説明

軟質ポリウレタンフォームおよびその製造方法

【課題】 従来の軟質ポリウレタンフォームの欠点であった紫外線等による変色、上記提案の反応性のアンバランスによる不均一なセル状態、スコーチの発生等の問題点を解決し、従来の生産状況に適合する軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】 有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、発泡剤(D)、整泡剤(E)、の混合液を反応発泡、硬化させて得られる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、上記有機ポリイソシアネート成分(A)が、モノオールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)と、水酸基を2つ以上含むアルコールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)の混合物を用いることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広い用途に用いられている軟質ポリウレタンフォームにおいて、太陽光等の光に暴露しても長期に渡ってフォームの変色が少ない軟質ポリウレタンフォーム、特に肩パット、ブラパッド等の衣料品、ナプキン、紙おむつ等のサニタリー用品、化粧パフ等の化粧品用、靴、寝具、フレームラミ、家具等に適した軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟質ポリウレタンフォームは、柔軟性と弾力性等の優れた性能により、クッション等車両や家具、ブラパッドや肩パッド等の衣料用途等、幅広く使用されており、その製造に当たっては、トルエンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系のポリイソシアネートが使用されている。しかし、芳香族ポリイソシアネートを用いて得られるポリウレタンフォームは、太陽光線等によって容易に変色するという問題がある。ポリウレタンフォームが変色、特に黄変する原因は、紫外線によりベンゼン環のキノイド化によるものと考えられ、このような黄変を防止する手段として、芳香族ポリイソシアネートに代えて脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートを使用した軟質ポリウレタンフォームが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、脂肪族又は脂環式のポリイソシアネートに対し、特殊な触媒を使用する技術が記載されており、特許文献2には、イソシアネートとしてNCOが芳香族環に直接結合していないポリイソシアネートを使用してポリウレタンの色安定性が得られることが開示されている。
【0004】
しかし、これらの提案において、(1)脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートを用いてポリウレタンフォームを製造しようとする場合、反応のバランス調整が難しく部分的な反応の不均一性、硬化と発泡のアンバランス等により荒いセル、陥没が発生する問題、又は独立気泡状態を有する部分による変形する問題、(2)変色防止剤を添加しないと発泡時にスコーチが発生する問題、等がある。
【0005】
また、最近では特許文献3のように、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(IPDI)を用い、触媒としてスズ系の触媒と3級アミン触媒であるジメチルアミノエチルエーテル及び/又はトリエチレンジアミンを併用することを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法が開示されている。
【0006】
しかし、これらの提案において、供給安定性に欠け高価なIPDI等特定の脂環族イソシアネートの使用に限定されてしまう問題がある。
【0007】
さらに、特許文献4のように,脂肪族イソシアネートからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物を用いてフォームを成型する選考技術が示されている。
【0008】
しかし、当該技術は反応性の乏しい脂肪族イソシアネートを使用しているため、成型性を保つのに活性の高い触媒を必要とし,活性の高いアルカリ金属の酢酸塩を用いると、成型したフォームから強い酢酸臭がするといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭50−64389号公報
【特許文献2】特開昭52−128997号公報
【特許文献3】特開平10−36543号公報
【特許文献4】特開2005−48038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の軟質ポリウレタンフォームの欠点であった紫外線等による変色、上記提案の反応安定性が低いことによる不均一なセル状態、スコーチの発生等の問題点を解決し、従来の生産状況に適合する軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述の課題を解決し、優れた耐変色性を有し、かつ従来の生産状況に適した成形性を備えた軟質ポリウレタンフォーム用組成物を提供するために鋭意検討の結果、見出されたものである。
【0012】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(8)に示されるものである。
(1) 有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、発泡剤(D)、整泡剤(E)の混合液を反応発泡、硬化させて得られる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、上記有機ポリイソシアネート成分(A)が、モノオールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)と、水酸基を2つ以上含むアルコールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイ
ソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)の混合物を用いることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
(2) 前記の有機イソシアネート(A1)と(A2)の比率が、(A1)/(A2)=80/20〜30/70である(1)に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
(3) 前記のポリオール(B)の公称平均官能基数が2〜6、数平均分子量が50〜20,000のポリオール(B)からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
(4) 前記のイソシアネート(A)およびポリオール(B)のどちらか一方または両方に,ヒンダードアミン系光安定剤を添加して使用する(1)〜(3)に記載する軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
(5) 前記触媒(C)として、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7とスタナスオクテートを用いることを特徴とする(1)〜(4)に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
(6) (1)〜(5)に記載の製造方法により得られた軟質ポリウレタンフォームを使用する衣料品用成型品。
(7) (1)〜(5)に記載の製造方法により得られた軟質ポリウレタンフォームを使用するサニタリー用成型品。
(8) (1)〜(5)に記載の製造方法により得られた軟質ポリウレタンフォームを使用する化粧用成型品。
(9) (1)〜(5)に記載の製造方法により得られた軟質ポリウレタンフォームを使用する靴用成型品。
【発明の効果】
【0013】
本発明による製造方法によってこれまでの課題であった紫外線、NOx及び熱に対して優れた耐変色性を備えた均一で美しいセル構造を有する軟質ポリウレタンフォームが得られる。更に本発明の製造方法によれば、イソシアネートによる作業環境の悪化を防止しつつ長期に渡ってフォームの変色が少ない軟質ポリウレタンフォームを得ることができ、商業的に広い用途へ利用することが可能となることが期待できる。
また,ブラパッド、衣料や靴等の用途では圧縮残留歪が重要な物性となるが,本発明によって得られるフォームでは圧縮残留歪が非常に良く,これらの用途に適している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を更に詳細に説明する。本発明に使用される有機ポリイソシアネート(A)は、モノオールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)と、水酸基を2つ以上含むアルコールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)を使用する。ただし、必要に応じて、その他の有機ポリイソシアネートを使用することも可能である。
【0015】
アロファネート組成物に使用する水酸基含有化合物は、アルコール性水酸基含有化合物であり、水酸基が1つのモノオールおよび水酸基を2つ以上含むアルコールがある。
具体的には下記のものが挙げられる。
<低分子量脂肪族アルコール>
モノオール:
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、異性ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びヘプタノール、アリルアルコール、2−エチルヘキサノール、炭素原子数10〜20の脂肪族アルコール。
水酸基を2つ以上含むアルコール:
エタンジオール、プロパンジオール−1,2、プロパンジオール−1,3、ブタンジオール−1,2、ブタンジオール−1,3、ブタンジオール−1,4、ペンタンジオール−1,5、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール−1,6、ヘキサンジオール−2,5、3−メチルペンタンジオール−1,5、2−メチル−2−プロピルプロパンジオール−1,3、2,2−ジエチルプロパンジオール−1,3、2−エチルヘキサンジオール−1,3、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3、トリメチル−ヘキサンジオール−1,6、デカンジオール−1,10、ドデカンジオール−1,2、2−ブタンジオール−1,4、2−メチレンプロパンジオール−1,3、グリセロール、ブタントリオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロパンジオール−1,3、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エチレングリコールモノアルキル−もしくは−アリールエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール並びにテトラエチレングリコール。
<脂環式アルコール>
モノオール:
シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、4−tert−ブチルシクロヘキサノール、メントール、ボルネオール及びイソボルネオール、2−ヒドロキシデカリン。
水酸基を2つ以上含むアルコール:
1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン,1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2−メチル−2,4−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−ペンタン、フルフリル及びテトラヒドロ−フルフリルアルコール、ビス−ヒドロキシメチルノルボルナン並びにジヒドロキシメチル−トリシクロデカン。
<高分子ポリオール>
ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール。また、特に公知の1〜6個の水酸基を有するポリエーテルポリオールも使用することができ、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン、酸化スチレン又はエピクロロヒドリンのようなエポキシドを重合させるか、又はアルコールもしくはフェノールのような反応性水素原子を有する出発化合物、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール−1,3、プロピレングリコール−1,2、トリメチロールプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパンに、任意に混合物状態で又は順に加えることによって製造し得る。チオジグリコール自体の、及び/又は別のグリコール、ジカルボン酸もしくはホルムアルデヒドとの縮合生成物をポリチオエーテルとして使用してもよい。この生成物は、補助成分に応じて、混合ポリチオエーテル、ポリチオエーテルエステル又はポリチオエーテルポリアセタールである。
本発明では、当該アルコール性水酸基含有化合物は、少なくとも炭素数1〜40のアルコール化合物を含むことが好ましい。
【0016】
アロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物を製造する出発材料として使用するジイソシアネートは、脂肪族系或いは脂環族系のものであれば特に制限するものではない。脂肪族ジイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類が、また脂環族ジイソシアネートの例として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシレンジイソシアネート(水添XDI)シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類がある。なお、芳香環を有するがイソシアネート基が直接芳香環に結合していないキシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)も脂肪族ジイソシアネートに属するものとして本発明で使用することができる。本発明においては、商業的な製造を考慮した場合、その生産量や価格からHDIを使用することが好適である。ここで、HDIの蒸気圧が非常に低いために作業環境を考慮した場合、使用されるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物中に含まれる遊離のHDIが1質量%以下であるように調整されることが好ましい。
【0017】
アルコール性水酸基含有化合物と脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物を製造する際に用いる触媒としては、すでに公知となっているいずれの塩基性化合物も使用し得る。本発明において適している触媒は、カルボン酸、例えば炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸及び任意に置換した安息香酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、及び酸化アルカリ土類金属の塩である。特にカルボン酸ジルコニウム、カルボン酸ジルコニルの塩が反応性、副生成物の抑制の点で最も適している。その他の触媒としては、第三アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、1,4−ジアザビシクロ−オクタン、1,5−ジアザビシクロ−ノネン、テトラメチルブタンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン及びビス−N−ジメチルアミノエチルエーテルである。ナトリウムフェノラートのようなフェノラート、及びナトリウムメチラートのようなアルコラートも適当な触媒である。窒素を含む芳香族化合物、例えばピリジン、モノC1〜C4−アルキルピリジン、ジメチルピリジン、N−ジメチルアミノ−ピリジン、ジエチルピリジン及びトリメチルピリジンも使用し得る。C1〜C4−N−アルキル−ピロール、−ピロリン、−ピロリジン、ピラゾール、−イミダゾール、−イミダゾリン、−イミダゾリジン、−1,2,3−トリアゾール、−1,2,4−トリアゾール、及び任意にアルキル化したピリミジン、ピリダジン、1,2,3−、1,2,4−、1,3,5−トリアジン、並びに任意にアルキル化したキノリン、イソキノリン、キノキサリン及びアクリジンも適当である。
【0018】
モノオールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)と、水酸基を2つ以上含むアルコールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)の比率は特に限定するものではないが、(A1)/(A2)=80/20〜30/70であることが好ましく、(A1)/(A2)=60/40〜40/60であることが特に好ましい。(A1)の比率が上限を超えると、フォームの硬度が高くなることがある。また、(A2)の比率が上限を超えると、有機ポリイソシアネート(A)の粘度が高く、成形性が悪化する場合がある。
【0019】
本発明に使用するポリオール(B)は、公称平均官能基数が2〜6、数平均分子量が50〜20,000であるものであり、通常の軟質ポリウレタンフォームに使用されるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを用いることができる。具体的には、単量体のポリオールとして、水を含むエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、エチレンジアミン、ソルビトール等のほか、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを開始剤としてエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)又はその両方を付加重合したポリエーテルポリオール、又は上記ポリオールに対しアクリロニトリルやビニル等のラジカル重合によるポリマーポリオール、アミン/イソシアネートの反応による分散ウレアを含む変性ポリエーテルポリオール、メラミン変性ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールである。また、ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸とエチレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等との縮合ポリエステルポリオール等が使用できる。その他、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、含燐ポリオール、ポリエステルエーテルポリオール等が使用できる。
【0020】
これらのポリオールにおいて好ましいのは、公称平均官能基数が2〜6であって、当量50〜20,000の末端1級及び/又は2級の水酸基を含むポリエーテルポリオール又はこれらの変性ポリエーテルポリオール、公称平均官能基数2〜6であって当量200〜2,000の縮合又は重合ポリエステルポリオール、当量200〜6,000のポリテトラメチレンエーテルポリオール、当量200〜2,000のポリカーボネートジオール等である。これらは、用途に応じて選択すればよく、また2種以上を混合して使用することもできる。
【0021】
本発明で使用する触媒(C)は、特に制限はなく、本発明ではポリウレタンフォームの製造に通常使用されている、アミン系触媒、金属触媒、アミジノ基を有するアミン及びその誘導体がすべて使用できる。アミン系触媒としては、比較的マイルドな第3級アミン類、特にトリエチレンジアミンが好適であるが、その他、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、ジメチルエチルエチルエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、トリエチルアミン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、ジエタノールアミン、テトラメチルヘキサメチメチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、テトラメチルエチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−ρ−トリアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、ジメチルアミノヘキサノール、メチルヒドロキシルピペラジン等が例示できる。また、従来使用されているアミジノ基を有するアミン及びその誘導体も使用可能である。このアミジノ基を有するアミン及びその誘導体としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が好ましく用いられる。ジアザビシクロアルカン類としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以降、DBUとも略記する)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が例示できる。その他、弱酸のアルカリ金属塩、三量化触媒等も使用できる。金属触媒としては、スタナスオクテート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、その他の通常ポリウレタンフォームに使用されるスズ系触媒が好ましく用いられる。
【0022】
上記の触媒において、本発明では、良好な反応性のバランス、セルの均一性、独立気泡性が少なく、安定な発泡体としてのフォームを得るためには、DBUとスタナスオクテートを用いることが最も適している。
【0023】
本発明で使用する発泡剤(D)としては、通常ウレタン発泡に用いられる公知の発泡剤を使用することができる。例えば、物理的発泡剤としては、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素化合物、HCFC−141b、HCFC−123、HCFC−22、HFC−245fa、HFC−365mfc、HFC−134a等のいわゆる代替フロンを含むハロゲン化炭化水素等を挙げることができ、化学的発泡剤としては、水、有機酸等を挙げることができる。またガスローディング装置を用いて原液中に空気、窒素ガス、炭酸ガス等を混入溶解させて用いることもできる。これら発泡剤は、2種以上併用して用いることもでき、その使用量は、ポリオールの1〜50質量%が適当である。
【0024】
本発明で使用する整泡剤(E)としては、L−5309、L−5366、Y−10366、L−3151、L−5420、L−6202B(モメンティブ製)、F−242T、F−303、F−703(信越化学工業製)、SH−192、SH−193、PRX−607、SRX−280A、SF−2914、F−122、SF−2962(東レシリコーン製)、B−8300、B−4113LF(エボニックジャパン製)、DC−5169、DC−193(エアープロダクツ製)、SZ−1325、SZ−1328(日本ユニカー製)等の軟質、硬質或いはHR用ポリウレタンフォームに用いられる整泡剤を使用することができる。
【0025】
本発明には、また必要に応じて従来公知の他の添加剤も使用できる。例えば、酸化防止剤又は紫外線吸収剤を配合することによって本発明の特徴である優れた耐変色性を一層向上させることができる。具体的には、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノール系の紫外線吸収剤等がある。本発明においては、耐候性試験を行った結果,サンプルの劣化が非常に少ないといった観点から、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(BASF社製、チヌビン765)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(BASF社製、チヌビン770)等が挙げられる。
また、これ以外に、公知の難燃剤、界面活性剤、着色剤、導電剤、絶縁剤、発光剤、抗菌剤、芳香剤等を添加することもできる。
【0026】
これらの原料物質を用いて、本発明の軟質ポリウレタンフォームを製造するには、何ら特別の技術を必要とせず、従来からの軟質ポリウレタンフォームの製造方法をそのまま適用することができる。すなわち、一般的には、別々の容器に保管又は調製しておいたポリイソシアネート成分、ポリオール成分、触媒、発泡剤、及びその他の添加剤をひとつの反応容器に投入し、均質になるよう撹拌混合しながら反応を開始させる。そして混合物を型枠や底紙を敷いたコンベア上に注入して、反応、発泡、及び硬化を行わせる。あるいはまた、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分の二液システムにして、加圧ボックスと簡易発泡機により加圧発泡することにより、レディキュレーション不要のセル形状の均質でセル方向性のないフォームを得ることができる。更には、別々の容器に保管又は調製しておいたポリイソシアネート成分、ポリオール成分、触媒、及びその他の添加剤をひとつのミキシングヘッドに不活性ガスを混入しながら投入し、均質になるよう混合し、所定のモールド等に注型して加熱硬化させる方法も可能である。
【0027】
このときのイソシアネートインデックス(イソシアネート基/活性水素基×100)は50〜150が好ましく、特に好ましくは60〜120の範囲である。インデックスが低すぎる場合は、フォーム表面にべと付き感が生じやすい。また、インデックスが高すぎる場合は、発泡しない場合や、陥没して柔軟なフォームが得られない場合がある。
【0028】
型枠を用いる場合、その際に硬化を均一に、かつ十分な発泡倍率を得るために、型枠は30〜80℃の範囲で調節されていることが望ましいが、表皮との一体成形の場合などはその必要が無い。脱型時間は短い方が生産効率の面から好ましく、本発明では注入後3〜8分間で脱型できるが、不良率削減のために生産設備の条件に適した脱型時間を任意に設定することもできる。脱型後の製品はそのままでも使用できるが、従来公知の方法で圧縮又は減圧下でセルを破壊し、製品の外観、寸法を安定化させることもできる。
【実施例】
【0029】
以下、更に、本発明の具体的実施例について述べるが、勿論本実施例のみによって本発明が限定されることはない。
【0030】
〔アロファネート変性ポリイソシアネートの製造〕
<合成例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI:日本ポリウレタン工業社製)を950g、イソプロパノールを50g仕込み、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次にオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)を0.1g仕込み、90℃にて3時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、JP−508(城北化学社製)を0.11g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は40.46%であった。この反応生成物を140℃・40Paにて薄膜蒸留を行い、イソシアネート含量が19.5%、25℃の粘度が100mPa・s、遊離のヘキサメチレンジイソシアネート含有量が0.1%、色数が20APHAの「アロファネート変性ポリイソシアネート−1」を得た。CEF−318をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。
【0031】
<合成例2>
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を950g、3−メチルペンタンジオールを50g仕込んだ以外は,合成例1と同様の方法で,「アロファネート変性ポリイソシアネート−2」(イソシアネート含量19.1%、25℃の粘度1720mPa・s、遊離ヘキサメチレンジイソシアネート0.1%、色数20APHA)を得た。
【0032】
<合成例3>
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を950g、ブタノールを50g仕込んだ以外は,合成例1と同様の方法で,「アロファネート変性ポリイソシアネート−3」(イソシアネート含量19.0%、25℃の粘度90mPa・s、遊離ヘキサメチレンジイソシアネート0.1%、色数20APHA)を得た。
【0033】
<合成例4>
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を950g、PTG−250(保土谷化学社製)を50g仕込んだ以外は,合成例1と同様の方法で,「アロファネート変性ポリイソシアネート−4」(イソシアネート含量17.0%、25℃の粘度1770mPa・s、遊離ヘキサメチレンジイソシアネート0.1%、色数20APHA)を得た。
【0034】
<イソシアネート調整例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、アロファネート変性ポリイソシアネート−1を100g、HALSを0.8g仕込み、25℃で 1時間撹拌混合した。得られた有機ポリイソシアネートは、NCO含有量が19.5%、粘度が100mPa(25℃)であった。以下、当該イソシアネートを「NCO−1」とする。
【0035】
<イソシアネート調整例2〜18>
上記と同様の方法で、表1の配合比に従って、有機ポリイソシアネート「NCO−2」〜「NCO−18」を得た。
【0036】
【表1】

【0037】
(ポリオールプレミックスの調整)
表2に記載の各原料を仕込み,25℃で1時間混合攪拌してポリオールプレミックス「B−1」〜「B−8」を得た(調整例19〜26)。
【0038】
【表2】

【0039】
(軟質ポリウレタンフォームの製造)
有機ポリイソシアネート(イソシアネート成分)と,上記のポリオールプレミックスとを用いて以下の方法で軟質ポリウレタンフォームを調製した。 すなわち、表3に示す割合で各有機ポリイソシアネートとポリオールプレミックスを、温度25±2℃に温調して,ポリマーエンジニアリング社製低圧発泡機で攪拌後,500mm×500mm×500mmサイズの箱に吐出し,軟質ポリウレタンフォームを得た。なお、表3中、INDEXはポリイソシアネート組成物とポリオール成分1のモル比を、配合比はポリイソシアネート組成物とポリオール成分1の質量部数を、それぞれ示す。
【0040】
以下の原料を使用して軟質ポリウレタンフォームを調製した。各原料の公称平均官能基数は、イソシアネート成分についてはNCO基の数であり、ポリオール成分についてはOH基の数である。各実施例1〜19および各比較例1〜7において使用した原料の種類および配合量を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
<イソシアネート成分>
IPDI:イソホロンジイソシアネート、デクサ社製
T−80:トリレンジイソシアネート(商品名:コロネートT−80、日本ポリウレタン工業社製)

<ポリオール成分>
ポリオールA: NEF−455(ポリエーテルポリオール混合物,日本ポリウレタン工
業製,公称官能基数3, OH価 168)
ポリオールB: NEF−456(ポリエーテルポリオールとポリマーポリオールの混合
物,日本ポリウレタン工業製,公称官能基数3, OH価 157)
ポリオールC: NEF−457(ポリエーテルポリオール混合物,日本ポリウレタン工
業製,公称官能基数3.8, OH価 145)
ポリオールD: NEF−458(ポリエーテルポリオール混合物,日本ポリウレタン工
業製,公称官能基数3.5, OH価 362)
ポリオールE: サンニックスPP−2000(ポリエーテルポリオール,三洋化学工業
製,公称官能基数2, OH価 56)

<その他>
CAT1:TEDA L33(アミン触媒,東ソー製)
CAT2:TOYOCAT ET(アミン触媒,東ソー製)
CAT3:DBU(アミン触媒,サンアプロ製)
CAT4:DABCO T−9(金属触媒,エアープロダクツ製)
HALS:チヌビン765(ヒンダードアミン系光安定剤,BASF製)
整泡剤1:SH−192(シリコン系整泡剤,ダウコーニング製)
整泡剤2:SRX−280A(シリコン系整泡剤,ダウコーニング製)
水:水道水
【0043】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、フォームの密度は使用する有機ポリイソシアネートの種類や水等の配合比率により高低は見られたが、フォーム製造時の反応性は実用上、特に問題とならない範囲であった。また、製造時及び養生期間での作業環境は良好であり、HDI等有機ポリイソシアネートに由来する不快な刺激臭等は感じられなかった。
【0044】
<耐候性試験>
スガ試験機製スーパーウェザーメーター(180W/m,300〜400nm,光フィルター石英/#275、ブラックパネル温度63℃、降雨サイクル12分/60分中)で180時間行った。
外観については,表面の劣化がほとんどないものを○とし,若干劣化したものを△,非常に劣化したものを×とした。
物性保持率については引張強度保持率が80%以上のものを○とする。
黄変性はミノルタ製色彩色差計CR−310を使用し,YI値を測定した。YI値の差(ΔYI=試験終了後のYI値−試験前のYI値)が10以下のものを○とした。

<機械物性>
引張強度については、JIS K6400−5に基づき測定を行った。
引張強度保持率(%)
=(試験終了後の引張強度−試験前の引張強度)/試験前の引張強度×100
圧縮残留歪の測定方法は、JIS−6400−4に準じ、(50%圧縮、22時間、70℃)サンプルサイズは、10mm×10mm×10mm、n=4で行った。計算式は以下のものを用いて算出した。


Cs=(t−t)/(tーt)×100
Cs:圧縮残留歪(%)
:試験片の元の厚さ(mm)
:試験片を圧縮板から取り出し,30分後の厚さ(mm)
:スペーサーの厚さ(mm)
【0045】
実施例にあげたものについては、外観、耐候性、黄変性について特に問題ない結果となった。(A2)を用いない軟質ポリウレタンフォームは(比較例3)、成形性に問題があり、セトリング(フォームの高さが最大に達した後,沈みが発生する。その沈む割合を示す値,セトリング(%)=(フォーム最大高さ―2分後の高さ)/フォーム最大高さ×100))が大きくなるなどの問題が生じた。また、(A1)を用いない軟質ポリウレタンフォームは(比較例4)、独泡になるといった成形性に問題があり、底上がり(成型時のフ
ォーム底部にガスがたまり,フォーム底部が持ち上がってしまう状態)に問題が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、発泡剤(D)、整泡剤(E)、の混合液を反応発泡、硬化させて得られる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、上記有機ポリイソシアネート成分(A)が、モノオールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)と、水酸基を2つ以上含むアルコールと脂肪族系及び/又は脂環族系ジイソシアネートとからなるアロファネート変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)の混合物を用いることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記の有機イソシアネート(A1)と(A2)の比率が、(A1)/(A2)=80/20〜30/70である請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
前記のポリオール(B)の公称平均官能基数が2〜6、数平均分子量が50〜20,000のポリオール(B)からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記のイソシアネート(A)およびポリオール(B)のどちらか一方または両方に,ヒンダードアミン系光安定剤を添加して使用する請求項1〜3に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記触媒(C)として、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7とスタナスオクテートを用いることを特徴とする請求項1〜4に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の製造方法により得られた軟質ポリウレタンフォームを使用する衣料品用成型品。
【請求項7】
請求項1〜5に記載の製造方法により得られた軟質ポリウレタンフォームを使用するサニタリー用成型品。
【請求項8】
請求項1〜5に記載の製造方法により得られた軟質ポリウレタンフォームを使用する化粧用成型品。
【請求項9】
請求項1〜5に記載の製造方法により得られた軟質ポリウレタンフォームを使用する靴用成型品。

【公開番号】特開2011−94113(P2011−94113A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206255(P2010−206255)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】