説明

軟質ポリウレタンフォームの製造法

【課題】発泡剤として水量を増加させた処方においても、発泡中の泡安定性に優れ、低密度且つ機械物性に優れた軟質ポリウレタンフォームを製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリオールとイソシアネートとを触媒及び発泡剤の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造法であって、ポリオールの一部として、下記式(1)で表され、ヒドロキシル基価が100〜1500mgKOH/gの範囲であるジオールを用い、発泡剤として水を用いる。


[上記式(1)中、Aは、シクロヘキシレン基あるいはフェニレン基を一つ以上主鎖に有する二価の置換基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜2の整数、mは0〜3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質ポリウレタンフォームの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、車両用シートクッション、マットレス、家具等の軟質フォーム、車両用インストルメントパネル、ヘッドレスト、アームレスト等の半硬質フォーム、電気冷蔵庫、建材等に用いられる硬質フォームとして広く用いられている。
【0003】
近年、車体を軽量化して燃料消費率を改善するため、車両用の軟質ポリウレタンフォーム(以下、単に「フォーム」と略す場合がある。)の低密度化が強く要求されている。
【0004】
フォームを低密度化するために使用する発泡剤に関しては、オゾン層破壊係数又は地球温暖化係数の高いハロゲン化炭化水素類[例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)類、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類、ハイドロフルオロカーボン(HFC)類]の削減又は除去が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
現在では、これまで発泡剤として使用してきたこれらのハロゲン化炭化水素類を削減又は除去する代わりに、発泡剤としての水量を増加させて、イソシアネートと水の反応により生成する二酸化炭素によって、フォームを低密度化することが主流となっている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、発泡剤としての水量を増加させた場合、発泡中に泡の安定性が失われてフォームが陥没する結果、フォームの低密度化が十分に達成されない問題があった。
【0007】
このため、発泡剤として水を利用するフォーム製造用処方において、フォームの十分な低密度化を達成するために、鎖延長剤や架橋剤を用いる方法が広く用いられている。例えば、ジエタノールアミンやトリエタノールアミン等の架橋剤は、発泡剤としての水を増量した処方において、泡の安定性を高めて低密度なフォームを得る効果が高いことから、車両用の軟質ポリウレタンフォームの製造に広く用いられている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【0008】
しかしながら、上述した鎖延長剤や架橋剤を用いた場合、フォームの低密度化は達成されるものの、フォームの引裂強度等の機械物性が低下するため、発泡成型後に金型から取り出す際にフォームが裂けたりして、製品としての価値を損じる等の問題があった。その為、水を主たる発泡剤として用いながら、低密度且つ機械物性に優れる軟質ポリウレタンフォームの処方技術開発が強く要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−51478号公報
【特許文献2】特開平1−259022号公報
【特許文献3】特開昭63−75021号公報
【特許文献4】特開2002−338654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、発泡剤として水量を増加させた処方においても、発泡中の泡安定性に優れ、低密度且つ機械物性に優れた軟質ポリウレタンフォームを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した問題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、ポリオールの一部乃至全部として、分子内に芳香環又はシクロヘキシル環をもつ特定のジオール化合物を用いると、フォームの発泡安定性が極めて高く、発泡剤である水量を増加させた処方において、軟質ポリウレタンフォームの十分な低密度化が達成可能となる上に、引裂強度等のフォーム機械物性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られるという優れた効果をもつことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下に示すとおりの軟質ポリウレタンフォームの製造法である。
【0013】
[1]ポリオールとイソシアネートとを触媒及び発泡剤の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造法であって、ポリオールの一部として、下記式(1)で表され、ヒドロキシル基価が100〜1500mgKOH/gの範囲であるジオールを用い、発泡剤として水を用いることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【0014】
【化1】

[上記式(1)中、Aは、下式(2)〜(5)のいずれかで示される二価の置換基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜2の整数、mは0〜3の整数を表す。
【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

(上記式(3)中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

(上記式(5)中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)]
[2]上記式(1)で示されるジオールが、第一級ヒドロキシル基末端を有することを特徴とする上記[1]に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【0019】
[3]上記式(1)で示されるジオールが、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA水素化物、及びビスフェノールAエトキシレートからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【0020】
[4]上記式(1)で示されるジオールの使用量が、ポリオール[上記式(1)で示されるジオールを含む。]100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【0021】
[5]水の使用量が、ポリオール[式(1)で示されるジオールを含む。]100重量部に対して、1〜30重量部の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【0022】
[6]イソシアネートが芳香族イソシアネートであることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【0023】
[7]イソシアネートインデックスが50〜150の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発泡剤として水量を増加させた軟質ポリウレタンフォームの処方において、発泡時の安定性を改善して低密度な軟質ポリウレタンフォームを製造することが可能であり、さらに従来公知の鎖延長剤及び架橋剤を用いた場合に比べて、引裂強度等のフォームの機械物性を改善することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造法は、ポリオールとイソシアネートとを触媒及び発泡剤の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造法であって、ポリオールの一部として、上記式(1)で表され、ヒドロキシル基価が100〜1500mgKOH/gの範囲であるジオールを用い、発泡剤として水を用いることをその特徴とする。
【0027】
ここで、軟質ポリウレタンフォームとは、オープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームである[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publisher社(ドイツ)、第161〜233頁、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、第150〜221頁参照]。軟質ポリウレタンフォームの物性は、その製造に使用されるポリオール、イソシアネート等の化学構造や、発泡剤の配合量、イソシアネートインデックス等の化学的要因、セル構造等により異なるため、特に規定することは困難ではあるが、一般的には、密度が10〜100kg/m(JIS K 6401)、圧縮強度(ILD25%)が2〜80kgf(20〜800N)(JIS K 6401)、伸び率が80〜500%(JIS K 6301)の範囲である[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publisher社(ドイツ)、第184〜191頁及び第212〜218頁、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、第160〜166及び第186〜191頁参照]。
【0028】
また、半硬質ポリウレタンフォームとは、そのフォーム密度及び圧縮強度は軟質ポリウレタンフォームより高いものの、軟質ポリウレタンフォームと同様にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームであり、その製造に使用されるポリオール、イソシアネート等の原料も軟質ポリウレタンフォームと同様であるため、一般的には軟質ポリウレタンフォームに分類されることが多い[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publisher社(ドイツ)、第223〜233頁、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、第211〜221頁参照]。半硬質ポリウレタンフォームの物性は、特に限定されるものではないが、一般的に密度が40〜800kg/m、25%圧縮強度が0.1〜2kgf/cm(9.8〜200kPa)、伸び率が40〜200%の範囲である。
【0029】
これに対し硬質ポリウレタンフォームは、高度に架橋されたクロースドセル構造を有し、可逆変形不可能なフォームであり、軟質及び半硬質ポリウレタンフォームとは全く異なる性質を有する[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publisher社(ドイツ)、第234〜313頁、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、第224〜283頁参照]。硬質フォームの性質は特に限定されるものではないが、一般的には、密度が20〜100kg/m、圧縮強度が0.5〜10kgf/cm(50〜1000kPa)の範囲である。
【0030】
本発明における軟質ポリウレタンフォームとは、その製造に使用する原料及びフォーム物性等から、上記した半硬質ポリウレタンフォームをも含むものとする。
【0031】
本発明において、上記式(1)で示されるジオール中の二価の置換基Aとしては、特に限定するものではないが、上記式(2)で示される二価の置換基としては、1,2−、1,3−、又は1,4−シクロへキシレン基が例示される。
【0032】
また、上記式(3)で示される二価の置換基としては、2つの1,2−、1,3−、又は1,4−シクロへキシレン基がメチレン鎖又はイソプロピリデン鎖により相互に結合されている置換基が例示される。
【0033】
また、上記式(4)で示される二価の置換基としては、1,2−、1,3−、又は1,4−フェニレン基が例示される。
【0034】
さらに、上記式(5)で示される二価の置換基としては、2つの1,2−、1,3−、又は1,4−フェニレン基がメチレン鎖又はイソプロピリデン鎖により相互に結合されている置換基が例示される。
【0035】
本発明において、上記式(1)で示されるジオール中の置換基Rとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0036】
本発明において、上記式(1)で示されるジオールとしては、具体的には、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA水素化物、ビスフェノールAエトキシレート等が挙げられ、これらのうち、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、及びビスフェノールAエトキシレートが好ましい。
【0037】
なお、本発明において、上記式(1)で示されるジオールは、単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
本発明において、上記式(1)で示されるジオールは、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオールの一部として用いられる。上記式(1)で示されるジオールの使用量としては、特に限定するものではないが、ポリオール[上記式(1)で示されるジオールを含む。]100重量部に対し、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部の範囲である。上記式(1)で示されるジオールの使用量が、ポリオール100重量部に対し、0.01重量部よりも少ない場合、泡安定性改良等の効果が得られないおそれがある。一方、20重量部を超えて使用した場合、フォームが極端に独泡構造となって収縮を起こすおそれがある上に、経済的に不利である。
【0039】
本発明においては、上記式(1)で示されるジオールとそれ以外のポリオールとを併用することが好ましい。本発明において、上記式(1)で示されるジオールと併用されるポリオールとしては、例えば、従来公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
従来公知のポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸と多価アルコールより誘導される化合物が挙げられる。従来公知のポリエーテルポリオールとしては、例えば、グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール類、アンモニア、エチレンジアミン、エタノールアミン類等の脂肪族アミン化合物類、トルエンジアミン、ジフェニルメタン−4、4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物類、及び/又はこれらの混合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等を付加した化合物が挙げられる。従来公知のポリマーポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)とをラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオール等が挙げられる。
【0041】
本発明においては、上記式(1)で示されるジオールと併用されるポリオールとしては、上記したポリエーテルポリオール及び/又はポリマーポリオールが好ましい。その平均官能価は2〜5の範囲、平均ヒドロキシル価は20〜100mgKOH/gの範囲、オキシエチレン基含有率は90%以下が好ましく、平均ヒドロキシル価は20〜80mgKOH/gの範囲がさらに好ましい。
【0042】
本発明において、必要であれば、従来公知の架橋剤又は鎖延長剤を使用することができる。このような架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、又はエチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等のポリアミン類等を挙げることができる。
【0043】
本発明において、イソシアネートとしては、例えば、従来公知のポリイソシアネートが挙げられ、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−又は4,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、それらのポリイソシアネートとポリオールとの反応による遊離イソシアネート含有プレポリマー類、カルボジイミド変性イソシアネート等の変性ポリイソシアネート類、それらの混合ポリイソシアネート等が例示される。
【0044】
これらのうち好ましくは、TDIとその誘導体又はMDIとその誘導体であり、これらは混合して使用しても差支えない。TDIとその誘導体としては、例えば、2,4−TDIと2,6−TDIの混合物又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体や、末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。
【0045】
本発明においては、フォームの硬度、密度、強度及び耐久特性を調整し、フォームの機械的物性に対する多様な要求に対応するため、イソシアネートインデックス〔{(イソシアネート基)/(イソシアネート反応性基)}×100(当量比)〕を調整することができる。本発明においては、イソシアネートインデックスは、50〜150の範囲であることが好ましく、更に好ましくは60〜140の範囲である。イソシアネートインデックスが50未満では、得られるポリウレタンフォームの表面にべと付き感が生じやすい傾向にあり、他方、150を超えると、フォームの製造時間(硬化時間)が長くなる上に、得られるフォームが硬くなる傾向にある。
【0046】
本発明の方法に用いられる第三級アミン触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N、N−ジメチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、2−アミノキヌクリジン、3−アミノキヌクリジン、4−アミノキヌクリジン、2−キヌクリジノール、3−キヌクリジノール、4−キヌクリジノール、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、及びN,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、1−メチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−(n−ブチル)−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−イミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−ジメチルアミノプロピル)イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール等が例示できる。
【0047】
これらの中で、トリエチレンジアミン、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテルは触媒活性が高く、本発明の方法において工業的に有利に使用される。
【0048】
本発明の方法においては、金属触媒を併用することができる。このような金属触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、具体的には、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の、従来公知の有機スズ化合物が挙げられる。
【0049】
これらの触媒は必要ならば溶媒で希釈して使用されても良い。溶媒としては通常使用されるものであれば特に限定されるものではなく、例えばジプロピレングリコール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール及び水等が使用できる。
【0050】
これらの触媒の使用量は、ポリオールを100重量部とした場合、通常0.01〜5重量部であり、さらに好ましくは0.05〜3重量部の範囲である。
【0051】
本発明において、発泡剤は水であるが、必要であれば、従来公知の物理的発泡剤や化学的発泡剤を併用することができる。
【0052】
従来公知の物理的発泡剤としては、例えば、ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素類、空気、窒素、二酸化炭素等の気体混合類等が例示できる。また、従来公知の化学発泡剤としては、有機酸、硼酸等の無機酸類、アルカリ炭酸塩類、環状カーボネート類、ジアルキルカーボネート等の、ポリウレタン樹脂成分と反応して又は熱等により分解してガスを発生させるものが挙げられる。
【0053】
本発明において、水の使用量は、フォームの低密度化及び成型性の向上のため、ポリオール[上記式(1)で示されるジオールを含む。]100重量部に対し、1〜30重量部の範囲が好ましく、2〜20重量部の範囲がさらに好ましい。
【0054】
本発明において、必要であれば、整泡剤を用いることができる。整泡剤としては、従来公知の整泡剤でよく、特に限定するものではないが、例えば、オルガノシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物等が挙げられる。その使用量は、特に限定するものではないが、ポリオール[上記式(1)で示されるジオールを含む。]100重量部に対して、通常0.1〜10重量部の範囲である。
【0055】
本発明においては、必要に応じて、着色剤、難燃剤、老化防止剤その他従来公知の添加剤を使用してもよい。これらの添加剤の種類やその添加量は、通常使用される範囲で十分である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定して解釈されるものではない。
【0057】
表1に示す処方を用い、表2に示す各種の鎖延長剤または架橋剤を用いて、軟質ポリウレタンフォームを発泡した。発泡試験の条件を以下に示す。
【0058】
[発泡条件]
・原料液温度:20±1℃、
・攪拌速度:6000rpm(5秒間)。
【0059】
室温下、2リットルのポリエチレン製カップにポリウレタン原料を注ぎ発泡させた軟質ポリウレタンフォームの反応性及びフォーム物性を次に示す方法で測定した。結果を表2に示す。
【0060】
[反応性]
・クリームタイム:発泡開始時間(秒)。原料を混合開始してから、原料混合液がクリーム状に白濁して立ち上がってくるまでの時間。
【0061】
・ゲルタイム:樹脂化時間(秒)。原料を混合開始してから、増粘が起こってゲル強度が出始める時間。
【0062】
[セトリング]
セトリングとは、発泡生成したフォームが最高の高さに達した後に沈んでいく割合をいう。発泡中のフォームの高さを1秒毎に測定し、以下の式によりセトリングを求めた。
【0063】
セトリング(%)=(A−B)/A×100、
A:発泡中のフォームの最高の高さ(mm)、
B:発泡開始90秒後のフォームの高さ(mm)。
【0064】
セトリングが小さいものは、発泡安定性が高いといえる。
【0065】
[フォーム密度]
フォームの中心部から採取した試験片(寸法70×70×50mm)の重量を測定し、試験片の体積で除した値をフォーム密度とした。
【0066】
[引裂強度]
発泡開始から10分後に2リットルのポリエチレン製カップから脱型した軟質ポリウレタンフォームの中心部(70×70×50mm)を厚さ5mmにスライスした後、JIS K6400に規定の4号形ダンベルを用いて試験片を準備した。発泡開始から15分後に引張試験機を用いて、試験片を一定速度で引張り、試験片が破断するまでの間に示した最大力を測定し、試験片の厚さで除した値を引裂強度とした。
【0067】
[湿熱圧縮永久歪み]
フォームの中心部から試験片(50×50×30mm)をカットし、試験片の寸法を測定する。試験片を50%圧縮した状態でオーブンに入れ、70℃で22時間エージングする。22時間後、試験片を取り出し、圧縮した状態から開放し、30分間室温で放置した後、試験片の寸法を測定し、試験前後の寸法変化率を計算する。湿熱圧縮永久歪み率は以下の式により計算される。
【0068】
湿熱圧縮永久歪み(%)=(A−B)/A×100、
A:エージング前の試験片の厚さ(mm)、
B:エージング後の試験片の厚さ(mm)。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

表2から明らかなように、上記式(1)で示されるジオールを使用して、軟質ポリウレタンフォームを製造した実施例1〜実施例14は、発泡中の安定性が改善され、低密度なフォームを製造することができた。更に、上記式(1)で示されるジオールを使用して得た軟質ポリウレタンフォームは、発泡後の引裂強度が0.5kgf/cm以上と高かった。したがって、本発明によれば、実際のフォーム製造において、金型から取り出す際にフォームが裂ける等の問題が改善される。
【0071】
一方、従来公知の架橋剤であるジエタノールアミン、トリエタノールアミンを使用して、軟質ポリウレタンフォームを製造した場合、発泡中の安定性は改善されるものの、フォームの引裂強度が0.4kgf/cm以下と悪化するため、不良率が高くなり生産性の点で問題があった(比較例1、比較例2参照)。
【0072】
さらに、鎖延長剤及び架橋剤を全く使用しない場合、発泡中の泡安定性が悪化し、セトリングが10%を超えて大きくなった。その結果、フォーム密度は45kg/m以上となり、フォームの低密度化は達成されなかった(比較例3参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとイソシアネートとを触媒及び発泡剤の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造法であって、ポリオールの一部として、下記式(1)で表され、ヒドロキシル基価が100〜1500mgKOH/gの範囲であるジオールを用い、発泡剤として水を用いることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【化1】

[上記式(1)中、Aは、下式(2)〜(5)のいずれかで示される二価の置換基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜2の整数、mは0〜3の整数を表す。
【化2】

【化3】

(上記式(3)中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【化4】

【化5】

(上記式(5)中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)]
【請求項2】
式(1)で示されるジオールが、少なくとも1つの第一級ヒドロキシル基末端を有することを特徴とする請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【請求項3】
式(1)で示されるジオールが、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA水素化物、及びビスフェノールAエトキシレートからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【請求項4】
式(1)で示されるジオールの使用量が、ポリオール[式(1)で示されるジオールを含む。]100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【請求項5】
水の使用量が、ポリオール[式(1)で示されるジオールを含む。]100重量部に対して、1〜30重量部である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【請求項6】
イソシアネートが芳香族イソシアネートであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。
【請求項7】
イソシアネートインデックスが50〜150の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造法。

【公開番号】特開2012−102156(P2012−102156A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248929(P2010−248929)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】