説明

軟水化装置

【課題】
本発明は、装置の更なる小型化及び低コスト化を実現した新規な軟水化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部、塩水タンク部、及びこれら各部をつなぐ給水ルートからなる軟水化装置であって、少なくとも一つの給水末端開放部を、排出末端開放部より高い位置に設定して、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給ルート内の滞留水によるヘッド差圧を発生させることにより、再生塩水が、選択的に再生塩水排出ルートに導かれるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水中の硬度成分を除去して軟水を生成するための軟水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭に供給される水道水には、量の多少はあるが、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンからなる硬度成分が含まれている。この硬度成分は、洗顔や入浴の際に使用する石けん、洗顔フォーム、ボディーソープ或いはシャンプー等と容易に反応し、いわゆる「石けんカス」と称される金属石けんを形成する。最近では、この金属石けんが皮膚に付着することにより、皮膚のつっぱり感や乾燥を生じさせると共に、肌荒れやアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の原因となることが認識されてきている。
【0003】
そのため、硬度成分の含有量が比較的少ない、「軟水(ソフトウォーター)」と称される水が非常に注目されてきている。特に、スキンケアなどの分野においては、皮膚刺激の少ない肌に優しい水として、既にその利用が実用化されている。
【0004】
このような軟水は、蒸留、若しくはイオン交換樹脂などを用いて水中の硬度成分を除去することにより比較的簡単に製造することができる。中でも、ランニングコストの面などで有利なイオン交換樹脂を用いた軟水化装置(軟水器)による軟水の製造が、工業用及び家庭用のいずれにおいても主流となっている。
【0005】
このイオン交換樹脂を用いた軟水化装置は、イオン交換樹脂に原水が接触すると、該原水中に溶存する硬度成分が前記イオン交換樹脂に吸着される原理を利用したものである。即ち、イオン交換樹脂を用いた軟水化装置は、イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部に原水を導入することにより、該原水から硬度成分を除去して、軟水を生成するのである。
【0006】
ところが、イオン交換樹脂は、原水と接触するたびに硬度成分を吸着・蓄積するため、徐々にその処理能が低下する。そのため、使用頻度に応じた一定の使用期間経過後は、イオン交換樹脂自体を交換するか、イオン交換樹脂の再生処理を行う必要が生じる。
【0007】
もっとも、イオン交換樹脂の再生処理は、食塩水などの電解質溶液(再生塩水)との接触によって簡単に行うことができることから、最近の軟水化装置においては、イオン交換樹脂の再生機能が備えられたものがほとんどである。
【0008】
ここで、軟水化装置に対してイオン交換樹脂の再生機能を付与するにあたっては、塩水タンク部を配し、前記塩水タンクから再生塩水を前記樹脂収容部に導入すると共に、前記樹脂収容部を通過した使用後の再生塩水を排出することにより、イオン交換樹脂を再生するように構成したものが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、イオン交換樹脂の再生機能を付与した軟水化装置においては、塩水タンクへの補水工程、塩水タンクから樹脂収容部への再生塩水の通液工程、及び樹脂収容部から排出される再生塩水の排出工程等を制御する必要が生じる。
【0010】
この要求に対しては、手作業で塩水タンクへ補水したり、ポンプやタイマーなどを適宜用いて機械的にこれらの工程を制御したりする手段も考えられるが、手作業での補水は非常に煩雑であり、一方、ポンプなどの機器を配した装置は大型化するため、設置の際の場所的・空間的問題が生じる。
【0011】
そのため、現在、イオン交換樹脂の再生機能を備えた軟水化装置においては、簡易な設備によって前記工程を制御すべく、大きく分けて2種類の制御手段が開発されている。即ち、塩水タンクの水位と再生塩水の排出末端開放部とのヘッド差圧(水頭差圧)を利用した「落下再生方式」と、エジェクタによる再生塩水の吸引を利用した「エジェクタ再生方式」である(例えば、下記特許文献1及び2参照。)。
【0012】
【特許文献1】特開2000−42427号公報
【特許文献2】特開2002−28646号公報
【0013】
しかしながら、前記「落下再生方式」及び「エジェクタ再生方式」の軟水化装置においては、いずれも、装置内の給水ルート網が複雑にリンクしている。そのため、原水、軟水、及び再生塩水の不要な混じり合いが生じないように、給水ルートの複数箇所に開閉式のバルブを配置する必要があり、備え付けるバルブの数だけ装置がコスト高になるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明者は、このような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部、塩水タンク部、及びこれら各部をつなぐ給水ルートからなる軟水化装置であって、この軟水化装置における前記給水ルートは、少なくとも、前記樹脂収容部に原水を導入する原水導入ルート、前記樹脂収容部を通過することにより処理された軟水を1ないし複数の給水末端開放部に導く軟水供給ルート、前記塩水タンクから前記樹脂収容部に再生塩水を導入する再生塩水導入ルート、及び、前記樹脂収容部を通過した再生塩水を排出末端開放部に導く再生塩水排出ルートからなり、特に、少なくとも一つの給水末端開放部を排出末端開放部より高い位置に設定して、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給ルート内の滞留水によるヘッド差圧を発生させることにより、再生塩水が、選択的に再生塩水排出ルートに導かれるようにしたことを特徴とする本発明の軟水化装置を完成するに至ったのである。
【0015】
即ち、本発明者は、この種軟水化装置において、シャワーや給水蛇口などの給水末端開放部の位置を、排出末端開放部より高い位置に設定すれば、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給ルート内の滞留水によるヘッド差圧が発生し、その結果、再生塩水が選択的に再生塩水排出ルートに導かれる点に着目し、このように給水末端開放部と排出末端開放部の位置設定を行えば、軟水供給ルート上にバルブを備え付ける必要がなくなり、軟水化装置の更なる小型化及び低コスト化を実現することが可能になるとの知見を得たのである。
【0016】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、装置の更なる小型化及び低コスト化を実現した新規な軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の課題を解決する手段である本発明の軟水化装置は、イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部、塩水タンク部、及びこれら各部をつなぐ給水ルートからなる軟水化装置であって、この軟水化装置における前記給水ルートは、少なくとも、前記樹脂収容部に原水を導入する原水導入ルート、前記樹脂収容部を通過することにより処理された軟水を1ないし複数の給水末端開放部に導く軟水供給ルート、前記塩水タンクから前記樹脂収容部に再生塩水を導入する再生塩水導入ルート、及び、前記樹脂収容部を通過した再生塩水を排出末端開放部に導く再生塩水排出ルートからなり、特に、少なくとも一つの給水末端開放部を排出末端開放部より高い位置に設定して、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給ルート内の滞留水によるヘッド差圧を発生させることにより、再生塩水が、選択的に再生塩水排出ルートに導かれるようにしたことを特徴とする。
以下、本発明の軟水化装置について詳細に説明する。
【0018】
本発明の「軟水化装置」は、家庭用、工業用及び業務用等、その用途は特に限定されるものではない。又、イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部、塩水タンク部、及びこれら各部をつなぐ給水ルートからなるものであれば、軟水化装置におけるその他の構造・構成についても特に限定されるものではない。具体的に例えば、塩水タンクの水位と再生塩水の排出末端開放部とのヘッド差圧を利用した「落下再生方式」の軟水化装置や、エジェクタによる再生塩水の吸引を利用した「エジェクタ再生方式」の軟水化装置のいずれであっても良いのであり、更に、その他の構造・構成を有する軟水化装置であっても良い。
【0019】
しかしながら、一般的に、落下再生方式の軟水化装置は、エジェクタ再生方式の軟水化装置と比較して給水ルートに備えるバルブ数が多い。又、落下再生方式の軟水化装置は、塩水タンク水位と排出末端開放部との間にヘッド差圧を設ける必要から装置内の各構成部分の配置に制限がある。そのため、本発明の軟水化装置としては、特に、「エジェクタ再生方式」を利用したものとすることが好ましい。
【0020】
前記「樹脂収容部」は、イオン交換樹脂を充填するための容器である。即ち、当該容器内で原水をイオン交換樹脂に接触させることにより、当該原水中に溶存するカルシウムイオン及びマグネシウムイオンからなる硬度成分を吸着・除去するための部位である。
【0021】
又、前記「塩水タンク部」は、食塩水などの電解質溶液からなる再生塩水を蓄えるための容器である。即ち、軟水化装置の使用頻度に応じた一定の使用期間若しくは使用回数経過後に、前記樹脂収容部内のイオン交換樹脂に再生塩水を通液して、イオン交換樹脂の再生処理を行うための再生塩水を蓄積するための部位である。
【0022】
更に、前記「給水ルート」は、前記樹脂収容部と前記塩水タンク部をつなぐと共に、原水、軟水及び再生塩水等を適宜輸送するための配管である。そして、この給水ルートは、少なくとも、「原水導入ルート」、「軟水供給ルート」、「再生塩水導入ルート」、及び「再生塩水排出ルート」の役割に応じた各ルートから構成される。
【0023】
前記「原水導入ルート」は、上水道として供給される水道水や、ポンプなどでくみ上げられて供給される井戸水等の地下水を原水とし、これを前記樹脂収容部に導入するための配管であり、前記「軟水供給ルート」は、前記樹脂収容部を通過することにより生成した軟水を、シャワーや給水蛇口等の1ないし複数の給水末端開放部に導くための配管である。
【0024】
又、前記「再生塩水導入ルート」は、前記塩水タンクから前記樹脂収容部に再生塩水を導入するための配管であり、前記「再生塩水排出ルート」は、前記樹脂収容部を通過した再生塩水を排出末端開放部に導くための配管である。
【0025】
更に、本発明においては、これらの各ルート以外の別の役割を担うルートを配備することを妨げるものではない。例えば、前記各ルートを適宜連結する「バイパスルート」や前記塩水タンク部に原水や塩水を供給するための「補水ルート」などを配備しても良い。
【0026】
なお、これらの各ルートは、必ずしも全てを独立した一本の配管とする構成に限られるものではなく、ルートが複数に枝分かれていたり、各ルートの一部ないし全部が他のルートの役割も兼ねたりする場合もある。
【0027】
そして、本発明の軟水化装置は、少なくとも一つの給水末端開放部を、排出末端開放部より高い位置に設定して、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給ルート内の滞留水によるヘッド差圧を発生させた点に最も大きな特徴を有する。
【0028】
ここで、軟水化装置においては、原水と再生塩水の樹脂収容部に対する導入につき、樹脂収容部に対して、同方向から行うものと、互いに逆方向から行うものとがあるが、いずれも、導入される原水及び再生塩水は、軟水供給ルート及び再生塩水排出ルートの双方に向かう水圧を有する。
【0029】
そのため、従来の軟水化装置においては、軟水供給ルート及び再生塩水排出ルートにそれぞれ開閉式のバルブを備え、軟水供給時には、再生塩水排出ルートのバルブを閉弁して、軟水を選択的に軟水供給ルートに導き、一方、イオン交換樹脂の再生時には、軟水供給ルートのバルブを閉弁して、再生塩水を選択的に再生塩水排出ルートに導いていた。
【0030】
即ち、従来の軟水化装置においては、軟水供給ルート及び再生塩水排出ルートに備える開閉式のバルブが不可欠であった。
【0031】
この点につき、本発明の軟水化装置は、少なくとも一つの給水末端開放部を、排出末端開放部より高い位置に設定し、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給ルート内の滞留水によるヘッド差圧が発生するようにしているから、再生塩水が、選択的に再生塩水排出ルートに導かれるようすることができるのである。その結果、従来の軟水化装置において不可欠であった軟水供給ルート上の開閉式のバルブが不用となり、軟水化装置の更なる小型化及び低コスト化を実現することが可能になるのである。
【0032】
更に詳しくは、イオン交換樹脂の再生時、樹脂収容部に導入される再生塩水は、一定の水圧(これを再生塩水導入圧(ΔP)とする。)を有する。そして、この再生塩水導入圧(ΔP)は、軟水供給ルート及び再生塩水排出ルートの双方に向かっている。
【0033】
その一方で、軟水供給ルートにおける少なくとも一つの給水末端開放部を、排出末端開放部より高い位置に設定すると、軟水供給ルート内の滞留水によりヘッド差圧(ΔH)が発生する。
【0034】
そして、このヘッド差圧(ΔH)と、軟水供給ルートに向かう再生塩水の水圧がつりあった時点、即ち、軟水供給ルートに向かう再生塩水の水圧がヘッド差圧により相殺された時点で、再生塩水は、選択的に再生塩水排出ルートに導かれ、排出末端開放部から排出されるのである。
【0035】
即ち、本発明において、給水末端開放部の設定位置は、再生塩水導入圧(ΔP)に応じて決定すれば良いのであり、再生塩水導入圧(ΔP)が大きければ、それに応じて給水末端開放部の設定位置をより高く設定して、ヘッド差圧(ΔH)が大きくなるようにすれば良い。
【0036】
しかしながら、シャワーや給水蛇口等の給水末端開放部の設定位置を余りにも高くしすぎると、使用上の取扱性が悪くなる。又、一般的な家庭において、シャワーヘッドの掛け置き用ホルダーは上下2箇所に配されているのが普通であるが、下側の掛け置き用ホルダーは、床上約800〜1000mm前後の位置が標準である。
【0037】
そのため、本発明においても、給水末端開放部の設定位置を床上約800〜1000mm以上に設定することは、使用上の取扱性の観点から好ましくない。
【0038】
そこで、本発明においては、再生塩水導入圧(ΔP)を調節することにより、給水末端開放部の取付け位置が高くなり過ぎないようにするのが好ましい。
【0039】
ここで、再生塩水導入圧(ΔP)を調節する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、給水ルートにおける配管内径を選択することなどによっても行うことができる。
【0040】
ここで、より簡易的に再生塩水導入圧(ΔP)を調節する方法として、エジェクタ再生方式を利用した軟水化装置を選択し、エジェクタのノズル径及び/又はスロート径を選択することにより、再生塩水導入圧(ΔP)を調節する手段を挙げることができる。
【0041】
又、その他の簡易的な調節方法としては、給水ルートの適宜箇所に減圧弁を備えることにより、再生塩水導入圧(ΔP)を調節する手段も挙げることができる。本発明においては、軟水化装置の方式等に応じて、これらの方法を単独或いは併用して用いれば良い。
【0042】
ところで、本発明の軟水化装置は、少なくとも一つの給水末端開放部を、排出末端開放部より高い位置に設定することにより、原則として、軟水供給ルートには開閉式のバルブを備え付ける必要がなくなるのであるが、必ずしも軟水供給ルートにバルブを備えることを完全に否定するものではない。
【0043】
例えば、軟水供給ルートが途中で枝分かれし、給水末端開放部が複数ある場合にあっては、全ての分枝末端を排出末端開放部より充分に高い位置に設定することは困難である。又、何らかの要因で、一時的に再生塩水導入圧(ΔP)が大きくなって、軟水供給ルート内の滞留水が、該軟水供給ルートの分枝末端の位置を超える場合も考えられる。
【0044】
又、軟水供給ルートにバルブを備え付けないと、イオン交換樹脂の再生時、給水末端開放部から給水ルート中にエアが侵入し、再生塩水が樹脂収容部を充分に満たす前に速やかに排出される現象(以下、この現象を「抜け落ち現象」と称する。)が生じる場合がある。そして、この抜け落ち現象が発生すると、イオン交換樹脂と再生塩水との接触機会を充分に確保することができなくなり、イオン交換樹脂の再生が不十分となる。
【0045】
そこで、本発明の軟水化装置においては、このような場合に対処すべく、軟水供給ルートの適宜箇所にバルブを備えることもあり得るのである。
【0046】
この場合、備え付けるバルブとしては、特に限定されるものではないが、簡易的なもので充分である。具体的に例えば、一定の水圧が生じると開弁するいわゆる「リリーフ弁」と称されるバルブ等を好適に用いることができる。
【0047】
なお、軟水供給ルートにリリーフ弁を備える場合、軟水供給ルートの本線にリリーフ弁を備えると、給水時、リリーフ弁の圧損により、リリーフ弁から下流の全ての給水末端開放部において吐水圧が減少する。
【0048】
そこで、軟水供給ルートにリリーフ弁を備える場合にあっては、排出末端開放部より充分に高い位置に設定することができない軟水供給ルートの分枝末端に適宜備えることが好ましい。
【0049】
又、本発明の軟水化装置において、前記抜け落ち現象を確実に防止するためには、排出末端開放部を樹脂収容部上端より高い位置に設定することが好ましい。
【0050】
即ち、排出末端開放部を樹脂収容部上端より高い位置に設定すると、イオン交換樹脂の再生時、再生塩水により樹脂収容部を充分に満たすまで再生塩水が排出されず、イオン交換樹脂と再生塩水との接触機会を充分に確保することが可能になるのである。
【発明の効果】
【0051】
本発明は、前記構成を有し、装置の更なる小型化及び低コスト化を実現した新規な軟水化装置である。
【0052】
即ち、本発明の軟水化装置は、少なくとも一つの給水末端開放部を、排出末端開放部より高い位置に設定し、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給ルート内の滞留水によるヘッド差圧が発生するようにしているから、再生塩水が、選択的に再生塩水排出ルートに導かれるようすることができるのである。
【0053】
その結果、本発明の軟水化装置は、従来の軟水化装置において不可欠であった軟水供給ルート上の開閉式のバルブが不用となり、装置の更なる小型化及び低コスト化を実現することが可能になるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明の軟水化装置を実施するための最良の形態を実施例を挙げて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0055】
<従来の軟水化装置1´>
図1(a)は、エジェクタ再生方式を利用した一般的な軟水化装置1´を示す模式図である。
【0056】
即ち、この軟水化装置1´は、イオン交換樹脂21を充填した樹脂収容部2、塩水を蓄えるための塩水タンク3、及びこれら各部をつなぐ給水ルート4(原水導入ルート41、軟水供給ルート42、再生塩水導入ルート43、再生塩水排出ルート44、及び補水ルート45)からなり、原水Wを、軟水化装置1´内に導入し、樹脂収容部2内に充填されたイオン交換樹脂21に接触させることにより、原水Wに含有されている硬度成分を除去するものである。又、使用頻度に応じた一定の使用期間若しくは使用回数経過後には、自動的に塩水タンク3に蓄えた塩水を樹脂収容部2に通液して、イオン交換樹脂21の再生処理を行うものである。
【0057】
更に詳しくは、軟水の供給を要する場合には、図1(b)に示すように、吐水制御バルブ11及び軟水供給バルブ12を開弁することにより、原水導入ルート41を経由して、原水Wを樹脂収容部2内に通液する。そして、原水Wを樹脂収容部2内のイオン交換樹脂21と接触させて軟水化し、生成した軟水を軟水供給ルート42を経由して、シャワー51や給水蛇口52等の給水末端開放部5に導く。
【0058】
なお、原水導入ルート41は途中で枝分かれしており、そのため、原水Wの一部は、エジェクタ7から補水ルート45を経由して、塩水タンク3に蓄えられる。そして、蓄えられた原水Wは、塩水タンク3内に備えられた食塩31と接触して、ほぼ飽和状態の食塩水となる。
【0059】
又、軟水の供給を要さない場合には、図1(c)に示すように、吐水制御バルブ11を閉弁することにより、原水Wの全てが、エジェクタ7から補水ルート45を経由して、塩水タンク3に蓄えられる。なお、塩水タンク3には、フロート式の補水制御弁32が備えられており、一定量の水が蓄えられると閉弁し、原水Wの供給を停止する。
【0060】
一方、イオン交換樹脂21を再生する場合には、図1(d)に示すように、吐水制御バルブ11及び軟水供給バルブ12を閉弁すると共に、再生バルブ13及び排水バルブ14を開弁することにより、原水Wを、再生塩水導入ルート43を経由して、樹脂収容部2に送り込む。その際、エジェクタ7の作用により、塩水タンク3に蓄えられた塩水が引き込まれて、補水ルート45を逆流し、原水Wと合流する。原水Wと合流することによりある程度塩分濃度の低下した再生塩水は、樹脂収容部2内のイオン交換樹脂21と接触し、イオン交換樹脂21を再生する。そして、樹脂収容部2を通過した使用済みの再生塩水は、再生塩水排出ルート44を経由して、排出末端開放部6に導き、軟水化装置1´の外へ排出される。
【0061】
即ち、この軟水化装置1´においては、イオン交換樹脂21の再生時、軟水供給バルブ12を閉弁しているから、樹脂収容部2を通過した使用済みの再生塩水は、選択的に、再生塩水排出ルート44に導かれるのである。又、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給バルブ12を閉弁しているから、シャワー51や給水蛇口52等の給水末端開放部5からエアが給水ルート4中に進入せず、これより抜け落ち現象を防止することができるのである。
従って、このような従来の軟水化装置1´においては、軟水供給バルブ12の配備が不可欠である。
【実施例1】
【0062】
一方、図2(a)は、エジェクタ再生方式を備えた本発明の軟水化装置1を示す模式図である。
【0063】
即ち、本実施例に係る軟水化装置1は、イオン交換樹脂21を充填した樹脂収容部2、塩水を蓄えるための塩水タンク3、及びこれら各部をつなぐ給水ルート4(原水導入ルート41、軟水供給ルート42、再生塩水導入ルート43、再生塩水排出ルート44、及び補水ルート45)からなり、原水Wを、軟水化装置1内に導入し、樹脂収容部2内に充填されたイオン交換樹脂21に接触させることにより、原水Wに含有されている硬度成分を除去するものである。又、使用頻度に応じた一定の使用期間若しくは使用回数経過後には、自動的に塩水タンク3に蓄えた塩水を樹脂収容部2に通液して、イオン交換樹脂21の再生処理を行うものである。
【0064】
なお、本実施例と前記参考例との最も大きな相違点は、本実施例の軟水化装置1における給水末端開放部5(51)を排出末端開放部6より高い位置に設定すると共に、排出末端開放部6を樹脂収容部2の上端より高い位置に設定し、更に、軟水供給ルート42上に軟水供給バルブ12を配備しなかったところである。
【0065】
又、本実施例の軟水化装置1においては、更に、原水導入ルート41上に減圧弁8を配備すると共に、軟水供給ルート42における給水蛇口52の直前にリリーフ弁9を備えている。
【0066】
更に詳しくは、本実施例の軟水化装置1において軟水の供給を要する場合には、図2(b)に示すように、吐水制御バルブ11を開弁することにより、原水導入ルート41を経由して、原水Wを樹脂収容部2内に通液する。そして、原水Wを樹脂収容部2内のイオン交換樹脂21と接触させて軟水化し、生成した軟水を軟水供給ルート42を経由して、シャワー51や給水蛇口52等の給水末端開放部5に導く。
【0067】
なお、原水導入ルート41は途中で枝分かれしており、そのため、原水Wの一部は、エジェクタ7から補水ルート45を経由して、塩水タンク3に蓄えられる。そして、蓄えられた原水Wは、塩水タンク3内に備えられた食塩31と接触して、ほぼ飽和状態の食塩水となる。
【0068】
又、軟水の供給を要さない場合には、図2(c)に示すように、吐水制御バルブ11を閉弁することにより、原水Wの全てが、補水ルート45を経由して、塩水タンク3に蓄えられる。なお、塩水タンク3には、フロート式の補水制御弁32が備えられており、一定量の水が蓄えられると閉弁し、原水Wの供給を停止する。
【0069】
一方、イオン交換樹脂21を再生する場合には、図3に示すように、吐水制御バルブ11を閉弁すると共に、再生バルブ13及び排水バルブ14を開弁することにより、原水Wを、再生塩水導入ルート43を経由して、樹脂収容部2に送り込む。その際、エジェクタ7の作用により、塩水タンク3に蓄えられた塩水が引き込まれて、補水ルート45を逆流し、原水Wと合流する。原水Wと合流することによりある程度塩分濃度の低下した再生塩水は、樹脂収容部2内のイオン交換樹脂21と接触し、イオン交換樹脂21を再生する。
【0070】
この際、本実施例の軟水化装置1においては、給水末端開放部5(51)を、排出末端開放部6より高い位置に設定しているから、イオン交換樹脂21の再生時、軟水供給ルート42内の滞留水によるヘッド差圧(ΔH)が発生する。
【0071】
そして、このヘッド差圧(ΔH)と、軟水供給ルート42に向かう再生塩水の水圧がつりあった時点で、再生塩水は、軟水供給ルート42に向かうことなく、樹脂収容部2を通過し、選択的に再生塩水排出ルート44に導かれる。その後、再生塩水は、排出末端開放部6から、軟水化装置1の外へ排出される。
【0072】
即ち、本実施例の軟水化装置1においては、給水末端開放部5(51)を、排出末端開放部6より高い位置に設定しているから、イオン交換樹脂21の再生時、軟水供給ルート42内の滞留水によるヘッド差圧(ΔH)が発生し、再生塩水を選択的に再生塩水排出ルート44に導いて排出することができるのである。その結果、前記参考例の如き従来の軟水化装置1´において不可欠であった軟水供給ルート42上の軟水供給バルブ12が不用となり、軟水化装置1の更なる小型化及び低コスト化を実現することが可能になるのである。
【0073】
又、本実施例の軟水化装置1においては、給水末端開放部5(51)を排出末端開放部6より高い位置に設定すると共に、排出末端開放部6を樹脂収容部2の上端より高い位置に設定しているから、イオン交換樹脂の再生時に樹脂収容部に導入された再生塩水の「抜け落ち」を好適に防止することができるのである。
【0074】
図4は、本実施例の軟水化装置1におけるエジェクタ7を配備した部分を拡大して示した断面図である。
【0075】
このエジェクタ7は、原水導入ルート41から導入される原水を、ノズル71からスロート72に向けて噴出することで、エジェクタ7内を負圧にし、塩水タンク3に蓄えられた飽和塩水を、補水ルート45を逆流させて引き込むものである。
【0076】
ここで、このエジェクタ7のノズル71やスロート72の内径は、再生塩水導入ルート43に再生塩水を導入する際の水圧を決定する要因となる。そのため、エジェクタ7におけるノズル径及び/又はスロート径を選択することにより、再生塩水導入圧を調節することができるのである。
【0077】
又、本実施例においては、原水導入ルート41上に減圧弁8を配備しており、この減圧バルブ8を調節(原水の元圧を調節)することによっても、再生塩水導入圧を調節することができる。
【0078】
図5(a)は、本実施例の軟水化装置1におけるリリーフ弁9を配備した部分を拡大して示した断面図である。
【0079】
図5(b)に示すように、このリリーフ弁9は、弾性体91の付勢力により、一定圧以上の水圧が加えられないと開弁しない仕組みとなっている。
【0080】
即ち、このリリーフ弁9は、本実施例のように、軟水供給ルート42が途中で枝分かれしていて、一部の給水末端開放端5(52)が排出末端開放部6より充分に高い位置に設定することができない場合や、何らかの要因で、一時的に再生塩水導入圧が大きくなって、軟水供給ルートに向かう再生塩水の導入圧がヘッド差圧(ΔH)の限界値を超えるおそれがある場合などに対処するために備えられているのである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、参考例に係る従来の軟水化装置、及びその使用状態を示す模式図である。
【図2】図2は、実施例1に係る本発明の軟水化装置、及びその使用状態を示す模式図である。
【図3】図3は、実施例1に係る本発明の軟水化装置におけるイオン交換樹脂再生時の状態を示す模式図である。
【図4】図4は、実施例1に係る本発明の軟水化装置におけるエジェクタを配備した部分を拡大して示す断面図である。
【図5】図5は、実施例1に係る本発明の軟水化装置におけるリリーフ弁を配備した部分を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 軟水化装置
2 樹脂収容部
3 塩水タンク
4 給水ルート
5 給水末端開放部
6 排出末端開放部
7 エジェクタ
8 減圧弁
9 リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部、塩水タンク部、及びこれら各部をつなぐ給水ルートからなる軟水化装置であって、この軟水化装置における前記給水ルートは、少なくとも、
前記樹脂収容部に原水を導入する原水導入ルート、
前記樹脂収容部を通過することにより処理された軟水を1ないし複数の給水末端開放部に導く軟水供給ルート、
前記塩水タンクから前記樹脂収容部に再生塩水を導入する再生塩水導入ルート、
及び、前記樹脂収容部を通過した再生塩水を排出末端開放部に導く再生塩水排出ルートからなり、
特に、少なくとも一つの給水末端開放部を排出末端開放部より高い位置に設定して、イオン交換樹脂の再生時、軟水供給ルート内の滞留水によるヘッド差圧を発生させることにより、再生塩水が、選択的に再生塩水排出ルートに導かれるようにしたことを特徴とする軟水化装置。
【請求項2】
軟水化装置が、エジェクタ再生方式である請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
エジェクタのノズル径及び/又はスロート径を選択することにより、再生塩水導入圧を調節してなる請求項2に記載の軟水化装置。
【請求項4】
給水ルートに減圧弁を備えることにより、再生塩水導入圧を調節してなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の軟水化装置。
【請求項5】
軟水供給ルートに、リリーフ弁を備えてなる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の軟水化装置。
【請求項6】
更に、排出末端開放部を樹脂収容部上端より高い位置に設定してなる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の軟水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39657(P2009−39657A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207450(P2007−207450)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】