説明

軟組織修復医学的物品を製造するための超臨界流体技術の適用

【課題】軟組織修復医学的物品を製造するための超臨界流体技術を適用すること。
【解決手段】少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、超臨界流体中で少なくとも1つの触媒に接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;基材物質の少なくとも一部を、該少なくとも1つのポリエステルを有する該超臨界流体に曝す工程;および該少なくとも1つのポリエステルを該基材物質の上または該基材物質内にグラフトする工程を含む、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2011年3月11日に出願された米国仮特許出願第61/451,650号の利益およびこれに対する優先権を主張し、その全内容を本明細書中で参考として援用する。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、多孔性基材(その表面上にグラフトされたポリマーを有する)を含む医学的デバイス、およびそれを調製する方法、ならびに超臨界流体を用いて医学的デバイスを後処理する方法に関する。
【0003】
種々のタイプの移植物は、生物医学的な適用において、一般的に使用される。移植物は、硬組織(例えば、軟骨、骨など)、ならびに軟組織(例えば、筋肉、結合組織など)の修復において使用される。しかし、身体は、容易に移植物を弛めさせ得る繊維組織の可撓性層で移植物を分離することによって外来の物に対して応答する。これは、移植物の有用性に対して不利益である。例えば、歯科移植物の場合、移植物の弛みは、移植した歯の喪失をもたらし得、また、弛んだ移植物の周囲に感染をもたらし得る。生理学的構造物に接着できる移植可能なデバイスをコーティングする方法が、依然として望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、超臨界流体中で少なくとも1つの触媒に接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;
基材物質の少なくとも一部を、該少なくとも1つのポリエステルを有する該超臨界流体に曝す工程;および
該少なくとも1つのポリエステルを該基材物質の上または該基材物質内にグラフトする工程を含む、プロセス。
(項目2)
前記少なくとも1つのポリエステルが、約20℃〜約60℃の温度、および約20バール〜約250バールの圧力で形成される、上記項目に記載のプロセス。
(項目3)
前記超臨界流体が、超臨界二酸化窒素、超臨界二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目4)
前記少なくとも1つの脂肪族環状エステルが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレン、炭酸トリメチレンのアルキル誘導体、γ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシバレレート、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、炭酸エチレン、シュウ酸エチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目5)
前記少なくとも1つの触媒が、金属アルコキシド、希土類複合体、および酵素からなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目6)
前記金属アルコキシドが、アルミニウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、スズアルコキシド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目7)
前記基材物質が、酸化されたセルロースを含む、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目8)
基材物質を酸化して、酸化された基材物質を形成する工程;
少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、超臨界流体中で少なくとも1つの触媒と接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;
該酸化された基材物質の少なくとも一部を、該少なくとも1つのポリエステルを有する該超臨界流体に曝す工程;および
該少なくとも1つのポリエステルを、該酸化された基材物質の上または該酸化された基材物質内にグラフトする工程を含む、プロセス。
(項目9)
前記基材物質を酸化させる工程が、該基材物質を酸化媒体に曝す工程を含む、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目10)
前記酸化媒体が、超臨界二酸化窒素、超臨界二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される超臨界流体である、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目11)
前記少なくとも1つのポリエステルが、約30℃〜約50℃の温度、および約80バール〜約180バールの圧力で形成される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目12)
前記少なくとも1つの脂肪族環状エステルが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレン、炭酸トリメチレンのアルキル誘導体、γ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシバレレート、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、炭酸エチレン、シュウ酸エチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目13)
前記少なくとも1つの触媒が、スズアルコキシドおよび酵素からなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目14)
前記スズアルコキシドが、第一スズオクトエートである、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目15)
セルロースを、超臨界流体を含む酸化媒体に曝して、酸化されたセルロースを形成する工程;
少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、少なくとも1つの触媒および該超臨界流体に接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;
該酸化されたセルロースの少なくとも一部を、該少なくとも1つのポリエステルを有する該超臨界流体と接触させる工程;および
該少なくとも1つのポリエステルを、該酸化されたセルロースの上または該酸化されたセルロース内にグラフトする工程を含む、プロセス。
(項目16)
前記超臨界流体が、超臨界二酸化窒素、超臨界二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目17)
前記少なくとも1つのポリエステルが、約30℃〜約50℃の温度、および約80バール〜約180バールの圧力で形成される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目18)
前記少なくとも1つの脂肪族環状エステルが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレン、炭酸トリメチレンのアルキル誘導体、γ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシバレレート、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、炭酸エチレン、シュウ酸エチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目19)
前記少なくとも1つの触媒が、金属アルコキシド、希土類複合体、および酵素からなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目20)
前記金属アルコキシドが、アルミニウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、スズアルコキシド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
【0005】
要旨
本開示は、コーティングされた基材物質を生産するプロセスを提供する。実施形態において、本開示のプロセスは、少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、超臨界流体中で少なくとも1つの触媒に接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;基材物質の少なくとも一部を上記少なくとも1つのポリエステルを有する上記超臨界流体に曝す工程;および上記少なくとも1つのポリエステルを上記基材物質の上または上記基材物質内にグラフトする工程を含む。
【0006】
他の実施形態において、本開示のプロセスは、基材物質を酸化して、酸化された基材物質を形成する工程;少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、超臨界流体中で少なくとも1つの触媒と接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;上記酸化された基材物質の少なくとも一部を、上記少なくとも1つのポリエステルを有する上記超臨界流体に曝す工程;および上記少なくとも1つのポリエステルを、上記酸化された基材物質の上または上記酸化された基材物質内にグラフトする工程を含む。
【0007】
さらなる実施形態において、本開示のプロセスは、セルロースを、超臨界流体を含む酸化媒体に曝して、酸化されたセルロースを形成する工程;少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、少なくとも1つの触媒および上記超臨界流体に接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;上記酸化されたセルロースの少なくとも一部を、上記少なくとも1つのポリエステルを有する上記超臨界流体と接触させる工程;および上記少なくとも1つのポリエステルを、上記酸化されたセルロースの上または上記酸化されたセルロース内にグラフトする工程を含む。
【0008】
(摘要)
ポリマーを基材物質の上または基材物質内にグラフトするプロセスが開示される。上記プロセスは、上記基材を、1つまたはそれより多くの脂肪族環状ポリエステルおよび触媒を含む超臨界流体組成物に曝す工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
生理学的構造物に接着できる移植可能なデバイスをコーティングする方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本開示は、超臨界流体中で脂肪族環状エステルの開環重合を介して、複合材物質を合成する系および方法を提供する。本明細書中で用いられる場合、用語「超臨界流体」は、「高密度流体(densified fluid)」と交換可能に使用され得、界面(例えば、液体、気体または固体の間)が存在しない、すなわち臨界状態での、温度および圧力を超えるあらゆる組成物を指す。
【0011】
複合材物質は、基材物質の少なくとも一部を、超臨界流体、脂肪族環状エステル、および必要に応じて触媒を含む組成物へと沈めることによって形成される。環状エステルの開環重合は、超臨界流体中で進行し、それによって、次に基材物質の表面上にグラフトされてコーティングを形成するポリエステルを形成する。本明細書中で用いられる場合、用語「グラフトする」は、ポリマーを基材に結合させて、コーティングを形成することを示す。実施形態において、ポリエステルは、基材物質の構造構成要素(例えば、細孔)内でからみ合わされ得る。
【0012】
上記基材物質は、任意の適切な生分解性物質から形成され得、この生分解性物質としては、例えば、ポリマー(ポリ(アミノ酸)(タンパク質(例えば、コラーゲン、(I型、II型、およびIII型)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミン)が挙げられる);ラミニンおよびフィブロネクチン(RGD)についての配列を含むペプチド;多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、およびセルロース);グリコサミノグリカン;ガット;およびそれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で用いられる場合、コラーゲンとしては、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、および/または合成コラーゲン(例えば、ヒトまたは細菌の組換えコラーゲン)が挙げられる。
【0013】
さらに、合成により修飾された天然ポリマーが利用され得る。このような修飾されたポリマーとしては、セルロース誘導体および多糖類誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる)が挙げられる。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは、実施形態において、本明細書中で集合的に「セルロース」と称され得る。
【0014】
実施形態において、上記基材物質は、酸化されたセルロースであり得る。酸化されたセルロースは、当業者の理解し得る範囲内で任意の技術を用いて形成され得る。セルロースは、酸化媒体(例えば、高密度流体または超臨界流体(二酸化窒素、二酸化炭素、およびそれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない))にそれを曝すことによって酸化され得る。実施形態において、上記酸化媒体としては、高密度流体または超臨界流体の組み合わせ(例えば、二酸化炭素に溶解された二酸化窒素)が挙げられ得る。セルロース物質の酸化反応は、酸化媒体および酸素の存在下で、閉じた系において、約10分間〜約20時間の期間、実施形態において、約1時間〜約10時間の期間、約20℃〜約60℃の温度で、実施形態において、約30℃〜約50℃の温度で、および約20バール〜約250バールの圧力で、実施形態において、約80バール〜約180バールの圧力で実施され得る。
【0015】
セルロース物質は、反応器に置かれ、それは、次に酸化媒体で満たされる。上記酸化媒体は、上記セルロースの量と比較して過剰に使用され得る。上記酸化媒体の量は、所望されるカルボキシル含有量を有する酸化されたセルロースを得るために選択される作動条件に基づいて調整され得る。高密度流体を用いてセルロース物質を酸化させる方法は、例えば、米国特許出願公開第2008/0194805号に開示され、その全開示は、本明細書中で参考として援用される。酸化されたセルロース止血剤物質を調製する方法はまた、例えば、米国特許第3,364,200号;同第4,626,253号;同第5,484,913号;および同第6,500,777号に開示され、そのそれぞれの全開示は、本明細書中で参考として援用される。さらなる実施形態において、基材は、ポリエチレンテレフタレートから形成され得る。
【0016】
実施形態において、上記基材物質は、任意の形態および構造のものであり得、メッシュ、泡、繊維、および粒子などが挙げられるが、これらに限定されない。上記基材物質が繊維性である場合、上記基材物質は、繊維性構造物を形成するのに適した任意の方法(編成、製織、不織技術、湿式スピニング、電子スピニング、押出し、および共押出しなどが挙げられるが、これらに限定されない)を用いて形成され得る。実施形態において、上記基材は、3次元構造を有するテキスタイル、例えば、米国特許第7,021,086号および同第6,443,964号に記載されるテキスタイルであり得、そのそれぞれの特許の全開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0017】
実施形態において、上記基材物質は、完全にセルロースから作られる繊維から構成され得る。他の実施形態において、上記基材物質は、セルロースおよび別の生物適合性物質を含む組成物から作られる繊維から構成され得る。さらに他の実施形態において、上記基材物質は、異なる組成物の繊維の組み合わせ(例えば、セルロース(100%セルロースか、またはセルロースおよび別の物質の組み合わせかのいずれか)を含む組成物から作られ得るいくつかの繊維、およびいくつかの他の天然または合成の生物適合性物質から作られるいくつかの繊維)から作られ得る。実施形態において、上記基材物質は、約5重量%〜約100重量%のセルロース、他の実施形態において、約20重量%〜約90重量%のセルロース、さらに他の実施形態において、約50重量%〜約80重量%のセルロースを含む繊維から作られ得る。上記基材物質の繊維はまた、従来の添加剤(例えば、可塑剤、着色料、または同様のもの)を含み得る。
【0018】
上記基材物質が泡である場合の実施形態において、上記基材物質は、泡またはスポンジを形成するのに適切である任意の方法を用いて形成され得、その方法としては、組成物の凍結乾燥またはフリーズドライが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態において、上記多孔性基材は、H.Tai et al.,“Putting The Fizz Into Chemistry:Applications of Supercritical Carbon Dioxide in Tissue Engineering,Drug Delivery and Synthesis of Novel Block Copolymers,”Biochem.Soc.Trans.35(2007),pp.516−521に記載される通りに、超臨界二酸化炭素をポリマー組成物を介して発泡させることによって形成され得、その全開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0019】
泡は、架橋されていても非架橋であってもよく、共有結合またはイオン結合を含んでいてもよい。泡を作るのに適した技術は、当業者の理解し得る範囲内である。実施形態において、上記泡は、約5重量%〜約100重量%のセルロース、他の実施形態において、約20重量%〜約90重量%のセルロース、さらに他の実施形態において、約50重量%〜約80重量%のセルロースを含み得る。セルロースの他に、上記泡は、任意の天然または合成の生物適合性物質を含み得る。上記泡はまた、従来の添加剤(例えば、可塑剤、着色料、または同様のもの)を含み得る。
【0020】
上記基材物質における細孔の大きさは、約2μm〜約300μm、実施形態において、約50μm〜約150μmであり得る。上記細孔は、あらゆる様式で並べられ得ることが予期される。例えば、上記細孔は、ランダムな様式または均一な様式で配置され得る。いくつかの実施形態において、上記細孔は、アルギン酸銅を使用して蜂の巣の形をした基材物質を作り出すように形成され得る。さらに他の実施形態において、上記細孔は、上記基材物質において、勾配を作り出すように配置され得る。上記勾配は、上記基材物質が生理学的流体を吸収する能力をさらに高め得る。本明細書中で用いられる場合、用語「勾配」は、上記基材の表面にわたって、および/または物質の全体での上記基材の一点から別の一点への、細孔の大きさにおける漸進的な移行(例えば、大きさの増加)を指す。
【0021】
上に言及されるように、コーティングは、環状脂肪族エステルの開環重合によって上記基材上に形成される。実施形態において、環状脂肪族エステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン);炭酸トリメチレンのアルキル誘導体;γ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシバレレート;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;炭酸エチレン;シュウ酸エチレン;およびそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0022】
基材物質の上または基材物質内での、脂肪族環状エステルの開環重合、および得られたポリマーのグラフト化は、超臨界流体および触媒の存在下で実施される。開環重合に適した超臨界流体は、セルロースの酸化に使用されるものと同じであり得、二酸化窒素および二酸化炭素が挙げられるが、これらに限定されない。実施形態において、上記超臨界流体は、超臨界流体の組み合わせ(例えば、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセトンおよびそれらの組み合わせに溶解されている二酸化窒素)を含み得る。反応は、120ppm未満の含水量を有する、不活性な、水分を含まない雰囲気(例えば、二酸化窒素)下で実施され得る。脂肪族環状エステルの開環重合は、約20℃〜約60℃の温度で、実施形態において、約30℃〜約50℃の温度で、および約20バール〜約250バールの圧力で、実施形態において、約80バール〜約180バールの圧力で実施され得る。
【0023】
実施形態において、開環重合は、触媒の存在下で起こり得る。上記触媒は、金属ベースまたは酵素ベースの触媒であり得る。金属ベースの触媒としては、金属アルコキシド(アルコールでのトリエチルアルミニウムの反応によって調製され得るアルミニウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド(酢酸亜鉛が挙げられる)、スズアルコキシド(第一スズオクトエート(スズ(ii)ビス−(2−エチルヘキサノエート)が挙げられる)が挙げられる)、希土類誘導体(イットリウムベースの触媒(例えば、Y(OCHCHOMe)、Y[N(SiMe)、ハロ架橋サマリウム(III)複合体(例えば、Sm(μ−X)(M(SiMe(THF)])、非ハロ架橋サマリウム(III)複合体(例えば、SmCp、Sm(NC、Sm(N(SiMe)が挙げられる)、ルイス酸金属ハロゲン化物(例えば、ZnCl)、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族環状エステルの開環重合に適した他の触媒は、Jerome et al.“Recent Advances in Synthesis of Aliphatic Polyesters by Ring−Opening Polymerization,”Advanced Drug Delivery Review 60(2008),pp.1056−1076に記載され、その全開示が本明細書中で参考として援用される。
【0024】
さらなる実施形態において、上記開環重合は、酵素による重合として実施され得る。酵素は、従って、ポリエステル鎖を形成することにおける触媒として働く。上記脂肪族環状エステルの開環重合からポリエステルを形成するための適切な酵素としては、シュードモナス属のファミリーのリパーゼ(例えば、Pseudomonas aeruginosa(リパーゼPA)、Pseudomonas cepacia(リパーゼPC)、Pseudomonas fluorescens(リパーゼPF)由来のリパーゼ、ならびにAspegillus niger(リパーゼA)、Candida antarctica(リパーゼCAまたはリパーゼB)、Candida cylindracea(リパーゼCC)、Klebsiella oxytoca(リパーゼK)、Mucor meihei(リパーゼMM)由来のリパーゼ)、クチナーゼ(例えば、Humicola insolens由来のクチナーゼ)およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0025】
上記開環重合はまた、必要に応じて開始剤の存在下で起こり得、その開始剤は、反応物(脂肪族環状エステルおよび基材物質を含む)中に存在する水であり得る。
【0026】
実施形態において、環状エステルの開環重合を開始する前に、上記基材物質は、超臨界流体中で、上に記載される超臨界流体における基材を曝すか、そうでなければ浸すことによって酸化され得る。上記基材の酸化およびグラフト化は、同じ反応器内で引き続いて行われ得る。実施形態において、一旦、上記基材物質が酸化されると、上記環状エステルおよび触媒は、超臨界流体に加えられて、重合およびグラフト化プロセスを同じ反応器内で開始し得る。これは、酸化された基材を、開環重合を実施する前に後処理する(例えば、洗浄、乾燥など)必要性を排除する。環状脂肪族エステルは、開環重合を受け、得られたポリエステルは、上記基材物質の上へと、または上記基材物質内にグラフトされる。得られたポリエステルは、上記基材内に挿入され得、相互貫通網目構造を作り出し、そして/またはその表面上にグラフトされる。実施形態において、上記基材物質は、上記超臨界流体中に残ったままであり得るか、または反応物が加えられる間に抜き出され得る。反応物を加える前に抜き出される場合、上記基材物質は、脂肪族環状エステルおよび触媒を含む超臨界組成物中に浸される。
【0027】
実施形態において、得られたポリマーグラフトされた基材は、コーティングされた基材の総重量の約1重量%〜約25重量%の量で、実施形態において、コーティングされた基材の総重量の約5重量%〜約10重量%の量で、グラフトされたポリマーを有し得る。
【0028】
使用圧力を超える圧力、または使用圧力と同じレベルの圧力を同時に維持しながら、反応の最後に、コーティングされた基材の洗浄が、希釈によって、反応器中の溶媒(複数可)および/または酸化媒体混合物の漏れ流量を生じることによって実施され得る。酸化媒体は、従って、高密度流体中に溶解した状態のままであり、次に徐々に排除され得る。希釈−洗浄プロセスはまた、酸化媒体およびコーティングされた基材内に存在し得た他の副産物を有効に除去することを可能にする。
【0029】
洗浄は、約30℃〜約50℃の温度で実施され得る。残留した酸化媒体の全てが排除されたことを確実にするために、不活性ガスを用いて、低圧で、有利に掃かれる。反応の最後に回収されるコーティングされた基材は、洗浄されて、反応副産物(例えば、HNO)を排除され得る。
【0030】
得られた脂肪族ポリマーグラフトされた基材は、次に多様な外科用および創傷の適用に適した種々の医学的デバイスを形成するために使用され得る。本開示に従う医学的デバイスは、組織、身体臓器、または内腔へと結合または移植されるのに適した任意の構造物であり得、この構造物としては、フィルム、泡、スリットシート、外科用綿撒糸、組織移植片、ステント、足場、支柱、創傷包帯、メッシュ、および/または組織増強が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
得られたデバイスは、例えば、内臓の壁の欠損および切開(腫瘍の除去、創傷、吻合、およびフィステルに起因する切開が挙げられる)の閉鎖、および治癒のために使用され得る。医学的デバイスは、胃腸管吻合の治癒を改善し得、フィステルの形成の管理および予防のための有効なアプローチを提供し得る。上記医学的デバイスはまた、ポリープ切除の合併症(例えば、出血および穿孔)を防ぎ得る。実施形態において、上記医学的デバイスは、鼠径ヘルニアおよび切開創ヘルニアの処置のためのメッシュで強化され得る。上記医学的デバイスは、約0.2mm〜約20mmの厚み、実施形態において、約0.5mm〜約10mmの厚みを有し得る。
【0032】
止血を提供する他に、上記医学的デバイスは、生物活性剤の送達のためにさらに使用され得る。従って、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物活性剤が、基材物質中もしくは基材物質の上、またはその上にグラフトされたポリエステル内に提供され得る。実施形態において、上記生物活性剤は、超臨界組成物中に溶解されて、ポリマーおよび/または基材物質への生物活性剤の組み込みを可能にし得る。上記生物活性剤は、次に、米国特許公開第2009/0269480号に記載されるように、超臨界流体の助けで上記基材物質に浸透し得、この米国特許公開の全開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0033】
用語「生物活性剤」とは、本明細書中で用いられる場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素または芳香)。あるいは、生物活性剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の剤、組織成長、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物、接着防止化合物、生物学的作用(例えば、免疫応答)を引き起こし得る化合物であり得るか、または、1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る。この生物活性剤は、物質の任意の適切な形態(例えば、フィルム、粉末、液体、およびゲルなど)で本医学的デバイスに付けられ得ることが予期される。
【0034】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝結因子、および酵素が挙げられる。生物活性剤を組み合わせたものが使用され得ることもまた意図される。
【0035】
接着防止剤は、移植可能な医学的デバイスと、標的組織に対向する周囲組織との間で接着が形成されることを防止するために使用され得る。さらに、接着防止剤は、コーティングされた移植可能な医学的デバイスと、包装材料との間で接着が形成されることを防止するために使用され得る。これらの剤のいくつかの例としては、親水性ポリマー(例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールおよびそれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
適切な抗菌剤としては、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、プロテイン銀、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、本開示の生物活性コーティングにおいて生物活性剤として含有され得る。
【0037】
他の生物活性剤としては、局所麻酔薬、非ステロイド性抗受精剤、副交感神経様作用剤、精神療法剤、トランキライザ、うっ血除去薬、鎮静催眠薬、ステロイド、スルホンアミド、交感神経様作用剤、ワクチン、ビタミン、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ)、鎮痙薬、抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン)、鎮咳薬、気管支拡張薬、心臓血管剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン)、アルカロイド、鎮痛薬、麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど)、非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、およびd−プロポキシフェンなど)、オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン)、抗がん剤、抗痙攣薬、制吐薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、およびフェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性剤、化学療法剤、エストロゲン、抗菌剤、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、ならびに免疫学的剤が挙げられる。
【0038】
適切な生物活性剤の他の例としてはまた、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、それらのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント、例えば、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原)、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子)、骨形成タンパク質、TGF−β、タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト、核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi)、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ならびにリボザイムが挙げられる。
【0039】
本開示はまた、種々の医学的デバイスを処理するための超臨界流体を使用する方法を提供し、この医学的デバイスとしては、縫合糸、ファスナー、ヘルニアメッシュ、ステント、移植物、三角布、整形外科用ピン、神経修復デバイス、腱修復デバイス、骨髄足場、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本開示に従う医学的デバイスは、任意の適切な合成生分解性ポリマーおよびコポリマー(環状エステルの開環重合によって形成される、上に記載されるものが挙げられる)から形成され得る。実施形態にいおて、医学的デバイスを形成するのに適した環状エステルとしては、環状脂肪族ポリエステルが挙げられる。適切な環状脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン);炭酸トリメチレンのアルキル誘導体;γ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシバレレート;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;炭酸エチレン;シュウ酸エチレン;およびそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。開環重合は、開始剤の存在下で実施され得、この開始剤としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、マンニトール、ソルビトール、メトキシジエチレングリコール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、触媒(上で議論される金属ベースまたは酵素ベースの触媒、ならびに金属塩化物、エステル、アルコキシド、およびそれらの組み合わせが挙げられる)が、使用され得る。
【0040】
さらなる実施形態において、合成生分解性ポリマーとしては、微生物脂肪族ポリエステル(例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA))が挙げられ得る。PHAは、天然脂肪酸のオキシ−誘導体として生産され得、約180℃の融点、約200℃の分解温度、約10%〜約80%の結晶度、および約50キロダルトン(kDa)〜約800kDaの分子量を有し得る。
【0041】
上に記載される脂肪族ポリエステルから形成される本開示に従う医学的デバイスは、後処理されて、そこから種々の不純物(例えば、残留したモノマーおよび金属触媒)を除去し得る。特に、溶融押出し、または射出成形によって処理されるポリマー樹脂中に見出される残留した金属触媒は、ポリマー鎖の熱酸化分解を引き起こし得る。さらに、完成した医学的デバイス中の残留したモノマーおよび遷移金属不純物の存在はまた、インビボでの分解プロフィールに影響を及ぼし得る。本開示は、超臨界流体(例えば、scCO)で医学的デバイスを処理することによる医学的デバイスからの種々の不純物の後処理または抽出を提供する。超臨界流体は、医学的デバイスに浸透すること、およびそこに見出される不純物を溶解させること、および上記デバイスから不純物を抽出することが可能である。
【0042】
さらなる実施形態において、上記後処理は、医学的デバイスを超臨界流体で処理して種々の剤を上記医学的デバイス中に充填する工程を含み得、その剤としては、着色料、顔料、色素、生物活性剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの剤は、初めに超臨界流体に溶解される。上記医学的デバイスは、次に、超臨界流体の高率の拡散に起因して、溶解された剤を上記医学的デバイスに分布させる超臨界溶液に接触させられる。
【0043】
実施形態において、上記超臨界流体は、形成された医学的デバイスを膨張させるために使用され得る。上記超臨界流体の除去の速度、つまり、上記医学的デバイスが上記超臨界流体で処理されている容器の減圧の速度は、上記医学的デバイス内に空隙または細孔の形成を達成するように制御され得る。減圧の速度は、細孔の数および大きさに、直接的に関連している。上記超臨界流体の迅速な排出は、より大きな空隙を生じ、このことは、上記医学的デバイスの操作特徴を改変する(例えば、柔軟性)。減圧速度の他に、細孔および/または空隙の大きさは、上記医学的デバイスが形成される物質のタイプに依存する。
【0044】
種々の剤を送達するための溶媒として使用される他に、本開示に従う医学的デバイスは、上記超臨界流体内で形成され得る。形成工程としては、成形、押出し、延伸、アニーリング、およびそれらの組み合わせが挙げられ得る。上に記載されるように、上記超臨界流体は、種々の剤を上記医学的デバイス中に送達するためのキャリアとして働く。キャリアとして働く他に、上記超臨界流体はまた、可塑剤として働き、機械的特性を改変する(例えば、上記医学的デバイスの分解プロフィール)。
【0045】
実施形態において、超臨界流体は、イソシアネートとともに、上に記載される架橋されている基材のための溶媒として使用され得る。適切なイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、および脂環式のイソシアネート(ポリイソシアネートが挙げられる)が挙げられる。例としては、芳香族ジイソシアネート(例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、および/または2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート);脂肪族ジイソシアネート(例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート、および/または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート);ならびに脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、および/または水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート)が挙げられるが、これらに限定されない。実施形態において、前述のイソシアネートの組み合わせが利用され得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、イソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p−TMXDI)、およびそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0047】
さらなる実施形態において、上記超臨界流体は、2つまたはそれより多くの基材および/または医学的デバイスを溶接するために使用され得る。上記基材は、上記超臨界流体に供されて、初めに物質を膨張させて、溶接の間のより強い結合を提供し得る。例えば、メッシュおよびフィルム基材は、互いに隣接して位置し得、超臨界二酸化炭素(scCO)への曝露に際して、上記基材および上記フィルムのうちの少なくとも1つは、scCO中で十分に膨張し、2つの物質を共に溶接する。超臨界流体は、任意の適切な医学的デバイスへの種々の基材(例えば、コラーゲンベースのフィルム)の結合のために使用され得、この医学的デバイスとしては、縫合糸、ヘルニアメッシュ、ならびに本開示に記載される任意の他の医学的デバイス、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0048】
以下の実施例は、本開示の実施形態を説明するために提出されている。これらの実施例は、例示的のみであることが意図され、本開示の範囲を限定することは意図されない。また、割合および百分率は、そうでないと示されない限り、重量による。本明細書中で用いられる場合、「室温」は、約20℃〜約25℃の温度を指す。
【0049】
実施例
実施例1
目視制御のための2つのサファイアウインドウを備えている約250mLの温度調節された反応器において、ポリカプロラクトンを、scCO中でのε−カプロラクトンの開環重合によって、微粉化結晶性セルロースの上にグラフトする。圧力および温度のセンサーを、作動条件を制御するために使用し、デジタルレコーダーに繋ぐ。上記反応器を、反応物の充填前に窒素でパージする。
【0050】
約50グラムのε−カプロラクトンモノマー、約0.00245ミリリットル(mL)の第一スズオクトエート(Sn(Oct))触媒、および約10グラムの微粉化結晶性セルロースを上記反応器に加える。この反応混合物を、穏やかな磁気撹拌を介して均質化する。上記反応器を、次に、排出し、二酸化炭素(CO)供給システムに繋ぐ。液体COを、室温で、空気ピストンポンプによって約140バールまで送り込み、次に約40℃まで徐々に加熱して約210バール〜約215バールの圧力を達成する。
【0051】
重合を約24時間進行させる。上記反応器を、次に約25℃まで冷却し、未反応のモノマーを収集するために、ニードル弁を介してCOをヘプタンへと放出する。微粉化セルロースを白い粉末として収集する。ポリカプロラクトンのグラフトされた画分を定量するために、上記セルロースを、グラフトされていないポリカプロラクトンを溶解させるために、トルエンで数回洗浄する。上記セルロースを、次に、減圧下で約40℃にて一晩、一定の重量まで乾燥させる。
【0052】
実施例2
二酸化窒素(NO)中でのセルロースメッシュの酸化を、目視制御のための2つのサファイアウインドウを備えている約250mLの温度調節された反応器において行う。圧力および温度のセンサーを、作動条件を制御するために使用し、デジタルレコーダーに繋ぐ。上記反応器を、反応物の充填前に窒素でパージする。
【0053】
上記反応器を、初めに約40℃まで加熱し、次にセルロースメッシュサンプルを、上記反応器内に、TEFLON(登録商標)で作られた支持格子の上に置く。液体COを空気作動ピストンポンプによって送り込む。コリオリ型質量流速計を、上記反応器に入れられるCOの量を制御するために使用する。反応物NOを、50mLの高圧空気作動シリンジ注入器を用いることによって上記反応器内に入れる。NOは、反応器内を約4時間循環する。COを上記反応器に送り込み、酸化のあらゆる酸性の副産物および残余の吸着したNOを除去することによって、酸化後洗浄を行う。
【0054】
実施例3
実施例2のセルロースの酸化を行った同じ反応器において、酸化されたセルロースメッシュの上へのポリカプロラクトングラフト化を、scCO中でのε−カプロラクトンの開環重合によって行う。上記反応器を、反応物の充填前に、初めにNOでパージする。約50グラムのε−カプロラクトンモノマーおよび約0.00245ミリリットル(mL)の第一スズオクトエート(Sn(Oct))触媒を上記反応器に加える。支持格子(実施例2の酸化されたセルロースメッシュを含む)を、上記反応器内へと下ろして、実施例2の酸化されたセルロースメッシュを反応混合物中に浸す。
【0055】
上記反応混合物を、穏やかな磁気撹拌を介して均質化する。上記反応器を、次に、排出し、CO供給システムに繋ぐ。液体COを、室温で、空気ピストンポンプによって約140バールまで送り込み、次に約40℃まで徐々に加熱して約210バール〜約215バールの圧力を達成する。
【0056】
重合を約24時間進行させる。上記反応器を、次に約25℃まで冷却し、未反応のモノマーを収集するために、ニードル弁を介してCOをヘプタンへと放出する。反応産物を白い粉末として収集する。ポリカプロラクトンのグラフトされた画分を定量するために、上記メッシュを、グラフトされていないポリカプロラクトンを溶解させるために、トルエンで数回洗浄する。上記メッシュを、次にまた、イソプロパノールで洗浄する。最終産物を、次に、減圧下で約40℃にて一晩、一定の重量まで乾燥させる。
【0057】
上に開示される特徴および機能、ならびに他の特徴および機能、またはそれらの改変体は、望ましく組み合わされて、多くの他の異なる系もしくは適用になり得ることが認識される。それらにおける、種々の現在予見されない、または予想されない改変体、修飾、バリエーション、または改善は、当業者によって引き続いてなされ得、これらはまた、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図されることも認識される。特許請求の範囲において具体的に列挙されない限り、特許請求の範囲の段階または構成要素は、あらゆる特定の順番、数、位置、大きさ、形、角度、または物質に関して、明細書またはあらゆる他の特許請求の範囲から含意されるべきでも、持ち込まれるべきでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、超臨界流体中で少なくとも1つの触媒に接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;
基材物質の少なくとも一部を、該少なくとも1つのポリエステルを有する該超臨界流体に曝す工程;および
該少なくとも1つのポリエステルを該基材物質の上または該基材物質内にグラフトする工程を含む、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリエステルが、約20℃〜約60℃の温度、および約20バール〜約250バールの圧力で形成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記超臨界流体が、超臨界二酸化窒素、超臨界二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの脂肪族環状エステルが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレン、炭酸トリメチレンのアルキル誘導体、γ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシバレレート、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、炭酸エチレン、シュウ酸エチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの触媒が、金属アルコキシド、希土類複合体、および酵素からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記金属アルコキシドが、アルミニウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、スズアルコキシド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記基材物質が、酸化されたセルロースを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
基材物質を酸化して、酸化された基材物質を形成する工程;
少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、超臨界流体中で少なくとも1つの触媒と接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;
該酸化された基材物質の少なくとも一部を、該少なくとも1つのポリエステルを有する該超臨界流体に曝す工程;および
該少なくとも1つのポリエステルを、該酸化された基材物質の上または該酸化された基材物質内にグラフトする工程を含む、プロセス。
【請求項9】
前記基材物質を酸化させる工程が、該基材物質を酸化媒体に曝す工程を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記酸化媒体が、超臨界二酸化窒素、超臨界二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される超臨界流体である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記少なくとも1つのポリエステルが、約30℃〜約50℃の温度、および約80バール〜約180バールの圧力で形成される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの脂肪族環状エステルが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレン、炭酸トリメチレンのアルキル誘導体、γ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシバレレート、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、炭酸エチレン、シュウ酸エチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの触媒が、スズアルコキシドおよび酵素からなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項14】
前記スズアルコキシドが、第一スズオクトエートである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
セルロースを、超臨界流体を含む酸化媒体に曝して、酸化されたセルロースを形成する工程;
少なくとも1つの脂肪族環状エステルを、少なくとも1つの触媒および該超臨界流体に接触させて、少なくとも1つのポリエステルを形成する工程;
該酸化されたセルロースの少なくとも一部を、該少なくとも1つのポリエステルを有する該超臨界流体と接触させる工程;および
該少なくとも1つのポリエステルを、該酸化されたセルロースの上または該酸化されたセルロース内にグラフトする工程を含む、プロセス。
【請求項16】
前記超臨界流体が、超臨界二酸化窒素、超臨界二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのポリエステルが、約30℃〜約50℃の温度、および約80バール〜約180バールの圧力で形成される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記少なくとも1つの脂肪族環状エステルが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレン、炭酸トリメチレンのアルキル誘導体、γ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシバレレート、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、炭酸エチレン、シュウ酸エチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
前記少なくとも1つの触媒が、金属アルコキシド、希土類複合体、および酵素からなる群から選択される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項20】
前記金属アルコキシドが、アルミニウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、スズアルコキシド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のプロセス。

【公開番号】特開2012−188664(P2012−188664A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52917(P2012−52917)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】