説明

軌道輪部材の製造方法

【課題】内周面に複列の外輪軌道を有し、何れかの外輪軌道の周囲に外向フランジ6を有する軌道輪部材を、押し出し成形により得られる円柱状の原素材12から造る場合に、前記両外輪軌道の表面に、清浄度の高い中間部金属材料22を安定して露出させる。
【解決手段】(B)→(C)に示す荒成形工程で、第二中間素材14aを、隔壁部16aと外向フランジ6とを径方向に重畳させた状態で形成する。これにより、続く(C)→(D)に示す仕上げ成形工程で造られる、第三中間素材17aの一部で、完成後に前記両外輪軌道となる部分に、それぞれ前記中間部金属材料22を安定して露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車輪及びブレーキディスク等の制動用回転部材を懸架装置に対して回転自在に支持する為に利用する、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する軌道輪部材の製造方法の改良に関する。具体的には、内周面に形成した複列の外輪軌道のうちの何れか一方の外輪軌道の外径側に外向フランジが存在する軌道輪部材を造る場合に、これら両外輪軌道の表面に清浄な材料を露出させて、これら両外輪軌道の転がり疲れ寿命を効果的に向上させられる製造方法を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪及びブレーキディスク等の制動用回転部材を懸架装置に対して回転自在に支持する為に、車輪支持用転がり軸受ユニットが広く使用されている。この様な車輪支持用転がり軸受ユニットとして、一般的には、図6〜7に示す様な内輪回転型のものが使用されているが、一部では、図8に示す様な外輪回転型のものも使用されている。
【0003】
先ず、図6に示した内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1は、従動輪(FR車及びMR車の前輪、FF車の後輪)用のもので、外輪2と、ハブ3と、複数個の転動体4、4とを備える。このうちの外輪2は、内周面の軸方向2箇所位置に複列の外輪軌道5a、5bを、外周面の軸方向内端寄り部分(軸方向に関して「内」とは、自動車への組み付け状態で車両の幅方向中央側を言い、図6〜8の右側。反対に、車両の幅方向外側となる、図6〜8の左側を、軸方向に関して「外」と言う。本明細書全体で同じ。)に外向フランジ6を、それぞれ有する。又、前記ハブ3は、外周面の軸方向外端寄り部分に外向フランジ7を、同じく軸方向中間部乃至内端寄り部分の軸方向2箇所位置に複列の内輪軌道8a、8bを、それぞれ有する。そして、これら両内輪軌道8a、8bと前記両外輪軌道5a、5bとの間に前記転動体4、4を、両列毎に複数個ずつ配置して、前記外輪2の内径側での前記ハブ3の回転を可能としている。使用状態では、前記外輪2の外向フランジ6を、懸架装置を構成するナックルに結合固定すると共に、前記ハブ3の外向フランジ7に、車輪及び制動用回転部材を結合固定する。
【0004】
又、図7に示した内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1aは、駆動輪(FR車及びMR車の後輪、FF車の前輪、4WD車の全車輪)用のものである。この図7に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1aの場合には、ハブ3aの径方向中心部に、使用時に駆動軸をスプライン係合させる為のスプライン孔9を、軸方向に亙って形成している。その他の部分の基本構成は、上述の図6に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1の場合とほぼ同様である。
【0005】
又、図8に示した外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1bは、従動輪用のもので、1対の内輪10、10と、ハブ11と、複数個の転動体4、4とを備える。このうちの1対の内輪10、10は、それぞれが外周面に単列の内輪軌道8a、8bを有するもので、軸方向に並べて配置されている。又、前記ハブ11は、内周面の軸方向2箇所位置に複列の外輪軌道5a、5bを、外周面の軸方向外端寄り部分に外向フランジ7を、それぞれ有する。そして、これら両外輪軌道5a、5bと前記両内輪軌道8a、8bとの間に前記転動体4、4を、両列毎に複数個ずつ配置して、前記両内輪10、10の外径側での前記ハブ11の回転を可能としている。使用状態では、これら両内輪10、10を、懸架装置に設けた車軸に外嵌固定すると共に、前記ハブ11の外向フランジ7に、車輪及び制動用回転部材を結合固定する。
尚、上述した各車輪支持用転がり軸受ユニット1、1a、1bの場合には、前記各転動体4、4として玉を使用しているが、重量の嵩む車両用の車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、転動体として円すいころを使用する場合もある。
【0006】
上述した各車輪支持用転がり軸受ユニット1、1a、1bを構成する、外輪2やハブ11の如き軌道輪部材、即ち、内周面の軸方向2個所位置に複列の外輪軌道5a、5bを、外周面の軸方向片側に寄った位置に外向フランジ6を、それぞれ有する軌道輪部材は、金属素材に鍛造加工を施した後、切削加工及び研削加工等の仕上げ加工を施す事によって造られる。
以下、この様な従来の軌道輪部材の製造方法の第1例に就いて、図9〜10に示す様な、内周面の軸方向2箇所位置に複列の外輪軌道5a、5bを、外周面のうちで軸方向片側(図9〜10に於ける上側)の外輪軌道5aと径方向に重畳する位置に外向フランジ6を、それぞれ形成した外輪2の製造方法を例にして、前記図9〜10に図11を加えて説明する。
【0007】
この様な外輪2を製造する為に、先ず、図11の(A)に示す様な、金属製で円柱状の原素材12を用意する。
そして、最初の据え込み工程で、この原素材12を軸方向に押し潰す事により図11の(B)に示す様な、第一中間素材13を得る。この第一中間素材13は、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった、ビヤ樽若しくは厚肉円盤状の如き形状を有する。
この様な第一中間素材13を得たならば、続く荒成形工程で、この第一中間素材13の周囲を荒成形用ダイスにより囲んだ状態で、この第一中間素材13の軸方向両端面の中央部に1対の荒成形用押圧パンチを押し付け、この第一中間素材13を塑性変形させる。そして、図11の(C)に示す様な、第二中間素材14を得る。この第二中間素材14は、軸方向両端面に開口する1対の凹部15a、15bと、これら両凹部15a、15bの底部同士の間に存在する隔壁部16と、外周面の軸方向片側(図11の上側)に寄った位置に径方向外方に突出する状態で形成された外向フランジ6とを備える。
【0008】
この様な第二中間素材14を得たならば、続く仕上げ成形工程で、この第二中間素材14の周囲を、仕上げ成形用ダイスにより囲んだ状態で、この第二中間素材14の軸方向両端面に1対の仕上げ成形用押圧パンチを押し付ける。これにより、前記隔壁部16を、その厚さ寸法を縮める方向に押し潰すと共に、この隔壁部16の周囲に存在する円筒状部分24の形状を、図9〜10に示した外輪2の形状に近付ける。そして、図11の(D)に示す様な、第三中間素材17を得る。
この様な第三中間素材17を得たならば、続く打ち抜き工程で、この第三中間素材17の隔壁部16を、その外周縁部分を除いて打ち抜き除去する事により、図11の(E)に示す様な、第四中間素材18を得る。
この様な第四中間素材18を得たならば、続くバリ取り工程で、この第四中間素材18の外向フランジ6の外周縁部に残っているバリ19を除去する事により、図11の(F)に示す様な、第五中間素材20を得る。
その後、この第五中間素材20の各部に、旋削等による切削加工や研削加工等の仕上げ加工を施す事により、図9〜10に示した外輪2を完成させる。
【0009】
ところで、図11の(A)に示した円柱状の原素材12は、鉄鋼メーカーで押し出し成形された、軸方向に直角な断面形状が円形である長尺材を所定長さに切断する事によって造られる。この様な原素材12の組成(清浄度)が均一でない事は、特許文献1等に記載されて、従来から知られている。即ち、前記原素材12のうちで、径方向に関して中心側40%の範囲(中心からの半径が40%までの範囲)、及び、径方向に関して外側20%の範囲(中心からの半径が80%よりも外側の範囲)には、それぞれ酸化物系非金属介在物等が多く存在する事により、清浄度が低い事が知られている。そして、この様な清浄度の低い金属材料が、前記外輪1の内周面に設けた複列の外輪軌道5a、5bのうちで、特に前記転動体4、4の転動面が転がり接触する部分に露出すると、当該部分の転がり疲れ寿命の確保が難しくなる。
【0010】
これらの事を考慮し、且つ、前記原素材12中の酸化物系非金属介在物等の分布のばらつきや、製造作業時に発生する押圧力等の各種ばらつきを考慮すると、前記原素材12のうちで、径方向に関して中心側50%の範囲(中心からの半径が50%までの範囲)、及び、径方向に関して外側30%の範囲(中心からの半径が70%よりも外側の範囲)に存在する金属材料が、前記両外輪軌道5a、5bのうちで、少なくとも前記各転動面が転がり接触する部分に露出しない様にする事が好ましい。逆に言えば、前記両外輪軌道5a、5bのうちで、少なくとも前記各転動面4、4が転がり接触する部分には、前記原素材12のうちで、中心からの半径が50〜70%の範囲に存在する、清浄度の高い金属材料を露出させる事が好ましい。ところが、上述した従来の製造方法によって前記外輪2を造る場合には、この様な清浄度の高い金属材料を、前記両外輪軌道5a、5bに露出させる事が難しい。この点に就いて、上述した図11に加えて、図12〜13を参照しつつ、以下に説明する。
【0011】
図12は、前記第二中間素材14中の金属材料の分布状況を、図13は、前記第三中間素材17中の金属材料の分布状況を、それぞれ示している。図11の(B)に示した第一中間素材13を同じく(C)に示した第二中間素材14に塑性加工し、更に(D)に示した第三中間素材17に塑性加工する過程で、前段階の中間素材13、14を構成する金属材料が、次段階の中間素材14、17の形状に合わせて(この形状を構成すべく)、径方向及び軸方向に流動(移動)する。この流動の方向には、前記外向フランジ6の存在が大きく影響し、前記凹部15a、15bの加工に伴って前記隔壁部16に対応する部分から押し退けられた金属材料のうちの多くの部分が、前記外向フランジ6に向けて流動する。
【0012】
この様にして行われる金属材料の流動の結果、前記第二、第三各中間素材14、17の最も内径側には、前記原素材12のうちで、径方向に関して中心側50%の範囲に存在していた、清浄度の低い中心部金属材料21が存在する様になる。又、この中心部金属材料21を囲む、斜格子で示した部分には、前記原素材12のうちで、中心からの半径が50〜70%の範囲に存在していた、清浄度の高い中間部金属材料22が存在する様になる。更に、この中間部金属材料22を囲む部分には、前記原素材12のうちで、径方向に関して外側30%の範囲に存在していた、清浄度の低い外側部金属材料23が存在する様になる。
【0013】
この様にして造られる前記第三中間素材17は、前記隔壁部16の打ち抜き加工、バリ取り加工、仕上げ加工である切削加工及び旋削加工等を施す事によって、図13に鎖線で示す様な外輪2とする。ところが、この様にしてこの外輪2を造ると、この図13の記載から分かる様に、前記両外輪軌道5a、5bの表面に、前記清浄な中間部金属材料22を露出させる事ができない。具体的には、前記外向フランジ6の内径側に存在する一方の外輪軌道5aに関しては、清浄な中間部金属材料22が除去されて、非清浄な前記中心部金属材料21が露出する。又、前記外向フランジ6から遠い他方の外輪軌道5bの表面には、やはり非清浄な前記外側部金属材料23が露出する。
【0014】
上述した従来の製造方法の場合には、図11の(B)に示した様な、ビヤ樽の如き形状を有する第一中間素材13から、図11の(C)及び図12に示した様な、径方向中間部に存在する円筒状部分24の内径側に隔壁部16を、同じく外径側に外向フランジ6を、径方向に関して互いに重畳しない位置関係で形成した第二中間素材14を、前記荒成形工程によって形成する。ところが、この様にして前記第二中間素材14を形成すると、前記第一中間素材13からこの第二中間素材14への、塑性変形に伴う金属材料の流動により、得られたこの第二中間素材14中の金属材料の分布が、図12に示す様な状態になる。即ち、前記第一中間素材13の中心部及び径方向中間部に存在する、前記中心部金属材料21及び前記中間部金属材料22の一部が、前記外向フランジ6に向けて、径方向外方に流動すると同時に、軸方向にも流動する。
【0015】
この様な各部の金属材料21、22の流動に伴って、このうちの清浄な中間部金属材料22が、前記隔壁部16と前記外向フランジ6との間で軸方向に大きく引き伸ばされ、径方向に関する厚さが小さく(薄く)なってしまう。そして、この薄くなった、前記中間部金属材料22の外径側に、非清浄な中心部金属材料21が存在する状態になる。この様に、中間部金属材料22が薄くなり、周囲に中心部金属材料21が存在する部分は、完成後に軸方向片側(図9、10、13の上側)の外輪軌道5aとなる部分である。一方、完成後に軸方向他側(図9、10、13の下側)の外輪軌道5bとなる部分には、やはり非清浄な外側部金属材料23が存在する状態になる。特に、前記外向フランジ6とは反対側に位置する、前記軸方向他側の外輪軌道5bとなるべき部分には、前記第二中間素材14の段階から、前記中間部金属材料22が存在しない状態となる。この結果、続く図11の(C)→(D)に示す仕上げ成形工程によって造られる、前記第三中間素材17中の金属分布が、図13に示す様な状態になる。
【0016】
この様な第三中間素材17に、図11の(D)→(E)→(F)に示す打ち抜き加工及びバリ取り加工を施してこの(F)に示した第五中間素材20とし、更にこの第五中間素材20に、仕上げ加工である旋削加工及び研削加工を施して、この第五中間素材20の円筒状部分24の内周面部分を削り取ると、前記両外輪軌道5a、5bの何れの表面にも、前記清浄な中間部金属材料22を露出させる事ができなくなる。具体的には、前記外向フランジ6の内径側に存在する外輪軌道5aの表面に関しては、前記第五中間素材20の段階までは存在していた前記中間部金属材料22が削り取られて、前記中心部金属材料21が露出する。一方、前記外向フランジ6から遠い側の外輪軌道5bの表面には、元々この外輪軌道5bを設けるべき部分に存在していた、前記外側部金属材料23が露出する。この結果、これら両外輪軌道5a、5bの何れに関しても、転がり疲れ寿命を確保する事が難しくなる。
【0017】
この様な事情に鑑みて、前記特許文献1には、図14の(B)→(C)→(D)→(E)→(F)に示す様に、第一中間素材13を第五中間素材20aに加工する過程で、外周面に外向フランジを持たない第二中間素材25を形成する方法が記載されている。この様な図14に示した従来の軌道輪部材の製造方法の第2例の場合には、前記第二中間素材25を構成する円筒状部分24aの内周面のうちで1対の外輪軌道5a、5bとすべき部分に清浄な中間部金属材料22を、十分な厚さ寸法で存在させる。次いで、図15の(A)→(B)→(C)の順に示す様に、押圧パンチ28と、カウンターパンチ29と、上側ダイス30と、下側ダイス31と、押し出しパンチ32とを備えた金型装置により、前記円筒状部分24aを軸方向に押し潰しつつ、この円筒状部分24aを構成する金属材料の一部を径方向外方に流動させて外向フランジ6を形成し、図14の(D)に示した第三中間素材26とする。更に、この第三中間素材26からバリ19を除去して、同図の(E)に示した第四中間素材27とし、更にこの第四中間素材27の隔壁部16を打ち抜いて、同図の(F)に示した、前記第五中間素材20aとする。更に、この第五中間素材20aに、旋削加工、研削加工等の仕上げ加工を施して、同図の(F)に鎖線で示した形状を有する外輪2とする。
【0018】
上述の様な、特許文献1に記載されて従来から知られている第2例の製造方法の場合には、図14の(F)から分かる様に、外向フランジ6の内径側に存在する外輪軌道5a、並びに、この外向フランジ6から離れた部分に存在する外輪軌道5bの何れに就いても、それぞれの表面に、清浄な中間部金属材料22を露出させられる。この為、前記両外輪軌道5a、5bの何れに就いても、転がり疲れ寿命を確保し易い。
【0019】
但し、上述の図14に示した従来の製造方法の第2例の場合には、前記第二中間素材25を前記第三中間素材26に加工する為の金型装置の構造が複雑になり、この金型装置の設備費、延いては、この金型装置を使用して造られる、前記外輪2等の軌道輪部材の製造コストが嵩んでしまう。又、中心部金属材料21を、必ずしもこの外輪2の内周面に設ける内輪軌道5aから十分に離れさせる事が難しい。この為、製造時の条件によっては、非清浄な前記中心部金属材料21が前記内輪軌道5a部分に露出する事を防止できない可能性がある。この結果、歩留まりを確保する事が難しく、前記外輪2の製造コストが嵩む可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2008−126286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、内周面に複列の外輪軌道を、外周面のうちで何れか一方の外輪軌道の外径側に外向フランジを、それぞれ有する軌道輪部材を、これら両外輪軌道の転がり疲れ寿命を十分に確保できる様に、構造が簡単な金型装置を使用して安定して造れる製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の軌道輪部材の製造方法は、内周面に複列の外輪軌道を、外周面のうち、軸方向に関する位置がこれら両外輪軌道のうちの一方の外輪軌道と一致する部分に外向フランジを、それぞれ有する軌道輪部材を造る為の製造方法で、据え込み工程と、荒成形工程と、仕上げ成形工程とを備える。
このうちの据え込み工程では、金属製で円柱状の原素材を軸方向に押し潰す事により、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材を得る。
又、前記荒成形工程では、この第一中間素材を塑性変形させる事により、軸方向両端面に開口して間部分を隔壁部により仕切られた1対の凹部及び前記外向フランジを有する第二中間素材を得る。
更に、前記仕上げ成形工程では、前記第二中間素材を塑性変形させる事により、前記隔壁部を厚さ寸法を縮める方向に押し潰すと共に、この隔壁部以外の部分の形状を前記軌道輪部材の形状に近づけた第三中間素材を得る。
尚、本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材に関して、軸方向に関する位置が一方の外輪軌道と一致する部分に外向フランジを有する状態とは、この一方の外輪軌道のうちで、各転動体と転がり接触する部分が、この外向フランジの厚さ範囲に存在する(転がり接触する部分の径方向外方位置に、この外向フランジの厚さ方向の一部が存在する)状態を言う。
【0023】
特に、本発明の軌道輪部材の製造方法に於いては、前記荒成形工程で前記第二中間素材を、前記外向フランジと前記隔壁部とを径方向に重畳させた状態で形成する。尚、これら外向フランジと隔壁部とを径方向に重畳させた状態とは、少なくともこの隔壁部の軸方向に関する厚さ寸法の1/2以上(好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上)が、前記外向フランジと径方向に重畳している(この外向フランジの内径側に、前記隔壁部のうちの1/2以上が存在する)状態を言う。逆に言えば、この隔壁部の厚さ寸法の1/2未満(好ましくは40%未満、更に好ましくは20%未満)の部分に関しては、前記外向フランジに対して軸方向にオフセットしていても良い。尚、オフセット量、及び、オフセットの方向は、前記外向フランジと、この外向フランジの内径側に存在する外輪軌道のうちで、転動体の転動面と転がり接触する部分との、軸方向に関する位置関係、複列の外輪軌道同士の間のピッチ等により適切に規制する。この規制は、各工程での中間素材を構成する金属材料の流動性等を考慮して、コンピュータシミュレーション及び実験により定める。尚、上記条件を満たす為に、前記外向フランジの軸方向厚さを、前記隔壁部の軸方向厚さの1/2以上(好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上とする。100%を超えても良いが、100%を大きく超える事は、前記外向フランジに流動する金属材料が過剰になる為、あまり好ましくはない。)確保する事は勿論である。
【0024】
上述の様に、前記外向フランジと前記隔壁部とを形成したならば、その後、前記仕上げ成形工程で前記隔壁部を押し潰すのに伴って、この隔壁部の軸方向片面を前記一方の外輪軌道を形成すべき部分から退避させる。
そして、この隔壁部の軸方向片面の外径寄り部分に、この一方の外輪軌道となるべき部分を形成する。即ち、前記隔壁部を軸方向に移動させる事により、前記第三中間素材を構成する円筒状部分の内周面とこの隔壁部の片面外周縁部との間に、前記外向フランジの内径側の外輪軌道を形成すべき部分を設ける。この様に前記第三中間素材を形成する際に、必要に応じて、前記隔壁部を軸方向に押し潰すと同時に、前記円筒状部分の形状及び寸法を、完成後の軌道輪部材のうちの円筒状部分の形状に近づける(完成後の軌道輪部材のうちの円筒状部分よりも少しだけ大きな形状及び寸法にまで加工する)。
【発明の効果】
【0025】
上述の様に構成する本発明の軌道輪部材の製造方法によれば、内周面の軸方向2個所位置に複列の外輪軌道を、外周面のうちで何れか一方の外輪軌道の外径側に外向フランジを、それぞれ有し、これら両外輪軌道の転がり疲れ寿命を十分に確保できる軌道輪部材を、低コストで造れる。
先ず、前記両外輪軌道の転がり疲れ寿命の確保は、これら両外輪軌道部分に、清浄な中間部金属材料を露出させる事により図れる。
そして、本発明の軌道輪部材の製造方法の場合には、荒成形工程で第一中間素材を第二中間素材とする加工も、仕上げ成形工程でこの第二中間素材を第三中間素材とする加工も、何れも、1対の金型を互いに遠近動させるだけの、比較的単純な構造を有する金型装置により行える。この為、この金型装置の為の設備コストを低く抑えられる。しかも、前記各中間素材中の、非清浄な中心部金属材料が、複列の外輪軌道の何れにも近付かない様にして、この中心部金属材料が、何れの外輪軌道の表面にも露出しない様にできる。この為、これら両外輪軌道部分に前記中間部金属材料を、安定して露出させる事ができ、歩留まりにより、軌道輪部材の製造コストを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の軌道輪部材の製造方法の実施の形態の1例を工程順に示す、原素材乃至第五中間素材の断面図。
【図2】第一中間素材を第二中間素材に加工する工程を順番に示す断面図。
【図3】第二中間素材の段階での、原素材の中心部、中間部、外側部にそれぞれ存在していた金属材料の分布状況を示す断面図。
【図4】第二中間素材を第三中間素材に加工する工程を順番に示す断面図。
【図5】第三中間素材の段階での、原素材の中心部、中間部、外側部にそれぞれ存在していた金属材料の分布状況を示す断面図。
【図6】本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材である外輪を備えた、内輪回転型で従動輪用の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
【図7】本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材である外輪を備えた、内輪回転型で駆動輪用の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す半部断面図。
【図8】本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材であるハブを備えた、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す半部断面図。
【図9】本発明の製造方法の対象となる外輪の断面図。
【図10】同じく斜視図。
【図11】従来の軌道輪部材の製造方法の第1例を工程順に示す、原素材乃至第五中間素材の断面図。
【図12】第二中間素材の段階での、原素材の中心部、中間部、外側部にそれぞれ存在していた金属材料の分布状況を示す断面図。
【図13】第三中間素材の段階での、原素材の中心部、中間部、外側部にそれぞれ存在していた金属材料の分布状況を示す断面図。
【図14】従来の軌道輪部材の製造方法の第2例を工程順に示す、原素材乃至第五中間素材の断面図。
【図15】従来の製造方法で、第二中間素材を第三中間素材に加工する工程を順番に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜5により、本発明の実施の形態の1例に就いて説明する。尚、本例の特徴は、前述の図9〜10に示した形状を有する外輪2を、複列の外輪軌道5a、5bの表面に清浄度の高い金属材料を露出させた状態で製造する為に、第一中間素材13を第二中間素材14aに加工する為の荒成形工程、並びに、この第二中間素材14aを第三中間素材17aに加工する為の仕上げ成形工程を工夫した点にある。その他の部分の構成に関しては、図11により先に説明した従来の製造方法の第1例の場合と同様である。そして、この従来の製造方法の第1例に就いては、前述した特許文献1に記載される等により従来から知られているので、従来と同等部分に関しては、図示並びに詳しい説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0028】
本例の場合も、前述した従来の製造方法の第1例の場合と同様、前記外輪2を製造する際には、先ず、図1の(A)に示す様な、金属製で円柱状の原素材12を用意する。そして、同図の(A)→(B)に示す据え込み工程と、(B)→(C)に示す荒成形工程と、(C)→(D)に示す仕上げ成形工程と、(D)→(E)に示す打ち抜き工程と、(E)→(F)に示すバリ取り工程とを、順次行う事により、第一乃至第五中間素材13、14a、17a、18a、20bを順次取得する。その後、この第五中間素材20bに切削加工及び研削加工等の仕上げ加工を施す事により、図5に鎖線で示した様に、前述の図9〜10に示した様な外輪2を完成させる。
【0029】
特に、本例の製造方法の場合には、前述した従来の製造方法の第1例の場合とは異なり、図1の(B)→(C)に示した荒成形工程で、前記第二中間素材14aを、外向フランジ6と隔壁部16aとが、この隔壁部16aの軸方向に関する厚さの1/2以上、径方向に関して重畳している(この隔壁部16aのうちの1/2以上が、前記外向フランジ6の内径側に存在する)状態で形成する。本例の場合には、これら外向フランジ6の厚さと隔壁部16aの厚さとがほぼ同じであり、この隔壁部16aのうちで、軸方向片側(図1及び図3に於ける上側)の70%程度の部分と、前記外向フランジ6の軸方向他側(図1及び図3に於ける下側)の70%程度の部分とを、径方向に重畳させた状態で、前記第二中間素材14aを形成する。
【0030】
特に、本例の場合には、前記荒成形工程で使用する金型装置として、図2に示す様な、上型33と下型34とから成る、比較的単純な構造のものを使用する。このうちの上型33の下面には、前記第二中間素材14aの軸方向内端寄り部分の外面形状に見合う内面形状を有する上側キャビティ35が開口している。これに対して前記下型34の上面には、前記第二中間素材14aの軸方向中間部乃至外端寄り部分の外面形状に見合う内面形状を有する下側キャビティ36が開口している。そして、図2の(A)→(B)の順に示す様に、前記上側キャビティ35と前記下側キャビティ36との間で前記第一中間素材13を軸方向に押し潰す事により、この第一中間素材13を塑性変形させる事で、前記第二中間素材14aを得る。尚、実際の場合には、前記下側キャビティ36の下端面は、前述の図15に示した従来構造の場合と同様に、円筒状の押し出しパンチ32の上端面により構成する。この理由は、加工後の前記第二中間素材14aを、前記下側キャビティ36から取り出し易くする為である。
【0031】
本例の製造方法では、前記上側、下側両キャビティ35、36の形状及び寸法を工夫する事により、前述の様に、外向フランジ6と隔壁部16aとが、この隔壁部16aの軸方向に関する厚さの1/2以上、径方向に関して重畳している、前記第二中間素材14aを形成する様にしている。本例の場合には、前記第二中間素材14aを得た状態で、前記隔壁部16aと前記外向フランジ6とを、それぞれの軸方向厚さの約70%程度ずつ、径方向に関して互いに重畳させている。
【0032】
この様に、前記隔壁部16aと前記外向フランジ6とが径方向に関して十分に(本例の場合には70%程度)重畳している、前記第二中間素材14aを形成する過程で、両凹部15c、15dとなるべき部分に存在していて、前記上型33及び下型34の一部により押し退けられた金属材料は、円筒状部分24bに向けて流動する。そして、この円筒状部分24bの軸方向長さを、前記第一中間素材13の軸方向長さに比べて伸張させると共に、その一部は前記外向フランジ6部分に流動する。本例の場合には、前記隔壁部16aと前記外向フランジ6とが径方向に関して十分に(70%程度)重畳している為、前記外向フランジ6部分に向けて流動する、前記金属材料のうち、非清浄な中心部金属材料21が、前記外向フランジ6に向けて径方向外方に流動する。この中心部金属材料21が、軸方向に関しては殆ど流動しない為、この中心部金属材料21が、前記両外輪軌道5a、5bとなるべき部分には、あまり近付かない。一方、前記原素材12の径方向中間部に存在していた、清浄な中間部金属材料22は、図3に示す様に、主として前記隔壁部16aの径方向外方に向けて流動した後、軸方向両側に流動する。前述の図12に示した、従来の製造方法の第1例の場合の様に、軸方向に大きく引っ張り伸ばされて、径方向に関する厚さが小さく(薄く)なる事はない。
【0033】
この様に本例の製造方法の場合には、前記中心部金属材料21が前記両外輪軌道5a、5bとなるべき部分に近付いたり、前記中間部金属材料22が、前記隔壁部16aと前記外向フランジ6との間で、軸方向に大きく引き伸ばされる事はない。前記中間部金属材料22は、これら隔壁部16aと外向フランジ6との間に、径方向に掛け渡された状態になる。又、この状態で前記中間部金属材料22は、前記第二中間素材14aを構成する前記円筒状部分24bの軸方向中間部分で、且つ、径方向中間部分に、比較的厚い層を形成する。そして、前記第二中間素材14aのうちで、この厚い層を形成された部分は、完成後に複列の外輪軌道5a、5b(図9〜10、及び、次述する図5参照)となる部分の近傍に位置する。この様に本例の場合には、前記非清浄な中心部金属材料21を、殆ど径方向にのみ流動させ、前記清浄な中間部金属材料22の外径寄り部分を軸方向両側に拡げている。この為、この中間部金属材料22の分布状態を、前記両外輪軌道5a、5bとなるべき部分に、全周に亙り安定して分布させる事ができる。これに対し、前記中心部金属材料21に関しては、前記両外輪軌道5a、5bとなるべき部分から十分に離隔させる事ができる。
【0034】
上述の様にして前記第二中間素材14aを得たならば、この第二中間素材14aを仕上げ成形用の金型内で塑性変形させる。具体的には、図4に示す様な、上型37と下型38とから成る金型装置を使用して、前記第二中間素材14aの隔壁部16aを軸方向に押し潰す(厚さ寸法を小さくする)。前記上型37の下面には、前記第三中間素材17aの軸方向内端寄り部分の外面形状に見合う内面形状を有する上側キャビティ39が、前記下型38の上面には、前記第三中間素材17aの軸方向中間部乃至外端寄り部分の外面形状に見合う内面形状を有する下側キャビティ40が、それぞれ開口している。尚、この下側キャビティ40の下端面に関しても、円筒状の押し出しパンチの上端面により構成する。
【0035】
上述の図4に示した金型装置を使用して、前記第二中間素材14aを前記第三中間素材17aとする過程で、前記隔壁部16aを押し潰してこの隔壁部16a部分の金属材料を径方向外方に流動させ、この金属材料を前記円筒状部分24b部分に送り込んで、この円筒状部分24bを伸張させ、完成後の外輪2(図5の鎖線参照)の軸方向寸法よりも少しだけ長い、円筒状部分24とする。この様に、前記隔壁部16aを押し潰すと共に前記円筒状部分24b(24)を伸張させる過程で、この円筒状部分24bの軸方向中間部分で、且つ、径方向中間部分に存在する、前記中間部金属材料22の比較的厚い層が、前記円筒状部分24b(24)の軸方向に拡がる。
【0036】
この様に、前記円筒状部分24b(24)が軸方向に拡がる過程で、前記中間部金属材料22の比較的厚い層も軸方向に伸ばされるが、前記第三中間素材17aを得た状態でも、図5に示す様に、前記中間部金属材料22が、前記円筒状部分24の軸方向中間部で前記隔壁部16aの軸方向両側部分に、全周に亙って、比較的厚い層のまま残留する。即ち、図3と図5とを比較すれば分かる様に、前記隔壁部16aを押し潰す過程で、この隔壁部16aの外径寄り部分に存在する前記中間部金属材料22のうちの相当部分が、前記円筒状部分24の軸方向中間部で前記隔壁部16aの軸方向両側部分に送り込まれる(補充される)。この為、前記第二中間素材14aの円筒状部分24bから前記第三中間素材17aの円筒状部分24への伸張に拘らず、この円筒状部分24のうちで前記両外輪軌道5a、5bを形成すべき部分に存在する、前記中間部金属材料22の、径方向に関する厚さを十分に確保できる。
【0037】
即ち、軸方向片側の外輪軌道5aを設けるべき部分に関しては、前記凹部15cを深くする事に伴って前記隔壁部16aの片面(図1〜5の上面)が退避する事により、十分な厚さ寸法を有する、前記中間部金属材料22の層が形成される。これに対して、軸方向他側の外輪軌道5bを設けるべき部分に関しては、前記凹部15dを深くする事に伴って前記隔壁部16aの他面(図1〜5の下面)外径寄り部分に存在する前記中間部金属材料22が円筒状部分24に押し出される事に伴い、十分な厚さ寸法を有する、前記中間部金属材料22の層が形成される。しかも、この場合に於ける、この中間部金属材料22のうちで前記両外輪軌道5a、5bとなるべき部分の動きも、比較的単純である(基本的には、1対の押圧パンチの外面に沿って流動するだけの動きになる)。この為、図5に示した様な、前記中間部金属材料22の分布状態を、安定して実現できる。
【0038】
上述の様な前記第三中間素材17aを得たならば、続く打ち抜き工程で、図1の(D)→(E)に示す様に、この第三中間素材17aの隔壁部16aを、その外周縁部分を除いて打ち抜き除去する事により、第四中間素材18aを得る。次いで、図1の(E)→(F)に示す様に、この第四中間素材18aの外向フランジ6の外周縁部に残っているバリ19を除去して、第五中間素材20bを得る。その後、この第五中間素材20bの各部に、旋削等による切削加工や研削加工等の仕上げ加工を施す事により、図5に鎖線で示す様な外輪2とする。この図5から明らかな通り、この完成後に外輪2の内周面に設ける複列の外輪軌道5a、5bの表面には、何れの外輪軌道5a、5bに関しても、前記清浄な中間部金属材料22が露出する。この為、これら両外輪軌道5a、5bの転がり疲れ寿命の確保が容易になる。
【0039】
上述の様に構成する本例の外輪2の製造方法によれば、外周面に形成した外向フランジ6の内径側に、複列の外輪軌道5a、5bのうちの一方の外輪軌道5aが存在する外輪2を、金属材料の分布を、これら両外輪軌道5a、5bの転がり疲れ寿命を十分に確保し易い状態にして、低コストで造れる。
先ず、前記両外輪軌道5a、5bの転がり疲れ寿命の確保は、これら両外輪軌道5a、5b部分に、前記中間部金属材料22を露出させる事により図れる。この中間部金属材料22は、前述した通り、酸化物系非金属介在物等が存在している確率が低い、比較的清浄な金属材料である為、前記中間部金属材料22が露出した、前記両外輪軌道5a、5bには、表面剥離等の損傷が発生しにくく、前記転がり疲れ寿命を確保し易い。
【0040】
そして、本例の外輪2の製造方法の場合には、図1の(B)→(C)の荒成形工程で前記第一中間素材13を前記第二中間素材14aとする場合、前記非清浄な中心部金属材料を径方向外方にのみ流動させて、前記両外輪軌道5a、5bとなるべき部分にあまり近付かない様にできる。これに対して、前記清浄な中間部金属材料22を、前記両外輪軌道5a、5bとなるべき部分に、十分な厚さで分布させられる。更に、図1の(C)→(D)の仕上げ成形工程で、前記第二中間素材14aを図5に示した第三中間素材17aとする場合も、前記清浄な中間部金属材料22を、前記両外輪軌道5a、5bとなるべき部分に、十分な厚さで分布させられる。この為、これら両外輪軌道5a、5b部分に前記中間部金属材料22を、安定して露出させる事ができ、歩留まり向上により、前記外輪2の製造コストを抑えられる。
【0041】
更に本例の製造方法の場合には、前述の図14に示した、従来の製造方法の第2例の場合に比べて、各工程で使用する金型装置として、比較的単純な構造のものを使用できる。この為、金型装置の製造コストを低く抑える事が可能になり、前記従来の製造方法の第2例の場合に比べて、設備コストを低く抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、前述の図6〜7に示す様な、内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する為の外輪の製造に限らず、前述の図8に示す様な、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成するハブの製造に関しても実施可能である。
【符号の説明】
【0043】
1、1a、1b 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 外輪
3、3a ハブ
4 転動体
5a、5b 外輪軌道
6 外向フランジ
7 外向フランジ
8a、8b 内輪軌道
9 スプライン孔
10 内輪
11 ハブ
12 原素材
13 第一中間素材
14、14a 第二中間素材
15a、15b、15c、15d 凹部
16、16a 隔壁部
17、17a 第三中間素材
18、18a 第四中間素材
19 バリ
20、20a、20b 第五中間素材
21 中心部金属材料
22 中間部金属材料
23 外側部金属材料
24、24a、24b 円筒状部分
25 第二中間素材
26 第三中間素材
27 第四中間素材
28 押圧パンチ
29 カウンターパンチ
30 上側ダイス
31 下側ダイス
32 押し出しパンチ
33 上型
34 下型
35 上側キャビティ
36 下側キャビティ
37 上型
38 下型
39 上側キャビティ
40 下側キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を、外周面のうち、軸方向に関する位置がこれら両外輪軌道のうちの一方の外輪軌道と一致する部分に外向フランジを、それぞれ有する軌道輪部材を造る為、金属製で円柱状の原素材を軸方向に押し潰す事により、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材を得る据え込み工程と、この第一中間素材を塑性変形させる事により、軸方向両端面に開口して間部分を隔壁部により仕切られた1対の凹部及び前記外向フランジを有する第二中間素材を得る荒成形工程と、この第二中間素材を塑性変形させる事により、前記隔壁部を厚さ寸法を縮める方向に押し潰すと共に、この隔壁部以外の部分の形状を前記軌道輪部材の形状に近づけた第三中間素材を得る仕上げ成形工程とを備えた軌道輪部材の製造方法に於いて、前記荒成形工程で前記第二中間素材を、前記外向フランジと前記隔壁部とを径方向に重畳させた状態で形成した後、前記仕上げ成形工程で前記隔壁部を押し潰すのに伴って、この隔壁部の軸方向片面を前記一方の外輪軌道を形成すべき部分から退避させて、この隔壁部の軸方向片面の外径寄り部分に、この一方の外輪軌道となるべき部分を形成する事を特徴とする軌道輪部材の製造方法。
【請求項2】
第三中間素材を形成する際に、隔壁部を軸方向に押し潰すと同時に、1対の凹部の周囲に存在する円筒状部分の形状及び寸法を、完成後の軌道輪部材のうちで、内周面に複列の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ有する円筒状部分の形状に近付ける、請求項1に記載した軌道輪部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−6017(P2012−6017A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141272(P2010−141272)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】