説明

軌陸車

【課題】より簡易に軌陸車を所定の停止位置に停止することが可能な軌陸車を提供すること。
【解決手段】道路を走行するための車輪11と所定の軌間で設置されている軌道Tを走行するための鉄輪21とを車体3に備えるとともに、車体3の下方に張り出して接地し、車体3を持ち上げた状態で車体3を水平旋回可能な転車台30を備えた軌陸車1であって、軌陸車1は、転車台30の回転中心Cを通って車体3の左右方向に延びる線から車体3前方側又は後方側に向かって軌間の略半分の距離となる平行線上の位置に、鉛直下向きに光を照射する第1の照射手段41を備えていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌陸車に関し、特に軌陸車の停止位置を決定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
軌陸車は、道路を走行するための車輪と軌道を走行するための鉄輪とを車体に備えるものである。一般に、軌道を走行する場合には、踏切等までは車輪によって道路を走行し、踏切内において軌道に鉄輪の位置を合わせるものである。ここで、軌陸車が踏切内に進入したときには、鉄輪と軌道とは交差している状態にあるため、転車台によって軌陸車を水平旋回させる必要がある。この場合、軌陸車の転車台の中心が軌道の幅方向の中央になければ、転車台を回転させても各レールの上方に鉄輪が配置されないため、軌道に鉄輪を載置することができない。そこで、軌陸車は、踏切内において、転車台の旋回中心が軌道の幅方向の中央になるように、正確に停止位置を決定する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、軌陸車の底部に転車台を備えた軌陸車であって、転車台の底面に設けられた地上マーク検出センサと、軌陸車の運転席またはその近傍に設けられ、地上マーク検出センサが所定の地上マークを検出すると運転者に認識可能な信号を発する報知手段と、を備えたものが開示されている。確かに、このような軌陸車によれば、地上マークが正確な位置に配置されている場合には、正確に停止位置の決定が行われるものとも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3000344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される軌陸車は、軌陸車が軌道内に進入する前の段階で、予め地上マークを軌道中心に配置する工程が必要であり、その分だけ作業が煩雑となるものである。また、運転者に認識可能な信号が発せられてから、実際に運転者が停止操作を行うまでにタイムラグが生じ、停止位置がずれてしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上記課題のうち少なくとも一つを解決することにより、より簡易に軌陸車を所定の停止位置に停止することが可能な軌陸車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、道路を走行するための車輪と所定の軌間で設置されている軌道を走行するための鉄輪とを車体に備えるとともに、該車体の下方に張り出して接地し、車体を持ち上げた状態で車体を水平旋回可能な転車台を備えた軌陸車であって、前記軌陸車は、前記転車台の旋回中心を通って車体の左右方向に延びる線から車体前方側又は後方側に向かって前記軌間の略半分の距離となる平行線上の位置に、鉛直下向きに光を照射する第1の照射手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、前記軌陸車は、前記車体の下方における前記第1の照射手段による照射位置が撮像可能な撮像手段と、該撮像手段によって撮像された映像を実時間表示する表示手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明では、前記軌陸車は、前記車体の運転席から視認可能な位置に前記表示手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明では、前記軌陸車は、前記照射位置と前記軌道との距離を案内する報知手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明では、前記車体は、前記第1の照射手段が配置される前記平行線上の位置であって、前記第1の照射手段と所定の間隔をあけた位置に、鉛直下向きに光を照射する第2の照射手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明では、前記車体は、前記転車台の旋回中心を通って車体の左右方向に延びる線から前記車体の前後方向のうち前記第1の照射手段が配置される方向と反対方向に向かって前記軌間の略半分の距離となる平行線上の位置に、鉛直下向きに光を照射する第3の照射手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明では、前記車体は、前記第3の照射手段が配置される前記平行線上の位置であって、前記第3の照射手段と所定の間隔をあけた位置に、鉛直下向きに光を照射する第4の照射手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明では、前記第1の照射手段及び前記第2の照射手段は、前記転車台の旋回中心を通って車体前後方向に延びる線に対して左右方向に略等距離の位置に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明では、前記第1の照射手段は、前記転車台に備えられ、該転車台は、前記第1の照射手段が配置される前記平行線上の位置であって、前記第1の照射手段と所定の間隔をあけた位置に、鉛直下向きに光を照射する第2の照射手段と、前記転車台の旋回中心を通って車体の左右方向に延びる線から前記車体の前後方向のうち前記第1の照射手段が配置される方向と反対方向に向かって前記軌間の略半分の距離となる平行線上の位置に、鉛直下向きに光を照射する第3の照射手段と、前記第3の照射手段が配置される前記平行線上の位置であって、前記第3の照射手段と所定の間隔をあけた位置に、鉛直下向きに光を照射する第4の照射手段とを備え、前記第1の照射手段、第2の照射手段、第3の照射手段及び第4の照射手段は、前記転車台とともに旋回可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、軌陸車が軌道に対して略直角で進入した場合において、第1の照射手段が軌道におけるどちらか一方側のレールを照射したときに停止位置であることが認識できる。これにより、従来に比し、より簡易に軌陸車を所定の停止位置に停止することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、照射手段がレールを照射しているか否かが表示手段によって確認できるため、作業者がしゃがみ込んだり、車体の下方にもぐり込んだりして照射位置を確認する必要がない。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、運転者が車体と停止位置との位置関係を確認しながら軌陸車を移動させることができるため、効率良く停止作業を行うことが可能となる。また、請求項4に記載の発明によれば、報知手段により運転者等に照射位置と軌道との距離が報知されることで、適切な停止位置までの目安が具体的に認識されるため、さらに効率良く停止作業を行うことが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、第1の照射手段と第2の照射手段とが同時に軌道を照射しているときに停止位置であることが認識できる。また、請求項6に記載の発明によれば、第1の照射手段と第3の照射手段が同時に軌道を照射しているときに停止位置であることが認識できる。さらに、請求項7に記載の発明によれば、第1乃至第4の照射手段が同時に軌道を照射しているときに停止位置であることが認識でき、より正確に所定の停止位置に停止させることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、軌道に対して直角以外の角度で進入した場合に、軌道に対する第1の照射手段と第2の照射手段とによる照射位置が、軌道の幅方向に対して均等にずれているときに停止位置であることが認識できる。
【0021】
請求項9に記載の発明によれば、軌道に対して直角以外の角度で進入した場合であっても、転車台が軌道と直角になるように回転させることにより、第1乃至第4の照射手段が予め想定された位置に移動されるので、第1乃至第4の照射手段が同時に軌道を照射しているときに停止位置であることが認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る軌陸車の側面図である。
【図2】(a)本発明の一の実施の形態に係る軌陸車のフレーム構造を模式的に示す平面図である。(b)同側面図である。
【図3】本発明の一の実施の形態に係る軌陸車の転車台を模式的に示す正面図である。
【図4】(a)本発明の他の実施の形態に係る軌陸車のフレーム構造を模式的に示す平面図である。(b)本発明の他の実施の形態に係る軌陸車のフレーム構造を模式的に示す平面図である。(c)本発明の他の実施の形態に係る軌陸車のフレーム構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。なお、本発明は、少なくとも道路を走行するための車輪と軌道を走行するための鉄輪とを車体に備えるとともに、車体に水平旋回可能な転車台を備えた軌陸車に広く適用可能であるが、ここでは車体に高所作業装置が設けられた軌陸車に本発明を適用した場合の一例について説明する。
【0024】
(実施例1)
図1に示すように、軌陸車1は、車体3のシャシフレーム10に道路を走行するための車輪として前輪11F及び後輪11Rを有しており、前輪11Fの上方には、軌陸車1の走行操作を行うためのキャブ5が設けられている。シャシフレーム10の上部にはシャシフレーム10と略同じ幅で前後方向に延びるサブフレーム20が固定されており、このサブフレーム20の前後には、所定の軌間で敷設される軌道T(レールR1,R2)を走行するための鉄輪21F及び21Rが支持される前側軌道走行装置23F及び後側軌道走行装置23Rが設けられている。また、鉄輪21F及び21Rは前側軌道走行装置23F及び後側軌道走行装置23Rによって下方に張り出した位置(走行位置)と格納された位置とに移動できるようになっている(図示例は、格納された位置を示す)。なお、本明細書において「軌間」は、レールR1の幅方向中央からレールR2の幅方向中央までの最短距離のことをいうものとする。
【0025】
サブフレーム20の上部には、旋回モータ(図示省略)により旋回自在に構成された旋回台25が設けられ、該旋回台25には、起伏自在にブーム26が枢支されている。このブーム26と旋回台25との間には起伏シリンダ27が接続されており、この起伏シリンダ27を伸縮させることで、ブーム26が起伏するようになっている。また、ブーム26は、内部に設けられた伸縮シリンダ(図示省略)を伸縮させることで伸縮自在となるように多段式に構成されており、その先端には、作業台28が常に水平を維持するように揺動自在に取り付けられている。また、サブフレーム20の前後には、作業時に車幅方向に張出して軌陸車1をジャッキアップするアウトリガ装置29F,29Rが設けられている。
【0026】
軌陸車1のフレーム構造を表した図2(a)、(b)に示すように、サブフレーム20には、車体3の下方に張り出して地面に接し、車体3を持ち上げた状態で水平旋回可能な転車台30が固定されている。図3に示されるように、転車台30は、油圧シリンダ(図示省略)によって伸縮可能な2本の伸縮装置31L,31R(総称するときは「伸縮装置31」とする)と、この伸縮装置31の下端に固定される回転台33とによって構成され、伸縮装置31L,31Rの上端側がサブフレーム20の進行方向に向かって左右部分にそれぞれ固定されるものである。回転台33は、伸縮装置31の下端が固定される上部回転板35と地面に接する下部回転板37とを備え、上部回転板35と下部回転板37との間には、これらが相対的に回転するための回転装置36が設けられる。なお、この回転装置36は、例えば図示されない操作装置によって回転制御されるものである。また、下部回転板37は、平面視において略長方形状を呈し、長辺の長さが軌間より長く、短辺の長さが軌間より短くなるように形成されている。
【0027】
このような構成を備えることで、まず転車台30の伸縮装置31が伸長動作されることにより、回転台33の下部回転板37が地面に接し、さらに、伸長動作が継続することで、軌陸車1が地面から持ち上げられる。このとき、軌陸車1は転車台30のみによって支持されているものである。そして、この状態で、回転台33が回転することにより、回転台33の中心を回転中心Cとして軌陸車1が水平旋回するものである。なお、回転中心Cは、軌陸車1の略重心に位置しており、サブフレーム20の幅方向に対する中心となっている。
【0028】
実施例1においては、図2に示されるように、参照するための光を照射する第1の照射手段41、第2の照射手段42、第3の照射手段43及び第4の照射手段44(総称するときは「照射手段40」とする)が、サブフレーム20に対して設けられている。これらの照射手段40は、鉛直下向きに光を照射するものであり、例えばレーザポインタが用いられる。
【0029】
第1及び第3の照射手段41,43はサブフレーム20の右側面に、第2及び第4の照射手段42,44はサブフレーム20の左側面において、それぞれ前後方向に軌間と略同じ間隔をもって設けられている。そして、第1及び第2の照射手段41,42は、転車台30の回転中心Cからサブフレーム20の前方側に向かって軌間の略半分の距離の位置に設けられており、第3及び第4の照射手段43,44は、転車台30の回転中心Cからサブフレーム20の後方側に向かって軌間の略半分の距離の位置に設けられている。また、転車台30の回転中心Cはサブフレーム20の幅方向における中心線Lc上にあるため、第1及び第3の照射手段41,43と第2及び第4の照射手段42,44とは、転車台30の回転中心Cを通って車体前後方向に延びる中心線Lcに対して左右方向に略等距離の位置に配置されていることになる。また、第1の照射手段41と第2の照射手段42とを結んだ線及び第3の照射手段と第4の照射手段とを結んだ線は、中心線Lcに直交するものであり、互いに平行となっている。
【0030】
照射手段40が上記のように配置されることにより、転車台30の回転中心CがレールR1とレールR2との中心に位置したときに、第1及び第2の照射手段41,42によって軌陸車1の進行方向側のレールR1が照射され、第3及び第4の照射手段43,44によって軌陸車1の進行方向反対側のレールR2が照射されることになる。そのため、このように照射されていることを運転者が認識することにより、運転者は容易に停止位置に軌陸車1を停止することができる。
【0031】
また、軌道Tに対して略直角に軌陸車1が進入している場合には、照射手段40のうち少なくとも1つの照射手段が、対象とするレール(第1及び第2の照射手段であればレールR1、第3及び第4の照射手段であればレールR2)を照射していることが認識できれば、必然的に全ての照射手段40が対象とするレールを照射していることになり、適正な停止位置であることが認識できる。また、軌道Tに対して直角に進入しているか分からない場合であっても、第1及び第2の照射手段41,42又は第3及び第4の照射手段43,44が対象とするレールを照射している場合には、軌道Tに対して略直角に進入しており、適正な停止位置であることが認識できる。さらに、軌道Tに対して略直角に進入していない場合においては、例えば第1及び第2の照射手段41,42の照射位置のうち、一方の照射位置がレールR1に対して車両進行方向側にずれ、他方の照射位置がレールR1に対して車両進行方向逆側にずれ、このずれている距離が略均等であれば、適正な停止位置(旋回中心と軌間の中心が一致する位置)であることが認識できる。
【0032】
なお、運転者による照射位置の認識の方法は、例えば、他の作業者が車外において照射位置を確認し、運転者に伝達する方法でも構わないが、本実施例では、撮像手段と表示手段によって、より容易に認識できるようになっている。
【0033】
図2(a)、(b)に示されるように、サブフレーム20内には、撮像手段としてのカメラ51が下方に向けられた状態で設けられており、照射手段40による全ての照射位置が撮影範囲に含まれるように設定されている。このカメラ51による映像は、運転席のあるキャブ5内に設置された表示手段としてのモニタ55に対して、有線または無線によって送信されており、運転席から視認可能となっている。なお、モニタ55の映像は、カメラ51によって撮影された映像が実時間(リアルタイム)で送信されるものとなっている。
【0034】
実施例では、このように照射手段40による照射位置が撮像可能なカメラ51と、カメラ51によって撮像された映像を実時間表示するモニタ55とを備えていることにより、運転者自身が、照射位置とレールR1,R2との位置関係を確認しながら軌陸車1を移動させることができるため、レールR1,R2に対して照射位置が徐々に近付く様子が確認でき、効率良く停止作業を行うことが可能となる。また、運転者以外の作業者が、車体側方にしゃがみ込んだり、車体下方にもぐり込んだりして、照射位置を確認する等の煩雑な作業が必要ない。
【0035】
(実施例2)
実施例1として、第1乃至第4の照射手段がサブフレームの両側面に配置されている例を示したが、これに限定されない。第1乃至第4の照射手段は、所定の間隔をあけて配置されていればよく、例えば、サブフレームの両側面以外の位置や、サブフレーム以外のシャシフレームや転車台等における所定の位置であっても構わない。以下、図4に本発明の他の実施例として、照射手段40が転車台に設けられている例を示す。なお、実施例1と同一または対応する部分には、図1乃至図3と同一の符号を用いて、主として実施例1と異なる構成について説明する。
【0036】
図4に示されるように、実施例2における第1乃至第4の照射手段41乃至44は、転車台30における下部回転板37の四隅に設けられる。下部回転板37の長辺37Lが車体3の幅方向と一致した状態(図4(a)の状態であり、以下「標準位置」という)において、第1の照射手段41は下部回転板37の進行方向左前方側の隅部に、第2の照射手段42は下部回転板37の進行方向左後方側の隅部に、第3の照射手段43は下部回転板37の進行方向右前方側の隅部に、第4の照射手段44は下部回転板37の進行方向右後方側の隅部に、それぞれ設けられる。第1及び第2の照射手段41,42と第3及び第4の照射手段43,44とは、車体3の中心線Lcからの左右方向の距離が軌間の略半分となる位置に設けられているため、第1の照射手段41と第3の照射手段43との間隔及び第2の照射手段42と第4の照射手段44との間隔は、いずれも軌間と略同じとなる。
【0037】
照射手段40が上記のように配置された実施例2においては、図4(a)に示されるように、停止位置合わせの際に、まず転車台30が標準位置にある状態で、軌陸車1が踏切内に進入する。そして、転車台30を平面視において右回りに90度回転させることにより、図4(b)に示されるように、下部回転板37の短辺37Sが車体3の幅方向と一致した状態となる。これにより、第1及び第2の照射手段41,42が、転車台30の回転中心Cから車体3の前方側に向かって軌間の略半分の距離の位置に、第3及び第4の照射手段43,44が、転車台30の回転中心Cから車体3の後方側に向かって軌間の略半分の距離の位置に移動する。また、第1及び第3の照射手段41,43と第2及び第4の照射手段42,44とは、転車台30の回転中心Cを通って車体前後方向に延びる中心線Lcに対して左右方向に略等距離の位置になる。また、第1の照射手段41と第2の照射手段42とを結んだ線及び第3の照射手段と第4の照射手段とを結んだ線は、中心線Lcに直交するようになる。
【0038】
このように、転車台30の回転によって照射手段40が上記のように移動することで、実施例1と同様に、転車台30の回転中心CがレールR1とレールR2との中心に位置したときに、第1及び第2の照射手段41,42によって軌陸車1の進行方向側のレールR1が照射され、第3及び第4の照射手段43,44によって軌陸車1の進行方向反対側のレールR2が照射されることになる。そのため、このように照射されていることを運転者が認識することにより、運転者は容易に停止位置に軌陸車1を停止することができる。
【0039】
なお、実施例2では、図4(c)に示すように、軌道Tに対して略直角でない角度で軌陸車1が進入した場合には、進入方向に対する軌道Tの角度に合わせて転車台30を回転させて、下部回転板37の短手方向と軌道Tの長手方向(下部回転板37の長手方向と軌道Tの幅方向)とを一致させることで、照射手段40が同時にレールを照射し得る状態をつくることができる。そして、この状態で軌陸車1を前後動させることで、運転者は容易に停止位置に軌陸車1を停止することができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、照射手段としてレーザポインタを例示したが、これに限られず、少なくともサブフレームの高さから地面に照射した際に、照射されたポイントが認識できるものであれば構わない。
【0041】
また、第1乃至第4の照射手段が設けられている例を示したが、これに限られない。例えば、第1乃至第4のうちいずれか1つの照射手段が設けられていれば、軌道に対して略直角に進入した場合には、照射手段が対象とするレールを照射することをもって適正な停止位置であることが認識できる。また、例えば、第1及び第2の照射手段のみが配置されている場合には、第1及び第2の照射手段が同時にレールを照射することをもって、軌道に対して直角に進入しており、適正な停止位置であることが認識できる。また、例えば、第1及び第3の照射手段のみが配置されている場合には、第1及び第3の照射手段が同時にレールを照射することをもって、軌道に対して直角に進入しており、適正な停止位置であることが認識できる。また、第1、第2及び第3の照射手段のみが配置されていてもよく、この場合には、第1及び第2の照射手段を備えた場合及び第1及び第3の照射手段を備えた場合に比し、さらに精度よく停止位置を認識できる。
【0042】
また、表示手段としてのモニタが、キャブ内に配置されている例を示したが、これに限定されず、例えば車両の側壁等に設けられていても構わない。この場合には、他の作業者がモニタを確認することになるが、車両の下方にもぐり込む等の必要がなく容易に照射位置の確認作業を行うことができる。ここで、モニタがキャブ外に配置されている場合、必ずしも他の作業者がモニタを確認するものではなく、例えば窓越しやミラー越しに運転者がモニタを確認する構成とすることができる。なお、カメラからの映像が無線によってモニタに送信される場合には、携帯可能なモニタとしてもよい。
【0043】
また、カメラによって撮影された映像がそのままモニタに表示される例を示したが、これに限定されない。例えば、カメラによって撮影された映像に対して画像処理を施すことで、レールや照射位置を強調する表示を行うことができる。また、「停止位置まであと50cmです」のような案内を行う報知手段を備えることができる。このような報知手段を備えることにより、運転者等はモニタを注視する必要がなく、さらに、適切な停止位置までの目安が、照射位置と軌道との距離として具体的に認識されるため、さらに効率良く停止作業を行うことが可能となる。なお、報知手段による案内は、まず、撮影されている映像に対してリアルタイムで画像処理を行うことによって、撮影された映像からレール部分を認識してこれを抽出するレール抽出処理と、照射位置を認識してこれを抽出する照射位置抽出処理とがなされる。画像処理は既知の技術を利用することができ、レール抽出処理は、例えば、エッジ抽出された所定の間隔(1本のレールの幅)をもつ2本の平行線を1本のレールとして認識させるものである。また、照射位置抽出処理は、例えば、照射手段に利用されるレーザポインタのレーザの波長に対応する色を抽出するものや、カメラによる撮像範囲の所定位置を照射位置として予め決定しておくものである。そして、例えば、ピクセルに対応した所定の値や、予め設定されている軌間の情報を基準として、抽出されたレールと照射位置とを比較することにより、車両の進行方向におけるレールと照射位置との距離を演算し、演算された距離を案内するものである。なお、案内は音声により行われる方法や、モニタに表示される方法の他、これらを組み合わせた方法等である。また、案内される距離は、例えば、50cm、40cm、30cm・・・のように所定の大きさで区切って行われるようにしても構わないし、「あと少しです」のような距離を定性的に表したものでも構わない。
【0044】
また、照射手段がサブフレーム又は下部回転板に固定されている例を示したが、これを移動可能に設けるようにしても構わない。例えば、軌間は標準軌の他に広軌、狭軌等があるが、これら各軌間に合わせて所定の取付位置に固定できるように構成することで、異なる軌間に対応することが可能となる。サブフレームであれば、前後方向の間隔を変えた位置に複数箇所の取付部を設ければよいし、下部回転板であれば、長辺部分に複数箇所の取付部を設ければよい。
【符号の説明】
【0045】
1 軌陸車
3 車体
10 シャシフレーム
11 車輪
20 サブフレーム
21 鉄輪
30 転車台
41 第1の照射手段
42 第1の照射手段
43 第1の照射手段
44 第1の照射手段
51 カメラ
55 モニタ
C 旋回中心
T 軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行するための車輪と所定の軌間で設置されている軌道を走行するための鉄輪とを車体に備えるとともに、該車体の下方に張り出して接地し、車体を持ち上げた状態で車体を水平旋回可能な転車台を備えた軌陸車であって、
前記軌陸車は、前記転車台の旋回中心を通って車体の左右方向に延びる線から車体前方側又は後方側に向かって前記軌間の略半分の距離となる平行線上の位置に、鉛直下向きに光を照射する第1の照射手段を備えていることを特徴とする軌陸車。
【請求項2】
前記軌陸車は、前記車体の下方における前記第1の照射手段による照射位置が撮像可能な撮像手段と、該撮像手段によって撮像された映像を実時間表示する表示手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の軌陸車。
【請求項3】
前記軌陸車は、前記車体の運転席から視認可能な位置に前記表示手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の軌陸車。
【請求項4】
前記軌陸車は、前記照射位置と前記軌道との距離を案内する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の軌陸車。
【請求項5】
前記車体は、前記第1の照射手段が配置される前記平行線上の位置であって、前記第1の照射手段と所定の間隔をあけた位置に、鉛直下向きに光を照射する第2の照射手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の軌陸車。
【請求項6】
前記車体は、前記転車台の旋回中心を通って車体の左右方向に延びる線から前記車体の前後方向のうち前記第1の照射手段が配置される方向と反対方向に向かって前記軌間の略半分の距離となる平行線上の位置に、鉛直下向きに光を照射する第3の照射手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の軌陸車。
【請求項7】
前記車体は、前記第3の照射手段が配置される前記平行線上の位置であって、前記第3の照射手段と所定の間隔をあけた位置に、鉛直下向きに光を照射する第4の照射手段を備えていることを特徴とする請求項6記載の軌陸車。
【請求項8】
前記第1の照射手段及び前記第2の照射手段は、前記転車台の旋回中心を通って車体前後方向に延びる線に対して左右方向に略等距離の位置に配置されていることを特徴とする請求項5記載の軌陸車。
【請求項9】
前記第1の照射手段は、前記転車台に備えられ、
該転車台は、
前記第1の照射手段が配置される前記平行線上の位置であって、前記第1の照射手段と所定の間隔をあけた位置に、鉛直下向きに光を照射する第2の照射手段と、
前記転車台の旋回中心を通って車体の左右方向に延びる線から前記車体の前後方向のうち前記第1の照射手段が配置される方向と反対方向に向かって前記軌間の略半分の距離となる平行線上の位置に、鉛直下向きに光を照射する第3の照射手段と、
前記第3の照射手段が配置される前記平行線上の位置であって、前記第3の照射手段と所定の間隔をあけた位置に、鉛直下向きに光を照射する第4の照射手段とを備え、
前記第1の照射手段、第2の照射手段、第3の照射手段及び第4の照射手段は、前記転車台とともに旋回可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の軌陸車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−210830(P2012−210830A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76377(P2011−76377)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】