軒先通気構造及び通気化粧部材
【課題】 十分な大きさの通気路を確保することができ、組み立て作業の軽減を図ることができる軒先通気構造及び通気化粧部材を提供する
【解決手段】 軒先通気構造は、垂木6と前記垂木6の下方に位置する軒天井5との隙間を隠蔽する化粧部材1を用いて屋根裏と外気との通気路11が設けられた軒先通気構造である。化粧部材1は、前記軒天井5の対向位置に前記軒天井5の先端部5aを遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井5の先端部5aに沿って伸びる通気路形成溝20を備える化粧板本体2と、前記通気路形成溝20に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝20に遊嵌された前記軒天井の先端部5aを支持する支持部31を有する複数のスペーサ3と、を備え、前記通気路11は、前記通気路形成溝20の前記スペーサ3の非設置部分と前記軒天井先端部5aとで画定される空間により構成されている。
【解決手段】 軒先通気構造は、垂木6と前記垂木6の下方に位置する軒天井5との隙間を隠蔽する化粧部材1を用いて屋根裏と外気との通気路11が設けられた軒先通気構造である。化粧部材1は、前記軒天井5の対向位置に前記軒天井5の先端部5aを遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井5の先端部5aに沿って伸びる通気路形成溝20を備える化粧板本体2と、前記通気路形成溝20に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝20に遊嵌された前記軒天井の先端部5aを支持する支持部31を有する複数のスペーサ3と、を備え、前記通気路11は、前記通気路形成溝20の前記スペーサ3の非設置部分と前記軒天井先端部5aとで画定される空間により構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の軒先を装飾すると共に、屋根裏と外気との間の換気を行なう通気路が形成された軒先通気構造及び当該軒先通気構造に用いられる鼻隠しあるいは破風板等の通気化粧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軒天井の取り付けなどに関する軒先構造として、屋根裏の劣化防止や法上の要請から、通気構造を備えた軒先構造が求められている。通気構造を有する軒先構造としては、特許文献1や特許文献2に開示されているものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された軒先構造は、鼻隠し又は破風板として使用される化粧板部分の裏面に形成された凸部に、多数の換気口が設けられた換気材部分を嵌合させた状態で換気材部分に形成された軒天井係合用凹部を軒天井に嵌合させ、化粧板部分の裏面を下地材に当接させる。そして、スクリュー釘により、化粧板部分を下地材に固定することで軒先を構築する。
【0004】
また、特許文献2に記載された軒先構造は、垂木及び軒天井や野縁の先端に下地材を取り付け、軒天井野縁及び下地材の下面に通気胴縁を取り付けている。そして、通気胴縁に軒天井を固定することで、軒天井野縁及び下地材と軒天井との間に、通気胴縁の厚さ分の隙間を設けている。また、下地に固定されるあご付窯業系軒先カバー部材(以下、あご付カバー部材という)のあごの上面には、あご溝が形成されており、あごの上面と、軒天井の下面とが接触し、かつ、あご付カバー部材の裏面に軒天井野縁が当接しないように、あご付カバー部材を下地に取り付けている。これにより、軒天井の縁とあご付カバー部材の裏面のとの間に隙間が形成される。
【0005】
上記あご溝は、あごの基端から先端まで形成されており、あご付カバー部材の長手方向に沿って、一定間隔を置いて多数形成されている。よって、あご溝から軒天井の縁とあご付カバー部材との隙間を抜け、さらに、通気胴縁によってできた野縁との機転との隙間を通過する通路が形成され、この通路によって屋根裏と外気との換気が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−92303号公報
【特許文献2】特開2005−61103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された軒先構造は、屋根裏と外気の換気を行なうための通路を形成するために化粧板部分と換気材部分とに分けて、化粧材を構成するために、作業現場での組み立て作業を伴い、また、化粧材が大型化して取り付け作業も煩雑であった。また、特許文献2に記載された軒先構造においては、屋根裏と外気との換気を行なうための通路を形成するために、野縁と軒天井との間に間隔を設ける必要があるため、野縁に通気胴縁を取り付けなければならず、材料費や作業工程の増加を招く結果となっていた。
【0008】
また、特許文献2に記載された軒先構造においては、屋根裏と外気との換気を行なうための通路を形成するために、野縁と軒天井との間に間隔を設ける必要があるため、野縁に通気胴縁を取り付けなければならず、材料費や作業工程の増加を招く結果となっていた。さらに、あご付カバー部材のあご溝は野縁の延在方向に向かって伸びるように形成されており、あご付カバー部材の長手方向に並列されるため、あご付カバー部材の製造工程において、広く用いられている押し出し成形による製造が困難であるという問題がある。
【0009】
また、軒天井は、施工ごとに大きさが若干異なり、野縁からの突出量が変動する場合がある。この場合、上記の軒先構造においては、換気のための通路が狭く、軒天井の大きさによっては、通路の断面積が消防法上求められている一定以上の断面積を確保することが困難となる場合があった。この場合、一定以上の断面積を確保するために、化粧部材を切削するなどの工程が必要であり、作業の手間が煩雑であった。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、十分な大きさの通気路を確保することができ、組み立て作業の軽減を図ることができる軒先通気構造及び通気化粧部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の軒先通気構造及び通気化粧部材を提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、垂木と前記垂木の下方に位置する軒天井との隙間を隠蔽する化粧部材を用いて屋根裏と外気との通気路が設けられた軒先通気構造であって、
前記化粧部材は、前記軒天井の対向位置に前記軒天井の先端部を遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井の先端部に沿って伸びる通気路形成溝を備える化粧板本体と、
前記通気路形成溝に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝に遊嵌された前記軒天井の先端部を支持する支持部を有する複数のスペーサと、を備え、
前記通気路は、前記通気路形成溝の前記スペーサの非設置部分と前記軒天井先端部とで画定される空間により構成されていることを特徴とする、軒先通気構造を提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記スペーサは、前記通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部を備え、前記上部当接部及び下部当接部の少なくとも一方に前記通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部が設けられていることを特徴とする、第1態様の軒先通気構造を提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記スペーサは、板状部材で構成され、通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部が前記通気路形成溝の上面及び下面を押圧するように構成されていることを特徴とする、第1又は第2態様の軒先通気構造を提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、垂木と前記垂木の下方に位置する軒天井との隙間を隠蔽する通気化粧部材であって、
前記化粧部材は、前記軒天井の対向位置に前記軒天井の先端部を遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井の先端部に沿って伸びる通気路形成溝を備える化粧板本体と、
前記通気路形成溝に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝に遊嵌された前記軒天井の先端部を支持する支持部を有する複数のスペーサと、を備えることを特徴とする、通気化粧部材を提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記スペーサは、前記通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部を備え、前記上部当接部及び下部当接部の少なくとも一方に前記通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部が設けられていることを特徴とする、第4態様の通気化粧部材を提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、前記スペーサは、板状部材で構成され、通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部が前記通気路形成溝の上面及び下面を押圧するように構成されていることを特徴とする、第4又は第5態様の通気化粧部材を提供する。
【0018】
本発明の第7態様によれば、化粧板本体は、前記通気路形成溝の下面が通気路形成溝の上面よりも突出するように構成されていることを特徴とする、第4から第6態様のいずれか1つの通気化粧部材を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、十分に大きな通路形成溝を備えた化粧板本体を用いることで、軒天井が通路形成溝中に遊嵌するように配置されるので、通路形成溝を画定する壁面と軒天井先端が接触することがない。一方、通路形成溝中に所定の間隔を置いて設けられる複数のスペーサは、軒天井の先端部を支持するため、軒先構造としての強度を十分に維持することができる。したがって、通気路形成溝のスペーサの非設置部分と軒天井先端部とで画定される空間を通気路として利用することができる。
【0020】
よって、通路形成溝の大きさとスペーサの数に応じて通気路の断面積が決定されるため、十分な大きさの通気路を確保することができる。また、施工ごとに軒天井の大きさが異なる場合にも、スペーサの形状を調整することで、当該軒天井の寸法相違分を吸収することができ、組み立て作業を軽減することができる。
【0021】
また、スペーサに通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部を設けることで、スペーサの化粧板本体からの脱落を防止することができ、組み立て作業の手間を軽減することができる。
【0022】
また、スペーサを板状部材で構成し、通気路形成溝の上面及び下面に当接するように構成することによってもスペーサの化粧板本体からの脱落を防止することができる。
【0023】
本発明の第7態様によれば、通気路形成溝の下面が通気路形成溝の上面よりも突出するように構成することで、軒天井の下側に位置する部分が軒天井を被覆する面積が大きくなり、雨水などの侵入を防止し、さらに、通気用の通路を外部から視認されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態にかかる軒先構造の例を示す図である。
【図2】図1の軒先構造の一部断面斜視図である。
【図3】図1の軒先構造の変形例を示す図である。
【図4】図3の軒先構造の一部断面斜視図である。
【図5】図1及び図3の軒先構造に用いられる鼻隠し材の正面図である。
【図6】図5の鼻隠し材のVI-VI線における断面図である。
【図7】図5の鼻隠し材を構成するスペーサの構成を示す斜視図である。
【図8】スペーサの変形例を示す図である。
【図9】板天井材にスペーサを取り付けた状態を示す軒先構造の製造工程を示す図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる軒先構造の他の変形例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる軒先構造のさらなる他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る通気化粧部材及び当該通気化粧部材を用いた軒先構造について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態にかかる軒先構造の例を示す図である。図2は、図1の軒先構造の一部断面斜視図である。本実施形態にかかる軒先通気構造100においては、図1に示すように、本発明にかかる通気化粧部材を鼻隠し材1として用いている。本実施形態にかかる軒先通気構造100では、垂木6の上に野地板8を敷いて、瓦などの屋根化粧材9を載せ、屋根化粧材9の下端において、野地板8との間に、水切り板10の上辺が挟み込まれている。
【0027】
また、垂木6の下部には野縁4が設けられており、当該野縁4に軒天井5を固定する。野縁4は、所定の間隔をおいて互いに平行に設けられ、垂木6の延在方向に沿って伸びる縦野縁4aと、縦野縁4aを交差するように設けられる横野縁4bを備える。縦野縁4aは、おおむね30から60cmごとの間隔で設けられ、横野縁4bは縦野縁4aの固定のために縦野縁4aに対しておおむね直交するように設けられる。横野縁4bは図2に示すように縦野縁4aの中間部分に設けられていてもよいし、図4に示すように縦野縁4aの先端に設けられていてもよい。
【0028】
鼻隠し材1は、垂木6及び縦野縁4aに固定された下地材7を介して垂木6と野縁4の間を隠蔽するように固定されている。
【0029】
図1の第1実施形態例では、下地材7は、垂木6の先端面と縦野縁4aの上面に固定されているが、図3、図4に示すように垂木6及び横野縁4bの先端面に固定するように構成されていてもよい。なお、この変形例については、下地材7の構成を図1の例とは異ならせる必要がある。具体的な構成についての詳細は後述する。
【0030】
図5は本実施形態の軒先構造に用いられる鼻隠し材の正面図である。図6は、図5の鼻隠し材のVI-VI断面図である。鼻隠し材1は、長尺平板の板状本体2及び板状部材2の通路形成溝20に取り付けられるスペーサ3を備える。板状本体2は、例えば、セメント系押出成形体からなり、曲げ載荷に際して、好ましくは、引っ張り応力の作用に対しても、多重亀裂を生じて破壊する高い靱性を有するものが好適に使用される。さらに具体的には、鼻隠し材1として、繊維補強水硬性組成物の押出成形体を採用し、これにより曲げ載荷に際して、多重亀裂を生じて破壊する性質を持たせたものなどを使用可能である。
【0031】
板状本体2は、例えば、長手方向の寸法L1が3030mm、高さ方向(短手方向)寸法H1が150から300mm程度、厚み寸法T1が35mm程度の断面が略L字形の長尺平板上の部材である。板状本体2の大きさは、必ずしも上記サイズに限定されるものではなく、軒下構造の大きさに応じて適宜変更することができる。
【0032】
板状本体2の裏面側には、鼻隠し材1を図示しないビスにより下地材又は垂木4に固定する際のビス留め位置となるビス留め用突起22が、板状本体2の長手方向に沿って設けられている。
【0033】
また、板状本体の裏面側には、軒先構造の通気路を形成するための通気路形成用溝20が長手方向に沿って設けられており、通気路形成溝20の下側に位置し、長手方向に沿って伸びる突出部21が設けられている。突出部21は、他の部分に対して厚み寸法が大きく構成されており、図1や図3に示すように、組み立て後において、軒天井5の下側端部を覆うように構成されている。
【0034】
通気路形成溝20は、通気路を形成するために十分な深さと高さ寸法を有するように構成されており、本実施形態では、溝の深さD1が20mm、高さ寸法H2が35mm程度に構成されている。通気路形成溝20の上壁20aは、例えば、野縁4よりも高い位置となるようにすることが好ましい。
【0035】
なお、図10に示すように、図1の変形例として、通気路形成溝20の高さ寸法を小さくしても、十分な通路面積を確保することができる。なお、図10の例では縦野縁4aと横野縁4bにほぞ溝を設け、両者を嵌め込み構造としている。すなわち、複数設けられる縦野縁4aの間を通って、通路形成溝20が形成されるものであれば、野縁4の構成は特に問われるものではない。
【0036】
通気路形成溝20が十分な大きさを有するため、組み立て時においては、軒天井5の先端部5aは、通気路形成溝20内を画定するどの壁面22a,22b,22cにも接触せず、遊嵌された状態となっている。
【0037】
上記の通り、本実施形態にかかる板状本体は、各種溝及び突起が、いずれも長手方向に沿って伸びるように構成されている。したがって、押出成形による製造が容易であり、製造工程を簡略化することができる。
【0038】
図7は、本実施形態の鼻隠し材を構成するスペーサの構成を示す斜視図である。スペーサ3は、通気路形成溝20内に遊嵌された軒天井5の先端部5aを支持する部材であり、通気路形成溝20内に挿入されて固定される。スペーサ3は、板状の金属板を折り曲げて構成されており、スペーサ3の前面部34の上下端にそれぞれ、軒天井5の先端部5aを下側から支持する支持部31,通気路形成溝20の上壁に当接する上部当接部32,通気路形成溝20の下壁に当接する下部当接部33を備えている。本実施形態では、スペーサ3の幅寸法L2は、10から20mm程度としている。また、図7において、後述する横野縁4bのビス留めに用いるために、スペーサ3の前面部34に貫通孔を設けていてもよい。
【0039】
上部当接部32と下部当接部33は、通気路形成溝20の高さ寸法より若干広がるように構成されており、通気路形成溝20への取り付け時には、図6に示すように、それぞれ内側へ撓ませた状態とする。上部当接部32と下部当接部33は、通気路形成溝20で元の形状に戻ろうとして、通気路形成溝20内を画定するどの上壁22a及び下壁22cを押圧する。
【0040】
また、上部当接部32と下部当接部33には、それぞれ係合部の一例としての突起35が設けられている。上記の通り、板状本体2は、セメント系押出成形体で構成されているため、スペーサに設けられている突起35が上壁22a及び下壁22cへ食い込み、通気路形成溝20内に挿入されたスペーサ3が脱落するのを防止している。
【0041】
なお、スペーサ3の通気路形成溝20への係合構造としては、スペーサ側に突起を設けるほか、上部当接部32と下部当接部33側に突起を設け、当該突起にスペーサを係合させるように構成してもよい。
【0042】
通気路形成溝20内に挿入されるスペーサ3の間隔Pは、おおむね40〜50cm程度とすることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。また、取り付け位置は、例えば、図3に示すように垂木4の下方にすることで、鼻隠し材1のビス留めをしやすくすることができる。なお、このとき、すべての垂木4に対応させてスペーサを設ける必要はなく、軒天井5の先端部5aをしっかりと支持できる程度の数量を設ければ十分である。
【0043】
図8は、スペーサの変形例を示す図である。図8に示すスペーサ3aは、板状本体2と同じ材質で作られた中実の部材である。このスペーサ3aは、施工ごとに異なる軒天井5の突出量が変化した場合に、スペーサ3aの厚み寸法D2を調整することができるようにしたものである。すなわち、軒天井5の突出量が異なる場合、スペーサの前面34に軒天井の先端5aがちょうど突き当たるようにスペーサ3aを切削して適切な厚み寸法D2とすることができる。スペーサは小さい部材であり、取り回しが容易であるため、切削の作業が容易であり、取り付けの手間を軽減することができる。
【0044】
次に、上記鼻隠し材を用いた軒先構造の施工方法について説明する。本実施形態にかかる軒先構造は、上記の鼻隠し材1を用いることによって、鼻隠し材1の板状本体に設けられた通気路形成溝20により、屋根裏と外気とが通気できるように構成されており、また、軒天井5の先端5aはスペーサ3によってしっかりと支持されている。
【0045】
まず、鼻隠し材1の板状本体2を垂木6に固定する。上記のように垂木6及び野縁4には下地材7が取り付けられているものとする。図1に示す下地材7は、垂木6の先端面と縦野縁4aの上面に固定される。下地材7の固定にはビスが用いられ、下地材7の裏面7aから垂木6へ、及び、縦野縁4aの下面から下地材7の下面へ設けられたビスにより固定される。
【0046】
また、図3、図4に示す下地材7は、後工程で固定するように、垂木6と横野縁4bの先端面に固定するものであってもよい。なお、図3、図4に示す軒下構造においては、下地材7aは、図4に示すように貫通孔7bを備えているものであることが好ましい。また、例えば、野縁4の取り付け部7cは、例えば、垂木6の下方に位置する部分とすることができる。
【0047】
また、図3、図4に示す下地材7は、野縁4の取り付け部7cを別部材として構成してもよく、下地材の下端に、下地材7とは別に構成された取り付け部7cを取り付ける。この構成を採用することで、貫通孔7bを設けるなどの下地材7の加工を省略することができ、組み立て時の加工の手間を少なくすることができる。
【0048】
不要部分を切断して、取り付け位置の幅寸法に一致させた板状本体2を下地材7にビス留めにより固定する。この状態で、下端部が垂下された状態に固定された板状本体2の通路形成溝20にスペーサ3を挿入する。通路形成溝20に挿入されたスペーサ3は、突起35により板状本体2にしっかりと固定される。
【0049】
通路形成溝20内でのスペーサ3の取り付け箇所は、特に決められてはいないが、例えば、垂木が設けられている箇所ごとに設置することが好ましい。板天井材にスペーサ3を取り付けた状態を図9に示す。
【0050】
また、板状本体2の裏面に野縁4を取り付ける。野縁4は、図3に示す軒下構造では、下地材7の取り付け部7cにビス留めにより固定する。
【0051】
次いで、野縁4に軒天井5を取り付ける。この際、軒天井5の先端部分5aは、スペーサの支持部31に載置されるようにし、さらに、スペーサ3の前面部34に突き当てるように配置することにより、軒天井5を固定する際の仮固定が容易となる。
【0052】
上記のようにして構成された軒先構造においては、図1から図4に示すように、屋根裏と外気とを通気するための通気路11が形成される。上記の通気路11は、野縁4,軒天井5及び鼻隠し材1の通路形成溝20及び下地材7によって形成される。この通気路11において、軒天井5の下面側の開口12は、図1から4に示すように、突出部21の先端において、通路形成溝20の下端部と軒天井5の下面によって囲まれた領域となる。また、通路形成溝の側壁20bと軒天井5の先端5aとは接触していないため、矢印に示すように外気は、当該隙間を通って軒天井5の上面側へ移動し、屋根裏へと至る。この通気路11は、鼻隠し材1の突出部21が軒天井5とオーバーラップしているため、外部から雨水などが浸入しづらく、また、野縁を腐食させにくい形状となっている。また、外部から開口12が視認されにくくすることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の軒先構造によれば、鼻隠し材1に予め設けられた通路形成溝内に遊嵌される軒天井によって軒天井の上面側への外気の連通を実現すると共に、軒天井の先端をスペーサによって支持することにより、頑丈な軒先構造を実現することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、図11に示すように、野縁4を設けることなく天井材5を垂木6に直接取り付けるような軒下構造にも使用することができる。なお、この場合は、下地材7の高さ寸法を垂木6の高さ寸法よりも短くし、下地材7の下側に形成される空間を通って複数配置された垂木6の隙間から外気を通気させるように構成することが好ましい。
【0055】
また、上記実施例では、いずれも垂木に下地材を取り付けて、下地材に鼻隠し材を固定する構成であるが、鼻隠し材を垂木に直接取り付ける構造であってもよい。
【0056】
また、本発明の通気化粧部材は、上記実施形態の鼻隠し材にのみ限定されるものではなく、破風板などにも使用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 鼻隠し材
2 板状本体
3,3a スペーサ
4 野縁
5 軒天井
5a 軒天井先端
6 垂木
7,7a 下地材
8 野地板
9 屋根化粧材
10 水切り板
11 通気路
12 開口
20 通気路形成溝
21 突出部
22a 上壁
22b 側壁
22c 下壁
31 支持部
32 上部当接部
33 下部当接部
35 係止突起
100 軒先通気構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の軒先を装飾すると共に、屋根裏と外気との間の換気を行なう通気路が形成された軒先通気構造及び当該軒先通気構造に用いられる鼻隠しあるいは破風板等の通気化粧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軒天井の取り付けなどに関する軒先構造として、屋根裏の劣化防止や法上の要請から、通気構造を備えた軒先構造が求められている。通気構造を有する軒先構造としては、特許文献1や特許文献2に開示されているものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された軒先構造は、鼻隠し又は破風板として使用される化粧板部分の裏面に形成された凸部に、多数の換気口が設けられた換気材部分を嵌合させた状態で換気材部分に形成された軒天井係合用凹部を軒天井に嵌合させ、化粧板部分の裏面を下地材に当接させる。そして、スクリュー釘により、化粧板部分を下地材に固定することで軒先を構築する。
【0004】
また、特許文献2に記載された軒先構造は、垂木及び軒天井や野縁の先端に下地材を取り付け、軒天井野縁及び下地材の下面に通気胴縁を取り付けている。そして、通気胴縁に軒天井を固定することで、軒天井野縁及び下地材と軒天井との間に、通気胴縁の厚さ分の隙間を設けている。また、下地に固定されるあご付窯業系軒先カバー部材(以下、あご付カバー部材という)のあごの上面には、あご溝が形成されており、あごの上面と、軒天井の下面とが接触し、かつ、あご付カバー部材の裏面に軒天井野縁が当接しないように、あご付カバー部材を下地に取り付けている。これにより、軒天井の縁とあご付カバー部材の裏面のとの間に隙間が形成される。
【0005】
上記あご溝は、あごの基端から先端まで形成されており、あご付カバー部材の長手方向に沿って、一定間隔を置いて多数形成されている。よって、あご溝から軒天井の縁とあご付カバー部材との隙間を抜け、さらに、通気胴縁によってできた野縁との機転との隙間を通過する通路が形成され、この通路によって屋根裏と外気との換気が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−92303号公報
【特許文献2】特開2005−61103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された軒先構造は、屋根裏と外気の換気を行なうための通路を形成するために化粧板部分と換気材部分とに分けて、化粧材を構成するために、作業現場での組み立て作業を伴い、また、化粧材が大型化して取り付け作業も煩雑であった。また、特許文献2に記載された軒先構造においては、屋根裏と外気との換気を行なうための通路を形成するために、野縁と軒天井との間に間隔を設ける必要があるため、野縁に通気胴縁を取り付けなければならず、材料費や作業工程の増加を招く結果となっていた。
【0008】
また、特許文献2に記載された軒先構造においては、屋根裏と外気との換気を行なうための通路を形成するために、野縁と軒天井との間に間隔を設ける必要があるため、野縁に通気胴縁を取り付けなければならず、材料費や作業工程の増加を招く結果となっていた。さらに、あご付カバー部材のあご溝は野縁の延在方向に向かって伸びるように形成されており、あご付カバー部材の長手方向に並列されるため、あご付カバー部材の製造工程において、広く用いられている押し出し成形による製造が困難であるという問題がある。
【0009】
また、軒天井は、施工ごとに大きさが若干異なり、野縁からの突出量が変動する場合がある。この場合、上記の軒先構造においては、換気のための通路が狭く、軒天井の大きさによっては、通路の断面積が消防法上求められている一定以上の断面積を確保することが困難となる場合があった。この場合、一定以上の断面積を確保するために、化粧部材を切削するなどの工程が必要であり、作業の手間が煩雑であった。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、十分な大きさの通気路を確保することができ、組み立て作業の軽減を図ることができる軒先通気構造及び通気化粧部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の軒先通気構造及び通気化粧部材を提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、垂木と前記垂木の下方に位置する軒天井との隙間を隠蔽する化粧部材を用いて屋根裏と外気との通気路が設けられた軒先通気構造であって、
前記化粧部材は、前記軒天井の対向位置に前記軒天井の先端部を遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井の先端部に沿って伸びる通気路形成溝を備える化粧板本体と、
前記通気路形成溝に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝に遊嵌された前記軒天井の先端部を支持する支持部を有する複数のスペーサと、を備え、
前記通気路は、前記通気路形成溝の前記スペーサの非設置部分と前記軒天井先端部とで画定される空間により構成されていることを特徴とする、軒先通気構造を提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記スペーサは、前記通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部を備え、前記上部当接部及び下部当接部の少なくとも一方に前記通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部が設けられていることを特徴とする、第1態様の軒先通気構造を提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記スペーサは、板状部材で構成され、通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部が前記通気路形成溝の上面及び下面を押圧するように構成されていることを特徴とする、第1又は第2態様の軒先通気構造を提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、垂木と前記垂木の下方に位置する軒天井との隙間を隠蔽する通気化粧部材であって、
前記化粧部材は、前記軒天井の対向位置に前記軒天井の先端部を遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井の先端部に沿って伸びる通気路形成溝を備える化粧板本体と、
前記通気路形成溝に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝に遊嵌された前記軒天井の先端部を支持する支持部を有する複数のスペーサと、を備えることを特徴とする、通気化粧部材を提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記スペーサは、前記通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部を備え、前記上部当接部及び下部当接部の少なくとも一方に前記通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部が設けられていることを特徴とする、第4態様の通気化粧部材を提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、前記スペーサは、板状部材で構成され、通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部が前記通気路形成溝の上面及び下面を押圧するように構成されていることを特徴とする、第4又は第5態様の通気化粧部材を提供する。
【0018】
本発明の第7態様によれば、化粧板本体は、前記通気路形成溝の下面が通気路形成溝の上面よりも突出するように構成されていることを特徴とする、第4から第6態様のいずれか1つの通気化粧部材を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、十分に大きな通路形成溝を備えた化粧板本体を用いることで、軒天井が通路形成溝中に遊嵌するように配置されるので、通路形成溝を画定する壁面と軒天井先端が接触することがない。一方、通路形成溝中に所定の間隔を置いて設けられる複数のスペーサは、軒天井の先端部を支持するため、軒先構造としての強度を十分に維持することができる。したがって、通気路形成溝のスペーサの非設置部分と軒天井先端部とで画定される空間を通気路として利用することができる。
【0020】
よって、通路形成溝の大きさとスペーサの数に応じて通気路の断面積が決定されるため、十分な大きさの通気路を確保することができる。また、施工ごとに軒天井の大きさが異なる場合にも、スペーサの形状を調整することで、当該軒天井の寸法相違分を吸収することができ、組み立て作業を軽減することができる。
【0021】
また、スペーサに通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部を設けることで、スペーサの化粧板本体からの脱落を防止することができ、組み立て作業の手間を軽減することができる。
【0022】
また、スペーサを板状部材で構成し、通気路形成溝の上面及び下面に当接するように構成することによってもスペーサの化粧板本体からの脱落を防止することができる。
【0023】
本発明の第7態様によれば、通気路形成溝の下面が通気路形成溝の上面よりも突出するように構成することで、軒天井の下側に位置する部分が軒天井を被覆する面積が大きくなり、雨水などの侵入を防止し、さらに、通気用の通路を外部から視認されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態にかかる軒先構造の例を示す図である。
【図2】図1の軒先構造の一部断面斜視図である。
【図3】図1の軒先構造の変形例を示す図である。
【図4】図3の軒先構造の一部断面斜視図である。
【図5】図1及び図3の軒先構造に用いられる鼻隠し材の正面図である。
【図6】図5の鼻隠し材のVI-VI線における断面図である。
【図7】図5の鼻隠し材を構成するスペーサの構成を示す斜視図である。
【図8】スペーサの変形例を示す図である。
【図9】板天井材にスペーサを取り付けた状態を示す軒先構造の製造工程を示す図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる軒先構造の他の変形例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる軒先構造のさらなる他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る通気化粧部材及び当該通気化粧部材を用いた軒先構造について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態にかかる軒先構造の例を示す図である。図2は、図1の軒先構造の一部断面斜視図である。本実施形態にかかる軒先通気構造100においては、図1に示すように、本発明にかかる通気化粧部材を鼻隠し材1として用いている。本実施形態にかかる軒先通気構造100では、垂木6の上に野地板8を敷いて、瓦などの屋根化粧材9を載せ、屋根化粧材9の下端において、野地板8との間に、水切り板10の上辺が挟み込まれている。
【0027】
また、垂木6の下部には野縁4が設けられており、当該野縁4に軒天井5を固定する。野縁4は、所定の間隔をおいて互いに平行に設けられ、垂木6の延在方向に沿って伸びる縦野縁4aと、縦野縁4aを交差するように設けられる横野縁4bを備える。縦野縁4aは、おおむね30から60cmごとの間隔で設けられ、横野縁4bは縦野縁4aの固定のために縦野縁4aに対しておおむね直交するように設けられる。横野縁4bは図2に示すように縦野縁4aの中間部分に設けられていてもよいし、図4に示すように縦野縁4aの先端に設けられていてもよい。
【0028】
鼻隠し材1は、垂木6及び縦野縁4aに固定された下地材7を介して垂木6と野縁4の間を隠蔽するように固定されている。
【0029】
図1の第1実施形態例では、下地材7は、垂木6の先端面と縦野縁4aの上面に固定されているが、図3、図4に示すように垂木6及び横野縁4bの先端面に固定するように構成されていてもよい。なお、この変形例については、下地材7の構成を図1の例とは異ならせる必要がある。具体的な構成についての詳細は後述する。
【0030】
図5は本実施形態の軒先構造に用いられる鼻隠し材の正面図である。図6は、図5の鼻隠し材のVI-VI断面図である。鼻隠し材1は、長尺平板の板状本体2及び板状部材2の通路形成溝20に取り付けられるスペーサ3を備える。板状本体2は、例えば、セメント系押出成形体からなり、曲げ載荷に際して、好ましくは、引っ張り応力の作用に対しても、多重亀裂を生じて破壊する高い靱性を有するものが好適に使用される。さらに具体的には、鼻隠し材1として、繊維補強水硬性組成物の押出成形体を採用し、これにより曲げ載荷に際して、多重亀裂を生じて破壊する性質を持たせたものなどを使用可能である。
【0031】
板状本体2は、例えば、長手方向の寸法L1が3030mm、高さ方向(短手方向)寸法H1が150から300mm程度、厚み寸法T1が35mm程度の断面が略L字形の長尺平板上の部材である。板状本体2の大きさは、必ずしも上記サイズに限定されるものではなく、軒下構造の大きさに応じて適宜変更することができる。
【0032】
板状本体2の裏面側には、鼻隠し材1を図示しないビスにより下地材又は垂木4に固定する際のビス留め位置となるビス留め用突起22が、板状本体2の長手方向に沿って設けられている。
【0033】
また、板状本体の裏面側には、軒先構造の通気路を形成するための通気路形成用溝20が長手方向に沿って設けられており、通気路形成溝20の下側に位置し、長手方向に沿って伸びる突出部21が設けられている。突出部21は、他の部分に対して厚み寸法が大きく構成されており、図1や図3に示すように、組み立て後において、軒天井5の下側端部を覆うように構成されている。
【0034】
通気路形成溝20は、通気路を形成するために十分な深さと高さ寸法を有するように構成されており、本実施形態では、溝の深さD1が20mm、高さ寸法H2が35mm程度に構成されている。通気路形成溝20の上壁20aは、例えば、野縁4よりも高い位置となるようにすることが好ましい。
【0035】
なお、図10に示すように、図1の変形例として、通気路形成溝20の高さ寸法を小さくしても、十分な通路面積を確保することができる。なお、図10の例では縦野縁4aと横野縁4bにほぞ溝を設け、両者を嵌め込み構造としている。すなわち、複数設けられる縦野縁4aの間を通って、通路形成溝20が形成されるものであれば、野縁4の構成は特に問われるものではない。
【0036】
通気路形成溝20が十分な大きさを有するため、組み立て時においては、軒天井5の先端部5aは、通気路形成溝20内を画定するどの壁面22a,22b,22cにも接触せず、遊嵌された状態となっている。
【0037】
上記の通り、本実施形態にかかる板状本体は、各種溝及び突起が、いずれも長手方向に沿って伸びるように構成されている。したがって、押出成形による製造が容易であり、製造工程を簡略化することができる。
【0038】
図7は、本実施形態の鼻隠し材を構成するスペーサの構成を示す斜視図である。スペーサ3は、通気路形成溝20内に遊嵌された軒天井5の先端部5aを支持する部材であり、通気路形成溝20内に挿入されて固定される。スペーサ3は、板状の金属板を折り曲げて構成されており、スペーサ3の前面部34の上下端にそれぞれ、軒天井5の先端部5aを下側から支持する支持部31,通気路形成溝20の上壁に当接する上部当接部32,通気路形成溝20の下壁に当接する下部当接部33を備えている。本実施形態では、スペーサ3の幅寸法L2は、10から20mm程度としている。また、図7において、後述する横野縁4bのビス留めに用いるために、スペーサ3の前面部34に貫通孔を設けていてもよい。
【0039】
上部当接部32と下部当接部33は、通気路形成溝20の高さ寸法より若干広がるように構成されており、通気路形成溝20への取り付け時には、図6に示すように、それぞれ内側へ撓ませた状態とする。上部当接部32と下部当接部33は、通気路形成溝20で元の形状に戻ろうとして、通気路形成溝20内を画定するどの上壁22a及び下壁22cを押圧する。
【0040】
また、上部当接部32と下部当接部33には、それぞれ係合部の一例としての突起35が設けられている。上記の通り、板状本体2は、セメント系押出成形体で構成されているため、スペーサに設けられている突起35が上壁22a及び下壁22cへ食い込み、通気路形成溝20内に挿入されたスペーサ3が脱落するのを防止している。
【0041】
なお、スペーサ3の通気路形成溝20への係合構造としては、スペーサ側に突起を設けるほか、上部当接部32と下部当接部33側に突起を設け、当該突起にスペーサを係合させるように構成してもよい。
【0042】
通気路形成溝20内に挿入されるスペーサ3の間隔Pは、おおむね40〜50cm程度とすることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。また、取り付け位置は、例えば、図3に示すように垂木4の下方にすることで、鼻隠し材1のビス留めをしやすくすることができる。なお、このとき、すべての垂木4に対応させてスペーサを設ける必要はなく、軒天井5の先端部5aをしっかりと支持できる程度の数量を設ければ十分である。
【0043】
図8は、スペーサの変形例を示す図である。図8に示すスペーサ3aは、板状本体2と同じ材質で作られた中実の部材である。このスペーサ3aは、施工ごとに異なる軒天井5の突出量が変化した場合に、スペーサ3aの厚み寸法D2を調整することができるようにしたものである。すなわち、軒天井5の突出量が異なる場合、スペーサの前面34に軒天井の先端5aがちょうど突き当たるようにスペーサ3aを切削して適切な厚み寸法D2とすることができる。スペーサは小さい部材であり、取り回しが容易であるため、切削の作業が容易であり、取り付けの手間を軽減することができる。
【0044】
次に、上記鼻隠し材を用いた軒先構造の施工方法について説明する。本実施形態にかかる軒先構造は、上記の鼻隠し材1を用いることによって、鼻隠し材1の板状本体に設けられた通気路形成溝20により、屋根裏と外気とが通気できるように構成されており、また、軒天井5の先端5aはスペーサ3によってしっかりと支持されている。
【0045】
まず、鼻隠し材1の板状本体2を垂木6に固定する。上記のように垂木6及び野縁4には下地材7が取り付けられているものとする。図1に示す下地材7は、垂木6の先端面と縦野縁4aの上面に固定される。下地材7の固定にはビスが用いられ、下地材7の裏面7aから垂木6へ、及び、縦野縁4aの下面から下地材7の下面へ設けられたビスにより固定される。
【0046】
また、図3、図4に示す下地材7は、後工程で固定するように、垂木6と横野縁4bの先端面に固定するものであってもよい。なお、図3、図4に示す軒下構造においては、下地材7aは、図4に示すように貫通孔7bを備えているものであることが好ましい。また、例えば、野縁4の取り付け部7cは、例えば、垂木6の下方に位置する部分とすることができる。
【0047】
また、図3、図4に示す下地材7は、野縁4の取り付け部7cを別部材として構成してもよく、下地材の下端に、下地材7とは別に構成された取り付け部7cを取り付ける。この構成を採用することで、貫通孔7bを設けるなどの下地材7の加工を省略することができ、組み立て時の加工の手間を少なくすることができる。
【0048】
不要部分を切断して、取り付け位置の幅寸法に一致させた板状本体2を下地材7にビス留めにより固定する。この状態で、下端部が垂下された状態に固定された板状本体2の通路形成溝20にスペーサ3を挿入する。通路形成溝20に挿入されたスペーサ3は、突起35により板状本体2にしっかりと固定される。
【0049】
通路形成溝20内でのスペーサ3の取り付け箇所は、特に決められてはいないが、例えば、垂木が設けられている箇所ごとに設置することが好ましい。板天井材にスペーサ3を取り付けた状態を図9に示す。
【0050】
また、板状本体2の裏面に野縁4を取り付ける。野縁4は、図3に示す軒下構造では、下地材7の取り付け部7cにビス留めにより固定する。
【0051】
次いで、野縁4に軒天井5を取り付ける。この際、軒天井5の先端部分5aは、スペーサの支持部31に載置されるようにし、さらに、スペーサ3の前面部34に突き当てるように配置することにより、軒天井5を固定する際の仮固定が容易となる。
【0052】
上記のようにして構成された軒先構造においては、図1から図4に示すように、屋根裏と外気とを通気するための通気路11が形成される。上記の通気路11は、野縁4,軒天井5及び鼻隠し材1の通路形成溝20及び下地材7によって形成される。この通気路11において、軒天井5の下面側の開口12は、図1から4に示すように、突出部21の先端において、通路形成溝20の下端部と軒天井5の下面によって囲まれた領域となる。また、通路形成溝の側壁20bと軒天井5の先端5aとは接触していないため、矢印に示すように外気は、当該隙間を通って軒天井5の上面側へ移動し、屋根裏へと至る。この通気路11は、鼻隠し材1の突出部21が軒天井5とオーバーラップしているため、外部から雨水などが浸入しづらく、また、野縁を腐食させにくい形状となっている。また、外部から開口12が視認されにくくすることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の軒先構造によれば、鼻隠し材1に予め設けられた通路形成溝内に遊嵌される軒天井によって軒天井の上面側への外気の連通を実現すると共に、軒天井の先端をスペーサによって支持することにより、頑丈な軒先構造を実現することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、図11に示すように、野縁4を設けることなく天井材5を垂木6に直接取り付けるような軒下構造にも使用することができる。なお、この場合は、下地材7の高さ寸法を垂木6の高さ寸法よりも短くし、下地材7の下側に形成される空間を通って複数配置された垂木6の隙間から外気を通気させるように構成することが好ましい。
【0055】
また、上記実施例では、いずれも垂木に下地材を取り付けて、下地材に鼻隠し材を固定する構成であるが、鼻隠し材を垂木に直接取り付ける構造であってもよい。
【0056】
また、本発明の通気化粧部材は、上記実施形態の鼻隠し材にのみ限定されるものではなく、破風板などにも使用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 鼻隠し材
2 板状本体
3,3a スペーサ
4 野縁
5 軒天井
5a 軒天井先端
6 垂木
7,7a 下地材
8 野地板
9 屋根化粧材
10 水切り板
11 通気路
12 開口
20 通気路形成溝
21 突出部
22a 上壁
22b 側壁
22c 下壁
31 支持部
32 上部当接部
33 下部当接部
35 係止突起
100 軒先通気構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂木と前記垂木の下方に位置する軒天井との隙間を隠蔽する化粧部材を用いて屋根裏と外気との通気路が設けられた軒先通気構造であって、
前記化粧部材は、前記軒天井の対向位置に前記軒天井の先端部を遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井の先端部に沿って伸びる通気路形成溝を備える化粧板本体と、
前記通気路形成溝に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝に遊嵌された前記軒天井の先端部を支持する支持部を有する複数のスペーサと、を備え、
前記通気路は、前記通気路形成溝の前記スペーサの非設置部分と前記軒天井先端部とで画定される空間により構成されていることを特徴とする、軒先通気構造。
【請求項2】
前記スペーサは、前記通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部を備え、前記上部当接部及び下部当接部の少なくとも一方に前記通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の軒先通気構造。
【請求項3】
前記スペーサは、板状部材で構成され、通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部が前記通気路形成溝の上面及び下面を押圧するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の軒先通気構造。
【請求項4】
垂木と前記垂木の下方に位置する軒天井との隙間を隠蔽する通気化粧部材であって、
前記化粧部材は、前記軒天井の対向位置に前記軒天井の先端部を遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井の先端部に沿って伸びる通気路形成溝を備える化粧板本体と、
前記通気路形成溝に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝に遊嵌された前記軒天井の先端部を支持する支持部を有する複数のスペーサと、を備えることを特徴とする、通気化粧部材。
【請求項5】
前記スペーサは、前記通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部を備え、前記上部当接部及び下部当接部の少なくとも一方に前記通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の通気化粧部材。
【請求項6】
前記スペーサは、板状部材で構成され、通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部が前記通気路形成溝の上面及び下面を押圧するように構成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の通気化粧部材。
【請求項7】
化粧板本体は、前化粧板本体は、前記通気路形成溝の下面が通気路形成溝の上面よりも突出するように構成されていることを特徴とする、請求項4から6のいずれか1つに記載の通気化粧部材。
【請求項1】
垂木と前記垂木の下方に位置する軒天井との隙間を隠蔽する化粧部材を用いて屋根裏と外気との通気路が設けられた軒先通気構造であって、
前記化粧部材は、前記軒天井の対向位置に前記軒天井の先端部を遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井の先端部に沿って伸びる通気路形成溝を備える化粧板本体と、
前記通気路形成溝に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝に遊嵌された前記軒天井の先端部を支持する支持部を有する複数のスペーサと、を備え、
前記通気路は、前記通気路形成溝の前記スペーサの非設置部分と前記軒天井先端部とで画定される空間により構成されていることを特徴とする、軒先通気構造。
【請求項2】
前記スペーサは、前記通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部を備え、前記上部当接部及び下部当接部の少なくとも一方に前記通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の軒先通気構造。
【請求項3】
前記スペーサは、板状部材で構成され、通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部が前記通気路形成溝の上面及び下面を押圧するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の軒先通気構造。
【請求項4】
垂木と前記垂木の下方に位置する軒天井との隙間を隠蔽する通気化粧部材であって、
前記化粧部材は、前記軒天井の対向位置に前記軒天井の先端部を遊嵌可能な寸法に形成され、前記軒天井の先端部に沿って伸びる通気路形成溝を備える化粧板本体と、
前記通気路形成溝に挿入して間欠的に配置され、前記通気路形成溝に遊嵌された前記軒天井の先端部を支持する支持部を有する複数のスペーサと、を備えることを特徴とする、通気化粧部材。
【請求項5】
前記スペーサは、前記通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部を備え、前記上部当接部及び下部当接部の少なくとも一方に前記通気路形成溝の上面及び下面に係合する係合部が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の通気化粧部材。
【請求項6】
前記スペーサは、板状部材で構成され、通気路形成溝の上面及び下面に当接する上部当接部及び下部当接部が前記通気路形成溝の上面及び下面を押圧するように構成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の通気化粧部材。
【請求項7】
化粧板本体は、前化粧板本体は、前記通気路形成溝の下面が通気路形成溝の上面よりも突出するように構成されていることを特徴とする、請求項4から6のいずれか1つに記載の通気化粧部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−12763(P2012−12763A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147091(P2010−147091)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
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