説明

軌道桁の支承構造

【課題】活荷重による軌道桁のローリングや経年劣化による軌道桁の姿勢の変化を抑えることができ、位置決め機構が外れ難い軌道桁の支承構造を提供する。
【解決手段】軌道桁の支承構造1は、基礎上板11に設置される下方に陥入した球面である下シュー球面21を具備する下シュー20と、下シュー球面21に摺動する下座金球面31を具備する下座金30と、下座金30に載置される上シュー40と、上シュー40に載置され、上方に突出した球面である上座金球面51を具備する上座金50と、上座金球面51に摺動する上ナット球面61を具備する上ナット60と、を有し、これらを基礎構造物10のアンカーボルト12が貫通し、さらに、基礎構造物10の規制ロッド13と、上シュー40の上シュー規制孔47との間には、桁軸方向への移動を許容し、桁幅方向への移動を不能にする移動規制手段70が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軌道桁の支承構造、特に、モノレール等が走行する軌道桁を支える軌道桁の支承構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モノレール等は、走行方向に並べられた複数の軌道桁上を走行するものであり、それぞれの軌道桁の両端は、基礎構造物(橋脚等)に支持されている。軌道桁は、走行するモノレールの活荷重による撓み(支持部における傾斜)や温度変化による伸びを吸収するため、一方の端部はピン支承(一対のピン)により、他方の端部はローラー支承(一対のローラー)により、支持(4点支持)されていた。
しかしながら、かかるピン支承やローラー支承は、構造が複雑で、部材点数が多いため、価格が高くなっていた。また、軌道桁を倒そうとする力(軌道桁の長手方向に垂直な面内で回転させようとする力)が作用するため、ピンやローラが経年摩耗(偏摩耗)した際、軌道桁が3点支持の状態になり、軌道桁がローリングしたりしていた。
そこで、ピンおよびローラーに替えた、ゴム支承からなる軌道桁の支承構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−333702号公報(第3−4頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、鋼製の球面座(凸面)と積層ゴムとが一体成形されたものであって、球面座は、軌道桁に設置された上沓の下面に形成された球面(凹面)に摺動自在に当接し、積層ゴムの下面は基礎構造物に設置されるものである。
すなわち、軌道桁に、これを倒そうとする力(軌道桁の長手方向に垂直な面内で回転させようとする力)が作用すると、積層ゴムが圧縮偏変形し、軌道桁を撓ませる力(曲げモーメントに同じ)が作用すると、積層ゴムがせん断変形をする構成であるため、以下の問題があった。
【0005】
(あ)活荷重(撓ませる力や軌道桁を倒そうとする力)によって、軌道桁がローリングするため、軌道桁間に生じるズレ(段差)が振動の一因になり、モノレールの乗り心地が悪化する。
(い)規制ロッドが、水平荷重の受け部と、活荷重による回転および温度変化による移動に対する摺動部とを兼ねるため、位置決め座金がずれ(偏位し)、軌道がずれる(偏位する)。
【0006】
本発明は、以上のような問題を解決するものであって、活荷重による軌道桁のローリングや、経年劣化による軌道桁の姿勢の変化を、抑えることができ、しかも、活荷重による回転および温度変化による移動に対し、ずれ(偏位)を起こさない軌道桁の支承構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る軌道桁の支承構造は、上方に突出するアンカーボルトおよび規制ロッドを具備する基礎構造物と、
下方に陥入した球面である下シュー球面と、該下シュー球面の南極を通過して前記アンカーボルトが貫通自在な下シュー貫通孔と、該下シュー貫通孔に垂直な下シュー平面とを具備する下シューと、
前記下シュー球面に摺動自在な下座金球面と、該下座金球面の南極を通過して前記アンカーボルトが貫通自在な下座金貫通孔と、該下座金貫通孔に垂直な下座金平面とを具備する下座金と、
平板である上シュー底板と、該上シュー底板に形成され前記アンカーボルトが貫通自在な上シュー貫通孔と、前記上シュー底板の中央に形成された上シュー規制孔と、前記上シュー底板に立設された上シュー壁板と、該上シュー壁板の上端に固定され、前記上シュー底板に平行な上シュー天板とを具備する上シューと、
上方に突出した球面で前記上シュー球面に摺動する上座金球面と、該上座金球面の北極を通過する上座金貫通孔と、該上座金貫通孔に垂直な上座金平面と、を具備する上座金と、
上方に陥没した球面で前記上座金球面に摺動する上ナット球面と、該上ナット球面の北極を通過し、前記アンカーボルトに螺合する上ナットネジと、該上ナットネジに平行な上ナット外面と、を具備する上ナットと、
前記上シュー天板に設置された軌道桁と、
を有し、
前記アンカーボルトに挿入された前記下シューおよび前記下座金に、前記アンカーボルトに挿入された前記上シューが載置され、該上シューに前記アンカーボルトに挿入された前記上座金が載置され、さらに、前記アンカーボルトに前記上ナットが螺合していると共に、
前記基礎構造物の規制ロッドと前記上シューの上シュー規制孔との間に移動規制手段が設置されることを特徴とする。
【0008】
(2)また、前記移動規制手段が、前記規制ロッドの設置された側方に突出する球面である球面ベアリングと、該球面ベアリングを摺動自在に支持する球面ベアリング受けと、該球面ベアリング受けを保持する規制内箱と、該規制内箱を移動自在に収納する規制外箱と、を具備し、
前記規制内箱の前記軌道桁の桁軸に平行な外面と前記規制外箱の前記軌道桁の桁軸に平行な内面との間に滑り板が設置され、
前記規制外箱の前記軌道桁の桁軸に垂直な外面と前記上シュー規制孔の前記軌道桁の桁軸に垂直な内面との間にテーパー板が設置されてなることを特徴とする。
(3)また、前記上ナットに代えて、上方に陥没した球面で前記上座金球面に摺動する球面を具備する球面座金と、前記アンカーボルトに螺合するナットと、を有することを特徴とする。
【0009】
(4)さらに、本発明に係る軌道桁の支承構造は、上方に突出するアンカーボルトおよび拘束ロッドを具備する基礎構造物と、
平坦な下面と、上方に突出する球面である上面と、前記アンカーボルトが貫通する貫通孔とを具備する下シュー座金と、
シュー連結ボルトと、
矩形状の下シュー底板と、該下シュー底板に形成され前記アンカーボルトが貫通する下シューボルト孔と、前記下シュー底板の中央に形成された下シュー拘束孔と、下方に陥入した球面である下シュー球面と、該下シュー球面の南極を通過して前記シュー連結ボルトが貫通する下シュー連結孔と、前記下シュー拘束孔を包囲して前記下シューボルト孔および前記下シュー連結孔の内側に形成された上方に突出する下シュー壁面と、を具備する下シューと、
平坦な下面と、上方に突出する球面である上面と、前記アンカーボルトが貫通する貫通孔とを具備する上シュー固定下座金と、
平坦な下面と、上方に突出する球面である上面と、前記アンカーボルトが貫通する貫通孔とを具備する上シュー固定上座金と、
下面が上方に陥入して前記上シュー固定上座金の上面に摺動する下面と、前記アンカーボルトに螺合する雌ネジと、を具備する上シュー固定ナットと、
平板である上シュー底板と、該上シュー底板に形成され前記アンカーボルトが貫通自在な上シュー固定ボルト孔と、該上シュー底板に形成され前記連結ボルトが貫通自在な上シュー連結孔と、前記上シュー底板の中央に形成された上シュー拘束孔と、前記上シュー底板に立設された上シュー壁板と、該上シュー壁板の上端に固定され、前記上シュー底板に平行な上シュー天板とを具備する上シューと、
下方に突出した球面で前記下シューの下シュー球面に摺動する下座金球面と、該下座金球面の南極を通過する下座金貫通孔と、該下座金貫通孔に垂直な下座金平面と、を具備する下座金と、
上方に突出した球面である上座金球面と、該上座金球面の南極を通過して前記連結ボルトが貫通する上座金貫通孔と、該上座金貫通孔に垂直な上座金平面と、を具備する上座金と、
上方に陥没した球面で前記上座金球面に摺動する上座金押さえ球面と、該上座金押さえ球面の北極を通過して前記連結ボルトが貫通する上座金押さえ貫通孔と、該上座金押さえ貫通孔に垂直な上座金押さえ上面と、を具備する上座金押さえ金具と、
前記シュー連結ボルトに螺合する下連結ナットおよび上連結ナットと、
を有し、
前記アンカーボルトに挿入された前記下シュー固定下座金に、前記アンカーボルトに挿入された前記下シューが載置され、該下シューに前記アンカーボルトに挿入された前記下シュー固定上座金が載置され、さらに、前記アンカーボルトに前記上固定ナットが螺合していると共に、前記基礎構造物の拘束ロッドと前記下シューの下シュー拘束孔との間に移動拘束段が設置され、
前記下シューの下シュ−球面に前記下座金の下座金球面が摺動自在に、前記下シュー連結孔を貫通している前記連結ボルトに前記下座金貫通孔が挿入され、
前記下シューが前記下座金の下座金上面に載置されるように、前記下座金貫通孔を貫通している前記連結ボルトが前記下シュー連結孔に挿入され、
前記上座金が前記下シューに載置されるように、前記下シュー連結孔を貫通している前記連結ボルトが前記上座金貫通孔に挿入され、
前記上座金押さえ金具が前記上座金の上座金球面に載置されるように、前記上座金貫通孔を貫通している前記連結ボルトが前記上座金押さえ貫通孔に挿入され、
前記連結ボルトの両端部にそれぞれ上連結ナットおよび下連結ナットが螺合することを特徴とする。
【0010】
(5)また、前記下シューの下シュー壁面が、前記上シューの上シュー壁面に囲まれた範囲に侵入し、前記下シュー壁面の外面と前記上シュー壁面の内面との間に、隙間が形成されることを特徴とする。
(6)また、前記移動拘束手段が、前記基礎構造物の拘束ロットの外面と前記下シュー拘束孔の内面との間にテーパー板が設置されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る軌道桁の支承構造は、前記構成であるから以下の効果を奏する。
(i)それぞれがアンカーボルトに挿入され、基礎上板に載置された下シューと、下シューの球面において摺動する下座金と、下座金に載置された上シューと、上シューに載置された上座金と、上座金の球面において摺動する上ナットと、を有している。すなわち、上シューは下座金および上座金に挾持され、下座金は下シューによって傾斜自在に支持され、上座金は上シューによって傾動自在に支持されている。
したがって、活荷重(撓ませる力や軌道桁を倒そうとする力)が作用した際、互いに球面接触する下シューと下座金との摺動および上座金と上ナットとの摺動によって、上シューは傾斜する。このため、従来の積層ゴムのような撓みはなく、上シューに設置された軌道桁のローリングが抑えられ、軌道桁間のズレ(段差)に伴う騒音や振動の発生が抑えられ、モノレールの乗り心地が改善される。
さらに、基礎構造物の規制ロッドと上シューの上シュー規制孔との間に移動規制手段が設置され、移動規制手段によって、上シューの位置が決定されるから、据付時の位置決めが容易になる。
【0012】
(ii)また、移動規制手段が、規制ロッドに設置された球面ベアリングと、球面ベアリングを球面において保持する規制内箱と、規制内箱を移動自在に収納する規制外箱と、を具備し、規制内箱が規制外箱に対して桁軸に平行に移動自在であり、規制外箱が上シュー規制孔に対して水平方向に位置決めされるから、据付時の位置決めが容易であると共に、上シューの傾斜が許容される。
(iii)また、前記上ナットに代えて、球面座金とナット(端面が平面)とを有するから、ナットが安価になると共に、ナットの締め込み(アンカーボルトへの螺合)が容易になる。
【0013】
(iv)さらに、下シューがアンカーボルトによって基礎構造物に設置され、上シューはシュー連結ボルトによって下シューに設置されるから、上シューは基礎構造物に直接設置されるものではなく、下シューに対して傾斜自在に設置されるものである。
すなわち、それぞれが下シューの下シュー連結孔を貫通するシュー連結ボルトに挿入される、下シューに載置された下シューと、下シューの球面において摺動する下座金と、下座金に載置された上シューと、上シューに載置された上座金と、上座金の球面において摺動する上座金押さえ金具と、連結ボルトの両端部に螺合する上連結ナットおよび下連結ナットと、を有している。すなわち、上シューは下座金および上座金に挾持され、下座金は下シューによって傾斜自在に支持され、上座金は上座金押さえ金具によって傾動自在に支持されている。
したがって、活荷重(撓ませる力や軌道桁を倒そうとする力)が作用した際、互いに球面接触する下シューと下座金との摺動および上座金と上座金押さえ金具との摺動によって、上シューは傾斜する。このため、上シューに設置された軌道桁のローリングが抑えられ、軌道桁間のズレ(段差)に伴う騒音や振動の発生が抑えられ、モノレールの乗り心地が改善される。
さらに、基礎構造物の拘束ロッドと下シューの下シュー拘束孔との間に移動拘束手段が設置され、移動拘束手段によって、下シューの位置が決定されるから、据付時の位置決めが容易になる。
【0014】
(v)また、下シューの下シュー壁面が上シューの上シュー壁面に囲まれた範囲に侵入し、両者間に隙間が形成されるから、固定されている下シューに対する上シューの移動範囲が規制され、シュー連結ボルトに過剰な力が作用することがない。
(vi)また、移動拘束手段が拘束ロットと下シュー拘束孔との間に設置されたテーパー板を具備するから、下シューの位置決めが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る軌道桁の支承構造1を説明する正面図。
【図2】図1に示す軌道桁の支承構造1の一部を断面にして示す側面図。
【図3】図1に示す軌道桁の支承構造1の一部を拡大して示す正面図。
【図4】図1に示す軌道桁の支承構造1の一部を拡大して示す正面図と平面図。
【図5】図1に示す軌道桁の支承構造1の挙動を説明するための側面図。
【図6】本発明の実施の形態2に係る軌道桁の支承構造2を説明する正面図。
【図7】本発明の実施の形態2に係る軌道桁の支承構造2を説明する正面図
【図8】図7に示す軌道桁の支承構造2の一部を拡大して示す側面図。
【図9】図7に示す軌道桁の支承構造2の一部を拡大して示す平面図。
【図10】図7に示す軌道桁の支承構造2の挙動を説明するための側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1〜図5は本発明の実施の形態1に係る軌道桁の支承構造1を説明するものであって、図1は一部を断面にして示す正面図、図2は一部を断面にして示す側面図、図3は一部を拡大して示す正面図、図4の(a)は一部を拡大して示す正面図、図4の(b)は一部を拡大して示す平面図、図5は挙動を説明するための一部を拡大して示す側面図である。なお、各図は模式的に示すものであって、各部材の形状や数量は図示するものに限定するものではない。
【0017】
(支承構造)
図1および図2において、軌道桁9の両端が傾動自在(ピン支持に相当する)および軌道桁9の長手方向(以下、「桁軸方向X」と称す)に所定の距離だけ軌道自在(スライド支持に相当する)に、基礎構造物10に支持されている。すなわち、基礎構造物10に下シュー(下沓に同じ)20が設置され、下シュー20に下座金30を介して上シュー(上沓に同じ)40が設置され、上シュー40に軌道桁9が設置されている。また、上シュー40は移動規制手段70によって移動が規制されている。
なお、かかる軌道桁9が支持された形態を「軌道桁の支承構造1」と、水平面内で桁軸方向Xに垂直な方向を「桁幅方向Y」と、鉛直方向を「上下方向Z」とそれぞれ称す。また、以下、軌道桁9が水平に設置される場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、軌道桁9が水平面に対して傾斜してもよい。以下、各部材について詳細に説明する。
【0018】
(基礎構造物)
図1および図2において、基礎構造物10は、地盤(図示しない)に固定されたものであって、基礎上板11と、基礎上板11を貫通して上方向に突出する一対のアンカーボルト12a、12bと、一対のアンカーボルト12a、12bの中央に配置され、基礎上板11を貫通して上方向に突出する規制ロッド13と、を有している。
アンカーボルト12a、12bは、基礎梁14を貫通し、基礎梁14に基礎座金15a(図示しない)、15bおよび基礎ナット16a(図示しない)、16bによって抜け出し不能(上方向への移動不能)に取り付けられ、下端が基礎梁14に固定された基礎鞘管18a、18bを貫通している。なお、基礎座金15a、15bおよび基礎ナット16a、16bは、上端が基礎梁14に固定された基礎箱17a、17bに収納されている。
以下の説明において、共通または相当する内容については、符号の添え字「a、b」の記載を省略する。
【0019】
基礎上板11は基礎鞘管18の上端に固定されている。
規制ロッド13は基礎上板11の下方において、基礎鞘管18aに設置された固定用梁19a、および基礎鞘管18bに設置された固定用梁19bに、それぞれ設置されている。なお、固定用梁19aと固定用梁19bとを一体物にして、かかる一体物の中央において、規制ロッド13が固定されるようにしてもよい。さらに、規制ロッド13を基礎上板11に固定してもよく、このとき、基礎上板11が所定の剛性を有する場合には、固定用梁19a、19bの設置を省略してもよい。
そして、基礎上板11は露出し、基礎鞘管18や基礎梁14等は、図示しないコンクリートによって包囲されているが、本発明は、基礎構造物10を鉄筋コンクリート(鉄骨コンクリート)構造に限定するものではなく、鉄骨構造物(コンクリートを有しない)ものであってもよい。
【0020】
(下シュー)
図3において、下シュー20は、下方に陥入した球面(凹球に同じ)である下シュー球面21と、下シュー球面21の南極を通過する下シュー貫通孔22と、を有し、基礎上板11に設置されている。このとき、下シュー貫通孔22はアンカーボルト12が貫通自在である。
なお、下シュー20の下面23と基礎上板11の上面との間に、シム板24が挿入され、下シュー20の高さ方向位置の修正を可能にしているが、かかる修正が不要な場合は、シム板24を省略してもよい。また、下シュー20を基礎上板11に設置する要領は、何れであってもよい。
【0021】
(下座金)
下座金30は、下方に突出した球面(凸球面に同じ)である下座金球面31と、下座金球面31の南極を通過する下座金貫通孔32と、下座金貫通孔32に垂直な下座金平面33と、を有している。
このとき、凸球面である下座金球面31の曲率半径は、凹球面である下シュー球面21の曲率半径と略同一(正確には、前者が後者より僅かに小さい)であって、下座金球面31は下シュー球面21に受け止められ、所定幅の略円環状に両者は摺動自在に当接する。すなわち、下座金球面31は下シュー球面21に摺動することによって、下座金平面33は所定の方向に傾く(傾動する)。
【0022】
また、下座金貫通孔32の内径は、アンカーボルト12の外径よりも大きく形成されている。このため、アンカーボルト12が下座金貫通孔32を貫通した状態で、アンカーボルト12に対して下座金30は水平方向に所定距離だけ移動自在であると共に、前記傾動が可能になっている。
さらに、下座金30を包囲して、下シュー20の上面と上シュー底板41の下面とによって挟圧されたシールリング34が配置されている。したがって、下座金球面31と下シュー球面21との摺動部や、下座金平面33と上シュー底板41の下面との当接部(摺動することも可能)に、異物(塵埃あるいは水分等)が侵入することが防止されている。したがって、かかる摺動部の経年劣化を遅らせることが可能になるから、軌道桁の支承構造1の保全性が向上する。なお、シールリング34に変わる手段によって、かかる摺動部への異物侵入を防止してもよく、さらに、据付位置の環境によっては、シールリング34の設置を省略してもよい。
【0023】
(上シュー)
上シュー40は、平板である上シュー底板41と、上シュー底板41に形成されアンカーボルト12が貫通自在な上シュー貫通孔42と、上シュー底板41に立設された上シュー壁板43と、上シュー壁板43の上端に固定され、上シュー底板41に平行な上シュー天板44とを有している。
また、上シュー底板41の中央(一対の上シュー貫通孔42の中央に同じ)に、移動規制手段70を設置するための平面視で矩形状の貫通孔(以下、「上シュー規制孔」と称す)47が形成されている。
さらに、上シュー天板44の上面には、軌道桁9を上シュー40に設置するための手段である、上方に突出する上シュー突起45や上シュー縦筋46が設けられている。
【0024】
(上座金)
上座金50は、上方に突出した球面(凸球面に同じ)である上座金球面51と、上座金球面51の北極を通過する上座金貫通孔52と、上座金貫通孔52に垂直な上座金平面53と、を有している。このとき、上座金貫通孔52をアンカーボルト12が貫通自在である。
【0025】
(上ナット)
上ナット60は、上方に陥没した球面(凹球面に同じ)である上ナット球面61と、上ナット球面61の北極を通過する上ナットネジ62と、上ナットネジ62に平行な上ナット外面63と、を有している。このとき、上ナットネジ62はアンカーボルト12の上端部に形成された雄ネジ(図示しない)に螺合する。
また、凹球面である上ナット球面61の曲率半径は、凸球面である上座金球面51の曲率半径と略同一(正確には、前者が後者より僅かに大きい)であって、上座金球面51は上ナット球面61に受け止められ、所定幅の略円環状に両者は摺動自在に当接する。すなわち、上座金球面51は上ナット球面61に摺動することによって、上座金平面53は所定の方向に傾く(傾動する)。
【0026】
また、上座金貫通孔52の内径は、アンカーボルト12の外径よりも大きく形成されている。このため、アンカーボルト12が上座金貫通孔52を貫通した状態で、アンカーボルト12に対して上座金50は水平方向に所定距離だけ移動自在であると共に、前記傾動が可能になっている。
また、上ナット外面63は、上ナット60をアンカーボルト12の雄ネジ(図示しない)に螺合するために、回転を容易にする目的で、平面視で多角形(六角形等)や楕円に形成されている。なお、以上は、上ナット60が凹球面を具備しているが、本発明はこれに限定するものではなく、上ナット60を、凹球面を具備する凹球面座金と、雌ネジを具備するナットとに、分割してもよい。さらに、上ナット60の弛みを防止するために、アンカーボルト12の雄ネジに螺合するナットを追加して設置してもよい。
【0027】
(移動規制手段)
図4において、移動規制手段70は、規制ロッド13と上シュー40との間に設置されるものであって、上シュー規制孔47内に配置される。移動規制手段70は、規制ロッド13の上端部に抜け出し不能に設置(嵌合)され、側方に突出する球面(凸球面)である球面ベアリング71と、球面ベアリング71を摺動自在に支持する球面ベアリング受け72と、球面ベアリング受け72を保持する外郭が矩形状の規制内箱73と、規制内箱を移動自在に収納すると共に、外郭が矩形状の規制外箱75と、を有している。
規制内箱73は外側に、桁軸方向Xに平行な一対の外側面73a、73bと、桁幅方向Yに平行な一対の外側面73c、73dとを有している。
また、規制外箱75は内側に、桁軸方向Xに平行な一対の内側面75a、75bと、桁幅方向Yに平行な一対の内側面75c、75dとを有している。また、規制外箱75は外側に、桁軸方向Xに平行な一対の外側面75e、75fと、桁幅方向Yに平行な一対の外側面75g、75hとを有している。
【0028】
(滑り板)
そして、規制内箱73の外側面73a、73bと規制外箱75の内側面75a、75bとの間に、それぞれ滑り板74a、74bが挿入(陥入)されている。したがって、規制外箱75は規制内箱73に対して桁軸方向Xに移動自在になっている。このとき、滑り板74a、74bは規制内箱73の外側面73a、73bとの間、あるいは規制外箱75の内側面75a、75bとの間の何れにおいて摺動してもよいし、双方において摺動してもよい。
また、規制内箱73の外側面73cと外側面73dとの距離73wは、規制外箱75の内側面75cと内側面75dとの距離75wよりも小さくなっている。したがって、規制内箱73は規制外箱75に対し、最大距離73wと距離75wのクリアランスΔw(=75w−73w)だけ移動可能であるから、当初、規制内箱73の中心と規制外箱75の中心を一致させておけば、規制内箱73は規制外箱75に対し、桁軸方向Xの一方側に「Δw/2」、他方側に「Δw/2」だけ移動することができる。
なお、滑り板74a、74bの材質や形状、大きさは限定するものではない。例えば、表面を磨いたステンレス鋼板によって形成しておけば、耐食性および滑り性に優れている。
【0029】
(位置決め機構)
上シュー40に形成された上シュー規制孔47は矩形状であって、桁軸方向Xに平行な一対の内側面48a、48bと、桁幅方向Yに平行な一対の内側面48c、48dとを有している。
そして、規制外箱75の外側面75e、75fと上シュー規制孔47の内側面48a、48bとの間に位置決め機構79a、79bが設置され、規制外箱75の外側面75g、75hと上シュー規制孔47の内側面48c、48dとの間に位置決め機構79c、79dが設置されている。
【0030】
なお、位置決め機構79a、79b、79c、79dは何れも同様の機構であるため、位置決め機構79aについて説明する。
位置決め機構79aは、規制外箱75の外側面75eに一方の側面が当接する外箱テーパ座金76aと、上シュー規制孔47の内側面48aに一方の側面が当接する調整板78aと、外箱テーパ座金76aの他方の側面と調整板78aの他方の側面との両方にそれぞれ摺動自在に面接触する上シューテーパー板77aと、を有している。
上シューテーパー板77aは少なくとも一方の側面が、上下方向Zで傾斜しているから、上シューテーパー板77aを上下方向Zで移動させることによって、外箱テーパ座金76aの一方の側面と、調整板78aの一方の側面との距離が変動する。
【0031】
したがって、テーパー板77a、77b、77c、77dそれぞれの上下方向Zの位置を調整することによって、規制外箱75(規制ロッド13に同じ)に対する、上シュー40の位置を所定の位置に決めることが可能になる。
【0032】
(架設動作)
上シュー40の上シュー天板44には軌道桁9が設置されている。このとき、上シュー天板44に形成された上シュー突起45が、軌道桁9の下面に形成された凹部(図示しない)に侵入したり、上シュー天板44に立設された上シュー縦筋46が、軌道桁9に形成された孔部(図示しない)に侵入したりする。なお、上シュー40と軌道桁9との設置要領は限定するものではない。
また、軌道桁9の取付高さや取付角度を考慮し、
所定厚さのシム板24を、アンカーボルト12に挿入して設置し、一対のシム板24の上面が水平になるようにする。そして、アンカーボルト12に下シュー20および下座金30を挿入し、さらに、アンカーボルト12に上シュー40を挿入する。
そして、アンカーボルト12に上座金50を挿入し、上ナット60をアンカーボルト12の雄ネジに螺合する。したがって、上シュー40は、下座金30と上座金50とによって挾持される。
さらに、規制ロッド13と上シュー40の上シュー規制孔47との間に移動規制手段70を設置する。このとき、前記のようにテーパー板77a等の上下方向Zの位置を調整して位置決めする。
以上によって、上シュー40は基礎構造物10に対して、桁軸方向Xに移動自在、および上下方向Zに対して傾斜自在に、しかも、容易な位置決め作業によって、基礎構造物10に据付られたことになる。
【0033】
(活荷重による挙動)
軌道桁の支承構造1は以上の構成であるから、軌道桁9の温度が変化した場合でも、移動規制手段70におけるクリアランスΔw(またはΔw/2)の範囲において、規制ロッド13に規制されることなく、軌道桁9は伸縮することができる(図5の(a)参照)。
また、モノレール(車輌)等が移動して、活荷重が作用した場合には、軌道桁9の撓み量に応じて、支持部(上シュー40)が傾斜するから、軌道桁9に異常な応力が発生しない(図5の(b)参照)。
このとき、支持部は、下シュー球面21を具備する下シュー20と、下座金球面31を具備する下座金30によって形成されるから、無理のない傾斜(傾動)が可能であって、堅固である。特に、下シュー球面21(または下シュー20全体)および下座金球面31(または下座金30全体)を鉄鋼(合金鋼、鋳鋼、ステンレス等を含む)あるいは非鉄合金や樹脂にしておけば、経年劣化がすくないため保全性が向上し、軌道桁がローリングするようなことが無くなる。
【0034】
[実施の形態2]
図6〜図10は本発明の実施の形態2に係る軌道桁の支承構造2を説明するものであって、図6は一部を断面にして示す正面図、図7は一部を断面にして示す正面図、図8は一部を拡大して示す側面図、図9の(a)は一部を透過して示す平面図、図9の(b)は一部を拡大して示す平面図、図10は挙動を説明するための一部を拡大して示す側面図である。なお、各図は模式的に示すものであって、各部材の形状や数量は図示するものに限定するものではない。また、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0035】
(支承構造)
図6および図7において、実施の形態1に示す軌道桁の支承構造1は、下シュー20および上シュー40がアンカーボルト12によって基礎構造物10に連結(設置)されるものであるのに対し、実施の形態2に示す軌道桁の支承構造2は、下シュー200がアンカーボルト12によって基礎構造物100に設置され、上シュー400はシュー連結ボルト80によって下シュー200に連結(設置)されるものである。
なお、水平面内で桁軸方向Xに垂直な方向を「桁幅方向Y」と、鉛直方向を「上下方向Z」とそれぞれ称す。また、以下、軌道桁9が水平に設置される場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、軌道桁9が水平面に対して傾斜してもよい。以下、各部材について詳細に説明する。
【0036】
(基礎構造物)
基礎構造物100は、地盤(図示しない)に固定されたものであって、基礎上板11と、基礎上板11を貫通して上方向に突出する4本のアンカーボルト12a、12b、12c、12dと、4本のアンカーボルト12a、12b、12c、12dの中央に配置され、基礎上板11を貫通して上方向に突出する拘束ロッド130と、を有している。以下の説明において、共通または相当する内容については、符号の添え字「a、b、c、d」の記載を省略する。
【0037】
(下シュー)
下シュー200は矩形状の下シュー底板210と、下シュー底板210に形成され、4本のアンカーボルト12がそれぞれ貫通する下シューボルト孔220と、4箇所に形成された下シューボルト孔220の中央(一対の下シュー連結孔240の中央に同じ)に形成された矩形状の下シュー拘束孔230と、一対のシュー連結ボルト80がそれぞれ貫通する下シュー連結孔240と、下シュー拘束孔230を包囲し、下シューボルト孔220および下シュー連結孔240の内側で、上方に突出する平面視で矩形状の筒である下シュー壁面250と、を有している。
【0038】
そして、下面が平坦で上面が上方に突出する球面(凸球面)である下シュー固定下座金221が、アンカーボルト12に挿入されて基礎上板11に載置され、下シュー200の下シューボルト孔220にアンカーボルト12が挿入されて下シュー固定下座金221に載置され、さらに、下面が平坦で上面が上方に突出する球面(凸球面)である下シュー固定上座金222が、アンカーボルト12に挿入されて下シュー200に載置されている。そして、アンカーボルト12の上端部に形成された雄ネジ(図示しない)に、下面が上方に陥入する球面(凹球面)である下シュー固定ナット223が螺合している。
したがって、下シュー固定ナット223の締め込みによって、下シュー200は、下シュー固定下座金221と下シュー固定上座金222とに挟圧された状態で、基礎上板11に固定される。なお、下シュー固定下座金221および下シュー固定上座金222の両面を平面にしてもよい。
なお、図6には、下シュー固定下座金221と基礎上板11との間に、シム板224が挿入されているが、省略してもよい。
【0039】
また、一対の下シュー連結孔240に対しては、下シュー底板210の上面に、下シュー連結孔240が南極を通過する下方に陥入した球面(凹球に同じ)である下シュー球面21とが、形成されている。また、下シュー底板210の下面に、下シュー連結孔240を包囲する下シュー座グリ241が形成されている。
さらに、下シュー拘束孔230には、移動拘束手段90が設置され、下シュー200を基礎構造物100に対して、水平方向に移動不能にするものであり、下シュー壁面250は、上シュー400の上シュー壁面450に当接して、上シュー400の水平方向の移動を所定の範囲に規制するものであるが、これらについては別途詳細に説明する。
【0040】
(下座金)
下座金30は、下方に突出した球面(凸球面に同じ)である下座金球面31と、下座金球面31の南極を通過し、シュー連結ボルト80が貫通する下座金貫通孔32と、下座金貫通孔32に垂直な下座金平面33と、を有している。
このとき、凸球面である下座金球面31の曲率半径は、凹球面である下シュー球面21の曲率半径と略同一(正確には、前者が後者より僅かに小さい)であって、下座金球面31は下シュー球面21に受け止められ、所定幅の略円環状に両者は摺動自在に当接する。すなわち、下座金球面31は下シュー球面21に摺動することによって、下座金平面33は所定の方向に傾く(傾動する)。また、下シュー連結孔240の内径はシュー連結ボルト80の外径よりも大きく形成されている。
【0041】
(上シュー)
上シュー400は、矩形状の上シュー底板410と、上シュー底板410に形成され、下シュー200の下シュー連結孔240に挿入されたシュー連結ボルト80が貫通自在な上シュー連結孔420と、上シュー連結孔420よりも外周側で上方に突出する平面視で矩形状の筒である上シュー壁面450と、を有している。さらに、上シュー壁面450の上端には、上シュー底板410に平行な上シュー天板44が設置されている。
【0042】
そして、上シュー壁面450の内部に下シュー壁面250が侵入している。すなわち、上シュー壁面450の外面同士の距離は、下シュー壁面250の内面同士の距離(正確には、それぞれ桁軸方向Xの距離および桁幅方向Yの距離)よりも小さい。したがって、最大、両者の差であるクリアランス分だけ上シュー400は下シュー200に対して水平方向に移動可能になる。当初、上シュー壁面450の中心と下シュー壁面250の中心を一致させておけば、上シュー400は下シュー200に対して前記クリアランスの半分だけ、水平方向に移動可能になる。
【0043】
(上座金)
上座金50は、上方に突出した球面(凸球面に同じ)である上座金球面51と、上座金球面51の北極を通過する上座金貫通孔52と、上座金貫通孔52に垂直な上座金平面53と、を有している。このとき、上座金貫通孔52をシュー連結ボルト80が貫通自在である。
また、上座金50を包囲して、上シュー底板410の上面と上座金押さえ金具610の下面とによって挟圧されたシールリング54が配置されている。したがって、上座金球面51と上座金押さえ球面611との摺動部や、上座金平面53と上シュー底板41の上面との当接部(摺動することも可能)に、異物(塵埃あるいは水分等)が侵入することが防止されている。したがって、かかる摺動部の経年劣化を遅らせることが可能になるから、軌道桁の支承構造2の保全性が向上する。なお、シールリング54に変わる手段によって、かかる摺動部への異物侵入を防止してもよく、さらに、据付位置の環境によっては、シールリング54の設置を省略してもよい。
【0044】
(上座金押さえ金具)
上座金押さえ金具610は、上方に陥没した球面(凹球面に同じ)である上座金押さえ球面611と、上座金押さえ球面611の北極を通過する上座金押さえ貫通孔612と、上座金押さえ貫通孔612に垂直な上座金押さえ上面613と、を有している。このとき、上座金押さえ金具610は上シュー連結孔420を貫通したシュー連結ボルト80に挿入される。
また、凹球面である上ナット球面61の曲率半径は、凸球面である上座金球面51の曲率半径と略同一(正確には、前者が後者より僅かに大きい)であって、上座金球面51は上ナット球面61に受け止められ、所定幅の略円環状に両者は摺動自在に当接する。すなわち、上座金球面51は上ナット球面61に摺動することによって、上座金平面53は所定の方向に傾く(傾動する)。
【0045】
(上連結ナット、下連結ナット)
上連結ナット620は、シュー連結ボルト80の上端部に形成された雄ネジ(図示しない)に螺合する。
下連結ナット630は、シュー連結ボルト80の下端部に形成された雄ネジ(図示しない)に螺合する。
なお、図7において、下連結ナット630は下シュー座グリ241に侵入し、その一部が下シュー底板210の下面から突出しているが、本発明はこれに限定するものではなく、下連結ナット630が下シュー底板210の下面から突出しないように下シュー座グリ241を深くしたり(下シュー底板210が厚くなる)、下シュー固定下座金221の高さを高くして、下連結ナット630の全て(全高さ)が下シュー底板210の下面に突出するようようにしてもよい。また、頭付きボルトとナットとの組み合わせにしてもよい。
【0046】
(移動拘束手段)
移動拘束手段90は、拘束ロッド130と下シュー200との間に設置され、両者間における水平方向の相対移動を不能にするものである。
下シュー拘束孔230は、平面視で矩形状であって、桁軸方向Xに平行な一対の内側面231a、231bと、桁幅方向Yに平行な一対の内側面231c、231dとを有している。
拘束ロッド130は四角柱であって、桁軸方向Xに平行な一対の外側面130a、130bと、桁幅方向Yに平行な一対の外側面130c、130dとを有している。
移動拘束手段90は、拘束ロッド130の外側面130a、130b、130c、130dと下シュー拘束孔230の内側面231a、231b、231c、231dとの間にそれぞれ設置された、移動拘束手段90a、90b、90c、90dを総称している。
【0047】
なお、移動拘束手段90a、90b、90c、90dは何れも同様の機構であるため、移動拘束手段90aについて説明する。
移動拘束手段90aは、拘束ロッド130の外側面130aに一方の側面が当接するロッドテーパ座金91aと、下シュー拘束孔230の内側面231aに一方の側面が当接する下シューテーパ座金92aと、ロッドテーパ座金91aの他方の側面と、下シューテーパ座金92aの他方の側面との両方にそれぞれ摺動自在に面接触する調整板93aと、を有している。
テーパー板93aは少なくと一方の側面が、上下方向Zで傾斜しているから、調整板93aを上下方向Zで移動させることによって、拘束ロッド130の外側面130aと、下シュー拘束孔230の内側面231aとの距離が変動する。
【0048】
したがって、調整板93a、93b、93c、93dそれぞれの上下方向Zの位置を調整することによって、拘束ロッド130に対する下シュー200の位置を所定の位置に決めることが可能になる。
したがって、アンカーボルト12と拘束ロッド130との位置関係にバラツキがあったり、下シューボルト孔220と下シュー拘束孔230との位置関係にバラツキがあったりしても、アンカーボルト12や拘束ロッド130等に余計な力が作用しない。
【0049】
(架設動作)
軌道桁の支承構造2は、上シュー400に軌道桁9を設置する工程と、上シュー400を下シュー200に設置する工程と、下シュー200を基礎構造物100に設置する工程と、を有している。
まず、上連結ナット620の上シュー天板44に軌道桁を設置する。
次に、下シュー200の下シュー連結孔240を貫通しているシュー連結ボルト80に下座金30を挿入し、シュー連結ボルト80が上シュー連結孔420を貫通した状態で、下座金30の上に上シュー400(上シュー底板410に同じ)を載置する。
そして、シュー連結ボルト80に上座金50および上座金押さえ金具610を挿入して、上連結ナット620をシュー連結ボルト80の上端部に形成された雄ネジ(図示しない)に螺合する。
【0050】
そして、基礎構造物100の基礎上板11の上面に、アンカーボルト12に挿入したシム板224および下シュー固定下座金221を載置し、その上に、下シューボルト孔220が挿入された下シュー200を載置する。
そして、アンカーボルト12に下シュー固定上座金222を挿入して、下シュー固定ナット223をアンカーボルト12の雄ネジに螺合する。したがって、下シュー200は、シム板224および下シュー固定下座金221と下シュー固定上座金222とによって挾持され、基礎上板11に設置される。
【0051】
さらに、下シュー拘束孔230に移動拘束手段90が設置される。すなわち、下シュー200の内側面231a、231b、231c、231dと、拘束ロッド130の外側面130a、130b、130c、130dとの間に、移動拘束手段90a、90b、90c、90dが配置され、テーパー板93a、93b、93c、93dそれぞれの上下方向Zの位置が調整される。そこで、下シュー固定ナット223を締め込むことによって、下シュー200は基礎構造物100にたいする水平方向の位置が決定される。
なお、このとき、予め、下シュー200の下シュー連結孔240に、下連結ナット630が螺合しているシュー連結ボルト80を挿入しておく。
【0052】
(活荷重による挙動)
したがって、前記のように、上シュー壁面450の内壁と下シュー壁面250の外壁との間にクリアランスが設けられ、また、下座金30の下座金貫通孔32の内径および上座金50の上座金貫通孔52の内径が、シュー連結ボルト80の外径よりも大きくなっているから、上シュー400は下シュー200に対して水平方向に移動可能になる(図10の(a)参照)。
また、下シュー200の下シュー球面21(凹球面)と下座金30の下座金球面31(凸球面)とが摺動し、下座金30の下座金貫通孔32の内径および上座金50の上座金貫通孔52の内径が、シュー連結ボルト80の外径よりも大きくなっているから、上シュー400は下シュー200に対して傾斜する(図10の(b)参照)。
したがって、軌道桁9の温度が変化した場合、軌道桁9は伸縮することができる。また、活荷重が作用した場合、軌道桁9の撓み量に応じて、支持部(上シュー400)が傾斜するから、軌道桁9に異常な応力が発生しない。
よって、軌道桁の支承構造1(実施の形態1)と同様に、経年劣化がすくなく保全性が向上し、軌道桁がローリングするようなことが無くなる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は以上であって、施工性に優れ、コーン状破壊の発生の防止等をより効果的に奏するから、各種形態の鉄骨柱脚部の基礎構造として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 軌道桁の支承構造(実施の形態1)
2 軌道桁の支承構造(実施の形態2)
9 軌道桁
10 基礎構造物
11 基礎上板
12 アンカーボルト
13 規制ロッド
14 基礎梁
15 基礎座金
16 基礎ナット
17 基礎箱
18 基礎鞘管
19 固定用梁
20 下シュー
21 下シュー球面
22 下シュー貫通孔
23 下面
24 シム板
30 下座金
31 下座金球面
32 下座金貫通孔
33 下座金平面
34 シールリング
40 上シュー
41 上シュー底板
42 上シュー貫通孔
43 上シュー壁板
44 上シュー天板
45 上シュー突起
46 上シュー縦筋
47 上シュー規制孔
48 内側面
50 上座金
51 上座金球面
52 上座金貫通孔
53 上座金平面
54 シールリング
60 上ナット
61 上ナット球面
62 上ナットネジ
63 上ナット外面
70 移動規制手段
71 球面ベアリング
72 球面ベアリング受け
73 規制内箱
74 滑り板
75 規制外箱
76 外箱テーパ座金
77 上シューテーパー座金
78 調整板
79 位置決め機構
80 シュー連結ボルト
90 移動拘束手段
91 ロッドテーパ座金
92 下シューテーパ座金
93 調整板
Δw クリアランス
100 基礎構造物
130 拘束ロッド
200 下シュー
210 下シュー底板
220 下シューボルト孔
221 下シュー固定下座金
222 下シュー固定上座金
223 下シュー固定ナット
224 シム板
230 下シュー拘束孔
231 内側面
240 下シュー連結孔
241 下シュー座グリ
250 下シュー壁面
400 上シュー
410 上シュー底板
420 上シュー連結孔
450 上シュー壁面
610 上座金押さえ金具
611 上座金押さえ球面
612 上座金押さえ貫通孔
613 上座金押さえ上面
620 上連結ナット
630 下連結ナット
X 桁軸方向
Y 桁幅方向
Z 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に突出するアンカーボルトおよび規制ロッドを具備する基礎構造物と、
下方に陥入した球面である下シュー球面と、該下シュー球面の南極を通過して前記アンカーボルトが貫通自在な下シュー貫通孔と、該下シュー貫通孔に垂直な下シュー平面とを具備する下シューと、
前記下シュー球面に摺動自在な下座金球面と、該下座金球面の南極を通過して前記アンカーボルトが貫通自在な下座金貫通孔と、該下座金貫通孔に垂直な下座金平面とを具備する下座金と、
平板である上シュー底板と、該上シュー底板に形成され前記アンカーボルトが貫通自在な上シュー貫通孔と、前記上シュー底板の中央に形成された上シュー規制孔と、前記上シュー底板に立設された上シュー壁板と、該上シュー壁板の上端に固定され、前記上シュー底板に平行な上シュー天板とを具備する上シューと、
上方に突出した球面で前記上シュー球面に摺動する上座金球面と、該上座金球面の北極を通過する上座金貫通孔と、該上座金貫通孔に垂直な上座金平面と、を具備する上座金と、
上方に陥没した球面で前記上座金球面に摺動する上ナット球面と、該上ナット球面の北極を通過し、前記アンカーボルトに螺合する上ナット雌ネジと、該上ナット雌ネジに平行な上ナット外面と、を具備する上ナットと、
前記上シュー天板に設置された軌道桁と、
を有し、
前記アンカーボルトに挿入された前記下シューおよび前記下座金に、前記アンカーボルトに挿入された前記上シューが載置され、該上シューに前記アンカーボルトに挿入された前記上座金が載置され、さらに、前記アンカーボルトに前記上ナットが螺合していると共に、
前記基礎構造物の規制ロッドと前記上シューの上シュー規制孔との間に移動規制手段が設置されることを特徴とする軌道桁の支承構造。
【請求項2】
前記移動規制手段が、前記規制ロッドの設置された側方に突出する球面である球面ベアリングと、該球面ベアリングを摺動自在に支持する球面ベアリング受けと、該球面ベアリング受けを保持する規制内箱と、該規制内箱を移動自在に収納する規制外箱と、を具備し、
前記規制内箱の前記軌道桁の桁軸に平行な外面と前記規制外箱の前記軌道桁の桁軸に平行な内面との間に滑り板が設置され、
前記規制外箱の前記軌道桁の桁軸に垂直な外面と前記上シュー規制孔の前記軌道桁の桁軸に垂直な内面との間にテーパー板が設置されてなることを特徴とする請求項1記載の軌道桁の支承構造。
【請求項3】
前記上ナットに代えて、上方に陥没した球面で前記上座金球面に摺動する球面を具備する球面座金と、前記アンカーボルトに螺合するナットと、を有することを特徴とする請求項1または2記載の軌道桁の支承構造。
【請求項4】
上方に突出するアンカーボルトおよび拘束ロッドを具備する基礎構造物と、
平坦な下面と、上方に突出する球面である上面と、前記アンカーボルトが貫通する貫通孔とを具備する下シュー座金と、
シュー連結ボルトと、
矩形状の下シュー底板と、該下シュー底板に形成され前記アンカーボルトが貫通する下シューボルト孔と、前記下シュー底板の中央に形成された下シュー拘束孔と、下方に陥入した球面である下シュー球面と、該下シュー球面の南極を通過して前記シュー連結ボルトが貫通する下シュー連結孔と、前記下シュー拘束孔を包囲して前記下シューボルト孔および前記下シュー連結孔の内側に形成された上方に突出する下シュー壁面と、を具備する下シューと、
平坦な下面と、上方に突出する球面である上面と、前記アンカーボルトが貫通する貫通孔とを具備する上シュー固定下座金と、
平坦な下面と、上方に突出する球面である上面と、前記アンカーボルトが貫通する貫通孔とを具備する上シュー固定上座金と、
下面が上方に陥入して前記上シュー固定上座金の上面に摺動する下面と、前記アンカーボルトに螺合する雌ネジと、を具備する上シュー固定ナットと、
平板である上シュー底板と、該上シュー底板に形成され前記アンカーボルトが貫通自在な上シュー固定ボルト孔と、該上シュー底板に形成され前記連結ボルトが貫通自在な上シュー連結孔と、前記上シュー底板の中央に形成された上シュー拘束孔と、前記上シュー底板に立設された上シュー壁板と、該上シュー壁板の上端に固定され、前記上シュー底板に平行な上シュー天板とを具備する上シューと、
下方に突出した球面で前記下シューの下シュー球面に摺動する下座金球面と、該下座金球面の南極を通過する下座金貫通孔と、該下座金貫通孔に垂直な下座金平面と、を具備する下座金と、
上方に突出した球面である上座金球面と、該上座金球面の南極を通過して前記連結ボルトが貫通する上座金貫通孔と、該上座金貫通孔に垂直な上座金平面と、を具備する上座金と、
上方に陥没した球面で前記上座金球面に摺動する上座金押さえ球面と、該上座金押さえ球面の北極を通過して前記連結ボルトが貫通する上座金押さえ貫通孔と、該上座金押さえ貫通孔に垂直な上座金押さえ上面と、を具備する上座金押さえ金具と、
前記シュー連結ボルトに螺合する下連結ナットおよび上連結ナットと、
を有し、
前記アンカーボルトに挿入された前記下シュー固定下座金に、前記アンカーボルトに挿入された前記下シューが載置され、該下シューに前記アンカーボルトに挿入された前記下シュー固定上座金が載置され、さらに、前記アンカーボルトに前記上固定ナットが螺合していると共に、前記基礎構造物の拘束ロッドと前記下シューの下シュー拘束孔との間に移動拘束段が設置され、
前記下シューの下シュ−球面に前記下座金の下座金球面が摺動自在に、前記下シュー連結孔を貫通している前記連結ボルトに前記下座金貫通孔が挿入され、
前記下シューが前記下座金の下座金上面に載置されるように、前記下座金貫通孔を貫通している前記連結ボルトが前記下シュー連結孔に挿入され、
前記上座金が前記下シューに載置されるように、前記下シュー連結孔を貫通している前記連結ボルトが前記上座金貫通孔に挿入され、
前記上座金押さえ金具が前記上座金の上座金球面に載置されるように、前記上座金貫通孔を貫通している前記連結ボルトが前記上座金押さえ貫通孔に挿入され、
前記連結ボルトの両端部にそれぞれ上連結ナットおよび下連結ナットが螺合することを特徴とする軌道桁の支承構造。
【請求項5】
前記下シューの下シュー壁面が、前記上シューの上シュー壁面に囲まれた範囲に侵入し、前記下シュー壁面の外面と前記上シュー壁面の内面との間に、隙間が形成されることを特徴とする請求項4記載の軌道桁の支承構造。
【請求項6】
前記移動拘束手段が、前記基礎構造物の拘束ロットの外面と前記下シュー拘束孔の内面との間にテーパー板が設置されてなることを特徴とする請求項4または5記載の軌道桁の支承構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−167437(P2012−167437A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27081(P2011−27081)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000231855)日本鋳造株式会社 (19)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【Fターム(参考)】