説明

軟弱地盤の改良工法

【課題】軟弱地盤に含まれる間隙水と空気とを効率よく、確実に排出することができる軟弱地盤の改良工法であり、特には改良する軟弱地盤の深部まで効果的に圧密沈下を促進させることができる軟弱地盤の改良工法を提供する。
【解決手段】鉛直ドレーン11間にエアー注入管22を配置して改良地盤A内にエアーを注入させることにより、前記鉛直ドレーン11周りを中心に減圧された領域との間の圧力差を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤に含まれる間隙水と空気とを効率よく、確実に排出することができる軟弱地盤の改良工法に関し、特には改良する軟弱地盤の深部まで効果的に圧密沈下を促進させる軟弱地盤の改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤の改良工法としては、改良する軟弱地盤(以下改良地盤という)上面を気密シートで被覆して前記改良地盤中に真空圧を負荷して、前記改良地盤中に改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出すと共に、軟弱地盤上に盛土を施して盛土の圧密載荷重を負荷することで、軟弱地盤を硬質地盤へと改良するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、図6に示すように、改良地盤A中に所定の間隔をおいて鉛直ドレーン材1を打設し、次いで、この各鉛直ドレーン材1の上端部1aに接触するように水平ドレーン2を配置し、次いで、この水平ドレーン材2に、真空タンク4を介して真空ポンプ5に繋がる集水管3を接続し、さらに改良地盤A上面を前記鉛直ドレーン材1の上端部1a、水平ドレーン材2及び集水管3とともに気密シート6で被覆する。この後、前記集水管3に真空タンク4を介して接続する真空ポンプ5を稼働させるのである。
【0004】
これにより、真空ポンプ5からの真空圧は、水平ドレーン材2および鉛直ドレーン材1を介して改良地盤Aへと伝播し、鉛直ドレーン材1を中心にその周囲の地盤を減圧状態の領域(以下減圧領域という)とする。
【0005】
真空圧は、減圧領域となった鉛直ドレーン材1周りの地盤から、さらに外側周りの地盤へと伝播してゆき、この結果、鉛直ドレーン材1へと向かう地盤加圧(水圧、土圧)が発生する。
【0006】
この地盤加圧に従って、鉛直ドレーン材1周囲の地盤に含まれる間隙水は鉛直ドレーン材1に向かって吸い出され、鉛直ドレーン材1、水平ドレーン材2及び集水管3を排水経路として排水され、これに伴って鉛直ドレーン材1周囲の地盤のさらに外側周りの地盤も減圧領域となる。
【0007】
こうして、鉛直ドレーン材1を中心にしてその周囲の地盤に減圧領域が広がり、やがて改良地盤A全域が減圧領域となり、同時に鉛直ドレーン材1を中心にして圧密、強度増加が進行し、改良地盤A全域の圧密、強度増加が行われることになる。
【0008】
以上の如くして、硬質地盤へと改良がなされる一方で、気密シート6上に盛土7を施すことにより、該盛土7の圧密載荷重によって改良地盤Aの圧密脱水を行い、前述の圧力差による吸い出しと共働して改良地盤Aの圧密沈下が促進されるのである。
【0009】
また、本発明者は、上記出願に関連して、真空圧の伝播経路と改良地盤内からの間隙水の排水経路とを独立させることにより、より効果的な真空圧密が実現できる工法を提案している(特許文献2参照)。つまり、上記提案の工法は、改良地盤内からの間隙水と空気とを分離する排水タンクを含む独立した排水経路を前記改良地盤内に設け、前記排水タンク内の間隙水を強制的に改良地盤外へ排水するというものである。
【0010】
この改良工法によれば、改良地盤内からの間隙水が排水経路によって改良地盤外へ排水されるため、より効率的な地盤改良がなされるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3270968号掲載公報(請求項1および2、図7参照)
【特許文献2】特許第3704643号掲載公報(請求項1、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献1及び2に示す真空圧を利用した改良工法でも、軟弱地盤の深度が8mを超える箇所へは負圧が十分に伝播せず、このため、深部の圧密度の進行が遅れるという課題があった。
【0013】
本発明は、このような技術的課題に鑑みなされたものであり、軟弱地盤に含まれる間隙水と空気とを効率よく、確実に排出することができる軟弱地盤の改良工法であり、特には改良する軟弱地盤の深部まで効果的に圧密沈下を促進させることができる軟弱地盤の改良工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、改良地盤中に所定の間隔をおいて鉛直ドレーンを打設すると共に該改良地盤上面を気密シートで覆い、該気密シート下に真空圧を負荷することで前記改良地盤内に鉛直ドレーンを通して負圧を負荷して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、これにより前記改良地盤中の間隙水を排水して前記改良地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、
前記鉛直ドレーン間にエアー注入管を配置して前記改良地盤内にエアーを注入させることにより、前記鉛直ドレーン周りを中心に減圧された領域との間の圧力差を増大させることを特徴とする軟弱地盤の改良工法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の軟弱地盤の改良工法にあっては、鉛直ドレーン間にエアー注入管を配置して前記改良地盤内にエアーを注入させるようにしたので、エアー注入に伴う大気圧の作用が働き、改良地盤内の前記鉛直ドレーン周りを中心に減圧された領域とエアーが注入されたエアー注入管周りを中心とする領域との間の圧力差が大きくなり、これが鉛直ドレーンへと向かう地盤加圧をより高めることとなり、より効果的な圧密が実現することになる。また、間隙水の排水後は空気と置換される部分は不飽和化するので強度増加が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の改良工法の適用例を示した断面模式図。
【図2】本発明の改良工法の別の適用例を示した断面模式図。
【図3】同じく図2の平面図。
【図4】帯状緊張材の態様を示し、図4aには表面に多数の凸部を有するシートを示し、図4bには凹凸を有するシートを示し、図4cには多数の孔を有するシートを示し、図3dにはネットを示した。
【図5】図2に示す適用例のさらに別の形態を示した断面模式図。
【図6】従来の改良工法の適用例を示した断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の軟弱地盤の改良工法を図面に示した一実施の形態に従って説明する。本発明の軟弱地盤の改良工法(以下、改良工法という)は、図1に示すように、改良地盤A中に所定の間隔をおいて鉛直ドレーン11を打設すると共に該改良地盤A上面を気密シート14で覆い、該気密シート14下に真空圧を負荷することで前記改良地盤A内に鉛直ドレーン11を通して負圧を負荷して改良地盤周辺部Bと隔離された減圧領域を造り出す方法(以下、真空圧密工法という)をさらに改良したものである。
【0018】
この真空圧密工法は、鉛直ドレーン材11を打設して改良地盤A中に鉛直排水路を造成する工程と、鉛直ドレーン材11に水平ドレーン材12を接続する工程と、水平ドレーン材12に集水管13を接続する工程と、改良地盤A上面を気密シート14で覆う工程とを備えている。
【0019】
まず、図1に示すように、鉛直ドレーン材11を改良地盤A中に所定間隔に打設する。鉛直ドレーン材11は鉛直排水路を構成するものであり、地盤加圧の環境でも真空圧(減圧)の伝播、排水経路としての機能を確保でき、目詰まりせず、沈下による圧縮や減圧で潰れることがないものであれば、その構造、素材、大きさなどは任意である。図1に示す鉛直ドレーン材11には、長手方向に一定間隔に立てて並べた長尺な平板状の合成樹脂線材に同じく長尺な平板状の合成樹脂線材を直交方向に所定間隔に立てて並べて、これらの合成樹脂線材を交点で接合した合成樹脂ネットと、これを内包する不織布とからなる帯状の複合シートを用いた。この鉛直ドレーン材11にあっては、折れたり曲がったりしても、合成樹脂ネットと不織布とによって形成されている通水経路が確保されており、しかも合成樹脂ネット全体が不織布で覆われていて、目詰まりを生じ難いというメリットがある。
【0020】
鉛直ドレーン材11を打設する間隔は、負荷された真空圧による真空圧伝播の可能な範囲が望ましく、具体的にはおおよそ1m間隔である。この鉛直ドレーン材11をマンドレル(図示しない)に内挿した状態で改良地盤A中に貫入し、鉛直ドレーン材11を改良地盤A内に残したままマンドレル(図示しない)を引き上げることで該鉛直ドレーン材11を打設することができる。
【0021】
こうして鉛直ドレーン材11を改良地盤A中に所定の間隔をおいて打設することで、改良地盤A内には所定の間隔をおいて鉛直状の排水路が造成されることになり、各排水路間の改良地盤A中に含まれる水及び空気が鉛直ドレーン材11を排水経路として吸い上げられるようになっている。
【0022】
次いで、この鉛直ドレーン材11に水平ドレーン材12を接続する。鉛直ドレーン材11は、その上端部分11aが改良地盤Aの上面に突出するように打ち込まれており、この上端部分11aに水平ドレーン材12を接触するように平行状に配置するのである。水平ドレーン材12としては、水及び空気が該水平ドレーン12の長手方向(水平方向)へと移動できる通路としての機能を持つものならば、線状や帯状、面状のものなど何でもよいが、改良地盤A側からの水及び空気が該水平ドレーン材12内部へ侵入する口、例えば孔、スリットなどが、地盤中の砂や土砂などによって閉塞してしまい、水及び空気の水平ドレーン材12内部への侵入が困難となったり、同じく改良地盤A中の砂や土砂などによって通路が閉塞して水及び空気が移動できなかったりすることが少ない構造のものが好ましい。図1及び図2に示す形態では、前記鉛直ドレーン材11と同じ構造を持つもの(合成樹脂ネットとその表面を覆う不織布とからなる帯状の複合シート)を用いた。この場合、水及び空気は、合成樹脂ネットを覆う不織布側から侵入し、合成樹脂ネットと不織布との隙間、及び不織布の構成繊維相互間を通して移動するようになる。
【0023】
鉛直ドレーン材11に水平ドレーン材12を接続する形態としては、特に限定されず、単に改良地盤A上面に突出する鉛直ドレーン材11の上端部分11aに水平ドレーン材12を重ね置くだけでもよい。図1に示す例では、水平ドレーン材12を長さ方向に渡って二つ折りし、鉛直ドレーン材11の上端部分11aを挟み込むという方法を採用している。
【0024】
次いで、水平ドレーン材12の所要箇所に集水管13を接続する。集水管13は、管周面に多数の孔を設けた有孔管であり、この集水管13の一端側には真空タンク15を介して真空ポンプ16が接続されている。そして、真空ポンプ16からの真空圧が真空タンク15を介して集水管13へと伝達され、さらにはこの集水管13に繋がる水平ドレーン材12及び鉛直ドレーン材11を介して改良地盤Aへ真空圧が伝播するようになっている。
【0025】
水平ドレーン材12に集水管13を接続する形態としては、特に限定されず、水平ドレーン材12に集水管13が接触していればよい。図1に示す例では、水平ドレーン材12を集水管13に巻き付けて非接触状態とならないようにしている。
【0026】
次いで、改良地盤A上面を鉛直ドレーン材11の上端部、水平ドレーン材12及び集水管13と共に気密シート14で覆う。気密シート14としては、空気が透過できない様にできるものであるならば特に限定されず、例えば合成樹脂シート、特には合成樹脂フィルム表面に繊維基材をラミネートしてシート強度を高め、運搬時や施工時にピンホールが発生し難くしたものが望ましい。この気密シート14のシート端末を改良地盤の周辺部B内に埋め込み、改良地盤A上面を鉛直ドレーン材11の上端部、水平ドレーン材12及び集水管13と共に覆うのである。改良地盤A上面を気密シート14で覆うことにより、真空ポンプ16からの真空圧は、集水管13、水平ドレーン材12及び鉛直ドレーン材11を通じて改良地盤A内へと確実に伝播するようになり、より効率的な真空圧密を実現することができるのである。
【0027】
次いで、真空ポンプ16を稼働させることで、真空ポンプ16からの真空圧は、気密シート14によって空気の出入りが遮断された状態で、真空タンク15、集水管13、水平ドレーン材12及び鉛直ドレーン材11へと伝播し、鉛直ドレーン材11内を所定の真空圧とするようになっている。
【0028】
鉛直ドレーン材11内の真空圧は、鉛直ドレーン材11周囲の地盤Aへと伝播し、鉛直ドレーン材11を中心にその周囲の地盤Aを減圧状態の領域(以下減圧領域という)とする。真空圧は、減圧領域となった鉛直ドレーン材11周りの地盤Aから、さらにその周囲の地盤Aへと伝播してゆき、鉛直ドレーン材11周りの地盤Aへと向かう地盤加圧(水圧、土圧)が発生する。
【0029】
この地盤加圧に従って、鉛直ドレーン材11周囲の地盤Aに含まれる間隙水が鉛直ドレーン材11に向かって吸い出され、これに伴って鉛直ドレーン材11周囲の地盤Aの外側も減圧領域となる。こうして、鉛直ドレーン材11を中心にしてその周囲の地盤Aに減圧領域が広がり、やがて改良地盤A全域が減圧領域となり、同時に鉛直ドレーン材11を中心にして圧密、強度増加が進行し、改良地盤A全域の圧密、強度増加が行われるのである。
【0030】
また、図1に示す真空圧密工法では、上記方法による真空圧密に加え、以下の方法を採用している。すなわち改良地盤Aから鉛直ドレーン11を通して吸い出された間隙水を真空圧の伝播経路とは独立した排水経路を通って排水するようにしているのである。図1及び図2に示す例では、集水管13の下側の改良地盤A内にセパレータ17を介して排水タンク18を配置し、鉛直ドレーン材11及び水平ドレーン材12を通じて吸い出され、一旦集水管13内に入り込んだ改良地盤Aからの間隙水をセパレータ17によって空気と分離しつつ、集水管13下側の排水タンク18に重力に従って流れ込ませ、ここに貯留するのである。
【0031】
この排水タンク18内には排水ポンプ19が内蔵されており、排水タンク18内に貯留された間隙水を該排水タンク18に連結パイプ20を介して接続された排水管21を通じて改良地盤A外(真空タンク15)へと強制的に排水するのである。
【0032】
このように図1に示す真空圧密工法では、間隙水と空気とを分離する排水タンクを含む独立した排水経路を改良地盤内に設けて、前記排水タンク内の間隙水を強制的に改良地盤外へ排水するようにしたので、より効率よく地盤を改良することができるのである。
【0033】
また、図1に示す態様では、改良地盤A内に所定間隔に打設された鉛直ドレーン11間にエアー注入管22を配置している。エアー注入管22は、多数の孔を有するプラスチック間や鉄管などの有孔管であり、改良地盤A内に鉛直ドレーン11と平行して配置される。このエアー注入管22によって改良地盤内にエアーが注入されるようになっているのである。
【0034】
上述の真空圧密工法を改良地盤Aに適用したとき、改良地盤A内には鉛直ドレーン11周りを中心に減圧された減圧領域が形成され、この鉛直ドレーン11へと向かう地盤加圧(水圧、土圧)に従って、鉛直ドレーン材11周囲の地盤Aに含まれる間隙水が鉛直ドレーン材11に向かって吸い出されるのであるが、この鉛直ドレーン材11間に配されたエアー注入管22を通して改良地盤A内にエアーが注入されると、エアー注入に伴う大気圧の作用が働き、鉛直ドレーン1周りを中心に減圧された領域とエアーが注入されたエアー注入管22周りを中心とする領域との間の圧力差が大きくなる。この結果、鉛直ドレーン1へと向かう地盤加圧を高め、地盤内の間隙水の排水速度を速め、排水量を多くすることとなり、より効果的な圧密が実現することになるのである。
【0035】
図1に示す例では、エアー注入管22の上端部分には開閉弁23を介してブロア24が接続されている。つまり図1に示す形態では、エアー注入管22からのエアーの注入は、鉛直ドレーン1周りを中心に減圧された領域とエアーが注入されたエアー注入管22周りを中心とする領域との間に十分な圧力差を生じると思われる場合、前記開閉弁23を開いて前記エアー注入管22からエアーを改良地盤A内に注入を行うよう調整ができるようになっているのである。
【0036】
また、図1に示す例では、エアー注入管22の上端部分には開閉弁23を介してブロア24が接続されているので、エアー注入管22からのエアーの注入は、強制注入とすることもできる。
【0037】
次に、本発明の改良工法を上述の真空圧密工法に反力を利用して改良地盤の圧密沈下を促進する工法に適用した例について説明する。エアーを注入することにより、軟弱土は乾燥する。乾燥することで軟弱土の強度は増加することになる。しかし、土粒子間の間隙は真空圧及び水位低下に伴う自重圧密により減少するが空隙は残ってしまう。このため、この土粒子間に介在する空気を縮小させるために荷重が必要となる。以下の図2〜図5は土粒子間に介在する空気を縮小させるために反力や盛り土による荷重により地盤を加圧する例を示したものである。図2〜図4に示すように、改良地盤A内に鉛直ドレーン材11の上端部、水平ドレーン材12、集水管13及びエアー注入管22を配置すると共に多数の帯状緊張材31を打設し、次いで、前記改良地盤A上面に膨張可能な1又は複数の袋状物32を配置すると共に、前記帯状緊張材31の上端と繋がる非伸縮性材料からなる支持部材33を前記1又は複数の袋状物32上面に跨るように配置し、その後、前記1又は複数の袋状物32を膨張させることにより、前記支持部材33と繋がる帯状緊張材31を緊張させ、該帯状緊張材31間で地盤を締め付け、これにより大気圧を反力とする実荷重を改良地盤の深部まで加えることで圧密沈下を促進するようにしているのである。尚、この場合、帯状緊張材31、袋状物32及び支持部材33は、鉛直ドレーン材11の上端部、水平ドレーン材12及び集水管13と共に、改良地盤A上面を覆う気密シート16下に配置される。尚、鉛直ドレーン材11の上端部、水平ドレーン材12、集水管13及びエアー注入管22の配置形態は、図1に示すものと同じであるため、ここでの説明は割愛する。
【0038】
まず、図2及び図3に示すように、多数の帯状緊張材31を改良地盤A中に所定の間隔をおいて打設する。帯状緊張材31は、1又は複数の袋状物32の膨張により緊張し、該帯状緊張材32間で改良地盤Aを締め付けるように作用するものである。この帯状緊張材31としては、1又は複数の袋状物32の膨張による引張力(改良地盤A上面方向への引き抜き力)に抗して改良地盤Aとの間で発生する摩擦力で打設位置に留まることができるよう改良地盤Aとの間での摩擦抵抗が大きい素材、構造を有するものが好ましい。具体的には、図4に示すように、多数の凸部を有する長尺な帯状の樹脂板或いは金属板(図4a)、多数の凹凸を有する長尺な帯状の樹脂板或いは金属板(図4b)、多数の孔を有する長尺な帯状の樹脂板或いは金属板(図4c)、長尺な帯状の樹脂ネット又は金網(図3d)、非伸張性又は難伸張性の長尺な帯状の繊維シートのいずれか、またはこれらの複合材からなるものを挙げることができる。
【0039】
帯状緊張材31の打設は、該帯状緊張材31をマンドレル(図示しない)に内挿した状態で改良地盤A中に貫入し、帯状緊張材31を改良地盤A内に残したままマンドレル(図示しない)を引き上げることで行うことができる。この際、帯状緊張材31は、その上端部分31aを支持部材33に固定できるように、上端部分11aが改良地盤Aの上面に突出するように打ち込む。図2及び図3の例では、帯状緊張材31として多数の凹凸を有する長尺な帯状の樹脂板を採用し、これを鉛直ドレーン材11と同様にマンドレルを用いて改良地盤A中に所定間隔に鉛直ドレーン材11と平行して打設した。
【0040】
また帯状緊張材31には、例えば長尺な帯状に設けた樹脂ネットを不織布や織物などの繊維シートで内包することで、排水経路としての機能と目詰まり防止機能とを確保した帯状緊張ドレーンを採用することもできる。この場合、該帯状緊張ドレーンが帯状緊張材31と鉛直ドレーン材11の2つの機能を有することになり、帯状緊張材31と鉛直ドレーン材11をそれぞれ別々に打設する必要が無く、一度の打設作業で鉛直排水路の造成と改良地盤Aを締め付ける帯状緊張材の設置ができ、きわめて効率的である。
【0041】
次いで、改良地盤A上面に改良地盤Aの規模により、1又は複数の袋状物32を配置する。図2及び図3に示すように、改良地盤A内に打設した隣り合う帯状緊張材31の位置に対応してそれら帯状緊張材31間に袋状物32を配置するのである。この袋状物32は、水などの液体や空気などの気体を圧力源として膨張するバルーンであり、膨張時の圧力や真空圧の載荷時に加わる圧力によっても容易に破裂しない程度の強度を備えたものであるならば、その素材や構造は特に限定されない。袋状物32の好ましい具体例としては、合成樹脂シート、或いは該合成樹脂シートに金網、ネット、ワイヤーなどの引張抵抗材料を一体化して強度を高めた複合シート、キャンバス地に樹脂をコーティングしたり、樹脂フィルムをラミネートして気密性を付与したものを素材とし、これを膨張時に球状、円盤状、葉巻状、板状となるように成形したものが好適である。
【0042】
次いで、1又は複数の袋状物32上面に跨るように支持部材33を配置し、該支持部材33の縁部に隣り合う帯状緊張材31の上端を固定する。これにより、袋状物32上面に配置した支持部材33を介して隣り合う帯状緊張材31が繋がり、隣り合う帯状緊張材31と支持部材33が袋状物32を取り囲むように逆U字状に配されることになる。
【0043】
支持部材33としては、袋状物32の膨張による引張力によっても容易に破断しない程度の非伸縮性を備えたものであるならば、その素材や構造は特に限定されない。支持部材33の好ましい具体例としては、非伸張性又は難伸張性の繊維シート、樹脂ネット、金網、樹脂板、金属板のいずれか、またはこれらの複合材を挙げることができる。図2及び図3に示す例では、樹脂ネットを支持部材33として採用した。
【0044】
図4に示す形態は、例えばまず、支持部材と帯状緊張材とが一体をなす帯状の樹脂板40の一端40a(帯状緊張材として作用する部分)を改良地盤A中に打設する。次いで、改良地盤A上面に突出する樹脂板40に沿って袋状物32を配置し、次いで、樹脂板40の中央部分40b(支持部材として作用する部分)を該袋状物32を跨るように配置し、その後、樹脂板40の他端40c(帯状緊張材として作用する部分)を改良地盤A中に逆U字状となるように打設するという方法を採ることで造成することができる。
【0045】
尚、支持部材33と帯状緊張材31とが一体に設けられている形態とすることもでき、例えば、合成樹脂ネットとこれを内包する不織布とからなる長尺で帯状の複合シートなど、帯状緊張材31及び支持部材33としてさらにドレーンとしても機能するものを採用することもできる。
【0046】
次いで、1又は複数の袋状物32を膨張させるのである。これにより、膨張した袋状物32が袋状物32の上面に跨るように配置した支持部材33を押し上げ、これに繋がる多数の帯状緊張材31に該帯状緊張材31を改良地盤Aの上面方向に引っ張り上げる力が作用し、これに伴い帯状緊張材31が緊張し、該帯状緊張材31間で地盤を締め付けるようになる。この結果、大気圧を反力とする実荷重が改良地盤Aの深部(帯状緊張材31が打設される深さ位置)まで加わり、前述の真空圧密工法による圧密沈下をさらに促進し、改良地盤の強度増加を図ることができるのである。この例の場合、エアー注入に伴う大気圧の作用に真空圧密工法と反力による効果が期待でき、より効果的な地盤改良を行うことができる。
【0047】
また、図示の例を適用することにより、例えば河川堤防のように、地盤の支持力増加が求められるにも拘わらず、盛土を施すことに規制があるような地盤を改良する場合、地盤改良後の地盤の支持力増加のための盛土に代わる残留沈下対策として用いることができるので、盛土を施さないでも、短期に改良地盤の強度増加を図ることができる。
【0048】
図5は、本発明の改良工法を真空圧密工法に反力を利用しさらに盛土を施す工法に適用した例を示すものである。尚、この例では、盛土以外図1〜図4に示すものと同じであるため、ここでの説明は割愛する。図5に示すように、盛土34は気密シート16上に施す。この場合、使用する材料の強度が許す範囲で、盛土荷重による反力も、帯状緊張材31の緊張力として改良地盤A内に伝達できる機構とすることができるので、図5中細矢印で示す通常の盛土の場合の応力分散に対して、図5中太矢印で示すように、応力分散を押さえることができ、この結果、盛土荷重による反力を帯状緊張材31を通じて改良地盤Aの深部(帯状緊張材31が打設される深さ位置)まで加えることができ、エアーの注入による大気圧の作用と相俟ってより高い圧密強度の増加を図ることができる。
【0049】
尚、図2〜図5に示す形態では、真空圧の負荷と袋状物の膨張による載荷圧の負荷とを同時に行う例を示したが、これに限らず、真空圧の負荷と袋状物の膨張による載荷圧の負荷とを交互に行うこともできる。
【0050】
また、図1〜図5に示す形態において、エアー注入管22を通して改良地盤A内に目詰まり促進材を注入することもできる。目詰まり促進材としては、例えばベントナイト、木粉、水ガラスなどを挙げることができる。目詰まり促進材は、エアー注入管22を通して注入されるエアーと共に改良地盤A内に送り込まれることになる。上述したように、本発明の改良工法を適用し、改良地盤にエアーを注入することにより、軟弱土は乾燥する。乾燥することで軟弱土の強度は増加することになる。しかし、土粒子間の間隙は真空圧及び水位低下に伴う自重圧密により減少するが空隙は残る。エアー注入管22を通して改良地盤A内に送り込まれた目詰まり促進材は、この土粒子間内に進入し、その空隙を埋めることになる。水と接触した目詰まり促進材は膨潤し、その空隙部分は目詰まりを起こし、改良地盤A内のエアーの流路が変化することになり、流路拡大が期待できる。
【0051】
改良地盤A内におけるエアーの流路拡大に伴い、目詰まり領域の拡大と不飽和領域の拡大が連続して生じ、この結果、改良領域が拡大することになる。また、エアーの注入路では乾燥収縮が発生する場合があり、強度増加が期待できる。
【0052】
尚、本発明は、上記例に限定されるものではなく、例えば鉛直ドレーン材、水平ドレーン材、気密シート、帯状緊張材、支持部材及び袋状物を、地盤改良後、埋め殺しとしたときに、自然に分解する生分解性樹脂などの生分解性材料から構成するなど、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
11 ・・・鉛直ドレーン材
12 ・・・水平ドレーン材
13 ・・・集水管
14 ・・・真空タンク
15 ・・・真空ポンプ
16 ・・・気密シート
22 ・・・エアー注入管
31 ・・・帯状緊張材
32 ・・・袋状物
33 ・・・支持部材
34 ・・・盛土
40 ・・・樹脂板
A ・・・改良地盤
B ・・・周辺地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良する軟弱地盤(以下、改良地盤という)中に所定の間隔をおいて鉛直ドレーンを打設すると共に該改良地盤上面を気密シートで覆い、該気密シート下に真空圧を負荷することで前記改良地盤内に鉛直ドレーンを通して負圧を負荷して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、これにより前記改良地盤中の間隙水を排水して前記改良地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、
前記鉛直ドレーン間にエアー注入管を配置して前記改良地盤内にエアーを注入させることにより、前記鉛直ドレーン周りを中心に減圧された領域との間の圧力差を増大させることを特徴とする軟弱地盤の改良工法。
【請求項2】
エアー注入管の上端部に開閉弁を設け、改良地盤内の減圧状態に応じて前記開閉弁を開閉させて前記エアー注入管からのエアーの注入を行うことを特徴とする請求項1に記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項3】
エアー注入管の上端部にはブロアが接続されていて、エアーを改良地盤内に強制的に注入するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項4】
改良地盤内に多数の帯状緊張材を打設し、次いで、前記改良地盤上面に膨張可能な1又は複数の袋状物を配置すると共に、前記帯状緊張材の上端と繋がる非伸縮性材料からなる支持部材を前記1又は複数の袋状物上面に跨るように配置し、その後、前記1又は複数の袋状物を膨張させることにより、前記支持部材と繋がる帯状緊張材を緊張させ、該帯状緊張材間で地盤を締め付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項5】
帯状緊張材が、多数の凹凸又は孔を有する樹脂板或いは金属板、非伸張性又は難伸張性の繊維シート、樹脂ネット、金網のいずれか、またはこれらの複合材からなることを特徴とする請求項4記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項6】
帯状緊張材が鉛直ドレーン材としても機能する帯状緊張材ドレーンであることを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項7】
袋状物が、液体又は気体を圧力源として膨張する非通気性シートからなることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項8】
支持部材が、非伸張性又は難伸張性の繊維シート、樹脂ネット、金網、樹脂板、金属板のいずれか、またはこれらの複合材からなることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項9】
帯状緊張材と支持部材とが一体に設けられていることを特徴とする請求項4記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項10】
真空圧の負荷と1又は複数の袋状物の膨張による載荷圧の負荷とを同時に、又は交互に行うことを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項11】
気密シート上に盛土を行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項12】
エアー注入管を通して改良地盤内に目詰まり促進材を注入することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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