説明

軟弱地盤の改良工法

【課題】地盤への載荷圧力を自由にコントロールできて、軟弱地盤に含まれる間隙水と空気とを効率よく、確実に排出することができる軟弱地盤の改良工法で、改良地盤の強度増加を図ることができ、しかも地盤改良後の地盤の支持力増加のための盛土に代わる残留沈下対策としても有効な軟弱地盤の改良工法を提供する。
【解決手段】改良地盤A内に多数の帯状緊張材31を打設し、次いで、前記改良地盤A上面に膨張可能な複数の袋状物32を配置すると共に、前記帯状緊張材31の上端と繋がる非伸縮性材料からなる支持部材33を前記複数の袋状物32上面に跨るように配置し、その後、前記複数の袋状物32を膨張させることにより、前記支持部材33と繋がる帯状緊張材31を緊張させ、該帯状緊張材31間で地盤Aを締め付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤への載荷圧力を自由にコントロールできて、軟弱地盤に含まれる間隙水と空気とを効率よく、確実に排出することができる軟弱地盤の改良工法であり、真空圧を利用した間隙水の強制排水による改良地盤の圧密沈下に加えて、大気圧を反力とする実荷重を改良地盤の深部まで加えることで圧密沈下を促進し、地盤の強度増加を図ることができ、しかも地盤改良後の地盤の支持力増加のための盛土に代わる残留沈下対策としても有効な軟弱地盤の改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤の改良工法としては、改良する軟弱地盤(以下改良地盤という)上面を気密シートで被覆して前記改良地盤中に真空圧を負荷して、前記改良地盤中に改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出すと共に、軟弱地盤上に盛土を施して盛土の圧密載荷重を負荷することで、軟弱地盤を硬質地盤へと改良するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、図6に示すように、改良地盤A中に所定の間隔をおいて鉛直ドレーン材1を打設し、次いで、この各鉛直ドレーン材1の上端部1aに接触するように水平ドレーン2を配置し、次いで、この水平ドレーン材2に、真空タンク4を介して真空ポンプ5に繋がる集水管3を接続し、さらに改良地盤A上面を前記鉛直ドレーン材1の上端部1a、水平ドレーン材2及び集水管3とともに気密シート6で被覆する。この後、前記集水管3に真空タンク4を介して接続する真空ポンプ5を稼働させるのである。
【0004】
これにより、真空ポンプ5からの真空圧は、水平ドレーン材2および鉛直ドレーン材1を介して改良地盤Aへと伝播し、鉛直ドレーン材1を中心にその周囲の地盤を減圧状態の領域(以下減圧領域という)とする。
【0005】
真空圧は、減圧領域となった鉛直ドレーン材1周りの地盤から、さらに外側周りの地盤へと伝播してゆき、この結果、鉛直ドレーン材1へと向かう地盤加圧(水圧、土圧)が発生する。
【0006】
この地盤加圧に従って、鉛直ドレーン材1周囲の地盤に含まれる間隙水は鉛直ドレーン材1に向かって吸い出され、鉛直ドレーン材1、水平ドレーン材2及び集水管3を排水経路として排水され、これに伴って鉛直ドレーン材1周囲の地盤のさらに外側周りの地盤も減圧領域となる。
【0007】
こうして、鉛直ドレーン材1を中心にしてその周囲の地盤に減圧領域が広がり、やがて改良地盤A全域が減圧領域となり、同時に鉛直ドレーン材1を中心にして圧密、強度増加が進行し、改良地盤A全域の圧密、強度増加が行われることになる。
【0008】
以上の如くして、硬質地盤へと改良がなされる一方で、気密シート6上に盛土7を施すことにより、該盛土7の圧密載荷重によって改良地盤Aの圧密脱水を行い、前述の圧力差による吸い出しと共働して、改良地盤Aの圧密沈下が促進されるのである。
【0009】
こうして改良された後の軟弱地盤上にはビルや工場、或いは道路などの構造物が構築されたりするが、これらの構造物を改良地盤上に構築することで、その構造物の荷重によって改良地盤の沈下が進行することから(残留沈下)、改良地盤には前記構造物の荷重以上の荷重(盛土)を載荷して、該改良地盤の支持力を増加させていた。
【0010】
また、本発明者は、上記出願に関連して、真空圧の伝播経路と改良地盤内からの間隙水の排水経路とを独立させることにより、より効果的な真空圧密が実現できる工法を提案している(特許文献2参照)。つまり、上記提案の工法は、改良地盤内からの間隙水と空気とを分離する排水タンクを含む独立した排水経路を前記改良地盤内に設け、前記排水タンク内の間隙水を強制的に改良地盤外へ排水するというものである。
【0011】
このようにして改良された後の地盤上にはビルや工場、或いは道路などの構造物が構築されるのである。ところが、これらの構造物を改良された地盤上に構築すると、その構造物の荷重によって地盤の沈下か進行することになる(残留沈下という)。このため、改良された地盤には、構築される構造物の荷重以上の荷重(盛土)を載荷して、該地盤の支持力を高める必要があった。
【0012】
ところが、改良地盤上への荷重を載荷するため盛土を施すためには、載荷の材料となる土砂の持ち込み、持ち出しに伴って多くの労力と費用を必要としていた。また、改良地盤上に構築する構造物の荷重に見合う荷重となる盛土を正確に施すことは難しく、改良地盤上に構築する構造物の荷重を大きく上回る必要以上の荷重となる盛土を施すこともあり、大変に不経済であった。
【0013】
また、例えば河川堤防のように、地盤の支持力増加が求められるにも拘わらず、盛土を施すことに規制があるような地盤の場合、その改良には、真空圧密による地盤改良を長期に亘り実施するなど、多くの時間と手間、費用を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3270968号掲載公報(請求項1および2、図7参照)
【特許文献2】特許第3704643号掲載公報(請求項1、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような技術的課題に鑑みなされたものであり、地盤への載荷圧力を自由にコントロールできて、軟弱地盤に含まれる間隙水と空気とを効率よく、確実に排出することができる軟弱地盤の改良工法であり、真空圧を利用した間隙水の強制排水による改良地盤の圧密沈下に加えて、大気圧を反力とする実荷重を改良地盤の深部まで加えることで圧密沈下を促進し、改良地盤の強度増加を図ることができ、しかも地盤改良後の地盤の支持力増加のための盛土に代わる残留沈下対策としても有効な軟弱地盤の改良工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、改良地盤上面を気密シートで覆い、該気密シート下に真空圧を負荷することで前記改良地盤に改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、これにより前記改良地盤中の間隙水を排水することで、前記改良地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、
前記改良地盤内に多数の帯状緊張材を打設し、次いで、前記改良地盤上面に膨張可能な1又は複数の袋状物を配置すると共に、前記帯状緊張材の上端と繋がる非伸縮性材料からなる支持部材を前記1又は複数の袋状物上面に跨るように配置し、その後、前記1又は複数の袋状物を膨張させることにより、前記支持部材と繋がる帯状緊張材を緊張させ、該帯状緊張材間で地盤を締め付けることを特徴とする軟弱地盤の改良工法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明の軟弱地盤の改良工法にあっては、改良地盤上面に配置した膨張可能な1又は複数の袋状物を膨張させることにより、該1又は複数の袋状物の上面に跨るように配置した非伸縮性材料よりなる支持部材に繋がり、改良地盤内に打設した多数の帯状緊張材を緊張させ、これにより該帯状緊張材間で地盤を締め付けるようになっている。この結果、真空圧を利用した間隙水の強制排水による改良地盤の圧密沈下に加えて、大気圧を反力とする実荷重を改良地盤の深部まで加えて圧密沈下を促進し、改良地盤の強度増加を図ることができるのである。
【0018】
また、本発明の軟弱地盤の改良工法にあっては、地盤改良後の地盤の支持力増加のための盛土に代えて残留沈下対策手段としても利用できるので、例えば河川堤防のように、地盤の支持力増加が求められるにも拘わらず、盛土を施すことに規制があるような地盤の改良には極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の改良工法の適用例を示した断面模式図。
【図2】同じく図1の平面図。
【図3】帯状緊張材の態様を示し、図3aには表面に多数の凸部を有するシートを示し、図3bには凹凸を有するシートを示し、図3cには多数の孔を有するシートを示し、図3dにはネットを示した。
【図4】本発明の改良工法の別の形態を示した断面模式図。
【図5】本発明の改良工法のさらに別の形態を示した断面模式図。
【図6】従来の改良工法の適用例を示した断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の軟弱地盤の改良工法を図面に示した一実施の形態に従って説明する。本発明の軟弱地盤の改良工法(以下、改良工法という)は、図1及び図2に示すように、気密シート16で改良地盤A上面を覆い、該気密シート16下に真空圧を負荷することで前記改良地盤Aに改良地盤周辺部Bと隔離された減圧領域を造り出す方法(以下、真空圧密工法という)をさらに改良したものである。
【0021】
この真空圧密工法は、鉛直ドレーン材を打設して改良地盤中に鉛直排水路を造成する工程と、鉛直ドレーン材に水平ドレーン材を接続する工程と、水平ドレーン材に集水管を接続する工程と、改良地盤上面を気密シートで覆う工程とを備えている。
【0022】
まず、図1及び図2に示すように、鉛直ドレーン材11を改良地盤A中に所定間隔に打設する。鉛直ドレーン材11は鉛直排水路を構成するものであり、地盤加圧の環境でも真空圧(減圧)の伝播、排水経路としての機能を確保でき、目詰まりせず、沈下による圧縮や減圧で潰れることがないものであれば、その構造、素材、大きさなどは任意である。図1及び図2に示す鉛直ドレーン材11には、長手方向に一定間隔に立てて並べた長尺な平板状の合成樹脂線材に同じく長尺な平板状の合成樹脂線材を直交方向に所定間隔に立てて並べて、これらの合成樹脂線材を交点で接合した合成樹脂ネットと、これを内包する不織布とからなる帯状の複合シートを用いた。この鉛直ドレーン材11にあっては、折れたり曲がったりしても、合成樹脂ネットと不織布とによって形成されている通水経路が確保されており、しかも合成樹脂ネット全体が不織布で覆われていて、目詰まりを生じ難いというメリットがある。
【0023】
鉛直ドレーン材11を打設する間隔は、負荷された真空圧による真空圧伝播の可能な範囲が望ましく、具体的にはおおよそ1m間隔である。この鉛直ドレーン材11をマンドレル(図示しない)に内挿した状態で改良地盤A中に貫入し、鉛直ドレーン材11を改良地盤A内に残したままマンドレル(図示しない)を引き上げることで該鉛直ドレーン材11を打設することができる。
【0024】
こうして鉛直ドレーン材11を改良地盤A中に所定の間隔をおいて打設することで、改良地盤A内には所定の間隔をおいて鉛直状の排水路が造成されることになり、各排水路間の改良地盤A中に含まれる水及び空気が鉛直ドレーン材11を排水経路として吸い上げられるようになっている。
【0025】
次いで、この鉛直ドレーン材11に水平ドレーン材12を接続する。鉛直ドレーン材11は、その上端部分11aが改良地盤Aの上面に突出するように打ち込まれており、この上端部分11aに水平ドレーン材12を接触するように平行状に配置するのである。水平ドレーン材12としては、水及び空気が該水平ドレーン12の長手方向(水平方向)へと移動できる通路としての機能を持つものならば、線状や帯状、面状のものなど何でもよいが、改良地盤A側からの水及び空気が該水平ドレーン材12内部へ侵入する口、例えば孔、スリットなどが、地盤中の砂や土砂などによって閉塞してしまい、水及び空気の水平ドレーン材12内部への侵入が困難となったり、同じく改良地盤A中の砂や土砂などによって通路が閉塞して水及び空気が移動できなかったりすることが少ない構造のものが好ましい。図1及び図2に示す形態では、前記鉛直ドレーン材11と同じ構造を持つもの(合成樹脂ネットとその表面を覆う不織布とからなる帯状の複合シート)を用いた。この場合、水及び空気は、合成樹脂ネットを覆う不織布側から侵入し、合成樹脂ネットと不織布との隙間、及び不織布の構成繊維相互間を通して移動するようになる。
【0026】
鉛直ドレーン材11に水平ドレーン材12を接続する形態としては、特に限定されず、単に改良地盤A上面に突出する鉛直ドレーン材11の上端部分11aに水平ドレーン材12を重ね置くだけでもよい。図1及び図2に示す例では、水平ドレーン材12を長さ方向に渡って二つ折りし、鉛直ドレーン材11の上端部分11aを挟み込むという方法を採用している。
【0027】
次いで、水平ドレーン材12の所要箇所に集水管13を接続する。集水管13は、管周面に多数の孔を設けた有孔管であり、この集水管13の一端側には真空タンク14を介して真空ポンプ15が接続されている。そして、真空ポンプ15からの真空圧が真空タンク14を介して集水管13へと伝達され、さらにはこの集水管13に繋がる水平ドレーン材12及び鉛直ドレーン材11を介して改良地盤Aへ真空圧が伝播するようになっている。
【0028】
水平ドレーン材12に集水管13を接続する形態としては、特に限定されず、水平ドレーン材12に集水管13が接触していればよい。図1及び図2に示す例では、水平ドレーン材12を集水管13に巻き付けて非接触状態とならないようにしている。
【0029】
次いで、改良地盤A上面を鉛直ドレーン材11の上端部、水平ドレーン材12及び集水管13と共に気密シート16で覆う。気密シート16としては、空気が透過できない様にできるものであるならば特に限定されず、例えば合成樹脂シート、特には合成樹脂フィルム表面に繊維基材をラミネートしてシート強度を高め、運搬時や施工時にピンホールが発生し難くしたものが望ましい。この気密シート16のシート端末を改良地盤の周辺部B内に埋め込み、改良地盤A上面を鉛直ドレーン材11の上端部、水平ドレーン材12及び集水管13と共に覆うのである。改良地盤A上面を気密シート16で覆うことにより、真空ポンプ15からの真空圧は、集水管13、水平ドレーン材12及び鉛直ドレーン材11を通じて改良地盤A内へと確実に伝播するようになり、より効率的な真空圧密を実現することができるのである。
【0030】
次いで、真空ポンプ15を稼働させることで、真空ポンプ15からの真空圧は、気密シート16によって空気の出入りが遮断された状態で、真空タンク14、集水管13、水平ドレーン材12及び鉛直ドレーン材11へと伝播し、鉛直ドレーン材11内を所定の真空圧( 気圧以下)とするようになっている。
【0031】
鉛直ドレーン材11内の真空圧は、鉛直ドレーン材11周囲の地盤Aへと伝播し、鉛直ドレーン材11を中心にその周囲の地盤Aを減圧状態の領域(以下減圧領域という)とする。真空圧は、減圧領域となった鉛直ドレーン材11周りの地盤Aから、さらにその周囲の地盤Aへと伝播してゆき、鉛直ドレーン材11周りの地盤Aへと向かう地盤加圧(水圧、土圧)が発生する。
【0032】
この地盤加圧に従って、鉛直ドレーン材11周囲の地盤Aに含まれる間隙水が鉛直ドレーン材11に向かって吸い出され、これに伴って鉛直ドレーン材11周囲の地盤Aの外側も減圧領域となる。こうして、鉛直ドレーン材11を中心にしてその周囲の地盤Aに減圧領域が広がり、やがて改良地盤A全域が減圧領域となり、同時に鉛直ドレーン材11を中心にして圧密、強度増加が進行し、改良地盤A全域の圧密、強度増加が行われるのである。
【0033】
また、図1及び図2に示す真空圧密工法では、上記方法による真空圧密に加え、以下の方法を採用している。すなわち改良地盤Aから鉛直ドレーン11を通して吸い出された間隙水を真空圧の伝播経路とは独立した排水経路を通って排水するようにしているのである。図1及び図2に示す例では、集水管13の下側の改良地盤A内にセパレータ20を介して排水タンク118を配置し、鉛直ドレーン材11及び水平ドレーン材12を通じて吸い出され、一旦集水管13内に入り込んだ改良地盤Aからの間隙水をセパレータ20によって空気と分離しつつ、集水管13下側の排水タンク18に重力に従って流れ込ませ、ここに貯留するのである。
【0034】
この排水タンク16内には排水ポンプ17が内蔵されており、排水タンク16内に貯留された間隙水を該排水タンク16に連結パイプ18を介して接続された排水管19を通じて改良地盤A外(真空タンク14)へと強制的に排水するのである。
【0035】
このように図1及び図2に示す真空圧密工法では、間隙水と空気とを分離する排水タンクを含む独立した排水経路を改良地盤内に設けて、前記排水タンク内の間隙水を強制的に改良地盤外へ排水するようにしたので、より効率よく地盤を改良することができるのである。
【0036】
さらに、本発明の改良工法では、上述の真空圧密工法による改良地盤の圧密沈下に加えて、図1〜図3に示すように、改良地盤A内に多数の帯状緊張材31を打設し、次いで、前記改良地盤A上面に膨張可能な1又は複数の袋状物32を配置すると共に、前記帯状緊張材31の上端と繋がる非伸縮性材料からなる支持部材33を前記1又は複数の袋状物32上面に跨るように配置し、その後、前記1又は複数の袋状物32を膨張させることにより、前記支持部材33と繋がる帯状緊張材31を緊張させ、該帯状緊張材31間で地盤を締め付け、これにより大気圧を反力とする実荷重を改良地盤の深部まで加えることで圧密沈下を促進するようにしているのである。尚、この改良工法を適用する場合、図1及び図2に示すように、帯状緊張材31、袋状物32及び支持部材33は、鉛直ドレーン材11の上端部、水平ドレーン材12及び集水管13と共に、改良地盤A上面を覆う気密シート16下に配置される。
【0037】
まず図1及び図2に示すように、多数の帯状緊張材31を改良地盤A中に所定の間隔をおいて打設する。帯状緊張材31は、1又は複数の袋状物32の膨張により緊張し、該帯状緊張材32間で改良地盤Aを締め付けるように作用するものである。この帯状緊張材31としては、1又は複数の袋状物32の膨張による引張力(改良地盤A上面方向への引き抜き力)に抗して改良地盤Aとの間で発生する摩擦力で打設位置に留まることができるよう改良地盤Aとの間での摩擦抵抗が大きい素材、構造を有するものが好ましい。具体的には、図3に示すように、多数の凸部を有する長尺な帯状の樹脂板或いは金属板(図3a)、多数の凹凸を有する長尺な帯状の樹脂板或いは金属板(図3b)、多数の孔を有する長尺な帯状の樹脂板或いは金属板(図3c)、長尺な帯状の樹脂ネット又は金網(図3d)、非伸張性又は難伸張性の長尺な帯状の繊維シートのいずれか、またはこれらの複合材からなるものを挙げることができる。
【0038】
帯状緊張材31の打設は、該帯状緊張材31をマンドレル(図示しない)に内挿した状態で改良地盤A中に貫入し、帯状緊張材31を改良地盤A内に残したままマンドレル(図示しない)を引き上げることで行うことができる。この際、帯状緊張材31は、その上端部分31aを支持部材33に固定できるように、上端部分11aが改良地盤Aの上面に突出するように打ち込む。図1及び図2の例では、帯状緊張材31として多数の凹凸を有する長尺な帯状の樹脂板を採用し、これを鉛直ドレーン材11と同様にマンドレルを用いて改良地盤A中に所定間隔に鉛直ドレーン材11と平行して打設した。
【0039】
また帯状緊張材31には、例えば長尺な帯状に設けた樹脂ネットを不織布や織物などの繊維シートで内包することで、排水経路としての機能と目詰まり防止機能とを確保した帯状緊張ドレーンを採用することもできる。この場合、該帯状緊張ドレーンが帯状緊張材31と鉛直ドレーン材11の2つの機能を有することになり、帯状緊張材31と鉛直ドレーン材11をそれぞれ別々に打設する必要が無く、一度の打設作業で鉛直排水路の造成と改良地盤Aを締め付ける帯状緊張材の設置ができ、きわめて効率的である。
【0040】
次いで、改良地盤A上面に改良地盤Aの規模により、1又は複数の袋状物32を配置する。図1及び図2に示すように、改良地盤A内に打設した隣り合う帯状緊張材31の位置に対応してそれら帯状緊張材31間に袋状物32を配置するのである。この袋状物32は、水などの液体や空気などの気体を圧力源として膨張するバルーンであり、膨張時の圧力や真空圧の載荷時に加わる圧力によっても容易に破裂しない程度の強度を備えたものであるならば、その素材や構造は特に限定されない。袋状物32の好ましい具体例としては、合成樹脂シート、或いは該合成樹脂シートに金網、ネット、ワイヤーなどの引張抵抗材料を一体化して強度を高めた複合シート、キャンバス地に樹脂をコーティングしたり、樹脂フィルムをラミネートして気密性を付与したものを素材とし、これを膨張時に球状、円盤状、葉巻状、板状となるように成形したものが好適である。
【0041】
次いで、1又は複数の袋状物32上面に跨るように支持部材33を配置し、該支持部材33の縁部に隣り合う帯状緊張材31の上端を固定する。これにより、袋状物32上面に配置した支持部材33を介して隣り合う帯状緊張材31が繋がり、隣り合う帯状緊張材31と支持部材33が袋状物32を取り囲むように逆U字状に配されることになる。
【0042】
支持部材33としては、袋状物32の膨張による引張力によっても容易に破断しない程度の非伸縮性を備えたものであるならば、その素材や構造は特に限定されない。支持部材33の好ましい具体例としては、非伸張性又は難伸張性の繊維シート、樹脂ネット、金網、樹脂板、金属板のいずれか、またはこれらの複合材を挙げることができる。図1及び2に示す例では、樹脂ネットを支持部材33として採用した。
【0043】
尚、本発明の改良工法には、支持部材33と帯状緊張材31とが一体に設けられているものを用いることもできる。図4に示す形態では、多数の凹凸を有する長尺な帯状の樹脂板40からなり、その両端部分40a、40cを帯状緊張材として作用する部分とし、中央部分40bを支持部材として作用する部分とするものを採用した。この場合、支持部材と帯状緊張材とを別々に取り扱う必要が無く、該改良工法に要する材料点数を大幅に削減できるというメリットがある。
【0044】
図4に示す形態は、例えばまず、支持部材と帯状緊張材とが一体をなす帯状の樹脂板40の一端40a(帯状緊張材として作用する部分)を改良地盤A中に打設する。次いで、改良地盤A上面に突出する樹脂板40に沿って袋状物32を配置し、次いで、樹脂板40の中央部分40b(支持部材として作用する部分)を該袋状物32を跨るように配置し、その後、樹脂板40の他端40c(帯状緊張材として作用する部分)を改良地盤A中に逆U字状となるように打設するという方法を採ることで造成することができる。
【0045】
尚、支持部材33と帯状緊張材31とが一体に設けられている形態としては、合成樹脂ネットと、これを内包する不織布とからなる長尺で帯状の複合シートなど、帯状緊張材31及び支持部材33として、さらにドレーンとしても機能するものを採用することもできる。
【0046】
次いで、1又は複数の袋状物32を膨張させるのである。これにより、膨張した袋状物32が袋状物32の上面に跨るように配置した支持部材33を押し上げ、これに繋がる多数の帯状緊張材31に該帯状緊張材31を改良地盤Aの上面方向に引っ張り上げる力が作用し、これに伴い帯状緊張材31が緊張し、該帯状緊張材31間で地盤を締め付けるようになる。この結果、大気圧を反力とする実荷重が改良地盤Aの深部(帯状緊張材31が打設される深さ位置)まで加わり、前述の真空圧密工法による圧密沈下をさらに促進し、改良地盤の強度増加を図ることができるのである。
【0047】
また、本発明の改良工法を適用することにより、例えば河川堤防のように、地盤の支持力増加が求められるにも拘わらず、盛土を施すことに規制があるような地盤を改良する場合、地盤改良後の地盤の支持力増加のための盛土に代わる残留沈下対策として用いることができるので、盛土を施さないでも、短期に改良地盤の強度増加を図ることができる。
【0048】
一方、図5に示すように、本発明の改良工法を適用するとき、気密シート16上に盛土34を施すこともできる。この場合、使用する材料の強度が許す範囲で、盛土荷重による反力も、帯状緊張材31の緊張力として改良地盤A内に伝達できる機構とすることができるので、図5中細矢印で示す通常の盛土の場合の応力分散に対して、図5中太矢印で示すように、応力分散を押さえることができ、この結果、盛土荷重による反力を帯状緊張材31を通じて改良地盤Aの深部(帯状緊張材31が打設される深さ位置)まで加えることができ、より高い圧密強度の増加を図ることができる。
【0049】
尚、図1〜図5に示す形態では、真空圧の負荷と袋状物の膨張による載荷圧の負荷とを同時に行う例を示したが、これに限らず、真空圧の負荷と袋状物の膨張による載荷圧の負荷とを交互に行うこともできる。
【0050】
尚、本発明は、上記例に限定されるものではなく、例えば鉛直ドレーン材、水平ドレーン材、気密シート、帯状緊張材、支持部材及び袋状物を、地盤改良後、埋め殺しとしたときに、自然に分解する生分解性樹脂などの生分解性材料から構成するなど、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
11 ・・・鉛直ドレーン材
12 ・・・水平ドレーン材
13 ・・・集水管
14 ・・・真空タンク
15 ・・・真空ポンプ
16 ・・・気密シート
31 ・・・帯状緊張材
32 ・・・袋状物
33 ・・・支持部材
34 ・・・盛土
40 ・・・樹脂板
A ・・・改良地盤
B ・・・周辺地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良する軟弱地盤(以下、改良地盤という)上面を気密シートで覆い、該気密シート下に真空圧を負荷することで前記改良地盤に改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、これにより前記改良地盤中の間隙水を排水することで、前記改良地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、
前記改良地盤内に多数の帯状緊張材を打設し、次いで、前記改良地盤上面に膨張可能な1又は複数の袋状物を配置すると共に、前記帯状緊張材の上端と繋がる非伸縮性材料からなる支持部材を前記1又は複数の袋状物上面に跨るように配置し、その後、前記1又は複数の袋状物を膨張させることにより、前記支持部材と繋がる帯状緊張材を緊張させ、該帯状緊張材間で地盤を締め付けることを特徴とする軟弱地盤の改良工法。
【請求項2】
帯状緊張材が、多数の凹凸又は孔を有する樹脂板或いは金属板、非伸張性又は難伸張性の繊維シート、樹脂ネット、金網のいずれか、またはこれらの複合材からなることを特徴とする請求項1記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項3】
帯状緊張材が鉛直ドレーン材としても機能する帯状緊張材ドレーンであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項4】
袋状物が、液体又は気体を圧力源として膨張する非通気性シートからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項5】
支持部材が、非伸張性又は難伸張性の繊維シート、樹脂ネット、金網、樹脂板、金属板のいずれか、またはこれらの複合材からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項6】
帯状緊張材と支持部材とが一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項7】
真空圧の負荷と1又は複数の袋状物の膨張による載荷圧の負荷とを同時に、又は交互に行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項8】
気密シート上に盛土を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84874(P2011−84874A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236510(P2009−236510)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(595107508)丸山工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】