説明

軟質の樹脂フィルム製ケース

【課題】静電気トラブルから通帳類の磁気情報記録部に記録されている情報が破壊されるのを防ぐ通帳及び磁気カード等の軟質樹脂フィルム製ケースを提供する。
【解決手段】磁気情報書込部4を有する預金通帳2及び証券類を収納する軟質の樹脂フィルム製ケース1において、このケース1を構成する基材フィルム3に帯電防止剤を練り込む、又は内面に帯電防止剤をコーティングする、又は帯電防止剤を含んだアンカーコート剤を利用して樹脂フィルムをラミネートする、又は帯電防止剤を含んだ印刷インキを用いて基材フィルム1の内面に印刷を施す、アルミニュウム箔又はこの蒸着層を形成する、等の方法により、静電気を除電して静電気により通帳2の磁気情報記録部4に記録された情報が破壊されるのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行の預金通帳あるいはキャッシュカード、証券、身分証明カード、住基カード類(以下「通帳類」という。)であって、磁気情報記録部を有する通帳類を収納するための軟質の樹脂フィルム製ケースに関し、更に詳しくは、ケース内に収納されている通帳類の磁気情報を静電気トラブルから防護するための提案である。
【背景技術】
【0002】
現在の通帳類の場合、各種の個人情報等が書き込まれた磁気情報記録部が裏表紙の一部等に設けられている。
しかし、このような磁気情報記録部に書き込まれた情報は、静電気や電磁波により破壊される例がある。例えば、帯電した人が通帳類の磁気情報記録部に触れると、ここでスパークが生じ、記録が破壊されることがある。特に、空気が乾燥している冬期においては、自然界に対しての放電が行われにくいために、身体に静電気を帯電している場合が多く、放電ショックが頻繁に発生することは誰もが経験することである。
【0003】
このような静電気による放電ショックは、前記のように通帳類の磁気情報記録部において発生すると、書き込まれている情報が破壊されてしまうことから、自動払い戻し機等においては、機械が書き込まれている情報を読みとることが出来ず、その都度、窓口では個人情報の確認等の作業を行う必要があり、手間と時間がかかる。また、夜間において自動払い戻し機を利用しようとしたときに、静電気トラブルが発生すると、翌日まで待たなければならないという不便が発生する。
このような静電気トラブルは、人対通帳類の場合ばかりでなく、通帳類を軟質の樹脂製のケースに収めて携帯している場合に、ケースがハンドバックやその中身、あるいはポケットに触れたり、複数の通帳類を携帯している場合には、このケース同士が擦れ合うことによって、ケース自体が帯電してしまい、この帯電した静電気が磁気情報記録部に接触して、書き込まれている磁気情報を破壊するというトラブルもある。
【0004】
しかし、現在、軟質の樹脂ケースについて、上記のような静電気トラブルの発生を有効に防止する提案はなく、あるのは、次のような内容のものだけである。
【特許文献1】特開平7‐149087号公報 この内容は、「2枚の長方形のシートの三辺を貼り合わせてなり、かつ、貼り合わせてない辺に対向する辺cの近傍のシートにカード収納時にカード4の一辺を露出させる窓部2を有するカードケースは、カード4取り出しの際に、窓部2から露出したカードの一辺を親指等で押すことができるので、容易にカードを取り出すことができる。また、少なくとも1枚のシートが導電性を有すれば、カードをカードケースから取り出す前に、使用者が導電性を有するシートに触れることとなり、静電気を除電することができる。」というものである。しかし、この公知例は、使用者がシートに触れることにより静電気を除電するため、カードケース自体に帯電しているのが前提であることから、このカードケースの内容を通帳ケースに適用することはできない。
【特許文献2】特開平10‐307902号公報 この内容は、「導電体層7と絶縁性の電磁波シールド層8とを用いてICカード収容領域を規定し、このICカード収容領域に、挿入孔6を通して能動素子をもつICカードを収容する。その際、ICカード収容領域にICカードをそれの接触端子部が導電体層及び電磁波シールド層を設けた部分に対向する姿勢で収容することが好ましい。電磁波シールド層は、金属粉末或いは軟磁性粉末、誘電体粉末、及び有機結合材を含むとよい。その場合、金属粉末或いは軟磁性粉末は、偏平状及び/又は針状の粉末であり、ICカードの表面と平行になるように配向されて層状になっていることが好ましい。」というものである。しかし、この公知例は、ハードケースを前提としており、軟質の樹脂で形成されたケースには適用できない。
【特許文献3】特開昭62‐146696号公報 この内容は、静電気対策として、ハードケースの内面に導電性金属箔をラミネート加工し、このケース内にICカードを入れておくことにより、ICカードが静電気により障害を受けるのを防止するというものである。しかし、この公知例も、軟質の樹脂ケースではないため、通帳類を入れて携帯するには不便であるばかりでなく、コストもかかり、通常は無料で提供する通帳類のケースには適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、軟質の樹脂フィルム製通帳類のケースにおいて、低コストにより静電気トラブルの発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、磁気情報記録部を有する預金通帳及び証券、各種の磁気カード類を収納する軟質の樹脂フィルム製ケースにおいて、このケースに帯電防止性能を付与して成ることを特徴とするものである。
【0007】
更に、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の軟質の樹脂フィルム製ケースにおいて、前記帯電防止性能が帯電防止剤をフィルムに練り込んで形成した層、又はフィルムに帯電防止剤をコーティングした層、又はフィルムに帯電防止剤を含んだアンカーコート剤を利用して樹脂フィルムをラミネートした層、又は基材フィルムの内面に帯電防止剤を含んだ印刷インキを用いて塗工した層、又は帯電防止性能付与手段がアルミニュウム箔又はアルミニュウム蒸着層から成ることを特徴とするものである。
【0008】
更に、請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載の軟質の樹脂フィルム製ケースにおいて、前記印刷インキには水性インキが用いられていることを特徴とするものである。
【0009】
更に、請求項4に記載の発明においては、請求項1乃至3の何れか1項に記載の軟質の樹脂フィルム製ケースにおいて、通帳類の出し入れ口には、ジッパーが取り付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るケースは、上記のとおり帯電防止層により発生した静電気の除電対策が講じられているため、通帳類の磁気情報記録部に書き込まれている情報が静電気により破壊される心配がない。
よって、銀行の窓口等においては、この静電気トラブルに対する対応に時間と手間をとられることがない。
また、夜間において、静電気トラブルにより、自動払い戻し機の利用ができなくなるということもなくなる。
また、樹脂フィルムに対する帯電防止層の付加手段は、製膜工程、あるいは製袋工程において簡単に採用し、実用化できるため、コスト的にも有利である。
また、印刷インキに水性のものを使用することにより、環境対策にも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においてケースの素材となる軟質の樹脂フィルム(基材)は、現在多く採用されているエンボス加工を施したナイロンあるいはその他の樹脂フィルムとして次のようなもを挙げることができる。
1.ポリエチレンテレフタートなどのポリエステルフィルム
2.ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム
3.ポリビニルアルコールフィルム
4.エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム
5.エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化合物
また、基材フィルムには単層のものでも良いが、複層化したものを用いても良い。
【0012】
帯電防止層は、ベタイン系界面活性剤を含有した帯電防止剤、あるいは界面活性剤を含有せず、帯電防止性能に優れた帯電防止剤として、例えば、ボンディップPW、ボンディップPA(登録商標 アルテック株式会社)等を用いることができる。また、アルミニュウム箔、アルミニュウム蒸着等により帯電防止層を形成することができる。なお、使用する帯電防止剤は、効果の優劣は別として、現在公知のものならばすべて用いることができる。
帯電防止層の形成方法としては、帯電防止剤利用の場合は、製膜前のフィルム原料中に練り込み、そのまま製膜する方法、あるいは、帯電防止剤をアンカーコート剤に含有させて他のプラスチックフィルムとのラミネートに用いる方法、あるいは基材フィルムにコーティングする方法、あるいは印刷インキに含有させて、例えば、グラビア印刷技術により塗工する方法等を用いることができる。
アルミニュウム箔の場合は、基材フィルムの内面に貼り合わせる。アルミニュウム蒸着の場合も、基材フィルムの内面に形成する。但し、損傷を防ぐために、樹脂フィルム又は樹脂コーティング層をアルミニュウム箔又はアルミニュウム蒸着の表面(内面)に形成すると良い。
以上のフィルム構成は、ケースの用途等により、最適なものを選択して用いる。
【実施例】
【0013】
図1において、(a)は通帳、(b)はケースを示し、このケース1は、基材フィルム3としてエンボス加工を施した6−ナイロンを使用し、この基材フィルム3の内面に、帯電防止層5として、ボンディップを主剤とし、これに硬化剤、水を加えたものをグラビアコーターを用いて塗工して構成したフィルムを用いて製袋した。
帯電防止層5をアルミニュウム箔又はアルミニュウム蒸着で形成する場合は、前記帯電防止層5がこれらの層となる。
4は、通帳2に貼り付けた磁気情報記録部であって、ここには、預金者の個人情報が書き込まれている。
【0014】
図3(a)は、基材フィルム3に帯電防止剤を練りこんで帯電防止性能を付加した例、(b)は基材フィルム3の内面に帯電防止剤含有のアンカーコート材6を用いてポリエチレンフィルム7をラミネートしたフィルムの例、(c)は基材フィルム3の内面に帯電防止剤含有の水性印刷インキ(東洋インキ製造株式会社製 水性インキ JW250使用)を用いて印刷(ベタ印刷)し、帯電防止印刷層8を形成した例である。
図4は、ケース1の通帳類の出し入れ口9にジッパー10を取り付けて、封を可能にしたケース1の例である。
帯電防止性能を有する印刷インキについては、前記の帯電防止層の形成以外に、銀行名等の印刷を含めて水性インキを用いることにより、環境問題に配慮した内容とすることができる。
【0015】
以上に説明した各実施例のケース1について、表面固有抵抗測定装置(ヘイスタ 三菱油化電子株式会社製)を用いて摩擦により静電気を発生させたときの帯電状況を測定したところ、すべてにおいて、静電気の帯電は解消していた。
【産業上の利用可能性】
【0016】
1.各種の銀行預金通帳ケース
2.キャッシュカード
3.株券、各種の証券等のケース
4.各種の証明、入館証、住基カード、免許カード等のカードケース
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】通帳とケースを示し、(a)は通帳、(b)はケース
【図2】基材フィルムと帯電防止層の断面図
【図3】基材フィルムに対する帯電防止手段の付加例を示し、(a)は基材フィルムに帯電防止剤を練り込んだ例、(b)はアンカーコート材に含有させてフィルムをラミネートした例、(c)は印刷インキに含有させて印刷により塗工した例の説明図
【図4】本発明に係るケースの通帳出し入れ口にジッパーを取り付けた例の説明図
【符号の説明】
【0018】
1 ケース
2 通帳
3 基材フィルム
4 磁気情報記録部
5 帯電防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気情報記録部を有する預金通帳及び証券、各種の磁気カード類を収納する軟質の樹脂フィルム製ケースにおいて、このケースに帯電防止性能を付与して成る軟質の樹脂フィルム製ケース。
【請求項2】
前記帯電防止性能が帯電防止剤をフィルムに練り込んで形成した層、又はフィルムに帯電防止剤をコーティングした層、又はフィルムに帯電防止剤を含んだアンカーコート剤を利用して樹脂フィルムをラミネートした層、又は基材フィルムの内面に帯電防止剤を含んだ印刷インキを用いて塗工した層、又は帯電防止性能付与手段がアルミニュウム箔又はアルミニュウム蒸着層から成ることを特徴とする請求項1に記載の軟質の樹脂フィルム製ケース。
【請求項3】
前記印刷インキには水性インキが用いられていることを特徴とする請求項2に記載の軟質の樹脂フィルム製ケース。
【請求項4】
前記ケースにおいて、通帳類の出し入れ口には、ジッパーが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の軟質の樹脂フィルム製ケース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−195439(P2008−195439A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34189(P2007−34189)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000237787)富士特殊紙業株式会社 (14)
【出願人】(503097646)株式会社山順 (5)
【Fターム(参考)】