9参照)。
【0020】
植物育成ブロック17は、レール固定部である左右の枕木13、14の間に配置される一定の大きさ、形状の規格を以て形成したコンクリート製のブロック本体17aと、左右の枕木13、14の間に配置したブロック本体17aを固定するために、ブロック本体
17aの左右両端に形成した係合構造部18、19を具備している(図2〜図4参照)。左右の係合構造部18、19はブロック本体17aに対して上下に段状に屈曲し、屈曲形状の下面に係合相手部18a、19aが設けられている。例1における係合部13a、14aは左右の枕木13、14の内側の凸角状の部分であり、係合相手部18a、19aはブロック本体17aの両端部の下部に形成した凹角状の部分である。
【0021】
植物育成ブロック17には、固定具16の犬釘と係合し、敷設方向(レール方向)の位置を決めるための位置決め部18b、19bが、ブロック本体17aの左右両端の係合構造部18、19に形成されている。図示の位置決め部18b、19bは、左右の係合構造部18、19の外側辺にその一部を切除した形状に設けられており、図示の例においては固定具16を打ち込んでいる隆起部と相似型の四辺形の平面形状に形成されている。上記の固定具16を目安にして位置決め部18b、19bを配置することによって、植物育成ブロック17は軌道敷きに隙間なく敷設することができる。このことは、植物育成ブロック17間に隙間があってはならないという趣旨ではなく、図示の例はそうなっているという説明に留まるので、植物育成ブロック17を隙間ないし空間を設けて配置するか、或いは隙間ないし空間を有する植物育成ブロック17を用いるかどうかは、現実の施工に当たって決められるべき事項である。
【0022】
また、ブロック本体17aは、植物保持マット25に保持されている植物への給水手段として保水材23を充填するために、複数箇所の凹部20を係合構造部間のブロック本体17aの上面に有している(図5〜図8参照)。図7及び図8から明らかであるように、凹部20は方形の平面形状を有して前後左右に整然と並べられ、かつ、1個1個が独立していて、隣接凹部間には縦横の溝21a、21bが設けられている。また、縦横の溝21a、21bの交差点部分には水抜き孔22が形成されている。図示の凹部20は方形の平面形状を有し、その4個分で1個の植物保持マット25の大きさと一致する形態を有している(図10参照)。
【0023】
上記ブロック本体17aの凹部20には前記の保水材23が充填されている。例1の場合、保水材23として、30〜40%の保水率を有するシラス土壌の粒状物から成るものを使用している。図示の保水材23はpH約6.5に調整したシラス土壌を使用した例であり、凹部20をほぼ埋めるように充填され、凹部内の水分が概ね保水材23を介して植物保持マット25に吸収され、植物に供給されるように構成されている。水抜き穴22が形成されていない縦方向の溝21aには灌水手段21cのパイプが配置され、適切な間隔でパイプに開けられた給水口から水を供給可能に設けられている。上述した凹部20、縦横の溝21a、21b、灌水手段21c、水抜き穴22及び保水材23は、植物保持マット25へ給水量を調整するための給水制御部24を構成している(図14参照)。
【0024】
図示の例1において、上記植物保持マット25は通水性のシート26を介して給水制御部24の上に配置されている。この通水性のシート26は不織布から成り、細かな砂等が凹部20に堆積するのを防止するために、給水制御部24を覆うようにして敷設されている。そして通水性のシート26の上に、植物27の植え付けられた植物保持マット25が配置されているものであり、図示の例における植物保持マット25は、例えば繊維状材料を加圧圧縮して方形の板状に形成したものから成る(図10参照)。図中、符号28はバラストを示す。
【0025】
このように構成されている本発明の例1においては、図1に示されているようなラダー方式の軌道敷きに植物育成ブロック17を配置し、左右枕木13、14の係合部13a、14aに相手係合部18a、19aを係合させ、かつまた、固定具16を目安にしてそこに位置決め部18b、19bが配置されるようにして、植物育成ブロック17を軌道敷きに敷設する。その植物育成ブロック17の荷重は左右両端において枕木13、14に支えられるとともに、中間部分においてバラスト28にも直接支えられる(図13A)。
【0026】
このようにして植物育成ブロック17を配置し、緑化を必要とするレール間の空所Sに敷設するとともに、各植物育成ブロック17の凹部20には保水材を充填し、縦方向の溝21aには灌水手段21cのパイプを設置し、かつ、シート26によって凹部20の上面を覆い、植物保持マット25を配置する(図10)。施工後、灌水手段21cのパイプに通水することによって、水が縦横の溝21a、21bを伝って流れ(図14)、凹部20を満たしかつ保水材23に吸収されて行く。符号のWは水面を示す。植物保持マット25に水が行き渡る状況になると、その床組織内部にて植物27が水分を吸収し、やがて根を下ろして成長を開始し、その結果レール間の空所Sを緑化することになる。
【0027】
栽培植物27には、降水による水分供給があるので、十分な降水の得られる間は、灌水は不要であり、また、過剰に供給された水分は水抜き孔22から随時排出される。特に、本装置の下部が排水性の良いバラスト28である状況では、根が常時水に浸される状況にはなりにくい。逆に、日照が続いても水分が無くなるまでには、第1に凹部20の湛水の蒸発、第2に保水材23に蓄えられている水分、第3に植物保持マット25に蓄えられている水分と多段階に亘る保水能力があり、従って、異常気象でも起こらない限り、頻繁な水やりは不要である。
【0028】
軌道敷きに、上記ラダー方式のもの以外にも各種のタイプがあることは既に述べたが、その中でも周知の一つのタイプである、バラスト軌道に本発明の装置30を適用する例2について説明する。図15はレール31、32を固定する枕木33をバラスト上に一定の間隔で配置したものを示しており、本発明の装置30を、この横木状枕木33を利用して施工する構成を特徴とするものである。例2では、左右のレール31、32を前後の枕木33、33・・・に配置し、かつ、犬釘を固定具36に用いて固定している。
【0029】
枕木33は後述する植物育成ブロック37よりも低位置にあり、例2では枕木間の空間に、その枕木33の間隔を一定のモジュールとして構成した植物育成ブロック37を配置する。即ち、例2では上記のモジュール又はその整数倍ないし整数分の1の寸法に植物育成ブロック37の長さを一致させた構成を有している。例2の植物育成ブロック37は、4辺の立ち上がった形態を有する盆状のものであるが、前後2辺の立ち上がり部には、パイプ41cを通すための通口部37bが形成されている。なお、固定具36である犬釘はレール31、32に沿って一定の間隔で設けられている。
【0030】
植物育成ブロック37は、レール固定部として前後の枕木33、33・・・の間に配置する一定の大きさ、形状の規格を以て形成したコンクリート製のブロック本体37aと、前後の枕木33、33・・・の間に配置したブロック本体37aを固定するために、ブロック本体37aの前後両端に形成した係合構造部38、39を具備している(図19〜図20参照)。前後の係合構造部38、39はブロック本体37aに対して上下に段状に屈曲し、屈曲形状の下面に係合相手部38a、39aが設けられている。例2における上記係合部33a、33bは前後の枕木33、33・・・の内側の凸角状の相対する部分であり、係合相手部38a、39aはブロック本体17aの前後両端部の下部に形成した凹角状の部分である。
【0031】
植物育成ブロック37には、犬釘を固定具36として係合し、敷設方向(レール方向)の位置を決める位置決め部38b、39bが、ブロック本体17aの前後両端かつ左右両端、つまり係合構造部38、39の4か所の角に形成されている。図示の位置決め部38b、39bは、前後の係合構造部38、39の角を四角に切り込んだ形状に設けられており、図示の例においては固定具36を打ち込んでいる隆起部と相似型の四辺形の平面形状に形成されている。かくして、植物育成ブロック37は軌道敷きに隙間なく敷設される。このことが、植物育成ブロック37間に隙間があってはならないという趣旨ではない点、例1と同様である。
【0032】
ブロック本体37aは、植物保持マット45に保持されている植物への給水手段として保水材43を充填するために、複数箇所の凹部40を係合構造部間のブロック本体37aの上面に有している(図18、19参照)。同図から明らかであるように、凹部40は方形の平面形状を有して前後左右に整然と並べられ、かつ、1個1個が独立していて、隣接凹部間には縦横の溝41a、41bが設けられている。また、縦横の溝41a、41bの交差点部分には水抜き孔42が形成されている。図示の凹部40は方形の平面形状を有しており、その4個分で1個の植物保持マット45の大きさと一致する形態に形成されている(図18参照)。
【0033】
ブロック本体37aの凹部40には保水材43が充填されている。例2における保水材43には、70〜80%の保水率を有する、多孔構造から成るシート状のものを使用している。例2の保水材43はpH約6.5に調整した緑化基盤土を使用した例であり、凹部40をほぼ埋めて充填され、凹部内の水分を概ね保水材43を介して植物保持マット45に吸収し、植物に供給するように構成されている。水抜き穴42が形成されていない縦方向の溝41aには灌水手段41cのパイプが配置されており、任意の間隔でパイプに開けられた給水口から水を供給可能に設けられている。上述した凹部40、縦横の溝41a、41b、灌水手段41c、水抜き穴42及び保水材43は、植物保持マット45への給水量を調整するための給水制御部44を構成している(図18参照)。
【0034】
本発明の例2においても、上記植物保持マット45は通水性のシート46を介して給水制御部44の上に配置されている。上記通水性のシート46の使用目的等は例1の場合と同様である。そして植物が植物保持マット45に植え付けられるものであり、例2の植物保持マット25は、緑化基盤土によって形成されているものである。従って本発明の例2においても、例1と同様の目的を達成し、かつ効果を得ることができることを理解することができるであろう。
【0035】
本発明は以上のように構成されており、路面電車、或いはLRTなどの軌道敷きの、特にレール間の空所Sを、各種の芝、ジャノヒゲ、セダム等の高等植物或いは地衣類によって被覆し、緑化するために有用なものであって、水やりと水はけの手間を簡素化することによって、栽培植物の維持管理の容易化を可能にしたものである。従って、従来の緑化においては重要な事項とされていた、軌道敷きの傾斜整地であるとか、排水設備の施工というような、困難な工事を必要することなく緑化を実現することができる。また、緑化植物に対する維持管理の容易化によって、植物の栽培状態を長期間良好に保つことが容易になり、管理のために交通を遮断するとか、通行を制限するなどの交通規制の頻度を少なくて済むようになり、路面電車以外の通行車両によって植物の被る悪条件に対する耐力が向上し、いきいきとした植物の栽培が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
レール間の空所の緑化が目的であるが、レール隣接部分の力にも本発明を利用できることは明らかである。その場合、植物育成ブロックの保持のためのレール固定部の一部として、軌道敷き等に設置されている舗石、縁石等を使用することができる。また、車両を走らせるためのレールとしてではなくても、レール状の材料を用いて形成された平面的な構築物であれば、その緑化に本発明を利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の軌道敷き緑化装置の例1における軌道敷きを示す斜視図である。
【図2】同上の装置の斜視図である。
【図3】同じく要部の上方から見た斜視図である。
【図4】同じく要部の下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の例1における植物育成ブロックの上方から見た斜視図である。
【図6】同じく下方から見た斜視図である。
【図7】同じく植物育成ブロックを示すもので、Aは平面図、Bは正面図、Cは底面図である。
【図8】Aは図7のVIIIA−VIIIA線部分の断面図、Bは図7のVIIIB−VIIIB線部分の断面図である。
【図9】同上の植物育成ブロックの側面図である。
【図10】同じく例1の装置を示すもので、Aは一部を破断した斜視図、Bは図10AのXB部の拡大図である。
【図11】同じく軌道敷きに植物育成ブロックを配置した状態の斜視図である。
【図12】図11に対応する平面図である。
【図13】Aは図12のXIII−XIII線断面図、Bは図13AのXIIIB部の拡大図である。
【図14】Aは図12のXIV−XIV線断面図、Bは図14AのXIVB部の拡大図である。
【図15】本発明の軌道敷き緑化装置の例2における軌道敷きを示す斜視図である。
【図16】同上の装置の斜視図である。
【図17】同上の装置を示すもので、Aは平面図、Bは正面図、Cは底面図である。
【図18】同じく例2の装置を示すもので、Aは一部を破断した斜視図、Bは図18AのXVIIIB部の拡大図である。
【図19】同じく例2における植物育成ブロックの上方から見た斜視図である。
【図20】同じく例2における植物育成ブロックの下方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10、30 軌道敷き緑化装置
11、12、31、32 レール
13、14、33 枕木
13a、14a、33a、33b 係合部
15 横木
16、36 固定具
17、37 植物育成ブロック
17a、37a ブロック本体
18、19、38、39 係合構造部
18a、19a、38a、39a 相手係合部
18b、19b、38b、39b 位置決め部
20、40 凹部
21a、21b、41a、41b 縦横の溝
22、42 水抜き穴
23、43 保水材
24、44 給水制御部
25、45 植物保持マット
26、46 通水性のシート
27 植物
S 空所
W 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール間の空所を緑化するために、軌道敷きに設置する緑化装置であって、
レールを固定するための手段として枕木又はその他のレール固定部を具備し、レールを固定している上記レール固定部の間に配置して、レール固定部の間を緑化空間とする植物育成のためのコンクリート製の植物育成ブロックと、植物体を保持する床を形成し、上記植物育成コンクリート製の植物育成ブロック上に配置するための植物保持マット及び上記コンクリート製の植物育成ブロックと植物保持マットとの間に配置された給水制御部を有して構成された軌道敷き緑化装置。
【請求項2】
植物保持マットは、一定の大きさ、形状を有するほぼ盤状に形成されたものから成り、少なくとも上面に床を有している請求項1記載の軌道敷き緑化装置。
【請求項3】
軌道敷き緑化装置に用いる植物育成ブロックであって、
枕木又はその他のレール固定部の間に配置される一定の大きさ、形状を有するコンクリート製のブロック本体と、枕木又はその他のレール固定部間の内側の係合部と係合してブロック本体を固定するために、ブロック本体の両端に形成した係合構造部とを具備して構成された軌道敷き緑化装置に用いる植物育成ブロック。
【請求項4】
ブロック本体は、レールを支える枕木又はその他のレール固定部にレールを固定するために、レールに沿って一定の間隔で設置されている犬釘のような固定具と係合してその位置を決める位置決め部を有している請求項3記載の軌道敷き緑化装置に用いる植物育成ブロック。
【請求項5】
ブロック本体は、給水制御部として、植物保持マットへの給水手段を構成する保水材を充填するために、複数箇所の凹部を係合構造部間のブロック本体の上面に有し、かつまた、植物保持マットへの給水量を調整するために、水抜き孔を上記凹部に有している請求項3記載の軌道敷き緑化装置に用いる植物育成ブロック。
【請求項6】
保水材として、30〜40%の保水率を有するシラス土壌の粒状物から成るものを使用する請求項5記載の軌道敷き緑化装置に用いる植物育成ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−168749(P2010−168749A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10138(P2009−10138)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(507050137)平和コンクリート工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】