説明

軟白ねぎの栽培方法

【課題】単位面積あたりの栽培本数が従来の土盛り法の約2倍以上になり、茎部が長い、まっすぐな軟白ねぎの栽培方法を提供する。
【解決手段】軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる大きさの上方に空いた直方体形状の苗箱Aに土を入れ、幅方向中央に一列に軟白ねぎの苗を定植後、肥料、水を与えて生育させ、軟白ねぎの生育に伴い該軟白ねぎの軟白上端部を覆う高さまで充填材を入れる操作を1回以上行い、次に、充填材層の上面が苗箱の高さに近くなると、上部板囲い板Cを継ぎ足して、さらに、生育する軟白ねぎの軟白上端部を覆う高さまで充填材を入れる操作を1回以上行う。その後、軟白ねぎの生育にあわせて上部板囲い板Cの継ぎ足し充填材入れの操作を繰り返していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟白ねぎの栽培方法に関する。さらに詳しくは、単位面積あたりの栽培本数が従来の土盛り法の約2倍以上になり、茎部が太くて長く、まっすぐな軟白ねぎが作れる栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ねぎ類のうち、主として葉鞘部位(茎部)の軟白部を食する長ねぎ(以下、軟白ねぎという。)は緑色の葉と白色の茎との区別が明確でかつ一定以上の長さのものが好まれる。
従来の軟白ねぎの栽培方法としては地中で茎部を栽培する方法が知られているが、収穫時に土を掘るための大きな労力を必要とし、作業性が悪いという問題がある。
また、地上部で茎を栽培し、茎の周囲に土盛りをする方法もある。しかしながら、この方法では土寄せの必要から畝間の間隔を広く取る必要があり、畝間の間隔がたとえば約1mとなって、全体として単位面積あたりの栽培本数は多くない。また、土盛り頂部での光の遮断が不十分で軟白ねぎの緑色部と白色部との区分が明確でなくなるという問題もあり、盛り土くずれのために、栽培できる軟白ねぎの茎部長さに限界がある(茎部長さの上限が35cm程度)。さらに、土盛り作業は大きな労力を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、単位面積あたりの栽培本数が従来の土盛り法の約2倍以上になり、茎部が太くて長い、まっすぐな軟白ねぎが作れる軟白ねぎの栽培方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の栽培方法は、軟白ねぎの苗の1畝分を収容する苗箱、あるいは板囲いの中で苗を定植し、ねぎの成長に合わせて遮光のための上部板囲い板と充填材とを継ぎ足し、追加してゆき、茎部が太くて長い、まっすぐな軟白ねぎを作るものである。
すなわち、本発明は、
(1)(i) 軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる大きさの上方に空いた直方体形状の苗箱に土を入れ、幅方向中央に一列に軟白ねぎの苗を定植後、肥料、水を与えて生育させ、軟白ねぎの生育に伴い該軟白ねぎの軟白上端部を覆う高さまで充填材を入れる操作を1回以上行い、(ii) 充填材層の上面が苗箱の高さに近くなると、上部板囲い板を継ぎ足して、さらに、生育する軟白ねぎの軟白上端部を覆う高さまで充填材を入れる操作を1回以上行い、(iii) その後、軟白ねぎの生育にあわせて、上部板囲い板の継ぎ足し、充填材入れの操作を繰り返す、ことを特徴とする軟白ねぎの栽培方法、
(2)直方体形状の苗箱に代えて底部がない直方体形状の板囲いを使用し、苗を地植えする上記(1)に記載の軟白ねぎの栽培方法、
(3)充填材が、土、わらくず、もみがら、ポリエチレンペレット、及び発泡スチロール粒子の一種以上である上記(1)又は(2)に記載の軟白ねぎの栽培方法、
(4)当初の直方体形状が幅10〜30cm、長さ100〜500cm、高さ10〜30cmであり、前記上部板囲い板を複数回継ぎ足すことで得られた上部板囲いが幅5〜20cm、長さ100〜500cm、高さが40〜100cmである上記(1)〜(3)に記載の軟白ねぎの栽培方法、
(5)幅方向で近接させて置いた2〜4個の苗箱又は板囲いの組の複数組を、隣り合う2〜4個の苗箱又は板囲いの組を幅方向で50cm程度の間隔をあけて配置する上記(1)〜(4)に記載の軟白ねぎの栽培方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる苗箱又は板囲いの中で苗を定植し、軟白ねぎの成長にあわせて上部板囲い板を継ぎ足して充填材を入れることを繰り返すので、複数の苗箱又は板囲いを幅方向で近接させて配置することができ、従来の土盛り法のように土盛りのために必要な広い畝間隔は不要であり、単位面積あたりの栽培本数を従来の土盛り法の約2倍以上にすることができる。
また、軟白ねぎの成長にあわせて上部板囲い板を継ぎ足して充填材を入れることを複数回繰り返すので、従来の土盛り法による軟白ねぎの長さの上限を越えて生育させることができ、茎部が太くて長く、まっすぐな軟白ねぎを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明で使用する軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる苗箱又は板囲いに、軟白ねぎの成長にあわせて上部板囲い板を複数回継ぎ足した状態の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の軟白ねぎの栽培方法は、軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる大きさの上方に空いた直方体形状の苗箱に土を入れ、幅方向中央に一列に軟白ねぎの苗を定植後、肥料、水を与えて生育させ、軟白ねぎの伸びに伴って該軟白ねぎの軟白上端部を覆うよう充填材を入れる操作を1回以上行い、充填材層の上面が苗箱の高さに近くなると、上部板囲い板を継ぎ足して、さらに、生育する軟白ねぎの軟白上端部を覆うよう充填材を入れる操作を1回以上行い、その後、軟白ねぎの生育にあわせて、上部板囲い板の継ぎ足し、充填材入れの操作を繰り返すことを特徴とする。
ここで、軟白ねぎの「軟白上端部」とは、軟白ねぎの白色の茎と緑色の葉との境界部分近傍をいう。
すなわち、軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる苗箱の中で軟白ねぎを定植して生育させ、軟白ねぎの生育とともに、苗箱の上に上部板囲い板を継ぎ足して、生育する軟白ねぎの軟白上端部を覆うよう充填材を入れることを繰り返すものである。
【0008】
本発明で使用する軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる苗箱に軟白ねぎの成長にあわせて上部板囲い板を複数回継ぎ足した状態の実施形態の一つである図1を参照しながら、以下、本発明を説明する。
なお、本明細書において、各種寸法の記載は、発明の説明を容易にするための一実施形態に関する例示的な記載であって、本発明はこれら記載に限定されるものではない。
【0009】
軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる苗箱は、図1のAで示される部分であり、幅aが10〜30cm、長さbが100〜500cm、高さh1が10〜30cmの上方に空いた直方体形状である。
苗箱は、底があってもよいし、なくてもよい。
前者の場合、軟白ねぎの苗の根の部分が十分に埋まる程度の量の肥沃な土を入れ、苗箱の幅方向中央に一列に軟白ねぎの苗を定植する。水はけのため、苗箱の底は数箇所の穴があいていることが好ましい。
後者、すなわち板囲いの場合、これが動かない程度に少し地面の中に挿し込み、軟白ねぎの苗を地植えする。
野菜工場、ベランダ等での栽培には、底がついていること、動かせることが必要であるため、前者の苗箱であることを要する。
【0010】
なお、これら直方体形状の苗箱あるいは板囲いAは、その製作前に、2つの端部板の内面に、上部高さh2が40〜100cmとなる2本の角柱Bの各一方端を端部板の両端から各0〜5cm、好ましくは3〜5cm内側に取り付けておく。したがって、苗を定植する当初の苗箱等は、2つの端部板の内面に、計4本の角柱Bが立設されたものである。
角柱Bの取り付け位置が両端から0cmであれば、後述の上部板囲いは苗箱等の枠と同じ寸法のものが継ぎ足されることとなり、3〜5cm内側であれば、上部板囲いの幅が苗箱等の幅より狭くなり、幅方向両側に3〜5cmの苗箱等の露出部ができることとなる。
【0011】
本発明の軟白ねぎの栽培方法では、後述するように、軟白ねぎの茎部(葉鞘部)の成長にあわせて、直方体形状の苗箱あるいは板囲いAの上に上部板囲い板を継ぎ足しながら、遮光のための充填材を入れてゆくので、従来の土盛り法のように土盛りのために必要な広い畝間隔は不要である。そのため、2〜4個の苗箱又は板囲いを幅方向で近接させて配置することができる。苗の定植、施肥、水やり、上部板囲い板の継ぎ足し、充填材入れなどの作業をするためのスペースとして、隣り合う2〜4個の苗箱等Aの組の幅方向の間隔は50cm程度でよい。したがって、単位面積あたりの栽培本数を従来の土盛り法の約2倍以上にすることができる。
【0012】
次に、軟白ねぎの苗を定植後、肥料、水を与えて苗を生育させる。
軟白ねぎが伸びてきたところで該軟白ねぎの軟白上端部を覆うよう充填材を入れる。
充填材としては、土でもよく、わらくず、もみがら、ポリエチレンペレット、発泡スチロール粒子などであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
充填材は、遮光の役割をして、茎部(葉鞘部)を白くし、また、軟白ねぎが倒れることなく真直ぐに伸びることを助ける。このような作用をするので、充填材として土を用いる場合はやせた土でもよい。
なお、充填材としてわらくず、もみがら、ポリエチレンペレット、発泡スチロール粒子などを用いるときは、収穫後の洗浄が簡単になるという利点がある。
軟白ねぎの茎部(葉鞘部)の成長にあわせ、充填材は1回当たり約5〜10cmの層厚みで入れる。また、肥料は適宜施すのが好ましい。
【0013】
充填材層の上面が苗箱等の高さに近くなると、上部板囲い板を継ぎ足す。この上部板囲い板の継ぎ足し操作は、たとえば次のように行う。
苗箱等の2つの端部板の上部には、高さが5〜12cmで長さが5〜20cmの板を角柱Bの上に木ねじや接着剤を用いて貼り付ける。苗箱等の2つの長さ方向側部板の上方には、高さが5〜12cmで長さが100〜500cmの板を角柱Bの内側にはめ込む。
かくして、幅方向5〜20cm、長さ方向100〜500cm、高さ5〜12cmの上部板囲いCが継ぎ足される。
なお、苗箱等の幅方向は10〜30cmであり、継ぎ足す上部板囲いCの幅方向は5〜20cmであって、苗箱等の幅は、継ぎ足す上部板囲いCと同じ幅でもよいが、Cよりも幅が大きいことが好ましく、そのときは、苗箱等の土の露出部分から軟白ねぎの根部分へ肥料等を施すことができる。
【0014】
その後、肥料、水を与えて軟白ねぎを生育させ、その生育にあわせて軟白上端部を覆うよう充填材を入れ、充填材層の上面が上部板囲いの上端部に近くなると、上部板囲い板を継ぎ足し、充填材を入れることを繰り返す。
目標とする茎部長さの軟白ねぎを得るためには、上部板囲い板の継ぎ足しは4〜6回程度である。
この、目標とする茎部長さの軟白ねぎを得る段階の、上部板囲い板を複数回継ぎ足した上部板囲いCは幅5〜20cm、長さ100〜500cmで、高さは40〜100cmである。
【0015】
最後の充填材入れ及び追肥から30〜40日後、収穫する。株回りの充填材をほぐし、やさしく引き抜く。
かくして、白い茎部が太くて長く、真直ぐな軟白ねぎを得ることができ、茎部長さが35cm以上の軟白ねぎを容易に作ることができる。
【0016】
なお、本発明の軟白ねぎの栽培方法では、単位面積あたりの栽培本数を従来の土盛り法の約2倍以上にすることができるという特徴を生かして、従来の軟白ねぎの長さ程度、あるいはそれ以下の長さのものを面積効率よく多数収穫することもできる。
【符号の説明】
【0017】
A 苗箱あるいは板囲い
B 角柱
C 上部板囲い
a 苗箱あるいは板囲いの幅
b 苗箱あるいは板囲いの長さ、上部板囲いの長さ
c 上部板囲いの幅
1 苗箱あるいは板囲いの高さ
2 角柱の上部高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 軟白ねぎの苗の1畝分が収容できる大きさの上方に空いた直方体形状の苗箱に土を入れ、幅方向中央に一列に軟白ねぎの苗を定植後、肥料、水を与えて生育させ、軟白ねぎの生育に伴い該軟白ねぎの軟白上端部を覆う高さまで充填材を入れる操作を1回以上行い、
(ii) 充填材層の上面が苗箱の高さに近くなると、上部板囲い板を継ぎ足して、さらに、生育する軟白ねぎの軟白上端部を覆う高さまで充填材を入れる操作を1回以上行い、
(iii) その後、軟白ねぎの生育にあわせて、上部板囲い板の継ぎ足し、充填材入れの操作を繰り返す、
ことを特徴とする軟白ねぎの栽培方法。
【請求項2】
直方体形状の苗箱に代えて底部がない直方体形状の板囲いを使用し、苗を地植えする請求項1に記載の軟白ねぎの栽培方法。
【請求項3】
充填材が、土、わらくず、もみがら、ポリエチレンペレット、及び発泡スチロール粒子の一種以上である請求項1又は2に記載の軟白ねぎの栽培方法。
【請求項4】
当初の直方体形状が幅10〜30cm、長さ100〜500cm、高さ10〜30cmであり、前記上部板囲い板を複数回継ぎ足すことで得られた上部板囲いが幅5〜20cm、長さ100〜500cm、高さが40〜100cmである請求項1〜3に記載の軟白ねぎの栽培方法。
【請求項5】
幅方向で近接させて置いた2〜4個の苗箱又は板囲いの組の複数組を、隣り合う2〜4個の苗箱又は板囲いの組を幅方向で50cm程度の間隔をあけて配置する請求項1〜4に記載の軟白ねぎの栽培方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−66384(P2013−66384A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204947(P2011−204947)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(511228713)
【出願人】(511228724)
【Fターム(参考)】