説明

軟性基板材の表面処理装置

【課題】第1に、処理室間での処理液の混じり合いが防止され、第2に、もって処理液の性能が維持され、第3に、しかもこれが、手作業を伴うことなく、効率面に優れて実現されると共に、第4に、回路の損傷を伴うこともなく実現される、軟性基板材の表面処理装置を提案する。
【解決手段】この表面処理装置1は、軟性基板の製造工程で使用され、軟性基板材Aをコンベヤ2にて水平搬送しつつ、処理室3,3'内で処理液Bにて表面処理する。コンベヤ2は、処理室3,3'間において、搬送する軟性基板材Aを前後傾斜Dさせ、もって付着した処理液Bをその処理室3,3'に戻すようになっている。すなわちコンベヤ2は、処理室3,3'間の間隔スペースCに凸状ローラー8を備えており、凸状ローラー8は、他の搬送ローラー9より、軸の高さレベルが高い設定や径寸法が大きい設定よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性基板材の表面処理装置に関する。例えば、フレキシブル基板の製造工程で使用され、その基板材を表面処理する表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
電子機器に用いられる回路基板は、軽量化,極薄化,高密度回路化の進展がめざましく、その硬軟についても、従来よりのリジット基板等の硬性基板に比し、フレキシブル基板等の軟性基板の進展,増加が著しい。
ところで、このような回路基板の製造工程では、表面処理装置が用いられており、その各処理室において、コンベヤにて水平搬送される基板材が、噴射される処理液にて表面処理されている。例えば、現像液,エッチング液,剥離液,水洗液等の処理液が噴射され、もって、現像,エッチング,剥離,洗浄等の表面処理が行われている。
【0003】
《従来技術》
さて、このような表面処理装置の処理室間では、搬送される基板材について、付着した処理液の混じり合い防止が、重要テーマとなっている。特に、上流側の処理室で噴射されて基板材に付着した処理液が、持ち出されて、下流側の処理室に持ち込まれないようにすることが、重要テーマとなっている。
そこで、この種従来例では、このような処理室間のコンベヤに、液切りローラーが介装されており、基板材を挟んで送る上下1対の液切りローラーにより、基板材に付着した処理液を除去し、もって処理液の混じり合い防止が図られていた。
【0004】
《先行技術文献情報》
このような液切りローラーとしては、例えば、次の特許文献1中に示されたものが挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特公平7−47421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような従来例については、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、軟性基板材を、上下の液切りローラー間に挟んで送ると、液切りローラーに吸い付き,引掛かり,巻付き,巻込まれてしまう事故が多発していた。もって、液切りローラーを、付着した処理液の除去用として使用することには、問題があった。
つまり、この種従来例で用いられている液切りローラーは、リジット基板材等の硬性基板材については、付着した処理液の除去用として適しており、処理室間での処理液の混じり合い防止用として使用されている。しかしながら、極薄で柔軟なフィルム状の軟性基板材については、使用に問題があった。
【0007】
《第2の問題点》
第2に、ところで、このような処理液の混じり合いが発生すると、各処理室の処理液の性能が低下する。
例えば、同一薬液(例えばエッチング液)の処理室相互間でも、異種の薬液(エッチング液と剥離液)の処理室間でも、薬液と水洗液の処理室間でも、水洗液の処理室相互間でも、このような処理液の混じり合いが発生すると、その処理液の性能が低下し、ライフ寿命が短くなる。
又、例えば水洗液中に薬液が多量に混じり合うと、事後の水洗液の排水に際して、浄化装置の負担が大きくなってしまう。
【0008】
《第3の問題点》
第3に、そこでこの種従来例では液切りローラーを使用しつつ、軟性基板材の巻付き等も防止する方法として、先行板を使用することが行われていた。
すなわち、軟性基板材の先端に、先行板,捨て板としてリジット板を、手作業で接着テープ等で貼り付けてから、コンベヤで搬送し液切りローラーを通した後、これを再び手作業で剥がすことも行われていた。
しかしながら、これでは手間がかかり面倒であり、作業性が低下し、生産効率が悪く、量産化の支障となる、等々の問題が指摘されていた。
【0009】
《第4の問題点》
第4に、軟性基板材を上下の液切りローラー間に挟んで送ると、その微細な高密度回路が損傷し易い、という問題が指摘されていた。つまり、製造された軟性基板の回路に傷跡が残り易くなり、信頼性の欠けるとの指摘もあった。
【0010】
《本発明について》
本発明の軟性基板材の表面処理装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、処理室間での処理液の混じり合いが防止され、第2に、もって処理液の性能が維持され、第3に、しかもこれが効率面に優れて実現され、第4に、回路の損傷を伴うこともなく実現される、軟性基板材の表面処理装置を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。請求項1については次のとおり。
請求項1の軟性基板材の表面処理装置は、軟性基板の製造工程で使用され、軟性基板材をコンベヤにて水平搬送しつつ、処理室内で処理液にて表面処理する。そして該コンベヤは、該処理室間において、搬送する該軟性基板材を前後傾斜させ、もって該軟性基板材に付着した該処理液を、その該処理室に戻すこと、を特徴とする。
請求項2については次のとおり。請求項2の表面処理装置は、請求項1において、該コンベヤは、該処理室間の間隔に凸状ローラーを備えている。そして該凸状ローラーは、他の搬送ローラーより、軸の高さレベルが高い設定や、径寸法が大きい設定よりなること、を特徴とする。
請求項3については次のとおり。請求項3の表面処理装置は、請求項2において、該処理室間で該コンベヤ上を搬送される該軟性基板材は、該凸状ローラーの位置では持ち上げられて高く、他の該搬送ローラーの位置では低く、前後傾斜している。
そして、この前後傾斜の下り傾斜に基づき、該軟性基板材の表面に付着した該処理液は、上流側の該処理室で噴射されたものは、上流側の該処理室の出口に向けて流下すると共に、下流側の該処理室で噴射されたものは、下流側の該処理室の入口に向けて流下する。
もって、上流側と下流側の該処理室間での該処理液の持ち出し持ち込みによる、該処理液の混じリ合いが防止されること、を特徴とする。
請求項4については次のとおり。請求項4の表面処理装置は、請求項3において、該凸状ローラーは、上流側の該処理室の出口付近に対応配設されると共に、下流側の該処理室の入口付近に対応配設されていること、を特徴とする。
請求項5については次のとおり。請求項5の表面処理装置は、請求項1,2,3,又は4において、該凸状ローラーは、その高さレベルが可変であると共に、該高さレベルを、該コンベヤの搬送速度に比例すべく調節可能であり、搬送速度が速いほど該高さレベルが高く設定されること、を特徴とする。
【0012】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)軟性基板材は、コンベヤにて水平搬送されつつ、表面処理装置の処理室において、処理液が噴射されて表面処理される。
(2)そして軟性基板材は、上流側の処理室から下流側の処理室へと、コンベヤにて搬送されて行く。
(3)さて、このように処理室間を搬送される軟性基板材の表面には、処理液が付着している。
(4)そこで、処理室間のコンベヤには凸状ローラーが配設されており、もって軟性基板材が前後傾斜せしめられる。
【0013】
(5)従って第1に、軟性基板材に付着していた処理液は、このような軟性基板材の前後傾斜に基づき、元の処理室に流下して戻される。もって、上流側と下流側の処理室間での処理液の持ち出し持ち込みによる、処理液の混じり合いが防止される。
第2に、このように処理液の混じり合いが防止されるので、処理液の性能が維持されるようになる。
第3に、しかもこれは、処理室間のコンベヤに凸状ローラーを配設することにより、簡単容易に手作業を要することもなく実現される。
第4に、更にこれは、軟性基板材を前後傾斜させることにより実現されるので、その高密度回路を損傷することがない。
(6)さてそこで、本発明の軟性基板材の表面処理装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0014】
《第1の効果》
第1に、処理室間での処理液の混じり合いが、防止される。すなわち、本発明の軟性基板材の表面処理装置では、軟性基板材は、処理室間において凸状ローラーにより前後傾斜せしめられる。
そこで、軟性基板材に付着した処理液は元の処理室に戻され、もって、処理室間での持ち出し持ち込みによる処理液の混じり合いが、確実に防止される。
そしてこれは、傾斜方式により実現され、前述したこの種従来例の液切りローラーを用いた液切り方式のように、軟性基板材の巻付き等の事故を伴う虞もなく、安定的に実現される。
【0015】
《第2の効果》
第2に、もって処理液の性能が維持される。すなわち、本発明の軟性基板材の表面処理装置では、このように、処理室間での処理液の混じり合いが防止される。
そこで、各処理室において、処理液の性能低下が回避され、もって薬液のライフ寿命を、この種従来例の3倍以上接続させることが可能となった。水洗液については、薬液との混じり合いが防止されるので、事後の水洗液の排水に際し、浄化装置の負担が大幅に低減されるようになる。
【0016】
《第3の効果》
第3に、しかもこれは、効率面に優れて実現される。すなわち、本発明の軟性基板材の表面処理装置では、傾斜方式より、処理液の混じり合いが簡単容易に防止される。
そして、この種従来例のように、液切り方式での巻付き事故等を防止すべく、先行板を使用する必要もなくなるので、その分だけ手間が省け、作業性が向上し、量産化が可能となる等、生産効率面に優れている。
【0017】
《第4の効果》
第4に、更にこれは、回路の損傷を伴うことなく実現される。すなわち、本発明の軟性基板材の表面処理装置は、傾斜方式よりなり、この種従来例の液切りローラーを用いた液切り方式のように、回路が損傷し易く製造された軟性基板の回路に傷跡が残るようなことはなく、信頼性が向上し、生産歩留まりが大幅に改善される。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
《図面について》
以下、本発明を、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1,図2は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして図1は、全体の側面説明図である。図2は、要部の側面説明図であり、(1)図は第1例を、(2)図は第2例を、(3)図は第3例を、(4)図は第4例を、(5)図は第5例を示す。
【0019】
《回路基板等について》
本発明の軟性基板材Aの表面処理装置1は、軟性基板の製造工程で使用される。そこで、まず回路基板について説明しておく。
電子機器に使用されるプリント配線基板等の回路基板は、昨今、軽量化,極薄化,高密度回路化,多層化等の進展がまざましい。そこで、回路基板の硬軟についても、従来よりの硬性基板に比し、最近は軟性基板の進展,増加が著しい状況にある。
硬性基板の代表例であるガラスクロス入りのリジット基板は、肉厚が例えば100μm程度であるのに対し、軟性基板の代表例であるポリイミド樹脂製のフレキシブル基板は、肉厚が例えば60μm程度であり、極薄で柔軟なフィルム状をなす。
そして、このような回路基板は、例えば次の製造工程を辿ることにより、製造されている。すなわち、銅張り積層板よりなる基板材の外表面に、→感光性レジストを、膜状に塗布又は張り付けてから、→回路のネガフィルムを当てて、露光した後、→回路形成部分以外のレジストを、現像により溶解除去し、→回路形成部分以外の銅箔を、エッチングにより溶解除去してから、→回路形成部分のレジストを、剥膜除去することにより、→基板材の外表面に、銅箔にて回路が形成され、→もって、回路基板が製造される。
回路基板等は、このようになっている。
【0020】
《表面処理装置1について》
そして表面処理装置1は、上述した製造工程で使用され、基板材である軟性基板材Aを、コンベヤ2にて連続的に水平搬送しつつ、処理室3,3'内で処理液Bにて表面処理する。
このような表面処理装置1について、更に詳述する。表面処理装置1は、回路基板である軟性基板の製造工程中、例えば現像工程,エッチング工程,剥膜工程,洗浄工程,乾燥工程等において、現像装置,エッチング装置,剥離装置,水洗装置,又は水切り乾燥装置として使用される。
そして、このような各表面処理装置1のそれぞれの処理室3,3'(1室のこともあるが、複数室のことも多い)内において、コンベヤ2にて水平搬送される軟性基板材Aに対し、スプレーノズル4から例えば現像液,エッチング液,剥離液,又は水洗液等の処理液Bが噴射され、もって軟性基板材Aが薬液処理,洗浄処理等、表面処理される。なお、水切り乾燥装置の処理室3,3'では、乾燥した温風エアーが、エアーノズルから吹き付けられる。
処理液Bは、液槽5からポンプ6や配管7を介して、各スプレーノズル4に圧送され、もって軟性基板材Aに噴射される。そして、軟性基板材Aを表面処理した後、液槽5に流下,回収され、事後も循環使用される。なお図示例において、各スプレーノズル4は軟性基板材Aの真上に配設されているが、これに加え真下にも配設される場合もある。
表面処理装置1は、このようになっている。
【0021】
《本発明について》
以下、本発明について説明する。軟性基板材Aは、各表面処理装置1の処理室3,3'間を、コンベヤ2にて連続的に搬送される。そしてその際、処理室3,3'間を接続するコンベヤ2は、処理室3,3'間の間隔スペースCにおいて、凸状ローラー8を備えており、もって搬送する軟性基板材Aを、前後の搬送方向に沿って前後傾斜Dさせることにより、軟性基板材Aに付着した処理液Bを、その処理室3,3'に戻すようになっている。
なお、コンベヤ2の搬送ローラー9や凸状ローラー8としては、横幅の薄いホイールが代表的に使用されるが、横幅の広いストレートローラーを使用することも可能である。ホイールの場合は、左右の幅方向に相互間隔を置きつつ多数個が1セットで配設されると共に、ホイールの搬送ローラー9は、前後の搬送方向に多数セット配設される。
【0022】
このような処理室3,3'間のコンベヤ2について、更に詳述する。まず、処理室3,3'間の間隔スペースCにおいて、コンベヤ2上を搬送される軟性基板材Aは、凸状ローラー8の位置では持ち上げられて高く、他の水平搬送用の搬送ローラー9の位置では低く、前後傾斜Dする。
そこで、上流側の処理室3(図面上では左側)で噴射されて、軟性基板材Aの表面に付着していた処理液B、つまり付着したまま処理室3の出口10から間隔スペースCに搬出されてきた処理液Bは、軟性基板材Aの前後傾斜Dの上流側に向けた下り傾斜に基づき、処理室3の出口10に向けて、軟性基板材Aに沿って流下する。そして、その処理室3の液槽5に回収される。
更に、下流側の処理室3'(図面上では右側)で噴射されて、軟性基板材Aの表面に付着した処理液B、つまり処理室3'の入口11から上流に溢れ出た処理液Bは、軟性基板材Aの前後傾斜Dの下流側に向けた下り傾斜に基づき、処理室3'の入口11に向けて、軟性基板材Aに沿って流下する。そして、その処理室3'の液槽5に回収される。
本発明は、概略このようになっている。
【0023】
《各種態様について》
次に、本発明の凸状ローラー8の各種態様について説明する。まず、図1の(1)図中に示した凸状ローラー8は、ホイールよりなり(以下他の例についても同様)、間隔スペースC中央に1セット(左右の幅方向に多数個)配設されている。
そして、この凸状ローラー8は、その径寸法が、他のホイール製(以下他の例についても同様)の搬送ローラー9と、同一径設定よりなると共に、その軸の高さレベルが、他の搬送ローラー9よりは高く設定されている。
図2の(1)図中に示した凸状ローラー8は、間隔スペースC中央に1セット配設されており、径寸法が、他の搬送ローラー9より大きい設定よりなると共に、軸の高さレベルが、他の搬送ローラー9と同一に揃えられている。
図2の(2)図中に示した凸状ローラー8は、間隔スペースC中央に1セット配設されており、径寸法が、他の搬送ローラー9より大きい設定よりなると共に、軸の高さレベルが、他の搬送ローラー9より高く設定されている。
【0024】
図2の(3)図中に示した凸状ローラー8は、間隔スペースC中央部に3セット1組で配設されている。そして中央の1セットが、図2の(2)図のものと同一設定よりなると共に、前後の両セットが、図1のものと同一設定よりなっており、中央の1セットは、前後の両セットより、ローラー頂面が高く設定されている。
図2の(4)図中に示した凸状ローラー8は、間隔スペースC全体に多数配設されており、径寸法が、他の搬送ローラー9と同一径設定よりなると共に、軸の高さレベルが、間隔スペースCの中央のものが最も高く、前後のものほど徐々に低く設定されている。
図2の(5)図中に示した凸状ローラー8は、間隔スペースC内の上流部と下流部とに配設されており、それぞれが、図1のものと同一設定よりなっている。そして上流部のものは、上流側の処理室3の出口10付近に対応配設され、下流部のものは、下流側の処理室3'の入口11付近に対応配設されている。
この各図示例のように、凸状ローラー8は、他の搬送ローラー9より軸の高さレベルが高い設定や、径寸法が大きい設定よりなり、もって搬送する軟性基板材Aを前後傾斜Dさせるが、図示例以外にも各種態様のものが可能である。勿論、前後傾斜Dの傾斜勾配についても、より急勾配のものや緩い勾配のものに、軟性基板材Aの搬送速度に対応して、自在に設定される。
【0025】
更に、凸状ローラー8については、次の構成も考えられる。すなわち、その高さレベルが可変であると共に、高さレベルを、コンベヤ2の搬送速度に比例すべく調節可能とし、もって搬送速度が速いほど、高さレベルを高く設定することが考えられる。
すなわち、凸状ローラー8に上下動機構(図示せず)を付設し、もってコンベヤ2の搬送ローラー9による軟性基板材Aの搬送速度に対応して、凸状ローラー8を上下動可能とする。そして、搬送速度が速いほど、凸状ローラー8の高さレベルを高く設定することにより、軟性基板材Aの前後傾斜Dをより急勾配とする。これにより、付着した処理液Bの流下速度がより速くなり、処理液Bの処理室3,3'への戻し,回収が、よりスムーズとなる利点がある。
なお図1中、12は戻し板である。この戻し板12は、間隔スペースCのコンベヤ2下方に配設され、中央が高く前後に低く傾斜しており、コンベヤ2にて搬送される軟性基板材Aに付着していた処理液Bが、下に落下した際、これを処理室3,3'に向け流下させて戻すべく機能する。
凸状ローラー8は、このように各種態様のものが考えられる。
【0026】
《作用等》
本発明の軟性基板材Aの表面処理装置1は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)軟性基板材Aは、コンベヤ2にて水平搬送されつつ、各表面処理装置1のそれぞれの処理室3,3'において、順次、処理液Aが噴射されて表面処理される。
【0027】
(2)そして軟性基板材Aは、上流側の処理室3から下流側の処理室3'へと、コンベヤ2にて搬送されつつ、処理室3,3'間の間隔スペースCを通過して、受け渡される。
【0028】
(3)さて、このように処理室3,3'間を搬送される軟性基板材Aには、処理液Bが付着している。
すなわち、上流側の処理室3の出口10から間隔スペースCへと搬出された軟性基板材Aの表面には、その処理室3内で噴射された処理液Bが付着している(図1,図2の(1)図,(2)図,(5)図等を参照)。更には、下流側の処理室3'へと搬入されつつある軟性基板材Aには、その処理室3'内で噴射される処理液Bが、入口11から溢れ出て付着することも考えられる(図2の(3)図,(4)図を参照)。
【0029】
(4)そこで、この表面処理装置1では、処理室3,3'間の間隔スペースCのコンベヤ2に、凸状ローラー8が配設されている。そこで、間隔スペースCを通過する軟性基板材Aは、この凸状ローラー8にて前後傾斜Dせしめられる。
【0030】
(5)従って、この表面処理装置1によると、次の第1〜第4のようになる。
第1に、軟性基板材Aの表面に付着していた処理液Aは、凸状ローラー8による軟性基板材Aの前後傾斜Dの下り傾斜に基づき、元の処理室3,3'に戻される。
すなわち、上流側の処理室3'で付着した処理液Aは、間隔スペースC側からその処理室3側へ向け、軟性基板材Aの表面を流下,回収される。更に、下流側の処理室3'から付着する処理液Aも、その処理室3'側へ向け、軟性基板材Aの表面を流下,回収されるようになる。
もって、上流側と下流側の処理室3,3'間において、処理液Aの持ち出し持ち込みによる混じり合いが、防止される。
【0031】
第2に、処理室3,3'間での処理液Aの混じり合いが防止されるので、各処理室3,3'の処理液Aの性能が維持される。
例えば、両処理室3,3'の処理液Aが異種の場合(例えば、エッチング液と剥離液の場合、エッチング液と水洗液の場合)は、勿論のこと、両処理室3,3'の処理液Aが同種の場合(例えば、共にエッチング液の場合、共に水洗液の場合)も、処理液A間の混じり合いは、その性能低下の要因となるが、このような混じり合い,性能低下は、防止される。
なお、上流側の処理室3が洗浄用で、下流側の処理室3'が水切り乾燥用の場合は、処理液Aである洗浄液が、水切り乾燥用の処理室3'に付着して持ち込まれなくなり、水切り乾燥が促進されるという利点がある。
【0032】
第3に、しかもこれらは、処理室3,3'間の間隔スペースCのコンベヤ2に、凸状ローラー8を配設することにより、簡単な構成により容易に実現される。又、手作業を要することなく自動的に実現される。
【0033】
第4に、更にこれらは、軟性基板材Aの表面の微細な高密度回路を、損傷することなく実現される。すなわち、凸状ローラー8にて軟性基板材Aを前後傾斜Dさせる方式よりなるので、軟性基板材Aを挟み込むことがなく、形成される回路を損傷する虞はない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る軟性基板材の表面処理装置について、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、全体の側面説明図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、要部の側面説明図であり、(1)図は第1例を、(2)図は第2例を、(3)図は第3例を、(4)図は第4例を、(5)図は第5例を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 表面処理装置
2 コンベヤ
3 処理室
3' 処理室
4 スプレーノズル
5 液槽
6 ポンプ
7 配管
8 凸状ローラー
9 搬送ローラー
10 出口
11 入口
12 戻し板
A 軟性基板材
B 処理液
C 間隔スペース
D 前後傾斜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟性基板の製造工程で使用され、軟性基板材をコンベヤにて水平搬送しつつ、処理室内で処理液にて表面処理する、表面処理装置において、
該コンベヤは、該処理室間において、搬送する該軟性基板材を前後傾斜させ、もって該軟性基板材に付着した該処理液を、その該処理室に戻すこと、を特徴とする軟性基板材の表面処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載した表面処理装置において、該コンベヤは、該処理室間の間隔に凸状ローラーを備えており、
該凸状ローラーは、他の搬送ローラーより、軸の高さレベルが高い設定や、径寸法が大きい設定よりなること、を特徴とする軟性基板材の表面処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載した表面処理装置において、該処理室間で該コンベヤ上を搬送される該軟性基板材は、該凸状ローラーの位置では持ち上げられて高く、他の該搬送ローラーの位置では低く、前後傾斜しており、
この前後傾斜の下り傾斜に基づき、該軟性基板材の表面に付着した該処理液は、上流側の該処理室で噴射されたものは、上流側の該処理室の出口に向けて流下すると共に、下流側の該処理室で噴射されたものは、下流側の該処理室の入口に向けて流下し、
もって、上流側と下流側の該処理室間での該処理液の持ち出し持ち込みによる、該処理液の混じリ合いが防止されること、を特徴とする軟性基板材の表面処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載した表面処理装置において、該凸状ローラーは、上流側の該処理室の出口付近に対応配設されると共に、下流側の該処理室の入口付近に対応配設されていること、を特徴とする軟性基板材の表面処理装置。
【請求項5】
請求項1,2,3,又は4に記載した表面処理装置において、該凸状ローラーは、その高さレベルが可変であると共に、該高さレベルを、該コンベヤの搬送速度に比例すべく調節可能であり、搬送速度が速いほど、該高さレベルが高く設定されること、を特徴とする軟性基板材の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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